リバースメンタリングで経営層にAIを|研修で届かない層に効く

リバースメンタリングで経営層にAIを|研修で届かない層に効く

「全社でAI研修をやったのに、役員が一番使っていない」「経営層向けに研修を組んでも、出席はしてくれるが自分の仕事では使わない」。全社のAI定着を任された推進担当や情シス、経営企画の口から、何度も聞く声です。上が使わなければ、使い方の方針も投資の判断も現場の感覚とずれていきます。経営層に足りないのは知識ではありません。本当は、自分の仕事の題材を持ち込み、隣に座って一緒に試してくれる相手が足りないのです。そして、その相手は研修という形では用意できません。この記事では、若手が経営層に付くリバースメンタリングを生成AIの立ち上げに使うときの、対の組み方、最初の題材、1回の進め方、経営層の入力を若手が見る場面の情報の扱い、測り方と畳み方を整理します。


カメ先生カメ先生

経営層にAIを使ってもらうなら、経営層向けの研修を厚くすればいい、と思われがちなんだ。でも本当は、知っているのに使わない状態が残るんだよ。


カメ子カメ子

研修で分かったはずなのに、仕事の場面になると手が止まるということですか。


カメ先生カメ先生

そう。経営層の仕事は会議の資料や判断の材料で、研修の演習とは中身が違うからね。だから、その人の手元の仕事を題材にして、隣で一緒に打ち込んでくれる若手を付ける。これがリバースメンタリングの使い方なんだ。


カメ子カメ子

教わる内容より、隣に誰が座るかのほうが効くんですね。


この記事のポイント
  • リバースメンタリングは、若手が上の役職の人に1対1で付く制度。生成AIでは、経営層が自分の仕事でAIを使い始めるまでの伴走に使われ直している
  • 対は担当業務と担当顧客の重なりで組み、最初の題材はその経営層の会議資料や報告から選ぶ。メンター役は「少し得意」な程度でよい
  • 誰を誰に付けるか、扱わせてよい情報の範囲、若手の時間をどこまで業務と認めるか、続けるか畳むかは人が決める

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目次

リバースメンタリングとは:若手が上の役職に付く1対1の対

リバースメンタリングとは、ふつうのメンター制度の向きを逆にして、若手や現場の社員が上の役職の人の相談役に付く仕組みです。上の人が持っていない新しい道具や感覚を、1対1の対話で渡すことが目的で、集合研修のように同じ中身を大勢に配るのではなく、一人の相手の困りごとに合わせて中身が変わるのが特徴です。

生成AIが職場に入ってから、この古い呼び名が別の役目で使われ直しています。若手のほうがAIを日常的に触っていて、経営層のほうが触っていないという差が、多くの会社で見えてきたからです。ここで渡すのは「AIとは何か」という知識ではありません。経営層が自分の仕事でAIを使い始めるまでの数週間を、隣で伴走することです。この記事は人事制度の一般論ではなく、AIの定着を進める側が、この形をどう組み、どう続け、どう畳むかに絞って書きます。

上司と部下の定期面談や、外部の専門家によるコーチングとの違いも押さえておきます。定期面談は上の人が下の人の仕事を見る場で、コーチングは問いかけで本人の考えを引き出す場です。リバースメンタリングでは、知っている側が下にいて、手を動かすのは上の人です。この向きの逆転があるので、役職の上下を持ち込まない約束を最初に交わしておかないと、若手は遠慮して指摘をやめ、経営層は分からないまま頷く、という形に崩れやすくなります。

博報堂DYグループが始めた「AIメンタリング」

公式に発表されている例として、博報堂DYグループの「AIメンタリング」制度があります。2025年8月4日のニュースリリースによると、積極的にAIを活用している若手社員の中から「AIメンター」を選び、ペアになる経営層に定期的にAIツールのトレーニングやサポートを行います。メンターはエンジニアではなく、メディア、営業、マーケターなどの現場の社員から選ばれています。一方で経営層は、自分の経験知や知見を若手に返します。教える側と教わる側が入れ替わる相互補完型と位置づけられています。

