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介護記録・バイタル・服薬・夜間の離床の記録から転倒のおそれが高まった利用者を毎週見込み、見守りの重点と職員の申し送りの案を出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

介護記録・バイタル・服薬・夜間の離床の記録から、今後2週間に転倒するおそれが高まった利用者を毎週見込みます。上がった理由を添えて、見守りの重点と職員の申し送りの案を出します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Python
対象業界
介護/医療
対象部門
品質管理
対象業務
記録・議事録作成/集計・分析
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/引き継ぎができていない
AIで行う処理
予測
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
16h/月
想定削減
60%
年間削減
288h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. フロア会議の前に、介護リーダーが担当フロアの利用者の先週の介護記録を読み返す
  2. 看護職員がバイタルと服薬の変更を見て、気になる利用者をメモする
  3. 夜勤明けの職員から、夜間の離床やトイレの回数の多かった利用者を口頭で聞く
  4. 事故報告とヒヤリハットの表を開き、先週の分を確かめる
  5. 会議で気になる利用者を挙げ合い、見守りの重点を決める
  6. 決めた内容を、夜勤と日勤への申し送りに書く
  7. リスクマネジャーが全フロアの申し送りを集め、委員会の資料にまとめる
導入後(After)
  1. 自動毎週日曜の深夜、介護記録システム・服薬の表・離床センサー・事故報告の表から、先週分までの記録を書き出す
  2. 自動Claude API が先週の介護記録の自由記述を読み、決めた観察の項目が書かれているかを、根拠の文と一緒に抜き出す
  3. 自動Python が利用者ごとに、直近7日と前の4週を比べた特徴量を作る
  4. 自動ロジスティック回帰のモデルが、今後2週間に転倒するおそれを0〜1の点数で出し、先週の点数との差を出す
  5. 自動点数を押し上げた記録を、利用者ごとに3つまで日本語の理由として書き出す
  6. 自動フロアごとに、点数の上がり幅の大きい順の一覧を作る
  7. 自動一覧の上位の利用者について、Claude API が見守りの重点と申し送りの案を作る
  8. 人フロア会議で、介護リーダーと看護職員が一覧を見て、順番と理由を確かめる。違うと思う利用者は直し、理由を一言書く
  9. 人見守りの重点を決め、申し送りの案を直して夜勤・日勤へ渡す。服薬に関わることは看護職員から医師に相談する
  10. 自動2週間後に実際の転倒・ヒヤリハットを照らし、点数の当たり外れを残す
各工程の詳しい説明を読む
  1. フロア会議の前に、介護リーダーが担当フロアの利用者の先週の介護記録を読み返す
  2. 看護職員がバイタルと服薬の変更を見て、気になる利用者をメモする
  3. 夜勤明けの職員から、夜間の離床やトイレの回数の多かった利用者を口頭で聞く
  4. 事故報告とヒヤリハットの表を開き、先週の分を確かめる
  5. 会議で気になる利用者を挙げ合い、見守りの重点を決める
  6. 決めた内容を、夜勤と日勤への申し送りに書く
  7. リスクマネジャーが全フロアの申し送りを集め、委員会の資料にまとめる

(a)見立てがベテランの経験に頼っている。 「この人は便秘が続くと夜間にトイレへ行こうとする」「眠前の薬が変わった週は朝のふらつきが出る」。こうした結び付けは、記録の中に材料があっても、読み手が知っていなければ見えません。 ベテランが休みの週の会議では、気になる利用者の数が減ります。

(b)記録を読み返し切れない。 1人に1日10件、1週間で70件。担当フロア25名なら1,750件で、会議の前の1時間では読めません。 結局、記憶に残っている出来事から挙げることになります。

(c)夜間の様子が口頭で途切れる。 離床センサーの記録は機器に残っていますが、会議で使われるのは夜勤明けの職員の記憶です。夜勤者が会議に出ない日は、夜間の変化が会議に届きません。

(d)申し送りの書き方が人によって違う。 「転倒に注意」とだけ書く人もいれば、時間帯と見る点まで書く人もいます。夜勤の職員が受け取る申し送りの質が、書いた人で決まります。

