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公的研究費から支出する購入・出張・謝金の申請を、配分機関の使用ルールと機関の規程に照らして一次判定し、確認が要る点を経理へ返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

研究者が出した購入・出張・謝金の申請を、その財源の使用ルールと機関の規程の条項ごとに照らし、使えない経費に当たる疑いと、情報が足りない点を経理へ返します。支出してよいかを決めるのは人です。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
その他/医療/教育/製造
対象部門
研究開発/財務
対象業務
内容確認・チェック
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
50h/月
想定削減
58%
年間削減
840h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 研究者が財務会計システムで申請し、見積書や出張の計画などのPDFを添付する
  2. 担当者が申請を開き、研究課題の一覧で研究期間と財源の区分を確かめる
  3. 財源に合った使用ルールのPDFを開き、該当しそうな条項を探す
  4. 機関の規程(換金性の高い物品の扱い、出張の報告の決まり、謝金の単価表)を開いて照らす
  5. 添付のPDFを読み、申請の内容と食い違いがないかを見る
  6. 足りない情報や疑問があれば、研究者へメールで問い合わせる
  7. 判断に迷うものは、経理課の先輩や課長に相談する
  8. 問題がなければ、経理課へ支出の手続きを回す
導入後(After)
  1. 人研究者が財務会計システムで申請し、PDFを添付する(今までどおり)
  2. 自動定時に新しい申請を取り出し、研究課題の一覧から研究期間・財源の区分・研究代表者と分担者を引く
  3. 自動財源の区分から、照らす条項の集まり(ルールセット)を選ぶ
  4. 自動研究期間・年度末・研究代表者と分担者への謝金など、機械で決まる点をプログラムで先に判定する
  5. 自動申請・添付のPDF・選んだ条項を Claude API に渡し、条項ごとに `ok` / `needs_info` / `suspect` / `not_applicable` を付けさせる
  6. 自動条項ごとの結果から、`pass` / `ask_researcher` / `review` を規則で決める
  7. 自動`ask_researcher` のものは、研究者への問い合わせ文の下書きを作る
  8. 人担当者が `review` と `ask_researcher` のものを開き、根拠の条項と添付の該当箇所を確かめる
  9. 人問い合わせ文を直して研究者へ送る。`review` は担当者か経理課長が判断する
  10. 人`pass` のものは一覧で流し見て、経理課へ回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 研究者が財務会計システムで申請し、見積書や出張の計画などのPDFを添付する
  2. 担当者が申請を開き、研究課題の一覧で研究期間と財源の区分を確かめる
  3. 財源に合った使用ルールのPDFを開き、該当しそうな条項を探す
  4. 機関の規程(換金性の高い物品の扱い、出張の報告の決まり、謝金の単価表)を開いて照らす
  5. 添付のPDFを読み、申請の内容と食い違いがないかを見る
  6. 足りない情報や疑問があれば、研究者へメールで問い合わせる
  7. 判断に迷うものは、経理課の先輩や課長に相談する
  8. 問題がなければ、経理課へ支出の手続きを回す

(a)照らす条項を探すところから始まる。 3番目と4番目の多くは、「この申請に効くのはどの条項か」を探す時間です。補助金と基金では、同じ内容の条項でも番号が違います。 補助金の研究者使用ルールでは使用の制限が2-10、合算使用の制限が2-11、基金では2-9と2-10です。番号で覚えている担当者ほど、財源を取り違えたときに気づきません。

(b)判断が担当者の経験で分かれる。 研究室で使う机は認められるか、学会の参加と私用の旅行を組み合わせた出張はどう分けるか。経験の長い担当者は即答し、新しい担当者は相談に回します。 相談先が特定の1人に集中し、その人が休むと止まります。

(c)「書いていない」と「使えない」が混ざる。 問い合わせのメールに、情報の不足と使えない疑いが同じ調子で書かれます。研究者は、単に欄を埋め忘れただけなのに疑われたと感じます。 逆に、本当に確かめるべき1点が、ほかの細かい問い合わせに埋もれることもあります。

