Media > AI活用ユースケース > 研究開発 > 論文の査読コメントを受け取ったときに、コメントごとの対応方針と回答文の下書きを作り、改訂した本文の修正箇所との対応表をつける

論文の査読コメントを受け取ったときに、コメントごとの対応方針と回答文の下書きを作り、改訂した本文の修正箇所との対応表をつける

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

論文の査読コメントが届いたら、コメントを1つずつ切り出して番号を振り、研究者が対応方針を決めやすい形にします。研究者が本文を改訂した後、改訂前後の差分から、コメントごとの回答文の下書きと修正箇所の対応表を作ります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
医療/教育/製造
対象部門
研究開発
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
生成
主な効果
入力漏れ削減/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
48h/月
AI導入後
17h/月
想定削減
65%
年間削減
372h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 研究者が決定通知のメールを開き、査読者ごとのコメントを文書に写して、1つずつ番号を振る
  2. コメントごとに、受け入れるか、反論するか、追加の実験や解析が要るかを考え、共著者とメモで共有する
  3. 本文を改訂する
  4. 回答文を書く。コメントを引用し、回答を英語で書き、修正した箇所を本文から引用する
  5. 修正した箇所のページと行番号を、改訂した原稿から拾って回答文に書き込む
  6. 回答文と原稿を共著者に回し、再投稿する
導入後(After)
  1. 人研究者が決定通知の本文と投稿した原稿を、案件のフォルダに入れる
  2. 自動回答文のプログラムが、Claude API に決定通知の本文を渡し、コメントを1つずつ切り出させて番号と要求の種類を付ける
  3. 自動コメントの一覧と、方針を書き込む欄のある表を作り、研究者に知らせる
  4. 人研究者が表にコメントごとの方針(受け入れ・一部受け入れ・反論・追加の解析)と、回答に入れたい要点を書き、本文を改訂する
  5. 人研究者が改訂した原稿を案件のフォルダに入れる
  6. 自動プログラムが改訂前後の原稿の差分を取り、修正された段落とその位置(節・ページ・行番号)を一覧にする
  7. 自動Claude API が、コメントごとに方針と要点と差分の一覧から回答文の下書きを作り、差分の中から対応する修正箇所を選ぶ
  8. 自動プログラムが、答え漏れ・差分に無い修正箇所・方針が空のコメントを点検し、回答文の下書きと対応表に点検の結果を添える
  9. 人研究者が下書きを直し、共著者に回して再投稿する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 研究者が決定通知のメールを開き、査読者ごとのコメントを文書に写して、1つずつ番号を振る
  2. コメントごとに、受け入れるか、反論するか、追加の実験や解析が要るかを考え、共著者とメモで共有する
  3. 本文を改訂する
  4. 回答文を書く。コメントを引用し、回答を英語で書き、修正した箇所を本文から引用する
  5. 修正した箇所のページと行番号を、改訂した原稿から拾って回答文に書き込む
  6. 回答文と原稿を共著者に回し、再投稿する

(a)コメントの切り出しに時間がかかる。 1人の査読者のコメントが段落の中に3つの要求を含んでいることがあり、どこで切るかで答え漏れが生まれます。

(b)答え漏れが、編集者の指摘で分かる。 段落の後半に書かれた小さな要求に答えないまま再投稿すると、次の査読の回で同じ指摘を受け、改訂の回数が増えます。

(c)修正箇所の行番号がずれる。 改訂の途中で本文を何度も直すと、回答文に書いた行番号が、最後の原稿ではずれています。 査読者が回答文の行番号を頼りに原稿を開くと、別の段落が出てきます。

