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相続手続きで集めた戸籍・除籍の証明書を読み取って、つながりを確かめ、相続関係説明図の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

相続手続のために集めた戸籍・除籍の証明書を読み取り、戸籍ごとの期間と、載っている人物の出生・婚姻・死亡などを書き出します。被相続人の出生から死亡までにすき間がないかを確かめ、相続関係説明図の下書きを作ります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
士業
対象部門
法務
対象業務
データ入力・転記/書類作成
主な課題
人手が足りない/入力作業が多い/確認ミスが多い
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
50h/月
AI導入後
18h/月
想定削減
64%
年間削減
384h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 預かった証明書と取り寄せた証明書を、案件ごとにまとめてスキャンする
  2. 補助者が1通ずつ読み、戸籍の種類、本籍、筆頭者、編製・改製・消除の日付を書き出す
  3. 載っている人物ごとに、氏名、生年月日、父母、続柄、出生・婚姻・離婚・養子縁組・認知・死亡・除籍などの事項を書き出す
  4. 被相続人について、出生から死亡までの戸籍が期間のすき間なくつながっているかを、日付を並べて確かめる
  5. すき間があれば、どの本籍地に何を請求するかを洗い出し、取り寄せを依頼する
  6. 相続人になりうる人物を洗い出し、表計算の様式で相続関係説明図を作図する
  7. 司法書士が、証明書の束と図を突き合わせて確認する
導入後(After)
  1. 人証明書を案件ごとにスキャンし、案件のフォルダに保存する
  2. 自動保存をきっかけに連携の仕組みが動き、ファイルの形式・ページ数・解像度を確かめる
  3. 自動OCRが証明書の文字を、要素ごとの信頼度、単語ごとの手書きかどうかの判定、ページごとの画像の品質スコアとともに返す
  4. 自動生成AIが、1通ごとに戸籍の種類、本籍、筆頭者、期間の日付と、人物ごとの身分事項を書き出す
  5. 自動日付の計算で、被相続人の出生から死亡までの戸籍が期間のすき間なくつながっているかを確かめる
  6. 自動通数をまたいで同じ人物と思われる記載をまとめ、候補として示す
  7. 自動人物と続柄と身分事項から、相続関係説明図の下書きを表計算の様式に書き出す
  8. 人補助者が、信頼度の低い箇所と手書きの箇所を画像と突き合わせて直す
  9. 人補助者が、すき間の一覧を見て取り寄せを依頼する
  10. 人司法書士が、相続人の範囲と順位を判断し、下書きの図を確定する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 預かった証明書と取り寄せた証明書を、案件ごとにまとめてスキャンする
  2. 補助者が1通ずつ読み、戸籍の種類、本籍、筆頭者、編製・改製・消除の日付を書き出す
  3. 載っている人物ごとに、氏名、生年月日、父母、続柄、出生・婚姻・離婚・養子縁組・認知・死亡・除籍などの事項を書き出す
  4. 被相続人について、出生から死亡までの戸籍が期間のすき間なくつながっているかを、日付を並べて確かめる
  5. すき間があれば、どの本籍地に何を請求するかを洗い出し、取り寄せを依頼する
  6. 相続人になりうる人物を洗い出し、表計算の様式で相続関係説明図を作図する
  7. 司法書士が、証明書の束と図を突き合わせて確認する

(a)読むこと自体に時間がかかる。 古い戸籍は手書きで、旧字体の漢字、元号の日付、崩した字が並びます。1通を読んで書き出すのに、慣れた補助者でも数分から十数分かかります。 20通あれば、それだけで1時間を超えます。

(b)すき間が申請の直前に見つかる。 4番目のつながりの確認は、書き出した日付を頭の中で並べる作業です。転籍の日と、新しい本籍での入籍の日が1日ずれているだけでも、すき間なのか記載の仕方なのかを確かめる必要があります。見落とすと、司法書士の確認の段階か、登記所から指摘を受けて初めて気づき、取り寄せ直しで数週間を失います。

(c)同じ人物を別人として扱う。 同じ人物が、婚姻の前後で違う氏で、別の戸籍に載っています。生年月日の読み違いが1か所あると、書き出した一覧の上では2人に見えます。 反対に、同じ名前の別人を1人にまとめてしまうこともあります。

