海外調査はAIでどこまで回せる?|国ごとの差は人が見る

「海外進出の前に現地の声を聞きたいが、調査会社に頼むと高くて時間もかかる」「AIで各国に聞けるなら、国ごとの数字を並べて比べればいいのでは」。海外の販路を探る商品企画やマーケの担当の方からは、この二つがよく一緒に聞かれます。2026年7月30日、楽天インサイトは、依頼する側が日本語で入稿するだけで、AIがチャットで世界40以上の国と地域の生活者に聞く調査を始めました。聞く、訳す、まとめるという工程は、確かにAIの側に寄ってきています。ただ、AIで回せるようになったのは聞くところまでで、比べてよいかの判断ではありません。本当は、国をまたいで数字を比べてよいかを決めるのは、今も人の仕事です。この記事では、海外調査の工程をAIに寄った所と人に残る所に分け、設問の訳の確かめ方、国ごとの回答の癖の扱い、少人数の結果の使い方、意思決定への渡し方までを整理します。
カメ先生海外調査は言葉の壁がいちばんの手間だと思われがちなんだけど、本当に難しいのは、同じ設問が国ごとに同じ意味で届いているかなんだ。
カメ子訳が正しくても、意味がずれることがあるということですか。
カメ先生そう。「満足」のような評価の言葉は国によって重みが違うし、5段階評価の付け方にも国ごとの癖がある。AIは聞いて訳してまとめるところまでは速いけれど、平均点を並べて比べてよいかまでは判断しないんだ。
カメ子聞くのはAI、比べてよいかを決めるのは人、という分け方なんですね。
- 設問の各国語への下書き、チャットでの聞き取り、現地語の回答の要約と分類、画像の文字起こしは、AIに寄った工程として任せられる
- 設問の訳が同じ意味か、国ごとの回答の癖を前提に比べてよいか、どの国の結果で何を決めるかは、人が先に決めて確かめる
- 国の平均点を1枚のグラフに並べる前に、訳の確かめ方、回答の癖の扱い、人数の限界を報告に書き添える
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日本語で入稿するだけで、40以上の国と地域に聞ける形が出てきた
楽天インサイトは2026年7月30日、海外の生活者にAIがチャットで聞くインタビュー調査の運用開始を発表しました。発表によると、対象は世界40以上の国と地域で、1市場あたり100名規模、入稿から最短5営業日で結果を納品するとしています。依頼する側の作業は日本語での入稿だけで、回答者は提携パネルを含む1億人以上のパネルから集めます。
回答者が送った画像をAIで文字の情報に変え、定量の分析にも使えるとしている点も特徴です。同社のサービス案内では、納品は日本語と現地語の両方に対応すると説明されています。楽天グループの発表では、国内向けの同じ形の調査を2024年から提供しており、その反響を受けて海外に広げたという位置づけです。
ここで押さえたいのは、個別の製品の良し悪しではなく、海外調査の手間の重心が動いたことです。これまで時間と費用の多くは、設問を各国語にする作業、現地の聞き手の手配、現地語の回答を読む作業にかかっていました。その部分がAIに寄ったことで、残った判断が目に見えるようになりました。AIが聞き手になる調査そのものの向き不向きは別の記事で扱っているので、本稿は国をまたぐときにだけ起きることに絞って整理します。
海外調査を工程に分けると、国と国のあいだの判断が残る
海外調査を工程に分けて、AIに寄ったことと人が決めることを並べると、次のようになります。
| 工程 | AIに寄ったこと | 人が決めること |
|---|---|---|
| 国と対象者を決める | 候補国の公開情報の整理 | どの国に聞くか、どの国の結果で何を決めるか |
| 設問を作る | 言い回しの下書き | 何を確かめるための調査か |
| 設問を各国語にする | 各国語への訳の下書き | 訳が同じ意味になっているか |
