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製品カタログと技術仕様書を、用語集と過去の訳をそろえて多言語化する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

日本語の原稿を入力に、社内用語集と過去に承認された訳文を参照した各言語の訳を作り、型番・単位・注意表記が原文と合っているかを点検します。担当者の作業は、下訳をつくることから、訳文の確認と用語の判断に変わります。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/医療/商社/建設/製造
対象部門
マーケティング/研究開発
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
翻訳
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
62.5h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
68%
年間削減
510h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 設計変更や新製品の追加により、日本語のカタログ・仕様書が改訂される
  2. 技術資料課の担当が、改訂された箇所を特定する
  3. 社内用語集を開き、出てくる技術用語の訳語を確認する
  4. 過去の資料から、似た説明文がないかを探す
  5. 見つかれば流用し、見つからなければ下訳を作る
  6. 下訳と原文をセットにして、翻訳会社へ出す
  7. 戻ってきた訳文を、原文と突き合わせてチェックする
  8. 型番、寸法、圧力、温度などの数値と単位が正しいかを確認する
  9. DTPソフトへ流し込み、レイアウトを確認する
導入後(After)
  1. 日本語の原稿が改訂され、指定のフォルダへ登録される
  2. 自動前版と比較して、改訂された文を特定する
  3. 自動改訂されていない文は、承認済みの訳をそのまま引き当てる
  4. 自動改訂された文について、用語集と過去の訳を参照した訳文を各言語で生成する
  5. 自動型番・数値・単位・記号が原文と一致しているかを機械で検算する
  6. 自動用語集と違う訳語が使われた箇所を指摘する
  7. 自動注意・警告の表記が、原文と同じ強さで訳されているかを点検する
  8. 技術資料課が訳文を確認し、用語の判断と修正を行う
  9. 必要な言語・文書は、翻訳会社の校正へ出す
  10. 自動確定した訳文を、承認済み訳のデータベースへ登録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 設計変更や新製品の追加により、日本語のカタログ・仕様書が改訂される
  2. 技術資料課の担当が、改訂された箇所を特定する
  3. 社内用語集を開き、出てくる技術用語の訳語を確認する
  4. 過去の資料から、似た説明文がないかを探す
  5. 見つかれば流用し、見つからなければ下訳を作る
  6. 下訳と原文をセットにして、翻訳会社へ出す
  7. 戻ってきた訳文を、原文と突き合わせてチェックする
  8. 型番、寸法、圧力、温度などの数値と単位が正しいかを確認する
  9. DTPソフトへ流し込み、レイアウトを確認する

問題は4つあります。

(a)過去の訳を探せない。 同じ説明文が別の資料で使われていても、探す手段がありません。結果、同じ文を何度も訳しています。

(b)訳語が資料ごとに違う。 用語集は1,200語ありますが、Excelを毎回開く人は多くありません。「吐出量」がカタログでは discharge rate、仕様書では flow rate になっていることが起きます。

(c)数値と単位の確認に時間がかかる。 1ページに数十個の数値が並びます。原文と訳文を並べて1つずつ見る作業が、ページあたり数分かかります。ここは翻訳会社も自社の数値の正しさまでは保証しません。

(d)3言語で3倍になる。 英語・中国語・タイ語で同じ作業を繰り返します。中国語とタイ語は社内に読める人が少なく、チェックが形だけになっています。

  1. 日本語の原稿が改訂され、指定のフォルダへ登録される
  2. 【自動】 前版と比較して、改訂された文を特定する
  3. 【自動】 改訂されていない文は、承認済みの訳をそのまま引き当てる
  4. 【自動】 改訂された文について、用語集と過去の訳を参照した訳文を各言語で生成する
  5. 【自動】 型番・数値・単位・記号が原文と一致しているかを機械で検算する
  6. 【自動】 用語集と違う訳語が使われた箇所を指摘する
  7. 【自動】 注意・警告の表記が、原文と同じ強さで訳されているかを点検する
  8. 【人】 技術資料課が訳文を確認し、用語の判断と修正を行う
  9. 【人】 必要な言語・文書は、翻訳会社の校正へ出す
  10. 【自動】 確定した訳文を、承認済み訳のデータベースへ登録する