同じリリースは、すでにテストケースとして行ったAIメンタリングで、参加した経営層の月間AI利用回数が約3倍になったと書いています。背景として、同グループは2024年度にのべ8,500名超の社員へ生成AIの教育関連研修を行っていました。2026年3月の発表では、グループ各社の生成AI教育関連研修に参加した従業員はのべ31,000名超とされています。研修を大きく回している会社が、それとは別に1対1の制度を用意した、という順番に注目してください。

この制度は2026年3月に、人と組織の変革を表彰するピープル・イノベーション・アワード2026でグランプリを受けました。2026年10月1日に博報堂の自社メディアが掲載した記事では、担当業務の近い社員を組み合わせ、「今困っている仕事」をその場でAIで解決できる環境をつくったと説明されています。題材の例として挙がっているのは、経営会議の資料のまとめ、他社の統合報告書の比較、営業数字の分析です。

1社の事例から読み取れることと、読み取れないこと

ここまでの数字は、すべて1社の発表です。リバースメンタリングで経営層のAI利用が上がると示した公的な調査は、調べた範囲では見当たりません。約3倍という数字も、原文では全体に広げた後の結果ではなく、テストケースでの値です。自社に持ち込むときは「同じだけ上がる」とは考えず、自社で測り直す前提を置いてください。

公表された情報から読み取れるのは、組み方の考え方(担当業務が近い若手を付ける)、題材の選び方(役員が実際に困っている仕事)、相互に返す形の3つです。一方で、1回の時間の決まりや期間、経営層が入力した内容を若手がどこまで見るかの線、若手の業務時間の扱い、効果の測り方の細部は、公開された資料では確かめられませんでした。公表されていない部分こそ、自社で決めなければならない部分です。この記事の後半は、その部分の決め方に充てます。

日経BPの取材記事(2026年2月26日)は、最初は社長を含む3名から始まり、2025年12月末の時点で対象の経営層のほとんどが利用するようになったと伝えています。社長が取材や会議でこの取り組みに触れ、役員同士の会話で口コミのように広がった、という経緯も書かれています。広がり方は会社の文化に左右されるので、ここも自社で同じになるとは限りません。

研修を重ねても、経営層の手が動かないのはなぜか

経営層向けの研修の中身や到達点をどう設計するかは、階層ごとの研修を扱った別の記事で整理しています。ここで見たいのは、研修の出来がよくても、研修という形そのものでは埋まらない部分があることです。

理由は3つあります。1つ目は題材の違いです。研修の演習は誰にでも配れる題材で組まれますが、経営層の仕事は自社の会議資料、得意先の状況、決裁の材料といった、教室に持ち込めないものが中心です。2つ目は時間の違いです。経営層の予定は細切れで、研修の後に一人で試す時間がまとまって取れません。3つ目は聞きにくさです。役職が上がるほど、基本的な操作を周りに尋ねにくくなります。

この3つは、どれも「その人の仕事を、その人の予定の中で、気兼ねなく聞ける相手と一緒に試す」形でしか埋まりません。リバースメンタリングが効くと見込めるのは、この3つの隙間に直接入るからです。逆に言えば、自社の経営層が困っているのが知識の不足なら、先に研修を直すほうが早いということでもあります。

なぜ全社の中で、経営層から始めるのか

年代による利用の差は、経営層から始める根拠になります。博報堂DYグループの発表では、同グループの生活者調査で若手ほどAIの活用度が大きく、50代以上では10%程度だったとされています。自社メディアの記事は、グループのコーポレート機能の中核会社でAIツールの利用率が5%を下回っていたことにも触れています。前者は生活者全体の数字、後者は社内の数字で、世の中の差と自社の中の差は別々に確かめる必要がある点に注意してください。全社の利用の偏りをどう減らすかは、定着の打ち手を扱った別の記事に譲ります。