| 実査 | チャットでの聞き取りと深掘り | 深掘りする範囲と、聞かない話題 |
| 現地語の回答を読む | 日本語への訳、要約、分類、画像の文字起こし | 要約が原文の回答と合っているか |
| 国ごとに集計する | 集計表とグラフの作成 | 国の数字を並べて比べてよいか |
| 結論を出す | 報告の下書き | どの国で何をするか |
右の列に共通するのは、どれも国が違うと前提が違うことに関わる判断だという点です。同じ国の中の調査であれば暗黙のうちにそろっていた言葉の意味、答え方の癖、暮らしの文脈が、国をまたぐと一つずつ崩れます。AIはそれぞれの国の中の作業を速くしますが、国と国のあいだにある前提の違いを埋めてはくれません。
なお、海外マーケティング全体の中でどの国を選ぶかの軸は、海外BtoBマーケを始める段階を整理した別の記事で扱っています。本稿は、国の候補が決まった後に、その国々に聞く調査をどう回し、どこを人が確かめるかだけを扱います。
AIに寄った工程は、一つの国の中で閉じる作業
一つ目は設問の各国語への訳です。日本語で書いた設問を、回答者の言葉に置き換える下書きはAIが速く作ります。これまでは国の数だけ翻訳の手配が要り、訳の確認待ちで日程が延びがちでした。下書きが数分で出るようになったことで、人は訳を確かめる作業そのものに時間を回せます。
二つ目は実査です。チャット形式であれば、AIが同時に複数の回答者と話し、答えに応じて深掘りの質問を返します。時差のある国でも聞き手や通訳の日程を合わせる必要がなく、国の数が増えても段取りは大きく変わりません。
三つ目は、現地語の回答を日本語にし、要約し、分類する作業と、回答者が送った画像の文字起こしです。自由な発言が数百件集まっても、話題ごとの束に分ける下書きはAIが作ります。
この三つに共通するのは、正解を原文に戻って確かめられることです。訳は元の設問と、要約は元の発言と照らせば当否が分かります。ここはAIに任せ、人は抜き取りで原文と照らす役に回るのが基本の分担になります。
人に残る工程は、国と国のあいだにある
人に残るのは、原文に戻っても正解が一つに決まらない判断です。代表的なものを4つに分けると、次のようになります。
- 訳の等価性:各国語の設問が、回答者にとって同じことを聞かれたと受け取れる文になっているか
- 回答の癖:5段階評価の端を付けやすい国、真ん中に寄りやすい国があるのを前提に、数字を並べて比べてよいか
- 現地の文脈:同じ答えでも、その国の暮らしや商習慣の中で意味が変わらないか
- 国の選び方と結論:どの国に聞き、どの国の結果をもとに何を決めるか
4つとも、AIに聞けばもっともらしい答えが返ってきます。しかし、その答えが正しいかを確かめる物差しがAIの外にしかありません。訳が同じ意味かは現地の言葉と暮らしが分かる人にしか判断できず、比べてよいかは調査の目的を知る人にしか決められません。
このため、海外調査にAIを入れるときは、人が確かめる場所を工程表に先に書き込むことから始めます。AIの速さに合わせて工程を詰めると、確かめる時間が真っ先に削られるからです。
設問の訳は、言葉でなく意味がそろっているかを見る
訳が文法として正しいことと、回答者が同じことを聞かれたと受け取ることは別の問題です。たとえば「この商品は便利だと思いますか」の「便利」は、手間が省けるのか、持ち運べるのか、どこでも買えるのか、国によって思い浮かべるものが違います。「家族」がどこまでの範囲を指すか、「普段」がどのくらいの頻度かも、国で揺れます。
AIの訳は自然に整った文で出てくるため、意味のずれが目につきにくいという弱点があります。滑らかな訳ほど、疑われずに通ってしまうのです。読みやすさと、測りたいことが測れているかは別の物差しで見ます。