自動化されるのは「差分を出す」「既訳を引き当てる」「訳す」「数値を検算する」「用語を点検する」の5つです。残るのは、訳語の判断と、内容の最終確認です。

翻訳会社をやめる話ではありません。 取扱説明書のように、誤訳が事故につながる文書は、引き続き専門家の校正を通してください。この構成が減らすのは、そこへ出す前の準備と、戻ってきた後の数値チェックです。

02今回想定するシステム構成

構成図
日本語の原稿(改訂版)+ 前版
   │
   ▼【トリガー】指定フォルダへの登録
Make のシナリオ
   │
   ├──▶ 前版と比較して改訂された文を特定(文単位で分割)
   │
   ├──▶ 承認済み訳データベースを検索(同一文・類似文)
   │       └─ 完全一致した文は、そのまま訳を確定
   │
   ├──▶ Iterator で、残った文を1文ずつ処理
   │       │
   │       └──▶ Gemini API ── 用語集と近い既訳を添えて翻訳
   │
   ├──▶ 機械検算(型番・数値・単位・記号が原文と一致するか)
   │
   ├──▶ 用語集との照合(用語集にない訳語が使われていないか)
   │
   ├──▶ Array Aggregator で訳文をまとめ、対訳表を作成
   │
   └──▶ 対訳表(原文 / 訳文 / 出所 / 指摘)を出力
   │
   ▼
技術資料課が確認 ──【人】訳語の判断と修正
   │
   ├──▶ 必要な文書は翻訳会社の校正へ
   │
   ▼
確定した訳を承認済み訳データベースへ登録
   │
   ▼
DTPソフトへ流し込み
役割想定する製品代替候補
生成AIGemini APIClaude API、OpenAI API
連携MakePower Automate、n8n
保管SharePointBox、Google Drive
対訳表Google スプレッドシートExcel

翻訳支援ツール(CATツール)をすでに使っているなら、まずその翻訳メモリの機能を確認してください。 既訳の再利用と用語集の適用は、CATツールが本来持つ機能です。自前で組む価値があるのは、CATツールを導入していない、または対象言語がその製品の得意でない場合です。

自前で組む場合も、「承認済み訳データベース」は翻訳メモリと同じ考え方です。 原文と訳文を対にして貯める、それだけです。特別な製品は要りません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

日本語の原稿が、指定フォルダへ登録されたことを起点にします。改訂版と前版の両方が必要なため、版の番号をファイル名に含める運用を決めてください。

原稿はDTPソフトのファイルではなく、テキストを抽出できる形(Word、または構造化されたテキスト)で登録してもらいます。 DTPファイルから直接処理しようとすると、レイアウト情報に引きずられて文の分割が崩れます。

新規の資料(前版がないもの)は、全文が「改訂された文」として扱われます。処理の流れは同じです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
日本語の原稿(改訂版)本文、表、図のキャプション、注意・警告の表記技術資料課
日本語の原稿(前版)同上過去の資料フォルダ
社内用語集日本語/英語/中国語/タイ語の対応(1,200語)Excel
承認済み訳データベース原文の文/各言語の訳文/出所の資料/承認日スプレッドシート
型番マスタ型番、製品名、主要諸元販売管理システム
注意・警告の表記ルール「危険」「警告」「注意」の各言語での定訳技術資料課の文書
Step3

データの取得方法を決める

改訂箇所の特定: 前版と改訂版を文単位で比較します。段落単位ではなく文単位にしてください。 段落単位だと、1文だけ直った段落全体が「改訂」となり、再利用できる文まで訳し直すことになります。

