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保険代理店で募集人が自作する比較資料・チラシ・SNS投稿の原稿を、使う前に募集文書の社内ルールに照らして点検する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

募集人が自分で作った比較表・案内チラシ・SNS投稿の原稿を、使う前に社内の募集文書のルールの条文ごとに読み、外れている箇所を条文の番号と原文の引用付きで指摘します。本部の担当者は指摘一覧から読み始められます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
保険/金融
対象部門
営業/法務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
18h/月
想定削減
70%
年間削減
504h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 募集人が原稿をPDFにして、店舗の責任者の確認を経て本部の受付フォルダに置く
  2. 担当者が原稿を開き、比較している商品と保険会社、記載されている保険料や返戻率を確かめる
  3. 比較表示が偏っていないか、断定的な表現が無いかを読む
  4. 不利益になる事項(保障されない場合、解約時の返戻金、告知の義務など)と注意喚起の文言が書かれているかを探す
  5. 既存の資料の改訂なら、登録番号の台帳を開いて番号と使用期限を確かめる
  6. 直す箇所をPDFに書き込み、募集人へ差し戻す。直ったものを保険会社の審査に回す
導入後(After)
  1. 人募集人が原稿のPDFと、根拠にした保険会社のパンフレット・設計書を SharePoint の「募集文書点検」ライブラリに置き、種類(比較表/チラシ/SNS)と扱う保険会社を列に入れる
  2. 自動ファイルの作成をきっかけに Power Automate のフローが動き、PDFを処理に渡す
  3. 自動Python がPDFから文字を取り出し、ページを画像にする
  4. 自動Azure OpenAI が、原稿の種類に応じた社内ルールの条文ごとに原稿を読み、外れている表現と、書かれていない必須事項を指摘する
  5. 自動あわせて、原稿に書かれた登録番号、保険会社名、商品名、保険料・返戻率などの数値を拾い出す
  6. 自動Python が登録番号を台帳に照らし、数値を根拠資料の文字と照らす
  7. 自動指摘を `must_fix`(直さないと出せない)/`should_fix`(直すほうがよい)/`ask`(担当者の判断が要る)に分け、一覧にする
  8. 人担当者が指摘一覧と原稿を並べて読み、採るものと捨てるものを決める
  9. 人直し方の案を手直しして募集人へ差し戻す。直った原稿を保険会社の審査に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 募集人が原稿をPDFにして、店舗の責任者の確認を経て本部の受付フォルダに置く
  2. 担当者が原稿を開き、比較している商品と保険会社、記載されている保険料や返戻率を確かめる
  3. 比較表示が偏っていないか、断定的な表現が無いかを読む
  4. 不利益になる事項(保障されない場合、解約時の返戻金、告知の義務など)と注意喚起の文言が書かれているかを探す
  5. 既存の資料の改訂なら、登録番号の台帳を開いて番号と使用期限を確かめる
  6. 直す箇所をPDFに書き込み、募集人へ差し戻す。直ったものを保険会社の審査に回す

(a)無いものは見落とす。 3番目の偏った表現は読めば目に入りますが、4番目の書かれていない事項は、探さないと見つかりません。 忙しい時期に省かれやすいのは4番目で、「解約時の返戻金が払込保険料を下回ることがある」旨の注記が無いまま保険会社の審査に出し、そこで差し戻されることがあります。

(b)基準が担当者ごとに違う。 ある担当者は「業界最安」という表現を必ず差し戻し、別の担当者は根拠の記載があれば通しています。募集人は通りやすい担当者に出したがり、差し戻しの理由に納得しません。

(c)SNSの原稿は短いほど危ない。 文字数が限られるので、注意喚起の文言や保険会社の名前がまず削られます。短い投稿ほど点検が軽くなりがちで、実際には漏れが多い。

(d)番号と数値の照合が手作業。 改訂した資料の登録番号が古いまま、使用期限が切れた資料が店舗に残っている、原稿の保険料が改定前の数値のまま、といった不備は、台帳と保険会社の資料を開いて1つずつ見るしかありません。

