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他社の製品カタログ・仕様書を集めた社内のアーカイブを、自社特許の請求項の構成要件で毎月検索し、侵害の疑いのある製品の候補と対比表の下書きを知財担当へ出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

毎月集めた他社の製品カタログや仕様書を、自社の主要特許の構成要件ごとに検索し、記載の当たる製品を候補に挙げます。候補ごとに、構成要件と資料の記載箇所を並べた対比表の下書きを作り、知財担当へ渡します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
IT・SaaS/医療/製造
対象部門
法務/知財
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★★★
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
70%
年間削減
840h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 営業と展示会の担当が、他社の製品資料を共有フォルダの月のフォルダへ入れる
  2. 知財担当が月末に新しい資料を開き、製品の種類と概要を読む
  3. 監視対象の特許の一覧を見て、関係しそうな特許の見当をつける
  4. 見当をつけた特許の請求項と構成要件の分説を開き、資料の中で構成要件に当たる記載を探す
  5. 当たりそうな記載があれば、構成要件と記載箇所をメモにまとめる
  6. 疑いのある製品を権利活用グループの会議に出し、詳しい調査に進むかを決める
導入後(After)
  1. 人営業と展示会の担当が、資料を共有フォルダへ入れ、製品名・メーカー・入手元を登録する
  2. 自動月末に、その月の新しい資料の本文を取り出し、ページごとに分けて埋め込みを作り、アーカイブの索引に入れる
  3. 自動40件の特許の構成要件ごとに、その月の資料だけを対象にして検索する
  4. 自動製品ごとに、記載が当たった構成要件の数を数え、候補を決める
  5. 自動候補の製品ごとに、構成要件と検索で当たった記載を生成AIに渡し、対比表の下書きを作らせる
  6. 自動下書きの引用が、資料の本文に実際にある文字列かを確かめる
  7. 人知財担当が候補と対比表の下書きを開き、資料の該当ページを見て確かめる
  8. 人権利活用グループの会議で、詳しい調査(現物の入手、弁理士の見解)に進むかを決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 営業と展示会の担当が、他社の製品資料を共有フォルダの月のフォルダへ入れる
  2. 知財担当が月末に新しい資料を開き、製品の種類と概要を読む
  3. 監視対象の特許の一覧を見て、関係しそうな特許の見当をつける
  4. 見当をつけた特許の請求項と構成要件の分説を開き、資料の中で構成要件に当たる記載を探す
  5. 当たりそうな記載があれば、構成要件と記載箇所をメモにまとめる
  6. 疑いのある製品を権利活用グループの会議に出し、詳しい調査に進むかを決める

(a)資料が読まれないまま残る。 300件の資料を4名で1件ずつ読むと、それだけで月の多くの時間を使います。忙しい月は、資料の概要だけを見て閉じ、構成要件と照らすところまで行きません。 共有フォルダには、開かれたことの無い資料が何年分もたまっています。

(b)どの特許と照らすかが、担当者の記憶で決まる。 3番は、担当者が40件の特許のうちどれを思い出せるかに左右されます。自分が出願を担当した特許は思い出せても、前任者から引き継いだ特許は思い出しにくい。 照らすべき特許が抜けていても、誰も気づきません。

(c)語の検索では当たらない。 請求項は「第1の部材」「付勢手段」「制御部」のように書かれ、カタログには「ばね」「スプリング機構」「コントローラ」と書かれます。同じ構成を、まったく違う言葉で書いています。 共有フォルダの全文検索で請求項の言葉を探しても、ほとんど当たりません。

(d)対比表を一から書く。 疑いのある製品を会議に出すには、構成要件ごとに資料の記載箇所を並べた表が要ります。資料のページを行き来しながら、1製品で数十分かかります。 書くのが重いので、疑いの薄いものは表にせず、口頭で済ませてしまいます。

  1. 【人】 営業と展示会の担当が、資料を共有フォルダへ入れ、製品名・メーカー・入手元を登録する
  2. 【自動】 月末に、その月の新しい資料の本文を取り出し、ページごとに分けて埋め込みを作り、アーカイブの索引に入れる
  3. 【自動】 40件の特許の構成要件ごとに、その月の資料だけを対象にして検索する
  4. 【自動】 製品ごとに、記載が当たった構成要件の数を数え、候補を決める
  5. 【自動】 候補の製品ごとに、構成要件と検索で当たった記載を生成AIに渡し、対比表の下書きを作らせる
  6. 【自動】 下書きの引用が、資料の本文に実際にある文字列かを確かめる
  7. 【人】 知財担当が候補と対比表の下書きを開き、資料の該当ページを見て確かめる
  8. 【人】 権利活用グループの会議で、詳しい調査(現物の入手、弁理士の見解)に進むかを決める