  1. 【自動】 毎週日曜の深夜、介護記録システム・服薬の表・離床センサー・事故報告の表から、先週分までの記録を書き出す
  2. 【自動】 Claude API が先週の介護記録の自由記述を読み、決めた観察の項目が書かれているかを、根拠の文と一緒に抜き出す
  3. 【自動】 Python が利用者ごとに、直近7日と前の4週を比べた特徴量を作る
  4. 【自動】 ロジスティック回帰のモデルが、今後2週間に転倒するおそれを0〜1の点数で出し、先週の点数との差を出す
  5. 【自動】 点数を押し上げた記録を、利用者ごとに3つまで日本語の理由として書き出す
  6. 【自動】 フロアごとに、点数の上がり幅の大きい順の一覧を作る
  7. 【自動】 一覧の上位の利用者について、Claude API が見守りの重点と申し送りの案を作る
  8. 【人】 フロア会議で、介護リーダーと看護職員が一覧を見て、順番と理由を確かめる。違うと思う利用者は直し、理由を一言書く
  9. 【人】 見守りの重点を決め、申し送りの案を直して夜勤・日勤へ渡す。服薬に関わることは看護職員から医師に相談する
  10. 【自動】 2週間後に実際の転倒・ヒヤリハットを照らし、点数の当たり外れを残す

8番目が、この設計の分かれ目です。 会議の時間は変わりませんが、記録を読み返す代わりに、変化の大きかった利用者の理由を読むところから始められます。 一覧に出ていない利用者を職員が挙げることも、当然あります。

2番目と4番目を分けているのも、意図してのことです。 生成AIは記録に書かれていることを抜き出すだけで、点数はモデルが付けます。抜き出しの誤りと、点数の誤りを、別々に確かめられます。

02今回想定するシステム構成

構成図
介護記録システム(記録・バイタル・排泄)  服薬の表  離床センサー  事故報告・ヒヤリハット
   │                                        │          │            │
   ▼【トリガー】毎週日曜 2:00 の定時実行
Claude API ── 介護記録の自由記述から観察の項目を抜き出す(根拠の文つき)
   ▼
Python(pandas で利用者ごとに結合・7日の時間窓で特徴量の作成)
   │   夜間の離床の回数の変化/眠前の薬の変更/血圧の低下
   │   観察の項目の出現/過去の転倒・ヒヤリハット
   ▼
Python(scikit-learn のロジスティック回帰+点数の目盛りの較正)
   │   今後2週間に転倒するおそれの点数(0〜1)と先週からの差
   │   点数を押し上げた記録の上位3つ
   ▼
フロアごとの一覧(上がり幅の大きい順)
   │
   ├──▶ 上位の利用者だけ ── Claude API
   │        見守りの重点と申し送りの案
   ▼
【フロア会議で確かめ、申し送りを直して渡す】
   ▼
2週間後の転倒・ヒヤリハット ── 当たり外れの記録 ── 月1回の学び直し
役割想定する製品代替候補
実行環境Python(pandas・scikit-learn のロジスティック回帰)R、BigQuery ML
生成AIClaude API(観察の項目の抜き出し、見守りの重点と申し送りの案)OpenAI API、Gemini API
データの取得元介護記録システム・服薬の表・離床センサー・事故報告の表の書き出し各システムのAPI
一覧の出力先施設内の共有フォルダの表(フロアごと)介護記録システムの掲示板の機能
定時実行OSのタスクスケジューラクラウドのジョブ実行サービス

介護記録システムには書き込みません。 この構成は書き出された記録を読むだけで、申し送りは職員が直したうえで介護記録システムの申し送りの欄に貼ります。記録の項目や書き出しの形式は製品ごとに違うので、どの項目が取り出せるかを最初に確かめます。

モデルにロジスティック回帰を選ぶのは、理由を書き出せることと、件数が少なくても学べることのためです。 転倒は施設の事故の中では多いものの、100名の施設で月に数件です。2年分でも、学ばせる転倒は100件前後にとどまります。 この件数では、複雑なモデルは過去の転倒を覚えるだけになりがちです。LogisticRegression は既定で l2 の正則化がかかり(C の既定は1.0)、学習後の coef_ で特徴量ごとの向きと強さが読めます。

