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損害保険の引受審査で、新しい申込に職業・既往歴・物件の条件が近い過去の引受判断を探し、当時の判断と付けた条件を根拠付きで返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

損害保険の引受担当が新しい申込を審査するときに、職業・既往歴・物件の条件が近い過去の引受判断を探します。当時の判断と付けた条件、判断の理由を、根拠の記録と当時の引受基準の版を付けて示します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
保険/金融
対象部門
営業
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
35h/月
想定削減
65%
年間削減
780h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 審査の仕組みで新しい申込を開き、職業・年齢・既往歴・物件の条件・保険金額を読む
  2. 審査の仕組みの結論の一覧を、商品と職業の分類で絞り込む
  3. 共有フォルダの判断メモを、職業の名前や病名で検索する
  4. 見つかった事案の判断メモを開き、年齢・築年数・保険金額が今回と近いかを確かめる
  5. 近い事案の判断と付けた条件、理由を書き出す
  6. 判断した日から当時の引受基準の版を確かめ、その後の改定で扱いが変わっていないかを見る
  7. 引受基準に照らして今回の判断を決め、権限に応じて決裁を受ける
導入後(After)
  1. 人引受担当が審査の仕組みで申込を開き、「前例を探す」を押す
  2. 自動申込の項目(商品、職業の分類、年齢、既往歴の分類、治療を終えてからの年数、物件の構造・築年数・用途、保険金額)を取り出す
  3. 自動検索基盤が、商品と分類で絞り、年齢・築年数・保険金額の近さで点を付けて、過去の判断を並べる
  4. 自動見つかった判断ごとに、当時の引受基準の版と、その後の改定の有無を改定の表で引いて印を付ける
  5. 自動生成AIが、上位の判断の判断メモを読み、判断・付けた条件・理由を引用付きでまとめる
  6. 人引受担当が並べられた前例を読み、今回の申込との違いを確かめる
  7. 人引受担当が引受基準に照らして今回の判断を決め、権限に応じて決裁を受ける
各工程の詳しい説明を読む
  1. 審査の仕組みで新しい申込を開き、職業・年齢・既往歴・物件の条件・保険金額を読む
  2. 審査の仕組みの結論の一覧を、商品と職業の分類で絞り込む
  3. 共有フォルダの判断メモを、職業の名前や病名で検索する
  4. 見つかった事案の判断メモを開き、年齢・築年数・保険金額が今回と近いかを確かめる
  5. 近い事案の判断と付けた条件、理由を書き出す
  6. 判断した日から当時の引受基準の版を確かめ、その後の改定で扱いが変わっていないかを見る
  7. 引受基準に照らして今回の判断を決め、権限に応じて決裁を受ける

(a)探しても条件の近い事案が出てこない。 判断メモの全文検索は、職業の名前の書き方が違うだけで引けません。分類の番号で探すと、同じ分類の中の年齢や保険金額の違う事案が何百件も出ます。 近さを1件ずつ確かめるところで時間が尽きます。

(b)「近い」の基準が人によって違う。 年齢が5歳違っても近いと見る人と、2歳違えば別と見る人がいます。同じ申込でも、見る前例が人によって変わり、 付ける条件がそろいません。

(c)古い基準の判断がそのまま写る。 判断メモに引受基準の版が書かれておらず、改定の前の判断を、今も同じ扱いだと思って読むことがあります。

(d)経緯がベテランの頭の中にある。 「この職業は所得補償では割増、傷害では不担保」といった経緯は、個々の判断メモには書かれず、 詳しい担当に聞かないと分かりません。

  1. 【人】 引受担当が審査の仕組みで申込を開き、「前例を探す」を押す
  2. 【自動】 申込の項目(商品、職業の分類、年齢、既往歴の分類、治療を終えてからの年数、物件の構造・築年数・用途、保険金額)を取り出す
  3. 【自動】 検索基盤が、商品と分類で絞り、年齢・築年数・保険金額の近さで点を付けて、過去の判断を並べる
  4. 【自動】 見つかった判断ごとに、当時の引受基準の版と、その後の改定の有無を改定の表で引いて印を付ける
  5. 【自動】 生成AIが、上位の判断の判断メモを読み、判断・付けた条件・理由を引用付きでまとめる
  6. 【人】 引受担当が並べられた前例を読み、今回の申込との違いを確かめる
  7. 【人】 引受担当が引受基準に照らして今回の判断を決め、権限に応じて決裁を受ける

