AIエージェント研修で何を教えるか|使う研修と作る研修の線

「生成AIの研修はひととおり終えたので、次はAIエージェントの研修を入れたい」「エージェントを作れる人を増やせと言われたが、誰に何を教えればいいのか決められない」。研修を設計する立場の人が、次の一手を考えるところでつまずきやすい問いです。ここで選ばれがちなのが、これまでのチャットの研修に「エージェント編」の章を足して済ませるやり方です。けれどもAIエージェントの研修は、チャットの研修に章を足すことではありません。本当は、使う人・作る人・承認して止める人で、教える中身も修了の意味も変わるものです。この記事では、受講者を3つに分け、それぞれに教える中身・演習の材料・到達点・修了後に渡す権限を比べて、研修の線をどこに引くかを整理します。
カメ先生エージェントの研修って、チャットの研修の上級編だと思われがちなんだ。でも本当は、教える相手が違う。毎回の答えを読む人だけじゃなく、作る人と、動かしてよいかを決めて止める人が出てくるんだよ。
カメ子同じ研修を全員が受ける、という形にはならないということですか。
カメ先生そう。使う人は止め方と戻し方、作る人は動かす前に止まる条件を書くこと、承認する人は記録を読んで通さない判断をすること。中身も、終わったあとに何を任せるかも別々になる。
カメ子研修を終えたら作ってよい、とは限らないんですね。
- AIエージェントの研修は、チャットの研修の続きではない。人が毎回の答えを読む前提が外れるので、教える中心が「任せる範囲・止め方・記録の読み方」に移る
- 受講者は職位ではなく関わり方で、使う人・ノーコードで作る人・承認して止める人の3つに分け、教える中身・演習・到達点・修了後の権限を変える
- 研修の修了をそのまま作成や本番の権限にしない。誰に作る権限を渡すか、演習の接続先、本番の承認、効果の判定は人が決める
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
チャットの研修に章を足しても、エージェントの研修にならない理由
生成AIの研修の多くは、チャットの画面で指示を書き、返ってきた答えを人が読んで使う、という形を前提に組まれています。指示の書き方、答えの確かめ方、入力してはいけない情報といった中身は、どれもこの前提の上にあります。人が毎回の答えを読んで、使うかどうかを決めるので、間違いが起きても人の目で止まる仕組みが最初から入っているわけです。
AIエージェントでは、この前提が外れます。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版(2026年3月31日)は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定めました。注記では、自律とは高度な状態だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含むとしています。目標を渡すと、途中の手順を自分で組み、社内のシステムや外部のサービスに読み書きしながら進む。人が途中の一つ一つを読まないという点が、チャットとの一番大きな違いです。
だから研修で教える中心も変わります。チャットの研修の中心が「良い答えを引き出し、読んで確かめる」ことなら、エージェントの研修の中心は、何を任せ、どこで止め、何が起きたかを記録で確かめるかです。指示の書き方の章をいくら厚くしても、この3つは身につきません。章を足すのではなく、受講者ごとに中身を組み直すことになります。
デジタルスキル標準2.0は、エージェントをどこに置いたか
情報処理推進機構と経済産業省が2026年4月16日に公開したデジタルスキル標準の2.0版について、プレス発表は「AI実装・運用やAIガバナンスなどに関するスキルも追加しました」と説明しています。本文を読むと、DXを進める専門人材向けのDX推進スキル標準の共通スキルリストに「AI実装・運用」というスキル項目が置かれ、その説明は、生成AI、AIエージェント、マルチモーダルなどのAIシステム開発を実装し、運用管理を現場に定着させるスキル、となっています。