確かめやすくするには、設問ごとに何を測るための設問かを日本語で短く添えておきます。「便利=買ってから使うまでの手間の少なさ」のように書いておけば、各国語の訳を見る人が、意味がそろっているかを判断する基準になります。注記が無いと、訳を見る人は言葉の正しさしか確かめられません。
訳し戻しだけで、確かめたことにしない
訳の確認でよく使われるのが、各国語にした設問を日本語に訳し戻して、元の設問と見比べる方法です。手軽ですが、これだけで確かめたことにはなりません。質問票の翻訳手順を扱った2023年の論文は、先行研究を引いて、訳し戻しの段階でも誤りは起きること、訳し戻しを使うと元の文に寄りすぎた訳になりうることを指摘しています。
AIで訳し、同じAIで訳し戻す場合は、さらに注意が要ります。往きと帰りで同じ解釈が使われると、意味のずれがあっても元の日本語にきれいに戻ってしまい、ずれが見えないまま確認済みになるおそれがあります。
同じ論文が紹介しているのは、複数の訳者が別々に訳して見比べ、話し合い、決まらない点は別の人が裁定し、対象となる人で試し、判断を記録に残す手順です。訳し戻しは、ずれに気づく手がかりの一つとして残してかまいません。決め手は、現地の言葉と暮らしが分かる人の目と、少人数で実際に試すことです。
同じ論文では、訳す側の顔ぶれもそろえています。言葉の専門家だけでなく、調べる主題に詳しい人と、調査票の作り方に詳しい人を入れ、話し合いを進める役と、最後に決める役を分けています。AIで訳の下書きを作る場合も、見比べる側にこの3つの目がそろっているかを確かめると、言葉は正しいが測りたいことから外れた訳を拾いやすくなります。
設問の訳を確かめる5つの手順
前の節の手順を、AIを使う海外調査に合わせて組み直すと、次の5つになります。
最短5営業日で結果が出る調査でも、この5つの手順の時間は別に要ります。実査の速さと、設問を固める時間は分けて日程に入れるのが、AIで速くなった調査を急ぎすぎないための要点です。
評価の言葉を使う設問ほど、国でずれる
設問には、事実や行動を聞くものと、評価を聞くものがあります。「この半年に買ったか」「いくら払ったか」「どこで買ったか」は、訳のずれが比較的起きにくい設問です。一方、「満足していますか」「品質が良いと思いますか」「信頼できますか」のような評価の言葉を使う設問は、言葉の重みが国によって違い、ずれが起きやすくなります。
そこで、国の比較に使う設問は、事実と行動を聞く形に寄せるのが一つの方法です。評価を聞く設問は残してかまいませんが、国の中で商品同士を比べる用に回し、国と国を並べる用途からは外しておきます。
価格の評価も同じです。「高い」「安い」の基準は、所得や物価、比べる相手の商品によって国ごとに違います。金額を聞く場合は現地の通貨のまま集め、どう換算して比べるか、そもそも比べるかは人が決めます。AIに換算と比較をまとめて任せると、前提が報告に残りません。
自由に答えてもらう設問も、国の比較に使うときは注意が要ります。AIが各国の回答を日本語にそろえて分類すると、話題の数を国ごとに数えた表がすぐにできます。ただ、ある話題が少ない国は、その話題に関心が薄いのではなく、聞き方の訳が違って話題が引き出されなかっただけかもしれません。話題の数の差を読む前に、その話題を引き出した設問の訳を見直します。
5段階評価には、国ごとの付け方の癖がある
同じ気持ちでも、5段階のどこに印を付けるかには国ごとの傾向があります。国際経営の研究者が26か国で回答の傾向を比べた研究(2006年発表)では、同意する側に付けやすいか、端を選びやすいか、真ん中を選びやすいかに、国による大きな差が見られました。報告によると、日本は26か国の中で同意する側に付けにくく、真ん中を選ぶ傾向が最も強かったとされ、南欧や中南米では同意する側に付けやすい傾向が見られています。
