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知財部の若手がAIに発明者役をさせて発明の聞き取りを練習し、聞き漏れた構成・効果・従来技術と質問の順番の振り返りを受ける

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

知財部の若手が、ChatGPT の演じる発明者から発明の内容を聞き取る練習をします。練習のあとに、聞き漏れた構成・効果・従来技術と、質問の順番について振り返りの下書きを受け取り、指導役が確かめて確定します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
IT・SaaS/士業/製造
対象部門
知財
対象業務
内容確認・チェック/記録・議事録作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/引き継ぎができていない
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/属人化解消/教育コスト削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
32h/月
AI導入後
8h/月
想定削減
75%
年間削減
288h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 指導役が、練習に使う過去の案件を選び、発明の要点を思い出してメモにする
  2. 若手と時間を合わせ、会議室で向かい合う
  3. 指導役が発明者役を演じ、若手が聞き取る(30分程度)
  4. 練習のあと、指導役が聞き漏れと聞き方について口頭で伝える
  5. 指導役が、振り返りの要点を自分のメモに残す
  6. 若手は、聞き取った内容で出願依頼書の練習版を書くこともある
導入後(After)
  1. 人指導役と知財部で、公開済みの出願からシナリオカード(発明者の人物像と隠れた事実の一覧)を作っておく
  2. 人若手が練習画面でシナリオカードを選び、練習を始める
  3. 自動ChatGPT が発明者役を演じ、聞かれたことにだけ答える。答えるたびに、どの隠れた事実を出したかを記録する
  4. 人若手が質問を重ね、終わったら聞き取りの要約を画面に書いて練習を閉じる
  5. 自動出てこなかった隠れた事実を、構成・効果・従来技術・実施例の幅・公開の予定の区分ごとに数える
  6. 自動ChatGPT が会話の記録と若手の要約を読み、質問の順番・聞き方・要約の誤りについて振り返りの下書きを作る
  7. 人指導役が下書きを読み、コメントを足して確定する
  8. 人若手は確定した振り返りを読み、同じシナリオカードでもう一度練習するかを決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 指導役が、練習に使う過去の案件を選び、発明の要点を思い出してメモにする
  2. 若手と時間を合わせ、会議室で向かい合う
  3. 指導役が発明者役を演じ、若手が聞き取る(30分程度)
  4. 練習のあと、指導役が聞き漏れと聞き方について口頭で伝える
  5. 指導役が、振り返りの要点を自分のメモに残す
  6. 若手は、聞き取った内容で出願依頼書の練習版を書くこともある

(a)発明者役が即興で、何を隠していたかが残らない。 3番目で指導役が何を話し、何を話さなかったかは記録されません。4番目の指摘は、指導役がその場で思い出せた範囲に限られます。 若手が「従来技術を聞かなかった」ことには気づけても、「代わりの材料を聞かなかった」ことは見落とされがちです。

(b)指摘の基準が指導役ごとに違う。 ある指導役は従来技術を、別の指導役は実施例の幅を重く見ます。同じ若手が指導役によって違う指摘を受け、どれを直せばよいかが分かりません。

(c)指導役の聞き方が引き継がれない。 指導役が本番で使っている質問の順番や言い回しは、練習の場で断片的に伝わるだけです。指導役が異動すると、その聞き方は部から消えます。

(d)回数を増やせない。 1回60分を指導役が抱えるので、月32回で手一杯です。本当に練習が必要なのは入社1年目で、その時期にこそ回数が足りません。

(e)指導役が演じると、若手が遠慮する。 向かいに座っているのは自分を評価する先輩です。分からないことを素直に聞き返す、同じことを言い方を変えて聞き直す、といった本番で必要な粘りが、練習の場では出にくくなります。 相手がAIなら、何度聞き直しても誰の時間も奪いません。

