ノーススターメトリックの決め方|AIで候補を検算する

「部署ごとにKPIを追っているのに、会社全体で何が良くなったのかを説明できない」「ノーススターメトリックを決めろと言われたけれど、売上のほかに何を置けばいいのか分からない」。指標を1本にまとめようとする段で、多くの会社が同じところで足を止めます。数字が足りないのではなく、数字が多すぎて束ね方が決まらないのです。ノーススターメトリックは、いちばん大事な数字を選ぶことではありません。本当は、顧客が受け取っている価値を1本の数字で表し、その数字が後の売上や継続に先立って動くかを確かめることです。この記事では、候補の出し方と、過去のデータで候補を検算する進め方を整理します。
カメ先生ノーススターメトリックは、売上のような結果の数字だと思われがちなんだけど、本当は、顧客が価値を受け取った瞬間を数える指標なんだ。売上は、その後から付いてくるものだね。
カメ子売上より先に動く数字を探す、ということですか。
カメ先生そう。ただ、先に動くかどうかは思い込みで決めやすい。だから候補を並べたら、過去の顧客のデータで、その数字が動いた顧客がその後も続いたかを確かめる。集計はAIに手伝わせられるけど、どれに決めるかは人の仕事なんだ。
カメ子候補を選ぶ作業と、確かめる作業は別なんですね。
- ノーススターメトリックは顧客が受け取る価値を表す1本の指標。売上や登録者数は頂点に置かない
- 候補は3〜5本を定義の文にして並べ、過去のデータで「動いた顧客は後で続いたか」を検算する
- AIに任せるのは候補の列挙と集計まで。相関を因果と読まず、決定と見直しの周期は人が決める
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課題:部門の数字はそろっているのに、同じ方向を向かない
マーケは商談の件数、営業は受注の金額、導入支援は立ち上がりの日数、顧客の成功を担う部門は解約の率。どの部門も自分の数字を持ち、毎月きちんと報告しています。それでも、会社全体で何が良くなっているのかを一言で言えない、という状態はよく起きます。
困るのは、部門の数字どうしがぶつかるときです。商談の件数を増やすために対象を広げると、受注の率が下がり、導入後に使われない契約が増えます。それぞれの数字は正しく追えていても、合わせると会社の得にならない、ということが起こります。
こうしたぶつかりを解くために置くのが、ノーススターメトリックです。北極星の指標とも呼ばれます。すべての部門の数字が、最後にはこの1本を押し上げるためにある、と言える指標を頂点に置くことで、部門の判断がぶつかったときに、どちらを優先するかの基準ができます。
ただ、この1本を決める段で、多くの会社がつまずきます。売上をそのまま置いてしまう、見栄えのよい数字を選んでしまう、頂点と分解した指標を混ぜてしまう。以下では、この3つの原因を順に見てから、対策として候補の出し方と検算の手順を扱います。
ノーススターメトリックとは:価値を受け取った数を表す1本
製品の利用分析の道具を提供するアンプリチュードは、この考え方を広めた会社の一つです。同社の解説では、良いノーススターメトリックの特徴として、顧客にとっての価値を表すこと、会社の構想を表していること、チームが行動につなげられて測れること、が挙げられています。
ここで大事なのは、価値を受け取った顧客の行動を数えるという点です。契約したこと、画面を開いたことではなく、顧客が製品を使って得をした瞬間を数えます。たとえば業務の道具なら、作業を終えた回数や、複数の担当者が同じ仕事に使った回数が、価値に近い行動になります。
同社の解説では、ノーススターメトリックは結果として動く指標で、チームが直接動かすものではない、とも説明されています。直接動かすのは、その下に置く3〜5本の入力の指標です。頂点の1本は、入力の指標の働きがまとまって表れる場所と考えます。