4番が、この設計の分かれ目です。 1つの構成要件に記載が当たっても、それだけでは候補にしません。製品ごとに、いくつの構成要件に記載が当たったかで決めます。 請求項の構成要件は、全部を満たして初めて意味があるからです。

7番で知財担当が見るのは、300件の全部ではなく、候補になった製品です。 候補にならなかった資料は、その月の一覧に残り、必要なら後から検索できます。

02今回想定するシステム構成

構成図
【取り込み】他社の製品資料(カタログ・仕様書・取扱説明書・Webページの保存)
   ▼【トリガー】月末の定時実行
AWS Lambda ── 本文を取り出し、ページごとに分ける
   ▼
Amazon Titan Text Embeddings V2 ── ページの本文を埋め込み
   ▼
Amazon OpenSearch Service(製品資料のアーカイブの索引)

【照合】監視対象の特許40件 × 構成要件
   ▼
Amazon OpenSearch Service ── 構成要件ごとにハイブリッド検索(その月の資料だけ)
   ▼
AWS Lambda ── 製品ごとに当たった構成要件の数を数え、候補を決める
   ▼
Claude API(構造化出力)── 構成要件ごとの記載箇所を引用した対比表の下書き
   ▼
AWS Lambda ── 引用が本文にあるかを確かめる
   ▼
【人】知財担当が該当ページを確かめる → 権利活用グループの会議へ
役割想定する製品代替候補
検索基盤Amazon OpenSearch Service(ハイブリッド検索)Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search)
埋め込みAmazon Titan Text Embeddings V2(Amazon Bedrock)Cohere Embed、OpenAI の埋め込みモデル
生成AIClaude API(構造化出力。対比表の下書き)OpenAI API、Gemini API
連携AWS Lambda(取り込み、候補の集計、引用の検査)AWS Step Functions
保管Amazon S3(製品資料の原本と、月ごとの候補と対比表の記録)既存の共有フォルダ

特許管理システムと共有フォルダは、置き換えません。 特許管理システムからは監視対象の特許の請求項を読むだけです。最初の準備作業は、40件の特許の構成要件の分説を、検索に使える形にすることです。 分説そのものは知財担当がすでに持っていますが、構成要件ごとに検索の言葉を足す作業が要ります(第7章)。

検索の中心は、OpenSearch のハイブリッドクエリです。 公開されているドキュメントでは、ハイブリッドクエリは複数のクエリの関連度のスコアを1つのスコアに組み合わせるもので、スコアの正規化と組み合わせに検索パイプラインを使います。クエリの句は最大5つで、filter は1つのクエリとしてすべてのサブクエリに適用されます。 この構成では、語の一致の検索と、埋め込みによる意味の近さの検索を組み合わせ、filter で「その月に入った資料」に絞ります。

埋め込みには、Amazon Titan Text Embeddings V2 を使います。 入力は最大8,192トークンまたは50,000文字で、出力は既定で1,024次元です。英語に最適化されており、日本語は多言語対応の一覧に含まれます。 ドキュメントには、言語をまたいだ問い合わせ(ある言語の文書を別の言語で問い合わせる)は最適な結果にならないとも書かれています。日本語の構成要件で英語のカタログを探すと当たりにくいため、構成要件ごとに英語の検索の言葉も用意します。

対比表の下書きには、Claude の構造化出力を使います。 JSON スキーマに沿った応答が制約付きのデコードで保証され、スキーマに合わない応答をやり直す必要がありません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

月末の定時実行で動かします。 その月に共有フォルダへ入った資料を対象にします。資料が入るたびに動かさないのは、同じ製品の資料が数日に分けて入ることが多いからです。 カタログが先に入り、仕様書が後から入ると、1件ずつ照らしても構成要件がそろいません。製品ごとにまとめて照らすため、月の締めで動かします。

監視対象の特許を足したときは、臨時で過去の資料にもさかのぼって動かします。 新しく監視に入れた特許については、アーカイブの過去2年分の資料を対象にします。新しい特許を監視に入れた月だけ、件数が大きく増えます。

