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特定技能の社員との定期面談で母語で書かれた回答を日本語に訳し、労働条件・職場・生活の相談に分けて面談記録の下書きにする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

特定技能の社員が定期面談の前後に母語で書いた回答を日本語に訳し、労働条件・職場・生活・健康などの相談に分けて、根拠の文付きで面談記録の下書きにします。支援の担当者は訳を待たずに面談に臨めます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Make/Power Automate
対象業界
人材/介護/建設/製造/飲食
対象部門
人事
対象業務
分類・仕分け/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
翻訳
主な効果
対応スピード向上/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
100h/月
AI導入後
40h/月
想定削減
60%
年間削減
720h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が、面談の1週間前に、本人の言語の事前アンケートのフォームを送る
  2. 回答が届いたら、自分の話せる言語なら自分で訳し、そうでなければ翻訳の道具に貼り付けるか、外部の通訳に訳を頼む
  3. 訳が戻ったら、回答を読んで、面談で聞くことをメモにする
  4. 面談を行う。本人が口では言いにくいことを、その場で母語で書いてもらうこともある
  5. 面談の場で書かれた母語の文を、また訳す
  6. 面談のメモと訳を見ながら、面談記録と定期面談報告書の下書きを書く
  7. 受入れ企業に伝えることを書き出し、支援の責任者に回す
導入後(After)
  1. 人担当者が、面談の1週間前に、本人の言語の事前アンケートのフォームを送る
  2. 自動回答の送信をきっかけに、回答を言語と本人のIDと結び付ける
  3. 自動1つ目の段で、回答を1問ずつ原文に忠実に日本語に訳す。訳に自信のない語は原文のまま印を付ける
  4. 自動2つ目の段で、訳と原文を並べたまま、相談を項目に分け、根拠の文を添える
  5. 自動規則で、`urgent` / `follow_up` / `none` の3つに分ける。`urgent` は責任者にすぐ知らせる
  6. 自動面談で聞き直す点(印の付いた語、項目の根拠があいまいな回答)を準備メモにする
  7. 人担当者が準備メモを読み、面談を行う。面談の場で本人が書いた母語の文を、同じフォームの「面談の補足」から送る
  8. 自動補足を同じ手順で訳し、事前アンケートとあわせて面談記録の下書きを作る
  9. 人担当者が下書きを面談のメモと照らして直し、言語の分かる担当者が印の付いた箇所を確かめる
  10. 人支援の責任者が、受入れ企業への連絡、届出、通報の要否を決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が、面談の1週間前に、本人の言語の事前アンケートのフォームを送る
  2. 回答が届いたら、自分の話せる言語なら自分で訳し、そうでなければ翻訳の道具に貼り付けるか、外部の通訳に訳を頼む
  3. 訳が戻ったら、回答を読んで、面談で聞くことをメモにする
  4. 面談を行う。本人が口では言いにくいことを、その場で母語で書いてもらうこともある
  5. 面談の場で書かれた母語の文を、また訳す
  6. 面談のメモと訳を見ながら、面談記録と定期面談報告書の下書きを書く
  7. 受入れ企業に伝えることを書き出し、支援の責任者に回す

(a)言語ごとに訳せる人が少ない。 ミャンマー語とネパール語は外部の通訳に頼むので、訳が戻るまでに数日かかります。 面談の日までに戻らず、回答を読まないまま面談に臨むことがあります。

(b)翻訳の道具の訳を、そのまま使っている。 貼り付けた訳は読める日本語になっていますが、どこが訳し違いかは分かりません。 給与の金額や日付が別の数字になっていても、気づくのは本人に聞き直したときです。

(c)面談記録の書き方が担当者ごとに違う。 本人の言葉をそのまま書く人もいれば、「特に問題なし」とまとめる人もいます。責任者が記録を読んでも、本人がどう言ったのかが分からないことがあります。