  1. 【人】 指導役と知財部で、公開済みの出願からシナリオカード(発明者の人物像と隠れた事実の一覧)を作っておく
  2. 【人】 若手が練習画面でシナリオカードを選び、練習を始める
  3. 【自動】 ChatGPT が発明者役を演じ、聞かれたことにだけ答える。答えるたびに、どの隠れた事実を出したかを記録する
  4. 【人】 若手が質問を重ね、終わったら聞き取りの要約を画面に書いて練習を閉じる
  5. 【自動】 出てこなかった隠れた事実を、構成・効果・従来技術・実施例の幅・公開の予定の区分ごとに数える
  6. 【自動】 ChatGPT が会話の記録と若手の要約を読み、質問の順番・聞き方・要約の誤りについて振り返りの下書きを作る
  7. 【人】 指導役が下書きを読み、コメントを足して確定する
  8. 【人】 若手は確定した振り返りを読み、同じシナリオカードでもう一度練習するかを決める

3番目と5番目が、この設計の分かれ目です。 聞き漏れは、AIの講評ではなく出てこなかった事実の数で決まります。同じシナリオカードなら、誰が練習しても同じ基準で比べられます。

8番目で同じカードをやり直せることも効きます。 振り返りで「公開の予定を聞いていない」と指摘された若手が、同じカードでもう一度練習すれば、今度は聞けたかどうかが事実の数でそのまま分かります。 指導役が演じる練習では、同じ題材を同じように演じ直すことができませんでした。

7番目を残すのも意図してのことです。 振り返りの下書きは、質問の順番や聞き方について一般論に寄りがちです。指導役が本番で使っている聞き方を一言足すことで、部の聞き方が若手に引き継がれます。

02今回想定するシステム構成

構成図
シナリオカード(公開済みの出願から作成)
   │  人物像・隠れた事実の一覧・開示の条件
   ▼【トリガー】若手が練習画面で練習を始める
練習画面(社内のWebページ)
   ▼
ChatGPT(OpenAI API)── 発明者役として答え、開示した事実のIDを返す
   │   ①答えの文   ②出した事実のID   ③会話を続けるか
   ▼
練習の終了(若手が聞き取りの要約を書いて閉じる)
   ▼
照合 ── 出てこなかった事実を区分ごとに数える
   ▼
ChatGPT(OpenAI API)── 質問の順番・聞き方・要約の誤りの振り返りの下書き
   ▼
【指導役が確認してコメントを足す】
   └──▶ 練習の記録(若手ごと・シナリオカードごと)
役割想定する製品代替候補
処理ChatGPT(OpenAI API。最小構成では ChatGPT の画面)Claude、Gemini、Microsoft Copilot
連携Python(練習画面、発明者役の指示の組み立て、会話の記録、開示した事実の照合)Google Apps Script
保管共有フォルダ(シナリオカード・練習の記録・確定した振り返り)-

新しく足すのは、練習画面と、シナリオカードの置き場だけです。 発明届出の受付や案件台帳とはつなぎません。練習は本番の案件と切り離しておくほうが、題材の扱いを決めやすくなります。

発明者役と振り返りの両方に、OpenAI の Responses API を使います。 会話を続ける方法は公式に3つ示されています。前の会話を毎回送り直す方法、前の応答のIDを previous_response_id で渡す方法、Conversations API で会話のオブジェクトを持つ方法です。この構成では、会話の記録を自社の側で持ち、毎回送り直す方法を取ります。 練習の記録をそのまま自社で保存でき、store を false にして OpenAI の側に応答を残さない設定と組み合わせられるからです。

発明者役の答えは、構造化出力で受け取ります。 text.format に json_schema を指定し strict を true にすると、渡したスキーマどおりのJSONが返るとされています。答えの文と、出した事実のIDを毎回分けて受け取れることが、聞き漏れを数える土台になります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

若手が練習画面でシナリオカードを選び、「練習を始める」を押したときに起動します。 予定を組む必要はありません。指導役の空き時間に合わせなくてよいことが、回数を増やせる理由そのものです。