同じ紹介では、北欧や西欧は同意する側に付けにくい傾向、中国や香港は真ん中を選ぶ回答が多い傾向、マレーシアやインドは同意する側と端を選びやすい傾向として整理されています。同じアジアの中でも癖の向きは一つではないということです。地域でひとまとめにして補正の方向を決めると、かえってずれを大きくするおそれがあります。
この癖があると、日本の平均点が他の国より低く出ても、商品の評価が低いのか、付け方が控えめなだけなのかを、数字だけでは見分けられません。平均点の差には、評価の差と付け方の差が混ざっていると考えておく必要があります。
同じ研究者は、英語の調査票で聞くと国の差が小さく出ることも報告しています。母語で聞くことは、それぞれの国の回答をゆがめないための前提です。AIで現地語の設問を手早く作れるようになったことは、この点では良い方向に働きます。
ただし、癖は国の中でも人によって違います。国の傾向を「この国の人はこう答える」と決めつける材料にはせず、比べ方を選ぶときの注意点として扱います。
国の平均点を並べる前に、人が決めること
回答の癖を前提にすると、国の比べ方にはいくつかの選択肢があります。一つは、比べたいものを点数でなく順位で聞く方法です。先の研究者は、順位づけで聞くと回答の癖の影響を取り除けると述べています。複数の候補の中でどれを選ぶかを知りたい場合に向きます。
二つ目は、平均点でなく、上位の選択肢を選んだ人の割合と、回答の分布の形を並べる方法です。三つ目は、国の中で商品Aと商品Bを比べ、その差の向きが国をまたいで同じかを見る方法です。国の間で絶対の水準を比べず、国の中での順番を比べるので、付け方の癖の影響を受けにくくなります。四つ目は、国の比較には使わず、国ごとに読むと割り切る方法です。
どれを選ぶかは、調査の目的を知る人が決めます。避けたいのは次のような進め方です。
- AIのまとめに比較の結論を書かせる:「A国の方が満足度が高い」という文が、そのまま報告の結論欄に入る
- 国別の平均点を1枚のグラフにして回す:付け方の癖の注記がなく、読む人が差を評価の差と受け取る
- 比べ方を集計の後で決める:差が大きく見える並べ方が後から選ばれ、結論が先に決まってしまう
AIには分布の表や国ごとの集計を作らせ、比べ方と比較の結論は人が決めると分けておけば、こうした失敗は防げます。比べ方は、集計を見る前に決めて記録しておきます。
尺度の両端に置く言葉の選び方でも、答え方は変わります。先の研究者の紹介では、対立する二つの考えを両端に置く尺度のほうが、程度の低い高いを聞く尺度よりも端の回答が多く出たとされています。国の比較に使う設問は、尺度の形と両端の言葉を全ての国でそろえることが前提です。AIが国ごとに自然な言い回しへ整えるうちに、両端の言葉の強さが国で変わっていないかも、手順の2番目で見ておきます。
1市場100人規模の結果を、どこまで国の比較に使うか
楽天インサイトの海外向けAIチャット調査は、1市場あたり100名規模とされています。この人数は、一つの国の中で傾向をつかみ、どんな言葉で語られるかを拾うには使えます。一方で、国と国のあいだの数ポイントの差を論じるには足りません。小さな差は、人数の少なさによる揺れと、回答の癖に埋もれます。
また、チャットで深掘りする調査は、もともと理由や言葉を集めるのに向いた形です。言葉で仮説を拾い、国の比較は別の数の調査で確かめるという二段の使い方にしておくと、少人数の結果を背負わせすぎずに済みます。
回答者の集め方にも国ごとの違いがあります。ネットで回答する人が、その国の生活者全体をどこまで表しているかは国によって異なると考えられます。国ごとの回答者の条件をそろえたつもりでも、集まる層は同じとは限りません。
このため、発注の前に、結果を仮説として扱うのか、判断の根拠として扱うのかを決めておきます。仮説として扱うなら、少人数でも十分に役に立ちます。判断の根拠に使うなら、人数と比べ方の条件を先に詰めます。どちらで扱うかは報告の冒頭にも書き、読む人が仮説を根拠と取り違えないようにします。途中で扱いを変える場合は、変えた理由も残します。