(d)急ぐべき相談が埋もれる。 回答の中に「寮の部屋に勝手に入られる」「パスポートを会社が持っている」と書かれていても、訳を待つあいだに数日が過ぎ、他の回答と同じ順番で読まれます。

  1. 【人】 担当者が、面談の1週間前に、本人の言語の事前アンケートのフォームを送る
  2. 【自動】 回答の送信をきっかけに、回答を言語と本人のIDと結び付ける
  3. 【自動】 1つ目の段で、回答を1問ずつ原文に忠実に日本語に訳す。訳に自信のない語は原文のまま印を付ける
  4. 【自動】 2つ目の段で、訳と原文を並べたまま、相談を項目に分け、根拠の文を添える
  5. 【自動】 規則で、urgent / follow_up / none の3つに分ける。urgent は責任者にすぐ知らせる
  6. 【自動】 面談で聞き直す点(印の付いた語、項目の根拠があいまいな回答)を準備メモにする
  7. 【人】 担当者が準備メモを読み、面談を行う。面談の場で本人が書いた母語の文を、同じフォームの「面談の補足」から送る
  8. 【自動】 補足を同じ手順で訳し、事前アンケートとあわせて面談記録の下書きを作る
  9. 【人】 担当者が下書きを面談のメモと照らして直し、言語の分かる担当者が印の付いた箇所を確かめる
  10. 【人】 支援の責任者が、受入れ企業への連絡、届出、通報の要否を決める

5番目の urgent を、規則で決めているのがこの設計の分かれ目です。 暴力や脅し、旅券や在留カードを会社が持っている、給与の未払い、体調の急な悪化、といった項目に当たる回答は、訳が出た時点で責任者の画面に出ます。 これまで訳を待って数日かかっていたところです。

10番目を人に残しているのは、判断に重さがあるからです。 運用要領は、支援の実施が困難となる事由が生じた場合に、その事由を知った日から14日以内に届出を行わなければならないとしています。届け出るかどうかを決めるのは責任者で、AIの項目分けはその材料です。

02今回想定するシステム構成

構成図
本人 ── 母語の事前アンケート(言語ごとの Google フォーム)
   ▼【トリガー】Google フォームの送信
Google Apps Script ── 本人のID・言語・面談の予定日と結び付ける
   ▼
Gemini API ── ①翻訳(1問ずつ、原文に忠実に。訳に自信のない語は原文のまま印)
   ▼
Gemini API ── ②項目分け(労働時間・給与と控除・職場の人間関係・住まい・健康・在留の手続き・帰国と転職・その他)
   ▼
Google Apps Script ── 規則で urgent/follow_up/none を決める
   ├── urgent ──▶ 支援の責任者へすぐ通知
   ▼
面談の準備メモ(Google スプレッドシート)──▶【担当者が面談】
   ▼ 面談の補足(同じフォーム)
Gemini API ── ①②を補足にも
   ▼
面談記録の下書き ──▶【担当者・言語の分かる担当者・責任者が確認】
役割想定する製品代替候補
処理Gemini API(回答の翻訳、相談の項目分け、面談記録の下書き)Claude API、OpenAI API
連携Google フォーム(言語ごとの事前アンケートと面談の補足)Microsoft Forms
連携Google Apps Script(呼び出し、規則の判定、通知、下書きの書き出し)Make、Power Automate
連携Google スプレッドシート(本人の一覧、準備メモ、面談記録の下書き)Microsoft Lists

事前アンケートのフォームは、言語ごとに分けたままにします。 質問の文は、言語の分かる担当者か通訳が訳したものを使い、AIに質問の文を訳させることはしません。 本人が読む文は、人が確かめた訳にしておきます。

翻訳の土台は Gemini API のテキスト生成です。 呼び出しは /v1beta/interactions に対して行い、指示の前提は system_instruction で渡します。会話の状態をサーバー側に保存しない store=false の指定ができるので、1問ずつの翻訳では保存しない設定で呼びます。

