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海外の依頼者に送る訴訟・手続きの経過報告を、事務所の訳語集と過去に送った訳に合わせて英訳し、期日・金額の照合結果を付けて弁護士の確認に回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

弁護士が日本語で書いた訴訟・手続きの経過報告を、事務所の訳語集とその依頼者に過去に送った英訳に合わせて英訳します。期日・金額・条文番号は原文と機械で照合し、結果を付けて担当弁護士の確認に回します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
士業
対象部門
法務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
翻訳
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
60%
年間削減
432h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. アソシエイトが日本語で経過報告を書き、パートナーが確認する
  2. アソシエイトが英訳を書く。迷う言葉は訳語集と、その依頼者に過去に送った報告を開いて探す
  3. 期日、金額、条文の番号、書面の日付を原文と見比べる
  4. パートナーが英文を読み、直す
  5. 秘書が依頼者の窓口の担当者宛てにメールで送る
導入後(After)
  1. 人アソシエイトが日本語で経過報告を書き、パートナーが確認して、案件のフォルダの「英訳待ち」に保存する
  2. 自動保存をきっかけに処理が動き、案件の依頼者と、その依頼者の訳語の指定を引く
  3. 自動原文を段落に分け、訳語集に当たる言葉と、期日・金額・条文の番号を書き出す
  4. 自動段落ごとに、その依頼者へ過去に送った訳のうち原文の近いものを探す
  5. 自動生成AIが、訳語集と過去の訳に合わせて段落ごとに英訳し、訳語集に無い言葉と迷った箇所を書き出す
  6. 自動処理が、訳語集の訳語が使われているか、数字と日付が原文と合っているかを照らす
  7. 人アソシエイトが英訳と照合の結果を読み、直す
  8. 人パートナーが英文を読み、送る
  9. 自動送った英文を、段落ごとに原文と対にして過去の訳として蓄える
各工程の詳しい説明を読む
  1. アソシエイトが日本語で経過報告を書き、パートナーが確認する
  2. アソシエイトが英訳を書く。迷う言葉は訳語集と、その依頼者に過去に送った報告を開いて探す
  3. 期日、金額、条文の番号、書面の日付を原文と見比べる
  4. パートナーが英文を読み、直す
  5. 秘書が依頼者の窓口の担当者宛てにメールで送る

(a)英訳に弁護士の時間がかかる。 報告1件の英訳に35分ほどかかり、期日が重なる週は、アソシエイトの夜の時間が英訳に消えます。 日本語の報告を書く時間とは別に、同じ内容をもう一度書いていることになります。

(b)訳語が人によって違う。 同じ「弁論準備手続」を、ある人は "preparatory proceedings"、別の人は "pre-trial conference" と訳します。依頼者から「先月の報告にあった手続きと今月の手続きは別のものか」と聞き返されることがあります。

(c)数字と日付の写し間違いを見落とす。 和暦を西暦に直す、金額の単位を百万円から円に直す、条文の番号を写す。英文として読み直しても、数字が原文と違うことには気づきにくく、 パートナーの確認も文の意味のほうに目が向きます。

(d)過去の訳を探すのに時間がかかる。 「この相手方の主張は、3か月前にどう訳したか」を探すには、メールの送信済みフォルダと Word のファイルを開くしかありません。探す時間が惜しくて、その場で訳し直すと、訳語がまたずれます。

  1. 【人】 アソシエイトが日本語で経過報告を書き、パートナーが確認して、案件のフォルダの「英訳待ち」に保存する
  2. 【自動】 保存をきっかけに処理が動き、案件の依頼者と、その依頼者の訳語の指定を引く
  3. 【自動】 原文を段落に分け、訳語集に当たる言葉と、期日・金額・条文の番号を書き出す
  4. 【自動】 段落ごとに、その依頼者へ過去に送った訳のうち原文の近いものを探す
  5. 【自動】 生成AIが、訳語集と過去の訳に合わせて段落ごとに英訳し、訳語集に無い言葉と迷った箇所を書き出す
  6. 【自動】 処理が、訳語集の訳語が使われているか、数字と日付が原文と合っているかを照らす
  7. 【人】 アソシエイトが英訳と照合の結果を読み、直す
  8. 【人】 パートナーが英文を読み、送る
  9. 【自動】 送った英文を、段落ごとに原文と対にして過去の訳として蓄える