(d)読み方の確かさが担当者で変わる。 手書きの戸籍を読み慣れた補助者と、横書きの証明書しか見たことのない補助者では、同じ1通を読んでも書き出す内容の確かさが違います。司法書士の確認の時間は、誰が書き出したかで大きく変わります。

  1. 【人】 証明書を案件ごとにスキャンし、案件のフォルダに保存する
  2. 【自動】 保存をきっかけに連携の仕組みが動き、ファイルの形式・ページ数・解像度を確かめる
  3. 【自動】 OCRが証明書の文字を、要素ごとの信頼度、単語ごとの手書きかどうかの判定、ページごとの画像の品質スコアとともに返す
  4. 【自動】 生成AIが、1通ごとに戸籍の種類、本籍、筆頭者、期間の日付と、人物ごとの身分事項を書き出す
  5. 【自動】 日付の計算で、被相続人の出生から死亡までの戸籍が期間のすき間なくつながっているかを確かめる
  6. 【自動】 通数をまたいで同じ人物と思われる記載をまとめ、候補として示す
  7. 【自動】 人物と続柄と身分事項から、相続関係説明図の下書きを表計算の様式に書き出す
  8. 【人】 補助者が、信頼度の低い箇所と手書きの箇所を画像と突き合わせて直す
  9. 【人】 補助者が、すき間の一覧を見て取り寄せを依頼する
  10. 【人】 司法書士が、相続人の範囲と順位を判断し、下書きの図を確定する

8番目で人が見るのは、全文字ではありません。 信頼度が低い箇所、手書きと判定された行、日付と氏名のように間違えると結論が変わる項目を優先して開きます。

10番目は、どの段階の構成でも人が行います。 相続放棄や遺産分割協議の結果は戸籍には載らず、戸籍の記載だけでは決まらない事情があります。下書きは戸籍に書かれた事実までで止めます。

02今回想定するシステム構成

構成図
戸籍・除籍の証明書(預かった原本、取り寄せた分)
   │  スキャン(画像またはPDF)
   ▼【トリガー】案件フォルダへの保存
Power Automate ── 形式・ページ数・解像度の確認
   ▼
Google Document AI(Enterprise Document OCR)
   │   文字・行・単語と信頼度、手書きの判定、画像の品質スコア
   ▼
Claude API ── 1通ごとに書き出す
   │   ① 戸籍の種類・本籍・筆頭者・期間の日付
   │   ② 人物ごとの氏名・生年月日・父母・続柄・身分事項
   ▼
Python ── 期間のつながりの計算、同じ人物の候補のまとめ
   ▼
相続関係説明図の下書き(表計算の様式)+ すき間の一覧
   ▼
【人】補助者が画像と突き合わせて直す → 【人】司法書士が確定
役割想定する製品代替候補
OCRGoogle Document AI(Enterprise Document OCR)Azure AI Document Intelligence(レイアウト モデル)
生成AIClaude API(戸籍と人物の事項の書き出し)OpenAI API、Gemini API
集計Python(期間のつながりの計算と、下書きの図の書き出し)Microsoft Excel(数式)
連携Power Automate(フォルダの監視、通知)Make、n8n
保管事務所のファイルサーバー(案件フォルダ)SharePoint、Box

OCRの候補から AWS Textract を外しているのは、日本語に対応していないためです。 Textract のドキュメントでは、対応している言語は英語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語とされています。英文の書類に限る製品で、戸籍を読む用途には使えません。

土台になるのは、Google Document AI の Enterprise Document OCR です。 PDFや画像から、ブロック・段落・行・単語・記号の単位で文字とレイアウトを検出する処理で、200を超える言語の文字を手書きも含めて抽出でき、日本語もその対象に含まれます。 傾きの補正や、データの性質に合わせた言語と手書きのヒントの指定もできます。