どの言語をどれだけ正しく訳せるかの一覧は、公式の資料からは確かめられませんでした。 そのため、言語ごとに30件程度を言語の分かる人と見比べ、訳を使える言語を決めてから広げる手順を第8章に置いています。使えないと判断した言語は、これまでどおり通訳に頼みます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

フォームの送信を起点にし、1件ずつその場で訳します。 事前アンケートの回答も、面談の補足も、同じ仕組みで動きます。訳が出るまでを数分にすることで、急ぐ相談が数日埋もれることがなくなります。

インストール型のトリガーは、作った人のアカウントで動きます。 支援部の共用のアカウントで作り、担当者の異動で止まらないようにします。 フォームは言語ごとに分かれているので、フォームごとにトリガーを作ります。

もう1つは、毎朝の時間主導型トリガーです。 面談の予定日が3日後に迫っているのに事前アンケートの回答が無い本人を、担当者の一覧に出します。回答が無いまま面談に臨むのを防ぐためです。 指定の時刻のトリガーは1時間の幅の中で動くので、始業の1時間前に置きます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
事前アンケートの回答1問ずつの母語の自由記述と、選択式の回答言語ごとのフォーム
面談の補足面談の場で本人が母語で書いた文同じフォームの補足の欄
本人の情報本人のID、言語、受入れ企業のID、分野、面談の予定日本人の一覧
用語の対訳分野の言葉(夜勤、残業、寮費、控除、有給など)の母語と日本語の対訳言語の分かる担当者が作る表
担当者の面談のメモ面談で聞いたことの日本語のメモ担当者が面談の後に書く

AIに渡すのは、回答と用語の対訳だけです。 氏名、在留カードの番号、旅券の番号、住所は渡しません。本人はIDで呼び、記録に名前を戻すのはスプレッドシートの側です。

質を決めるのは、用語の対訳の表です。

日本語ベトナム語注意
寮費(言語の分かる担当者が記入)家賃と光熱費が分かれているかを聞き直す語
控除(同上)税・社会保険・寮費のどれかを聞き直す語
有給休暇(同上)「休み」とだけ書かれることが多い
夜勤(同上)介護の分野で多い

表に入れるのは、訳し違えると支援の判断が変わる語です。 給与と控除、休みと有給、残業と夜勤は、訳がぶれると相談の中身が変わります。表は分野ごとに増やし、言語の分かる担当者が確かめた訳だけを入れます。

Step3

データの取得方法を決める

フォームの送信のイベントから、回答と、回答した本人のIDが取れます。本人のIDはフォームの最初の質問で選ばせず、担当者が送るフォームのリンクにあらかじめ入れておく形にします。本人に選ばせると、別の人のIDを選ぶことがあります。

取るものどこから何に使うか
回答フォームの送信のイベント翻訳の対象
言語どのフォームから送られたか用語の対訳の表を選ぶ
本人の情報本人の一覧をIDで引く分野と受入れ企業と面談の予定日
前回の面談記録本人の一覧の記録の列準備メモで前回の相談の続きを示す

前回の面談記録は、AIには渡しません。 「前回は寮の相談があった」と知らせると、今回の回答も寮の話に寄せて分けやすくなります。前回との比べは、準備メモの上で担当者が行います。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 空欄の確認 … 自由記述が空の問いは、訳さずに「回答なし」とします
  2. 言語の確認 … 書かれた文の言語が、フォームの言語と違う場合(日本語で書かれた、別の言語で書かれた)は、その問いに印を付けます
  3. 個人の情報の除去 … 回答の中に電話番号、在留カードの番号に見える並びがあれば、伏せてから送ります
  4. 長さの確認 … 1問の回答が極端に長い場合は、段落ごとに分けて訳します

3番目は、本人が書いてしまうことがあるためです。 「在留カードの番号はこれです、更新の手続きが分かりません」と書く人がいます。相談の中身は残し、番号の部分だけを伏せます。