承認済み訳データベース: 原文の文をキーに検索します。完全一致だけでなく、文末の表現だけが違う文(「です」「ます」の違い、句読点の違い)も一致とみなす正規化を入れてください。これだけで一致率が大きく変わります。

用語集: 1,200語をそのまま渡す必要はありません。その文に含まれる語だけを抜き出して渡します。 1文につき数語から十数語です。

原稿が長い場合: 章単位でまとめて渡すこともできます。Gemini は100万トークン規模の入力を受け取れるモデルが提供されており、資料1冊分でも収まります。まとめて渡すと、章の中での訳語の一貫性が上がります。 ただし文単位の対応関係が取りにくくなるため、この構成では文単位を基本とし、一貫性の確認だけ章単位で行う形にしています。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 文への分割 … 句点で分割します。表の中のセルは1セル1文として扱います
  2. 正規化 … 全角・半角の統一、スペースの除去、句読点の統一を行い、既訳の検索に使うキーを作ります
  3. 型番・数値の目印化 … 型番(XP-3200A)、数値と単位(0.75 MPa)を [MODEL1] [NUM1] のような目印に置き換えます。訳文を作った後、目印を元に戻します。これが数値の誤りを防ぐ一番確実な方法です
  4. 注意・警告の分離 … 「警告」「注意」で始まる記述を別扱いにします。この部分は定訳を機械的に当て、AIに訳させません
  5. 既訳の引き当て … 正規化したキーで承認済み訳データベースを検索し、完全一致した文を確定させます。この時点で、実際に訳す必要のある文は半分以下になります
Step5

AIに処理させる

処理内容
訳文の生成用語集と、近い既訳を参照した訳文を作る
訳語の選択理由用語集のどの語を使ったかを併記する
用語集にない語の指摘訳語を決められなかった技術用語を列挙する
既訳との差の説明近い既訳と違う訳にした場合、その理由を書く
表記の一貫性の点検同じ章の中で同じ語が別の訳になっていないか

型番と数値の検算は、AIではなく機械で行います。 目印に置き換えてあるので、訳文に目印がすべて残っているかを数えるだけで済みます。AIに「数値が合っているか確認して」と頼む必要はありません。

注意・警告の表記も、AIに訳させません。 「危険」「警告」「注意」の区別は、規格や業界の慣行で定訳が決まっていることがあります。定訳の表を持ち、機械的に当てます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは産業機械の技術資料を翻訳する翻訳者です。
下の日本語の文を、{target_language} に訳してください。

【厳守事項】
- [MODEL1] [NUM1] のような目印は、そのまま残してください。
  中身を推測したり、訳したりしないでください。
- 下の用語集にある語は、必ず用語集の訳語を使ってください。
  用語集と違う訳語を使わないでください。
- 下の「近い既訳」と同じ意味の文なら、既訳の言い回しに合わせてください。
  理由なく別の言い回しにしないでください。
- 原文にない情報を足さないでください。
  「一般に」「通常」といった補足を入れないでください。
- 原文にある情報を省かないでください。
  条件(「〜の場合」「〜を除く」)を落とさないでください。
- 用語集にない技術用語が出てきた場合、訳語を1つ選んだうえで、
  unresolved_terms にその語を入れてください。
- 断定の強さを変えないでください。「〜することがあります」を
  「〜します」に変えないでください。

【原文】
{source_sentence}

【この文に含まれる用語集の語(日本語 / 訳語)】
{glossary_subset}

【近い既訳(原文 / 訳文 / 出所)】
{similar_approved_translations}

「断定の強さを変えない」の1行は、技術資料では特に重要です。 「損傷することがあります」を「損傷します」に変えると、意味が変わります。製品の性能や安全に関わる記述では、この差が問題になります。