7番目が、この設計の分かれ目です。英訳はアソシエイトが必ず読みます。 訳語と数字は機械で照合されていますが、見通しの強さと、依頼者にお願いする事項の言い方は、弁護士が読まないと確かめられません。 読んで直す時間を含めて1件24分です。

6番目を機械の照合にしているのも、意図してのことです。 訳語集の訳語が使われているか、数字が合っているかは、文字の一致で決まります。 そこをAIの自己点検にすると、訳したAIが自分の訳を正しいと言うだけになります。

02今回想定するシステム構成

構成図
日本語の経過報告(パートナー確認済み)
   ▼【トリガー】案件フォルダの「英訳待ち」への保存
Azure Functions(連携の処理)
   ├──▶ 案件の依頼者、依頼者ごとの訳語の指定
   ├──▶ 段落に分ける、訳語集に当たる言葉・期日・金額・条文の番号を書き出す
   ├──▶ その依頼者への過去の訳から、原文の近い段落を探す
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 構造化出力で段落ごとの英訳
   │   訳語集の訳語を使う/過去の訳に合わせる/新しい用語と迷った箇所を書き出す
   ▼
Azure Functions ── 訳語の照合、数字と日付の照合
   ▼
【アソシエイトが読み直す】→【パートナーが確認して送る】→ 過去の訳として蓄える
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(段落の分割、訳語集の当てはめ、過去の訳の照合、数字の照合)Power Automate
訳語集と過去の訳SharePoint のリスト(訳語集、依頼者ごとの指定、段落ごとの対訳)既存の文書管理システムのフォルダ
案件の書類既存の文書管理システム(案件ごとのフォルダ)―

文書管理システムとメールは、そのまま使います。 新しく作るのは、訳語集を依頼者ごとの指定まで含めて整えたリストと、送った英文を段落ごとに原文と対にして蓄えるリストです。後者が、この構成の「過去の訳」になります。

生成AIは、Azure OpenAI の構造化出力で呼びます。 Microsoft Learn では、構造化出力を使うとモデルは推論 API 呼び出しの一部として指定した JSON スキーマの定義に従うとされ、有効な JSON は保証するがスキーマへの厳密な準拠はできなかった以前の JSON モードとは違うと説明されています。Chat Completions API では response_format に、Responses API では text.format にスキーマを書きます。段落ごとの訳と、使った訳語・新しい用語・迷った箇所を、決まった項目で受け取れることが、後段の照合の前提です。

データの扱いは、「データ、プライバシー、セキュリティ」のページで確かめます。 プロンプトと出力は他のお客様には利用できず、OpenAI には提供されず、お客様の許可または指示なしに生成 AI 基盤モデルのトレーニングに使われないとされ、モデルはステートレスとされています。一方で、Responses API や保存済みの補完などの機能を使うと、メッセージ履歴などがリソースに保存されます。 本記事は、保存の機能を使わない呼び方を想定します。

法令の名前と条文の訳は、法務省の日本法令外国語訳データベースシステムを参照します。 法令の英訳と標準対訳辞書を検索でき、掲載している法令翻訳は正文ではなく、法的効力を有するのは日本語の法令自体で、翻訳は理解を助けるための参考資料とされています。事務所の訳語集に法令の名前を入れるときの出どころにします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、パートナーが確認した日本語の報告を、案件のフォルダの「英訳待ち」に保存したことです。 日本語の報告が確定する前に英訳を始めると、日本語の直しが英訳に追いつきません。確定した日本語だけを訳すために、保存の場所で区切ります。

ファイル名に案件番号を入れる規則にします。 案件番号から依頼者を引き、その依頼者の訳語の指定と過去の訳を選びます。案件番号の無いファイルは処理せず、保存した人に知らせます。

送った後の英文は、秘書が案件のフォルダの「送付済み」に保存します。 これをきっかけに、送った英文を原文と段落ごとに対にして、過去の訳に加えます。アソシエイトとパートナーが直した後の英文を蓄えることが大事で、 AIの下書きを蓄えると、直す前の訳が次の月の手本になってしまいます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
日本語の報告期日の結果、次回の期日と準備、相手方の主張の要旨、見通し、依頼者へのお願いと期限案件のフォルダ
案件の基本情報案件番号、裁判所・仲裁機関の英語名、事件番号、当事者の英語名、依頼者の窓口事務所の案件の台帳
訳語集日本語、英語、使い方の注記、出どころ(法務省の対訳辞書、事務所の決定、依頼者の指定)SharePoint のリスト
依頼者ごとの指定その依頼者にだけ使う訳語、日付と金額の書き方(月日の順、通貨の書き方)SharePoint のリスト
過去の訳その依頼者へ送った英文の、段落ごとの原文と訳の対SharePoint のリスト