Step5

AIに処理させる

させるのは2つの段階です。 1つ目は翻訳、2つ目は項目分けです。1つ目の段では、要約も、言い換えも、項目分けもさせません。

1つ目の段階:翻訳

訳し方理由
1問ずつ、文の順番どおりに訳すどの問いへの答えかを崩さない
数字・金額・日付・時刻は原文のまま写し、単位を付ける給与と労働時間の相談の中身そのもの
強い言葉は強いまま訳す「怖い」を「少し不安」に弱めない
訳に自信のない語は、原文のまま【要確認:原語】と残す面談で聞き直す点になる
日本語で書かれた部分は、そのまま残し【日本語】と印を付ける本人の書いた日本語を直さない

2つ目の段階:項目分け

訳した文と原文を並べて渡し、相談を次の項目に分けさせます。1つの回答が複数の項目に当たってもよいことにします。

項目例
労働時間・休み残業、休日、夜勤の回数、有給
給与・控除金額、寮費や食費の控除、支払の遅れ
職場の人間関係上司・同僚との関係、言葉の行き違い
安全・ハラスメント暴力、脅し、怒鳴られる、体に触れられる
住まい寮の設備、部屋への立ち入り、家賃
健康体調、けが、通院
在留の手続き・書類在留期間の更新、書類の預かり
帰国・転職の希望一時帰国、退職、転職
その他日本語の学習、生活の困りごと

項目ごとに、根拠の文を原文と訳の両方で写させます。 担当者と言語の分かる担当者は、根拠の文の原文を見て、訳が合っているかを確かめられます。

させないこと理由
回答の要約・言い換え本人の言葉が記録から消える
訳せない語の推測推測で埋めると聞き直す点が消える
法令に反するかの判断責任者と、必要に応じて専門家が決める
届出や通報の要否の判断責任者が決める
本人の気持ちや性格の評価支援の記録に要らない。偏見のもとになる
Step6

指示内容を固定する

1つ目の段(翻訳)の system_instruction

あなたは登録支援機関で、特定技能の社員が母語で書いた回答を日本語に訳す翻訳者です。
訳すだけを行い、要約・言い換え・意見の追加はしないでください。

【訳し方】
- 問いごとに、文の順番どおりに訳してください。
- 数字、金額、日付、時刻、回数は原文の表記のまま写し、日本語の単位を付けてください。
  計算したり、丸めたりしないでください。
- 強い言葉、怒り、恐れの表現は、そのままの強さで訳してください。弱めないでください。
- 訳に自信のない語や、方言・略語で意味が分からない語は、推測で訳さず、
  【要確認:原語のまま】と残してください。
- 原文の中に日本語で書かれた部分があれば、直さずにそのまま写し、【日本語】と印を付けてください。
- 用語の対訳の表にある語は、表の日本語で訳してください。
- 原文に無い主語や理由を補わないでください。

【用語の対訳】{glossary}

2つ目の段(項目分け)の指示

次の回答の原文と日本語訳を読み、相談の内容を項目に分けてください。

【項目】労働時間・休み/給与・控除/職場の人間関係/安全・ハラスメント/
住まい/健康/在留の手続き・書類/帰国・転職の希望/その他

【厳守事項】
- 回答に書かれていることだけを根拠にしてください。書かれていない事情を推測しないでください。
- 1つの回答が複数の項目に当たる場合は、すべて挙げてください。
- 各項目に、根拠にした文を原文と日本語訳の両方でそのまま写してください。
- 【要確認】の印がある語を根拠にした項目は、needs_clarification を true にしてください。
- 法令に反するか、会社に問題があるか、届出が要るかは書かないでください。
- 本人の気持ちや性格を評価しないでください。

【回答】{question_id, original, translation の並び}

「弱めないでください」を明記しないと、強い言葉が丸まります。 翻訳を頼まれると、AIは読みやすい丁寧な日本語に寄せます。「怖くて眠れない」が「不安を感じている」になると、責任者が急ぐべき相談だと気づけません。

