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在留資格の申請に添付する外国語の証明書を読み取り、日本語の訳文の下書きと、申請書へ写す項目の一覧を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

依頼者から預かった外国語の証明書を Google Document AI で読み取り、生成AIで日本語の訳文の下書きと、申請書へ写す項目の一覧を作ります。職員の作業は、辞書を引きながら訳すことから、原文と並べて確かめ、翻訳者として署名することに変わります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
人材/士業/教育
対象部門
法務
対象業務
データ入力・転記/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
翻訳
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
90h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
67%
年間削減
720h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 依頼者から証明書のスキャンか写真を受け取り、案件フォルダに保存する
  2. 補助者が1通ずつ開き、何の証明書か、どの機関がいつ発行したかを読む
  3. 辞書や翻訳サイトを使いながら、Word の様式に訳文を書く。読めない言語は依頼者に電話で内容を聞く
  4. 申請書に写す項目(氏名、生年月日、婚姻の年月日、学校名、卒業の年月日、勤務先、在職期間など)を、メモに書き出す
  5. メモの項目を、旅券の写しと申請書の下書きに照らす
  6. 行政書士が訳文と申請書を確かめ、訳文に翻訳者の署名をする
導入後(After)
  1. 人依頼者から届いた証明書を、案件フォルダの「受領」に保存する
  2. 自動保存をきっかけにワークフローが動き、形式・ページ数・サイズを確かめる
  3. 自動Google Document AI が文字と段落・行、信頼度、画像の品質スコア、ページごとの言語を返す
  4. 自動段落と行に `S-` の番号を振り、品質スコアが低いページに印を付ける
  5. 自動生成AIが、番号ごとの訳文の下書きと、申請書に写す項目の一覧をJSONで返す
  6. 自動日付の暦の換算と、旅券の写しから入力した氏名・生年月日との突き合わせを、規則で行う
  7. 自動Word の訳文の様式に、番号つきの下書きと翻訳者の署名欄を差し込む
  8. 人補助者が原文と訳文を番号で並べて確かめ、直す。食い違いの一覧を片づける
  9. 人行政書士が確かめ、翻訳者が署名する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 依頼者から証明書のスキャンか写真を受け取り、案件フォルダに保存する
  2. 補助者が1通ずつ開き、何の証明書か、どの機関がいつ発行したかを読む
  3. 辞書や翻訳サイトを使いながら、Word の様式に訳文を書く。読めない言語は依頼者に電話で内容を聞く
  4. 申請書に写す項目(氏名、生年月日、婚姻の年月日、学校名、卒業の年月日、勤務先、在職期間など)を、メモに書き出す
  5. メモの項目を、旅券の写しと申請書の下書きに照らす
  6. 行政書士が訳文と申請書を確かめ、訳文に翻訳者の署名をする

(a)1通ずつ訳すのに時間がかかる。 結婚証明書1通でも、発行機関の名称、登録の番号、当事者の欄、証人の欄、発行者の署名と印があり、全部を訳すと1枚の様式が埋まります。 書式に慣れていない国の証明書ほど、どの欄に何が書かれているかを探すところから始まります。

(b)読める言語が人に偏る。 中国語の証明書は中国語を読める1名に、ポルトガル語は少し読める1名に回ります。その人が休むと、その言語の申請が止まります。 依頼者に電話で聞きながら訳すと、聞き違いがそのまま訳文に入ります。

(c)日付と綴りの写し間違いが起きる。 05/04/2019 が4月5日なのか5月4日なのか、仏暦2567年が西暦何年か、旅券では NGUYEN THI と書かれた氏名が証明書では Nguyễn Thị と書かれている。申請書の生年月日と婚姻日を写すとき、ここで間違えます。

(d)訳し落としが見えない。 訳文は原文より短くなりがちで、欄外の注記や、裏面の追記が訳されないままになることがあります。原文と訳文を並べて1行ずつ照らす作業は、時間がないときに最初に省かれます。

