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新製品の仕様から、他社特許に触れていないかを一次調査する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

開発中の製品の仕様を入力に、関係しそうな他社特許を絞り込み、請求項と自社仕様の対応表を作ります。知財担当の作業は、検索式を組んで数百件を目で選り分けることから、絞り込まれた候補を読んで判断することに変わります。

サマリー
利用ツール
Amazon Kendra/Azure AI/Azure OpenAI Service/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
IT・SaaS/医療/商社/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
96h/月
AI導入後
34h/月
想定削減
65%
年間削減
744h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 開発部門から調査依頼を受ける(製品仕様書、図面、想定する販売国)
  2. 知財担当が仕様を読み、技術的な特徴を洗い出す
  3. 特許分類(IPC、FI、Fターム)とキーワードを組み合わせた検索式を作る
  4. 特許データベースで検索し、結果を書き出す(200〜600件)
  5. 書誌情報と要約を見て、関係のないものを落とす
  6. 残った20〜40件について、請求項を読む
  7. 自社の仕様と請求項の構成要件を突き合わせる
  8. 検討が必要なものを整理して、報告書にまとめる
  9. 社内の弁理士または顧問の特許事務所に判断を仰ぐ
導入後(After)
  1. 開発部門から調査依頼を受ける
  2. 自動製品仕様書から、技術的な特徴を構成要件の形に分解する
  3. 知財担当が分解結果を確認し、調査の範囲を決める
  4. 自動構成要件ごとに、特許分類とキーワードの候補を提示する
  5. 知財担当が検索式を確定し、特許データベースで検索する
  6. 自動検索結果の書誌・要約・請求項を取り込み、意味の近さで並べ替える
  7. 自動上位の特許について、請求項の構成要件と自社仕様の対応表を作る
  8. 自動過去の調査で扱った特許があれば、そのときの結論を添える
  9. 知財担当が対応表を見て、精読する特許を選ぶ
  10. 請求項を読み、検討が必要なものを整理する
  11. 社内弁理士・特許事務所に判断を仰ぐ
  12. 自動結論を調査台帳に登録し、次回の参照対象にする
各工程の詳しい説明を読む
  1. 開発部門から調査依頼を受ける(製品仕様書、図面、想定する販売国)
  2. 知財担当が仕様を読み、技術的な特徴を洗い出す
  3. 特許分類(IPC、FI、Fターム)とキーワードを組み合わせた検索式を作る
  4. 特許データベースで検索し、結果を書き出す(200〜600件)
  5. 書誌情報と要約を見て、関係のないものを落とす
  6. 残った20〜40件について、請求項を読む
  7. 自社の仕様と請求項の構成要件を突き合わせる
  8. 検討が必要なものを整理して、報告書にまとめる
  9. 社内の弁理士または顧問の特許事務所に判断を仰ぐ

問題は5つあります。

(a)検索式の出来が担当者に依存する。 特許分類とキーワードの組み合わせ方で、結果が大きく変わります。「漏れなく、絞り込む」の加減が、経験のある1名に集中しています。

(b)表現が違うと当たらない。 自社が「送液機構」と呼ぶものが、他社の明細書では「流体搬送手段」「ポンプユニット」と書かれています。キーワード検索では取りこぼします。

(c)スクリーニングに4時間かかる。 600件の書誌と要約を見る作業が、調査時間の半分を占めます。

(d)過去の調査結果が再利用されていない。 同じ技術分野の調査を半年前にもやっているのに、そのときの結論が探せません。同じ特許を何度も読んでいます。

(e)調査のタイミングが遅い。 設計が固まってから調査するため、問題が見つかったときの手戻りが大きくなります。早く回せないことが、この業務の本当の課題です。

  1. 開発部門から調査依頼を受ける
  2. 【自動】 製品仕様書から、技術的な特徴を構成要件の形に分解する
  3. 【人】 知財担当が分解結果を確認し、調査の範囲を決める
  4. 【自動】 構成要件ごとに、特許分類とキーワードの候補を提示する
  5. 【人】 知財担当が検索式を確定し、特許データベースで検索する
  6. 【自動】 検索結果の書誌・要約・請求項を取り込み、意味の近さで並べ替える
  7. 【自動】 上位の特許について、請求項の構成要件と自社仕様の対応表を作る
  8. 【自動】 過去の調査で扱った特許があれば、そのときの結論を添える
  9. 【人】 知財担当が対応表を見て、精読する特許を選ぶ
  10. 【人】 請求項を読み、検討が必要なものを整理する
  11. 【人】 社内弁理士・特許事務所に判断を仰ぐ
  12. 【自動】 結論を調査台帳に登録し、次回の参照対象にする