「数字を計算しない」も同じ理由です。 「1か月の給料から3万円引かれて、残りが12万円」と書かれた回答を「控除後の手取りは12万円」とまとめると、引かれた3万円の中身を尋ねる手がかりが消えます。

Step7

出力形式を固定する

2つの段とも、JSONで受け取ります。 Gemini API の構造化出力では、response_format に mime_type: "application/json" と JSON Schema を渡し、項目を enum で限ります。公式の案内では、出力がJSONとして正しくても、値はアプリケーションの側で必ず検証するようにとされています。

{
  "worker_id": "W-0412",
  "language": "vi",
  "answers": [
    { "question_id": "Q5", "original": "", "translation": "",
      "unclear_terms": [""], "japanese_in_original": false }
  ],
  "topics": [
    { "category": "wage_deduction", "question_id": "Q5",
      "evidence_original": "", "evidence_translation": "",
      "needs_clarification": false }
  ]
}

category は working_hours / wage_deduction / relationship / safety_harassment / housing / health / residence_documents / return_job_change / other の9つです。

1つ目の理由は、急ぐ相談を規則で拾えることです。 topics の category から、スクリプトが次のように分けます。

priority条件
urgentsafety_harassment か residence_documents がある、または wage_deduction に支払の遅れの印がある、または health がある
follow_upurgent に当たらず、topics が other 以外に1つでもある、または needs_clarification がある
none上のどれにも当たらない

urgent の条件は、責任者が決めて表に持たせます。 AIに「急ぐかどうか」を判断させず、どの項目を急ぐかは支援の方針として人が決めます。

2つ目は、訳と原文を最後まで並べて持てることです。 answers に原文と訳が1問ずつ並んでいるので、面談記録の下書きにも、本人の言葉の原文を残せます。 後から訳を見直す必要が出たときに、原文に戻れます。

3つ目は、検証ができることです。 answers の数がフォームの問いの数と合うか、topics の question_id が answers にあるか、evidence_original が original の中に本当に含まれるかを確かめます。根拠の文が原文に無ければ、その項目は follow_up にして人に回します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
言語ごとのフォームフォームの送信のトリガー事前アンケートと面談の補足を受け取る
本人の一覧スプレッドシートの読み取り言語、分野、受入れ企業、面談の予定日
用語の対訳の表スプレッドシートの読み取り言語ごとの対訳を指示に差し込む
Gemini APIApps Script から呼び出し翻訳、項目分け
準備メモ・面談記録の下書きスプレッドシートへの書き込み訳、原文、項目、根拠、聞き直す点
支援の責任者メールでの通知urgent の本人のIDと項目だけを知らせる

通知のメールには、回答の中身を書きません。 本人のIDと項目の名前だけを書き、中身はスプレッドシートを開いて見る形にします。 メールが転送されても、相談の中身が広がりません。

受入れ企業へは、自動では何も送りません。 本人が職場に知られたくない相談を書いていることがあります。何をどこまで受入れ企業に伝えるかは、担当者が本人と面談で確かめてから決めます。

Step9

人が確認する

人が確かめるのは3か所です。

  1. 準備メモ(面談の前) … 担当者が、訳と項目と聞き直す点を読みます。【要確認】の語は、面談で本人に聞き直します
  2. 面談記録の下書き(面談の後) … 担当者が、面談のメモと照らして直します。下書きにない、面談で分かったことを書き足します
  3. 言語の分かる担当者の確認 … urgent と needs_clarification の付いた回答だけ、原文と訳を見比べます

3番目を全件にしないのが、この設計の工夫です。 言語の分かる担当者は1〜2名しかいません。全件を見ると、今と同じ待ちが生まれます。 急ぐものと自信のないものだけに絞り、ほかは月に数件を抜き取って見ます。

urgent は、責任者がその日のうちに開きます。 本人に連絡するか、受入れ企業に確かめるか、面談の日を早めるかを決めます。届出や行政機関への通報の要否も、責任者が決めます。