(d)「修正しました」と書いて直していない。 方針を決めた段階で回答文を先に書き、本文の修正を忘れたまま再投稿することがあります。

  1. 【人】 研究者が決定通知の本文と投稿した原稿を、案件のフォルダに入れる
  2. 【自動】 回答文のプログラムが、Claude API に決定通知の本文を渡し、コメントを1つずつ切り出させて番号と要求の種類を付ける
  3. 【自動】 コメントの一覧と、方針を書き込む欄のある表を作り、研究者に知らせる
  4. 【人】 研究者が表にコメントごとの方針(受け入れ・一部受け入れ・反論・追加の解析)と、回答に入れたい要点を書き、本文を改訂する
  5. 【人】 研究者が改訂した原稿を案件のフォルダに入れる
  6. 【自動】 プログラムが改訂前後の原稿の差分を取り、修正された段落とその位置(節・ページ・行番号)を一覧にする
  7. 【自動】 Claude API が、コメントごとに方針と要点と差分の一覧から回答文の下書きを作り、差分の中から対応する修正箇所を選ぶ
  8. 【自動】 プログラムが、答え漏れ・差分に無い修正箇所・方針が空のコメントを点検し、回答文の下書きと対応表に点検の結果を添える
  9. 【人】 研究者が下書きを直し、共著者に回して再投稿する

4番目と7番目を分けているのが、この設計の分かれ目です。 方針を決めるのは研究者で、AIは方針の欄に書かれたことを英語の回答文にするだけです。 方針の欄が空のコメントには回答文を作らず、「方針未記入」として返します。

6番目で差分をプログラムが取るのは、修正の事実をAIに作らせないためです。 差分に無い修正は、AIがどう書いても対応表に載りません。

02今回想定するシステム構成

構成図
決定通知の本文・投稿した原稿
   ▼【トリガー】案件のフォルダにファイルが入る
回答文のプログラム(Python)
   ▼
Claude API ── コメントの切り出し(番号、査読者、要求の種類)
   ▼
方針の表 ──【人】研究者が方針と要点を書き、本文を改訂
   ▼【トリガー】改訂した原稿がフォルダに入る
回答文のプログラム ── 改訂前後の差分(節・ページ・行番号)
   ▼
Claude API ── コメントごとの回答文と、差分からの修正箇所の選択
   ▼
回答文のプログラム ── 答え漏れ・差分に無い修正・方針未記入の点検
   ▼
回答文の下書き+対応表+点検の結果 →【人】研究者が直して再投稿
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(コメントの切り出しと分類、回答文の下書き、修正箇所の選択)OpenAI API、Gemini API
連携Python(フォルダの監視、原稿の差分、点検、回答文と対応表の書き出し)Google Apps Script
保管研究科の共有フォルダ(案件ごとのフォルダ)研究室のクラウドストレージ

新しく作るのは、回答文のプログラムと、方針の表の様式だけです。 投稿システムや原稿の管理の仕組みには手を入れず、案件のフォルダにファイルを入れることが、すべての起点です。 そのため導入の難しさは、他のシステムとの連携ではなく、差分の取り方と点検の規則にあります。

原稿は、文書ファイルか組版用のテキストのまま差分を取ります。 行番号付きのPDFしか無い場合は、Claude API に PDF を渡して読ませることもできます。公式の説明では、PDF は各ページを画像に変換し、ページごとに抽出したテキストと一緒に渡され、図や表も読めるとされています。リクエストの上限は32MB、ページ数の上限は600(コンテキストが100万トークン未満のときは100)で、1ページあたり1,500〜3,000トークン程度を使います。 原稿と補足資料を全部渡すと上限に近づくため、本文の差分は原則としてテキストから取り、PDFは行番号の確認に使います。

受け取り方は、Claude API の構造化出力です。 リクエストの output_config.format に type: "json_schema" とスキーマを渡すと、返答がスキーマに沿ったJSONになります。要求の種類や方針を enum で固定でき、点検をプログラムで書けます。 enum の文字列は大文字・小文字が保証されないとされているため、値は小文字の英字にし、大文字・小文字を区別せずに比べます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は2つあります。 1つ目は、決定通知の本文と投稿した原稿が案件のフォルダに入ったとき、2つ目は、改訂した原稿と書き込んだ方針の表が入ったときです。プログラムが10分ごとにフォルダを見て、新しいファイルを拾います。