転倒は少数なので、class_weight='balanced' で重みを付けます。 クラスの頻度に反比例する重みが n_samples / (n_classes * np.bincount(y)) で付きます。重みを付けると、点数は実際の割合より高めに出ます。 そこで点数の目盛りを、較正で実際の割合に近づけます(第7章)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎週日曜の深夜2時に、定時で動かします。 フロア会議は週の前半に開かれ、会議の前に一覧がそろっている必要があります。深夜に回すのは、日曜の夜勤の記録が入り、かつ月曜の日勤が始まる前に終わる時間だからです。

毎日は回しません。 点数は毎日少しずつ動き、毎日の一覧は読まれなくなります。週1回の会議に合わせ、同じ曜日に同じ形で出します。 ただし、転倒・転落の事故が起きた日は、その利用者を翌朝の一覧に「直近の事故」として加えます。 転倒の直後の数週間は、再び転倒するおそれが高いからです。

モデルの学び直しは月に1回にします。 学び直すたびに点数の目盛りが変わるため、先週との差が比べられるよう、月の途中ではモデルを替えません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
介護記録の自由記述日時、記録者の職種、本文介護記録システムの書き出し
バイタル血圧(臥位・座位)、脈拍、体温、測定の時刻介護記録システムの書き出し
排泄夜間のトイレ介助の回数、便の有無介護記録システムの書き出し
服薬の変更薬の区分(睡眠薬・抗不安薬・降圧薬・利尿薬など)、開始・増量・減量・中止の日付服薬の管理の表
夜間の離床離床センサーの反応の日時離床センサーの記録
事故・ヒヤリハット発生の日時、種類(転倒・転落・ずり落ち)、場所事故報告・ヒヤリハットの表
基本の情報移動の手段(独歩・歩行器・車いす)、移乗の介助の程度、入所日介護記録システムの書き出し

質を決めるのは、4行目の服薬の変更です。 薬の名前のままでは特徴量になりません。看護職員が、薬を「眠気やふらつきに関わる区分」に分けた表を用意します。 区分の付け方は看護職員と嘱託医で決め、この構成では決めません。

5行目の離床センサーは、夜間の様子を残す唯一の記録です。 ただし、センサーを使っている利用者は限られます。センサーの無い利用者は「記録なし」として扱い、離床の回数を0にしません。

6行目の事故報告は、学習の正解になります。 正解のラベルは「今後14日以内に転倒・転落の事故報告がある」とし、ヒヤリハット(転倒しかけた)は正解に含めず、特徴量の側で使います。 どこまでを転倒と数えるか(ずり落ちを含めるか)は委員会で決めます。

Step3

データの取得方法を決める

介護記録システムの書き出しの機能で、先週分までの記録をCSVで取り出す想定です。離床センサーは機器ごとに記録の取り出し方が違い、この部分は利用する機器に応じた個別実装が必要です。

介護記録の自由記述は、生成AIで観察の項目に変えます。 抜き出す項目は、委員会が決めた次のような一覧です。

観察の項目記録の例
ふらつき「立位でふらつきあり」「歩行時にふらつく」
自分で立ち上がろうとした「車いすから立ち上がろうとされる」
夜間の不穏「夜間何度も起きて声を出される」
足元・履物「靴のかかとを踏んでいる」「靴下のまま歩く」
痛みの訴え「膝の痛みの訴えあり」
食事・水分の低下「昼食3割」「水分の摂取が少ない」

特徴量は、7日の時間窓と4週の時間窓で作ります。 pandas の rolling は、'7D' のような期間の指定で、期間に入る記録の数が日によって違う窓を作れます。期間で窓を指定したとき、min_periods の既定は1です。記録が1件しかない週も値が出るので、件数も特徴量に含めて、少ない記録から出た値を見分けます。