Step7

出力形式を固定する

{
  "sentence_id": "",
  "source_text": "",
  "target_language": "",
  "translated_text": "",
  "glossary_terms_used": [
    { "source": "", "target": "" }
  ],
  "unresolved_terms": [],
  "reused_from": "",
  "deviation_reason": "",
  "placeholder_check": "ok | missing | extra",
  "needs_review": []
}

Gemini API では、JSONを返させる際に response_format にオブジェクト型を指定し、mime_typeapplication/json にしたうえで、schema にスキーマを渡します。スキーマは JSON Schema の一部(string number integer boolean object array など)に対応しています。

placeholder_check は、目印がすべて訳文に残っているかの判定です。missing なら数値や型番が落ちているため、その文は自動で再処理し、2回失敗したら人へ回します。

reused_from は、既訳のどの文を参考にしたかです。訳の出所が追えることが、資料間の一貫性を保つ土台になります。

Step8

システムへ連携する

出力は対訳表としてスプレッドシートに作ります。1行1文で、列は次のとおりです。

中身
文番号 / 章原稿内の位置
原文日本語
訳文(言語ごとに列)英語/中国語/タイ語
出所既訳の再利用/新規生成
使った用語集の語確認用
指摘未解決の用語、目印の欠落、既訳との差
確定人が入れる

確定した訳文は、承認済み訳データベースへ登録します。この登録を忘れると、次の改訂でまた同じ文を訳すことになります。 確定の操作と登録を一体にしてください。

DTPソフトへの流し込みは、対訳表から訳文の列を書き出して行います。この部分は使っているDTPソフトによって方式が異なります。

Step9

人が確認する

全件、技術資料課が確認します。既訳を再利用した文も含めます。

既訳の再利用まで確認する理由は、前の資料で正しかった訳が、新しい文脈では合わないことがあるためです。ただし、再利用した文の確認は「文脈が同じか」を見るだけなので、新規に訳した文より短時間で済みます。

確認の優先順位は次のとおりです。

  1. placeholder_checkmissing の文 … 数値か型番が落ちている。最優先
  2. unresolved_terms に語が入っている文 … 用語集にない技術用語。ここで決めた訳語を用語集へ追加します
  3. deviation_reason が書かれている文 … 既訳と違う訳にした理由を読み、妥当かを判断する
  4. 新規に生成した文 … 通常の確認
  5. 既訳を再利用した文 … 文脈の一致だけを見る

2番の扱いが、この構成を育てます。 未解決の用語を毎回放置すると、用語集はいつまでも育たず、訳語のばらつきも減りません。確認のたびに数語ずつ用語集へ追加する運用を決めてください。

翻訳会社の校正は、文書の種類で分けることをおすすめします。 取扱説明書と安全に関わる記述は必ず出し、カタログの製品紹介文は社内確認で済ませる、といった切り分けです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
目印が訳文から落ちた自動で再処理する。2回失敗したらその文を人へ回す
目印が増えている同様に再処理する。AIが目印を複製することがある
用語集に訳語がない技術用語unresolved_terms に入れて人が決める。AIが決めた訳語をそのまま採用しない
用語集の訳語が言語によって欠けているタイ語だけ空欄、といったことが起きる。欠けている言語は人が決める
既訳と原文がわずかに違う類似として提示し、deviation_reason を書かせる。自動で流用しない
前版が見つからない全文を新規として処理する
表のセルが1文にならない(箇条書きの断片)文脈が取れないため、前後のセルを一緒に渡す
注意・警告の表記定訳を機械的に当てる。AIに訳させない
図中の文字が原稿に含まれないDTPの作業で別途対応する。この構成の対象外であることを明示しておく
同じ原文に複数の既訳がある最新の承認日のものを優先し、他を候補として併記する
Step11

記録を残す

この構成のログは、訳の一貫性を保つ資産そのものです。

  • 承認済み訳データベース(原文/訳文/出所の資料/承認日/承認者)
  • 用語集の変更履歴(いつ、どの語を、どの訳語で追加したか)
  • 対訳表の各版(生成時点と確定時点)
  • 人が修正した訳文と、修正前後の値
  • unresolved_terms に挙がった語の一覧

