Media > AI活用ユースケース > 知財 > 新しい発明届が出たときに、過去の先行技術調査の報告書から技術の近い調査を探し、先行文献と当時の判断を根拠付きで返して重複した調査依頼を減らす

新しい発明届が出たときに、過去の先行技術調査の報告書から技術の近い調査を探し、先行文献と当時の判断を根拠付きで返して重複した調査依頼を減らす

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

新しい発明届を受け付けたときに、過去の先行技術調査の報告書から技術の近い調査を探し、見つかった先行文献と当時の判断を報告書のページ付きで返します。知財部は、調査を新しく発注する前に、過去の調査で足りる部分と足りない部分を見分けられます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
IT・SaaS/医療/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
50h/月
AI導入後
16h/月
想定削減
68%
年間削減
408h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 知財部の担当者が発明届を読み、技術の要点(課題、解決手段、主な構成)をメモにする
  2. 共有フォルダを技術分野と年度で開き、題名から近そうな調査報告書を探す
  3. 候補の報告書を開き、調査の観点と検索の範囲、抽出された先行文献の一覧を読む
  4. 近い調査が見つかれば、発明評価会議の議事録をさかのぼって、当時どう判断したかを確かめる
  5. 見つからない、または自信がないときは、その分野が長い担当者や発明者の上長に聞く
  6. 調査を発注するか、社内で調べるか、調査なしで評価会議にかけるかを決め、依頼書を書く
導入後(After)
  1. 自動調査報告書が共有フォルダの受領先に保存されると、本文をページ番号付きで取り出す
  2. 自動Claude が報告書から調査の観点、調査の範囲(データベース、分類、期間、調査日)、抽出された先行文献と関連度を取り出し、報告書のカードを作る
  3. 人調査を手配した担当者が、カードの調査日と範囲を確かめて確定する
  4. 自動発明評価会議の議事録が登録されると、案件番号でカードに当時の判断と理由を結び付ける
  5. 自動本文を段落ごとの断片に分けて埋め込みを作り、カードと一緒に検索基盤へ登録する
  6. 自動知財管理システムに発明届が登録されると、届の「課題」「解決手段」「構成」の欄を取り出す
  7. 自動言葉の重なりで似た文書を探す検索と、文章の近さで探す検索を組み合わせ、近い報告書の断片を集める
  8. 自動報告書ごとにまとめ、上位5冊の該当ページを Claude に渡す
  9. 自動Claude が発明届の構成ごとに、過去の調査で観点に入っていたか、どの先行文献が挙がっていたかを、報告書のページを引用してまとめる
  10. 人担当者が引用のページを開いて確かめ、再利用する報告書と、追加で調べる範囲を決める
  11. 自動決めた内容を依頼書の過去調査欄に書き出す。検索したが見つからなかった場合もその旨を残す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 知財部の担当者が発明届を読み、技術の要点(課題、解決手段、主な構成)をメモにする
  2. 共有フォルダを技術分野と年度で開き、題名から近そうな調査報告書を探す
  3. 候補の報告書を開き、調査の観点と検索の範囲、抽出された先行文献の一覧を読む
  4. 近い調査が見つかれば、発明評価会議の議事録をさかのぼって、当時どう判断したかを確かめる
  5. 見つからない、または自信がないときは、その分野が長い担当者や発明者の上長に聞く
  6. 調査を発注するか、社内で調べるか、調査なしで評価会議にかけるかを決め、依頼書を書く

(a)過去の調査が見つからない。 題名は案件の名前で付いていることが多く、技術の中身では探せません。 「搬送装置の位置決め」に近い調査が「XX社向け専用機 第2期」という題名で眠っています。

(b)同じ分野の調査を発注し直す。 後になって、3年前に同じ観点でほぼ同じ調査をしていたと分かることがあります。 調査会社の回答を待つ数週間、評価会議も遅れます。

(c)当時の判断を担当者しか知らない。 先行文献を見て「出願しない」と決めたのか、「請求項を絞って出願した」のかは報告書に書かれていません。 議事録を探すか、当時の担当者に聞くしかありません。