もう1か所、社内の他のシステムや外部のサービスとのデータ連携・システム連携を扱う「サービス活用」のスキル項目でも、学習項目の例にローコード/ノーコードと並んでAIエージェントが挙がっています。どちらも専門人材の側の項目です。一方、すべてのビジネスパーソンを対象にしたDXリテラシー標準の部分では、公開されている本文を読む限り、AIエージェントという語は出てきません。
ここから読み取れるのは、標準はエージェントを「作って運用する人の技能」として置いたということです。全員が使う側の技能や、承認して止める側の技能は、標準の項目からそのまま引けません。標準の役割を自社の役割表に移す作業は別の記事で扱っているので、ここでは「使う人と承認する人に教える中身は、自社で決める部分が大きい」とだけ押さえておきます。
承認する人に近い項目を標準の中で探すと、同じカテゴリーの「ガバナンス体制の構築・運用」というスキル項目があり、学習項目の例にAI倫理、ガイドライン整備、責任あるAI管理、推進・運用を含むAIガバナンスが並んでいます。ただしこれも、規程や体制を整える専門人材の技能として書かれたものです。部署の責任者が承認の当番として、1件の承認依頼を読んで通すか差し戻すかを決める技能までは、細かく書かれていません。そこは研修を設計する側が自社の承認の流れから起こす部分です。
AI事業者ガイドラインが求める「関わりに応じた」リテラシー
AI事業者ガイドラインは、各主体が取り組む事項の一つに「教育・リテラシー」を置き、「各主体内のAIに関わる者が、その関わりにおいて十分なレベルのAIリテラシーを確保する」ための措置を求めています。全員に同じ水準を求めるのではなく、関わり方に応じた水準を求める書き方です。研修の対象を一律にせず、関わり方で分けて考える根拠として読めます。
同じガイドラインは、AIを使う側について、人間の判断を介在させることで予期せぬ事故を防ぐこともできる、と書いています。公平性の項目では、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討し、その判断が自動化バイアスに左右されないような対策を講じるべきだ、としています。自動化バイアスとは、自動化された仕組みを信じすぎて、人の判断がそれに引きずられることです。
研修の設計に引き直すと、承認して止める人を独立した受講者として扱う理由になります。承認の欄に名前がある人が、エージェントの出した結果を毎回そのまま通していれば、人の判断は形だけになります。承認する人に教えるべきは、AIの使い方ではなく、通さない判断の材料の読み方です。
受講者は職位ではなく、関わり方で3つに分ける
ここからは受講者を3つに分けて考えます。1つ目は使う人です。社内で用意されたエージェントに仕事を渡し、結果を受け取ります。2つ目はノーコードで作る人です。部署の業務に合わせて、画面の操作でエージェントを組み、指示やつなぐ先を設定します。3つ目は承認・監督する人です。エージェントが外に影響する操作をする前に承認し、動いた記録を見て、必要なら止めます。
分ける軸は職位ではありません。課長が自分でエージェントを作ることもあれば、若手が承認の当番を持つこともあります。1人が2つ以上の区分を兼ねるのも普通です。研修の名簿は役職の一覧からではなく、誰が何に関わるかの一覧から作るのが出発点になります。役職ごとに中身を変える階層別の設計は別の記事で整理しているので、ここでは関わり方の軸だけを扱います。
このうち誰を「作る人」に入れるかは、研修の担当が決めることではありません。作る人は、社内のシステムに読み書きする仕組みを組む人です。どの部署の誰に作る権限を渡すかは会社の判断で、研修はその判断のあとに来ます。名簿を作る前に、AI推進の責任者と情シスで、作る人の範囲を決めておきます。