1つ目の起点ではコメントの切り出しだけを行い、回答文は作りません。 方針が決まる前に回答文を作ると、研究者が下書きに引きずられて方針を決めてしまいます。方針を決めるのは、AIの文を読む前にします。

2つ目の起点は、方針の表の全行に方針が書かれていなくても動かします。 方針の空いたコメントは「方針未記入」として返し、書かれたコメントの回答文だけを作ります。改訂の途中でも、どこまで終わったかが一覧で分かるようにするためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
決定通知の本文編集者のコメントと、査読者ごとのコメント研究者がメールから保存したテキスト
投稿した原稿改訂前の本文(節・段落・行番号)案件のフォルダ
方針の表コメントの番号ごとの方針と、回答に入れたい要点(日本語でよい)研究者が書き込んだ表
改訂した原稿改訂後の本文案件のフォルダ
学術誌の投稿規程回答文の形式、生成AIの利用に関する方針研究者が保存した規程

質を決めるのは、方針の表の「要点」の欄です。 「受け入れ」とだけ書かれていると、回答文は「ご指摘に感謝し、修正しました」という一般的な文になります。「図3に対照群のデータを足した」「サンプル数の根拠は先行研究の検出力に基づくと説明する」のように、何をしたか、何を言いたいかを研究者が日本語で1〜2行書きます。 AIはそれを英語の回答文にします。

学術誌の投稿規程を入れるのは、生成AIの使い方の決まりが学術誌ごとに違うためです。 ICMJE の推奨では、生成AIを使った著者は、投稿時のカバーレターと原稿の両方でその使い方を説明し、文章の支援に使ったなら謝辞に書くとされています。投稿先がそれを求めているかを、最初に確かめます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
決定通知の本文研究者がメールの本文をテキストで保存コメントの切り出し
改訂前後の原稿の本文案件のフォルダの文書ファイル・組版用のテキスト差分と行番号
方針と要点方針の表回答文の材料
回答文の形式学術誌の投稿規程書き出しの形

決定通知はメールの本文をテキストで保存してもらいます。 投稿システムの画面を写した画像では、改行や番号が崩れます。本文をそのまま写したテキストが、切り出しの精度をいちばん左右します。

差分は、段落を単位に取ります。 文字単位の差分は、句読点の修正まで修正箇所として拾い、対応表が長くなります。段落ごとに改訂前後を比べ、変わった段落と、その節の名前・ページ・行番号を一覧にします。 新しく足された段落、消された段落も別の種類として拾います。

補足資料(supplementary material)を直した場合は、本文とは別の差分の一覧にします。 査読者が追加の解析を求めると、結果は補足資料の表に入ることが多く、本文の差分だけを見ると「修正が見つからない」になります。 差分の番号は本文が D-xx、補足資料が S-xx と分け、回答文の修正箇所にどちらも選べるようにします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 文字の揃え … 決定通知の本文の改行・空白・引用記号を揃えます
  2. 査読者の区切り … 「Reviewer 1」「Reviewer #2」のような見出しで、査読者ごとの塊に分けます。見出しの無い通知は、塊に分けずにそのまま渡します
  3. 原稿の段落の番号 … 改訂前後の原稿の段落に、節の名前と通し番号を付けます
  4. 段落の差分 … 改訂前後で段落を対応させ、変わった・足された・消された段落を一覧にします。各段落に、改訂後の原稿のページと行番号を付けます
  5. 差分の番号 … 差分の一覧の各行に D-01 から番号を振ります
  6. 共著者の個人情報の除去 … 決定通知に含まれる投稿システムの連絡先などを除きます

4番目の行番号は、改訂後の原稿から取ります。 回答文に書くのは、査読者が開く最後の原稿の行番号だからです。原稿を直すたびに差分を取り直し、回答文の行番号もそれに合わせて作り直します。