(d)調べた範囲が残らない。 依頼書の「過去調査」欄には、見つけた報告書の番号だけが書かれます。探して見つからなかったのか、探していないのかは区別されません。

取り込み(調査報告書の受領と評価会議のたび)

  1. 【自動】 調査報告書が共有フォルダの受領先に保存されると、本文をページ番号付きで取り出す
  2. 【自動】 Claude が報告書から調査の観点、調査の範囲(データベース、分類、期間、調査日)、抽出された先行文献と関連度を取り出し、報告書のカードを作る
  3. 【人】 調査を手配した担当者が、カードの調査日と範囲を確かめて確定する
  4. 【自動】 発明評価会議の議事録が登録されると、案件番号でカードに当時の判断と理由を結び付ける
  5. 【自動】 本文を段落ごとの断片に分けて埋め込みを作り、カードと一緒に検索基盤へ登録する

検索(発明届を受け付けるたび)

  1. 【自動】 知財管理システムに発明届が登録されると、届の「課題」「解決手段」「構成」の欄を取り出す
  2. 【自動】 言葉の重なりで似た文書を探す検索と、文章の近さで探す検索を組み合わせ、近い報告書の断片を集める
  3. 【自動】 報告書ごとにまとめ、上位5冊の該当ページを Claude に渡す
  4. 【自動】 Claude が発明届の構成ごとに、過去の調査で観点に入っていたか、どの先行文献が挙がっていたかを、報告書のページを引用してまとめる
  5. 【人】 担当者が引用のページを開いて確かめ、再利用する報告書と、追加で調べる範囲を決める
  6. 【自動】 決めた内容を依頼書の過去調査欄に書き出す。検索したが見つからなかった場合もその旨を残す

10番目が、この設計の分かれ目です。 AIが出すのは、「どの構成が、いつ、どの範囲で調べられていたか」という事実の並びまでです。 過去の調査で足りるかを決めるのは担当者です。

02今回想定するシステム構成

構成図
【取り込み】調査報告書(PDF・Word)/発明評価会議の議事録
   ▼【トリガー】受領先フォルダへの保存、議事録の登録
AWS Lambda ── 本文をページ番号付きで取り出す
   ▼
Claude(Amazon Bedrock)── 報告書のカード(観点・範囲・調査日・先行文献)
   ▼【人】手配した担当者が確定
Amazon OpenSearch Service の取り込みパイプライン
   │  text_chunking(段落ごとに分割)→ text_embedding(埋め込み)
   ▼
Amazon OpenSearch Service(報告書の断片とカードの索引)

【検索】知財管理システム(発明届の登録)
   ▼
Amazon OpenSearch Service ── ハイブリッド検索
   │  ① more_like_this(言葉の重なり) ② 埋め込みの近さ + filter(公開範囲)
   ▼
AWS Lambda ── 報告書ごとに束ね、上位5冊の該当ページを取り出す
   ▼
Claude(Amazon Bedrock)── PDF のページを引用してまとめる
   ▼
担当者が確認 → 依頼書の過去調査欄へ
役割想定する製品代替候補
検索基盤Amazon OpenSearch Service(more_like_this とハイブリッド検索)Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search)
埋め込みAmazon Titan Text Embeddings V2(Amazon Bedrock)Cohere Embed、OpenAI の埋め込みモデル
生成AIClaude(Amazon Bedrock。カードの取り出しと引用付きのまとめ)Gemini API、OpenAI API
連携AWS Lambda(取り込みと、報告書ごとの束ね)AWS Step Functions
保管Amazon S3(報告書と議事録の写し)既存のファイルサーバー
知財管理既存の知財管理システム―

検索の中心は、more_like_this クエリです。 ドキュメントでは、1つ以上の文書に似た文書を探すクエリで、like には自由な文、索引にある文書、索引にない文書を渡せるとされています。発明届の文章をそのまま入れられます。

文章の近さの検索と組み合わせるのは、ハイブリッドクエリです。 サブクエリは最大5つで、それぞれの関連度のスコアを検索パイプラインの正規化プロセッサーで1つのスコアにまとめるとされています。filter は1つのクエリとしてすべてのサブクエリに適用されます。