質を決めるのは、真ん中の訳語集と、その下の依頼者ごとの指定です。 訳語集の各行に出どころを持たせます。法務省の標準対訳辞書から取ったものか、事務所で決めたものか、依頼者が指定したものかで、訳語が衝突したときにどちらを使うかが決まります。 依頼者の指定が最優先です。

当事者の英語名は、案件の基本情報からしか取りません。 相手方の会社の英語名を生成AIに訳させると、登記上の英語名と違う名前を作ります。固有名詞は、訳すものではなく引くものです。

訳語集は、たとえば次のような行で持ちます。

日本語英語注記出どころ
準備書面brief (junbi shomen)初出だけローマ字を併記事務所の決定
弁論準備手続preparatory proceedings"pre-trial conference" は使わない事務所の決定
和解勧告court's settlement recommendation―事務所の決定
期日hearing sessionA社の指定。他社は "hearing"依頼者の指定
損害賠償damages―標準対訳辞書

注記の列に「使わない語」を書いておくのが効きます。 照合の処理は、指定の英語が英文にあるかに加えて、使わない語が英文に出ていないかも見ます。担当者ごとの癖で入り込む訳語は、だいたいこの列に書くべき語です。

Step3

データの取得方法を決める

訳語集に当たる言葉は、生成AIを呼ぶ前にプログラムで拾います。 原文の中で訳語集の日本語と一致する箇所を探し、当たった行だけを、その段落の指示に入れます。 訳語集の全体を毎回渡すと、関係の無い訳語に引きずられます。

取るものどこから何に使うか
段落ごとの原文日本語の報告訳の単位
訳語集に当たる言葉訳語集と依頼者ごとの指定指示に入れ、後で使われたかを照合する
期日・金額・条文の番号・書面の日付原文から決まった形で拾う後で英訳の中の値と照合する
原文の近い過去の段落その依頼者への過去の訳言い回しをそろえる手本
当事者・裁判所の英語名案件の基本情報固有名詞を置き換える

過去の訳は、原文どうしの近さで選びます。 段落ごとに、その依頼者への過去の原文と文字の並びの近さを測り、近いものを3つまで手本として渡します。 「次回期日は○月○日午前10時と指定されました」のような定型の段落は、ほぼ同じ原文が過去に何度もあり、訳もそれにそろえられます。

和暦の日付は、プログラムで西暦に直してから渡します。 「令和8年11月20日」を生成AIに直させず、直した値を原文の横に添えます。 日付の書き方("20 November 2026" か "November 20, 2026" か)は依頼者ごとの指定で決めます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 案件と依頼者を特定する … ファイル名の案件番号から、依頼者と窓口を引きます
  2. 段落に分ける … 見出しと段落の区切りで分け、段落ごとに番号を付けます
  3. 固有名詞を置き換える … 当事者・裁判所・仲裁機関の名前を、案件の基本情報の英語名の目印に置き換えます
  4. 訳語集を当てる … 段落ごとに当たる訳語を拾います。依頼者の指定と事務所の訳語集が衝突するときは、依頼者の指定を残します
  5. 数字と日付を拾う … 期日、時刻、金額と単位、条文の番号、書面の日付を書き出し、和暦は西暦に直します
  6. 過去の訳を選ぶ … 段落ごとに原文の近い過去の段落を3つまで選びます

3番目の置き換えを省かないでください。 相手方の名前を原文のまま渡すと、英訳の中で毎回違う綴りや略し方になります。目印に置き換えて訳させ、最後に基本情報の英語名に戻します。

4番目で衝突を残すのは依頼者の指定の側ですが、衝突があったこと自体は記録します。 事務所の訳語集と依頼者の指定が違う訳語は、他の依頼者への報告で混ざりやすい言葉だからです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、段落ごとに英訳し、使った訳語と、訳語集に無かった言葉と、迷った箇所を書き出すことです。

させること中身判断できないときの扱い
段落の英訳訳語集の訳語と依頼者の指定を使い、過去の訳の言い回しにそろえる―
使った訳語の記録訳語集のどの行を使ったか―
新しい用語の書き出し訳語集に無い法律の用語と、その段落でどう訳したかnew_term として弁護士に返す
迷った箇所の書き出し原文の意味が二通りに読める、英語に対応する概念が無いambiguity として原文の箇所と理由を書く