下書きを直したら、直した箇所を残します。 訳を直した語は、言語の分かる担当者が確かめたうえで用語の対訳の表に足します。

面談記録を確定するのは担当者です。 下書きの項目分けは、面談で本人に確かめた内容に合わせて書き換えてかまいません。本人が面談で「もう解決した」と話した相談も、事前アンケートの原文と訳は消さずに残し、面談で確かめた結果を横に書き足します。 何が書かれ、面談で何が分かったかを分けて残すと、次の面談の担当者が経緯を追えます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
フォームと違う言語で書かれているその問いに印を付け、言語の分かる担当者か通訳に回す
訳を使えると決めていない言語AIに訳させず、通訳に回す。項目分けもしない
【要確認】の語が多い回答準備メモの先頭に出し、面談に通訳を同席させる
根拠の文が原文に無いその項目を follow_up にして人に回す
回答に個人の番号が書かれている伏せてから送る。伏せた箇所は記録に残さない
面談の予定日の3日前になっても回答が無い毎朝の一覧に出し、担当者が本人に連絡する
本人が手書きの紙で回答したこの構成では扱わない。担当者が通訳に回す
回答に自分を傷つける内容があるurgent にし、責任者がすぐ本人と連絡を取る
Gemini API が応答しない一覧に「未処理」で残し、1時間おきの時間主導型のトリガーで再度処理する。3回失敗したら通訳に回す

2行目を最初から置いておくのが大事です。 第8章の試しで、訳を使えると決めた言語だけをAIに回します。決めていない言語を流し込むと、確かめようのない訳が記録に残ります。

Step11

記録を残す

  • 回答の原文と、訳と、項目分けのJSONの全文
  • 使った指示と、そのときの用語の対訳の表の版
  • 担当者が直した訳と、直した理由
  • urgent の通知を送った日時と、責任者が対応を決めた日時
  • 面談記録の確定版と、確定した人
  • 言語ごとの【要確認】の数と、直した訳の数の推移

原文を必ず残します。 訳はあくまで下書きで、後から訳の誤りが分かったときに戻れるのは原文だけです。 定期面談報告書の作成のもとになった記録として、原文と訳を並べて保管します。

urgent の通知と対応の日時を残すのは、届出の期限があるためです。 支援の実施が困難となる事由を知った日から14日以内という期限は、いつ知ったかの記録がなければ数えられません。

言語ごとの数の推移は、訳を使い続けてよいかの目安になります。 直した訳の数が減らない言語は、用語の対訳の表を足すか、通訳に戻すかを決めます。

04実装レベルの3段階

最小構成:回答を手で Gemini の画面に貼り、訳と項目分けをさせる / 1件ごとの翻訳
半自動化:上記+フォームの送信で Gemini API を呼び、訳と項目を一覧に書き出す / 翻訳と項目分けの一覧化
本格構成:上記+規則で `urgent` を責任者に知らせ、準備メモと面談記録の下書きまで作る / 翻訳、仕分け、通知、下書き