特徴量作り方
夜間の離床の回数の変化直近7日の回数 − 前の4週の週平均
夜間のトイレ介助の変化同上
眠気・ふらつきに関わる薬の変更直近14日に開始・増量があったか
座位の収縮期血圧の低下直近7日の平均と前の4週の平均の差
観察の項目の出現直近7日に各項目が記録されたか
直近のヒヤリハット直近14日の転倒しかけの件数
直近の転倒直近30日に転倒の事故があったか
移動の手段独歩・歩行器・車いすの区分
Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 利用者の照合 … 介護記録システムの利用者の番号を正とし、離床センサーの居室番号と結び付けます。居室の移動があった利用者は、移動の日付で結び付けを切り替えます
  2. 入院・外泊の期間を外す … 施設にいない期間は記録が無く、離床も0になります。その期間を窓から外さないと、戻った週の変化が大きく出すぎます
  3. 入所直後の扱い … 入所から4週未満の利用者は前の4週の比較ができません。点数を出さず、「入所直後」として一覧の別枠に入れます。 入所直後は環境に慣れておらず、職員が別に見るためです
  4. 自由記述の個人の情報を外す … 生成AIに渡す前に、本文から氏名・家族の名前・居室番号を置き換えます。利用者は番号だけで扱います
  5. 記録の重複の除去 … 同じ出来事が日勤と夜勤の両方で記録されることがあります。観察の項目は「その日に記録があったか」で数えます
  6. 値のそろえ … 回数・血圧・有無が混ざるので、学習時の平均と標準偏差で標準化します。毎週の点数づけでも、学習時の値を使います
  7. 時間順の分割 … 学習と検証は、時間の順に分けます

2番目を飛ばすと、退院して戻った利用者が毎回一覧の上位に入ります。 入院中は夜間の離床が0で、戻った週は普段どおりでも「急に増えた」に見えるからです。

4番目の置き換えは、生成AIに渡す直前に必ず行います。 介護記録には、家族の名前や病名が書かれていることがあります。観察の項目を抜き出すのに、それらは要りません。

Step5

AIに処理させる

生成AIの出番は2回あります。 前段で介護記録から観察の項目を抜き出し、後段で上位の利用者の見守りの重点と申し送りの案を作ります。点数を出すのはロジスティック回帰だけです。

段させることさせないこと
Claude API(前段)決めた観察の項目が記録に書かれているかと、根拠の文の抜き出し項目の一覧に無い観察の追加、転倒のおそれの判断
ロジスティック回帰今後2週間に転倒するおそれの点数、押し上げた記録の上位3つ対策の提案
Claude API(後段)見守りの時間帯と見る点、申し送りの文面の案点数の付け直し、服薬の変更の提案

点数の目盛りは、較正で整えます。 scikit-learn の CalibratedClassifierCV には、Platt のロジスティックのモデルに基づく sigmoid と、より一般的な isotonic があり、ドキュメントでは isotonic は小さなデータでは過学習しやすく、十分なデータ(約1,000件超)があるときに sigmoid と同等以上とされています。転倒の件数は少ないので、sigmoid を使います。 較正の結果は、較正曲線(予測した点数と実際の割合を並べた図)で月に1回確かめます。

後段の生成AIにさせないこと理由
薬の変更・中止を勧める医師と看護職員が決めること
ベッド柵で囲う、車いすに固定するなど動きを制限する対策身体拘束にあたるかの判断は施設の委員会の手続きによる
認知症の進行や病気の悪化を推測する記録から言えることではない
点数や順位を申し送りに書く申し送りは見る点を伝えるもの

1行目と2行目がいちばん起きやすい失敗です。 「睡眠薬の増量」が理由に出ると、生成AIは親切に「睡眠薬の見直しを検討」と書きます。それは介護職員の申し送りに書くことではなく、看護職員から医師に相談する話です。

Step6

指示内容を固定する

前段(観察の項目の抜き出し):

あなたは介護施設の記録を読む補助をする立場です。
渡された1人の利用者の1週間分の介護記録から、
下の「観察の項目」が書かれているかを日ごとに判定してください。

【観察の項目】
fluctuation(ふらつき)/stand_attempt(自分で立ち上がろうとした)/
night_restless(夜間の不穏)/footwear(足元・履物の問題)/
pain(痛みの訴え)/intake_drop(食事・水分の低下)

【厳守事項】
- 記録に書かれていることだけで判定してください。推測で true にしないでください。
- true にした項目には、根拠にした記録の文をそのまま evidence に写してください。
- 一覧に無い観察を、新しい項目として足さないでください。
- 「ふらつきなし」のような否定の記録は false です。
- 転倒のおそれの高さを書かないでください。
- 記録が1件も無い日は、その日の項目をすべて null にしてください。