  1. 【人】 依頼者から届いた証明書を、案件フォルダの「受領」に保存する
  2. 【自動】 保存をきっかけにワークフローが動き、形式・ページ数・サイズを確かめる
  3. 【自動】 Google Document AI が文字と段落・行、信頼度、画像の品質スコア、ページごとの言語を返す
  4. 【自動】 段落と行に S- の番号を振り、品質スコアが低いページに印を付ける
  5. 【自動】 生成AIが、番号ごとの訳文の下書きと、申請書に写す項目の一覧をJSONで返す
  6. 【自動】 日付の暦の換算と、旅券の写しから入力した氏名・生年月日との突き合わせを、規則で行う
  7. 【自動】 Word の訳文の様式に、番号つきの下書きと翻訳者の署名欄を差し込む
  8. 【人】 補助者が原文と訳文を番号で並べて確かめ、直す。食い違いの一覧を片づける
  9. 【人】 行政書士が確かめ、翻訳者が署名する

8番目が、この設計の分かれ目です。 下書きを読むのではなく、原文の番号と訳文の番号を並べて照らします。 番号の抜けがあれば訳し落とし、unreadable があれば読み取れなかった箇所です。照らす場所が決まっているので、読めない言語でも、確かめる箇所を依頼者に絞って聞けます。

6番目を規則で行っているのも、意図してのことです。 暦の換算と旅券との照合は、毎回同じ答えが出るべき作業です。AIに任せると、同じ証明書で違う年が出ることがあります。

02今回想定するシステム構成

構成図
依頼者から届いた証明書(スキャン・写真)
   │
   ▼【トリガー】案件フォルダ「受領」への保存
Make ── 形式・ページ数・サイズの確認
   ▼
Google Document AI(Enterprise Document OCR)
   │   文字・段落・行、信頼度、画像の品質スコア、ページごとの言語
   ▼
Make ── 段落と行に S- の番号を振る/品質の低いページに印
   ▼
Gemini API ── 構造化出力(JSONスキーマを指定)
   │   ① 証明書の種類・発行機関・発行日(原文のまま)
   │   ② 番号ごとの訳文の下書き
   │   ③ 申請書に写す項目と、根拠の番号
   ▼
Python ── 暦の換算/旅券の氏名・生年月日との突き合わせ
   ▼
Word の訳文の様式(番号つき、翻訳者の署名欄)+ 食い違いの一覧
   ▼
【人】補助者が原文と照らして直す → 【人】行政書士が確認、翻訳者が署名
役割想定する製品代替候補
OCRGoogle Document AI(Enterprise Document OCR)Azure AI Document Intelligence(レイアウト モデル)
生成AIGemini API(訳文の下書きと転記項目の書き出し)Claude API、OpenAI API
集計Python(暦の換算と、旅券の記載との突き合わせ)Google スプレッドシートの数式
連携Make(フォルダの監視、各APIの呼び出し)Power Automate、n8n
保管Google ドライブの案件フォルダBox、SharePoint

土台になるのは、Google Document AI の Enterprise Document OCR です。 PDFや画像から、ブロック・段落・行・単語・記号を検出し、傾きを補正する処理で、言語と手書きのヒントを BCP-47 の言語コードで渡せます。プロセッサの一覧では、Enterprise Document OCR と Form Parser が200を超える言語に対応するとされ、英語、中国語、ベトナム語、ネパール語、タガログ語、インドネシア語、ポルトガル語なども含まれます。

この構成で効くのは、3つの値です。 1つ目は、段落や行などの要素ごとの layout に付く信頼度と位置。2つ目は、ページごとに 0〜1 で返る画像の品質スコアで、0.5を下回るとぼやけ・照り返し・文字の切れなど原因の候補が可能性の順に返ります。3つ目は、pages[].detectedLanguages[] に入るページごとの言語です。2か国語が併記された証明書でも、どのページが何語かを確かめられます。