7番目は、これまでと変わりません。 画面に出るのは過去の判断で、今回の判断ではありません。

3番目を検索基盤の点の付け方で決めているのも意図してのことです。 近さの基準を生成AIに任せると、問いの書き方で並び順が変わります。 年齢を何歳までの違いなら同じに扱うかは、引受の担当が決めて検索の設定に書きます。

02今回想定するシステム構成

構成図
審査の仕組み(申込の項目)
   ▼【トリガー】引受担当が「前例を探す」を押す
AWS Lambda ── 申込の項目を取り出し、検索の条件を組む
   ▼
Amazon OpenSearch Service(引受判断の索引)
   ├─ bool の filter:商品、職業の分類、既往歴の分類、構造
   ├─ function_score:年齢・築年数・保険金額の gauss、値が無い記録の減点
   └─ 文書レベルのセキュリティ:担当の権限で見られる記録だけ
   ▼
AWS Lambda ── 当時の引受基準の版と、改定の有無を改定の表で引く
   ▼
Claude API(search_result)── 判断・条件・理由を引用付きでまとめる
   ▼
審査の画面(改定の印 → 近さの内訳 → 当時の判断と条件 → 理由の引用)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Amazon OpenSearch Service(function_score、文書レベルのセキュリティ)Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search)
生成AIClaude API(search_result の引用で判断と条件をまとめる)OpenAI API、Gemini API
連携AWS Lambda(検索の条件の組み立て、改定の表の参照)AWS Step Functions
保管Amazon S3(判断メモの写しと、検索と参照の記録)―

審査の仕組みと判断メモは、残します。 この構成は判断メモを読んで索引にするだけで、判断メモと審査の仕組みの結論を書き換えません。

近さの点は、function_score の減衰の関数で付けます。 公式のドキュメントでは、減衰の関数(gauss、exp、linear)は数値・日付・位置の項目に使え、origin から offset の範囲は点が1、offset に scale を足した距離で点が decay(既定は0.5)になるとされています。今回の申込の年齢を origin に置けば、近い年齢ほど高い点になります。

ここに、この構成でいちばん気をつける仕様があります。 公式のドキュメントでは、項目が無い記録に対して、減衰の関数は点1を返すとされています。築年数が書かれていない判断メモは、築年数が今回とまったく同じ記録と同じ点になります。値が無い記録を「近い」と扱わないための減点を、別に入れます。

文書レベルのセキュリティで、見られる記録を担当ごとに分けます。 Amazon OpenSearch Service の細かなアクセス制御では、ロールにインデックスのパターンと検索の条件を指定すると、そのロールに割り当てた利用者は条件に合う文書しか見られないとされています。既往歴を含む判断メモを、権限のある担当だけが見られるようにします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

引受担当が審査の画面で「前例を探す」を押したことを起点にします。 引受基準の表で決まらなかった申込に、画面がボタンを出します。基準で決まる申込にまで前例を出すと、基準より前例を先に読む癖が付くので、出す場面を絞ります。

索引の更新は、判断の決裁のたびに行います。 決裁された判断の結論と判断メモを、その日のうちに索引に入れます。

改定の表の更新は、引受基準の改定のたびに人が行います。 改定の情報を、改定された商品・項目・施行の日として表に足します。 この表が古いと、第5章の4番目の印が付かなくなります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
今回の申込商品、職業の分類と名前、年齢、既往歴の分類と治療を終えてからの年数、物件の構造・築年数・用途、保険金額審査の仕組み
過去の引受判断判断の番号、商品、上と同じ項目、判断(引受・条件付き・謝絶)、付けた条件、判断メモ、決裁の日、当時の引受基準の版、判断の権限審査の仕組みと判断メモ
改定の表引受基準の版、施行の日、改定された商品と項目引受の企画の担当が作る表
職業の読み替えの表職業の名前の書き方と、職業の分類の番号の対応引受の担当が作る表
既往歴の読み替えの表病名の書き方と、社内の既往歴の分類の対応医務の担当が作る表