資料の登録の時点で、製品名とメーカーを必ず入れてもらいます。 製品ごとに構成要件を数えるので、製品が特定できない資料は候補の集計に入れられません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
製品資料カタログ・仕様書・取扱説明書のPDF、保存したWebページ共有フォルダ(S3 へ複製)
資料の登録情報製品名、メーカー、型番、資料の種類、入手元、入手日、言語営業・展示会の担当が登録
構成要件の分説特許番号、請求項、構成要件の記号(A・B・C…)と文言知財担当が用意
検索の言葉構成要件ごとの言い換え(日本語と英語)と、明細書に書かれた具体例知財担当が用意
対照の資料自社の実施品のカタログ自社の製品資料

質を決めるのは、4行目の検索の言葉です。 構成要件の文言は抽象的で、そのままではカタログの言葉に当たりません。明細書の実施例に書かれた具体的な部品名や、業界で使われる呼び方を、構成要件ごとに数語ずつ足します。 「付勢手段」なら「ばね」「コイルスプリング」「板ばね」「弾性部材」。特許法第70条第2項が、用語の意義は明細書の記載と図面を考慮して解釈するとしているのと同じ考え方で、言葉を足す根拠は明細書に置きます。

最後の行の対照の資料は、しきい値を決めるために使います。 自社の実施品は、その特許の構成要件をすべて備えているはずです。自社のカタログで全部の構成要件に記載が当たらなければ、検索の言葉か、しきい値が足りていません。

Step3

データの取得方法を決める

本文は、PDFの文字の層から取り出します。 画像だけのPDF(スキャンしたカタログ)は文字の層が無いため、取り出した文字数が極端に少ない資料に印を付けて、知財担当の一覧に出します。 保存したWebページは、本文の部分だけを取り出します。

ページごとに分けて索引に入れます。 カタログの1ページは、1つの機能や1つの部位の説明になっていることが多く、ページ番号を残しておけば、対比表の引用からすぐ元のページを開けます。 1ページの文字数が多い仕様書は、見出しで分けます。

索引の1件は、次の形にします。

{
  "doc_id": "2026-09-0142",
  "page": 7,
  "product_key": "メーカーX/型番ABC-200",
  "maker": "メーカーX",
  "doc_type": "catalog | spec | manual | web",
  "language": "ja | en",
  "acquired_month": "2026-09",
  "text": "(ページの本文)",
  "text_vector": [0.0]
}

検索は、構成要件1つにつき1回です。 構成要件の文言と検索の言葉を語の一致の句に、構成要件の文言の埋め込みを意味の近さの句に入れ、filter に acquired_month と language を入れます。 英語の資料には、英語の検索の言葉で別に検索します。

{
  "query": {
    "hybrid": {
      "queries": [
        { "match": { "text": "付勢手段 ばね コイルスプリング 板ばね 弾性部材" } },
        { "knn": { "text_vector": { "vector": [0.0], "k": 50 } } }
      ],
      "filter": { "bool": { "filter": [
        { "term": { "acquired_month": "2026-09" } },
        { "term": { "language": "ja" } }
      ] } }
    }
  }
}

句は2つだけにしています。 上限は5つですが、構成要件ごとに句の数が違うと、構成要件のあいだでスコアを比べにくくなり、しきい値をそろえられません。 検索の言葉は1つの句にまとめ、意味の近さの句と2つで組みます。filter は全部の句にかかるので、月と言語の絞り込みを句ごとに書く必要はありません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 登録情報の確認 … 製品名とメーカーが無い資料は、集計から外して担当者に戻します
  2. 重複の除去 … 同じ資料が別の担当から二重に入っていれば、ファイルのハッシュ値で1つにします
  3. 本文の取り出しと文字数の確認 … 文字の層が無い資料に印を付けます
  4. ページの分割 … ページごと、長いページは見出しごとに分けます
  5. 言語の判定 … ページごとに日本語か英語かを決め、language に入れます
  6. 埋め込みの作成 … ページの本文の埋め込みを作ります
  7. 構成要件の埋め込みの作成 … 40件の特許の構成要件の文言の埋め込みは、分説を変えたときだけ作り直します

3番目の印を見落とさないでください。 画像だけのカタログは、検索に1度も当たらないので、候補にもならず、問題があることにも気づけません。 印の付いた資料は、文字を読み取ってから入れ直すか、知財担当が目で見るかを決めます。