項目の取り出しを Document AI のカスタムのプロセッサに任せない理由もあります。 プロセッサの一覧では、Custom Extractor の生成AIによる抽出は正式な対応が英語だけ、Custom Classifier は英語だけとされています。多言語の証明書を読むので、OCRで文字と位置だけを取り、訳と項目の取り出しは Gemini API に任せます。

Gemini API は、JSONスキーマを指定して返させます。 構造化出力のページでは、出力はスキーマに沿った構文として正しいJSONになる一方、値の正しさはアプリケーションの側で必ず検証するよう書かれています。この構成の6番目の手順が、その検証に当たります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

案件フォルダの「受領」に証明書が保存されたことを起点にします。 1通ごとに動かし、処理が終わったものだけを「処理済み」へ移します。 「受領」に残っている数が、そのまま未処理の数になります。

依頼者からの受け取りは、メールの添付、チャットの写真、郵送の原本と経路がばらばらです。 どの経路でも、補助者が案件フォルダに保存するところでそろえます。ファイル名は「案件番号_書類の種類_連番」と決めておきます。 書類の種類は補助者が付けますが、AIが読んだ種類と違えば、食い違いとして一覧に出します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
証明書の画像PDFまたは画像。表と裏、別紙(アポスティーユ・認証)を含む案件フォルダ「受領」
読み取り結果全文、段落・行と位置、信頼度、品質スコア、ページごとの言語Google Document AI
依頼者の基本情報旅券に書かれた氏名の綴り、生年月日、国籍、旅券番号の下4桁補助者が旅券の写しから入力した表
案件の情報申請する在留資格、申請の種類、書類の種類(補助者が付けたもの)案件の管理表
用語集発行機関の名称、学位、役職などの訳語の決まり事務所で育てる表

旅券の記載は、補助者が人の目で入力します。 照合の基準を自動で作ると、基準の側の読み取り誤りと、証明書の側の読み取り誤りが重なったときに、食い違いとして出てきません。 基準は人が作り、照合は機械で行います。

用語集は、事務所の訳文をそろえるために持ちます。 「Bachelor of Business Administration」を「経営学士」とするか「経営管理学士」とするかが担当者で違うと、同じ大学の卒業生の訳文が案件ごとに変わります。 一度決めた訳語を表にして、指示文と一緒に渡します。

Step3

データの取得方法を決める

読み取りは、ワークフローから Enterprise Document OCR を呼ぶだけです。証明書の言語が分かっていれば、言語のヒントを渡します。 依頼者の国籍から見当をつけ、外れていればページごとの言語の結果で確かめます。

取るものどこから何に使うか
全文(text)Document訳文の下書きの元
段落・行と layoutpages[]S- の番号を振る単位と、信頼度・位置
品質スコアと原因pages[]撮り直しを頼むページの判定
ページごとの言語pages[].detectedLanguages[]併記の証明書の言語の確認と、ヒントの当否
手書きの判定フォントスタイルの検出(追加の機能)手書きの欄に印を付け、確かめる重みを上げる

オンラインの処理には上限があります。 制限のページでは、オンライン処理のファイルサイズが40MBまで、Enterprise Document OCR のオンライン処理は15ページまで、画像の解像度は1ページあたり40メガピクセルまで(PDFには適用されない)とされています。証明書は数ページなので、通常はオンライン処理で足ります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … PDF、TIFF、JPEG、PNG などの対応形式かを確かめ、それ以外はPDFにします
  2. 向きと傾き … スマートフォンの写真は傾いています。傾きの補正は OCR の側で行えますが、上下が逆の写真は回してから入れます
  3. 品質スコアを見る … 0.5を下回ったページは、返ってきた原因(ぼやけ、照り返しなど)を添えて、依頼者に撮り直しを頼む文面の下書きを作ります
  4. 表裏と別紙をそろえる … 裏面の追記、アポスティーユや認証の別紙を、同じ証明書の続きのページとして1つにします
  5. 番号を振る … 段落と行の単位で S-01 から番号を振り、ページ番号と位置を持たせます
  6. 旅券番号を落とす … 生成AIに渡す依頼者の基本情報は、氏名・生年月日・国籍だけにします