修正前後の差分が、次の改善材料になります。 「特定の用語が毎回直されている」と分かれば、用語集の訳語が実態と合っていないということです。

承認済み訳データベースは、担当者が変わっても残る資産です。 現在は「あの人が訳したから一貫していた」という状態が、データベースに置き換わります。

04実装レベルの3段階

最小構成:原文と用語集をチャット画面に貼り付け、訳文を受け取る / 下訳の作成
半自動化:差分の特定+既訳の引き当て+訳文の生成+数値の検算+対訳表の作成 / 準備とチェックの大半
本格構成:上記+承認済み訳の自動登録+用語集の更新導線+DTPへの書き出し / 記録と流し込みまで

半自動化の時点で、25分が11分程度になります。 既訳の引き当てと数値の検算が消えるためです。本格構成では8分になりますが、減るのは登録と書き出しの手間です。 ただし、本格構成の「承認済み訳の自動登録」を省くと、この構成は成立しません。 登録されなければデータベースが育たず、翌月も同じ文を訳し続けます。ここは半自動化の段階から入れてください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
150 件
1件あたり現在時間
25 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  150件 × 25分 ÷ 60 = 62.5 時間/月
導入後 150件 × 8分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
42.5h
削減率
68%
年間削減時間
510h
年間金額換算(時間単価3,500円)
179万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 海外向けの製品カタログ・仕様書・取扱説明書を3言語以上で出しており、改訂が月100ページ以上発生する企業。製品の型番が多く、同じ説明文が複数の資料に使い回されている場合。翻訳会社へ出す前の原稿整備と、戻ってきた訳文のチェックに時間がかかっている場合。
向いていない
  1. 多言語化の対象が英語1言語で、年に数回の改訂しかない場合。翻訳支援ツール(CATツール)と翻訳メモリを導入済みで、既訳の再利用が運用に乗っている場合。規制上、翻訳文そのものに認証が必要な文書(医薬品の添付文書など)が中心の場合。

07最小構成で試す方法

  1. 直近で改訂したカタログ1章分(20ページ程度)の原文と、確定した訳文を用意する
  2. 用語集から、その章に出てくる語だけを50語ほど抜き出す
  3. 原文を文単位に分け、10文を生成AIのチャット画面に貼り付ける
  4. 上記のプロンプトで訳させる
  5. 実際に確定した訳文と比べる

見るのは訳の良し悪しではなく、次の3つです。

見る点判断
用語集の語が正しく使われた割合9割以上なら使える
数値・型番が正確に残ったか1件でも落ちたら、目印への置き換えを必ず入れる
断定の強さが変わっていないか変わっていたら、プロンプトの制約を強める

あわせて、「既訳の再利用でどれだけ減るか」を測ってください。 過去1年の資料から、同じ文が2回以上出てくる割合を数えます。ここが4割を超えるなら、この構成の効果は翻訳の質よりも再利用から出ます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
数値や型番が訳文から落ちる目印に置き換えてから訳す。訳文の目印の数を機械で数える
段落単位で差分を取って再利用できない文単位で分割する。ここは最初から文単位にする
既訳が引き当たらない正規化(全角半角・句読点・スペース)を入れる。これだけで一致率が上がる
用語集の訳語が使われない文に含まれる語だけを抜き出して渡す。1,200語を丸ごと渡さない
断定の強さが変わるプロンプトで明示的に禁止する。テストで確認する
注意・警告の訳がぶれる定訳の表を持ち、機械的に当てる。AIに訳させない
承認済み訳が登録されない確定の操作と登録を一体にする。別作業にすると必ず忘れられる
タイ語の用語集が空欄だらけ未解決の用語を毎回数語ずつ埋める運用にする。一度に埋めようとしない
図中の文字が対象外だと気づかない対象外であることを最初に明示する。DTPの作業として別に管理する
同じ原文に複数の既訳がある承認日の新しいものを優先する。古い訳は候補として残す