もう一つの条件が、後の成果に先立って動くことです。売上や継続は、結果が出るまでに時間がかかります。ノーススターメトリックが先に動き、それを追いかけるように売上や継続が伸びるなら、月ごとの判断の手がかりになります。この「先に動くか」を確かめる作業が、この記事でいう検算です。
原因1:売上を頂点に置いてしまう
いちばん多いのは、売上や年間の継続収益をそのまま頂点に置くことです。会社の目標は売上なのだから、それを追えばよい、という考え方です。アンプリチュードの解説では、売上に偏ることを悪い指標の特徴の一つに挙げ、売上は遅れて動く指標で、直接は動かせないと説明しています。
売上を頂点に置くと、何が起きるか。売上が落ちたと分かったときには、原因になった顧客の行動はすでに数か月前に起きています。継続課金の事業では、解約はたいてい契約の更新の時点で表に出ますが、使われなくなったのはもっと前です。頂点の数字が遅れて動くと、手を打つ時期も遅れます。
また、売上は値上げや大口の契約1件で大きく動きます。顧客が価値を受け取っているかとは別の理由で動くので、部門の判断の基準にしにくいのです。値上げで売上が伸びた月に、顧客の利用は減っていた、ということも起こりえます。
売上を捨てるわけではありません。売上は、会社として達成したい最終の目標として置いたまま、その手前に、売上に先立って動く1本を置く、という関係にします。ノーススターメトリックは売上の代わりではなく、売上の手前で先に鳴る合図です。
原因2:見栄えのよい数字を選んでしまう
2つ目の原因は、増えると気持ちのよい数字を頂点に置くことです。登録者数、ダウンロード数、ページの表示回数、広告の表示回数、画面の滞在時間。アンプリチュードの解説では、こうした数字を、ノーススターメトリックに向かない例として挙げています。
これらの数字に共通するのは、顧客が得をしていなくても増えることです。登録者数は、登録したまま一度も使わない人でも増えます。滞在時間は、使い方が分からず画面の中で迷っている人でも伸びます。数字が伸びても、それが顧客の価値の証拠にはなりません。
法人向けの継続課金の事業では、日ごとの利用者数もよく候補に挙がります。同じ解説では、日ごとの利用者数も向かない例に入っています。業務の道具では、毎日開くことより、必要なときに必要な作業を終えられることのほうが価値に近い場合が多いからです。週に1回の月次の締めの作業で使う道具なら、毎日の利用者数は伸びなくて当然です。
見栄えのよい数字は、報告の資料では映えます。だからこそ、候補に挙がりやすく、一度置くと外しにくくなります。候補を並べる段で、顧客が得をしていなくても増える数字ではないかを1本ずつ問うことが、この原因への手当てになります。
原因3:頂点の1本と、分解した指標を混ぜてしまう
3つ目の原因は、頂点の1本と、その下に分解した指標を同じ段に並べてしまうことです。商談の件数、受注の率、導入の日数を並べて、これが当社のノーススターです、と言ってしまう形です。1本に決めきれずに数本を並べると、部門の数字をまとめ直しただけになります。
KGIとKPIの関係や、KPIツリーで売上を分解していく作り方は、法人向けのKPI設計を扱った別の記事にまとめています。この記事で扱うのは、そのツリーのいちばん上に、売上とは別に何を1本置くか、という選び方です。分解の作業に入る前に、頂点が決まっている必要があります。
頂点と入力の指標の違いは、誰が直接動かせるかで見分けます。入力の指標は、あるチームが日々の仕事で動かせる数字です。ノーススターメトリックは、複数のチームの働きが合わさって、結果として動く数字です。あるチームだけで動かせるなら、それは入力の指標の段に置きます。
この区別がついていないと、あとで検算をしても意味が薄れます。入力の指標どうしは互いに関係して動くので、どれも売上と一緒に動いて見えます。検算にかけるのは、頂点の候補だけにします。
対策1:事業の型から候補の方向を決める