自動化されるのは「分解する」「候補を出す」「並べ替える」「対応表を作る」「過去の結論を添える」の5つです。残るのは「読むべきものを選ぶ」と「判断する」です。

02今回想定するシステム構成

構成図
開発部門(製品仕様書・図面)
   │
   ▼
構成要件への分解 ──【知財担当が確認】
   │
   ▼
検索式の候補(特許分類+キーワード)──【知財担当が確定】
   │
   ▼
特許データベース(商用DB / J-PlatPat)で検索 → 結果を書き出し
   │
   ▼
Azure AI Search(ハイブリッド検索+セマンティックランカー)
   │   ├─ インデックス1: 今回の検索結果(書誌・要約・請求項)
   │   └─ インデックス2: 過去の調査台帳(対象特許と結論)
   │
   ▼
LLM API ── 請求項の構成要件への分解
   │         + 自社仕様との対応表の作成
   ▼
対応表(特許ごと)──【知財担当が精読対象を選ぶ】
   │
   ▼
請求項の精読 ──【社内弁理士・特許事務所が判断】
   │
   ▼
調査台帳へ登録(次回の参照対象になる)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Azure AI SearchAmazon Kendra、OpenSearch、Google Vertex AI
埋め込みAzure OpenAI ServiceGoogle Vertex AI
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
特許データベース商用の特許データベースJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)
保管SharePointBox、Google Drive

特許調査に特化したツール(AIによる類似特許検索、パテントマップ作成)が多数あります。 まずそれを検討してください。自前で組む価値があるのは、自社の製品仕様書と過去の調査結論を、検索の材料として組み込みたい場合です。 汎用のツールは、自社が何を「送液機構」と呼んでいるかを知りません。

特許データベースそのものは置き換えません。 検索は既存のデータベースで行い、その結果の絞り込みと読むための整理をこの構成が担います。J-PlatPatは、日本のほか欧米等を含む世界の特許・実用新案、意匠、商標、審決の情報を無料で検索・閲覧できるサービスで、IPC・FI・Fターム・CPC・USPCといった特許分類とキーワードを掛け合わせた検索ができます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

開発部門からの調査依頼が起点です。仕様書がSharePointの依頼フォルダに置かれたことをきっかけにします。

依頼のタイミングを前倒しできることが、この構成の隠れた効果です。 現状は設計が固まってから依頼していますが、1件あたりの負荷が下がれば、構想段階でも一度回せるようになります。 問題が見つかったときの手戻りは、そのほうが小さくなります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
製品仕様書構成、機能、寸法、材質、制御方法、操作手順開発部門
図面構造図、ブロック図開発部門
想定する販売国日本、米国、欧州、中国など開発部門
検索結果書誌情報、要約、請求項、特許分類、権利者、法的状態特許データベース
社内の技術用語集自社の呼び方と、業界での一般的な呼び方の対応知財・研究開発(新しく作る
調査台帳過去の調査の対象特許、結論、判断した人、日付知財(新しく作る
自社の特許ポートフォリオ自社が保有・出願中の特許知財

「社内の技術用語集」が、この構成の効き目を決めます。

自社が「送液機構」と呼ぶものについて、他社の明細書で使われる言い方(流体搬送手段、ポンプユニット、送液ポンプ、フルイディクス)を並べた表を作ります。200語もあれば、検索と絞り込みの当たり方が大きく変わります。

この表は、過去の調査で読んだ特許から作れます。「この特許は自社の◯◯に対応する」という対応関係が、過去の報告書に残っているはずです。

「調査台帳」も同様に重要です。 過去に読んだ特許について「関係なしと判断した」「検討が必要としたが、設計変更で回避した」といった結論が残っていれば、同じ特許を何度も読まずに済みます。

Step3

データの取得方法を決める

特許データベースからの取得: 商用データベースの多くは、検索結果をCSV・Excelで書き出す機能を持っています。APIが提供されていれば、そちらを使います。 利用規約で、データの二次利用の範囲が定められていることがあるため、契約内容を必ず確認してください。