(d)全件を同じ深さで見られない。 消耗品の少額の購入と、高額の機器や海外出張が、同じ列に並んでいます。年度末の繁忙期には、深く見るべきものまで流れていきます。

  1. 【人】 研究者が財務会計システムで申請し、PDFを添付する(今までどおり)
  2. 【自動】 定時に新しい申請を取り出し、研究課題の一覧から研究期間・財源の区分・研究代表者と分担者を引く
  3. 【自動】 財源の区分から、照らす条項の集まり(ルールセット)を選ぶ
  4. 【自動】 研究期間・年度末・研究代表者と分担者への謝金など、機械で決まる点をプログラムで先に判定する
  5. 【自動】 申請・添付のPDF・選んだ条項を Claude API に渡し、条項ごとに ok / needs_info / suspect / not_applicable を付けさせる
  6. 【自動】 条項ごとの結果から、pass / ask_researcher / review を規則で決める
  7. 【自動】 ask_researcher のものは、研究者への問い合わせ文の下書きを作る
  8. 【人】 担当者が review と ask_researcher のものを開き、根拠の条項と添付の該当箇所を確かめる
  9. 【人】 問い合わせ文を直して研究者へ送る。review は担当者か経理課長が判断する
  10. 【人】 pass のものは一覧で流し見て、経理課へ回す

8番目と9番目が、人の時間の使い道です。 条項を探す時間はなくなり、判断と、研究者とのやり取りに時間を使います。

4番目をプログラムに置くのは、意図してのことです。 研究期間の外か、謝金の相手が研究代表者か分担者か、補助金で年度を越える納品か。これらは日付と名簿で決まり、AIに推し量らせる理由がありません。 AIには、文章を読まないと決まらない点だけを任せます。

02今回想定するシステム構成

構成図
財務会計システム(支出の申請・添付PDF)
   │  定時に新しい申請を書き出す
   ▼
Python(取り出し・照合)
   ├── 研究課題の一覧 ── 研究期間/財源の区分/代表者・分担者
   ├── ルールセットの選択(財源の区分 → 条項の集まり)
   └── 機械で決まる点の判定(期間・年度末・本人への謝金)
   ▼
Claude API ── 条項ごとの当てはめ
   │   ① 使用の制限(施設・事故・本人の人件費・間接経費が適切な経費)
   │   ② 合算使用の制限    ③ 機関の規程(換金性の高い物品・出張の報告・謝金)
   │   ④ 申請と添付のPDFの食い違い
   ▼
Python ── 規則で判定(pass / ask_researcher / review)
   ▼
点検の一覧(研究推進課)
   ├──▶ 研究者への問い合わせの下書き
   └──▶ 経理課へ(pass と、人が判断を終えたもの)
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(条項ごとの当てはめと、問い合わせ文の下書き)OpenAI API、Gemini API
連携Python(申請の取り出し、研究課題の一覧との照合、機械で決まる点の判定、規則による振り分け)Google Apps Script
ルール集使用ルールと機関の規程を条項ごとに分けた表社内のデータベース
申請の管理財務会計システム研究費の管理システム

新しく作るのは、照合のプログラムとルール集の表です。 財務会計システムには書き込みません。点検の結果は一覧に出し、支出の手続きは今までどおり人が回します。

土台になるのは、配分機関が公表している使用ルールです。 日本学術振興会のページでは、科研費の使用ルールが種目と財源(補助金・基金)ごとに、研究者向けと機関向けに分けて掲載されています。令和8(2026)年度の版は、基盤研究などで2026年6月5日に改正され、新旧対照表も同じページにあります。 ルール集の表には、版と改正日を必ず持たせます。

補助金と基金で、条項の中身が一部違います。 補助金の研究者使用ルールでは、直接経費は「2-8」に規定する場合を除き、補助事業を行う年度を越えて使用できないとされ、物品の納品や役務の提供は年度の3月31日までに終えなければなりません。基金の研究者使用ルールでは、未使用額が出る場合に翌年度に引き続き使用できるとされ、納品などは補助事業期間内に終えればよいとされています。財源の区分を取り違えると、判定が逆になります。