質を決めるのは、判断メモから項目を取り出せるかです。 年齢・築年数・保険金額が文章に埋もれたままでは、近さの点が付けられません。取り込みの段で項目に分け、取り出せなかった項目は空にして「不明」の印を付けます。 空の項目を推し量って埋めると、近さの点が根拠の無い値で付きます。

2つの読み替えの表は、絞り込みのためのものです。 判断メモの「調理師」「板前」「料理人」を同じ分類の番号にそろえ、分類の番号で絞れるようにします。

Step3

データの取得方法を決める

判断1件を、索引の1件にします。 項目は数値(年齢、築年数、保険金額、治療を終えてからの年数)、キーワード(商品、分類の番号、構造、判断、基準の版、見られる担当の区分)、文章(判断メモ、付けた条件)に分けて持たせます。

検索の要求は、おおよそ次の形です。

{
  "size": 10,
  "query": {
    "function_score": {
      "query": { "bool": {
        "filter": [
          { "term": { "product": "income_protection" } },
          { "term": { "occupation_class": "C-12" } }
        ],
        "should": [ { "terms": { "condition_class": ["M-208"] } } ]
      } },
      "functions": [
        { "filter": { "exists": { "field": "age" } },
          "gauss": { "age": { "origin": 52, "offset": 2, "scale": 5 } } },
        { "filter": { "exists": { "field": "sum_insured" } },
          "gauss": { "sum_insured": { "origin": 300000, "offset": 30000, "scale": 100000 } } },
        { "filter": { "bool": { "must_not": { "exists": { "field": "age" } } } },
          "weight": 0.3 },
        { "filter": { "bool": { "must_not": { "exists": { "field": "sum_insured" } } } },
          "weight": 0.3 }
      ],
      "score_mode": "multiply",
      "boost_mode": "multiply"
    }
  }
}

下の2つの weight が、値の無い記録の減点です。 公式のドキュメントでは、score_mode の既定は multiply で、関数の点を掛け合わせて最終の点にします。年齢が無い記録は年齢の点が1になる代わりに、0.3を掛けられて下がります。火災保険では、age の代わりに building_age と structure で同じ形を作ります。

治療を終えてからの年数も、同じ形で点を付けます。 今回の申込が治療を終えて3年なら、origin を3、offset を1にして、2〜4年の前例を同じ点で並べ、離れるほど点を下げます。 年数の違いが判断を分けることが多い項目なので、scale は年齢より小さくします。

絞り込みは filter に置き、点に混ぜません。 公式のドキュメントでは、function_score はどの文書を返すかではなく、並び順を変えるものとされ、トップの query を省くと全件が点1で対象になるとされています。商品と職業の分類は、必ず bool の filter で絞ってから近さの点を付けます。

見られる記録は、文書レベルのセキュリティで決めます。 役割(ロール)ごとに、見てよい文書の条件を検索の形で書きます。

PUT _plugins/_security/api/roles/uw_medical
{
  "index_permissions": [{
    "index_patterns": ["uw-precedents*"],
    "dls": "{\"terms\": {\"visible_to\": [\"general\", \"medical\"]}}",
    "allowed_actions": ["read"]
  }]
}

visible_to はキーワードの項目にします。 公式のドキュメントでは、文章の項目に記号を含む値があると、標準の分析器が値を分けて索引にするため、意図しない絞り込みになりうるとされ、キーワードの項目にする方法が示されています。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 判断メモを項目に分ける … 取り込みの段で、判断メモから年齢・築年数・保険金額・付けた条件を取り出します。取り出せない項目は空にし、「不明」の印を付けます
  2. 職業と既往歴を分類の番号にそろえる … 読み替えの表を当て、番号を項目に持たせます。表に無い名前は「未分類」にします
  3. 当時の引受基準の版を割り当てる … 版が書かれていない判断は、決裁の日から版を割り当て、「推定」の印を付けます
  4. 見られる担当の区分を付ける … 既往歴を含む判断には medical、含まないものには general を付けます
  5. 個人を特定する項目を外す … 申込者の氏名・住所・連絡先・証券の番号は索引に入れません。判断の番号から審査の仕組みの記録をたどれるだけにします

5番目を軽く見ないでください。 前例の検索に要るのは条件と判断で、誰の申込だったかは要りません。 索引に氏名があると、前例を探すたびに他人の健康の情報を名前付きで読むことになります。