この構成で効くのは、3つの数値です。 1つ目は、段落や単語などレイアウトの要素ごとに付く信頼度。2つ目は、追加の機能であるフォントスタイルの検出を有効にすると単語の単位で返る手書きの判定。3つ目は、ぼやけや照り返しなど8つの観点でページごとに返る画像の品質スコアです。手書きの古い戸籍と、印字の新しい戸籍が同じ案件に混ざるので、どこから人の目を重く当てるかを、この3つで決められます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

案件フォルダに証明書のファイルが保存されたことを起点にします。 証明書は一度にそろわず、依頼人から預かった分、取り寄せた分、追加で取り寄せた分が日をずらして届きます。届いた分から読み取り、つながりの確認はそのたびにやり直します。 まとめて一度に処理する作りにすると、すき間の発見が遅れます。

ファイルは1通ずつ保存するのが理想ですが、実際には束をまとめてスキャンすることが多くなります。1つのPDFに何通入っていても受け付け、前処理で証明書ごとに分けます。

つながりの確認は、証明書が1通増えるたびに案件全体で計算し直します。 追加の1通が届いてすき間が埋まれば、すき間の一覧からその行が消えます。一覧が空になったことが、取り寄せの完了の合図です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
証明書の画像戸籍全部事項証明書、除籍謄本、改製原戸籍謄本など。スキャンした画像またはPDF案件フォルダ
読み取り結果文字・行・単語、要素ごとの信頼度、単語ごとの手書きの判定、ページごとの品質スコア、ページ上の位置Google Document AI
案件の情報被相続人の氏名と死亡の日(依頼時に聞き取ったもの)、依頼人との関係案件管理の表
字体の対応表旧字体・異体字と、事務所で入力に使う字の対応事務所で用意する一覧

質を決めるのは、2つ目の信頼度と手書きの判定です。 読み取りの結果をそのまま使うのではなく、どこを人が見るべきかの目印として使います。

案件の情報は、つながりの確認の起点にします。 被相続人の死亡の日が分かっていれば、最後の戸籍でその日の死亡の記載を探し、そこから時間をさかのぼって出生まで期間を埋めていきます。

字体の対応表は、事務所の運用で決めます。 戸籍に書かれた旧字体を、図の下書きで新字体に直すのか、そのまま残すのかは、提出先と事務所の方針で変わります。読み取りの段階では書かれたとおりの字を残し、置き換えは後段で行います。

Step3

データの取得方法を決める

読み取りは、連携の仕組みから Enterprise Document OCR の処理を呼ぶだけです。呼ぶときに、3つの設定を付けます。 言語のヒントに日本語(ja)を入れること、画像の品質スコアを有効にすること、フォントスタイルの検出(computeStyleInfo)を有効にすることです。応答のうち、使う部分は決まっています。

取るものどこから何に使うか
全文Document の text1通ごとの本文
段落・行・単語と位置pages の paragraphs、lines、tokens の layout行の区切りと、根拠の画像の位置
要素ごとの信頼度各 layout の confidence人が見る箇所の選び出し
手書きの判定tokens の styleInfo手書きの行を重く見る
画像の品質スコアpages の imageQualityScores取り直すページの選び出し

生成AIへは、全文と、行ごとの信頼度と手書きの判定の一覧をあわせて渡します。 行ごとの値は、行に含まれる単語の値から連携の仕組みで作ります。本文だけを渡すと、生成AIは読めていない箇所も読めたものとして扱います。信頼度を横に置くことで、「この日付は信頼度が低い」と出力に書かせることができます。

品質スコアは、読み取りの前の関門にします。 スコアは0から1で、1が完全な品質です。0.5を下回ると、ぼやけや照り返しなどの原因が、可能性の高い順に一覧で返ります。 そのページは書き出しに回さず、原因を添えて取り直しを依頼します。