【記録】{care_notes}

後段(見守りの重点と申し送りの案):

あなたは介護施設のフロア会議の資料を作る補助をする立場です。
渡された理由(最大3つ)と記録の事実だけを使って、2つのものを作ってください。
(1) 見守りの重点:時間帯と、そのとき見る点を最大3つ
(2) 夜勤・日勤への申し送りの案:150字以内

【厳守事項】
- 薬の変更・中止・追加を勧めないでください。薬に関わる理由があるときは、
  「看護職員へ共有」とだけ書いてください。
- ベッド柵で囲う、車いすに固定する、居室から出られないようにするなど、
  利用者の動きを制限する対策を書かないでください。
- 病気や認知症の進行を推測して書かないでください。
- 点数、順位、「リスク」という言葉を申し送りに書かないでください。
- 見守りの時間帯は、渡された記録の時刻(離床やトイレの時刻)から書いてください。
  記録に無い時間帯を作らないでください。
- 情報が足りないときは、足りない項目名を missing_info に入れてください。

【利用者番号】{resident_no}
【理由(上位3つ)】{reasons}
【夜間の離床・トイレの時刻(直近7日)】{night_times}
【観察の項目の根拠の文】{evidence}

前段で「否定の記録は false」を明記しないと、「ふらつきなし」を true にします。 介護記録には、確かめた結果として「異常なし」「ふらつきなし」が多く書かれています。語が含まれているだけで拾うと、丁寧に記録している利用者ほど点数が上がります。

後段で時間帯を記録から書かせるのは、申し送りを使える形にするためです。 「夜間は注意」ではなく、「2時台と4時台に離床が多い」と書かれていれば、夜勤の巡回の順番を決められます。

Step7

出力形式を固定する

前段も後段も、Claude API の構造化出力(output_config.format に type: "json_schema")で形を固定します。 一覧の1行は、次の形にまとめます。

{
  "resident_no": "R-042",
  "week": "2026-10-04",
  "floor": "2F",
  "score": 0.22,
  "score_prev": 0.09,
  "score_change": 0.13,
  "reasons": [
    { "feature": "night_bed_exit_change", "text": "夜間の離床が直近7日で14回(前の4週は週5回)" },
    { "feature": "sedative_increase", "text": "眠前の薬が9月28日から増量" },
    { "feature": "obs_fluctuation", "text": "10月2日の記録に「朝の立位でふらつきあり」" }
  ],
  "watch_points": [
    { "time_band": "2時台", "point": "" }
  ],
  "handover_draft": "",
  "share_with_nurse": true,
  "missing_info": [],
  "staff_override": { "keep": null, "note": "" }
}

score から reasons までは Python が埋め、watch_points handover_draft share_with_nurse missing_info は後段の生成AIが埋めます。staff_override は会議で直したときに書きます。

1つ目の理由は、点数と文面を分けられることです。 生成AIの出力に点数の欄が無いので、文面から点数が書き換わる経路がありません。 150字以内かどうかは、構造化出力のスキーマでは文字数の制約が使えないとされているため、受け取った後に確かめます。

2つ目は、share_with_nurse で看護職員への共有を分けられることです。 理由に服薬が入っていれば true になり、一覧の看護職員の欄に自動で載ります。 申し送りの文面に薬のことを書かせずに、共有だけを確実にします。

3つ目は、score_change で並べ替えられることです。 一覧を点数の高さではなく上がり幅の大きい順に並べるため、もともと高い利用者が毎週上位を埋めることを避けられます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
介護記録システム書き出し(読み取りのみ)記録・バイタル・排泄・基本の情報
服薬の管理の表表の読み取り薬の区分と変更の日付
離床センサー機器ごとの取り出し方(読み取りのみ)反応の日時
事故報告・ヒヤリハットの表表の読み取り正解のラベルと、直近の件数
Claude APIAPI呼び出し観察の項目の抜き出し、上位の利用者の案
フロアごとの一覧共有フォルダの表への書き込み点数・理由・案

申し送りを介護記録システムへ自動で書き込むことはしません。 職員が会議で直した文面を、申し送りの欄に貼ります。直す前の案が、夜勤の職員に正式な申し送りとして届く経路を作りません。