Step5

AIに処理させる

探すのと点を付けるのは検索基盤、改定の印は改定の表から規則で付けます。生成AIには、上位の判断の判断メモを読ませ、引受担当が読み比べられる形にまとめさせます。

させること中身
判断と付けた条件の一覧判断ごとに、引受・条件付き・謝絶と、付けた条件
判断の理由判断メモのうち、判断を分けた理由の記述
今回との違い年齢・築年数・保険金額などで、今回と値が違う項目
判断の分かれ目似た条件で判断が分かれている前例があれば、その違い
させないこと理由
今回の申込の判断や付ける条件の提案引受基準に照らして権限を持つ担当が決める
前例の判断の正しさの評価当時の判断の是非は、この検索の役割ではない
改定の有無の判断改定の表から規則で付ける
判断メモに無い値の補完近さの根拠が無い値になる
既往歴の医学的な解釈医務の担当が行う

させないことの1行目が、この構成でいちばん大事な線引きです。 上位の前例がすべて「保険料の割増で引受」なら、生成AIは「同様の条件で引受可能と考えられます」と書きたくなります。 それを読めば、引受基準に照らす手順を飛ばして前例の結論を写すことになります。

させることの4行目は、第3章の(b)への手当てです。 同じ職業で年齢の違う2件が、一方は引受、一方は謝絶なら、その分かれ目の理由が判断メモに書かれているはずです。 結論をそろえて見せるのではなく、分かれた理由を並べます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは損害保険会社の引受審査の担当に、過去の引受判断を
示す立場です。渡した検索結果(過去の判断)だけを根拠にしてください。

【今回の申込】商品 {product}、職業の分類 {occupation_class}、
  年齢 {age}、既往歴の分類 {condition_class}、
  治療を終えてからの年数 {years_since}、物件 {property}、保険金額 {sum_insured}
【過去の判断】検索結果として渡します。各結果のタイトルには
  判断の番号、当時の基準の版、改定の印、近さの点の内訳が付いています。

【やること】
1. 判断ごとに、判断(引受・条件付き・謝絶)と付けた条件を書く
2. 判断ごとに、判断を分けた理由を判断メモから書く
3. 今回の申込と値が違う項目を書く
4. 似た条件で判断が分かれている前例があれば、どの項目の
   違いで分かれたと判断メモに書かれているかを書く

【厳守事項】
- 今回の申込を引き受けられるか、どの条件を付けるべきかを
  書かないでください。「同様に」「準じて」とも書かないでください。
- 前例の判断は、前例の判断としてだけ書いてください。
- 改定の印が付いた判断は、最初に「判断の後に基準の改定あり」と書いてください。
- 判断メモに無い値を推測で埋めないでください。
  無いものは「記載なし」と書いてください。
- 既往歴の病状や予後について説明しないでください。

「同様に」「準じて」を禁じないと、ほぼ必ず書きます。 上位の前例の結論がそろっていると、それを今回に当てはめる文章がいちばん自然だからです。結論を写す道を、言葉の段階で塞ぎます。

Step7

出力形式を固定する

過去の判断は、search_result のブロックとして渡します。 公式のドキュメントでは、search_result は source、title、content(テキストのブロックの配列)を持ち、引用を有効にすると、回答の文章に、どの検索結果のどのブロックを引いたかが search_result_location として付いて返るとされています。判断メモを「判断」「付けた条件」「理由」のブロックに分けて渡し、どの記述を根拠にしたかをブロックの番号で受け取ります。

Lambda は、返ってきた文章と引用を、次の形のJSONに組み直して画面に流し込みます。

{
  "application_id": "",
  "precedents": [
    {
      "decision_id": "UW-2023-04811",
      "rule_version": "2023-04",
      "version_estimated": false,
      "amended_after": true,
      "score_breakdown": { "age": 0.92, "sum_insured": 0.81, "missing_penalty": 1.0 },
      "decision": "条件付き",
      "conditions": ["保険料の割増"],
      "differences": [{ "item": "年齢", "this": "52", "precedent": "49" }],
      "citations": [{ "search_result_index": 0, "start_block_index": 2, "end_block_index": 2 }]
    }
  ],
  "split_decisions": [""]
}