3行目の新しい用語は、訳語集を育てる材料です。 弁護士が訳し方を決めたら、訳語集に足します。決めないまま毎回AIに訳させると、毎月違う訳になります。

させないこと理由
訳語集と違う訳語を使うこと依頼者が別の手続き・書面と受け取る
見通しの強さを変えること依頼者の判断が変わる
原文に無い説明を足すこと日本の手続きの解説を足すと、報告に無いことを書くことになる
固有名詞を訳すこと基本情報の英語名を使う
数字・日付・単位を直すこと値はプログラムが直したものをそのまま使う

2行目と3行目が、いちばん起きやすい失敗です。 「〜の可能性も否定できません」を "it is possible that" と訳すと、日本語より強い印象になります。そして、海外の読み手のために「弁論準備手続とは、…」という説明を親切に足します。 説明が要るなら、弁護士が日本語の報告に書き足すか、訳語集の注記に入れて事務所として決めます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは法律事務所で、弁護士が日本語で書いた経過報告を、
海外の依頼者向けに英訳する担当です。
読むのは、依頼者の法務部の担当者です。

【すること】
段落ごとに英訳してください。
段落ごとに、使った訳語集の行、新しい用語、迷った箇所を書き出してください。

【厳守事項】
- 【訳語】に挙げた言葉は、必ず指定の英語で訳してください。
  言い換えたり、同じ意味の別の語を使ったりしないでください。
- 【過去の訳】と同じ言い回しで訳せる文は、その言い回しにそろえてください。
- 見通しや評価の強さを変えないでください。
  「可能性は高くない」「否定できない」「考えます」などの度合いを、
  強めたり弱めたりしないでください。迷ったら ambiguity に書いてください。
- 原文に無い説明、補足、日本の手続きの解説を足さないでください。
- [PARTY_A] などの目印は、そのまま残してください。名前を書かないでください。
- 数字、日付、金額、条文の番号は、【値】に挙げた英語の表記をそのまま使ってください。
  計算や換算をしないでください。
- 【訳語】に無い法律の用語は new_term に書き出し、
  その段落でどう訳したかを書いてください。
- 原文が二通りに読める箇所は、どちらか一方に決めずに ambiguity に書いてください。

【依頼者の表記の指定】{client_style}
【訳語】{glossary_hits}
【過去の訳】{tm_examples}
【値】{values}
【段落】{paragraphs}

「言い換えない」と「同じ意味の別の語を使わない」を両方書いているのは、 前者だけでは、指定の語を一度使ったあと、同じ文の中で繰り返しを避けて別の語に変えるからです。英語の文章としては自然でも、法律の報告では、同じ言葉が別のものを指しているように読まれます。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "matter_no": "M-2024-118",
  "paragraphs": [
    {
      "seq": 1,
      "en_text": "",
      "glossary_used": [ { "ja": "", "en": "", "row_id": "" } ],
      "new_terms": [ { "ja": "", "en_used": "" } ],
      "ambiguities": [ { "source_span": "", "reason": "" } ]
    }
  ]
}

1つ目の理由は、glossary_used を処理が照合できることです。 処理は、前処理で拾った訳語集に当たる言葉の一覧と glossary_used を比べ、拾ったのに使われていない訳語と、英文の中に指定の英語が見つからない訳語を赤で示します。 AIが「使った」と書いていても、英文の中に無ければ赤です。

2つ目は、数字の照合をAIの出力と切り離せることです。 処理は英文の中の数字・日付・金額を拾い、前処理で拾った値の一覧と一つずつ当てます。 一致しない値、英文に出てこない値を、段落の番号付きで示します。

3つ目は、new_terms と ambiguities を確認の画面で別の欄に出せることです。 アソシエイトは、この2つの欄から読み始めれば、弁護士の判断が要る箇所に最初に着けます。

処理が行う照合は、次のとおりです。

照合見るもの赤にする条件
訳語前処理で拾った訳語集の言葉ごとの指定の英語英文に指定の英語が無い/注記の「使わない語」が英文にある
値期日・時刻・金額・条文の番号・書面の日付前処理の値が英文に無い/英文に原文に無い値がある
目印[PARTY_A] などの目印目印が消えている/名前が直接書かれている
段落の数原文と英文の段落の数数が合わない(段落を落とした・まとめた)