区分を兼ねる人の受け方も、名簿の段階で決めておきます。作る人は、自分が作ったエージェントを最初に使う人でもあるので、使う人の中身は作る人の研修の冒頭に含めてしまえます。一方、作る人が自分の作ったものを承認する形は避けます。作った本人は止まる条件の抜けに気づきにくいからです。承認の当番は、同じ部署でも作った人とは別の人に置き、その人に承認する人の研修を受けてもらいます。
3つの区分を1枚の表で比べる
3つの区分について、教える中身・演習の材料・到達点・修了後に渡す権限を並べると、次のようになります。中身の細かさは会社によって変わりますが、区分ごとに右端の列が違うことは、どの会社でも変わりません。
| 区分 | 教える中身 | 演習の材料 | 到達点 | 修了後に渡す権限 |
|---|---|---|---|---|
| 使う人 | 任せてよい仕事と渡さない情報、途中で止める操作、結果と記録の確かめ方、人に戻ってきたときの引き継ぎ先 | 研修用の環境に置いたエージェントに、条件の欠けた依頼をわざと渡す | 途中で止め、どこまで進んだかを記録で確かめ、人の作業に戻せる | 社内で用意された既存のエージェントを使う権限まで |
| ノーコードで作る人 | 任せる範囲の書き方、止まる条件と人に戻す条件、読むだけの接続と書き込む接続の違い、試験の題材の作り方 | 本番と切り離した環境、読むだけに絞った接続先、実例を伏せ字にした題材 | 研修用の環境で1体を作り、止まる条件を文章で示し、試験の結果を説明できる | 研修用の環境での作成まで。本番での作成は別の審査を通してから |
| 承認・監督する人 | 承認依頼の読み方、記録のたどり方、止める操作と連絡の順番、通さない判断の基準 | 過去の承認依頼を再現し、誤りを紛れ込ませた教材 | 承認依頼から誤りを見つけて差し戻し、止める操作と連絡ができる | 担当業務の範囲に限って、承認の当番に入る資格 |
研修を設計するときは、教える中身から考え始めがちです。けれども修了したら何を任せるのかを先に決めると、教える中身と演習の重さが自然に決まります。逆に、修了後に渡すものが決まっていない研修は、到達点もぼやけ、終わったあとに受講者が何をしてよいのか分からなくなります。
使う人に教えること:任せた仕事を止めて、人に戻す
使う人の研修は短くてかまいません。ただし中身はチャットの研修と違います。教えるのは4つです。どの仕事なら渡してよく、どの情報は渡さないか。動いている途中で止める操作。結果と、途中で何をしたかの記録の確かめ方。そして、エージェントが自分で判断できずに人に戻してきたとき、誰に引き継ぐかです。
演習の材料には、うまくいく例よりもうまくいかない例を選びます。たとえば社内の問い合わせ記録をまとめさせる依頼で、対象の期間を書き漏らす。顧客の名前が入った資料を渡しかける。エージェントが途中で確認を求めてくる。こうした場面を研修用の環境で再現し、受講者に止めさせ、記録を読ませます。正しい答えが出る演習だけでは、止める練習になりません。
到達点は「使いこなせる」ではなく、途中で止め、どこまで進んだかを記録で確かめ、人の作業に戻せることに置きます。修了後に渡すのは、社内で用意された既存のエージェントを使う権限までです。新しいつなぐ先を足したり、指示を書き換えたりする権限は含めません。それは次の区分の話です。
ノーコードで作る人に体験させること
作る人の研修で陥りやすいのは、「1体作れた」を到達点にすることです。ノーコードの道具では、画面の操作で動くものが短い時間でできてしまいます。動くものができると受講者も講師も満足しますが、それは本番に出してよいものとは別物です。研修で体験させたいのは、作る操作よりも、動かす前に、任せる範囲と止まる条件を文章で書くことです。
具体的には、エージェントに渡す仕事を1つ決め、その仕事で「やってよいこと」「やってはいけないこと」「迷ったら人に戻すこと」を書かせます。次に、過去の実例から作った10件ほどの題材で試し、止まるべきところを越えた題材がいくつあったかを数えさせます。数が合わなければ、指示や設定を直して同じ題材で試し直します。直して測り直す一巡を研修の中で1回は通すことが、作る人の研修の芯です。