  1. 【人】 募集人が原稿のPDFと、根拠にした保険会社のパンフレット・設計書を SharePoint の「募集文書点検」ライブラリに置き、種類(比較表/チラシ/SNS)と扱う保険会社を列に入れる
  2. 【自動】 ファイルの作成をきっかけに Power Automate のフローが動き、PDFを処理に渡す
  3. 【自動】 Python がPDFから文字を取り出し、ページを画像にする
  4. 【自動】 Azure OpenAI が、原稿の種類に応じた社内ルールの条文ごとに原稿を読み、外れている表現と、書かれていない必須事項を指摘する
  5. 【自動】 あわせて、原稿に書かれた登録番号、保険会社名、商品名、保険料・返戻率などの数値を拾い出す
  6. 【自動】 Python が登録番号を台帳に照らし、数値を根拠資料の文字と照らす
  7. 【自動】 指摘を must_fix(直さないと出せない)/should_fix(直すほうがよい)/ask(担当者の判断が要る)に分け、一覧にする
  8. 【人】 担当者が指摘一覧と原稿を並べて読み、採るものと捨てるものを決める
  9. 【人】 直し方の案を手直しして募集人へ差し戻す。直った原稿を保険会社の審査に回す

8番目が、この設計の分かれ目です。 担当者は原稿を最初から読み直すのではなく、指摘のある箇所から読みます。 そのうえで、指摘が無かった箇所にも目を通します。AIの見落としを前提にした確認です。

7番目の区分は、条文の側に持たせています。 「将来の金額を断定する表現」は must_fix、「文字が小さい注記」は should_fix のように、どの条文に外れたら何になるかを先に決めておきます。 AIには区分を決めさせません。

02今回想定するシステム構成

構成図
募集人の原稿(PDF)+ 根拠資料(保険会社のパンフレット・設計書のPDF)
   │  種類(比較表/チラシ/SNS)と保険会社を列に入れて置く
   ▼【トリガー】SharePoint の「募集文書点検」ライブラリへのファイル作成
Power Automate
   ├──▶ ファイルの中身を取り出し、処理へ渡す
   ▼
Python(前処理)
   │  ・PDFから文字を取り出す/ページを画像にする
   │  ・種類に応じた社内ルールの条文を選ぶ
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
   │  ・条文ごとに、外れている表現を引用付きで指摘する
   │  ・必須事項(不利益事項・注意喚起)の有無を1つずつ答える
   │  ・登録番号、保険会社名、商品名、数値を拾い出す
   │  ・structured outputs(strict)でスキーマどおりのJSONを返させる
   ▼
Python(照合)
   │  ・登録番号を台帳に照らす(番号、版、使用期限)
   │  ・数値を根拠資料の文字に照らす
   │  ・条文の区分から must_fix / should_fix / ask を付ける
   ▼
指摘一覧(SharePoint リスト)── Teams で担当者へ通知
   ▼
【人】担当者が採否を決め、募集人へ差し戻す ── 保険会社の審査へ
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Power AutomateMake、n8n
差異計算Python(台帳・根拠資料との照合と区分の付与)Google Apps Script
保管SharePointBox、Google ドライブ
通知TeamsSlack

登録番号の台帳と社内ルールの文書は、すでにあるものを使います。 最初の準備作業は、社内ルールの条文に番号を振り、それぞれに区分(must_fix / should_fix / ask)と、比較表・チラシ・SNSのどれに当てるかを付けることです。

Azure OpenAI を選ぶ理由は、データの取り扱いが明示されていることです。 原稿には、まだ公表していない商品の保険料や、店舗の顧客の事例が含まれることがあります。公開されている説明によれば、プロンプトと出力は他の顧客にも OpenAI などのモデルの提供元にも提供されず、提供元のモデルやサービスの改善に使われず、許可や指示なしに基盤モデルの学習に使われることもないとされています。

処理される場所も選べます。 プロンプトと応答は顧客が指定した地理の中で処理されますが、Global または DataZone のデプロイではその範囲の外で処理されることがあります。 保存される内容は、指定した地理に保存されるとされています。