日本語の語の切り出しには、Sudachi を使います。 プラグインの一覧では、kuromoji がすべてのドメインに含まれ、Sudachi は「日本語に推奨」とされた任意のプラグインです。more_like_this は語の重なりで動くので、語の切り方がそのまま検索の質になります。

埋め込みは、Amazon Titan Text Embeddings V2 を想定します。 入力は最大8,192トークンまたは50,000文字、出力は既定で1,024次元です。英語に最適化されたモデルで、日本語は多言語対応の一覧に入っていますが、100以上の言語はプレビューとされています。 検索では、文書を段落などの論理的な単位に分けることが推奨されています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

取り込みと検索で、起点が3つあります。

1つ目は、調査報告書の保存です。 外部の調査会社から届いた報告書、社内で作った調査メモを、知財部の受領先フォルダに保存したときに Lambda が動きます。下書きや途中経過のメモは入れません。 調査会社との往復で版が変わるので、最終版だけを受領先に置く決まりにします。

2つ目は、発明評価会議の議事録の登録です。 議事録に書かれた案件番号で、報告書のカードに当時の判断を結び付けます。議事録が先に登録され、報告書が後から届くこともあるので、結び付けは両方の起点で試みます。

3つ目は、知財管理システムへの発明届の登録です。 届の受付番号が振られた時点で検索を動かし、担当者が届を開く前に結果がそろっている状態にします。担当者が条件を変えて探し直したいときは、検索画面から何度でも動かせます。

過去の約3,000冊は、別に一括で取り込みます。 このときは手配した担当者が確認できないことが多いので、カードに「未確認」の印を付け、検索結果で区別して表示します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
調査報告書本文(ページ番号付き)、調査の観点、検索式、データベース、分類、調査日、抽出文献の一覧と関連度共有フォルダの受領先
発明評価会議の議事録案件番号、判断(出願/秘匿/不出願/保留)、判断の理由議事録の保管先
案件の情報案件番号、発明届の受付番号、技術分野、公開範囲知財管理システム
発明届(検索時)発明の名称、課題、解決手段、構成、発明者の部署知財管理システム

質を決めるのは、調査日と調査の範囲です。 報告書の本文がいくら近くても、調査日が8年前なら、その後の8年分の文献は誰も見ていません。検索結果に調査日と範囲が並ばない構成は、「調べ済み」という誤った安心を生みます。

カードの項目は最初に固定します。 報告書番号、案件番号、調査の種類(出願前調査/無効資料調査/侵害予防調査など)、調査の観点(構成ごとの文)、データベース、分類、対象の期間、調査日、抽出文献(文献番号、関連度、どの観点に対応するか、記載のページ)、当時の判断と理由です。関連度の区分は、調査会社ごとの書き方を自社の3区分にそろえます。

Step3

データの取得方法を決める

報告書の本文は、文字の入ったPDFとWordから、ページ番号を付けたまま取り出します。スキャンした画像だけの古い報告書は、この構成の対象外にします。 後述のとおり、Claude の引用は文字を取り出せないPDFを引用できません。

取るものどこから何に使うか
本文(ページ番号付き)報告書のファイル断片の索引と、引用するページ
調査の範囲と調査日報告書の冒頭の表、または「調査条件」の節カードの範囲の項目
抽出文献の一覧報告書の末尾の表カードの文献の項目
判断と理由発明評価会議の議事録カードの当時の判断
公開範囲知財管理システムの案件の属性検索できる人の制限

本文の断片化は、OpenSearch の取り込みパイプラインで行います。 text_chunking プロセッサーは長い文書を短い区切りに分けるもので、トークン数で分ける方法、文字数で分ける方法、区切り文字で分ける方法があります。区切り文字の既定は空行(\n\n)で、段落ごとに分けられます。 分けた断片を text_embedding プロセッサーに渡し、埋め込みを作ります。

text_embedding の skip_existing を有効にします。 文書を入れ直したとき、文章が変わっておらず埋め込みがすでにあれば、推論を呼ばずに既存の埋め込みを写すとされています。報告書のカードを人が直すたびに全断片の埋め込みを作り直さずに済みます。