位置の情報は、確認の画面で使います。 書き出した項目ごとに、その根拠になった行のページと位置を持たせておくと、確認のときに画像の該当箇所へ一度で移れます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … PDF、GIF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP のいずれかであることを確かめます
  2. ページ数とサイズの確認 … 1回の要求で待ち受けながら処理するオンライン処理は、15ページまで、ファイルサイズ40MBまでです。束のPDFがこれを超えるときは、6番目の分割を先に行います
  3. 画像の解像度の確認 … 画像の解像度は1ページあたり40メガピクセルが上限です(PDFには適用されません)
  4. 文字の大きさの確認 … 古い戸籍の欄外の書き込みや訂正の印は、本文より小さく書かれています。品質スコアの原因に「通常より小さい文字」が出たページは、解像度を上げて取り直します
  5. ロックの解除 … パスワードでロックされたPDFは、解除してから保存し直します
  6. 証明書ごとの分割 … 束でスキャンしたPDFを、証明書の見出しと認証文の位置を手がかりに1通ずつに分けます。分けた結果は人が一覧で確かめます
  7. 重複の検知 … 同じ証明書を依頼人と事務所が別々に取っていることがあります。本籍・筆頭者・種類が同じものに印を付けます

4番目を軽く見ないでください。 解像度が足りないだけの箇所は、読み違いと区別がつきません。 古い戸籍は、300dpi程度で取り込む運用を先に決めておきます。

6番目の分割には、束のままではなく1通ずつ読み取る理由があります。 1通ずつの読み取り結果を生成AIへ渡せば、ある証明書の記載が別の証明書の書き出しに混ざることが起きません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、1通ごとに書かれている事項を決まった項目へ書き出すことだけです。

書き出すもの中身判断できないときの扱い
戸籍の種類戸籍全部事項証明書/除籍謄本/改製原戸籍謄本 など見出しが読めなければ unknown
本籍・筆頭者書かれたとおりの字で信頼度が低ければ low_confidence
期間の日付編製・改製・転籍・消除の日と、その事由日付が読めなければ null、推測しない
人物ごとの事項氏名、生年月日、父母の氏名、続柄読めない字は 〓 のまま残す
身分事項出生、婚姻、離婚、養子縁組、認知、死亡、入籍・除籍と、その日付と相手方相手方が読めなければ空にし、理由を書く

元号の日付は、元号のまま書き出させ、西暦への換算は後段の計算で行います。 生成AIに換算させると、換算の誤りと読み取りの誤りが区別できなくなります。

させないこと理由
相続人の範囲・順位の判断戸籍に載らない事情がある。司法書士が判断する
期間のつながりの判断日付の計算で機械的に行う
読めない字の推測別人を作る原因になる
別の証明書の記載からの補完1通ごとの読み取りと、通数をまたぐ照合を分ける
字体の置き換え事務所の方針で後段が行う

4行目が、いちばん起きやすい失敗です。 ある戸籍で読めなかった生年月日を、別の戸籍に書かれた同じ名前の人物の生年月日で埋めると、その瞬間に、2人を1人と決めつけたことになります。 同じ人物かどうかは、1通ずつ書き出した後で、別の工程でまとめます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは司法書士事務所で、戸籍・除籍の証明書の記載を書き出す担当です。
渡すのは1通分の読み取り結果です。この1通に書かれていることだけを書き出してください。

【読み取り結果】{ocr_text}
【行ごとの信頼度と手書きの判定】{line_confidence}

【書き出す項目】
1. 証明書の種類、本籍、筆頭者
2. この戸籍の期間に関わる事項(編製、改製、転籍、消除)とその日付・事由
3. 載っている人物ごとの氏名、生年月日、父母の氏名、続柄
4. 人物ごとの身分事項(出生、婚姻、離婚、養子縁組、認知、死亡、入籍、除籍)
   と、その日付、相手方、どこから入りどこへ出たか

【厳守事項】
- 日付は書かれている元号のまま書いてください。西暦に直さないでください。
- 読めない字は推測せず「〓」としてください。
  それらしい字や、よくある名前に近づけないでください。
- 読めない日付は null とし、前後の記載から計算で埋めないでください。
- 信頼度が 0.8 未満の行から取った値には low_confidence を true にしてください。
- 手書きと判定された行から取った値には handwritten を true にしてください。
- 他の証明書の記載を前提にしないでください。この1通に無いことは書かないでください。
- 誰が相続人になるかは書かないでください。
- 各項目には、根拠にした行の番号を source_lines に入れてください。
- 戸籍の証明書でない書類と判断した場合は、document_type を other にして
  それ以上は書き出さないでください。