4行目の段落の数は、見落としやすい誤りを拾います。 短い段落を前の段落にまとめて訳すと、依頼者へのお願いの1文が、見通しの段落の中に埋もれることがあります。段落は原文と1対1で返させます。

確認の画面では、段落ごとに次のように並べます。

【段落 4】見通し
原文:本件請求が全部認められる可能性は高くないと考えますが、
      一部認容の可能性は否定できません。
英訳:We consider it unlikely that the claim will be granted in full;
      however, the possibility of a partial award cannot be ruled out.
訳語:─(訳語集に当たる言葉なし)
値 :─
迷い:「一部認容」を "partial award" とした。訳語集に無い → new_term

この段落でアソシエイトが見るのは、「高くない」と "unlikely" の度合いが合っているかです。 照合は何も赤にしていませんが、見通しの段落は度合いの言葉を原文と並べて読む、という手順がここで効きます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
文書管理システムフォルダの監視「英訳待ち」「送付済み」への保存を検知する
案件の台帳読み取り依頼者、当事者・裁判所の英語名、窓口
SharePoint のリスト読み書き訳語集・依頼者の指定の読み取り、過去の訳の蓄積
Azure OpenAIAPI 呼び出し構造化出力で段落ごとの英訳
確認の画面Azure Functions が作る英訳、照合の結果、新しい用語、迷った箇所

メールは自動で送りません。 英文を確定させて送るのは、パートナーの確認のあとに秘書が行います。依頼者への報告は、事務所として依頼者に伝える内容そのものです。

訳語集には自動で書き込みません。 new_terms は確認の画面に出すだけで、訳語集に足すかは弁護士が決めます。

Step9

人が確認する

アソシエイトは、次の順に読みます。

  1. 赤の訳語と赤の値を直す … 訳語集どおりでない箇所と、原文と合わない数字・日付を直します
  2. 迷った箇所を決める … ambiguities を読み、原文の意図を確かめて訳を決めます
  3. 新しい用語を決める … new_terms の訳を決め、訳語集に足すかを決めます
  4. 見通しと依頼事項の段落を原文と並べて読む … 強さの度合いと、依頼者にお願いする事項・期限が原文どおりかを確かめます
  5. パートナーに回す … パートナーは英文を通して読み、送る判断をします

4番目を省かないでください。 見通しと依頼事項の段落は、照合の仕組みが何も拾えない部分です。 数字も訳語も合っていて、度合いだけがずれている訳は、機械では見つかりません。

目標は、60件をならして1件24分です。 定型の段落が多い期日の報告は10分ほど、相手方の主張の要旨が長い報告は40分を超えます。

パートナーの確認は、これまでと同じく英文を通して読みます。 照合の結果はパートナーにも見えるようにしますが、パートナーが見るのは、アソシエイトが赤と迷いを片付けた後の英文です。 赤が残ったままの英文は、パートナーに回せないようにします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
案件番号がファイル名に無い処理せず、保存した人に知らせる
依頼者の指定と訳語集が衝突する依頼者の指定を使い、衝突を記録する
訳語集に無い用語が多いnew_terms に出す。10語を超えたら、訳語集の整備を先に行う
過去の訳が無い新しい依頼者訳語集だけで訳し、最初の数か月は過去の訳を蓄えることを優先する
判決文や相手方の書面をそのまま引用している引用の箇所は目印を付けて訳し、引用であることを英文でも示す
依頼者が英語以外を求めるこの構成の対象外。翻訳会社に回す
生成AIの呼び出しが失敗する確認の画面に「下書きなし」と出し、これまでどおりアソシエイトが訳す

上から3行目は、最初の数か月に必ず起きます。 訳語集が担当者の記憶の中にある間は、new_terms が多く出ます。それは失敗ではなく、記憶の中の訳語が文字になっていく過程です。

Step11

記録を残す

  • 日本語の報告(確定版)と、生成AIに渡した段落・訳語・過去の訳・値
  • 返ってきたJSONの全文と、照合の結果(赤の訳語、赤の値)
  • アソシエイトとパートナーが直した後の英文と、下書きとの差分
  • 決めた新しい用語と、訳語集に足したかどうか
  • 依頼者の指定と訳語集の衝突の記録