J-PlatPatを使う場合: 無料で利用できますが、大量の自動取得は利用規約で制限されていることがあります。 個人利用の範囲を超える使い方をする場合は、規約を確認してください。

検索の準備: 取り込んだ検索結果をインデックスに登録します。

  • 1件1特許ではなく、請求項ごとに分割して登録します。独立請求項と従属請求項では意味が違い、まとめると当たりが鈍ります
  • 要約と請求項1(独立請求項)を別のフィールドに持ちます
  • 各件について埋め込み(ベクトル)を作ります

検索の実行: ハイブリッド検索を使います。キーワード検索(BM25)とベクトル検索を並行して実行し、統合した結果をセマンティックランカーで並べ替えます。特許の文章は独特の言い回しが多く、キーワード検索だけでは当たらず、ベクトル検索だけでは技術的に別物のものが上位に来ます。 両方を組み合わせる必要があります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 仕様の構成要件への分解 … 製品仕様を「何が、何と、どのように接続され、何をするか」の単位に分解します。請求項と突き合わせるには、同じ粒度にする必要があります
  2. 用語の展開 … 社内の技術用語集を引き、業界での一般的な言い方に展開します
  3. 請求項の分割 … 検索結果の請求項を、独立請求項と従属請求項に分け、構成要件ごとに区切ります
  4. 法的状態の確認 … 存続中か、消滅しているか、審査中かを確認します。消滅した特許は侵害の対象になりませんが、先行技術としては意味があります。落とさずに区別します
  5. 販売国での絞り込み … 想定する販売国に対応するファミリーがあるかを確認します。日本の特許だけを見て米国での販売を判断してはいけません
  6. 自社特許の除外 … 自社が保有する特許を検索結果から分けます
Step5

AIに処理させる

検索は検索基盤に任せます。 LLMに数百件を読ませて選ばせるのではなく、ハイブリッド検索とセマンティックランキングで順位をつけてからLLMに渡します。

LLMにさせること:

処理内容
仕様の構成要件への分解製品仕様を、請求項と対比できる粒度に分ける
検索キーワードの候補出し構成要件ごとに、他社が使いそうな言い方を挙げる
請求項の構成要件への分解請求項を「A、B、Cを備え、AとBが〜」の形に分ける
対応表の作成請求項の各構成要件について、自社仕様のどこが対応するかを並べる
過去の結論の紐付け調査台帳に同じ特許があれば、そのときの結論を添える
読む順の提示意味の近さと請求項の広さから、読む順の候補を示す

AIに次のことをさせないでください。

させないこと理由
侵害するかどうかの判断法的評価。弁理士・弁護士の業務
「侵害の可能性は低い」といった結論同上。その文書が社内に残ること自体が危険
請求項の文言の解釈出願経過や明細書の記載を踏まえた解釈が必要
均等論の適用可否の判断同上
特許の有効性(無効理由)の判断別途の調査と判断が必要
回避設計の提案提案が新たな侵害を生む可能性がある

「対応表を作る」ことと「侵害を判断する」ことの違いを、設計の段階ではっきりさせてください。 対応表は「請求項にはこう書かれている/自社仕様はこうなっている」を並べるだけです。それが構成要件を満たすかどうかの評価は含みません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは、知財担当者が特許を読むための材料を整理する担当者です。
請求項と自社の製品仕様を並べた対応表を作ってください。

【厳守事項】
- 侵害するかどうかを判断しないでください。
  「抵触する」「侵害の可能性がある」「問題ない」「回避できている」と
  書かないでください。判断は知財担当者と弁理士が行います。
- 請求項の文言を解釈しないでください。
  請求項に書かれた語をそのまま引用し、自社仕様の該当箇所を並べるだけにしてください。
- 自社仕様に対応する記載が見つからない場合は、
  correspondence を null にし、"対応する記載が見つかりません" とだけ書いてください。
  「したがって構成要件を満たさない」と続けないでください。
- 請求項の構成要件は、請求項の文言どおりに分解してください。
  あなたが要約したり、言い換えたりしないでください。
- 回避の方法を提案しないでください。
- 特許の有効性について述べないでください。
- 過去の調査台帳に同じ特許がある場合は、
  そのときの結論を past_conclusion にそのまま転記してください。
  その結論が今回も当てはまるかを判断しないでください。