1つ目の理由は、score_breakdown で近さの内訳を見せられることです。 公式のドキュメントでは、explain を有効にすると、点の計算の内訳を確かめられるとされています。どの項目が近くて上位に来たのか、値が無くて減点されたのかを、画面で読めるようにします。

2つ目は、amended_after を結論より前に出せることです。 改定の後の判断と前の判断を、見出しの段階で色を分けます。

3つ目は、citations で判断メモの該当の記述を開けることです。 生成AIのまとめだけで読まず、理由の原文を開いて確かめるためです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
審査の仕組み画面の連携申込の項目を受け取り、前例を表示する
Amazon OpenSearch Service検索の API担当の権限で見られる判断を、近さの点で並べる
改定の表読み取り当時の基準の版より後の改定を引く
Claude APIAPI呼び出し判断メモを引用付きでまとめる
判断メモの保管読み取り決裁された判断を取り込む

審査の仕組みの判断には書き込みません。 今回の判断は、これまでどおり引受担当が審査の仕組みに入力し、決裁を受けます。前例の画面から判断を入力できる作りにすると、前例の結論をそのまま選ぶ判断が増えます。

営業店と代理店には、この画面を開きません。 前例の検索は引受担当の道具で、「前に通った事案があります」と募集の場で言える形にはしません。

Step9

人が確認する

引受担当が前例を読み、今回の判断は引受基準に照らして担当が行い、権限に応じて決裁を受けます。

  1. 改定の印を見る … 改定の後の判断を先に読み、改定の前の判断はその項目が今の基準でどう扱われるかを確かめる前提で読みます
  2. 近さの内訳を見る … 値が無くて減点された前例は、判断メモを開いて条件を確かめます
  3. 判断の分かれ目を読む … split_decisions があれば、今回の申込がどちら側に近いかを確かめます
  4. 既往歴の扱いを医務の担当に確かめる … 既往歴の解釈が判断を分けている場合は、医務の担当の意見を求めます
  5. 判断を入力し、決裁を受ける … 審査の仕組みの判断メモに、参照した前例の判断の番号を書きます

5番目の「参照した前例の番号」を必ず残してください。 次にこの判断が前例として出てきたとき、どの前例を見て判断したかが分かれば、前例の連鎖をたどれます。

目標は、1件7分です。 前例を読み、改定の印と近さの内訳を確かめ、今回との違いを書き出すまでの時間です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
近い前例が1件も無い「前例なし」と表示し、判断の権限の高い担当の確認を求める
上位の前例の多くが値の無い記録「条件の不明な前例が多い」と表示し、判断メモを開いて確かめる
当時の基準の版が推定「版は推定」と表示する
改定の表が改定に追いついていない表の最終更新日を表示し、施行の日より前なら警告する
職業や既往歴が読み替えの表に無い「未分類」で絞らずに探し、表に足す候補として記録する
担当の権限で見られない前例しか無い「権限のある担当に確認」と表示する。件数や中身は出さない
検索基盤か生成AIが応答しない「表示できない」と出し、これまでの探し方に戻す

6行目は、文書レベルのセキュリティの使い方です。 権限の無い担当には、見られない前例があること自体を中身で示さないようにします。前例の中身を見たいときは、権限のある担当に回します。

Step11

記録を残す

  • 今回の申込の項目と、検索の条件(使った origin・offset・scale の値)
  • 返した前例の判断の番号、近さの点の内訳、改定の印
  • 生成AIに渡した検索結果と、返ってきた文章と引用の全文
  • 引受担当が開いた判断メモと、判断に参照した前例の番号
  • 検索した担当と、そのときの権限のロール

1行目で検索の設定の値を残すのは、近さの基準を後から直すためです。 年齢の scale を変えたときに、変える前と後で、どの前例が上位に来ていたかを比べられます。

04実装レベルの3段階

最小構成:1商品の判断メモを表にして手でAIの画面に渡し、近い前例を挙げさせる / 1商品・1件ごとの前例探し
半自動化:上記+判断を索引にし、分類で絞って年齢・保険金額の近さで並べる / 前例の検索
本格構成:上記+基準の版と改定の印、権限での絞り込み、判断と理由の引用付きのまとめ、判断の分かれ目の表示 / 検索と版の確認、理由の整理