3番目を軽く見ないでください。 照り返しで1行が飛んだ証明書を訳すと、その行は訳文から黙って抜けます。 読み取りの段階で撮り直しを頼むほうが、訳文を直すより早く終わります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、次の3つです。

作業中身させないこと
証明書の見出し証明書の種類、発行機関、発行日を原文の文字列のまま書き出す発行日を換算すること
番号ごとの訳文S- の番号ごとに日本語に訳す。印章・署名・透かしは〔印〕〔署名〕〔透かし〕と書く番号をまとめること、省くこと
転記項目の一覧氏名、生年月日、婚姻の年月日、学校名、学位、卒業の年月日、勤務先、在職期間など、根拠の番号つき旅券に合わせて綴りや日付を直すこと

氏名は訳しません。 原文の綴りをそのまま書かせ、カタカナの表記は書かせません。申請書にどう書くかは、旅券と依頼者の意向で決まることで、AIが決めることではありません。

日付は、原文の文字列と、日月年か月日年かの見立てを分けて書かせます。 05/04/2019 のようにどちらとも読めるものは ambiguous とし、見立てを1つに決めさせません。発行国の慣習は人が確かめます。

暦の換算もさせません。 仏暦や民国暦で書かれた年は、原文の年と暦の名前だけを書かせ、西暦への換算は Python の規則で行います。 換算は足し算で決まるので、AIに任せる理由がありません。

させないこと理由
読めなかった箇所を前後から補う補った訳文に翻訳者が署名することになる
氏名のカタカナ表記を決める旅券と依頼者の意向で決まる
日付の並びを1つに決める発行国の慣習は人が確かめる
暦の換算規則で毎回同じ答えを出す
書類として足りるかの判断どの書類を出すかは行政書士が決める

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 スタンプで半分隠れた行を渡すと、前後の文脈からそれらしい文を作り、その瞬間、読めなかったという事実が消えます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは行政書士事務所で、在留資格の申請に添付する証明書の訳文の下書きを作ります。
OCRの読み取り結果だけを見てください。推測で埋めないでください。
この下書きは、職員が原文と照らして直し、翻訳者として署名します。

【訳し方】
- S- の番号ごとに、1つずつ日本語に訳してください。番号をまとめたり、省いたりしないでください。
- 原文に書かれていることだけを訳してください。説明や補足を足さないでください。
- 印章は〔印〕、手書きの署名は〔署名〕、透かしは〔透かし〕と書いてください。
- 読めない箇所は〔判読不能〕と書き、status を unreadable にしてください。
  前後の文から補わないでください。
- 用語集にある語は、用語集の訳語を使ってください。
- 証明書の番号や登録の番号は、原文の文字列をそのまま写してください。

【氏名と日付】
- 氏名は訳さず、原文の綴りのまま書いてください。カタカナにしないでください。
- 日付は、原文の文字列をそのまま original に写してください。
- 日月年か月日年か、どちらとも読める日付は ambiguous にしてください。1つに決めないでください。
- 仏暦・民国暦などの年は、年の数字と暦の名前だけを書いてください。西暦に換算しないでください。

【転記項目】
次の項目を、証明書に書かれている場合だけ書き出してください。
氏名/生年月日/出生地/国籍/父母の氏名/婚姻の年月日/配偶者の氏名/
学校名/学位・課程/卒業の年月日/勤務先/役職/在職期間/発行機関/発行日
書かれていない項目は value を空にし、status を missing にしてください。
それぞれに、根拠にした S- の番号を書いてください。

【厳守事項】
- 依頼者の基本情報は照合のための参考です。証明書の記載をそれに合わせて直さないでください。
- 書類として足りるか、どの在留資格に使えるかは書かないでください。
- 最後に、訳した S- の番号をすべて並べてください。

【読み取り結果】{ocr_segments}
【依頼者の基本情報】{applicant}
【用語集】{glossary}

「依頼者の基本情報に合わせて直さない」を明記しないと、綴りが旅券にそろいます。 旅券の NGUYEN THI を渡すと、証明書の Nguyễn Thị も同じ形に書き換えます。照合の材料として渡したものが、照合する前に答えを消してしまいます。