チラシは画像としても読ませます。 画像に対応したモデルには、テキストと画像を並べたメッセージを送れます。1回の要求で送れる画像は10枚まで、形式は JPEG、PNG、GIF(最初のフレームのみ)、WEBP です。画像のURLは公開されている必要があり、プライベートエンドポイントやファイアウォールで制限されたURLは使えないとされているため、この構成では画像をBase64にして本文に入れます。

Power Automate はつなぎの役で、判定の中身は持たせません。 条文の区分と照合は Python 側に置きます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

SharePoint の「募集文書点検」ライブラリにファイルが作成されたことを起点にします。 Power Automate の SharePoint コネクタには「When a file is created (properties only)」というトリガーがあり、ライブラリの列の値だけを返します。中身は「Get file content」のアクションで、返ってきたファイル識別子を使って取り出します。

定時のまとめ処理にはしません。 募集人は使いたい日が決まっており、置いてから数分で指摘が返れば、担当者の確認を待つ前に自分で直せます。

フォルダ単位のトリガーは非推奨と表示されているため使いません。ライブラリの列に「点検状態」を持たせ、終わったら 点検済み、失敗したら 要再実行 に書き換えます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
原稿比較表・チラシ・SNS投稿のPDF。種類、扱う保険会社、使用予定日、改訂か新規か「募集文書点検」ライブラリ
根拠資料原稿の数値の出どころにした保険会社のパンフレット、設計書、重要事項説明書のPDF同じライブラリ(原稿に紐づけて置く)
社内ルール番号付きの条文。条文ごとの区分と、当てる原稿の種類SharePoint の「募集文書ルール」リスト
登録番号の台帳資料ID、保険会社、登録番号、版、使用期限、旧版の番号SharePoint のリスト
表現の例過去に差し戻した表現と、その直し方「差し戻し事例」リスト

質を決めるのは、社内ルールの書き方です。 「誤解を招く比較をしない」とだけ書いた条文では、AIも担当者と同じく経験で読むしかありません。監督指針が比較表示で挙げている型を、条文の側で具体的に分けて書きます。

監督指針(II-4-2-2(9))は、比較表示で不適切な例として、客観的事実に基づかない事項や数値を表示すること、正確な判断に必要な事項を包括的に示さず一部のみを表示すること、長所のみをことさらに強調し不離一体の関係にあるものを併せて示さないこと、同等と認識されない保険種類間の比較を同等であるかのように表示すること、現に提供されていない保険契約と比較すること、他社の商品を誹謗・中傷する目的で短所を不当に強調することを挙げています。社内ルールでは、これを1つずつ別の条文にします。

比較表には、比較の対象とした商品の契約概要を顧客が速やかに入手できるようにすることと、比較表に商品の内容のすべてが記載されていない旨の注意喚起が求められています。 保険料を比べる場合は、保険料のみに注目させない工夫と、保障内容など他の要素も考慮すべき旨の注意喚起です。これらは「必ず書く事項」として条文にします。

差し戻し事例は、直し方の案をその代理店の言い回しに寄せるために渡します。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
原稿と根拠資料「募集文書点検」ライブラリトリガーが返すファイル識別子で「Get file content」
原稿の種類・保険会社同じライブラリの列トリガーが返す列の値
社内ルール「募集文書ルール」リスト種類の列で絞って取得
登録番号の台帳台帳のリスト保険会社で絞って取得
差し戻し事例「差し戻し事例」リスト同じ種類の直近20件

社内ルールは全部を渡しません。 SNS投稿の原稿に比較表の条文を当てると、比較していない投稿に「比較の注意喚起が無い」という指摘が出ます。原稿の種類で条文を絞ってから渡します。