検索時には、発明届から2つの問い合わせを作ります。 1つは届の「課題」「解決手段」「構成」の文をそのまま like に入れた more_like_this、もう1つは同じ文の埋め込みによる近さです。この2つをハイブリッドクエリのサブクエリにし、filter で公開範囲を絞ります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 断片の上限を外す … text_chunking の max_chunk_limit は既定で100です。上限を超えた分は最後の断片にまとめて入るとされています。抽出文献の一覧が長い報告書では100を超えるので、-1にして上限を外します
  2. 区切りの重ね方 … 区切り文字で分けたあと、長すぎる段落だけトークン数でもう一度分けます。プロセッサーを重ねて段階的に分けられるとされています
  3. 埋め込みの切れを防ぐ … text_embedding のドキュメントでは、トークンの上限で切られた部分は検索結果に出てこないことがあるとされ、断片に分けることが勧められています
  4. 調査日の正規化 … 「2019年3月調査」「調査日:R1.5.10」「2019/03」を同じ形の日付にそろえます。月までしか書かれていないものは月末の日付で持ち、その旨を印に残します
  5. 関連度の読み替え … 調査会社ごとの関連度の書き方を、自社の3区分(強/中/参考)に対応表で読み替えます。読み替えはAIに任せず、対応表で機械的に行います
  6. 定型文の除去 … 調査会社の免責文、目次、ヘッダーとフッターを除きます。どの報告書にも同じ文があるので、残すと more_like_this がその語を拾います

6番目を軽く見ないでください。 免責文は全報告書に同じ形で入っているので、どの発明届に対しても似た文書として浮かび上がります。検索結果の上位が、同じ調査会社の報告書ばかりになるのは、たいていこの除去漏れです。

Step5

AIに処理させる

AIの仕事は2か所です。取り込み時のカードの取り出しと、検索結果のまとめです。

場面させること
取り込み報告書から調査の観点、データベース、分類、期間、調査日、抽出文献と関連度、記載のページを取り出す
検索発明届の構成ごとに、上位5冊の報告書で観点に入っていたか、どの文献が挙がっていたかを、ページを引用してまとめる
検索どの報告書の観点にも入っていない構成と、調査日より後の期間を「未調査の範囲」として書く
させないこと理由
新規性・進歩性の判断特許を受けられるかは担当者と弁理士が決める。根拠の薄い見立てが評価会議に持ち込まれる
過去の調査で足りるかの結論調査日以降の文献や届の細部をどう見るかで変わる
報告書にない先行文献の補足「この分野ではX社の特許も有名」と書くと、調べていない文献が調べたことになる
調査日の補完書かれていなければ空のまま。報告書の作成日で埋めない
当時の判断の読み替え議事録の判断をそのまま写す。「実質的に出願断念」と言い換えない

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 報告書の表紙には作成日があり、本文には調査日が書かれていないことがあります。作成日で埋めると、調査会社が数か月前に調べた範囲を、作成日まで調べたことにしてしまいます。 調査日が無ければ「記載なし」とし、担当者が調査会社に確かめます。

Step6

指示内容を固定する

取り込み時(カードの取り出し):

あなたは知財部で、先行技術調査の報告書を整理する担当です。
報告書の本文だけを根拠にしてください。推測で埋めないでください。

【取り出す項目】
- 調査の種類(出願前調査/無効資料調査/侵害予防調査/その他)
- 調査の観点:観点ごとの文。報告書の書き方のまま
- 調査の範囲:データベース名、分類記号、対象の期間、調査日
- 抽出文献:文献番号、報告書での関連度の表記、対応する観点、記載のページ

【厳守事項】
- 調査日が書かれていなければ null にしてください。
  報告書の作成日や表紙の日付で埋めないでください。
- 文献番号は報告書に書かれた文字列をそのまま写してください。
  桁を補う、表記をそろえる、ことをしないでください。
- 関連度は報告書の表記をそのまま写してください。読み替えないでください。
- 報告書にない文献、報告書にない観点を足さないでください。
- 観点と文献の対応が書かれていなければ、対応する観点を空にしてください。
- 返す形は指定のJSONだけにしてください。

検索時(引用付きのまとめ):