会話は若手が質問を送るたびに1往復ずつ進みます。練習は若手が「聞き取りを終える」を押し、要約を書いた時点で閉じます。 要約を書かずに閉じることはできないようにします。聞いた内容を自分の言葉でまとめられるかも、練習の一部だからです。

振り返りの下書きは、練習が閉じたときに1回だけ作ります。指導役への通知は、下書きができた時点で送ります。 指導役は、手が空いたときにまとめて確かめればよく、練習の場に立ち会う必要はありません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
シナリオカード発明者の人物像、技術分野、隠れた事実の一覧(ID・区分・内容・開示の条件)共有フォルダ
会話の記録若手の質問と発明者役の答え、出した事実のID練習画面が保存する
若手の要約聞き取った発明の課題・構成・効果・従来技術などのまとめ練習画面
部の聞き取りの手引き聞く順番の目安と、必ず確かめる事項知財部が作る文書

質を決めるのは、シナリオカードの隠れた事実の一覧です。 1枚に15〜25個の事実を、次の区分で並べます。

区分事実の例
課題従来の固定具では、交換のたびに位置合わせに10分かかっていた
構成位置決めピンを2本にし、片方を長穴に入れる
効果交換が工具なしで済み、位置ずれが減る
従来技術他社のカタログに似た固定具があるのを発明者は知っている
実施例の幅ピンは金属でも樹脂でもよい。長穴の向きは2通り試した
失敗した試みピンを3本にしたら組み付けが難しくなった
公開の予定来月の展示会で試作品を出すつもりでいる

下の2行が、練習でいちばん差が出るところです。 失敗した試みは、請求の範囲をどこまで広げられるかの手がかりになります。公開の予定は、聞き漏らすと出願より先に発明が公になります。 特許法第29条は出願前に公然知られた発明などを特許の対象から外しており、第30条の新規性喪失の例外を使うには、出願と同時の書面と、出願から30日以内の証明書の提出が要ります。聞き取りの場で「発表の予定はありますか」と聞けるかどうかを、練習で確かめます。

Step3

データの取得方法を決める

シナリオカードは、自社の公開済みの出願から作ります。公開公報の明細書から、課題・構成・効果・実施例を事実の単位に分け、そこに発明者の人物像と、公報には書かれていない「話しぶり」を足します。

取るものどこから何に使うか
課題・構成・効果・実施例自社の公開済みの出願の明細書隠れた事実の大半
従来技術同じ明細書の背景技術の欄と引用文献従来技術の区分の事実
失敗した試み・公開の予定指導役が過去の聞き取りの経験から作る練習で差の出る事実
話しぶり指導役が作る(専門用語が多い、効果ばかり話す、など)発明者役の人物像

未公開の発明は題材にしません。 外部のAIサービスに渡すことになり、公開前の発明の内容が社外へ出ます。公開済みの出願なら、内容はすでに公になっています。 架空の発明を作る方法もありますが、事実どうしのつじつまが合わなくなりやすく、まずは公開済みの出願から始めるほうが確実です。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 事実にIDを振る … F01 から順に振り、区分を付けます
  2. 開示の条件を書く … 事実ごとに「どんな質問が来たら出すか」を1行で書きます。例:「従来はどうしていたかを聞かれたら」
  3. 必須の事実に印を付ける … 聞き漏らすと明細書が書けない事実(課題、構成の要素、効果、知っている従来技術、公開の予定)を必須にします
  4. 会話の長さを決める … 1回の練習は若手の質問30回までとし、超えたら終了を促します
  5. 指示文を組み立てる … 人物像、事実の一覧、開示の条件、答え方の決まりを1つの指示にまとめます

2番目が、発明者役の振る舞いを決めます。 開示の条件が「聞かれたら」とだけ書かれていると、AIは関係の薄い質問にも事実を出してしまいます。どの言葉の質問なら出すのかを、具体的に書きます。