5番目の番号が、AIに修正箇所を作らせない仕掛けです。 AIには差分の番号で修正箇所を選ばせ、番号の無い修正箇所はプログラムが捨てます。 対応表の行番号は、AIの出力ではなく差分の一覧から差し込みます。

Step5

AIに処理させる

AIの仕事は、2回の呼び出しに分かれます。

呼び出しさせること判断できないとき
1回目(切り出し)コメントを1つの要求ごとに切り出し、査読者・原文・要求の種類を付ける種類を other にする
2回目(回答)方針と要点から回答文を書き、差分の一覧から対応する修正箇所を選ぶ修正箇所を空にし、no_change_found を付ける

要求の種類は、clarify(説明の追加)、analysis(追加の解析・実験)、citation(文献の追加)、language(表現・誤記)、figure(図表)、other の6つです。 種類ごとに並べ替えると、研究者が方針を決めるときに、追加の解析が要るコメントだけを先に見られます。

させないこと理由
方針を決める・方針の欄が空のコメントに回答するどう応えるかは研究者が決める
要点に無い内容を回答文に書く研究者が言っていないことを著者の回答として出すことになる
差分に無い修正を「修正した」と書く本文を直していない修正を主張することになる
文献を足す・文献の書誌を書く実在しない文献を書く恐れがある。文献は研究者が入れる
数値や結果を書く結果は原稿と研究者の要点からだけ取る
査読者を批判する表現を書く反論でも丁寧な言い方にそろえる

切り出しで迷いやすい型を3つ挙げます。 文は説明のための架空の例です。

コメントの型1回目の切り出し方針の表での扱い
1つの段落に「方法の説明が足りない」と「統計の検定を変えよ」が続く2つに分け、clarify と analysis の枝番にする研究者が別々に方針を決める
「〜も検討してはどうか」という提案の形1つの要求として切り出し、other にする受け入れるか、限界として本文で触れるかを研究者が決める
編集者が査読者のコメントをまとめ直したもの編集者の要求として切り出し、元の査読者のコメントの番号を添える編集者への回答として先頭に置く

1行目の型を分けないと、回答文が片方の要求にしか答えません。 前半の説明不足に答えて満足し、後半の検定の変更が抜けるのが、第3章の(b)の典型です。3行目は、編集者の要求と査読者の要求が重なるときに、回答をどちらにまとめるかを研究者が決めるための印です。

させないことの表に戻ると、4行目の文献が、最も起きやすく、最も重い失敗です。 査読者に「この点の先行研究を引用せよ」と言われると、AIはもっともらしい著者名と年を書くことがあります。回答文に文献が必要な箇所は「[文献:研究者が入れる]」と空けさせ、研究者が自分で確かめた文献を入れます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは研究者の回答文(response to reviewers)の下書きを手伝う立場です。
査読コメントへの対応方針は研究者が決めています。あなたは、その方針と要点を
英語の回答文にし、改訂の差分の一覧から対応する修正箇所を選んでください。

【書くこと】
1. response:回答文(英語)。方針と要点に書かれた内容だけで書く
2. change_ids:対応する修正箇所の差分の番号(D-xx)。差分の一覧にある番号だけ
3. status:
   - drafted ........... 回答文を書き、修正箇所を選んだ
   - no_change_found ... 方針は「受け入れ」だが、対応する差分が見つからない
   - no_policy ......... 方針の欄が空

【厳守事項】
- 方針の欄が空のコメントには回答文を書かず、status を no_policy にしてください。
- 要点に書かれていない実験・解析・数値・結果を書かないでください。
- 差分の一覧に無い修正を、"we have revised" のように書かないでください。
  方針が受け入れなのに対応する差分が無ければ、status を no_change_found にしてください。
- 文献を書かないでください。文献が要る箇所は [CITATION: author to insert] と空けてください。
- 反論の方針でも、査読者への感謝と丁寧な言い方を保ってください。
- 回答文の中で原稿の行番号を書かないでください。行番号はプログラムが差し込みます。