あなたは知財部の担当者が、過去の先行技術調査を再利用できるかを
確かめるのを助ける担当です。渡された報告書だけを根拠にしてください。

【発明届】{disclosure}
【発明届の構成】{elements}
【報告書】文書として渡します。各文書の題名は「報告書番号/調査日」です

【書くこと】
1. 構成ごとに、どの報告書の観点に含まれていたか(報告書番号と調査日)
2. 構成ごとに、その観点で挙がっていた先行文献と関連度
3. どの報告書の観点にも含まれていない構成
4. 最も新しい調査日と、それより後の期間が未調査であること

【厳守事項】
- 特許を受けられるかどうか、新規性や進歩性について書かないでください。
- 過去の調査で足りるかどうかの結論を書かないでください。
- 渡された報告書にない文献や知識を書かないでください。
- 「未確認」の印のある報告書は、その旨を必ず書いてください。
- 近い調査が見つからなければ「近い過去の調査は見つかりませんでした」と書いてください。

検索時の報告書は、PDF の文書として渡し、引用を有効にします。 Claude の引用機能では、PDFの引用にはページ番号の範囲(1から数える)が付きます。 担当者は、まとめの1文から報告書のページへそのままたどれます。ただし、引用と構造化出力は同時に使えず、両方を指定すると400エラーになるとされています。そのため、取り込み時のカードは引用なしでJSONを返させ、検索時のまとめは引用付きの文で返させる、という分け方にします。

「過去の調査で足りるかを書かない」を明記しないと、最後に一言添えてきます。 「以上から、追加調査は不要と考えられます」という1文は、担当者の判断を先取りします。忙しい月ほど、その1文がそのまま依頼書に写されます。

Step7

出力形式を固定する

取り込み時のカードは、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "report_id": "SR-2019-087",
  "case_id": "",
  "search_type": "出願前調査 | 無効資料調査 | 侵害予防調査 | その他",
  "viewpoints": [
    { "vp_id": "V1", "text": "", "pages": [0] }
  ],
  "scope": {
    "databases": [""],
    "classifications": [""],
    "period": { "from": null, "to": null },
    "search_date": null
  },
  "cited_docs": [
    { "doc_no": "", "relevance_raw": "", "viewpoints": ["V1"], "pages": [0] }
  ],
  "decision": { "result": null, "reason": "", "minutes_id": "" },
  "status": "unverified"
}

1つ目の理由は、search_date を日付の項目として索引に入れられることです。 検索結果に調査日を並べ、最も新しい調査日からの空白の期間を機械で計算できます。 自由文で受け取ると、和暦と西暦、月までの日付が混ざって計算できません。

2つ目は、viewpoints と cited_docs を観点の番号で結べることです。 「構成Bに対応する観点V2で、どの文献が挙がっていたか」を引けるのは、文献が観点に結び付いているからです。 一覧で持つだけでは、どの構成の話かが分かりません。

3つ目は、decision を後から埋められることです。 議事録の登録はカードより後のことが多いので、result は最初 null で、結び付いた時点で埋まります。 status は手配した担当者が確定すると verified に変わります。

検索結果の画面には、次の形の表を出します。

構成観点に含む報告書(調査日)挙がった先行文献(関連度)当時の判断
A:搬送台の位置を磁気スケールで検出SR-2019-087(2019-05-10)文献1(強)、文献2(参考)請求項を絞って出願
B:検出値で駆動を補正SR-2019-087、SR-2022-031(2022-11-02)文献3(中)―
C:補正量を学習して更新該当なし――

表の左2列は OpenSearch とカードから Lambda が組み立て、右側の文はClaude の引用付きのまとめから取ります。 構成への分け方は、届の「構成」欄の箇条をそのまま使います。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有フォルダの受領先保存の通知、または毎晩の一覧の取得調査報告書の最終版を取り出す
議事録の保管先登録の通知案件番号で判断をカードに結ぶ
Amazon S3Lambda から読み書き報告書と議事録の写し
Claude(Amazon Bedrock)Lambda からの呼び出しカードの取り出しと、引用付きのまとめ
Amazon OpenSearch Service取り込みパイプラインとハイブリッド検索断片の埋め込みと検索
知財管理システム発明届の登録の通知と、依頼書への書き出し検索の起点と、過去調査欄への記入