半自動化で、1件30分が20分程度になります。 訳を待つ時間と、翻訳の道具に貼る時間が消えますが、整理と記録の下書きが残ります。本格構成で12分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、【要確認】の多い言語と、用語の対訳の表に足すべき語が分かります。そこを直してから下書きまで作るほうが、担当者の直しが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
200 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  200件 × 30分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 200件 × 12分 ÷ 60 = 40 時間/月
月間削減時間
60h
削減率
60%
年間削減時間
720h
年間金額換算(時間単価2,800円)
202万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 数百名規模の特定技能の外国人の社員について、3か月に1回以上の定期面談を受け持つ登録支援機関や、自社で支援を行う受入れ企業。面談の前に母語の事前アンケートを取り、自由記述の回答を通訳の担当や翻訳の道具で訳してから面談記録を書いている場合。国籍が複数で、言語ごとに訳せる人が1〜2名しかいない場合。介護・外食・製造・建設など、複数の受入れ企業の社員を同じ担当者が受け持つ場合にも当てはまります。
向いていない
  1. 支援の対象が数名で、通訳の担当が面談の場で訳せば足りる場合。対象が1つの言語だけで、その言語の担当者が十分にいる場合。18歳未満の人が回答する場合(この構成は成人の社員だけを対象にします)。なお、面談そのもの、労働関係の法令に反するかの判断、出入国在留管理庁への届出や行政機関への通報の要否の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 言語を1つ選び、過去の事前アンケートの回答から30件を集める(通訳が訳した記録がすでにあるものを選ぶ)
  2. 氏名と番号を伏せ、手元の Gemini の画面に1件ずつ貼り、第7章の1つ目の段の指示で訳させる
  3. 言語の分かる担当者が、AIの訳と通訳の訳を原文と見比べる
  4. 2つ目の段の指示で項目分けをさせ、当時の面談記録の相談の内容と並べる
出てきた内容判断
数字・金額・日付が原文どおりに写り、強い言葉が弱められていないその言語はフォームとスクリプトの連携に進む
分からない語を推測で訳している指示の【要確認】を強め、用語の対訳の表を足す。構成は有効
強い言葉が丸められる指示の「弱めない」を強める
数字や意味の取り違えが多いその言語は通訳に残す。 無理に広げない

4行目は、失敗ではありません。 言語によって訳の確かさが違うことが、試す前には分からないからです。言語ごとに30件ずつ試し、使える言語から順に広げます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
訳と要約を1回で頼み、本人の言葉が丸まる翻訳と項目分けを別の段にする
強い言葉が丁寧な日本語に弱められる指示に「弱めない」を書き、原文を最後まで並べる
分からない語を推測で訳す【要確認:原語】で残させる
金額や日付が別の数字になる原文の表記のまま写させ、検証で原文の数字と照らす
確かめていない言語を流し込む言語ごとに30件試し、使える言語だけをAIに回す
前回の記録を渡して寄せられる前回との比べは担当者が準備メモで行う
通知のメールに相談の中身を書くIDと項目の名前だけを書く
受入れ企業に自動で連絡が行く何を伝えるかは本人と確かめてから担当者が決める
回答に個人の番号が混ざる前処理で伏せてから送る
担当者の異動でトリガーが止まる部署の共用のアカウントで作る

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、AIが読みやすい日本語に整える方向に寄ることから来ます。 支援の記録で要るのは読みやすさではなく、本人が何をどう書いたかです。

8行目は、本人との信頼に関わります。 職場に知られたくない相談を受入れ企業に伝えてしまうと、次の面談から本人は本当のことを書かなくなります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 本人の母語の回答(労働条件、職場の人間関係、住まい、健康、在留の手続きの相談)、本人のID、受入れ企業のIDです。健康や職場の訴えを含む、取り扱いに注意の要る個人の情報です。

  1. 送る情報を絞る … 氏名、在留カードの番号、旅券の番号、住所は送りません。本人はIDで呼び、回答の中の番号は伏せてから送ります
  2. 有料の枠で、保存しない設定で使う … Gemini API の利用規約では、無料の枠では送った内容が製品の改善に使われ、人が読むことがあるとされ、有料の枠では製品の改善に使わず、禁止事項の違反を見つけるために限った期間だけ記録するとされています。有料の枠で使い、store=false で会話の状態を保存しない設定にします
  3. 本人への説明 … 回答を外部のAIのサービスで訳すことを、事前アンケートのフォームの最初に本人の言語で書きます。AIでの翻訳を望まない人の回答は、通訳に回します
  4. 成人の社員だけを対象にする … Gemini API の利用規約は、利用者が18歳以上であることを求めています。この構成でAIを使うのは支援の担当者で、対象は成人の社員の回答だけにします
  5. AIの結果で判断しない … 項目分けは、担当者と責任者の判断の材料です。法令に反するか、届出や行政機関への通報が要るかは、責任者が決めます
  6. 記録を見られる人を絞る … 面談記録の下書きのスプレッドシートは、支援部の担当者と責任者だけが開ける設定にします。受入れ企業の人には共有しません