【自社の製品仕様(構成要件に分解済み)】
{product_features}

【社内の技術用語集】
{glossary}

【対象の特許】
特許番号: {patent_no} / 権利者: {assignee} / 法的状態: {legal_status}
指定国・ファミリー: {family}
請求項1(独立請求項):
{claim_1}
その他の独立請求項:
{other_independent_claims}

【過去の調査台帳の該当行】
{past_records}

「侵害するかどうかを判断しないでください」の1行は、この構成でもっとも重要です。 これを書かないと、LLMは親切に「本製品は構成要件Cを満たさないため、抵触しないと考えられます」と書きます。その1文が社内文書に残ると、後から「知っていたのに対応しなかった」と評価される材料になり得ます。

「回避の方法を提案しないでください」も必ず入れてください。 提案された回避設計が別の特許に触れる可能性があり、また、回避を検討した記録が残ること自体が訴訟で不利に働くことがあります。回避設計の検討は、弁理士の助言のもとで行うものです。

Step7

出力形式を固定する

{
  "patent_no": "",
  "assignee": "",
  "legal_status": "alive | expired | pending | unknown",
  "family_countries": [],
  "relevance_score": 0.0,
  "claim_analysis": [
    {
      "claim_no": 1,
      "elements": [
        {
          "element_text": "",
          "product_feature_id": "",
          "correspondence": "",
          "correspondence_source": ""
        }
      ]
    }
  ],
  "past_conclusion": {
    "found": false,
    "conclusion_text": "",
    "decided_by": "",
    "decided_at": ""
  },
  "reading_priority": "high | medium | low",
  "priority_basis": "",
  "notes": []
}

element_text(請求項の文言そのまま)と correspondence_source(自社仕様書のどこか)を必ず残します。 要約された文言では、知財担当者が原文に当たれません。

relevance_score は検索基盤が付けた順位であり、侵害の可能性の高さではありません。 画面上でもそのように表示してください。「スコア0.9」を「危険度90%」と読まれると、この構成は有害になります。

reading_priority は「読む順」の候補です。請求項が広い(構成要件が少ない)もの、法的状態が存続中のもの、指定国が販売予定国を含むものを上位にします。これも侵害の可能性とは別物です。

Step8

システムへ連携する

つなぐ先内容
特許データベース検索結果を取り込む(利用規約の範囲内で
Azure AI Search検索結果と過去の調査台帳を検索する
SharePoint製品仕様書の受け取りと、報告書の保管
調査台帳結論を登録し、次回の参照対象にする

特許データベースへの自動検索は、利用規約を確認してから実装してください。 多くの商用データベースは、機械的な大量アクセスを制限しています。検索自体は人が画面で行い、結果の書き出しだけを自動化する構成のほうが、規約上も安全です。

調査台帳への登録は、判断が確定してから行います。 途中の対応表を登録すると、未確定の内容が次回の参照対象になります。

Step9

人が確認する

すべての工程で人が入ります。この構成に「自動で完結する部分」はありません。

工程誰が
構成要件への分解の確認知財担当
検索式の確定知財担当
精読する特許の選定知財担当
請求項の読み込み知財担当
侵害の判断社内弁理士・特許事務所
報告書の確定知財担当+弁理士

対応表を「読まずに」使わないでください。 対応表は請求項を読むための下敷きであり、対応表だけを見て判断してはいけません。運用として、精読した特許について「読んだ」記録を残す仕組みを入れることを推奨します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
自社仕様に対応する記載が見つからないnull として提示する。「満たさない」と書かせない
請求項が長く、構成要件に分解できない分解せず原文を提示する。無理に分けない
特許が消滅しているlegal_status: expired として区別する。検索結果から落とさない(先行技術として意味がある)
審査中(出願公開のみ)pending として区別する。権利範囲が確定していないことを明示する
販売予定国にファミリーがないその旨を明示する。「対象外」と自動で落とさない(後から出願される可能性がある)
過去の調査で「関係なし」とした特許結論を添えて提示する。自動で除外しない(仕様が変わっていることがある)
検索結果が1,000件を超える検索式を見直す。上位だけを処理して完了としない
明細書が外国語訳文がある場合は併記する。原文で判断すべきことを明記する
特許データベースの利用規約に抵触しそうな処理実装しない。規約の確認を設計の前提にする
過去の結論が古い(2年以上前)日付を明示する。そのまま使えるかは人が判断する
Step11