使えない経費は、両方とも同じ4つです。 建物等の施設に関する経費(購入した物品の据付等を除く)、補助事業の遂行中に発生した事故・災害の処理のための経費、研究代表者又は研究分担者の人件費・謝金、そして間接経費を使用することが適切な経費です。4つ目は文章で書かれた基準で、AIに当てはめさせるのは主にここと、機関の規程の部分です。

PDFの読み取りは Claude API に任せます。 PDFの中のテキスト・図・表を読め、1回のリクエストは32MBまで、ページ数は600ページまで(コンテキストが1M未満のときは100ページ)です。見積書や学会の案内は数ページなので、そのまま渡せます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

定時の実行にします。1日に2回、昼と夕方です。 申請のたびに動かす方法もありますが、研究者は同じ日に申請を出し直したり、添付を足したりします。数時間ためてから見るほうが、出し直しの前の版を点検する無駄が減ります。

年度末の繁忙期だけ、回数を増やします。 補助金では納品が年度の3月31日までなので、2月から3月は申請から納品までの余裕が短くなります。 1日4回にして、問い合わせが早く研究者に届くようにします。

処理が終わった申請には、点検した日時と使ったルールセットの版を付けます。 出し直された申請は、版の付いていない新しい申請として扱います。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
支出の申請申請番号、研究者、研究課題の番号、財源の区分、費目、品名・用務、金額、数量、納品予定日・出張の期間、相手方財務会計システム
添付のPDF見積書、学会の案内、出張の計画、謝金の依頼状財務会計システム
研究課題の一覧研究期間、配分機関、種目、補助金か基金か、研究代表者と研究分担者の名簿研究推進課の一覧
ルール集条項ごとに分けた使用ルールと機関の規程。版と改正日研究推進課が作る表
過去の判断の記録条項ごとに、認めた例と差し戻した例とその理由点検の記録

質を決めるのは、研究課題の一覧とルール集です。 一覧に財源の区分が無ければ、正しいルールセットを選べません。ルール集が古い版のままなら、改正された条項で誤った判定になります。

過去の判断の記録は、機関の解釈を伝えるために持ちます。 「研究室で使う机」を機関として認めてきたのか、通常備えるべき物として差し戻してきたのか。使用ルールの文言だけでは決まらない部分を、機関の過去の判断で補います。 渡すのは、同じ条項の記録だけに絞ります。

Step3

データの取得方法を決める

財務会計システムから、前回の実行の後に申請・更新されたものを書き出します。 CSVの書き出しかAPIで取り出せるかは、使っているシステムで確かめます。取り出せない場合は、書き出したファイルを決まったフォルダに置く運用にします。

取るものどこから何に使うか
申請の項目財務会計システムの書き出し条項の当てはめの対象
添付のPDF申請番号ごとのフォルダ申請の内容との突き合わせ
研究期間・財源・名簿研究課題の一覧ルールセットの選択と、機械で決まる点の判定
条項の本文ルール集の表AIに渡す判定の基準
過去の判断点検の記録機関の解釈の例

ルール集の表は、人が作ります。 使用ルールのPDFを条項ごとに切り、rule_set(例:kaken_hojo_2026 / kaken_kikin_2026)、条項番号、見出し、本文、適用する費目を列に持たせます。条項の番号は財源で違うので、番号ではなく rule_set と見出しの組で引きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ルールセットの選択 … 研究課題の一覧の財源の区分と年度から rule_set を決めます。区分が空なら、AIに渡さずに review にします
  2. 研究期間の判定 … 申請日と納品予定日・出張の期間が研究期間に入っているかを、日付で見ます
  3. 年度を越える納品の判定 … 補助金のルールセットで、納品予定日が年度の3月31日を越えるものに印を付けます
  4. 本人への謝金・人件費の判定 … 謝金・人件費の相手方を、研究代表者と分担者の名簿と突き合わせます。氏名の表記ゆれは職員番号で合わせます
  5. 合算の有無の確認 … 財源が複数入っている申請に印を付けます
  6. 添付の確認 … PDFが開けるか、パスワードが掛かっていないかを見ます。Claude API が扱えるのはパスワードや暗号化の無い標準のPDFです
  7. 渡す条項の絞り込み … 費目に関係する条項だけをルール集から選びます。全条項を毎回渡しません