【コメント】{comment_id} {reviewer} {comment_text}
【方針】{policy}
【要点(研究者のメモ)】{notes}
【差分の一覧】{diff_list}
【学術誌の回答文の形式】{format_rule}

「行番号を書かない」を明記するのは、AIが差分の一覧の行番号を写し間違えないようにするためです。 行番号は対応表と回答文の両方に、プログラムが差分の一覧から差し込みます。AIの文の中に数字の行番号が入ると、原稿を直し直したときに古い番号が残ります。

no_change_found を用意したのが、第3章の(d)への対策です。 方針は受け入れなのに本文に対応する修正が無い、という状態を、回答文を作る段階で研究者に返します。

Step7

出力形式を固定する

2回目の呼び出しでは、コメントごとに次の形のJSONで受け取ります。

{
  "comment_id": "R1-03",
  "reviewer": "Reviewer 1",
  "request_type": "clarify | analysis | citation | language | figure | other",
  "policy": "accept | partial | rebut | additional_analysis",
  "status": "drafted | no_change_found | no_policy",
  "response": "",
  "change_ids": ["D-07"],
  "placeholders": ["CITATION"]
}

1つ目の理由は、答え漏れをプログラムで数えられることです。 1回目の呼び出しで切り出したコメントの番号と、2回目の comment_id を突き合わせ、回答の無いコメント、no_policy と no_change_found のコメントを一覧に出します。

2つ目は、対応表をプログラムで組み立てられることです。 change_ids から差分の一覧の行を引き、節・ページ・行番号を差し込みます。

点検の項目条件結果
答え漏れ切り出したコメントに対応する回答が無い未回答
方針未記入status が no_policy方針未記入
修正の不在status が no_change_found修正未確認
知らない差分change_ids に差分の一覧に無い番号その番号を捨て、修正未確認
空けた文献placeholders に CITATION文献の挿入待ち

3つ目は、回答文の形をそろえられることです。 コメントの引用、回答、修正箇所の引用の順で並べ、研究科の様式に書き出します。

研究者には、回答文の下書きの前に、次のような点検の結果を渡します。

【論文】P-2026-071 改訂の回:1回目 コメント:31(査読者3名)

【未回答・方針未記入】
 R2-05 方針未記入(request: analysis)
【修正未確認】
 R1-03 方針は accept だが、対応する差分が見つからない
【文献の挿入待ち】
 R3-02 [CITATION: author to insert]

【回答済み】 28件(対応表:修正箇所 34段落)

研究者が最初に見るべき行を上に置きます。 回答済みの28件より、残りの3件を片付けるほうが、再投稿までの時間を決めます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
案件のフォルダプログラムの監視決定通知・原稿・方針の表を拾い、下書きを置く
Claude APIAPI呼び出し(構造化出力)コメントの切り出しと、回答文の下書き
研究者への連絡メールまたはチャットの通知方針の表と下書きができたことを知らせる

学術誌の投稿システムとはつなぎません。 再投稿は、研究者が回答文と原稿を確かめたうえで、投稿システムの画面から行います。回答文は著者の名前で出す文書で、送るのは必ず著者です。

共著者への回覧も、研究者が行います。 プログラムが共著者に直接送ると、研究者が直す前の下書きが回ります。

Step9

人が確認する

下書きの全体を、責任著者の研究者が読みます。

  1. 点検の結果の上の行を片付ける … 方針未記入のコメントに方針を書き、修正未確認のコメントは本文を直すか方針を変えます
  2. 文献を入れる … 空けた箇所に、研究者が確かめた文献を入れます
  3. 回答文を読む … 要点どおりの内容か、言い過ぎや言い足りない点が無いかを見ます。特に反論の回答は、言い方を研究者の言葉に直します
  4. 対応表を流し見る … 修正箇所の行番号が最後の原稿と合っているかを、数件開いて確かめます
  5. 生成AIの利用を、投稿先の決まりに沿って書く … カバーレターや謝辞への記載が求められていれば書きます