経営層から始める理由は、年代の差だけではありません。経営層が自分で使うと、AIに関わる判断の質が変わります。どの業務に投資するか、どこまで任せてよいとするか、現場から上がってくる利用の要望をどう読むか。使ったことのない人がこれを決めると、期待が大きすぎるか小さすぎるかのどちらかに振れやすくなります。

もう一つは波及です。役員が会議でAIを使った資料を出す、部下に「これはAIで下書きしたのか」と具体的に聞く。こうした振る舞いが見えると、現場は使ってよいのだと受け取ります。博報堂DYグループの例でも、社長が自分の経験を話したことが広がりのきっかけとして報じられています。

誰を誰の対にするか:担当業務と担当顧客の重なりで組む

対の組み方は、この制度の効き目を最も左右します。博報堂DYグループの例では、担当業務の近い社員を組み合わせ、営業担当の役員には営業でAIを使っている若手を、さらに以前その役員が担当していた得意先を今担当している若手を付けた例が報じられています。同じ題材を両方が知っていると、説明の手間が省けて最初の回から本題に入れるからです。

組むときに見るもの重なっていると起きること重なっていないと起きること
担当業務会議資料や報告の型を若手も知っていて、その場で直せる題材の説明に1回目が丸ごと消える
担当顧客得意先の状況を前提に、分析や比較をすぐ試せる得意先の情報を一から渡すことになり、情報の扱いも重くなる
直属の関係近すぎると評価への遠慮が出て、率直に言えない離れているほうが、操作の基本を聞きやすい
予定の重なり週の同じ時間を押さえやすく、続く日程調整だけで間が空き、試した内容を忘れる

表の3行目のとおり、業務は近いほうがよい一方で、直属の上司と部下は避けるのが無難です。評価する立場の人に「その使い方は遠回りです」とは言いにくいからです。誰を誰に付けるかは、業務の重なり、相性、職場の関係を知っている人が決めることで、AIに名簿を渡して組ませる種類の判断ではありません。

1人のメンター役が何人の経営層を受け持つかも決めておきます。博報堂DYグループの例は「ペア」と表現されているとおり、1対1が基本です。1人の若手に複数の役員を付けると、題材が業務ごとに散って準備が重くなります。最初の数組は1対1で始め、メンター役の候補が足りなくなったら、同じ部門の役員2人を1人の若手が受け持つ形を検討する、という順番が無理のない進め方です。

メンター役に求める水準は「少し得意」でよい

メンター役を探すとき、社内で一番AIに詳しい人を当てたくなります。けれども日経BPの記事によると、博報堂DYグループが選んだのは「少し」AIが得意な程度の若手で、目的は専門知識ではなく業務に生かすノウハウを渡すことでした。リリースでも、メンターはエンジニアではなく現場の社員とされています。

詳しすぎる人を当てると、話が仕組みや最新の機能に寄り、経営層が明日の会議で使える形になりません。必要なのは、自分の業務で毎週のように使っていて、うまくいかなかった場面も覚えていることです。最初の失敗を知っている人のほうが、相手のつまずきを先回りできます。

候補を選ぶときの目安は3つです。自分の担当業務でAIを使った具体例を3つ以上話せること、AIの答えをそのまま使わず確かめた経験を話せること、社内で決めている利用の決まりを説明できることです。最後の点は、後で書く情報の扱いに直結します。社内で一番詳しい人には、メンター役の相談窓口になってもらうくらいがちょうどよい距離です。

最初の題材は、その経営層の手元にある仕事から選ぶ

1回目に何を題材にするかで、2回目があるかが決まります。博報堂DYグループの例で挙がっているのは、経営会議の資料のまとめ、他社の統合報告書の比較、営業数字の分析でした。どれもその役員が今週、自分の手で片づけなければならない仕事です。汎用の演習より、明日使う資料のほうが、試した結果がそのまま役に立ちます。