2番目から4番目の結果は、AIに渡す前に確定させます。 AIには「この申請は研究期間内で、謝金の相手は名簿に無い」と事実として渡し、同じことを推し量らせません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、渡した条項の1つずつについて、この申請が当てはまるか、情報が足りないかを判定し、根拠にした文を写すことです。

見るもの判定の仕方判断できないときの扱い
建物等の施設に関する経費品名・見積の明細が工事・設備の改修に当たるか。購入した物品の据付は除く明細が無ければ needs_info
間接経費が適切な経費機関で通常備えるべき物か、研究課題に専ら使う物か研究課題との関係が書かれていなければ needs_info
合算使用他の経費と合わせるとき、使用区分が明らかか区分の記載が無ければ needs_info
換金性の高い物品機関の規程の一覧に当たるか(パソコン、タブレットなど)当たれば管理の手続きを案内する印
出張の用務用務内容・訪問先・宿泊先・面談者が書かれているか。用務が研究課題と関係するか欠けた項目を needs_info
申請と添付の食い違い金額・数量・日付・品名が見積や案内と合うか読めない箇所は needs_info

suspect と needs_info の区別が、この構成の中心です。 suspect は書かれた内容から使えない経費に当たる疑いがあるということ、needs_info は判断に要る情報が書かれていないということです。前者は経理の確認、後者は研究者への問い合わせに回ります。

出張の4項目は、文部科学省のガイドラインから来ています。 研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインは、出張計画の実行状況の把握に当たって、用務内容、訪問先、宿泊先、面談者等が確認できる報告書等の提出を求め、重複受給がないかも含めて確認するとしています。換金性の高い物品は、購入したことの明示と所在の記録で管理し、特にパソコンは適切に管理することが望ましいとされています。

させないこと理由
支出を認めるかの結論機関として判断することで、経理と研究推進の責任
不正の疑いの指摘調査は別の手続き。点検の結果に「不正」という語を出さない
研究の必要性の評価研究の中身の判断は研究者と審査の側のもの
情報の補完面談者や用途が書かれていなければ、それらしく埋めない
ルールの解釈の創作渡した条項と過去の判断以外を根拠にしない

2行目を外さないでください。 点検の結果は研究者の目にも触れます。情報が足りないだけの申請に「不正」の語が付けば、点検そのものが信頼を失います。

Step6

指示内容を固定する

あなたは研究機関の研究推進課で、公的研究費の支出申請を点検する担当者の補助です。
渡された申請・添付・条項だけを見て、条項ごとに判定してください。

【判定の対象】
渡された条項(rule_set と見出しで示します)の1つずつについて、この申請が
当てはまるか、判断に要る情報が足りないかを判定します。
渡されていない条項や、一般的な知識を根拠にしないでください。

【status の選び方】
- ok ............. 条項に照らして問題になる記載が無く、判断に要る情報もそろっている
- needs_info ..... 判断に要る情報が申請にも添付にも書かれていない
- suspect ........ 書かれた内容から、条項に当てはまる(使えない経費に当たる)疑いがある
- not_applicable . この申請の費目には関係しない条項
迷ったときに ok を選ばないでください。