「元号のまま書く」を最初に置いているのは、誤りの出どころを分けるためです。 西暦への換算まで生成AIにさせると、日付が1年ずれていたとき、読み違いなのか換算の誤りなのかが分かりません。換算は計算で行えば、誤りは必ず読み取りの側にあります。

「よくある名前に近づけない」も同じ考えです。 崩した字が読めないとき、生成AIはありそうな名前を選びます。それは読み取りではなく創作です。 読めないことを記録するほうが、確認の段階で速く正しく直せます。

Step7

出力形式を固定する

1通ごとに、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "doc_id": "",
  "document_type": "koseki_zenbu | joseki | kaisei_genkoseki | other",
  "honseki": { "value": "", "low_confidence": false, "source_lines": [] },
  "hittousha": { "value": "", "low_confidence": false, "source_lines": [] },
  "period_events": [
    { "event": "hensei | kaisei | tenseki | shojo", "date_wareki": "", "reason": "",
      "low_confidence": false, "handwritten": false, "source_lines": [] }
  ],
  "persons": [
    { "name": "", "birth_wareki": "", "father": "", "mother": "", "relation": "",
      "events": [
        { "type": "birth | marriage | divorce | adoption | acknowledgment | death | nyuseki | joseki",
          "date_wareki": "", "counterpart": "", "from_to": "",
          "low_confidence": false, "handwritten": false, "source_lines": [] }
      ] }
  ]
}

1つ目の理由は、low_confidence と handwritten を項目ごとに持てることです。 確認の画面では、この2つが付いた項目だけを色で示します。全文字を見直す必要がなくなり、見るべき数十か所に絞れます。

2つ目は、period_events を独立させていることです。 期間のつながりの計算は、この項目だけを案件の全証明書から集めて並べます。人物の事項と混ぜないことで、計算の入力が決まった形になります。

3つ目は、source_lines で画像へ戻れることです。 下書きの図の1つの線が、どの証明書の何行目に基づくかをたどれます。

つながりの計算は、period_events から被相続人の在籍の期間を並べ、次のような一覧を出します。

期間証明書判定
出生 〜 昭和32年改製改製原戸籍謄本(本籍A)つながっている
昭和32年改製 〜 昭和45年婚姻による除籍除籍謄本(本籍A)つながっている
昭和45年婚姻 〜 平成15年転籍証明書なしすき間:本籍Bの戸籍が必要
平成15年転籍 〜 死亡戸籍全部事項証明書(本籍C)つながっている

3行目が、取り寄せを依頼する先になります。 婚姻で新しい戸籍が作られた先の本籍は、前の戸籍の除籍の事項に書かれているので、請求先の本籍地まで一覧に出せます。

同じ人物の候補のまとめも、計算の側で行います。 通数をまたいで、生年月日と父母の氏名がともに一致する記載を1人の候補とし、氏が違うものは婚姻や養子縁組の事項で説明がつくかを確かめます。どちらかが low_confidence のときは、まとめずに「同じ人物の可能性」として並べるだけにします。 まとめる判断は、確認の段階で人が行います。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
案件フォルダPower Automate のトリガー証明書のファイルの保存を検知する
Google Document AIAPI呼び出し(オンライン処理)文字・信頼度・手書きの判定・品質スコアを返す
Claude APIAPI呼び出し1通ごとの事項の書き出し
Python実行元号の換算、期間のつながりの計算、同じ人物の候補のまとめ、下書きの図の書き出し
案件管理の表読み取りと書き込み被相続人の情報を読み、すき間の件数と状態を書き込む
Teams通知すき間が見つかったとき、確認が済んだときに担当者へ