ここから対策に入ります。最初に、自社の事業がどの型かを確かめます。アンプリチュードの解説では、事業を、顧客の注意や時間を集める型、取引を仲立ちする型、顧客の仕事をはかどらせる型の3つに分けて考えています。型によって、価値に近い行動が違うからです。
注意を集める型では、顧客が使った時間や頻度が価値に近くなります。取引を仲立ちする型では、成立した取引の数や量です。法人向けの業務の道具の多くは、仕事をはかどらせる型に入ります。この型では、顧客が作業を終えた数や、仕事がどれだけ進んだかが価値に近い行動になります。
型を決めると、候補の方向が絞れます。仕事をはかどらせる型の事業で、滞在時間や表示回数を候補に入れても、価値から遠い数字を選ぶことになります。逆に、作業を終えた数、複数の担当者で使った数、定期の業務で使い続けた数、といった方向で候補を探すと、的外れが減ります。
1つの会社で型が混ざることもあります。業務の道具と、業務の情報を届ける媒体を両方持つ会社などです。その場合は、事業ごとに1本ずつ置くか、会社として最も伸ばしたい事業の型に合わせるかを、経営の側で先に決めます。この判断は、AIに任せられるものではありません。
対策2:候補を3〜5本、定義の文にして並べる
方向が決まったら、候補を3〜5本並べます。このとき、候補を名前だけで書かず、誰が、何を、どの期間に、どの基準でしたら数えるか、を1文で書きます。定義の文にしておかないと、後の検算で集計の条件がぶれます。
アンプリチュードの解説には、試用から始める型の事業の例として、最初の1週間に3人を超える利用者が動いた試用のアカウントの数、という指標が載っています。試用のアカウントの総数ではなく、複数の人が早い段階で使い始めたアカウントに絞っている点が、価値に近づける工夫です。
法人向けの継続課金の事業なら、たとえば次のような候補が考えられます。契約から30日以内に3人以上が定期の業務で使った契約の数、毎月の締めの作業を道具の上で終えた契約の数、社外の取引先と共有して使った契約の数、などです。これらは例で、自社の製品で価値を受け取る瞬間に合わせて書き直します。
候補の列挙には、AIを使えます。製品の説明、顧客の声の要約、事業の型を渡し、価値を受け取った瞬間を表す行動の候補を、定義の文の形で10本挙げさせると、人だけでは思いつかない切り口が出ることがあります。ただ、候補を3〜5本に絞るのは人です。実際にデータで測れるか、自社の構想に合うかは、社内の事情を知る人でないと判断できません。
対策3:過去のデータで検算する
候補がそろったら、過去の顧客のデータで検算します。問いは1つです。その指標の条件を満たした顧客は、満たさなかった顧客に比べて、後で売上や継続が伸びたか。アンプリチュードの解説でも、決める前に、候補の指標をファネルや利用の道筋、継続に当てて、持ちこたえるかを試すよう勧めています。
手順の例を挙げます。過去2年ほどの間に契約した顧客を、候補の条件を満たした群と、満たさなかった群に分けます。そのうえで、12か月後の継続の率、契約の席数や金額の伸び、解約までの期間を2つの群で比べます。条件を満たした群の継続が大きく上回るなら、その候補は先に動く指標の見込みがあります。
検算では、候補どうしを同じ条件で比べることが大切です。対象の期間、顧客の範囲、後の成果の見方をそろえ、候補ごとの差の大きさを並べます。差が大きく、しかも条件を満たす顧客がある程度の数いる候補が、頂点の有力な候補になります。条件を満たす顧客がごく一部だけなら、差が大きくても、会社全体の舵取りには使いにくい数字です。
時間の差をずらして確かめる手法の一般論は、先行指標と遅行指標の順番を扱った別の記事にまとめています。ここでの検算は、その考え方を、頂点の候補を比べて絞る作業に当てはめたものです。
AIに集計を任せるときの渡し方
検算の集計は、AIに手伝わせると早く進みます。ただし、渡し方を誤ると、もっともらしいけれど条件のずれた数字が返ってきます。最初に渡すのは、データそのものより、項目の定義の一覧です。契約日、解約日、利用の記録の各項目が何を意味するかを書いた表を渡します。