題材の候補を集めるところは、AIに手伝わせてかまいません。経営層の1週間の予定、出席する会議、定期的に読む報告書の名前を並べ、AIに「この中でAIで下書きや比較ができそうな作業」を挙げさせ、理由も書かせます。ただし候補を絞るのは、メンター役と経営層本人です。本人が「これは面倒だ」と思っている仕事を選ぶと、効いたかどうかが本人にすぐ分かります。

  • 研修で使った汎用の練習問題を、そのまま1回目に持ち込む
  • 経営層が自分では作っていない資料(部下が作る資料)を題材にする
  • 未公表の数字や人事の情報を、決まりを確かめないまま題材にする
  • 1回目から複数の業務を扱い、どれも途中で終わる

3つ目の失敗は、次の節以降で扱う情報の扱いに関わります。題材にしてよい情報の範囲は、始める前に決めておく必要があります。

1回の進め方と、回数・期間の目安

博報堂の自社メディアの記事では、社長のメンター役を務めた社員が「毎週1時間」と振り返っています。週に1回、1時間程度を一つの目安にできます。回数や期間に決まった正解はないので、最初に「何回やって、その時点で続けるかを決める」区切りを置くのが実務的です。たとえば週1回で8回といった形です。

STEP1
前の週に試したことを聞く

前回の題材を一人で使えたか、どこで止まったかを5分ほどで聞く。止まった場所が次の題材の候補になる。

STEP2
今週の題材を1つ決める

予定表と会議の一覧から、その週に片づける仕事を1つ選ぶ。選ぶのは経営層本人。

STEP3
経営層の手で打ち込んでもらう

メンター役は隣で見て、指示の書き方や材料の渡し方を言葉で伝える。キーボードを取り上げて代わりに打たない。

STEP4
答えの確かめ方を一緒にやる

数字や固有名詞を原典と突き合わせる、根拠を書かせる、という確かめる手順を毎回入れる。

STEP5
使った指示を手元に残す

うまくいった指示の文を、経営層が次に一人で使える場所に残す。記録の下書きはAIに作らせてよい。

3つ目の手順が要です。メンター役が代わりに作ってしまうと、資料はできても経営層が一人で使える日は来ません。手を動かすのは経営層、言葉で支えるのが若手という役割を、初回に両者で確かめておきます。

初回だけは、題材に入る前に15分ほど取って3つを確かめます。題材にしてよい情報の範囲、定例の時間以外の質問をどこで受けるか、何回目で続けるかを決めるか、の3つです。どれも後の節で詳しく書く内容ですが、二人の間で口に出して確かめておくと、遠慮から聞けないまま進むことを防げます。初回の題材は、15分ほどで結果が出る小さな作業にしておくと、最初の回で一人で使える手応えまで届きます。

経営層の入力をメンター役が見る場面の情報の扱い

この制度で最も気をつけるべきなのは、経営層が打ち込む内容を若手が隣で見ることです。経営会議の資料や営業数字は、若手が普段の業務では触れない情報を含みます。メンター役が見てよい範囲を、始める前に文書で決めておく必要があります。ここは公表された事例でも確かめられなかった部分なので、自社で決めるしかありません。

決めておくことは4つです。1つ目は題材にしてよい情報の区分で、公表済みの情報、社内向けの情報、未公表の情報や人事の情報を分け、どこまで扱うかを決めます。2つ目は、メンター役がその場で見た内容を口外しないという約束で、既存の守秘の決まりに当てはめるか、追加で書面を交わすかを決めます。3つ目は、使うAIの環境です。会社が認めた環境だけを使い、個人の契約のツールに経営層の資料を入れないことを確かめます。4つ目は、残した記録の置き場所と、誰が読めるかです。

未公表の決算の数字や組織変更の案のように、扱いの重い情報を題材にしたい場面は必ず出てきます。そのときは中身を伏せた架空の数字で手順だけ練習し、本物の数字は経営層が一人のときに入れるという分け方が使えます。公表前の情報をAIに入れてよいかの判断そのものは、公表前の情報を扱った別の記事で整理しています。どの情報を扱わせてよいかは、情報の持ち主と管理の責任者が決めることで、メンター役や推進担当がその場で判断することではありません。