登記の申請の仕組みには、この構成からつなぎません。 出すのは、確認前の下書きの図とすき間の一覧までです。申請書に添付する図は、司法書士が確定させたものだけです。

Step9

人が確認する

全件、補助者と司法書士の二段階で確かめます。

  1. 分割の結果を見る … 束で読み込んだものが正しく1通ずつに分かれているか。ここが崩れると以降のすべてがずれます
  2. 色の付いた項目を画像と突き合わせる … low_confidence と handwritten の項目を、source_lines から画像の該当箇所を開いて直します
  3. 氏名と日付を優先する … 同じ人物かどうかと、期間のつながりの両方に効く項目です
  4. 同じ人物の候補を確かめる … 生年月日と父母の氏名が一致する記載のまとめ方を確かめます
  5. すき間の一覧を見て取り寄せる … 請求先の本籍地を確かめ、依頼します
  6. 司法書士が相続人を判断する … 下書きの図に、相続人の範囲と順位を書き込んで確定させます

2番目で直した値は、そのまま記録に残します。 どの項目を、何から何へ直したかが残れば、どの種類の戸籍で読み違いが多いかが分かり、スキャンの設定や確認の重点を見直せます。

目標は、1件54分です。 書き写す作業はなくなりますが、画像と突き合わせる時間、すき間を確かめる時間、図を確定させる時間は残ります。手書きの戸籍が多い案件ほど長くかかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
証明書でない書類が混ざるdocument_type が other。読み取らずに担当者へ
束の分割を誤る分割の一覧で人が直し、分け直して読み取る
文字が小さすぎる・かすれている信頼度が低く出る。300dpi程度で取り直す
日付が読めないnull のまま。つながりの計算ではその期間を「確認が必要」と出す
同じ名前の別人がいる生年月日と父母の氏名で分ける。一致しなければまとめない
同じ証明書が二度入る本籍・筆頭者・種類で照合し、1通として扱う
被相続人や相続人が日本国籍を有しない戸籍で相続関係を示せない部分がある。司法書士に回す
パスワード付きのPDF自動では開かない。解除して保存し直す
OCRが応答しない未処理として残し、翌回に読み取る

上から4行目が、この構成で最も多く起きます。 読めない日付を空のまま扱うのは不便に見えますが、すき間として一覧に出るので、必ず人の目に触れます。 推測で埋めた日付は、一覧から消えてしまいます。

Step11

記録を残す

  • 証明書のスキャン画像と、案件・受け取った経路(依頼人から預かった/事務所が取り寄せた)
  • OCRが返したJSONの全文
  • 1通ごとの書き出しのJSONと、人が直した項目の直す前と直した後
  • つながりの計算の結果と、そのとき案件にあった証明書の一覧
  • 同じ人物としてまとめた記載と、まとめた人
  • 司法書士が確定させた図と、確定の日

4つ目で「そのときの証明書の一覧」を残すのは、すき間の一覧が証明書の到着とともに変わるためです。 いつの時点で何が足りなかったかが分かれば、取り寄せにかかった日数を案件ごとに振り返れます。

04実装レベルの3段階

最小構成:画像を手でAIの画面に貼り、1通ずつ事項を書き出させる / 1通ごとの書き出し
半自動化:上記+OCRのAPIを呼び、信頼度と手書きの判定を付けて一覧に書き出す / 読み取りと、見るべき箇所の選び出し
本格構成:上記+案件フォルダを起点に動かし、期間のつながりを計算し、下書きの図とすき間の一覧まで出す / 書き出しから下書きの図まで

最小構成では、つながりの確認が自動になりません。 1通ずつの書き出しは速くなりますが、日付を並べる作業は人に残ります。確かめるための段階です。 半自動化で、1件150分が100分程度になります。 書き写す①の時間は大きく減りますが、つながりの確認②と作図③が残ります。本格構成で54分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、すき間の一覧と請求先の本籍地が、証明書が届くたびに出てくるからです。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
20 件
1件あたり現在時間
150 分
1件あたり導入後時間
54 分
現在  20件 × 150分 ÷ 60 = 50 時間/月
導入後 20件 × 54分 ÷ 60 = 18 時間/月
月間削減時間
32h
削減率
64%
年間削減時間
384h
年間金額換算(時間単価4,500円)
173万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 相続登記や預貯金の相続手続を月に十数件以上受任している司法書士事務所・行政書士事務所。1件あたり10通を超える戸籍・除籍の証明書を読み、人物と続柄を書き出す作業が補助者に集中している場合。取り寄せ漏れが申請の直前に見つかり、取り寄せ直しで日数を失っている場合。
向いていない
  1. 相続案件が月に数件の事務所。相続人が配偶者と子だけの単純な案件がほとんどで、戸籍の通数が少ない場合。証明書の画像を外部のサービスへ送ることを事務所の方針で認めていない場合。なお、誰が相続人になるかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 完了した相続案件から3件を選ぶ(手書きの戸籍を含む案件を1件入れる)
  2. 各案件の証明書から5通ずつ、合わせて15通を選ぶ
  3. 1通ずつ画像を手元の生成AIサービスに貼り、「この戸籍の証明書に書かれている本籍、筆頭者、期間の日付、人物ごとの氏名・生年月日・父母・続柄・身分事項を、書かれているとおりに書き出してください。読めない字は〓とし、推測しないでください。日付は元号のままにしてください」と指示する
  4. 出てきた内容を、当時の補助者の書き出しと突き合わせる