次に、候補の定義の文と、比べ方を渡します。群の分け方、後の成果の見方、対象の期間を文で書き、「この条件で2つの群の12か月後の継続の率を出し、集計に使った式か問い合わせの文と、各群の件数を必ず添えて」と頼みます。集計の手順を見える形で出させるのが、根拠を書かせるということです。
返ってきた数字は、人が一部を手で確かめます。顧客を10件ほど選び、群の振り分けが定義どおりかを元のデータで見ます。とくに、契約の途中で席数が変わった顧客、一度解約して戻った顧客など、条件の境目にいる顧客で振り分けが揃っているかを確かめます。集計の式を人が読んで、定義と合っているかを確かめる段を省かないようにします。
顧客のデータを外部のAIに渡すときは、社内の決まりに従います。社名や担当者名を外し、契約の番号だけにした表で集計させる、社内で許可された環境だけで扱う、といった手当てを先に済ませます。AIが出した結論の文、たとえば「この候補がいちばん良い」という一文は、判断の材料にはしても、そのまま決定にはしません。
相関を因果と書かない
検算で差が出ても、それは相関です。条件を満たした顧客が後で続いた、というだけで、条件を満たしたから続いた、とは言えません。社内の資料に「この指標を伸ばせば継続が伸びる」と書くのは、検算の結果より一歩先の主張です。
よくある落とし穴は、顧客の規模です。大きな会社ほど利用者の数が多く、3人以上が使うという条件を満たしやすく、しかも契約が長く続きやすい傾向があります。この場合、差を生んでいるのは指標ではなく規模かもしれません。規模の段ごとに分けて比べ直し、それでも差が残るかを見ます。
逆向きの関係もあります。もともと続けるつもりの顧客だから、早い段階で多くの人に使わせた、という流れです。導入の支援を手厚く受けた顧客だけが条件を満たしている、ということもあります。規模のほか、契約の時期、導入の支援の有無、業種などで分けて見直すと、指標以外の理由がどこまで効いているかが見えてきます。
それでも、過去のデータだけで因果を確かめきることはできません。決めた後に、入力の指標を動かす施策を打ち、頂点と売上が後から付いてくるかを見続けることで、確からしさを積み上げていきます。AIが「因果がある」と書いてきても、そのまま採らないことが大切です。
候補の指標を検算する表
ここまでの確かめを、候補ごとに埋める表にまとめます。候補を3〜5本並べ、各行を1本ずつ埋めていきます。AIに任せる列と、人が判断する列を分けておくのが、この表の要です。
| 検算の項目 | 確かめ方 | AIに任せる作業 | 人が判断すること |
|---|---|---|---|
| 顧客の価値を表すか | 価値を受け取る瞬間と定義の文を突き合わせる | 言い換えの候補を挙げる | 自社の製品の価値に合うか |
| 見栄えの数字でないか | 得をしていない顧客でも増えるかを問う | 増えてしまう例を挙げる | 候補から外すか |
| 先に動くか | 条件を満たした群と満たさない群の後の継続を比べる | 集計と、式・件数の提示 | 差の大きさで残すか |
| 規模で分けても差が残るか | 規模・時期・支援の有無で分けて比べ直す | 分けた集計 | 指標以外の理由の見立て |
| 条件を満たす顧客の数 | 会社全体に対する割合を見る | 件数と割合の集計 | 舵取りに使える幅か |
| チームが動かせるか | 入力の指標に分けられるかを書き出す | 入力の指標の候補を挙げる | どのチームが何を持つか |
| 今日測れるか | 必要な記録が取れているかを確かめる | 必要な項目の洗い出し | 計測を足すか見送るか |
表を埋めると、候補の強みと弱みが1枚で比べられます。先に動くかの差は大きいのに、条件を満たす顧客がごく一部だけ、という候補もあれば、差はほどほどでも、どのチームも入力の指標で関われる候補もあります。どちらを採るかは、事業の段階と構想による判断で、表はその判断の材料をそろえるためのものです。