【厳守事項】
- 書かれていない情報を推測で埋めないでください。用途、面談者、宿泊先などが
  書かれていなければ needs_info とし、missing_items に欠けている項目を書いてください。
- 情報が足りないことを、suspect の理由にしないでください。
- 「不正」「不適切」という語を使わないでください。
- 支出を認めるか、差し戻すべきかを書かないでください。
- 研究の必要性や研究の価値を評価しないでください。
- evidence には、根拠にした申請・添付・条項の文をそのまま写し、
  どこから写したか(application / attachment / rule)を書いてください。
- 前処理の結果(研究期間、年度を越える納品、本人への謝金)は確定した事実です。
  判定し直さないでください。
- 過去の判断の例は、同じ条項の解釈の参考にしてください。
  例と食い違う判定をするときは、その理由を reason に書いてください。
- 申請と添付で金額・数量・日付・品名が食い違えば、条項とは別に mismatches に書いてください。

【申請】{application}
【添付のPDF】(document として渡す)
【前処理の結果】{precheck}
【条項】{rules}
【過去の判断の例】{precedents}

「情報が足りないことを、suspect の理由にしない」が最も効く1文です。 これが無いと、研究課題との関係が書かれていないパソコンの購入を「通常備えるべき物に当たる疑い」と判定します。書いていないことと、使えないことは別です。

「渡されていない条項を根拠にしない」も外せません。 AIは研究費の一般的な知識を持っており、何も言わなければ他の配分機関のルールや古い版の記憶で判定します。根拠を、渡した表の版に閉じ込めます。

Step7

出力形式を固定する

Claude API の構造化出力で、次の形のJSONを受け取ります。 output_config.format に type: "json_schema" とスキーマを指定すると、返答がスキーマに沿ったJSONになります。

{
  "application_id": "",
  "rule_set": "kaken_hojo_2026 | kaken_kikin_2026 | other",
  "checks": [
    { "rule_id": "", "rule_heading": "",
      "status": "ok | needs_info | suspect | not_applicable",
      "reason": "",
      "missing_items": [],
      "evidence": [ { "source": "application | attachment | rule", "text": "" } ] }
  ],
  "mismatches": [ { "field": "", "application_value": "", "attachment_value": "" } ],
  "asset_control_flag": false,
  "question_draft": ""
}

status を enum にして、4つ以外の値を返させません。 構造化出力のページでは、enum の大文字・小文字は保証されないとされているので、受け取った側で小文字にそろえてから比べます。 数値の範囲や文字数の制約はスキーマに書けないので、evidence が空でないかはプログラムで確かめます。

振り分けは、AIの出力を受けてプログラムが決めます。

verdict条件
reviewsuspect が1つでもある。前処理で研究期間外・年度越え・本人への謝金が出た。rule_set が決まらない
ask_researchersuspect が無く、needs_info か mismatches がある
passすべて ok か not_applicable で、食い違いも無い

review を先に判定するのが大事です。 suspect と needs_info が両方あるとき、研究者への問い合わせだけで終わらせず、必ず担当者が見る列に入れます。

asset_control_flag は振り分けに使いません。 換金性の高い物品は使えない経費ではなく、管理の手続きが要るだけなので、pass のものにも付けて、購入の後に管理の表示と所在の記録を案内します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
財務会計システム書き出し(CSVまたはAPI)新しい申請と添付を取り出す。書き込まない
研究課題の一覧読み取り研究期間・財源・名簿
ルール集・過去の判断読み取り条項と解釈の例
Claude APIAPI呼び出し条項ごとの判定と問い合わせ文の下書き
点検の一覧書き込み判定の結果と振り分け、担当者の判断の記録
メール下書きの作成研究者への問い合わせ。送信は人

財務会計システムに書き込まないのは、承認の経路を変えないためです。 点検の結果は一覧に出し、支出の承認は今までどおりシステムの上で人が行います。

問い合わせの下書きは、needs_info と mismatches だけから作ります。 suspect の内容は研究者への文面に入れません。疑いを確かめるのは担当者で、研究者に何を聞くかは担当者が決めます。