メンター役の若手の時間と負荷をどう扱うか

週1時間でも、準備と記録を入れると若手の時間はもっとかかります。これを善意の課外活動として扱うと、繁忙期に真っ先に削られ、制度が自然に止まります。メンター役の時間を業務として認めるかどうか、認めるなら上限をどこに置くかは、本人の上司を含めて始める前に決めておきます。

もう一つの負荷は、メンター役に相談が集まり続けることです。経営層から日常的に個別の質問が届くようになると、若手は断りにくくなります。相談の受け方を決めずに詳しい人へ頼り続けると何が起きるかは、相談が一人に集まる問題を扱った別の記事で書いています。メンター役についても、定例の時間以外の質問はどこで受けるかを最初に決めておくと、負荷が見えるようになります。

メンター役の働きを人事評価に載せるかどうかは、AIの利用を評価に入れることの線引きと同じ論点を含むので、評価制度を扱った別の記事に譲ります。ここでは、評価に載せない場合でも、上司が業務時間として認めていることを本人に伝えるだけで続き方が変わる、という点だけ押さえておきます。

逆方向:経営層から若手へ何を返すか

博報堂DYグループの制度は、経営層が自分の経験知や知見を若手に返す相互補完型とされています。自社メディアの記事では、社長のメンター役を務めた社員が、AIを介して社長が何に悩み、どのような視点で意思決定しているのかに毎週触れられたことを、10年分の経験を一気に得たような感覚だったと語っています。

返すものを決めておかないと、制度は「若手が上に奉仕する時間」に見えてしまいます。返すものの例は、題材にした資料が会議でどう使われたか、その判断で何を重く見たか、得意先とのやり取りで何を気にしているか、といった話です。題材そのものが経営の判断に近いので、返す話の材料は毎回すでに机の上にあることになります。

同じ記事では、メンター役の社員に、会社全体のAI活用を自分が進めなければという当事者意識が生まれたことも紹介されています。推進担当の側から見ると、メンター役を経験した若手は、次の推進役の候補になるということです。制度の効果を経営層の側だけで測ると、この分を見落とします。

運営する側が持っておく3つの仕事

日経BPの記事によると、博報堂DYグループでは少人数の運営事務局を置いていました。事務局の規模は会社によって変わりますが、推進担当が持っておくべき仕事は3つに絞れます。対の組み合わせの案を作ること、情報の扱いの決まりを両者に渡すこと、区切りの時点で続けるかどうかの材料をそろえることです。

1つ目の組み合わせの案では、経営層の担当業務と、その業務でAIを使っている若手の名前を並べた一覧を作ります。一覧の下書きはAIに手伝わせてもかまいませんが、最終的に誰を誰に付けるかは、人事や各部門の長と相談して人が決めます。相性や職場の関係は、一覧の文字からは読み取れないからです。

3つ目の材料は、次の節で書く記録から作ります。事務局が中身の会話に立ち入る必要はありません。むしろ、何を話したかを事務局が細かく集めると、経営層もメンター役も率直に話しにくくなります。集めるのは回数と題材の名前くらいにとどめ、中身は二人の間に置いておくほうが続きます。

効いたかどうかの測り方:利用の記録と題材の数

博報堂DYグループは、経営層の月間AI利用回数で効果を示しました。自社でも、会社が認めたAI環境の利用の記録から、対象の経営層の利用回数を始める前と区切りの時点で比べるのが、最も手がかかりません。始める前の数字を取っておかないと、後で比べられないので、初回の前に必ず控えておきます。

ただ、回数だけでは足りません。メンター役と一緒にいる時間だけ使い、一人では使っていない状態でも回数は増えるからです。そこで2つ目の物差しとして、経営層が一人で使えるようになった題材の数を数えます。毎回の終わりに、前の週の題材を一人で使えたかを聞いているので、その答えを記録すれば数えられます。