3つ目の差分は、訳語集と指示を直す材料になります。 毎月同じ言い回しが直されているなら、訳語集か依頼者の指定に足すべき言葉です。

04実装レベルの3段階

最小構成:日本語の報告と訳語を生成AIの画面に貼り、英訳させる / 1件ごとの英訳の下書き
半自動化:上記+訳語集に当たる言葉を自動で拾って指示に入れ、Azure OpenAI で段落ごとに訳す / 訳語の当てはめと下書き
本格構成:上記+保存を起点に自動で動かし、過去の訳を手本に入れ、訳語と数字を照合し、送った英文を蓄える / 英訳と照合と蓄積の全体

最小構成では、訳語を毎回貼り直すので、60件には使えません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件60分が38分程度になります。 下書きと訳語の当てはめは自動になりますが、数字の照合と過去の訳との見比べが残ります。本格構成で24分になり、この段階が本記事の想定です。 差が出るのは、数字の照合と過去の訳の手本が、半自動化ではまだアソシエイトの手元に残るからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、new_terms に出る言葉で訳語集の穴が分かります。穴を埋めてから過去の訳の蓄積を始めるほうが、蓄える訳がそろいます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
60 分
1件あたり導入後時間
24 分
現在  60件 × 60分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 60件 × 24分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
36h
削減率
60%
年間削減時間
432h
年間金額換算(時間単価8,000円)
346万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 海外の企業を依頼者とする訴訟・仲裁・行政手続きを継続して受けていて、経過報告を毎月英文で送っている法律事務所。英訳をアソシエイトの弁護士が書いていて、人によって訳語や言い回しが違う場合。依頼者ごとに使ってほしい訳語の指定があり、それを担当者の記憶で守っている場合。事務所の中に訳語集や過去の英訳の蓄積があり、整理する手間をかけられる場合。
向いていない
  1. 海外の依頼者が数社で、英文の報告が月に数通の場合。報告の文面が案件ごとにまったく違い、過去の訳を参考にできない場合。依頼者との取り決めや事務所の規程で、依頼者の情報を外部のクラウドで処理できない場合。訴訟の見通しや戦略の説明そのものをAIに書かせたい場合(この構成は弁護士が日本語で書いた報告を訳すだけで、報告の中身は弁護士が書きます)。

07最小構成で試す方法

  1. 経過報告の多い依頼者を1社選び、先月その依頼者に送った報告を5件そろえる(日本語と、送った英文)
  2. その依頼者向けの訳語を、訳語集と担当者の記憶から20語ほど書き出す
  3. 事務所で利用が認められた生成AIの環境で、日本語の報告と20語の訳語を貼り、「この訳語を必ず使って英訳してください。見通しの強さを変えず、説明を足さないでください」と指示する
  4. 出てきた英訳を、実際に送った英文と並べて、担当のアソシエイトに読んでもらう

依頼者の情報は、事務所で利用が認められた環境でだけ扱ってください。 試す段階でも、依頼者との取り決めと事務所の規程で、外部のサービスの利用がどう扱われるかを先に確かめます。

出てきた内容判断
訳語が指定どおりで、送った英文に近い過去の訳の蓄積と照合の仕組みに進む
見通しの度合いが強くなった指示の書き方で直る。構成は有効
日本の手続きの説明を足した指示で禁じる。構成は有効
訳語の指定が20語では足りない訳語集の整備が先。 担当者に聞き取る

4行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、担当者の記憶にしかなかった訳語の指定が、どれくらいあるかが見えたということです。 5件の報告で20語では足りないなら、依頼者ごとに50語から100語の指定があると見て、1週目の聞き取りに時間を取ってください。

送った英文と並べるときは、良し悪しより違いを見ます。 送った英文がいつも正しいとは限りません。違いのうち、送った英文の側が訳語集とずれていたものは、今の運用の問題として書き出しておきます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
訳語集と違う訳語を使う当たった訳語だけを指示に入れ、使われたかを機械で照合する
同じ文の中で指定の語を別の語に言い換える「同じ意味の別の語を使わない」と明記する
見通しの強さが変わる度合いの言葉を挙げて禁じ、見通しの段落は弁護士が原文と並べて読む
日本の手続きの説明を足す説明を禁じ、要るなら訳語集の注記で事務所として決める
当事者の名前の綴りが毎回違う目印に置き換え、基本情報の英語名に戻す
和暦の変換を間違えるプログラムで西暦に直し、値として渡す
AIの下書きを過去の訳として蓄える送った後の英文だけを蓄える
依頼者の指定が担当者の記憶にしかない聞き取ってリストにし、出どころを付ける
新しい用語が毎月違う訳になるnew_terms を弁護士が決め、訳語集に足す
依頼者の情報を認められていない環境で扱う試す段階から、事務所で認められた環境だけを使う