Step9

人が確認する

担当者が開くのは review と ask_researcher です。 pass は一覧で件数・研究者・金額を流し見て経理課へ回します。

  1. review を先に見る … suspect の根拠の条項と、写された文を読みます。添付の該当箇所を開いて確かめます
  2. 過去の判断と比べる … 同じ条項で機関がどう判断してきたかを見ます。食い違うなら課長に相談します
  3. ask_researcher の下書きを直して送る … 欠けた項目が本当に欠けているかを確かめてから送ります
  4. 判断を記録する … 認めた・差し戻した・研究者に確かめたの別と理由を、条項ごとに残します。次の判定の「過去の判断の例」になります

4番目を省くと、この構成は育ちません。 機関の解釈は、使用ルールの文言ではなく、担当者の判断の積み重ねにあります。記録した判断が次の点検で例として渡り、担当者による違いが減っていきます。

pass の流し見でも、高額のものは開きます。 金額の線を機関で決め、それを超えるものは pass でも担当者が中身を見ます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
研究課題の一覧に財源の区分が無いrule_set を決めず review。一覧を直してから再点検
使用ルールが改正されたルール集に新しい版を足し、改正日以降の申請から新しい版で判定。古い版は消さない
添付のPDFにパスワードが掛かっている開けないことを needs_info にして研究者へ。解除した版を出し直してもらう
添付が大きすぎる1回のリクエストは32MBまで。ページを分けるか、Files API で渡す
財源が複数入っている合算使用の条項を必ず渡し、使用区分の記載を見る
配分機関のルール集がまだ無いrule_set: other として機関の規程だけで判定し、review に回す
AIの返答がスキーマに合わない拒否や出力の打ち切りではスキーマに合わない返答になりうる。再実行し、だめなら review
同じ申請が出し直された新しい版だけを点検し、古い版の結果に「出し直し」の印を付ける

上の2行が、運用の大半を占めます。 どちらもAIの問題ではなく、研究課題の一覧とルール集の手入れの問題です。 年度の初めに一覧を更新し、改正のたびにルール集を足す作業を、担当を決めて回します。

Step11

記録を残す

  • 申請番号ごとに、点検に使った申請の項目と添付のファイル名
  • 前処理の結果(研究期間・年度越え・本人への謝金・合算)
  • 使ったルールセットの版と改正日、渡した条項の一覧
  • AIが返したJSONの全文
  • 振り分けの結果と、担当者の判断とその理由(条項ごと)
  • 研究者への問い合わせと回答、出し直しの記録

3つ目が、後で説明するときの支えです。 監査で「なぜこの支出を認めたか」と聞かれたとき、その日にどの版のルールで点検したかが分からないと答えられません。 改正の前後で判定が変わった申請も、版が残っていれば追えます。

担当者の判断の記録は、条項ごとの差し戻しの率として月に1回集計します。 特定の条項で needs_info が多いなら、申請の画面の入力欄の作りか、研究者への案内に原因があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請と条項を手でAIの画面に貼り、条項ごとの判定をさせる / 1件ごとの条項の当てはめ
半自動化:上記+ルール集の表と前処理のプログラムを作り、申請の書き出しから判定の一覧までを流す / 条項を探す作業と、機械で決まる点の判定
本格構成:上記+規則による振り分け、問い合わせの下書き、過去の判断の例の自動の選択、判断の記録 / 点検の全体と、研究者への問い合わせの準備