3番目が、AIに任せられない部分です。 ICMJE の推奨は、生成AIを使った投稿物について人が責任を負うとしています。回答文の一文一文が著者の主張として査読者に読まれます。

目標は、12件をならして1件85分です。 コメントが少なく小幅な修正の論文は短く、追加の解析が多く反論の多い論文は長くかかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
決定通知が画像やPDFしか無いテキストを写してもらう。写せないときはPDFとして渡して切り出す
査読者の見出しが無い塊に分けずに渡し、切り出したコメントの査読者を「不明」にする
1つのコメントに複数の要求がある1回目の呼び出しで要求ごとに分け、R1-03a のように枝番を付ける
方針の表が空のまま改訂原稿が入る全コメントを方針未記入として返す
改訂前後の段落を対応させられない大きく書き換えた節は「節ごと改訂」として差分に載せる
PDFがリクエストの上限を超える本文だけのPDFに分けるか、テキストから差分を取る
AIが差分の一覧に無い番号を返すその番号を捨て、修正未確認にする
返ったJSONの値が想定外大文字・小文字を区別せずに比べ、それでも合わなければ「要確認」
Claude API が応答しないファイルをフォルダに残し、次の回で再試行する
投稿先が生成AIの利用を認めていないこの構成を使わない。研究者が従来どおり書く

最後の行は、使う前に必ず確かめます。 学術誌や出版社ごとに、生成AIを使ってよい範囲と、使ったときに書くべきことが決まっています。認めていない投稿先の論文は、プログラムに入れない運用にします。

Step11

記録を残す

  • 決定通知の本文と、切り出したコメントの一覧
  • 研究者が書いた方針の表(版ごと)
  • 改訂前後の原稿と、差分の一覧(版ごと)
  • AIの出力のJSONと、点検の結果
  • 研究者が直した後の回答文と、再投稿した日
  • 投稿先の生成AIに関する方針を確かめた日と、その内容

5つ目と6つ目が、後から最も必要になる記録です。 次の査読の回で「前回の回答で約束した修正が無い」と指摘されたときに、何を約束したかを最終の回答文で確かめます。 生成AIの利用について問われたときは、どの段階で何に使ったかを方針の表とAIの出力から説明できます。

AIの出力と、研究者が直した後の回答文の両方を残すのは、直した量を測るためです。 反論の回答ばかりが大きく直されているなら、指示の言い方か、要点の書き方に原因があります。月に1回、直した量の多い要求の種類を見て、指示と方針の表の欄を見直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:決定通知と方針を手でAIの画面に貼り、切り出しと回答文を作らせる / コメントの切り出しと回答文の下書き
半自動化:上記+フォルダを起点にプログラムで動かし、差分を取って修正箇所を選ばせ、点検の結果と対応表を書き出す / 切り出し、差分、回答文、対応表、点検
本格構成:上記+研究科の論文の管理とつなぎ、改訂の回をまたいで約束した修正を追う / 改訂の全体と、回をまたいだ追跡