記録を残す

  • 調査依頼(製品仕様書、図面、販売予定国)
  • 確定した検索式と、検索を実行した日時・データベース
  • 検索結果の一覧(件数を含む)
  • 対応表と、その根拠
  • 知財担当が精読した特許の記録
  • 弁理士・特許事務所の判断と、その日付
  • 調査台帳への登録内容

「精読した特許の記録」を残す理由は、後から調査の範囲を説明できるようにするためです。 侵害を主張されたときに、「どの範囲を、いつ、どう調べたか」を示せることには意味があります。

この記録の取り扱いは、法務・顧問弁護士と相談して決めてください。 調査記録は、訴訟で開示を求められることがあります。残し方を誤ると不利に働くため、保存の方針を先に決めてください。 これは技術の問題ではありません。

04実装レベルの3段階

最小構成:仕様書と請求項を生成AIに渡し、構成要件の分解と対応表を作らせる / 分解・対応表
半自動化:検索結果を検索基盤に取り込み、意味の近さで並べ替えて上位の対応表を自動生成する / 上記+絞り込み
本格構成:上記+技術用語集による検索キーワードの候補出し+過去の調査台帳との突合+調査台帳への登録 / 判断以外のすべて

この業務では本格構成に価値があります。 半自動化だけだと、過去の調査結果が再利用されず、同じ特許を何度も読む問題が残ります。 調査台帳との突合が入って初めて、調査が積み上がります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
12 件
1件あたり現在時間
480 分
1件あたり導入後時間
170 分
現在  12件 × 480分 ÷ 60 = 96 時間/月
導入後 12件 × 170分 ÷ 60 = 34 時間/月
月間削減時間
62h
削減率
65%
年間削減時間
744h
年間金額換算(時間単価4,500円)
335万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 自社で製品開発を行い、侵害予防調査を月5件以上行っている企業。知財部門があり、特許データベースを契約していること。製品の仕様書が文書として残っていること。
向いていない
  1. 自社で製品を開発していない場合。調査を外部の特許事務所に全面委託していて、社内で一次スクリーニングを行っていない場合。年に数件しか調査が発生しない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 過去に行った調査を1件選ぶ(報告書と検索結果が残っているもの)
  2. そのときの製品仕様書を、生成AIに渡して構成要件に分解させる
  3. 知財担当が当時作った分解と比べる
  4. 当時の検索結果から20件を選び、請求項と自社仕様の対応表を作らせる
  5. 当時の報告書と比べる

見るのは次の4点です。

見る点判断
構成要件の分解が、担当者の分解と近いか近ければ、検索の材料として使える
対応表の引用が、請求項の文言と一致しているか要約されていたら使えない
侵害の判断や結論が書かれていないか書かれていたら、プロンプトを強める。ここが最重要
「対応する記載が見つからない」を正しく返しているか無理に対応づけていたら危険

3番目を必ず確かめてください。 「本製品は構成要件Bを備えていないため、抵触しません」という1文が出たら、その構成はそのままでは使えません。

あわせて、社内の技術用語集の草案を作ってください。 過去の報告書から、自社の呼び方と他社明細書での言い方の対応を50語ぶん拾います。この作業だけでも、次の調査の検索式が良くなります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが侵害の判断や結論を書くプロンプトで明確に禁止する。「抵触」「侵害」「問題ない」「回避」といった語が出力に含まれていないか機械的に検査する。最重要
関連度スコアが危険度と誤解される画面上で「読む順の目安」と明記する。数値をパーセント表示にしない
請求項が要約されて引用される原文をそのまま引用させる。文字列の一致を機械的に検査する
特許を1件1レコードで登録して当たりが鈍る請求項ごとに分割する。独立請求項と従属請求項を分ける
消滅した特許を検索結果から落とす法的状態で区別し、落とさない。先行技術として意味がある
日本の特許だけで販売国を判断するファミリーの指定国を必ず確認する
過去に「関係なし」とした特許を自動除外する結論を添えて提示するにとどめる。仕様は変わる
特許データベースを機械的に大量検索する利用規約を確認する。検索は人が行い、結果の取り込みだけを自動化する
技術用語集が整備されず検索が当たらない過去の報告書から50語ぶん作る。運用で育てる
調査記録の残し方を決めていない法務・顧問弁護士と相談して方針を決める。訴訟で開示を求められることがある

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 未公開の製品仕様、開発中の技術、他社の特許情報、過去の調査結論。未公開の製品仕様は、自社の事業戦略そのものです。