事実悪い開示の条件良い開示の条件
F05 ピンは金属でも樹脂でもよい材料について聞かれたらピンの材料を変えられるか、ほかの材料で試したかを聞かれたら
F11 他社のカタログに似た固定具がある従来技術について聞かれたら似た製品や他社の例を知っているかを聞かれたら
F14 来月の展示会に試作品を出す予定について聞かれたら発表・展示・顧客への説明の予定を聞かれたら

左の列の書き方だと、「何か気を付けていることは」のような質問にもAIが事実を出します。 右の列のように、若手が実際に口にすべき言葉を条件に書くと、その言葉が出たかどうかで、聞けたか聞けなかったかが決まります。 開示の条件そのものが、部の聞き取りの手引きの言い換えになっていきます。

3番目の必須の印は、振り返りの重みを決めます。 必須でない事実(失敗した試みの細部など)の聞き漏れは、振り返りで触れても本番の失敗にはつながりにくいものです。必須の聞き漏れから先に指導役の目に入るよう、印で並べ替えます。

Step5

AIに処理させる

ChatGPT にさせることは2つです。 練習のあいだは発明者役として答えること、練習のあとは振り返りの下書きを作ることです。

発明者役としてさせること

させること決まり
聞かれたことに答える開示の条件に当たる事実だけを出す
話しぶりを守る人物像に書かれた癖(効果ばかり話す、専門用語が多い)を守る
出した事実を記録する答えるたびに、出した事実のIDを返す
あいまいな質問には、あいまいに答える「何か工夫はありますか」には、効果の話しかしない

4行目がこの練習の肝です。 本物の発明者は、漠然とした質問には自分が話したいことだけを話します。AIが親切に構成まで説明してしまうと、若手は「漠然と聞いても答えが返る」と覚えてしまいます。

振り返りとしてさせること

見るもの見方
質問の順番課題→構成→効果→従来技術→実施例の幅→公開の予定、の手引きの順と比べる
聞き方「〜ですよね」のような誘導の質問、1度に2つを聞く質問を挙げる
要約の誤り若手の要約に、発明者役が言っていないことが入っていないかを見る
聞き漏れの言い換え出てこなかった事実ごとに、どう聞けば出てきたかの質問例を1つ書く
させないこと理由
聞き漏れの判定出てこなかった事実の照合で決まる。AIの講評にしない
点数を付けること点数を目標にすると、質問の数を増やすだけの練習になる
出願すべきかの判断練習の目的ではなく、題材の発明についての判断は不要
一覧に無い事実を作ること発明者役がその場で設定を足すと、照合が崩れる

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 若手が一覧に無いことを聞くと、AIはもっともらしい答えを作ります。一覧に無いことは「そこまでは考えていない」と答えさせます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは製造業の開発部門の技術者で、知財部の担当者から
自分の発明について聞き取りを受けている立場です。
これは知財部の新人が聞き取りを練習するための場です。

【あなたの人物像】{persona}
【発明の分野】{field}

【隠れた事実の一覧】
{facts}  ※ID・区分・内容・開示の条件の表

【答え方の決まり】
- 相手の質問が、ある事実の「開示の条件」に当たるときだけ、その事実を話してください。
- 条件に当たらない事実は、自分から話さないでください。
- 漠然とした質問には、人物像に書かれた話題(効果など)だけで答えてください。
- 一覧に無いことを聞かれたら「そこまでは考えていない」「試していない」と答え、
  新しい事実を作らないでください。
- 1回の答えで出す事実は、多くても2つまでにしてください。
- 知財の専門用語を使わないでください。技術者の言葉で話してください。
- 相手が新人であることに触れたり、ヒントを出したりしないでください。

【出力】
- reply には、あなたの答えの文を入れてください。
- disclosed には、この答えで話した事実のIDをすべて入れてください。
  話していない事実のIDを入れないでください。
- 相手が聞き取りを終える挨拶をしたら、ended を true にしてください。