Step5

AIに処理させる

検索と候補の決定は、生成AIを使わずに行います。 構成要件ごとの検索の結果を、ワークフローが製品ごとにまとめ、記載が当たった構成要件の数を数えます。

当たった構成要件扱い
すべて候補(優先度:高)
1つを除いてすべて候補(優先度:中)。当たらなかった構成要件を明示する
それより少ない候補にしない。一覧に記録のみ

「1つを除いて」を候補に入れるのは、カタログに内部の構造が書かれないからです。 外から見える構成要件はすべて当たり、内部の1つだけが書かれていない製品は、現物を調べる価値があるかもしれません。

生成AIにさせるのは、候補の製品について、構成要件ごとに記載の状況を整理した対比表の下書きを作ることです。

させること中身
構成要件ごとの記載の状況described(当たりうる記載がある)/not_found(記載が見つからない)/unclear(記載はあるが、当たるかを資料からは決められない)
記載箇所の引用資料の本文の文字列を、そのまま写す。資料番号とページを付ける
確かめるべき点現物の入手や分解の調査で確かめるべきこと
させないこと理由
侵害か・技術的範囲に属するかの結論弁理士・弁護士と知財部門が判断する
均等の議論文言が違うものを同じとみなす判断は、専門家の検討の対象
記載の無い構成の推測「一般にこの種の製品は〜を備える」で described にしない
引用の要約・言い換え対比表の根拠は原文。要約すると記載の範囲が変わる

3行目が、いちばん起きやすい失敗です。 「制御部が〜を判定する」という構成要件に、カタログに「自動制御」とだけ書かれていると、一般的な製品の作りから推して described にします。 何を判定しているかが書かれていなければ unclear です。

Step6

指示内容を固定する

あなたは製造業の知財部門で、他社製品の監視を手伝います。
自社特許の請求項の構成要件と、他社の製品資料の該当しそうなページを渡します。
構成要件ごとに、資料にどう書かれているかを整理した対比表の下書きを作ってください。

【status の選び方】
- described .. 構成要件に当たりうる具体的な記載が、資料の本文にある
- not_found .. 渡したページに、この構成要件に関係する記載が無い
- unclear .... 関係する記載はあるが、構成要件に当たるかを資料からは決められない
迷ったときに described を選ばないでください。

【厳守事項】
- 判断の根拠は、渡した資料のページの本文だけにしてください。
  この種の製品の一般的な作りや、あなたの知識で補わないでください。
- quote には、資料の本文の文字列をそのまま写してください。
  要約、言い換え、翻訳をしないでください。
- 「侵害する」「技術的範囲に属する」「抵触する」と書かないでください。
  結論は書かず、記載の状況だけを書いてください。
- 文言が違うが同じ働きをする、という理由で described にしないでください。
  その場合は unclear にし、note に違いを書いてください。
- not_found と unclear のときは、to_verify に、現物や追加の資料で
  何を確かめればよいかを書いてください。
- 資料の書き手(メーカー)を批判する表現を書かないでください。

【特許】{patent_no} 請求項{claim_no}
【構成要件】{elements}(記号、文言、検索の言葉)
【製品】{product_key}
【検索で当たったページ】{hits}(資料番号、ページ、本文、どの構成要件の検索で当たったか)

「同じ働きをする、という理由で described にしない」を明記しています。 書かないと、構成要件の「ばね」とカタログの「ゴム製の緩衝材」を、働きが同じだからと described にします。文言の違うものをどう扱うかは、専門家が検討することです。 下書きの段階では、違いがあることを見せるところで止めます。

「侵害する」などの語を名指しで禁じているのは、この表が社内で回るからです。 下書きに結論めいた言葉があると、検討の前に結論が独り歩きします。

Step7

出力形式を固定する

構造化出力で、次の形のJSONを受け取ります。

{
  "patent_no": "",
  "claim_no": 1,
  "product_key": "",
  "elements": [
    { "element": "A",
      "status": "described | not_found | unclear",
      "quote": "",
      "doc_id": "",
      "page": 0,
      "note": "",
      "to_verify": "" }
  ],
  "summary_counts": { "described": 0, "not_found": 0, "unclear": 0 },
  "materials_needed": []
}

1つ目の理由は、elements をそのまま対比表の行にできることです。 構成要件の記号、文言、資料の記載、ページを並べれば、会議に出す表の形になります。知財担当は一から書かず、下書きを直すところから始められます。