作るときの工程の全体像や、内製と外注の分かれ目は、AIエージェントを自社で作ることを扱った記事で整理しています。研修ではそれを章立てにして順に講義するより、受講者の手で小さく一巡させ、どこで詰まったかを持ち帰らせるほうが残ります。講師が説明するのは、詰まった場所の理由だけで足ります。
作る人の演習は、どこで止めさせるか
作る人の演習で最も大事なのは、どこまでやらせて、どこで止めるかです。社内のシステムにつながるエージェントを、研修の時間内に本番の環境で組ませてはいけません。演習で使う接続先、扱ってよいデータ、エージェントに持たせる権限の範囲は、情シスが研修の外で先に決めてから、演習に入るのが順番です。順番は次の4段になります。
本番と切り離した環境を情シスが用意し、使えるサービスと使える期間を決める。研修が終わったら環境をどうするかも、このときに決めておく。
演習でつなぐ先は、まず読むだけにする。書き込む接続を試すなら、講師の前で1回だけ、取り消せる操作で行う。
顧客名、個人名、公表前の数字を伏せた複製を使う。本物の記録は演習に持ち込まない。
研修で作ったものは研修用の環境に残す。本番で動かすかどうかは、その業務の持ち主の承認に回す。
最後の段が抜けやすいところです。研修で作ったエージェントがよくできていると、そのまま本番で使いたくなります。けれども本番で動かすかを決めるのは、研修の講師ではなく、その仕事を持っている部署の責任者です。研修の成果物は「承認に出す候補」までと決め、承認の窓口を研修の案内に書いておくと、終わったあとに成果物が宙に浮きません。
承認・監督する人に教えること
3つ目の区分は、研修の対象から漏れやすい人たちです。自分では作りも使いもしないが、エージェントが外にメールを送る前、データを書き換える前、発注をかける前に承認する人。動いた記録を定期的に見て、おかしければ止める人。部署の責任者や、各部署のAI推進の窓口がここに入ることが多いはずです。
教えるのは、承認依頼の何を見るか、記録をどうたどるか、止める操作と、止めたあとに誰へ連絡するかです。演習では、過去の承認依頼を再現した教材に、宛先の誤りや対象期間のずれといった誤りを紛れ込ませ、見つけて差し戻させます。通す練習ではなく、通さない練習に時間を使います。正しい依頼を何件も続けて見せたあとに誤りを1件混ぜると、自動化バイアスがどう働くかを受講者が自分で体験できます。
到達点は、承認依頼から誤りを見つけて差し戻し、止める操作と連絡が一人でできることです。修了後には承認の当番に入る資格を渡しますが、範囲は担当業務に限ります。どの操作に承認を挟み、任せる範囲をどう段階的に広げるかは、権限を広げる工程を扱った別の記事で整理しています。
研修の修了を、そのまま権限にしない
研修を企画すると、「修了した人に作る権限を渡す」という形にしたくなります。分かりやすく、受講の動機にもなるからです。けれども研修の修了が示すのは、決められた時間に決められた演習を通ったことまでです。その人の担当する業務、つなごうとしているシステム、扱うデータの重さは、研修の中では見ていません。
そこで、修了は権限の条件の1つにとどめ、渡すかどうかは別に決めます。作る人なら、修了に加えて、作りたい業務の持ち主の同意、情シスによる接続先の確認、最初の1体を承認に出したときの結果を見てから、本番での作成権限を渡す、といった組み合わせです。研修の修了を権限の条件にするかどうか自体も、会社が決めることです。研修の担当が決めて案内に書いてしまうと、あとで情シスや業務の持ち主と食い違います。
逆向きの決まりも要ります。修了から時間がたった人、異動して担当業務が変わった人、作ったエージェントで事故を起こした人の権限をどう扱うか。外部の講座の修了証を、社内の修了と同じに扱うか。研修の設計と同時に、権限の側の表を1枚作り、AI推進の責任者と情シスで持っておくと、研修の案内がぶれません。