誤りが起きた場合のリスクは、本人の訴えが弱められて見逃されることと、訳し違いで事実と違う記録が残ることの2つです。 前者は強い言葉を丸めると起き、後者は分からない語を推測で埋めると起きます。どちらも、原文を残し、訳を下書きとして扱うことで、人が戻れるようにしておきます。

10まず何から始めるか

1週目:用語の対訳の表を作る

支援の対象者の多い言語を1つ選び、言語の分かる担当者が、給与と控除、休みと有給、残業と夜勤、寮費などの語を表にします。分野ごとの語も足します。

2週目:30件で試す

過去の回答30件を、伏せたうえで手元の Gemini の画面で訳させ、通訳の訳と原文と見比べます。数字と金額の写し違い、強い言葉の弱め、推測の訳を最優先で見ます。

3週目:urgent の条件を決める

支援の責任者が、どの項目を急ぐかを決め、表にします。あわせて、事前アンケートのフォームの最初に、AIで翻訳することの説明を本人の言語で書きます。

4週目:フォームから一覧までをつなぐ

1つの言語のフォームと Apps Script で、回答を受け取り、Gemini API で訳と項目分けを行い、準備メモの一覧に書き出すところまで作ります。この時点では urgent の通知を出さず、担当者が一覧を見て判断します。

2か月目: urgent の通知と面談記録の下書きを足します。2つ目の言語を30件で試し、使えると判断したら広げます。3か月目以降: 使える言語を順に足し、1件30分が何分になったかを実測します。言語ごとの直しの数が落ち着き、用語の対訳の表の追加が月1回の作業になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
本人とその監督をする立場の人のそれぞれと、3か月に1回以上の定期的な面談を行う必要があること。面談の相手が同意している場合はオンライン会議での面談もでき、その場合は録画を雇用契約の終了の日から1年以上保管すること。面談の準備として質問の予定の項目について事前にアンケートを行うことは差し支えないこと。定期面談報告書(参考様式第5-5号、第5-6号)を作成すること(令和7年4月1日の一部改正)出入国在留管理庁: 「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」の一部改正について2026-10-07
定期的な面談を実施した場合は、問題の有無にかかわらず定期面談報告書を作成し、求めがあればいつでも提出できるようにしておくこと。支援の実施が困難となる事由が生じた場合は、その事由を知った日から14日以内に届出を行うこと(令和7年9月30日の一部改正)出入国在留管理庁: 「特定技能外国人受入れに関する運用要領」の一部改正について2026-10-07
定期的(3か月に1回)な面談は、令和6年1月1日からは原則として対面により実施する必要があること出入国在留管理庁: 特定技能外国人の支援として行う定期的面談の実施方法2026-10-07
呼び出しが /v1beta/interactions に対して行われること。system_instruction で指示の前提を渡すこと。store=false で会話の状態をサーバー側に保存しないようにできることGemini API: Text generation2026-10-07
構造化出力を response_format に mime_type: "application/json" とスキーマを入れて指定すること。enum と required が使えること。出力がJSONとして正しくても値はアプリケーションの側で検証するよう案内されていることGemini API: Structured output2026-10-07
利用者が18歳以上である必要があること。無料の枠では送った内容が製品の改善に使われ、人が読むことがあること。有料の枠ではプロンプトなどを製品の改善に使わず、禁止事項の違反を見つけるために限った期間だけ記録することGemini API Additional Terms of Service2026-10-07
インストール型トリガーにフォームの送信と時間主導型があること。トリガーは作った人のアカウントで動くこと。指定の時刻のトリガーは1時間の幅の中で動くことGoogle Apps Script: Installable triggers2026-10-07

面談の進め方、定期面談報告書の書き方、届出と通報の扱いは、出入国在留管理庁の最新の運用要領と様式に合わせてください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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