現地語の回答と画像は、原文に戻って確かめる
AIの要約は、回答を分類しやすい言葉にまとめます。その過程で、皮肉、遠回しな断り、控えめな褒め言葉のような、言い方に意味が乗っている部分が落ちることがあります。「悪くない」が、ある国では褒め言葉で、別の国では渋い評価として使われるように、同じ訳語でも、元の言い方で温度が違うことがあります。
サービス案内のとおり現地語の回答も納品されるのであれば、人は抜き取りで原文を読み、要約と照らします。結論を支える回答、国の差を説明するのに使う回答は、抜き取りでなく全件を原文で確かめます。要約から元の回答へたどれる形で納品されるかは、発注の前に確かめておきます。
画像の文字起こしは、写っている文字を拾うのは得意ですが、棚のどこに置かれているか、家のどの場所で使われているかといった意味は、現地の文脈が分からないと読めません。画像から読み取れる行動の解釈は、人が見て決めます。
回答者の画像や発言には、個人を特定できる情報が含まれることがあります。国外のデータを日本に持ち込んで保管・分析する扱いは、契約と社内規程で人が確かめます。個人データの国境を越えた移転の考え方は、別の記事で整理しています。
発注する前に調査会社へ確かめること
AIで回す海外調査を発注するときは、人が確かめる工程をどこに置けるかを、事前に調査会社へ確かめておきます。
- 設問の各国語への訳を、誰がどう確かめるか(AIの訳だけか、現地の言葉が分かる人が見るか)
- 各国語にした設問を、発注側が実査の前に見て直せるか
- 本番の前に、少人数で試す回を入れられるか
- 現地語の原文の回答が納品されるか、要約から元の回答へたどれるか
- 国ごとの回答者の集め方と、条件のそろえ方
- 国の比較を報告に書くとき、回答の癖をどう扱っているか
- 回答者の個人情報と画像の保管場所、保管期間、日本への持ち込みの扱い
これらはサービスの良し悪しを比べるための項目ではありません。自社が確かめる側に回らなければならない工程がどこかを知るための質問です。調査会社の側で確かめる仕組みがない工程は、発注側が人と時間を用意します。
発注側で用意する人は、国ごとに一人いれば足ります。現地法人や販売代理店の担当者、現地の言葉で暮らした経験のある社員などが候補です。頼むことは、設問の訳を注記と照らして読むこと、試しの回の回答を読むこと、結論を支える回答を原文で読むことの3つに絞り、所要時間を先に伝えておきます。確かめる人を手配できない国は、国の比較から外すと決めておくのも一つの判断です。
結果を意思決定に渡すときの書き方
海外調査の結果を経営や事業の判断に渡すときは、国ごとの結果と、国をまたいだ比較を分けて書きます。国ごとの結果は比較的安心して読めますが、比較には前提が付くからです。報告の欄と書く人を、次のように分けておきます。
| 報告の欄 | 書く内容 | 書く人 |
|---|---|---|
| 国ごとの結果 | その国の中での傾向、語られた言葉の例 | AIの下書きを人が原文と照らして直す |
| 国をまたいだ比較 | 比べ方(順位、分布、国の中の差)と、その結果 | 調査の担当者 |
| 比較の前提 | 訳の確かめ方、回答の癖の扱い、人数、回答者の集め方 | 調査の担当者 |
| 使い方の限界 | 仮説として扱う範囲、判断に使えない差 | 調査の担当者 |
| 結論と次の手 | どの国で何をするか | 事業の責任者 |
ポイントは、比較の前提と使い方の限界を、結論より前に置くことです。前提が後ろの注記にあると、読む人は結論だけを持ち帰ります。報告を短くしたいときも、この2つの欄は削りません。
AIの要約は「材料」の欄に置き、結論の欄には入れません。どの国で何をするかをAIに決めさせないと最初に決めておけば、報告の下書きをAIに任せても、判断の線は崩れません。