表の中で空欄が残りやすいのは、「今日測れるか」の行です。価値に近い行動ほど、記録が取れていないことがあります。記録が無い候補は、計測を足してから数か月分をためて検算し直すか、いま測れる近い行動で代わりに検算するかを決めます。どちらにするかは、計測を足す手間と、待てる期間で人が判断します。
入力の指標に分けて、チームの仕事につなぐ
頂点が決まったら、その下に入力の指標を置きます。アンプリチュードの解説では、入力の指標は3〜5本ほどで、チームが日々の仕事で直接動かせるものとされています。頂点の1本だけでは、明日何をすればよいかが分からないので、入力の指標が各チームの仕事への橋渡しになります。
たとえば、契約から30日以内に3人以上が定期の業務で使った契約の数、を頂点にしたとします。入力の指標は、契約の最初の週に初期の設定を終えた契約の割合、招待された利用者が最初の作業を終えた割合、定期の業務の型を登録した契約の割合、などに分けられます。それぞれ、導入支援、製品、顧客の成功を担う部門が持つ数字になります。
マーケが持つ入力の指標も考えます。商談の件数ではなく、頂点の条件を満たしやすい顧客、たとえば複数の部署で使う見込みのある顧客からの商談の件数、というように、頂点につながる形に言い直します。こうすると、件数を増やすために対象を広げる、という部門どうしのぶつかりが起きにくくなります。
入力の指標の分け方や、ツリーの形で数字を展開していく作業は、先に触れたKPI設計の記事の領分です。この記事では、入力の指標も、頂点と同じように定義の文で書き、検算の表の「チームが動かせるか」の列と対応させておく、という点に留めます。
決めるまでの5つの段
ここまでの流れを、決めるまでの作業の順に並べます。関わる人を段ごとに決めておくと、議論が行き来せずに進みます。
経営と事業の責任者で、自社の事業がどの型か、何年後にどんな顧客にどんな価値を届けたいかを1段落に書きます。候補の方向はここで決まります。
AIに候補を挙げさせ、人が定義の文に直して絞ります。見栄えの数字と、1つのチームだけで動かせる数字は、この段で外します。
項目の定義と比べ方を渡して、AIに集計させます。人が式と一部の顧客の振り分けを確かめ、規模や時期で分けて比べ直します。
候補ごとに表を埋め、経営と各部門の責任者で決めます。決めた理由と、採らなかった候補の理由も残します。
入力の指標を3〜5本決め、持つチームと見る頻度を決めます。見直しの時期も、この段で書いておきます。
段2と段3は、1回で終わらないことがあります。検算で有力な候補が1本も残らなかったら、定義の文を書き直して、もう一度検算にかけます。この行き来は失敗ではなく、自社の顧客がどこで価値を受け取っているかを、データで学び直している作業です。
段ごとの顔ぶれも決めておきます。段1と段4は経営と事業の責任者、段2は各部門の責任者、段3はデータを扱える担当者が中心です。段3の担当者が候補の良し悪しまで決めてしまうと、集計した人の見立てが会社の指標になります。集計する人と決める人を分けておくことが、検算を公平に保つ手当てになります。
見直しの周期は人が決める
ノーススターメトリックは、一度決めたら永久に使うものではありません。アンプリチュードのプレイブックにも、いつ、どのように変えるかを扱う章があります。ただ、何か月ごとに見直すべきかという決まった数字は、確かめた範囲では示されていませんでした。見直しの周期は、自社の事業の速さに合わせて人が決めます。
周期とは別に、見直しのきっかけを決めておくと運用しやすくなります。主な顧客の層が変わったとき、新しい製品や料金の体系を入れたとき、頂点は伸びているのに継続や売上が付いてこなくなったとき、の3つです。とくに最後のきっかけは、頂点が価値から離れはじめた合図です。
見直しのときも、検算の表を使います。今の指標と新しい候補を同じ表に並べ、直近のデータで先に動くかを確かめ直します。AIには、前回の検算と同じ条件での再集計を頼み、条件が変わっていないかを人が確かめます。