後段の生成AIに回すのは、フロアごとに上がり幅の大きい5名までにします。 25名全員の案を作っても会議で扱えるのは数名で、利用者の記録を外へ渡す回数を増やすだけです。

Step9

人が確認する

フロア会議で、一覧の上位は必ず確かめます。 点数は記録から出したもので、職員が日々見ている表情や歩き方の変化は、記録に書かれていなければ入っていません。

  1. 上位5名の理由を読む … 理由が自分たちの見立てと合うかを確かめます。合わなければ staff_override に一言書きます
  2. 一覧に出ていない利用者を挙げる … 職員が気になっている利用者を加えます。加えた理由は、モデルに足りない材料の手がかりになります
  3. 見守りの重点を決める … 案の時間帯と見る点を、フロアの人員の配置に合わせて直します
  4. 看護職員へ共有する … share_with_nurse の利用者は、看護職員が医師に相談するかを決めます
  5. 申し送りを渡す … 直した文面を夜勤と日勤に渡します

前段の抜き出しも、月に1回は抜き取りで確かめます。 10名分の根拠の文を職員が読み、「ふらつきなし」が true になっていないかを見ます。

目標は、1人の利用者をならして2.4分です。 上位5名には理由を読んで案を直すので数分かかり、残りの利用者は一覧を流し見ます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
書き出しのファイルが1つ欠けている点数を出さずに止め、リスクマネジャーに知らせる
入院・外泊の期間窓から外す。戻った週は「退院直後」として別枠に入れる
入所から4週未満点数を出さず「入所直後」の別枠に入れる
離床センサーを使っていない「記録なし」として扱う。離床の回数を0にしない
居室の移動の登録漏れ別の利用者の離床が結び付く。居室ごとの反応の急な変化を検知して止める
前段の抜き出しに根拠の文が無い trueその項目を false に戻し、記録する
後段の案に禁じた語(薬の変更、固定、柵など)がある案を捨て、見守りの重点だけを出す
直近に転倒の事故があった翌朝の一覧に「直近の事故」として加える。点数とは別に扱う
Claude API が応答しない前段が無ければ観察の項目の特徴量を欠けた値として点数を出し、その旨を表示する

5行目の居室の移動は、気づきにくい誤りです。 移動の登録が遅れると、前の居室に入った別の利用者の離床が、その人の記録として数えられます。ある居室の反応が急に増えたら、利用者ではなく居室の結び付けを疑います。

Step11

記録を残す

  • 毎週の書き出しのファイルと、書き出した日時
  • 前段の生成AIに渡した記録(置き換えた後のもの)と、抜き出した項目・根拠の文
  • 利用者ごとの点数、先週の点数、理由の上位3つ、モデルの版と較正の版
  • 後段の案と、会議で直した最終の申し送り
  • 職員が直した記録(staff_override)と、一覧に無かったのに職員が加えた利用者
  • 2週間後の転倒・ヒヤリハットと、点数の当たり外れ

3つ目で較正の版を残すのは、月に1回学び直すためです。 学び直しで目盛りが変わると、先月の0.2と今月の0.2は同じ意味ではありません。

5つ目の「職員が加えた利用者」は、モデルを直すいちばんの材料です。 職員が繰り返し加える利用者に共通する記録が見つかれば、観察の項目の一覧に足すか、特徴量を作り直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:過去の転倒の前の記録を書き出し、手元のAIサービスで変化の差を見る / 変化が記録に出るかの確認
半自動化:上記+毎週の記録を書き出し、生成AIで観察の項目を抜き出し、離床・服薬の変化と合わせてフロアごとの一覧を出す(点数は出さない) / 記録の読み返しと、変化の書き出し
本格構成:上記+ロジスティック回帰で点数と上がり幅・理由を出し、上位の利用者に見守りの重点と申し送りの案を添え、当たり外れを記録する / 洗い出し・順番・申し送りの案の全体