本記事の想定は半自動化です。 回答文の作成は論文ごとに閉じた作業で、フォルダとプログラムだけで、研究者の手元の作業が大きく減ります。 他のシステムとつながないので、研究室ごとに始められます。 本格構成は、改訂が2回、3回と続く論文が多い研究科で効きます。 前の回の回答文で約束した修正が、次の回の原稿に残っているかを追えるようになります。2回目の査読では、前の回と同じ査読者が「前回の指摘への対応が不十分」と書いてくることがあり、前の回の回答文と今回のコメントを並べられると、方針を決める時間が短くなります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で方針の表を書く習慣が研究室に根づく前に本格構成に進むと、回をまたいで追う材料そのものが残っていません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
12 件
1件あたり現在時間
240 分
1件あたり導入後時間
85 分
現在  12件 × 240分 ÷ 60 = 48 時間/月
導入後 12件 × 85分 ÷ 60 = 17 時間/月
月間削減時間
31h
削減率
65%
年間削減時間
372h
年間金額換算(時間単価5,000円)
186万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 英文の学術誌に論文を投稿する大学の研究科・研究所、病院の臨床研究の部門、企業の研究所。査読の結果を受けて改訂する論文が月に数本以上あり、回答文(response letter)を研究者が1から書いている場合。査読者が複数いて、コメントの数が1本の論文で数十に及ぶことがある場合。
向いていない
  1. 改訂する論文が年に数本で、研究者が時間をかけて回答文を書ける場合。投稿先の学術誌が、回答文の作成に生成AIを使うことを認めていない場合。なお、査読コメントにどう応えるか、追加の実験や解析をするかという研究上の判断と、回答文の内容への責任は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去に改訂した論文から3件を選ぶ(うち1件は、再投稿の後に答え漏れを指摘されたものを入れる)
  2. 決定通知の本文を、手元のAIサービスの画面に貼り付け、「査読コメントを1つの要求ごとに切り出し、番号と査読者と要求の種類を付けた表にしてください。1つの段落に複数の要求があれば分けてください」と指示する
  3. 切り出した表を、当時の回答文のコメントの数と比べる
  4. 当時の方針を表に書き込み、「この方針と要点だけで英語の回答文を書いてください。書かれていない内容を足さないでください。文献は書かずに空けてください」と指示する
  5. 出てきた回答文を、当時の回答文と並べる

3件は必ずやってください。 プログラムを組む前に、「切り出しで要求を落とさないか」と「要点に無い内容を足さないか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時より多くの要求が切り出され、回答文が要点どおりプログラムの組み立てに進む
回答文に要点に無い実験や数値、文献が出る指示と点検で直る。構成は有効
切り出した要求が当時より少ない決定通知の写し方を見直す。 段落や番号が崩れていないか

1行目の「当時より多く」が出ることは珍しくありません。 当時の回答文で、段落の後半の要求に答えていなかったということです。それが、この構成で拾いたかった答え漏れです。

試すときは、投稿先の決まりを先に確かめ、手元のAIサービスのデータの扱いも確かめてください。 過去の論文でも、公表前の改訂の内容や査読のやり取りを含みます。公表済みの論文の、公表済みの部分から試すのが安全です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
1つの段落の中の複数の要求を落とす要求ごとに切り出させ、枝番を付ける
回答文に実在しない文献が出る文献を書かせず空けさせ、研究者が入れる
本文を直していないのに「修正した」と書く修正箇所を差分の一覧からだけ選ばせ、無ければ no_change_found
行番号がずれる行番号をAIに書かせず、最後の原稿の差分から差し込む
方針が決まる前に回答文を作ってしまう1回目の起点では切り出しだけを行う
要点が短く、回答文が一般的になる方針の表に「何をしたか・何を言いたいか」の欄を設ける
反論の回答がきつい言い方になる丁寧な言い方を指示し、研究者が自分の言葉に直す
改訂の途中で原稿を直し、差分が古くなる原稿を入れ直すたびに差分と回答文を作り直す
投稿先の生成AIの方針に反する使う前に確かめ、認めていない投稿先の論文は入れない
補足資料の修正が「修正未確認」になる補足資料の差分を本文とは別の番号で一覧にする
編集者の要求と査読者の要求が重なる編集者の要求として切り出し、元のコメントの番号を添える
enum の値の大文字・小文字がずれる値を小文字の英字にし、大文字・小文字を区別せずに比べる

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、回答文に書く事実を、研究者の要点と改訂の差分だけに限れているかで決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 未公表の論文の原稿、査読コメント、研究者の方針のメモです。未公表の研究成果そのもので、特許の出願前の内容を含むこともあります。