研修を始める前に、研修の外で決めておくこと
ここまでの話をまとめると、研修の中身より先に決めることがいくつもあります。しかもその多くは、研修の担当ではなく別の人が決めます。研修の企画書に「決める人」と「決めた日」を書く欄を作り、そこが埋まってから講師や外部の会社と中身の相談に入ると、途中で止まりません。
- 誰にエージェントを作る権限を渡すか、その範囲(会社。AI推進の責任者が持つ)
- 研修の修了を権限の条件にするか、何と組み合わせるか(会社)
- 演習の環境、つなぐ先、扱ってよいデータ、エージェントに持たせる権限(情シス)
- 研修で作られたエージェントを本番で動かすときの承認の窓口(業務の持ち主)
- 研修の効果を何で判定するか(人材育成の担当と業務の持ち主)
最後の効果の判定も、研修の外で決めておく項目です。使う人なら止める操作が実際にできたか、作る人なら承認に出して通った数、承認する人なら差し戻しの記録、といった具合に、区分ごとに見るものが違います。受講者アンケートの満足度だけで3区分をまとめて判定しないことが大事です。測り方の詳しい組み立ては、AI研修の効果測定を扱った別の記事で整理しています。
演習の材料は、自社の実物から作って伏せる
エージェントの研修で外部の講座の教材をそのまま使うと、題材が自社の仕事と合いません。架空の通販サイトの問い合わせや旅行の予約を題材にしても、受講者の部署にある承認の流れや、つなぐシステムの癖は出てこないからです。演習の材料は、自社の仕事の実例から作るのが基本です。
材料にしやすいのは、過去に人が処理した依頼とその結果の組です。社内の申請、問い合わせの記録、定例の集計といった、毎月同じ形で起きる仕事が向いています。使う人の演習では依頼の文面を、作る人の演習では依頼と正しい結果の組を、承認する人の演習では承認依頼の形に直したものを使います。1つの元の材料から、3つの区分の教材を作り分けると、準備の手間が減り、区分をまたいだ受講者も話がつながります。
実例を使う以上、伏せる作業は欠かせません。顧客名、個人名、金額、公表前の数字は置き換え、置き換えたことを教材に明記します。伏せた材料を研修用の環境に入れてよいかは、情シスと個人情報の担当に確かめてから使います。伏せたつもりで残るのは、ファイル名や表の見出し、添付の中の署名です。
研修の準備にAIを使う範囲
研修の準備そのものにも生成AIは使えます。教材の下書き、演習の題材の案、理解度を確かめる問題の下書きまでは、AIに出させて人が直す形で進められます。たとえば、伏せ字にした実例を渡して、承認する人の演習用に「誤りを1つ含む承認依頼」を10通り作らせる、といった使い方です。
ただし、AIに決めさせない線ははっきり引いておきます。誰に作る権限を渡すか、演習の接続先とデータと権限の範囲、本番で動かす承認、研修の効果の判定は人が決める。AIが作った確認問題も、正解の根拠が教材のどこにあるかを書かせ、人が照らし合わせます。根拠が示せない問題は使わないと決めておくと、もっともらしい誤りが教材に紛れ込みません。
実例をAIに渡すときは、伏せ字にしたあとの材料だけを、社内で使ってよいと決められたサービスに渡します。研修の準備だからといって、本物の記録をそのまま渡してよいことにはなりません。誤りを紛れ込ませた教材も、どこにどんな誤りを入れたかの正解表は人が作り、講師だけが持ちます。
エージェントの研修でよくある崩れ方
エージェントの研修でつまずく形は、だいたい決まっています。どれも、研修の外で決めるべきことを研修の中で済ませようとしたところから起きています。
- 生成AI研修の最終回に「エージェント編」を1コマ足し、全員に同じ中身を配る
- 「1体作れた」を修了の条件にし、修了者にそのまま本番での作成権限を渡す
- 演習で本番の顧客管理の仕組みに書き込める接続を使い、研修中に本物のデータが書き換わる
- 研修で作ったエージェントを講師が「よくできている」と判断し、業務の持ち主の承認を経ずに使い始める