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 製品の仕様、性能値、型番、発売前の製品情報。公開予定の資料が中心ですが、公開前の段階で扱います。

  1. 発売前の製品情報 … 改訂の対象には、まだ発表していない製品が含まれます。発表前の型番と性能値が外部のAIサービスへ渡ることになります。 情報管理規程を確認してください
  2. 外部AIへの入力可否 … 技術仕様書には、競合に知られたくない設計上の数値が含まれることがあります。どの資料を対象にするかを、最初に決めてください。 すべてを対象にする必要はありません
  3. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
  4. 訳文の責任公開する資料の訳文についての責任は自社にあります。 誤訳による事故や誤使用は、AIを理由に説明できません。安全に関わる記述は、必ず専門家の校正を通してください
  5. 規制のある文書 … 医療機器の添付文書、化学品の安全データシートなど、翻訳文の内容に規制がかかる文書は、この構成の対象から外してください。 各国の規制要件を満たす必要があります
  6. アクセス権限 … 承認済み訳データベースには、全製品の仕様が集まります。閲覧を技術資料課と関係部門に限定してください
  7. 自動実行してよい範囲 … 訳文の生成、数値の検算、用語の点検までです。確定と、資料としての公開は人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、数値の誤りによる誤発注や誤使用、訳語の不統一による代理店の誤解、注意表記の弱まりによる安全上の問題です。3番目がもっとも重く、注意・警告の表記を機械的な定訳に固定している理由がここにあります。

10まず何から始めるか

1週目:再利用できる文の割合を測る

過去1年のカタログと仕様書から、同じ文が2回以上出てくる割合を数えます。ここが4割を超えるなら、この構成の効果は大きくなります。 2割を下回るなら、既訳データベースの効果は限定的なので、翻訳の自動化そのものの価値で判断してください。

2週目:用語集の言語ごとの欠けを数える

1,200語について、英語・中国語・タイ語のどれが埋まっていないかを数えます。全部埋める必要はありません。 よく出る100語だけ3言語そろえれば、最初の運用には足ります。

3〜4週目:1章分で試す

カタログ1章(20ページ)で、差分の特定から訳文の生成、数値の検算までを手作業も混ぜて通します。目印への置き換えが確実に効いているかを、必ず確認してください。 ここが崩れると、数値の誤りが公開資料に載ります。

2か月目以降: 半自動化を作ります。承認済み訳データベースへの登録を、最初から入れてください。 最初の数か月は再利用率が低く、効果を実感しにくい期間が続きます。登録を続けていれば、半年後には訳す量そのものが目に見えて減ります。 ここを我慢できるかが、この構成の成否を分けます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-21/最終更新:2026-09-21
確認した内容情報源確認日
Gemini が100万トークン規模の入力を受け取れるモデルを提供しており、関連情報をまとめて前置きで渡す使い方が案内されていることGemini API Docs: Long context2026-09-21
Gemini API でJSONを返させる際、response_format にオブジェクト型を指定して mime_typeapplication/json にし、schema にスキーマを渡すこと。スキーマが JSON Schema の一部(string / number / integer / boolean / object / array)に対応していることGemini API Docs: Structured output2026-09-21
Make に Iterator(配列を個別のバンドルに分ける)と Array Aggregator(複数のバンドルを1つにまとめる)があり、要素ごとの処理と再集約ができることMake: Flow control2026-09-21

DTPソフトへの書き出し方式、翻訳支援ツール(CATツール)との併用可否は、利用環境によって異なります。この部分は個別確認が必要です。 規制のかかる文書(医療機器の添付文書、化学品の安全データシートなど)の翻訳要件については、各国の規制と所管当局の定めを確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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