「新しい事実を作らない」を書かないと、AIは話を膨らませます。 練習の会話としては自然でも、照合の相手である事実の一覧から外れた話が増え、聞き漏れの数が意味を失います。

「出す事実は多くても2つ」も同じ理由で書きます。 1つの質問に一覧の半分を答えてしまうと、若手は何を聞けばよいかを考える前に、答えを受け取ってしまいます。

振り返りの下書きには、別の指示を使います。中心は次の4行です。

- 聞き漏れの一覧は {missed_facts} として渡します。これを増やしたり減らしたりしないでください。
- 質問の順番は、手引きの順 {guide_order} と比べて、入れ替わっていた箇所だけを挙げてください。
- 要約に、会話の記録に無い内容が入っていたら、その文をそのまま写して指摘してください。
- 出てこなかった事実ごとに、それを引き出せた質問の例を1つずつ書いてください。
Step7

出力形式を固定する

発明者役の1往復ごとに、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "reply": "",
  "disclosed": ["F03", "F07"],
  "ended": false
}

振り返りの下書きは、次の形で受け取ります。

{
  "session_id": "",
  "scenario_id": "",
  "missed": [
    { "fact_id": "", "category": "課題 | 構成 | 効果 | 従来技術 | 実施例の幅 | 失敗した試み | 公開の予定",
      "required": true, "example_question": "" }
  ],
  "order_issues": [ { "turn": 0, "comment": "" } ],
  "question_issues": [ { "turn": 0, "type": "leading | double | vague", "quote": "" } ],
  "summary_errors": [ { "quote": "", "comment": "" } ],
  "mentor_comment": ""
}

1つ目の理由は、聞き漏れを機械で数えられることです。 毎回の disclosed を集めれば、出た事実の集合ができます。シナリオカードの一覧からそれを引いたものが missed です。 ここはAIの判断ではなく、照合の処理が埋めます。

2つ目は、振り返りの各指摘に、会話の何回目かと、若手の発言の引用が付くことです。 turn と quote があれば、指導役は会話の記録を最初から読み直さずに該当箇所を確かめられます。

照合の処理は、missed を次の規則で埋めます。

状態扱い
どの往復の disclosed にも入っていないmissed に入れる
disclosed に入っているが、答えの文にその事実の言葉が無い人の確認に回し、missed には入れない
若手の要約に書かれているが、どの往復でも出ていないsummary_errors の候補として振り返りの指示に渡す

3行目は、若手が「聞いていないのに知っているつもり」になった跡です。 本番では、発明者が言っていないことを出願依頼書に書く失敗になります。

3つ目は、mentor_comment を空のまま渡すことです。 ここは指導役が書く欄で、AIには埋めさせません。 空のまま確定できないようにしておくと、指導役のひと言が必ず残ります。

構造化出力は、すべての項目を required にし、additionalProperties を false にしたスキーマで渡します。指摘が無い欄は空の配列で返るので、「見なかった」と「何も無かった」を区別できます。 応答が拒否や途中で切れた形で返ったときは、公式の説明どおり、受け取った側で確かめてから使います。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
練習画面社内のWebページシナリオカードの選択、会話、要約の入力
OpenAI APIResponses API(構造化出力、store は false)発明者役の答えと、振り返りの下書き
共有フォルダファイルの読み書きシナリオカードの読み込み、練習の記録の保存
Teams通知指導役へ、振り返りの下書きができたことを知らせる

案件台帳や発明届出の受付とはつなぎません。 練習の記録が本番の案件と混ざると、題材が公開済みの出願であることの確認が崩れます。

会話の記録は自社の側で持ちます。 毎回の要求に、それまでの会話をすべて付けて送る方式です。公式の説明では、この方式では会話の分だけ入力のトークンが増えます。質問の上限を30回にしているのは、練習の質のためだけでなく、費用の上限を決めるためでもあります。