- 承認する人を研修の対象から外し、承認の欄が毎回そのまま通る
5つ目は、外から見えにくい崩れ方です。使う人と作る人の研修は人数が多く目立ちますが、承認する人は少なく、忙しく、研修の案内が届きにくい層です。承認する人の研修は短くてよいが、省いてはいけない。1時間の判断演習でも、承認依頼のどこを見ればよいかを知っている人が当番に入るかどうかが変わります。
2つ目と4つ目は、研修の担当が善意で起こす崩れ方です。受講者の成果を早く業務に生かしたいという思いが、権限と承認の手順を飛ばさせます。研修の成果を本番に移す道筋は、研修の外にあると最初に案内しておくと、受講者も講師も迷いません。
よくある質問
全員に作る研修を受けさせるべきですか
その必要はありません。全員に要るのは使う人の中身で、作る人は会社が作る権限を渡すと決めた人に絞ります。作る人を増やしたいという方針があっても、名簿は権限の判断のあとに作ります。全員に作る研修を配ると、作る権限のない人が研修用の環境の外で同じことを試し始める、という別の問題を生みやすくなります。
技術者でない人に作らせても大丈夫ですか
ノーコードの道具を使えば、技術者でなくても組むことはできます。大丈夫かどうかを分けるのは技術の経験ではなく、つなぐ先と持たせる権限の範囲が先に決まっているかどうかです。情シスが研修用の環境と読むだけの接続先を用意し、本番は業務の持ち主の承認を通す、という線が引けていれば、技術者でない人を作る人に入れても事故の芽は小さくできます。
外部の講座を使うなら、何を確かめればよいですか
演習の環境を誰が用意するか、教材を自社の題材に差し替えられるか、受講者を区分ごとに分けられるか、の3点です。広告の文言や作れる日数で選ばず、自社の情シスが決めた接続先とデータの範囲で演習ができるかを確かめます。修了の扱い、つまり修了を社内の権限にどう結びつけるかは、講座の側ではなく自社で決めます。内製と外部の講座の分け方そのものは、別の記事で整理しています。
チャットの生成AI研修をまだ受けていない人も対象にできますか
使う人の研修なら対象にできますが、入力してはいけない情報や、答えをそのまま信じない姿勢といった、チャットの研修で扱う基礎は先に押さえてもらいます。エージェントの研修はその上に、任せる・止める・記録を読む、を足すものです。基礎を飛ばすと、渡してはいけない情報をエージェントに渡す、という形で事故が大きくなります。
まとめ
AIエージェントの研修は、チャットの研修に章を足すことではありません。エージェントは人が途中の一つ一つを読まずに動くので、教える中心が、何を任せ、どこで止め、何が起きたかを記録で確かめるかに移ります。デジタルスキル標準の2.0版はエージェントを作って運用する専門人材の技能として置き、AI事業者ガイドライン第1.2版は関わりに応じたリテラシーと人間の判断の介在を求めています。受講者を使う人・ノーコードで作る人・承認して止める人に分け、修了したら何を任せるかを先に決めてから、中身と演習を組むのが線の引き方です。教材の下書きや演習の題材案はAIに任せてかまいませんが、誰に作る権限を渡すか、演習の接続先とデータの範囲、本番で動かす承認、効果の判定は人が決めます。研修の企画書を開く前に、まずその4つを誰が決めるかを書き出してください。
- デジタルスキル標準の記述は、情報処理推進機構のプレス発表(2026年4月16日)と、公開されているデジタルスキル標準2.0版の本文(2026年4月)に基づきます
- AI事業者ガイドラインの記述は、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)に基づきます
- 受講者の区分、演習の進め方、修了と権限の組み合わせは、研修を設計するときの考え方の一例です。実際の権限や接続の範囲は、自社の規程と情シスの判断に従ってください
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