「訳した番号をすべて並べる」は、訳し落としの検査です。 並んだ番号を、前処理で振った番号の一覧と比べ、足りなければどの番号が抜けたかがそのまま分かります。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "case_id": "",
  "document": {
    "type": "marriage | birth | graduation | employment | other",
    "issuer": { "original": "", "ja": "" },
    "issue_date": { "original": "", "calendar": "gregorian | buddhist | roc | other", "order": "dmy | mdy | ymd | ambiguous" }
  },
  "segments": [
    { "id": "S-01", "page": 1, "ja": "", "status": "ok | unreadable", "note": "" }
  ],
  "fields": [
    { "name": "date_of_marriage", "original": "", "status": "ok | missing | unreadable | ambiguous", "source": ["S-07"] }
  ],
  "translated_ids": []
}

1つ目の理由は、segments の番号で訳し落としを機械で見つけられることです。 translated_ids と前処理の番号の一覧が合わなければ、ワークフローが様式への差し込みを止めます。

2つ目は、日付を original と calendar と order に分けていることです。 西暦の年月日は、この3つから Python が組み立てます。order が ambiguous のものは組み立てず、食い違いの一覧に回します。

3つ目は、fields の source で申請書の値の出どころを追えることです。 申請書の婚姻の年月日を確かめるとき、S-07 の原文と訳文を並べて見るだけで済みます。

後段の Python は、fields を旅券の記載と突き合わせ、次のように印を付けます。

照合の結果印
氏名の綴りが、発音記号を除いて一致match_diacritics(人が確かめる)
生年月日が一致match
生年月日が日と月を入れ替えると一致swap_suspected
一致しないmismatch

match_diacritics を一致として扱わないのは、申請書の表記を決めるのが人だからです。 ベトナム語の声調記号や、ドイツ語のウムラウトを外せば一致する綴りは、旅券の側の書き方にそろえて申請書に書くことが多いものの、依頼者ごとに確かめる余地が残ります。印を付けて、確かめる一覧に回します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
案件フォルダMake のトリガー「受領」への保存を検知する
Google Document AIAPI呼び出し文字・位置・信頼度・品質スコア・言語を返す
Gemini APIAPI呼び出し(構造化出力)番号ごとの訳文と転記項目
Python処理の呼び出し暦の換算、旅券との突き合わせ
Word の訳文の様式差し込み番号つきの下書き、原文の言語、翻訳者の署名欄

申請書には書き込みません。 転記項目の一覧は申請書の隣に置く表で、申請書に写すのは補助者です。 下書きから申請書へ直接写す経路を作ると、ambiguous の日付が確かめる前に申請書に入ります。

訳文の様式の署名欄も空のまま出します。 翻訳者の氏名と署名は、確かめた人が入れます。

様式の中身は、事務所で1つに決めておきます。 冒頭に書類の種類と原文の言語、本文に番号つきの訳文、末尾に翻訳の日付と翻訳者の氏名・署名の欄を置きます。番号は確かめるための道具なので、提出用の訳文から外すかどうかも事務所で決めます。 外す場合も、番号つきの版を案件フォルダに残します。

Step9

人が確認する

補助者が開くのは、訳文の様式と、食い違いの一覧です。 次の順に見ます。

  1. 品質の印と unreadable を先に見る … 撮り直しで直るものか、依頼者に聞くものかを分けます
  2. 食い違いの一覧を片づける … ambiguous の日付は発行国の慣習で決め、mismatch と swap_suspected は原文の画像で確かめます
  3. 原文と訳文を番号で並べて読む … 読める言語は全番号、読めない言語は手書きの印と転記項目の根拠の番号を重く見ます
  4. 用語集にない訳語を拾う … 新しく決めた訳語は用語集に足します