Step9

人が確認する

指導役が開くのは、振り返りの下書きだけです。 練習に立ち会う必要はありません。

  1. missed のうち required のものを先に見る … 必須の事実の聞き漏れは、本番で特許事務所からの質問になります
  2. summary_errors を確かめる … 若手が聞いていないことを要約に書いていれば、本番で発明の内容を取り違える癖の表れです
  3. order_issues と question_issues は、会話の該当箇所を見て採否を決める … AIの指摘が的外れなら消します
  4. mentor_comment に、自分が本番で使う聞き方を一言書く
  5. 確定する … 確定した振り返りだけが若手に届きます

4番目を省かないでください。 AIの講評は一般論に寄ります。指導役の「自分ならこう聞く」が、部の聞き方を引き継ぐ唯一の経路です。

目標は、1回の振り返りを15分で確定することです。 それ以上かかる回が続くなら、シナリオカードの開示の条件があいまいで、AIが事実を出しすぎているか、出さなすぎています。

Step10

例外に対処する

起きること対応
発明者役が一覧に無い事実を話した会話の記録に印を付け、シナリオカードの開示の条件を見直す
disclosed に、話していない事実のIDが入った照合の前に、答えの文にその事実の言葉が含まれるかを確かめ、合わなければ人へ
若手が質問の上限に達した練習を閉じて要約を書かせる。上限で切れたことも振り返りに残す
若手が途中で画面を閉じた会話の記録を保存したまま、次に開いたときに続きから再開できるようにする
応答が拒否や途中切れで返ったその往復をやり直す。2回続けば練習を中断し、指導役へ知らせる
シナリオカードに未公開の発明が混ざったその場で練習を止め、カードを外す。 外部に送った範囲を記録する
同じ若手が同じカードを何度も使う3回目以降は別のカードを勧める。答えを覚えた練習になる

上の2行が、運用の初めに最も多く出ます。 どちらもAIの癖というより、開示の条件の書き方の問題です。 1枚のカードを数人で試してから、全員に出します。

Step11

記録を残す

  • 練習ごとの会話の記録(質問、答え、出した事実のID)と、若手の要約
  • 使ったシナリオカードの版と、そのときの事実の一覧
  • 振り返りの下書きと、指導役が直した点・足したコメント
  • 若手ごと・区分ごとの聞き漏れの推移
  • カードごとの、事実が出てこなかった割合

カードの版を残すのは、開示の条件を直すたびに結果が変わるためです。 版が違う練習を並べて比べると、若手の上達とカードの修正の効果が混ざります。

最後の行は、カードの点検に使います。 どの若手でも出てこない事実があるなら、開示の条件が厳しすぎるか、手引きでその事項を教えていないかのどちらかです。 若手を責める前に、カードと手引きを直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:ChatGPT の画面に発明者役の指示を貼り、会話して、出た事実を人が数える / 発明者役の演技
半自動化:上記+練習画面から API を呼び、出した事実のIDを毎回記録し、聞き漏れの照合と振り返りの下書きを自動で作る / 演技、聞き漏れの照合、振り返りの下書き
本格構成:上記+若手ごとの聞き漏れの推移から次に練習するカードを勧め、本番の聞き取り記録の点検とつなぐ / 練習の割り当てと、本番との結び付け