最小構成では件数がさばけません。 確かめるための段階です。 半自動化で、①の「探す」時間がほぼなくなります。 ただし、判定の一覧を担当者が全件読む形なので、1件12分が7分程度にとどまります。本格構成で振り分けと下書きが入り、5分になるのが本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、needs_info が多い条項と、ルール集の欠けている配分機関が分かります。 そこを直してから振り分けを入れるほうが、review に積み上がる件数が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  600件 × 12分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 600件 × 5分 ÷ 60 = 50 時間/月
月間削減時間
70h
削減率
58%
年間削減時間
840h
年間金額換算(時間単価3,000円)
252万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 科研費などの公的な研究費を多くの研究者が使っており、研究推進や経理の担当者が、購入・出張・謝金の申請を1件ずつ配分機関の使用ルールと機関の規程に照らしている大学・研究機関・病院。研究費の財源(補助金か基金か、どの配分機関か)が申請データに入っている場合。過去の差し戻しの理由を記録している場合。共同研究で公的な研究費を受けている企業の研究部門にも当てはまります。
向いていない
  1. 公的な研究費を使う研究者が数名で、担当者がすべての申請を丁寧に見られる場合。申請が紙だけで、財源や研究課題の番号がデータとして残っていない場合。なお、支出が認められるかの最終的な判断と、不正の疑いの調査は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の申請から30件を選ぶ(購入・出張・謝金を混ぜ、差し戻したものを数件入れる)
  2. その30件の財源の使用ルールのPDFと、機関の規程を用意する
  3. 手元のAIサービスに、申請の内容・添付・使用ルールの該当部分を貼り付ける
  4. 「渡した条項ごとに、当てはまる疑いがあるか、判断に要る情報が足りないかを判定し、根拠の文を写してください。書かれていない情報を推測で埋めないでください。支出を認めるかは書かないでください」と指示する
  5. 当時の担当者の判断と突き合わせる

30件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、条項を渡せば当てはめられるのかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の差し戻しと同じ条項が挙がったルール集の表づくりに進む
情報の不足を「疑い」として挙げた指示の書き方で直る。構成は有効
機関の解釈と違う判定が多い過去の判断の例を渡す必要がある。 記録を集めるのが先

3行目が出たら、それが収穫です。 機関の解釈が文書になっていなかったということで、担当者による判断の違いの原因が1つ見えたことになります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
補助金と基金を取り違える研究課題の一覧の財源の区分で選ぶ。空なら判定しない
条項番号で引いて別の条項が出る補助金と基金で番号が違う。rule_set と見出しの組で引く
情報の不足が「疑い」になる指示で明確に分け、needs_info は研究者への問い合わせに回す
渡していないルールで判定する渡した条項以外を根拠にしないと指示し、evidence の出どころを確かめる
改正後も古い版で判定するルール集に改正日を持たせ、申請日で版を選ぶ
本人への謝金をAIに判定させる名簿と職員番号で照合する。AIに推し量らせない
問い合わせに疑いの内容が入る下書きは needs_info と食い違いだけから作る
担当者の判断が記録されない判断の欄を埋めないと一覧を閉じられない作りにする
review が多すぎて見きれない条項ごとの件数を見て、過去の判断の例を足す
機関の規程の扱いが暗黙のまま換金性の高い物品の一覧や謝金の単価表を、表として書き出す

上の2行が、最も重い失敗です。 どちらも判定が正反対になります。財源の区分を研究課題の一覧で必ず持つことが、最初の準備です。

下の2行は、運用が育つかどうかを決めます。 判断の記録が無いと、半年たっても担当者による違いは減りません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 研究者の氏名と研究課題、支出の内容と金額、出張の訪問先と面談者、謝金の相手方の氏名、そして見積書に載る取引先の情報です。

  1. 外部へ渡す範囲を、判定に要るものに限る … 謝金の相手方の口座や住所は判定に要りません。申請の書き出しの段階で列を落とします
  2. AIの出力に「不正」の語を出さない … 点検は不正の調査ではありません。疑いの調査は、機関の定めた別の手続きで行います
  3. 支出の判断を代替しない … この構成が出すのは、条項に照らした当てはめと情報の不足です。認めるかどうかは、研究推進と経理が決めます
  4. ルール集の版を管理する … 改正の反映が遅れると、誤った判定が続きます。改正を確かめる担当と頻度を決めます
  5. 研究者に点検の仕組みを説明する … AIが一次判定をしていること、判断は人が行うことを、研究者向けの案内に書きます
  6. データの扱いを契約で確かめる … 申請と添付を外部のAPIに渡すことになるので、機関の情報の取り扱いの決まりに照らして、利用する契約と設定を確かめます