知財管理システムへの書き込みは、依頼書の過去調査欄の下書きだけです。 担当者が確認ボタンを押したときに、選んだ報告書の番号、未調査の範囲、検索した日時を書き出します。発注そのものは担当者が行います。

埋め込みは、OpenSearch の取り込みパイプラインから Amazon Bedrock を呼ぶ形にします。 text_embedding プロセッサーを使うには、事前に機械学習のモデルを設定し、OpenSearch にデプロイしておく必要があるとされています。

Step9

人が確認する

確認は2か所です。取り込み時の手配した担当者と、検索時の受付担当者です。

  1. 手配した担当者がカードを確定する … 報告書を受け取った直後に、調査日、データベース、対象の期間を確かめます。調査日が null のものは調査会社に問い合わせます
  2. 受付担当者が引用のページを開く … 再利用する報告書は、引用の付いたページを必ず開き、観点が届の構成と本当に重なるかを確かめます
  3. 未調査の範囲を依頼書に書く … どの構成が観点に入っていなかったか、調査日より後の期間をどう扱うかを書きます
  4. 未確認のカードを確かめる … 一括取り込みで作ったカードを再利用するときは、その場で調査日と範囲を報告書と照らし、確認済みに変えます

1件の発明届あたり24分を目安にします。 上位5冊のまとめを読み、うち2〜3冊の引用ページを開き、依頼書の過去調査欄を整える時間です。まとめだけを読んで「調査済み」と書く運用にはしません。

3番目は、この構成で初めてできることです。 これまで依頼書には見つけた報告書の番号しか書かれませんでした。「構成Cは過去に調べられていない」「2022年11月以降は未調査」と書けるので、調査会社への発注が差分だけになります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
報告書の文字が取り出せない(画像だけのPDF)カードを作らず一覧に載せる。文字の読み取りを別に回す
調査日が書かれていないsearch_date を null にし、手配した担当者が調査会社に確かめる
議事録の案件番号が報告書と結び付かないカードの decision を空のまま残し、評価会議の事務局に照会する
ハイブリッド検索で候補が0件公開範囲の絞り込み以外を外して再検索。それでも0件なら「見つからなかった」と記録
上位が同じ調査会社の報告書ばかり定型文の除去漏れを疑う。除去の一覧に足して入れ直す
発明届の構成欄が空、または1行だけ届を差し戻さず、課題と解決手段の文だけで検索する。構成ごとの表は出さない
Bedrock の呼び出しに失敗した報告書の一覧とカードの表だけを表示し、まとめは再試行を促す
公開範囲の外の報告書が候補に含まれるfilter で検索時点で除外する。まとめには渡さない

上から3行目までが、取り込みの失敗の大半です。 どれもAIの問題ではなく、報告書と議事録の書き方の問題です。 調査会社への依頼の時点で「調査日と対象期間を冒頭の表に書く」ことを条件にすると、2行目はほぼ無くなります。

Step11

記録を残す

  • 取り込んだ報告書の番号、受領日、取り込んだ日時、手配した担当者が直した項目
  • 結び付けた議事録の番号と、結び付けた日時
  • 検索のたびの発明届の受付番号、ハイブリッド検索の候補、報告書ごとのスコア
  • Claude に渡した報告書のページと、返ってきたまとめと引用
  • 担当者が再利用に選んだ報告書と、選ばなかった報告書
  • 依頼書に書き出した未調査の範囲と、その後の発注の有無

2つ目と最後の行を合わせると、再利用の実績が数えられます。 どの報告書が何度再利用されたか、再利用したのに追加調査で重要な文献が出てきたのはどの分野かが分かります。後者が多い分野は、調査の観点の書き方を見直す材料になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:手で作った報告書の表と、AIサービスにPDFを渡してまとめさせる / 1つの技術分野での試し
半自動化:上記+報告書からのカードの取り出しを Claude で行い、担当者が確定する。検索はカードの観点の全文検索だけ / カードの作成と、観点の文での検索
本格構成:上記+本文の断片化と埋め込み、`more_like_this` とハイブリッド検索、議事録の結び付け、引用付きのまとめ / 発明届の登録から、根拠付きの一覧が出るまで