半自動化で、①の10分が4分ほどになります。 近さで並ぶようになりますが、判断メモを開いて理由を書き出す作業と、版の確認は残ります。 本格構成で、版と改定の印と理由のまとめを画面の中で済ませ、1件7分にします。この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を使うと、値の無い判断メモと、理由の書かれていない判断メモの多さが見えてきます。それを補ってから生成AIのまとめを足すほうが、根拠の無いまとめが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
10 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
7 分
現在  300件 × 20分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 300件 × 7分 ÷ 60 = 35 時間/月
月間削減時間
65h
削減率
65%
年間削減時間
780h
年間金額換算(時間単価3,500円)
273万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 所得補償保険・傷害保険・火災保険などで、引受基準に書かれていない申込(珍しい職業、既往歴のある申込、古い建物や用途の混ざった物件)を引受担当が個別に判断している損害保険会社。過去の引受判断が数万件あり、判断メモが共有フォルダや審査の仕組みの自由記述に散らばっていて、似た事案を探すのに時間がかかっている場合。判断に詳しいベテランが限られ、営業店や代理店からの「前に同じような申込は通ったか」という問い合わせに答えられる人が少ない場合。AWS を使っているか、使える場合。
向いていない
  1. 申込のほとんどが引受基準の表で機械的に決まり、個別の判断が月に数件しかない場合。過去の引受判断に理由や付けた条件が残っておらず、結論だけが記録されている場合(先に判断メモの書き方をそろえるのが先です)。既往歴などの健康の情報を、前例の検索に使うことが利用目的の範囲に入っているかを確かめていない場合。なお、今回の申込を引き受けるか、どの条件を付けるかの判断と決裁は、権限を持つ引受担当が引受基準に照らして行うもので、この構成はそれを代わりに行いません。

07最小構成で試す方法

  1. 判断の多い商品を1つ選ぶ(所得補償保険など)
  2. 過去の判断メモから50件を選び、氏名や証券の番号を外して、職業の分類・年齢・既往歴の分類・保険金額・判断・付けた条件・理由を表にする
  3. 最近の新しい申込を5件選び、同じ項目を書き出す
  4. 手元のAIサービスに50件の表と5件の申込を渡し、「申込ごとに、職業の分類が同じで、年齢と保険金額が近い前例を挙げ、判断と付けた条件と理由を書いてください。今回の判断は書かないでください」と指示する
  5. 出てきた前例を、判断に詳しい担当に見てもらう

5件は必ずやってください。 索引を作る前に、「判断メモに、判断を分けた理由が読める形で残っているか」を確かめます。

出てきた内容判断
詳しい担当が見るのと同じ前例が挙がり、理由も読めた索引と近さの点の仕組みに進む
前例は挙がるが、判断メモに理由が書かれていない判断メモの書き方をそろえるのが先。構成は有効
今回の判断まで書いてしまう指示の書き方で直る。結論を書かせない指示を強める

2行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、判断の経緯がベテランの頭の中にしか無かった理由が分かったということです。 その場合は、今日からの判断メモに「判断を分けた条件」の欄を足してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
値の無い記録が上位に来る減衰の関数は項目の無い記録に点1を返す。 別の関数で減点する
生成AIが今回の判断を書く指示で禁じ、「同様に」「準じて」も禁じる
商品の違う前例が混ざる商品と分類は filter で絞り、点に混ぜない
改定の前の判断が新しい判断に見える版と改定の印を結論より先に表示する
権限の無い担当に既往歴の前例が見える文書レベルのセキュリティで、区分の項目をキーワードにして絞る
職業の書き方の違いで絞り込みから漏れる読み替えの表で分類の番号にそろえる
氏名付きで前例を読むことになる索引に個人を特定する項目を入れない
近さの基準を技術の担当だけで決めるoffset と scale の値は引受の担当が決め、変えた記録を残す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 1行目は「近くないものが近く見える」、2行目は「前例が結論に見える」誤りで、どちらも、引受担当が前例を読む前に判断の形が決まってしまう点で同じです。

最後の行も、運用に入ってから効いてきます。 前例が出すぎる、出なさすぎるという声を受けて scale を技術の担当が少しずつ動かすと、いつの間にか引受の考え方が変わっています。 値を変えるときは引受の担当の承認を取り、変えた日と理由を残してください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 過去の申込の職業、年齢、既往歴、物件の条件、保険金額、引受の判断と理由です。既往歴は健康の情報そのものです。