3番目の読めない言語の扱いを決めておきます。 ネパール語の証明書を補助者が全文確かめることはできません。転記項目の根拠になった番号だけは、依頼者に原文を指さしてもらいながら確かめます。 照らす箇所が番号で決まっているので、聞く範囲が絞れます。

最後に行政書士が確かめ、翻訳者が署名します。 署名した人が、その訳文の正確さに責任を持ちます。下書きを作ったのがAIでも、この順番は変わりません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
品質スコアが0.5を下回る返ってきた原因を添えて、依頼者に撮り直しを頼む
ページ数・サイズが上限を超えるオンライン処理は40MB・15ページまで。分割するか、バッチ処理に回す
2か国語が併記されているページごとの言語を見て、訳すのは日本語・英語以外の側も含めて全部とする
アポスティーユや認証の別紙がある同じ証明書の続きのページとして訳す
手書きの欄がある手書きの印を付け、補助者が画像で確かめる
AIが読んだ書類の種類が、補助者の付けた種類と違う食い違いの一覧に出し、補助者が決める
訳した番号が足りない様式への差し込みを止め、抜けた番号だけを読み直させる
用語集にない学位・役職下書きの訳語に印を付け、補助者が決めて用語集に足す
依頼者が自分で作った訳文が付いてくる参考として案件フォルダに残し、事務所の下書きと番号で突き合わせる。そのまま使わない
同じ証明書が写真とスキャンで2通届く品質スコアの高いほうを残し、もう一方には印を付けて訳さない
APIが応答しない「受領」に残す。処理済みへ移すのは成功時だけ

上の2行が大半を占めます。 どちらもAIの問題ではなく、依頼者からの受け取り方の問題です。 撮り方の案内を依頼者向けに1枚作るほうが、読み取りの設定を変えるより効きます。

Step11

記録を残す

  • 元の画像と、受け取った日時・経路
  • OCRが返した結果の全文(全文、段落・行、信頼度、品質スコア、言語)
  • 生成AIが返したJSONと、使った指示文・用語集の版
  • 補助者が直した番号と、直した前後の訳文
  • 食い違いの一覧と、それぞれをどう決めたか(発行国の慣習、依頼者への確認など)
  • 翻訳者として署名した人と日付

4つ目の「直した番号」は、言語ごとの下書きの質を見る材料になります。 直しの多い言語が分かれば、その言語の証明書だけは確かめる時間を多めに見込みます。

5つ目の「どう決めたか」は、同じ国の次の案件で効きます。 ある国の証明書の日付が日月年の順だと一度確かめれば、次からはその国の ambiguous を同じ根拠で片づけられます。 発行国ごとの慣習を一覧にして、補助者のあいだで共有します。

04実装レベルの3段階

最小構成:証明書を手でAIの画面に渡し、番号つきの訳を作らせる / 1通ごとの訳文の下書き
半自動化:上記+OCRのAPIを呼び、品質スコアと番号を付け、訳文の様式に差し込む / 読み取り、番号付け、様式への差し込み
本格構成:上記+案件フォルダを起点に自動で動かし、転記項目の一覧、暦の換算、旅券との突き合わせまで出す / 訳文の下書きから、転記と照合の準備まで