本記事の想定は半自動化です。 指導役の時間は、発明者役を演じる30分と題材の準備がなくなり、振り返りを確かめてひと言足す時間だけになります。 本格構成の「本番との結び付け」は慎重に扱います。 本番の聞き取り記録は未公開の発明そのものです。本番の記録を外部のAIサービスに渡すかどうかは、練習とは別に、社内の規程で決めてください。 段階を飛ばさないでください。 最小構成で1枚のカードの振る舞いを確かめないまま練習画面を作ると、事実を出しすぎるカードで全員が練習し、聞き漏れが0件の振り返りが並びます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
32 件
1件あたり現在時間
60 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  32件 × 60分 ÷ 60 = 32 時間/月
導入後 32件 × 15分 ÷ 60 = 8 時間/月
月間削減時間
24h
削減率
75%
年間削減時間
288h
年間金額換算(時間単価4,000円)
115万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 発明届出のたびに知財部の担当が発明者から聞き取りを行い、その内容で特許事務所へ出願を依頼している製造業・ソフトウェア企業・特許事務所。若手の担当が毎年入り、聞き取りの練習を指導役が発明者役を演じて行っているが、指導役の時間が足りず練習の回数を増やせない場合。自社の公開済みの出願を、練習の題材に作り直せる場合。
向いていない
  1. 発明届出が年に数件で、聞き取りの練習そのものの機会がほとんどない場合。聞き取りをすべて特許事務所に任せており、知財部が発明者と直接話さない場合。練習の題材に未公開の発明しか使えず、それを外部のAIサービスに渡せない場合。なお、出願するかどうかの判断や、特許を受けられるかの見込みはこの構成では扱いません。

07最小構成で試す方法

  1. 自社の公開済みの出願から1件を選び、隠れた事実を15個書き出す(公開の予定と失敗した試みを必ず入れる)
  2. 事実ごとに開示の条件を1行で書く
  3. ChatGPT の画面に、第7章の発明者役の指示と事実の一覧を貼り付ける
  4. 指導役が若手役になって、わざと漠然と聞いてみる。次に、手引きの順番で具体的に聞いてみる
  5. 2回の会話で、どの事実が出てきたかを数える

最初は指導役自身が試してください。 若手に出す前に、「漠然と聞くと出てこず、具体的に聞くと出てくる」振る舞いになっているかを確かめます。

出てきた内容判断
漠然と聞くと事実が出ず、具体的に聞くと出た練習画面と照合の仕組みに進む
漠然と聞いても事実を次々と話した開示の条件と「自分から話さない」の書き方で直る。構成は有効
一覧に無い事実を作って話した「そこまでは考えていない」と答える決まりを強める

2行目が出ることは珍しくありません。 AIは聞き手に親切に答えようとします。開示の条件を「〜という言葉を含む質問が来たら」のように具体的にすると、多くは直ります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
発明者役が全部を話してしまう開示の条件を具体的に書き、「自分から話さない」「1回に2つまで」を明記する
一覧に無い事実を作る「そこまでは考えていない」と答える決まりを入れる
disclosed が答えの文と合わない答えの文と照らして確かめ、合わない往復は人へ回す
振り返りが一般論になる引用(quote)と会話の回数(turn)を必須にする
点数を付けたくなる付けない。区分ごとの聞き漏れの数で十分
未公開の発明を題材にしてしまう公開済みの出願だけをカードにする。作るときに公開番号を記録する
同じカードで答えを覚える3回目以降は別のカードを勧める
指導役のコメントが空のまま確定されるmentor_comment が空なら確定できないようにする
公開の予定を聞く練習が抜けるすべてのカードに公開の予定の事実を入れ、必須にする
会話が長くなり費用が増える質問の上限を決める

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも発明者役が「親切すぎる」ことから起きます。本物の発明者に近づけるほど、練習として効きます。

下から2行目は、題材を作るときに必ず確かめてください。 本番の聞き取りで公開の予定を聞き漏らすと、出願より先に発明が公になります。 新規性喪失の例外を使う手続きはありますが、出願と同時の書面と期限のある証明書が要り、聞き取りの時点で分かっていれば避けられた手間です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 自社の公開済みの出願から作ったシナリオカード、若手の質問と要約、指導役のコメントです。未公開の発明、発明者の実名、本番の聞き取りの記録は扱いません。