  1. 機微(センシティブ)情報として扱う … 個人情報保護委員会のFAQでは、金融分野ガイドラインが要配慮個人情報と保健医療などに関する情報を機微(センシティブ)情報とし、その取得・利用・第三者提供を原則として禁止していること、例外として「適切な業務運営」「本人の同意」「業務遂行上必要な範囲」の3つを要件とする場合があることが示されています。過去の申込者の既往歴を、別の人の申込の前例として使うことが、同意を得た利用目的と必要な範囲に入っているかを、法務とコンプライアンスの担当と先に確かめます
  2. 索引から個人を外す … 氏名・住所・証券の番号を入れず、条件と判断だけを持たせます
  3. 見られる人を権限で分ける … 既往歴を含む前例は、文書レベルのセキュリティで権限のある担当だけに見せます
  4. 外部へ渡す範囲を決める … 生成AIに渡すのは上位の判断メモだけです。データの扱いの条件を契約で確かめます
  5. 判断を人に残す … 前例は当時の判断で、今回の判断ではありません

誤りが起きた場合のリスクは、条件の違う前例を近いと思って写すことと、健康の情報を目的の外で使うことの2つです。 前者は値の無い記録の減点と近さの内訳の表示で、後者は利用目的の確認と権限の絞り込みで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:利用目的と近さの基準を決める

法務とコンプライアンスの担当と、過去の判断を前例の検索に使う範囲を確かめます。あわせて、引受の担当で、商品ごとに何歳・何年・何割の違いまでを近いとするかを決めます。

2週目:1商品で試す

所得補償保険の判断メモを50件表にし、最近の5件の申込で、手元のAIサービスに近い前例を挙げさせます。詳しい担当に見てもらい、今回の判断まで書いていないかを最優先で確かめます。

3週目:判断メモを項目に分ける

過去の判断メモから、年齢・築年数・保険金額・付けた条件を取り出す処理を作り、取り出せなかった項目の割合を数えます。 読み替えの表と改定の表も、このときに作ります。

4週目:索引を作る

1商品の判断を Amazon OpenSearch Service に入れ、分類で絞って近さで並べる画面を作ります。この時点では生成AIのまとめを付けず、半自動化として使ってもらいます。

2か月目: 値の無い記録の減点と、文書レベルのセキュリティを入れ、生成AIのまとめを足します。3か月目以降: 商品を広げ、「前例なし」と改定の印の付いた前例の件数を毎月数えます。1件20分が何分になったかを実測した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
金融分野ガイドライン第5条第1項が、要配慮個人情報と保健医療などに関する情報を機微(センシティブ)情報とし、取得・利用・第三者提供を原則として禁止していること。第8号が「適切な業務運営」「本人の同意」「業務遂行上必要な範囲」を要件としていること個人情報保護委員会: FAQ Q3-1(機微(センシティブ)情報)2026-10-08
function_score が並び順を変えるもので返す文書は変えないこと。減衰の関数(gauss/exp/linear)が数値・日付・位置の項目に使え、origin・offset・scale・decay(既定0.5)で点を決めること。項目の無い文書には点1を返すこと。score_mode と boost_mode の既定が multiply であること。関数ごとに filter を指定できることOpenSearch Documentation: Function score query2026-10-08
文書レベルのセキュリティが、ロールが検索などで取得できる文書を検索の条件で決めること。REST API でロールに dls を文字列で指定すること。文章の項目に記号を含む値があると意図しない絞り込みになりうるため、キーワードの項目にする方法があることOpenSearch Documentation: Document-level security2026-10-08
Amazon OpenSearch Service の細かなアクセス制御で、文書レベルのセキュリティ・項目レベルのセキュリティ・項目のマスキングが使えることAmazon OpenSearch Service: Fine-grained access control2026-10-08
search_result が source・title・content を持ち、引用を有効にすると search_result_location として検索結果とブロックの番号付きで引用が返ることClaude Docs: Search results2026-10-08

今回の申込の引受の判断は、最新の引受基準に照らして、権限を持つ引受担当の決裁で行ってください。 本記事は公開仕様と個人情報保護委員会のFAQで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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