  1. 未公開の製品仕様の取り扱い … 開発中の製品の構成をLLMに送ることになります。自社の情報管理規程と、発明の新規性喪失のリスクを確認してください。 外部に出た情報が公知になれば、自社の出願に影響することがあります。学習に使われない契約であることは、この用途では必須条件です
  2. テナント内で完結する構成の検討 … 上記の理由から、自社のクラウド環境内で処理が完結する構成を選ぶ判断は、十分に合理的です
  3. 特許データベースの利用規約 … 取得したデータの保存、二次利用、機械的なアクセスの範囲は契約で定められています。LLMに送ることが規約上許されるかを確認してください
  4. 調査記録の保存方針 … 侵害予防調査の記録は、訴訟で開示を求められることがあります。「何を、いつ、どう調べ、どう判断したか」の残し方を、法務・顧問弁護士と決めてください。 中途半端な記録は不利に働きます
  5. AIの出力を判断の根拠にしない … 報告書に載せるのは、人が読んだ請求項と、弁理士の判断です。AIが作った対応表は作業の下敷きであり、判断の根拠ではありません。 報告書の構成をそのように設計してください
  6. アクセス権限 … 製品仕様書と調査結果の閲覧を、知財部門と当該開発部門に限定します
  7. 自動実行してよい範囲 … 絞り込みと対応表の作成までです。検索式の確定、精読する特許の選定、侵害の判断、報告書の確定は、必ず人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、侵害の見落としによる差止め・損害賠償と、誤った「問題なし」の判断による事業の停止です。いずれも金額が大きく、回復が困難です。 この構成の目的は、判断を速くすることではなく、判断する人がより多くの特許を読めるようにすることだと、社内で共有してください。

10まず何から始めるか

1〜2週目:技術用語集を作る

過去3年の調査報告書から、自社の呼び方と他社明細書での言い方の対応を拾います。50語から始めてください。 この作業は知財担当と開発部門で一緒に行うと精度が上がります。

3週目:過去の調査を1件、再現してみる

過去の調査1件について、仕様書の分解と対応表の作成を生成AIにさせ、当時の報告書と比べます。侵害の判断や結論が書かれていないかを必ず確かめてください。

4週目:記録の方針を決める

調査記録の残し方について、法務・顧問弁護士と方針を決めます。技術より先にここを決めてください。 何を残し、何を残さないかで、システムの設計が変わります。

2か月目:調査台帳を作る

過去3年の調査について、「対象特許/結論/判断した人/日付」の4列の台帳を作ります。200〜400行になります。 この台帳が、重複した読み込みをなくす材料です。

3か月目:検索基盤に載せる

直近の調査1件分の検索結果を Azure AI Search に登録し、請求項単位で分割してハイブリッド検索を試します。知財担当が当時選んだ20件が、上位に来るかを確かめます。

4か月目以降: 用語集による検索キーワードの候補出しと、調査台帳との突合を追加します。480分が何分になるかを実測し、あわせて「構想段階での調査」を試してください。 そこが本来の狙いです。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-16/最終更新:2026-09-16
確認した内容情報源確認日
J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)が、日本のほか欧米等を含む世界の特許・実用新案、意匠、商標、審決に関する公報情報と法的状態の情報を無料で検索・閲覧できるサービスであること特許情報プラットフォーム J-PlatPat2026-09-16
特許検索において、IPC・FI・Fターム・CPC・USPC といった特許分類とキーワードを掛け合わせた検索ができること。FIやFタームの選択・併用は、新規性調査・無効資料調査・侵害予防調査の違いによって使い分けること特許庁:特許情報の利用(J-PlatPatを含む)2026-09-16
Azure AI Search が RAG 向けに、分割(チャンキング)、ベクトル化、ハイブリッド検索、セマンティックランキングを提供することMicrosoft Learn: RAG and generative AI - Azure AI Search2026-09-16
ハイブリッド検索が、全文検索(BM25)とベクトル検索(HNSW / eKNN)の結果を RRF アルゴリズムで統合し、セマンティックランキングと併用できることMicrosoft Learn: Hybrid search overview2026-09-16

特許権の侵害の判断は、弁理士・弁護士の業務です。 この構成は判断を行うものではなく、判断する人が読むための材料を整えるものです。特許データベースの利用規約、取得データの二次利用の可否、侵害予防調査の記録の保存方針については、契約内容と法務・顧問弁護士の判断に従ってください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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