半自動化だけでも、①の3分はほぼ消えます。 1週間分の記録を読み返す代わりに、観察の項目と変化が1行に並ぶからです。どの利用者を挙げるかは、職員が一覧を見て決めます。 本格構成で2.4分になり、この段階が本記事の想定です。 違いは、変化のうち転倒に結び付きやすいものが、上がり幅として先に並ぶことと、申し送りの案が最初から付いていることです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を2か月使うと、観察の項目の抜き出しの誤りが先に見つかります。抜き出しがずれたまま点数を作ると、ずれがそのまま理由に出てきます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
400 件
1件あたり現在時間
6 分
1件あたり導入後時間
2.4 分
現在  400件 × 6分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 400件 × 2.4分 ÷ 60 = 16 時間/月
月間削減時間
24h
削減率
60%
年間削減時間
288h
年間金額換算(時間単価2,800円)
81万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 入所の利用者が数十名から百名以上いる特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付き有料老人ホーム。介護記録・バイタル・服薬・離床センサーの記録が介護記録システムや機器からデータとして取り出せる場合。転倒の見立てがベテランの職員の経験に頼っていて、夜勤や新しい職員に伝わりにくい場合。過去2年以上の事故報告とヒヤリハットの記録が残っている場合。
向いていない
  1. 利用者が十数名で、職員が全員の様子を毎日見ているグループホームなど。介護記録が紙だけで、データとして取り出せない場合。離床センサーなどの機器が無く、夜間の様子が記録に残らない場合。なお、転倒を防ぐ具体的な対策の決定と、医療的な判断(服薬の見直しなど)は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去1年分の事故報告から、転倒の事故を20件選ぶ
  2. それぞれについて、転倒の前の2週間の介護記録・服薬の変更・離床の記録を書き出す
  3. 同じ時期に転倒しなかった利用者を同じ人数選び、同じ期間の記録を書き出す
  4. 利用者の名前を番号に置き換え、手元のAIサービスで「ふらつき」「立ち上がろうとした」などの項目が書かれているかを両方の群で数えさせる
  5. 服薬の変更と夜間の離床の変化を表に並べ、両方の群の差を見る。ベテランのリーダーの見立てと比べる

この段階ではモデルを作りません。 確かめたいのは、転倒の前の記録に、変化が出ているかどうかです。

出てきた内容判断
離床・服薬・観察の項目のいずれかに、はっきり差がある特徴量を作り、モデルの段階に進む
差はあるが、転倒した利用者はもともと全員が高い群上がり幅で並べる設計が効く。変化の特徴量を中心に作る
記録に差が出ていない記録の取り方が先。夜間の記録と観察の書き方を揃える

3行目が出たときは、記録の書き方に原因があることが多いです。 夜間の記録が「特変なし」だけで終わっていれば、変化は残りません。観察の項目の一覧を記録の書き方の目安として職員に配ることから始めてください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「ふらつきなし」で点数が上がる否定の記録を false にする指示を入れ、抜き取りで確かめる
丁寧に記録する職員の担当の利用者ほど点数が高い記録の件数を特徴量に入れ、件数の多さで点数が動いていないかを見る
退院した利用者が毎回上位に入る入院・外泊の期間を窓から外す
もともと高い利用者が毎週上位を埋める上がり幅で並べる。 高さは別の列で見る
点数0.3の利用者が実際にはほとんど転ばない重みで目盛りがずれた。較正(sigmoid)をかけ、較正曲線を見る
isotonic で較正したら検証で崩れた件数が少ない。sigmoid に戻す
センサーの無い利用者の離床が0になる「記録なし」として扱い、0にしない
居室の移動で別の人の離床が結び付く移動の日付で結び付けを切り替え、急な変化を検知する
申し送りの案に薬の見直しが入る指示で禁じたうえで、受け取り後に語を検知し、share_with_nurse で共有に回す
申し送りの案に動きを制限する対策が入る指示で禁じたうえで、受け取り後に語を検知して案を捨てる
会議で一覧しか見なくなった一覧に無い利用者を挙げる欄を必ず置く
学び直したら先週との差が比べられない学び直しは月1回、モデルと較正の版を残す

上の2行は、生成AIによる抜き出しの部分の失敗です。 どちらも、点数が記録の内容ではなく記録の書き方を反映してしまう形の誤りです。職員の記録の丁寧さが、利用者の点数になってはいけません。

5行目と6行目は、件数の少なさから来ます。 転倒は100名の施設で月に数件しかなく、目盛りを整える方法も、少ないデータに向いたものを選びます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 入所者の介護記録、バイタル、服薬、夜間の行動、事故の記録。健康と生活に関わる、最も慎重に扱うべき個人の情報です。