2つ目は、quote と doc_id・page を機械で検査できることです。 ワークフローが、quote の文字列がその資料のそのページの本文に実際に含まれているかを確かめます。含まれていなければ、その行の status を unclear に書き換え、「引用を確認できない」と記録します。要約や言い換えが混ざった引用を、そのまま表に載せないためです。

3つ目は、status が enum で決まっていることです。 構造化出力では enum が使え、決めた3つ以外の値は返りません。 「おおむね該当」のような中間の言葉が表に入ることがありません。

4つ目は、materials_needed で次の調査をまとめられることです。 現物の入手、取扱説明書の追加の入手、分解の調査など、会議で決めるべき次の手が1か所に集まります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有フォルダS3 への複製製品資料の原本
Amazon BedrockAPI呼び出しページの本文と構成要件の埋め込み
Amazon OpenSearch Service索引への登録と検索アーカイブの索引、構成要件ごとのハイブリッド検索
Claude APIAPI呼び出し(構造化出力)対比表の下書き
特許管理システム読み取り監視対象の特許の請求項
知財担当の一覧社内の画面またはスプレッドシート候補と対比表の下書き、資料の該当ページへのリンク

特許管理システムには書き込みません。 候補と対比表は、知財部門だけが見られる場所に置きます。権利活用の検討の記録は、特許管理システムの案件とは分けて管理します。

しきい値は、対照の資料で決めます。 自社の実施品のカタログを、監視対象の特許ごとに検索させ、全構成要件に当たるときのスコアの分布を見ます。そのうえで、他社の資料で「当たった」とみなす値を決めます。しきい値を低くすると候補が増えて知財担当の確認が重くなり、高くすると見逃しが増えます。 最初の3か月は低めにして、候補の中で知財担当が「関係なし」とした割合を見ながら上げていきます。

Step9

人が確認する

知財担当は、候補になった製品の対比表の下書きを開き、資料の該当ページを見て確かめます。

  1. 優先度が高い候補を先に見る … すべての構成要件に記載が当たった製品です
  2. 該当ページを開く … 引用の前後を読み、構成要件に当たる記載なのか、言葉が似ているだけなのかを確かめます
  3. unclear と not_found を見る … 何を確かめれば決められるか(to_verify)を読み、現物の入手や追加の資料が要るかを決めます
  4. 会議に出すかを決める … 出すものは、下書きを直して対比表にします
  5. 関係なしとしたものに理由を残す … しきい値と検索の言葉の見直しに使います

2番目を省かないでください。 構成要件ごとの検索は、言葉が似ているページを拾います。「制御部」の検索で、制御盤の外形の寸法のページが当たることもあります。

目標は、300件をならして1件6分です。 候補にならなかった資料は一覧で数秒、候補になった製品は対比表と該当ページを見るので数十分かかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
製品名・メーカーが登録されていない集計から外し、登録した担当者へ戻す
画像だけのPDFで本文が取れない印を付けて知財担当の一覧へ。読み取ってから入れ直すか、目で見る
英語以外の外国語の資料言語を記録し、対象外として一覧へ。必要なら訳してから入れる
同じ製品の資料が月をまたいで入る製品ごとに過去の資料もあわせて集計する
引用が本文に見つからないその行を unclear にし、「引用を確認できない」と記録
対照の資料で全構成要件に当たらない検索の言葉かしきい値が足りない。その特許の照合の結果は使わない
候補が急に増えた検索の言葉の追加か、しきい値の誤りを疑う
生成AIが応答しない・拒否した候補と当たったページだけを一覧に出し、下書きなしで知財担当へ

6行目で照合の結果を使わないのは、見逃しを見逃しと気づけないからです。 自社の実施品で当たらない検索は、他社の同じ構成の製品でも当たりません。 その特許については、検索の言葉を直すまで、知財担当が従来どおり資料を見ます。

Step11

記録を残す

  • 月ごとの資料の一覧と、登録情報、本文の取り出しの結果
  • 構成要件ごとの検索の条件(検索の言葉、しきい値)と、当たったページとスコア
  • 製品ごとの当たった構成要件の数と、候補の判定
  • 対比表の下書きの全文と、引用の検査の結果
  • 知財担当の判定(会議に出したか、関係なしとしたか、その理由)
  • 構成要件の分説と検索の言葉の変更の履歴
  • 対照の資料での検索の結果(特許ごと、月ごと)