3つ目は、経営層の振る舞いの変化です。会議でAIを使った資料が出たか、部下への指示にAIの使い方が含まれるようになったか。これは数えにくいので、区切りの時点で本人とメンター役に短く聞く形で十分です。利用の記録を経営層への報告にどうまとめるかは、経営層への利用報告を扱った別の記事で整理しています。数字の解釈をAIに任せず、根拠になった記録を人が見て判断します。

畳む・形を変える判断の基準

この制度は、ずっと続けることを目的にしないほうがうまくいきます。経営層が一人で使えるようになれば、対の役目は終わりです。区切りの時点で「続ける」「頻度を下げる」「畳む」の3つから選ぶと決めておくと、だらだら続いて若手の負荷だけが残る形を避けられます。

畳む目安は、前の節の2つ目の物差しで見ます。経営層が自分の定例の仕事で、メンター役なしに3つ程度の題材を回せるようになったら、月1回の相談に切り替えるか、終わりにします。逆に、何回たっても一人で使える題材が増えない場合は、対の組み方か題材の選び方が合っていない可能性が高いので、相手を替えるか、題材を選び直します。

経営層の側が忙しく、予定の取り消しが続く場合もあります。2回続けて流れたら、本人に続ける意思を確かめるのが無難です。続けるか畳むかは、経営層本人と推進の責任者が決めることで、利用回数の数字だけで機械的に決めるものではありません。数字は判断の材料であって、判断そのものではないからです。

始める前のチェックリスト

最初の1組を始める前に、次の項目が決まっているかを確かめます。すべてを完璧にそろえる必要はありませんが、情報の扱いと若手の時間の2つは、決まっていないまま始めると後から直しにくくなります。

  • 経営層の困りごとが知識の不足ではなく、自分の仕事で試す相手がいないことだと確かめた
  • 対は担当業務と担当顧客の重なりで組み、直属の関係を避けた
  • メンター役は、自分の業務で毎週使っていて、確かめる手順を説明できる人を選んだ
  • 1回目の題材は、経営層本人がその週に片づける仕事から選ぶと決めた
  • 題材にしてよい情報の区分と、メンター役が見てよい範囲を文書にした
  • 使うAIは会社が認めた環境だけにすると両者で確かめた
  • メンター役の時間を業務として認めるか、上限をどこに置くかを上司と決めた
  • 始める前の利用回数を控え、区切りの回数と続けるかを決める時点を置いた

このうち、情報の範囲、若手の時間、続けるか畳むかの3つは、推進担当だけでは決めきれないことが多い項目です。情報の持ち主、メンター役の上司、経営層本人と一度ずつ確かめておくと、始めてから止まる理由を先に潰せます。

まとめ

経営層がAIを使わない理由が、知識の不足ではなく、自分の仕事を一緒に試す相手がいないことにあるなら、研修を厚くするより、若手を隣に付けるリバースメンタリングのほうが届きます。博報堂DYグループの例は、担当業務の近い若手を付け、経営層の手元の仕事を題材にする組み方を示しました。ただしそれは1社の発表で、数字もテストケースの値です。題材の候補出しや記録の下書きはAIに手伝わせてかまいませんが、誰を誰に付けるか、扱わせてよい情報の範囲、若手の時間の認め方、続けるか畳むかは人が決める。始める前の利用回数を控え、一人で使える題材の数で自社の結果を測ってから、次の組へ広げてください。

  • 博報堂DYグループの制度の内容と数字は、博報堂DYホールディングスのニュースリリース(2025年8月4日、2026年3月2日、2026年3月)と、博報堂の自社メディアの記事(2026年10月1日掲載)に基づきます。月間AI利用回数の約3倍は、テストケースでの値です
  • 最初の対象者の人数、2025年12月末時点の利用状況、メンター役の選び方と運営事務局については、日経BPの取材記事(2026年2月26日掲載)に基づく二次情報です
  • 制度の内容は変わる可能性があるため、参考にする前に最新の公式情報を確かめてください

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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