  1. 生成AIへ渡す前に置き換える … 氏名、家族の名前、居室番号は番号に置き換えます。病名や既往歴を観察の項目の抜き出しに渡す必要はありません。 自由記述にそれらが書かれていても、置き換えの範囲に入れるかを委員会で決めます
  2. 利用している生成AIの契約の条件を確かめる … 入力した内容が学習に使われない契約か、保存の期間はどうかを、導入前に法人の情報管理の担当と確かめます
  3. 点数を利用者と家族に見せない … 点数は職員が見守りの重点を決めるための道具です。家族への説明は、職員が記録の事実と見守りの内容で行います
  4. 動きを制限する対策に使わない … 点数が高いことを、ベッド柵や居室の施錠などの理由にしないでください。見守りの重点を決めるところまでが、この構成の用途です
  5. 医療的な判断に使わない … 服薬の変更や受診の判断は、看護職員と医師が行います。この構成は、看護職員へ共有する印を付けるまでです
  6. 偏りを見る … フロア、移動の手段、記録の件数で、上位に入る割合が偏っていないかをリスクマネジャーが月に1回見ます

誤りが起きた場合のリスクは、転倒のおそれが上がった利用者を見落とすことと、過剰な見守りで利用者の生活を狭めることの2つです。 前者は一覧に無い利用者を職員が挙げる時間で補い、後者は動きを制限する対策を案に出させないことで防ぎます。どちらも、最後に職員が会議で決める設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:転倒の定義と観察の項目を決める

委員会で、どこまでを転倒として数えるか(ずり落ちを含めるか)と、介護記録から抜き出す観察の項目の一覧を決めます。看護職員と嘱託医に、眠気やふらつきに関わる薬の区分の表を作ってもらいます。

2週目:過去の転倒で変化を確かめる

過去1年の転倒の事故20件について、前の2週間の記録を書き出し、転倒しなかった利用者と比べます。ベテランのリーダーの見立てと同じ変化が出ているかを見ます。

3週目:観察の項目の抜き出しを試す

1フロア分の1週間の自由記述を置き換えたうえで生成AIに渡し、観察の項目を抜き出させます。職員が根拠の文を読み、否定の記録を拾っていないかを確かめます。

4週目:半自動化の一覧を出す

離床センサーと居室の結び付け、入院・外泊の期間の除外を作り、変化を並べたフロアごとの一覧を会議で使います。この時点では点数を出しません。

2か月目: ロジスティック回帰で点数を出し、sigmoid で較正し、上がり幅で並べます。上位の利用者に見守りの重点と申し送りの案を添えます。3か月目以降: 2週間後の当たり外れを記録し、較正曲線と職員が加えた利用者を月に1回委員会で見ます。会議の前の読み返しの時間が何分になったかを実測し、職員が加えた利用者の記録から観察の項目を見直した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
LogisticRegression の既定の正則化が l2、C の既定が1.0であること。class_weight='balanced' が n_samples / (n_classes * np.bincount(y)) で重みを付けること。coef_ が特徴量ごとの係数であること。predict_proba が確率の推定値を返すことscikit-learn: LogisticRegression2026-10-06
CalibratedClassifierCV の sigmoid が Platt のモデルに基づき小さなデータに向くこと。isotonic が小さなデータで過学習しやすく、約1,000件超のデータで sigmoid と同等以上とされること。較正曲線が予測確率と実際の割合を比べるものであることscikit-learn: Probability calibration2026-10-06
rolling で '7D' のような期間の窓を指定でき、窓の中の記録の数が可変になること。期間で窓を指定したときの min_periods の既定が1であることpandas: DataFrame.rolling2026-10-06
構造化出力で output_config.format に type: "json_schema" を指定して応答をJSONスキーマに沿わせられること。文字数の制約がスキーマで使えないことClaude Docs: Structured outputs2026-10-06

転倒の定義、薬の区分、見守りの対策は、施設の委員会と看護職員・医師で決めてください。 本記事は製品の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。離床センサーの記録の取り出し方は機器ごとに違い、本記事では確かめていません。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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