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 訳語のずれと度合いのずれは、英文としては自然に読めるので、読み手が気づきにくいという共通点があります。訳語は機械の照合で、度合いは弁護士の読み直しで守ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 依頼者の訴訟・手続きの内容、相手方の主張、見通し、依頼者の社名と担当者の名前です。弁護士が職務上知り得た秘密そのものです。

  1. 秘密の保持を前提に設計する … 弁護士法第23条は、弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うとしています。外部のクラウドで報告を処理する構成は、事務所の規程と依頼者との取り決めに照らして、扱ってよい範囲を先に決めます
  2. データの扱いを確かめて使う … Azure OpenAI では、プロンプトと出力が他のお客様には利用できず、OpenAI には提供されず、許可または指示なしに基盤モデルのトレーニングに使われないとされています。Responses API の会話の保存や保存済みの補完など、履歴が保存される機能は使わない呼び方にします
  3. 送るのは人 … 英文の確定と送付は、パートナーの確認のあとに行います。依頼者への報告は、事務所が依頼者に伝える内容そのものです
  4. 法令の訳は参考資料として扱う … 日本法令外国語訳データベースシステムは、掲載している法令翻訳は正文ではなく、法的効力を有するのは日本語の法令自体としています。報告の中で法令の英訳を使うときは、依頼者にもそれが参考の訳であることが分かる書き方を、事務所として決めておきます
  5. 過去の訳を他の依頼者に使わない … 過去の訳は依頼者ごとに分けて蓄え、手本を選ぶときも、その依頼者への訳だけから選びます。 他の依頼者の案件の文が手本に入ると、秘密が別の依頼者への報告に混ざるおそれがあります

誤りが起きた場合のリスクは、依頼者が報告を読み違えて判断することと、他の依頼者の情報が混ざることの2つです。 前者は訳語と数字の照合と弁護士の読み直しで、後者は過去の訳を依頼者ごとに閉じることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:依頼者ごとの訳語の指定を書き出す

経過報告の多い依頼者3社について、担当のアソシエイトとパートナーから、その依頼者にだけ使っている訳語と、日付・金額の書き方を聞き取ってリストにします。事務所の訳語集には、出どころの列を足します。

2週目:1社で試す

1社の先月の報告5件で、20語の訳語を貼って英訳させます。訳語が指定どおりか、見通しの度合いが変わっていないか、説明を足していないかを最優先で見ます。

3週目:過去の訳を段落ごとに対にする

3社に過去半年に送った英文を、日本語の報告と段落ごとに対にして、リストに入れます。送った後の英文だけを入れます。

4週目:半自動化を始める

訳語集に当たる言葉を自動で拾って指示に入れ、段落ごとに英訳するところまでを動かします。この時点では数字の照合はアソシエイトが目で行い、new_terms に出た言葉を訳語集に足していきます。

2か月目: 数字と日付の照合、過去の訳の手本、送った英文の蓄積を足します。3か月目以降: 依頼者を広げ、1件60分が何分になったかを実測します。new_terms に出る言葉が月に数語まで減り、訳語のずれで依頼者から聞き返されることがなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
構造化出力で、モデルが指定した JSON スキーマの定義に従うこと。以前の JSON モードとの違い。Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書くことMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-07
プロンプトと出力が他のお客様に利用できず、OpenAI に提供されず、許可または指示なしに基盤モデルのトレーニングに使われないこと。モデルがステートレスであること。Responses API や保存済みの補完などでメッセージ履歴などが保存されることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-07
日本法令外国語訳データベースシステムが法務省の運営する日本法令の翻訳を提供するウェブサイトであること。標準対訳辞書を検索できること。掲載している法令翻訳は正文ではなく、法的効力を有するのは日本語の法令自体で、翻訳は理解を助けるための参考資料であること法務省: 日本法令外国語訳データベースシステム2026-10-07
弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うこと(弁護士法第23条)e-Gov 法令API: 弁護士法2026-10-07

依頼者の情報を外部のサービスで扱ってよいかは、事務所の規程と依頼者との取り決めに照らして判断してください。 本記事は上の公式情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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