最小構成では、通数がさばけません。 1通ずつ渡すので、月120通には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1通45分が25分程度になります。 訳文の下書きは出ますが、転記項目の書き出しと旅券との照合が手作業で残ります。本格構成で15分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、日付と綴りの照合が、1通ずつの手作業だからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、品質スコアの低い写真がどの経路から多く届くか、直しの多い言語がどれかが分かります。そこを直してから本格構成に進むほうが、食い違いの一覧が短くなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
45 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  120件 × 45分 ÷ 60 = 90 時間/月
導入後 120件 × 15分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
60h
削減率
67%
年間削減時間
720h
年間金額換算(時間単価3,500円)
252万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 在留資格の認定・変更・更新の申請を月に数十件取り次ぐ行政書士事務所で、依頼者の国籍が多く、結婚証明書・出生証明書・卒業証明書・在職証明書の訳文を事務所で作っている場合。英語だけでなく、中国語・ベトナム語・ネパール語・タガログ語などの証明書が混ざり、言語ごとに読める職員が限られている場合。外国人を受け入れる人材会社や日本語学校で、在籍者の申請書類をそろえる部署がある場合。
向いていない
  1. 申請が月に数件で、訳文を外部の翻訳会社に出して足りている場合。扱う証明書がほぼ英語だけで、職員が全員読める場合。依頼者が訳文を自分で用意してくる運用が定着している場合。なお、どの在留資格で申請するか、どの書類を出すか、訳文の正確さを確かめて翻訳者として署名することは、行政書士と担当の職員に残ります。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の申請から、言語の違う証明書を15通選ぶ(うち数通は、日付の並びが紛らわしいものと、手書きの欄があるものを入れる)
  2. その15通について、事務所で作った訳文を用意する
  3. 証明書の画像を、手元のAIサービスに1通ずつ渡す
  4. 「この証明書を、行ごとに番号を付けて日本語に訳してください。氏名は訳さず原文のまま、日付は原文の文字列のまま書いてください。読めない箇所は〔判読不能〕と書き、補わないでください」と指示する
  5. 出てきた訳と、事務所の訳文を1行ずつ突き合わせる

15通は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「番号で照らせる下書きが出るのか」を確かめます。

出てきた内容判断
事務所の訳文と同じ内容が番号つきで出たOCRとワークフローの連携に進む
読めない箇所を補った、日付を直した指示の書き方で直る。構成は有効
写真の質で読めない通数が多い受け取り方が先。 撮り方の案内を作ってから試し直す

2行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、指示の厳守事項がなぜ要るのかが分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
読めない箇所を前後から補う〔判読不能〕と書かせ、補った訳文に署名することになると事務所で共有する
氏名の綴りが旅券にそろってしまう基本情報は参考と明記し、証明書の記載を直さないと指示する
日付の並びを決めつけるambiguous を許し、発行国の慣習は人が確かめる
仏暦・民国暦を換算し間違える換算は Python の規則で行い、AIにさせない
訳し落としに気づかない番号をそろえ、translated_ids の抜けで差し込みを止める
写真の照り返しで行が飛ぶ品質スコアで撮り直しを頼む。訳文を直すより早い
2か国語の併記の片方だけを訳すページごとの言語を見て、全部を訳す
担当者で訳語が違う用語集を作り、指示文と一緒に渡す
読めない言語の確認ができない根拠の番号だけを依頼者と確かめる
書類として足りるかをAIに聞く書かせない。 どの書類を出すかは行政書士が決める

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、AIが「それらしく整える」ところから出ています。整えた結果は読みやすいのに、原文と違う。 翻訳者として署名する訳文で、それがいちばん困ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 依頼者と家族の氏名、生年月日、出生地、婚姻の事実、学歴と職歴、そして証明書の番号です。本人を特定できる身分に関する情報がまとまっています。

  1. 渡す範囲を絞る … 生成AIに渡す依頼者の基本情報は、照合に要る氏名・生年月日・国籍だけにし、旅券番号は渡しません
  2. 訳文の正確さに責任を持つのは署名した人 … 出入国在留管理庁の案内では、翻訳が正確で翻訳者の署名があれば誰が訳してもよいとされています。AIの下書きであっても、署名した人が確かめた訳文として出ます
  3. 書類の選び方をAIに決めさせない … どの在留資格で申請するか、どの証明書を出すかは行政書士の判断です
  4. APIの利用条件を確かめる … 生成AIのAPIで、入力したデータがどう扱われるかを、契約する前に利用規約とデータの取り扱いの文書で確かめます
  5. 保存の期間を決める … 案件が終わったあと、画像・読み取り結果・下書きをいつまで残すかを、事務所の個人情報の取り扱いの規程に合わせて決めます
  6. 依頼者に説明する … 訳文の下書きにAIのサービスを使うことを、受任のときに依頼者へ伝えます