1件は必ず手書きの戸籍を含めてください。 横書きの印字の証明書だけで試すと、本番で最も時間のかかる部分を確かめないまま進むことになります。

出てきた内容判断
当時の書き出しとほぼ一致したOCRのAPIとつながりの計算に進む
読めない字を、ありそうな字で埋めた指示の書き方で直る。構成は有効
手書きの戸籍がほとんど読めないスキャンの設定が先。 取り直して同じ通数で試す

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
読めない字をありそうな字で埋める推測を禁じ、〓で残させる。 信頼度の低い項目に印を付ける
別の証明書の記載で空欄を埋める1通ごとの書き出しと、通数をまたぐ照合を別の工程にする
元号の換算を誤る生成AIに換算させない。 元号のまま書き出し、計算で換算する
同じ名前の別人を1人にまとめる生年月日と父母の氏名が一致したときだけ候補にし、人が確かめる
束の分割がずれる分割の結果を一覧で人が確かめてから読み取る
手書きの戸籍の精度が低い手書きの判定で重点を決める。300dpi程度で取り直す
細かい書き込みが読めない品質スコアの原因に小さい文字が出たページを、解像度を上げて取り直す
旧字体を勝手に新字体にする読み取りでは書かれたとおりに残し、置き換えは後段で行う
日付の読めない期間がすき間に見えるそのとおりに出す。すき間として人の目に触れることが目的
下書きの図をそのまま申請に使う司法書士が確定させた図だけを使う
AWS Textract で試そうとする日本語に対応していない(英文の書類に限る)。Google Document AI か Azure AI Document Intelligence を使う

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「空欄を嫌って埋める」という同じ癖から出ています。埋めた値は確認の画面で色が付かず、人の目を素通りします。 空欄のまま出すほうが、結果として速く正しく直ります。

下から2行目も、最初に決めておいてください。 下書きの図は見た目が整っているため、確定したものと取り違えやすくなります。様式に「下書き」の表示を入れ、確定の操作をした図だけから表示を外します。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 被相続人と相続人の氏名、生年月日、本籍、そして婚姻・離婚・養子縁組・認知などの身分事項です。戸籍には、依頼人自身も知らなかった親族関係が書かれていることがあります。

  1. 外部のサービスへ送る範囲を事務所で決める … 証明書の画像をOCRと生成AIのサービスへ送る設計です。送ってよいかを、事務所の方針と依頼人への説明の内容で先に決めてください
  2. 学習やログの扱いを確かめる … 利用するサービスの契約で、送ったデータがどう保存・利用されるかを確かめ、保存の期間を最小にする設定を選びます
  3. この構成は相続人の判断を代替しません … 出すのは戸籍に書かれた事実の書き出しと、期間のすき間までです。相続人の範囲と順位は司法書士が判断します
  4. 戸籍に載らない事情に注意する … 法定相続情報証明制度では、相続放棄や遺産分割協議の結果で実際には相続人とならない人も一覧図に記載され、推定相続人から廃除された人は記載されないとされています。戸籍の記載と、手続上の相続人は一致しないことがあります
  5. 下書きを依頼人にそのまま渡さない … 確認前の下書きには読み違いが含まれえます。依頼人へ渡すのは、司法書士が確定させたものだけです