  1. 題材は公開済みの出願に限る … シナリオカードを作るときに公開番号を記録し、公開前の発明が混ざっていないことを確かめてから使います
  2. 発明者の実名を使わない … 人物像は「話しぶり」だけを書き、実在の技術者を特定できる情報を入れません
  3. OpenAI 側に応答を残さない設定にする … Responses API は既定で応答を保存し、保存された応答は既定で30日残るとされています。store を false にし、会話の記録は自社の側で持ちます
  4. 学習に使われないことを確かめる … 公式の説明では、API に送ったデータは、明示的に同意しない限りモデルの学習に使われないとされています。利用の前に、自社の契約の設定をあわせて確認してください
  5. 練習の記録を人事の評価に使わない … 聞き漏れの数を評価に回すと、若手は練習で失敗しなくなります。失敗できる場であることが練習の価値です
  6. 本番の記録をAIに渡すかは別に決める … 本格構成で本番とつなぐ場合は、未公開の発明を外部へ出すことになるため、社内の規程で可否を決めます

誤りが起きた場合のリスクは、練習で身に付いた聞き方が本番でずれることです。 発明者役が親切すぎれば、漠然と聞いても答えが返ると覚えます。そこだけは、最小構成の段階で指導役が確かめます。

10まず何から始めるか

1週目:聞き取りの手引きを1枚にまとめる

指導役4名で、聞く順番の目安と、必ず確かめる事項を1枚に書き出します。課題、構成、効果、知っている従来技術、実施例の幅、失敗した試み、公開の予定。ここが振り返りの基準になります。

2週目:シナリオカードを1枚作り、指導役が試す

自社の公開済みの出願から1件を選び、隠れた事実と開示の条件を書いて、ChatGPT の画面で指導役が若手役を演じてみます。漠然と聞いたときに事実が出てこないかを最優先で見ます。

3週目:カードを3枚にし、若手2名で試す

分野の違う出願から3枚を作り、若手2名に練習してもらいます。出てこなかった事実を人が数え、振り返りを指導役が書きます。 この結果が、第10章の15分の確かめになります。

4週目:練習画面と照合をつなぐ

練習画面から API を呼び、disclosed を記録して、聞き漏れの照合と振り返りの下書きを出すところまで作ります。mentor_comment が空では確定できないようにします。

2か月目: 若手8名全員に広げ、カードを10枚に増やします。区分ごとの聞き漏れを毎週数えます。3か月目以降: カードごとの事実が出てこなかった割合を見て、開示の条件と手引きを直します。特許事務所から戻る質問が減っていることを確かめた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
発明の詳細な説明を、その分野の通常の知識を有する者が実施できる程度に明確かつ十分に記載すること、出願時に知っている文献公知発明の情報の所在を記載すること(第36条第4項)。出願前に公然知られた発明などは特許を受けられないこと(第29条)。新規性喪失の例外の適用には、出願と同時の書面と、出願から30日以内の証明書の提出が要ること(第30条)e-Gov 法令API: 特許法2026-10-08
発明の詳細な説明は、発明が解決しようとする課題とその解決手段など、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載すること(第24条の2)e-Gov 法令API: 特許法施行規則2026-10-08
Responses API で会話を続ける方法が、会話を送り直す方法・previous_response_id・Conversations API の3つであること。応答は既定で保存され store を false にできること。保存された応答は既定で30日残ること。会話を連ねると前の入力もすべて入力のトークンとして課金されることOpenAI: Conversation state2026-10-08
text.format に json_schema を指定し strict を true にすると、スキーマどおりのJSONが返ること。拒否(refusal)や途中切れの応答を受け取った側で確かめる必要があることOpenAI: Structured model outputs2026-10-08
API に送ったデータは、明示的に同意しない限りモデルの学習に使われないこと。不正利用の監視のためのログが最大30日保持されることOpenAI: Data controls in the OpenAI platform2026-10-08

練習の題材の扱いと、本番の記録をAIに渡すかどうかは、自社の規程で決めてください。 本記事は公式のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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