頻繁に変えすぎるのも害があります。頂点が変わるたびに、各チームの入力の指標と仕事の優先順位が組み替わるからです。たとえば、年に1回の事業計画の場で確かめ、きっかけがあったときだけ臨時に見直す、という形にすると、変えすぎと放っておきすぎの両方を避けやすくなります。
検算の結果を社内に伝える書き方
決めた指標は、経営会議や部門の責任者に説明して、はじめて各チームの仕事に届きます。このとき、検算の結果の書き方しだいで、受け取る側の読み方が大きく変わります。数字の差だけを見せると、その差が約束された効果のように読まれてしまいます。
説明の資料には、候補ごとに4つをそろえて書きます。定義の文、条件を満たした顧客の件数と割合、2つの群の後の成果の差、規模や時期で分けて比べ直したあとも差が残ったか、です。有力な候補だけでなく、採らなかった候補も同じ形で並べると、なぜその1本に決めたのかが伝わります。
数字の横には、読み方の留保を1行添えます。たとえば「条件を満たした顧客のほうが12か月後の継続が高かった。これは過去の顧客の傾向で、この指標を伸ばせば継続が伸びることを示すものではない」といった書き方です。集計にAIを使ったなら、使ったことと、人が式と振り分けを確かめた範囲も書きます。
説明の場では、今後どう確からしさを確かめていくかも一緒に示します。入力の指標を動かす施策と、頂点と売上を見る時期を並べておけば、決めた指標が「当たりか外れか」を後から確かめる道筋が共有できます。反論が出たときに、どの数字を見て判断し直すかを先に決めておくことにもなります。
やりがちな失敗
ノーススターメトリックの決め方で起きやすい失敗を並べます。どれも、確かめる前に決めてしまうか、確かめた結果を読みすぎるところから起きます。
- 売上や年間の継続収益をそのまま頂点に置き、手を打つ時期がいつも遅れる
- 登録者数や滞在時間のような、顧客が得をしていなくても増える数字を選ぶ
- 候補を名前だけで書き、検算のたびに集計の条件が変わる
- 検算で差が出たことを、この指標を伸ばせば継続が伸びる、と因果で書く
- AIが「この候補が最適」と答えたのを、そのまま会社の決定にする
1つ目から3つ目は、候補を並べる段で防げます。事業の型から方向を決め、定義の文で書き、見栄えの数字を外す。この3つを段2の決まりにしておけば、候補の質はそろいます。
4つ目と5つ目は、検算の結果の読み方の失敗です。検算は候補を絞るための材料で、因果の証明ではありません。AIの集計は式と件数を人が確かめ、AIの結論の文は判断の材料の一つとして扱います。決定と、決めた理由の記録は人が持つ、と進め方の最初に書いておきます。
- この記事の内容は、2026年9月に確かめたアンプリチュードの公式ブログ(2024年8月)とノーススターのプレイブックの解説に基づきます
- 候補の指標と入力の指標の例は、考え方を示すための例です。自社の製品で価値を受け取る瞬間に合わせて書き直してください
- 顧客のデータをAIに渡すときは、社内の情報の取り扱いの決まりと、顧客との契約の範囲を先に確かめてください
まとめ
ノーススターメトリックは、顧客が価値を受け取った数を表す1本の指標で、売上の手前で先に動く合図です。売上をそのまま置く、見栄えの数字を選ぶ、頂点と分解した指標を混ぜる、の3つがつまずきの原因になります。事業の型から方向を決め、候補を3〜5本の定義の文にして、過去のデータで条件を満たした顧客が後で続いたかを検算しましょう。集計はAIに任せても、式と件数は人が確かめ、相関を因果と読まないことが大切です。決定と見直しのきっかけは、人が決めて記録に残します。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
データ分析にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
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