誤りが起きた場合のリスクは、相続人を見落とすことと、相続人でない人を相続人として扱うことの2つです。 どちらも、読み違いを推測で埋めることと、期間のすき間を見落とすことから起きます。空欄を残す設計と、すき間の一覧で、人の目に必ず触れるようにします。

10まず何から始めるか

1週目:スキャンの設定をそろえる

事務所のスキャナーで、古い手書きの戸籍を300dpi程度で取り込めるかを確かめます。案件フォルダの構成と、ファイル名の付け方も決めます。 束で取り込むか1通ずつかを、ここで決めます。

2週目:15通で試す

完了した案件3件から15通を選び、手元の生成AIサービスで書き出させます。当時の書き出しと突き合わせ、読めない字を推測で埋めていないかを最優先で見ます。

3週目:つながりの規則を書き出す

司法書士が、期間のつながりを確かめるときに何と何を比べているかを書き出します。転籍の日と入籍の日、改製の日と新しい戸籍の編製の日のような対応を、規則の表にします。 これがつながりの計算の仕様になります。

4週目:OCRから書き出しまでをつなぐ

案件フォルダを見張り、OCRを呼び、1通ごとの書き出しを一覧にするところまで作ります。この時点では、つながりの計算と下書きの図は出さず、書き出しの一覧だけを確かめます。

2か月目: つながりの計算とすき間の一覧を足し、完了した案件で過去の結果と一致するかを見ます。3か月目以降: 下書きの図の書き出しを足し、1件150分が何分になったかを実測します。すき間の一覧が申請前に空になり、司法書士が図を直す箇所が安定した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-29/最終更新:2026-09-29
確認した内容情報源確認日
法定相続情報証明制度が、相続関係を一覧に表した図と戸除籍謄本等の束を登記所に提出し、登記官が確認した一覧図の写しを無料で交付するものであること(平成29年5月創設)。相続によって不動産を取得した相続人が、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、令和6年4月1日から義務化されたこと法務局: 「法定相続情報証明制度」について2026-09-29
申出の代理人として、親族のほか司法書士、行政書士等に依頼できること。被相続人の出生から亡くなるまでの戸除籍謄本を用意すること。相続放棄や遺産分割協議の結果で相続人とならない人も一覧図に記載され、推定相続人から廃除された人は記載されないこと。日本国籍を有しないなど戸除籍謄抄本を提出できない場合は制度を利用できないこと法務局: 法定相続情報証明制度の具体的な手続について2026-09-29
令和6年3月1日から本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになったこと(広域交付)。コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は除かれること。窓口に出向く必要があり、郵送や代理人による請求はできないこと法務省: 戸籍法の一部を改正する法律について2026-09-29
Enterprise Document OCR が、PDFや画像からブロック・段落・行・単語・記号を検出し、印刷された文字と手書きの文字に対応すること。傾きの補正、言語と手書きのヒントがあること。画像の品質スコアが0から1で返り、0.5未満のときは原因(ぼやけ、照り返しなど)が可能性の順に返ること。追加の機能のフォントスタイルの検出(computeStyleInfo)で、単語の単位で手書きの判定などが返ること。対応形式が PDF、GIF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP であることGoogle Cloud: Enterprise Document OCR2026-09-29
応答の Document に全文(text)と、ページごとの段落などの要素があり、各要素の layout に文字の位置(textAnchor)、信頼度(confidence)、座標が含まれることGoogle Cloud: Handle the processing response2026-09-29
Enterprise Document OCR が200を超える言語の文字を手書きを含めて抽出でき、日本語が対応言語に含まれることGoogle Cloud: Document AI processor list2026-09-29
オンライン処理のファイルサイズが40MBまで、画像の解像度が1ページあたり40メガピクセルまで(PDFには適用されない)であること。Enterprise Document OCR のオンライン処理が15ページまでであることGoogle Cloud: Document AI limits2026-09-29
Amazon Textract が対応している言語が、英語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語であることAWS Documentation: Amazon Textract best practices2026-09-29

相続人の範囲と順位の判断、提出する図の確定は、司法書士が行ってください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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