最小構成では、1つの分野しか扱えません。 報告書の表を手で作るので、確かめるための段階です。 半自動化では、届の文章と観点の文の言葉が一致しないと拾えません。 本格構成で more_like_this と埋め込みを足すと、届の文章をそのまま入力にできます。本記事の想定は本格構成です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
75 分
1件あたり導入後時間
24 分
現在  40件 × 75分 ÷ 60 = 50 時間/月
導入後 40件 × 24分 ÷ 60 = 16 時間/月
月間削減時間
34h
削減率
68%
年間削減時間
408h
年間金額換算(時間単価5,000円)
204万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 産業機械・電子機器・医療機器などのメーカーで、発明届が毎月数十件出され、知財部が外部の調査会社や社内で先行技術調査を行ってきた企業。過去10年以上分の調査報告書が共有フォルダや知財管理システムに蓄積しているが、技術の近い過去の調査があるかを担当者の記憶で探している場合。同じ技術分野の調査を、担当者が替わるたびに外部へ発注し直している場合。AWS を社内の基盤として使っており、検索基盤と生成AIを社内の閉じた環境で動かせる場合。
向いていない
  1. 発明届が年に数件で、過去の調査報告書も数十冊程度の場合。調査報告書の大半が紙のスキャンで、本文が文字として取り出せない場合。調査をすべて外部の特許事務所に任せており、報告書が社内に残っていない場合。なお、特許を受けられるか(新規性・進歩性)の判断と、新たに調査を発注するかの決定は知財部の担当者と弁理士に残ります。

07最小構成で試す方法

  1. 1つの技術分野を選び、その分野の調査報告書を40冊集める
  2. 40冊について、調査日、調査の観点、抽出文献を手で表にする
  3. 最近の発明届を20件選び、当時、担当者がどの過去の報告書を参照したかを控える
  4. 手元のAIサービスに、発明届1件と、表から選んだ近そうな報告書3〜5冊のPDFを渡し、構成ごとに過去の観点に入っていたかをまとめさせる
  5. その分野が長い担当者に、まとめと当時の参照を見比べてもらう

20件は必ず、経験の長い担当者と一緒に見てください。

出てきた内容判断
当時は見落とした近い報告書が挙がる取り込みと検索基盤の構築に進む
観点は近いのに、担当者が「対象の部品が違う」と言う構成への分け方が粗い。 届の構成欄の書き方を見直す
まとめに「追加調査は不要」の一言が混ざる指示の書き方で直る。構成は有効

1行目が出ることは珍しくありません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
発明届の珍しい技術用語が検索に効かないmin_doc_freq の既定は5。5文書未満にしか出ない語は無視される。 1〜2に下げる
届の文章が短く、語がほとんど拾われないmin_term_freq の既定は2。1回しか出ない語は捨てられる。 1に下げる
長い報告書の後半が検索に出ないmax_chunk_limit の既定は100で、超えた分は最後の断片に入る。-1にして上限を外す
埋め込みの上限で文が切られる段落ごとに分ける。切られた部分は検索結果に出ないことがある
上位が同じ調査会社の報告書ばかり免責文と目次を除く。全報告書に共通の文を more_like_this が拾う
調査日を作成日で埋めるnull のまま残させる。調べていない期間が調べ済みになる
引用とJSONの出力を同時に指定する400エラーになる。取り込みはJSON、検索は引用付きの文に分ける
スキャンだけの古い報告書を引用させる文字の無いPDFは引用できない。対象外にして読み取りに回す
日本語の検索の質が足りないTitan V2 は英語に最適化され、多言語はプレビュー。20件で確かめ、代替に切り替える

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 短い発明届と、珍しい語が決め手になる技術文書では、既定値のままだと決め手の語から先に捨てられます。 20件の検証で、既定値と下げた値の結果を並べて比べてください。

調査日の行も早く効いてきます。 調査日が正しくないと、「未調査の範囲」の計算がすべてずれます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 未出願の発明の内容、社内で秘匿と決めたノウハウ、出願しないと決めた理由、他社の特許文献に対する自社の見立て、発明者の名前です。知財部のもっとも機密性の高い情報です。