誤りが起きた場合のリスクは、原文と違う訳文に署名して出すことと、申請書に誤った日付や綴りを写すことの2つです。 前者は読めない箇所を補わせると起き、後者は日付と氏名を直させると起きます。どちらも、番号と原文の文字列を残す設計で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:旅券の記載の表と、用語集の種を作る

旅券から氏名の綴り・生年月日・国籍を入力する表を作ります。用語集は、過去の訳文から、発行機関・学位・役職の訳語を50語ほど拾うところから始めます。

2週目:15通で試す

言語の違う15通を手元のAIサービスに渡し、事務所の訳文と突き合わせます。読めない箇所を補っていないか、日付を直していないかを最優先で見ます。

3週目:撮り方の案内を作る

依頼者向けに、明るい場所で、真上から、照り返しを避けて撮ることを書いた案内を、よく扱う言語で1枚ずつ用意します。

4週目:読み取りから様式への差し込みまでをつなぐ

Make で案件フォルダを見張り、Document AI を呼び、番号を振り、訳文の下書きを様式に差し込むところまで作ります。この時点では転記項目の一覧を出さず、訳文の番号の照らし合わせだけを見ます。

2か月目: 転記項目の一覧と、暦の換算、旅券との突き合わせを足します。食い違いの一覧の件数を毎週数えます。3か月目以降: 1通45分が何分になったかを実測します。言語ごとの直しの数を見て、確かめる時間の見込みを言語別に決めた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-05/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
提出資料が外国語で作成されている場合は訳文(日本語)を添付すること(出入国管理及び難民認定法施行規則第62条)。翻訳が正確で翻訳者の署名があれば、誰が翻訳してもよいこと出入国在留管理庁: 出入国審査・在留審査Q&A2026-10-05
日本人の配偶者の認定申請で、申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書を出すこと。日本で発行される証明書は発行日から3か月以内のものを出すこと。提出書類が外国語の場合は訳文を添付すること出入国在留管理庁: 在留資格「日本人の配偶者等」(配偶者)2026-10-05
家族滞在で、身分関係を証する文書として戸籍謄本、婚姻届受理証明書、結婚証明書(写し)、出生証明書(写し)などを出すこと。外国語の書類には訳文を添付すること出入国在留管理庁: 在留資格「家族滞在」2026-10-05
技術・人文知識・国際業務で、大学等の卒業証明書や、関連する業務に従事した期間を証明する在職証明書等を出すこと。外国語の書類には訳文を添付すること出入国在留管理庁: 在留資格「技術・人文知識・国際業務」2026-10-05
Enterprise Document OCR がブロック・段落・行・単語・記号を検出し、傾きを補正すること。言語と手書きのヒントを BCP-47 で渡せること。品質スコアが0〜1で返り、0.5未満のときは原因が可能性の順に返ること。フォントスタイルの検出で手書きの判定が返ること。対応形式が PDF、GIF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP であることGoogle Cloud: Enterprise Document OCR2026-10-05
Enterprise Document OCR と Form Parser が200を超える言語に対応すること。Custom Extractor の生成AIによる抽出は正式な対応が英語だけで、Custom Classifier は英語だけであることGoogle Cloud: Document AI processor list2026-10-05
応答の Document に全文(text)と、ページ・段落・行などの要素があり、layout に textAnchor、信頼度、座標が含まれること。pages[].detectedLanguages[] にページごとの言語と信頼度が入ることGoogle Cloud: Handle the processing response2026-10-05
オンライン処理のファイルサイズが40MBまで、Enterprise Document OCR のオンライン処理が15ページまで、画像の解像度が1ページあたり40メガピクセルまで(PDFには適用されない)であることGoogle Cloud: Document AI limits2026-10-05
JSONスキーマを指定して構造化出力を返させられること。出力は構文として正しいJSONになるが、値はアプリケーションの側で検証すべきとされていることGoogle AI for Developers: Structured output2026-10-05

どの在留資格で申請し、どの証明書を出すかは、行政書士が判断してください。 本記事は出入国在留管理庁のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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