2つ目で検索の条件を残すのは、後で「なぜこの製品は候補にならなかったか」を説明するためです。 何年か後に、ある製品が権利の対象になりうると分かったとき、当時の検索の言葉としきい値が残っていれば、見逃した理由を確かめられます。

最後の行は、検索の質の記録です。 対照の資料で当たらなくなった月があれば、構成要件の分説か検索の言葉の変更が原因です。

04実装レベルの3段階

最小構成:構成要件と資料を手元のAIサービスに渡し、対比表を作らせる / 1件ごとの対比表の下書き
半自動化:上記+アーカイブの索引を作り、知財担当が特許を選んで構成要件ごとに検索する / 資料の検索と対比表の下書き
本格構成:上記+月末に全特許の構成要件で自動で検索し、製品ごとの集計、候補の決定、引用の検査まで行う / 監視の全体

半自動化で、1件20分が12分程度になります。 構成要件ごとの検索で記載を探す時間は減りますが、どの特許で検索するかを知財担当が選ぶため、第3章の(b)が残ります。 本格構成で6分になり、この段階が本記事の想定です。 40件の特許すべてを毎月機械が照らすので、思い出せなかった特許が抜けることがなくなります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の検索を知財担当が使うと、構成要件ごとに当たりやすい言葉と、当たらない言葉が分かります。それを検索の言葉に足してから全特許を自動にするほうが、候補の質がそろいます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  300件 × 20分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 300件 × 6分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
70h
削減率
70%
年間削減時間
840h
年間金額換算(時間単価5,000円)
420万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 機械・電機・電子部品・医療機器など、製品の構造や機能で特許を取っている製造業の知財部門。競合他社の新製品のカタログ・仕様書・取扱説明書・製品ページを営業や展示会から毎月集めているのに、自社特許と照らす作業が追いつかず、資料が読まれないまま保管されている場合。権利行使を検討する主要特許が数十件に絞られていて、請求項の構成要件の分説を知財担当が用意できる場合。
向いていない
  1. 特許の多くが製造方法や内部の処理に関するもので、カタログや仕様書に構成が書かれない場合。他社の製品資料を継続して集める仕組みが無い場合。監視する特許が数件で、知財担当が資料を全部読んでも月数時間で終わる場合。なお、他社製品が特許の技術的範囲に属するか、警告や交渉に進むかの判断は弁理士・弁護士と知財部門が行うもので、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 監視対象の特許から、構成要件の分説が整っているものを3件選ぶ
  2. 過去に権利活用の会議で取り上げた他社製品の資料と、関係の無い資料を合わせて30件集める
  3. 手元のAIサービスに、特許1件の構成要件と資料1件を渡す
  4. 「構成要件ごとに、資料に当たりうる記載があるかを described/not_found/unclear で示し、記載をそのまま引用してください。侵害かどうかは書かないでください。働きが同じという理由で described にしないでください」と指示する
  5. 出てきた対比表を、当時の会議の対比表と突き合わせる

2番目で、会議で取り上げた製品を必ず入れてください。 答えが分かっている資料で、当時の対比表と同じ構成要件に記載が当たるかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の対比表と同じ構成要件に、同じ箇所が引用されたアーカイブの索引と構成要件ごとの検索の構築に進む
働きが同じという理由で described にした指示の書き方で直る。構成は有効
資料に記載があるのに not_found が多い検索の言葉が先。 構成要件の文言だけでは当たらない

3行目の結果は、構成要件の文言が抽象的な特許ほど出ます。 明細書の実施例から、具体的な部品名を構成要件ごとに書き出してから、もう一度試してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
請求項の全文で検索して、何が当たったか分からない構成要件ごとに分けて検索し、製品ごとに数える
構成要件の抽象的な文言が当たらない明細書の実施例から具体的な部品名を検索の言葉に足す
英語の資料に当たらない言語をまたいだ問い合わせは最適な結果にならない。英語の検索の言葉を別に用意する
一般的な作りから推して described にする根拠を渡したページの本文に限り、迷えば unclear と指示する
引用が要約や言い換えになる本文に文字列が含まれるかを機械で確かめ、無ければ unclear に戻す
画像だけのカタログが候補にならない本文の文字数で印を付け、見逃しの原因にしない
1つの構成要件だけ当たった製品で候補が増える製品ごとに当たった構成要件の数で決める
しきい値を勘で決める自社の実施品のカタログで、全構成要件に当たるかを確かめる
製品名が無い資料が集計できない登録の時点で製品名とメーカーを必須にする
下書きが結論として社内で回る結論の語を禁じ、知財部門だけが見られる場所に置く