誤りが起きた場合のリスクは、使えない経費を見落として支出することと、使える支出を止めて研究を遅らせることの2つです。 前者は財源の取り違えから、後者は needs_info と suspect の混同から起きます。どちらも設計で防げる箇所なので、そこだけは守ります。

10まず何から始めるか

1週目:研究課題の一覧を整える

すべての研究課題に、配分機関・種目・補助金か基金か・研究期間・研究代表者と分担者の職員番号がそろっているかを確かめます。財源の区分が空の課題を無くすのが最初の作業です。

2週目:30件で試す

先月の申請から30件を選び、手元のAIサービスで条項ごとの判定をさせます。当時の判断と突き合わせ、情報の不足を「疑い」にしていないかを最優先で見ます。

3週目:ルール集を作る

科研費の補助金と基金の研究者使用ルールを条項ごとに切り、rule_set・見出し・本文・適用する費目・改正日を持つ表にします。機関の規程のうち、換金性の高い物品の一覧と出張の報告の項目も表にします。

4週目:書き出しから判定の一覧までをつなぐ

財務会計システムから申請を書き出し、前処理と判定を流して一覧に出すところまで作ります。この時点では振り分けをせず、判定の一覧だけを見ます。

2か月目: 振り分けと問い合わせの下書きを足し、review と ask_researcher の件数を毎週数えます。3か月目以降: 担当者の判断の記録を「過去の判断の例」として渡し始め、1件12分が何分になったかを実測します。年度末の繁忙期を1回越えて、review が担当者の手に収まる件数に落ち着いた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
科研費の使用ルールが種目と財源(補助金・基金)ごとに研究者向け・機関向けに掲載されていること。令和8(2026)年度の版が2026年6月5日に改正され、新旧対照表が同じページにあること日本学術振興会: 使用ルール2026-10-08
補助金の研究者使用ルールで、直接経費は2-8に規定する場合を除き補助事業を行う年度を越えて使用できないこと(2-6)。使用の制限が2-10、合算使用の制限が2-11であること。納品・役務の提供は年度の3月31日までに終了しなければならないこと(2-12)日本学術振興会: 研究者使用ルール(補助条件)令和8年度2026-10-08
基金の研究者使用ルールで、直接経費の各費目の例(物品費・旅費・人件費・謝金・その他)。未使用額を翌年度に引き続き使用できること(2-8)。使用の制限(2-9)が施設に関する経費、事故・災害の処理の経費、研究代表者又は研究分担者の人件費・謝金、間接経費を使用することが適切な経費であること。合算使用の制限が2-10、納品等が補助事業期間内に終了しなければならないことが2-11であること日本学術振興会: 研究者使用ルール(交付条件)令和8年度2026-10-08
換金性の高い物品は購入したことの明示や所在の記録で適切に管理し、特にパソコンは適切に管理することが望ましいこと。出張計画の実行状況の把握に当たり、用務内容、訪問先、宿泊先、面談者等が確認できる報告書等の提出を求め、重複受給がないかも含め確認すること。予算執行が年度末に集中する場合に留意すること文部科学省: 研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)令和3年2月1日改正2026-10-08
output_config.format に type: "json_schema" を指定すると返答がスキーマに沿ったJSONになること。enum が使え、大文字・小文字は保証されないこと。数値・文字数の制約は使えないこと。拒否や max_tokens での打ち切りではスキーマに合わない出力になりうることClaude Docs: Structured outputs2026-10-08
PDFのテキスト・図・表を扱えること。1回のリクエストが32MBまで、600ページまで(コンテキストが1M未満のときは100ページ)であること。パスワードや暗号化の無い標準のPDFが対象であること。1ページあたり1,500〜3,000トークン程度で、各ページが画像としても扱われること。Files API で渡せることClaude Docs: PDF support2026-10-08

支出を認めるかどうかの判断と、配分機関のルールの解釈は、機関の研究推進・経理の担当と、必要に応じて配分機関に確かめてください。 本記事は日本学術振興会・文部科学省・Anthropic の公開している情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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