回を重ねるときに見直すこと
同じ国々で調査を繰り返すなら、確定した訳を保存して使い回すことが前提です。回ごとにAIで訳し直すと、訳の言い回しが変わり、前回との差が訳の違いによるものか、回答者の変化によるものか分からなくなります。手順の5番目で残した記録が、ここで効きます。
AIの訳の仕組みが更新されると、同じ設問でも訳が変わることがあります。新しい設問を足すときは、既存の設問の訳を作り直さず、足した設問だけを手順どおりに確かめます。
聞く国を増やすときは、その国について5つの手順をやり直します。評価の言葉の注記は、新しい国の言葉で揺れないかを見直します。国内の結果と海外の結果を並べるときも、日本の回答が真ん中に寄りやすい傾向を前提に読みます。
年に一度は、比べ方の選択と報告の欄が実際の判断に役立ったかを振り返ります。結論が比較の数字に引っ張られすぎていなかったか、仮説として扱うはずの結果が根拠として使われていなかったかを、事業の責任者と一緒に確かめます。
よくある質問
英語で一つの調査票を作れば、訳の確認はいらないのでは
英語の調査票で聞くと、国の差が小さく出ることが研究で報告されています。回答者の多くにとって母語でない言葉で聞くと、本来の答えが出にくくなります。設問は現地の言葉で聞き、その訳を確かめるほうが確実です。
AIの訳が自然に読めるなら、現地の分かる人は要らないのでは
自然に読めることと、測りたいことが測れることは別です。評価の言葉や頻度の言葉は、意味のずれが文の滑らかさに隠れます。少なくとも国の比較に使う設問と評価の言葉を含む設問は、現地の言葉と暮らしが分かる人に見てもらいます。
国内の調査の結果と、海外の結果を並べてよいですか
並べること自体はできますが、日本の回答は真ん中に寄りやすい傾向があるため、平均点をそのまま比べると日本が低く見えやすくなります。順位で聞いた設問や、国の中での商品同士の差を比べる形にするか、比較の前提を報告に書き添えてください。
まとめ
日本語で入稿するだけで、AIが40以上の国と地域の生活者に聞く調査が始まり、設問を各国語にする、チャットで聞く、現地語の回答を読んでまとめるという工程は、AIに寄りました。残ったのは、国と国のあいだにある判断です。設問の訳が同じ意味になっているか、国ごとの付け方の癖を前提に数字を並べてよいか、少人数の結果をどこまで国の比較に使うかは、AIのまとめからは見えてきません。
訳の下書き、実査、要約、集計はAIに任せ、根拠となる原文に人がたどれる形にしておきます。そのうえで、訳の確かめ方と比べ方は実査の前に人が決め、どの国で何をするかの結論はAIに書かせないという線を先に引いておけば、速くなった海外調査を、判断を誤らせない材料として使えます。
- 楽天インサイトの海外向けAIチャット調査の対象国・地域の数、1市場あたりの人数、納品までの日数、入稿の言語、パネルの規模、画像の扱いは、同社の2026年7月30日の発表と楽天グループの同日のプレスリリース、同社のサービス案内に基づきます
- 訳し戻しの限界と、複数の訳の見比べ・裁定・事前の試し・記録の手順は、質問票の翻訳手順を扱った2023年の学術論文に基づきます
- 国ごとの回答の傾向、英語の調査票での差の縮小、順位づけの効果は、国際経営の研究者による26か国の研究(2006年発表)と関連する研究の紹介に基づきます。傾向は一般的なもので、個々の回答者に当てはまるとは限りません
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
データ分析にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
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