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、検索の質より前に、何で検索するかの問題です。構成要件の分説と検索の言葉が整っているかで、候補の質が決まります。

しきい値の行も、早く効いてきます。 対照の資料で確かめないまま動かすと、候補が出ないことを「侵害の疑いのある製品が無い」と読んでしまいます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 他社の製品資料(公開されているか、営業が受け取ったもの)、自社の特許の請求項と構成要件の分説、そしてどの他社製品を権利行使の候補として見ているかという検討の記録です。

  1. 検討の記録を知財部門の外へ出さない … 候補の一覧と対比表の下書きは、自社がどの他社製品に関心を持っているかを示す情報です。 置き場所と閲覧の範囲を知財部門に限ります
  2. 下書きを結論として扱わない … 対比表の下書きは、検討を始めるための材料です。他社製品が技術的範囲に属するかは、弁理士・弁護士の見解を得て判断します
  3. 他社に伝えるのは人が決める … 警告や交渉に進むかは、知財部門と経営の判断です。下書きを根拠に、営業が取引先や他社に「侵害している」と伝えることがないよう、扱いを社内に周知します
  4. 製品資料の入手の経路を記録する … 営業が客先で受け取った資料には、取引先との秘密保持の取り決めが付いているものがあります。 入手元を登録し、取り決めのある資料はアーカイブに入れるかを先に確かめます
  5. 外部のAIサービスに渡す範囲を決める … 公開前の自社の出願の内容は、監視の構成要件に入れません。監視に使うのは登録済みの特許の請求項だけにします

誤りが起きた場合のリスクは、疑いの無い製品を疑いがあると扱うことと、疑いのある製品を見逃すことの2つです。 前者は人の確認と結論の語の禁止で、後者は対照の資料でのしきい値の確認で防ぎます。どちらも、候補が出たことと出なかったことを、それ自体で結論にしない設計にしてあります。

10まず何から始めるか

1週目:3件の特許の検索の言葉を作る

監視対象の40件から、構成要件の分説が整っている3件を選び、構成要件ごとに、明細書の実施例から具体的な部品名と英語の言い換えを書き出します。

2週目:30件で試す

過去に会議で取り上げた製品の資料と関係の無い資料を合わせて30件、手元のAIサービスで対比表を作らせます。働きが同じという理由で described にしていないか、引用が本文のとおりかを最優先で見ます。

3週目:結果の扱いを決める

候補と対比表の下書きを、誰が見て、どの段階で弁理士・弁護士の見解を得るかを、権利活用グループで決めます。 あわせて、営業の資料の入手元と秘密保持の取り決めの扱いを決めます。

4週目:アーカイブの索引を作る

過去1年分の資料を索引に入れ、3件の特許で、知財担当が構成要件ごとに検索できる半自動化の形にします。自社の実施品のカタログで、全構成要件に当たるかを確かめます。

2か月目: 対象を10件の特許に広げ、月末の自動の照合と製品ごとの集計を足します。3か月目以降: 40件すべてに広げ、1件20分が何分になったかを実測します。対照の資料での確認と、関係なしとした理由をもとにしきい値と検索の言葉を見直す流れが毎月回った時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
ハイブリッドクエリが複数のクエリの関連度のスコアを1つに組み合わせ、検索パイプラインを使うこと。クエリの句が最大5つで、filter が1つのクエリとしてすべてのサブクエリに適用されることOpenSearch Documentation: Hybrid query2026-10-06
Titan Text Embeddings V2 の入力が最大8,192トークンまたは50,000文字、出力が既定1,024次元であること。英語に最適化され、日本語が多言語対応の一覧に含まれること。言語をまたいだ問い合わせが最適な結果にならないことAmazon Bedrock: Amazon Titan Text Embeddings models2026-10-06
構造化出力が制約付きのデコードで JSON スキーマに沿った応答を保証すること。enum が使えることClaude Docs: Structured outputs2026-10-06
特許法第70条:特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めること。用語の意義は明細書の記載と図面を考慮して解釈すること(e-Gov 法令API で条文を取得)e-Gov 法令API: 特許法2026-10-06

他社製品が特許の技術的範囲に属するか、警告や交渉に進むかは、弁理士・弁護士の見解を得て知財部門で判断してください。 本記事は公開仕様と条文で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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