  1. 投稿先の生成AIの方針に従う … ICMJE の推奨は、生成AIを使った著者がカバーレターと原稿でその使い方を説明し、チャットボットを著者に挙げないこととしています。投稿先の学術誌や出版社の決まりを、最初に確かめます
  2. 利用するサービスのデータの扱いを確かめる … Claude API の公式の説明では、保持したデータは明示の許可なくモデルの学習に使われず、会話の内容は既定では保持されない(一部のモデルを除く)とされ、ゼロデータ保持の取り決めも申し込めます。未公表の成果を扱うので、どのモデルを使い、どの取り決めにするかを研究科で決めておきます
  3. 特許の出願前の内容に注意する … 出願前の発明を含む原稿は、知財の担当と相談してから扱います
  4. 回答文の責任は著者が負う … ICMJE の推奨は、生成AIを使った投稿物について人が責任を負うとしています。下書きのまま再投稿しません
  5. 査読コメントの扱いを投稿先の決まりに合わせる … 査読の内容の扱いについて投稿先が決まりを設けていれば、それに沿います

誤りが起きた場合のリスクは、していない修正やしていない実験を回答文に書くことと、実在しない文献を書くことの2つです。 どちらも研究の信頼に直接かかわります。前者は差分の一覧と no_change_found で、後者は文献を書かせないことで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:方針の表の様式と、投稿先の決まりを確かめる

コメントの番号・方針・要点の列を持つ方針の表の様式を決めます。あわせて、研究科でよく投稿する学術誌の、生成AIの利用に関する決まりを一覧にします。

2週目:3件で試す

過去に改訂した論文3件で、手元のAIサービスにコメントを切り出させ、当時の方針から回答文を書かせます。切り出しで要求を落としていないか、要点に無い内容を足していないかを最優先で見ます。

3週目:差分を作る

改訂前後の原稿から、段落の単位の差分と、改訂後の行番号を取るプログラムを作ります。この時点では、AIを使わずに差分の一覧だけを研究者に見せ、修正箇所の拾い方を直します。

4週目:回答文と点検をつなぐ

Claude API の切り出しと回答文、答え漏れと修正未確認の点検をつなぎます。改訂中の論文1本で、研究者に実際に使ってもらいます。

2か月目: 研究室を増やし、研究者が回答文を直した量と、点検で見つかった答え漏れの数を数えます。3か月目以降: 回答文の様式を研究科でそろえます。答え漏れの指摘を受けずに再投稿できる論文が続いた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
投稿時に生成AIの利用を開示させるべきこと。利用した著者がカバーレターと原稿の両方でその使い方を説明し、文章の支援なら謝辞に書くこと。チャットボットを著者に挙げないこと。生成AIを使った投稿物について人が責任を負うことICMJE: Defining the Role of Authors and Contributors2026-10-08
PDF のリクエストの上限が32MB、ページ数の上限が600(コンテキストが100万トークン未満のときは100)であること。各ページが画像に変換され、抽出したテキストと一緒に渡されること。1ページあたり1,500〜3,000トークン程度を使うことClaude Docs: PDF support2026-10-08
output_config.format に type: "json_schema" を指定すると返答がスキーマに沿ったJSONになること。enum が使えること。enum の大文字・小文字が保証されず、大文字・小文字を区別せずに比べるよう推奨されていることClaude Docs: Structured outputs2026-10-08
保持したデータが明示の許可なくモデルの学習に使われないこと。会話の内容が既定では保持されないこと(一部のモデルは30日の保持が必要)。ゼロデータ保持の取り決めを申し込めることClaude Docs: API and data retention2026-10-08

査読コメントへの応え方、追加の実験や解析の要否、回答文の内容への責任は、著者である研究者が負ってください。 本記事は ICMJE・Anthropic の公開している情報で確認できた範囲だけを扱っています。投稿先ごとの生成AIの決まりは、各学術誌・出版社の規程で確かめてください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-1103)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次