  1. 未出願の発明を外へ出さない … 検索基盤と生成AIは自社の AWS アカウントの中で動かし、報告書と届の写しも同じアカウントの S3 に置きます
  2. 秘匿と決めた案件の公開範囲を検索に反映させる … 公開範囲を filter に入れ、限られた人以外には検索の時点で除外します
  3. 「出願しない」理由の扱いに気をつける … 「先行文献Xで新規性なし」という当時の見立ては、社内の判断であって確定した事実ではありません。 まとめでは判断として引用し、事実のように書き換えさせません
  4. 特許を受けられるかの判断をAIに寄せない … この構成が出すのは、過去にどの範囲が調べられたかという事実までです。新規性・進歩性の見立ては担当者と弁理士が行います

誤りが起きた場合のリスクは、調べていない範囲を調べ済みと思い込むことと、見るべきでない案件が見えることの2つです。 前者は調査日と範囲の項目で、後者は公開範囲の絞り込みで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:カードの項目と関連度の読み替え表を決める

1つの技術分野を選び、その分野が長い担当者と一緒に、報告書のカードに持たせる項目と、調査会社ごとの関連度の読み替え表を決めます。

2週目:40冊の表と20件の届で試す

報告書40冊を手で表にし、発明届20件で構成ごとのまとめを作らせ、当時の参照と比べます。

3週目:取り出しの指示を作る

同じ報告書を Claude に読ませてカードを取り出し、手で作った40冊と比べます。調査日を作成日で埋めていないか、報告書にない文献を足していないかを最優先で見ます。

4週目:受領のたびの取り込みを始める

新しく届く報告書から、手配した担当者の確認付きでカードをためます。

2か月目: OpenSearch Service の索引を作り、Sudachi を関連付け、取り込みパイプラインと more_like_this・ハイブリッド検索を足します。3か月目以降: 過去の報告書を分野ごとに一括で取り込み、議事録の結び付けと引用付きのまとめを足します。依頼書の過去調査欄に「未調査の範囲」が書かれるようになり、外部への発注が差分だけで出ていくようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
more_like_this が1つ以上の文書に似た文書を探し、like に自由な文・索引の文書・索引にない文書を渡せること。min_term_freq の既定が2、min_doc_freq の既定が5、max_query_terms の既定が25、minimum_should_match の既定が30%であることOpenSearch Documentation: More like this2026-10-06
ハイブリッドクエリのサブクエリが最大5つで、検索パイプラインでスコアを1つにまとめること。filter が1つのクエリとして全サブクエリに適用されることOpenSearch Documentation: Hybrid query2026-10-06
text_chunking が長い文書を短い区切りに分け、区切り文字の既定が \n\n であること。max_chunk_limit の既定が100で、超えた分が最後の断片に入ること。プロセッサーを重ねて段階的に分けられることOpenSearch Documentation: Text chunking processor2026-10-06
text_embedding を使う前にモデルの設定とデプロイが要ること。skip_existing で文章が変わらなければ推論を呼ばずに既存の埋め込みを写すこと。切られた部分が検索結果に出ないことがあり、分割が勧められることOpenSearch Documentation: Text embedding processor2026-10-06
Japanese(kuromoji)Analysis がすべてのドメインに含まれ、Sudachi Analysis が日本語に推奨の任意のプラグインであることAmazon OpenSearch Service: Plugins by engine version2026-10-06
Titan Text Embeddings V2 の入力が最大8,192トークンまたは50,000文字、出力が既定1,024次元であること。英語に最適化され、100以上の言語はプレビューで、日本語が一覧に含まれること。文書を段落などに分けることが推奨されていることAmazon Bedrock: Amazon Titan Text Embeddings models2026-10-06
PDFの引用にページ番号の範囲(1から数える)が付くこと。文字を取り出せないスキャンのPDFは引用できないこと。引用と構造化出力を同時に指定すると400エラーになること。Amazon Bedrock で使えることClaude Docs: Citations2026-10-06

過去の調査で足りるか、新しく調査を発注するか、特許を受けられるかは、知財部の担当者と弁理士が決めてください。 本記事は公開仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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