台帳はAIに渡しません。 番号の照合は Python が行い、AIには原稿から拾った番号の文字列だけを返させます。台帳には全店舗の資料の一覧と使用期限がまとまっており、照合に必要のないものを外へ出さないためです。根拠資料も、該当するページだけを切り出して置いてもらいます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. PDFであることの確認 … WordやPowerPointのまま置かれたものは、PDFにして置き直してもらいます
  2. 文字の取り出し … PythonのPDFライブラリでページごとに文字を取り出します。文字が取れないページ(画像だけのチラシ)は印を付けます
  3. ページの画像化 … チラシとSNS投稿は、ページを画像にしてAIに渡します。文字の大きさ、注記の位置、写真に重ねた文字は、取り出した文字だけでは分かりません
  4. 画像の枚数の確認 … 1回の要求で送れる画像は10枚までです。それを超える比較表の冊子は、10ページずつに分けて送ります
  5. 条文の選択 … 原稿の種類と保険会社から、当てる条文を選びます
  6. 根拠資料の文字の取り出し … 数値の照合に使うので、全角・半角、桁区切り、「円」「%」の表記をそろえます
  7. 改訂の確認 … 改訂の原稿なら、台帳から旧版の登録番号と使用期限を引いておきます

3番目を省かないでください。 注意喚起が写真の上に小さく白抜きで重ねられていると、取り出した文字では「書かれている」ことになりますが、顧客の目には届きません。 監督指針は、契約概要や注意喚起情報の書面について文字の大きさを8ポイント以上とすることなどを「適切な表示の確保」として挙げています。この代理店では、チラシの注記にもこの考え方を当てています。

画像の解像度は、detail を high にします。low では512×512の低い解像度で処理されるため、小さな注記が読めません。 high では低解像度の画像を見たうえで、512×512の区画ごとに詳しく読むとされています。

Step5

AIに処理させる

させるのは、条文ごとに「外れている箇所があるか」「必須事項が書かれているか」を答え、根拠にした原文をそのまま引くことです。

見るもの何を答えさせるか答えられないときの扱い
比較の仕方一部のみの比較、長所のみの強調、同等でない商品の比較、提供されていない商品との比較、他社の誹謗比較しているかが分からなければ unclear
断定的な表現将来の配当・返戻金・運用成果を断定する表現、「必ず」「絶対に」「確実に得をする」条件付きの表現か判断できなければ unclear
不利益事項保障されない場合、解約時の返戻金、告知の義務、責任開始の時期などの記載の有無原稿の外(別紙)にあると書かれていれば external
比較表の注意喚起比較表がすべての内容を載せていない旨、契約概要の入手方法、保険料のみに注目させない旨比較表でなければ not_applicable
表示の仕方注記が小さすぎないか、写真に重なって読めないか、保険会社名と代理店名が明示されているか画像が粗くて判断できなければ unclear
拾い出し登録番号、保険会社名、商品名、保険料・返戻率などの数値と単位読めなければ空のまま

右端の列が、この構成でいちばん大事な区別です。 unclear は担当者に回すもの、external は別紙を確かめるもの、not_applicable は条文が当たらないものです。「判断できない」を「問題なし」に混ぜると、点検したことになって通ってしまいます。

させないこと理由
その資料を使ってよいかの結論最終判断は本部と保険会社の審査が行う
指摘の区分(must_fix など)の決定条文の側に持たせ、Python が付ける
登録番号の照合台帳に機械で照らす
数値が正しいかの判断根拠資料の文字に機械で照らす
不利益事項の文言の創作保険会社の資料の文言を使うのが原則。直し方の案は「どこに何を足すか」までにする

最後の行が、いちばん起きやすい失敗です。 注記の不足を指摘させると、AIはそれらしい注記を自分で作ります。保険会社の資料と違う言い回しの注記は、それ自体が審査で差し戻されます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは保険代理店の本部で、募集人が作った募集用の原稿を、使う前に点検する担当者の補助です。
渡された原稿と社内ルールの条文だけを見て答えてください。条文に無い基準を持ち込まないでください。

【原稿の種類】{doc_type}(comparison / flyer / sns)
【扱う保険会社】{insurers}
【当てる条文】{rules}
  各条文は rule_id、本文、type(prohibited=書いてはいけない/required=必ず書く)を持ちます。

【答え方】
- type が prohibited の条文:原稿の中に外れている箇所があれば、1箇所ずつ挙げてください。
  quote には原稿の文字をそのまま写し、page と位置(見出し、表の行、注記など)を書いてください。
- type が required の条文:その事項が原稿に書かれているかを、必ず1つずつ答えてください。
  書かれていれば status を present とし、根拠の文字を quote に写してください。
  書かれていなければ status を absent とし、quote は空にしてください。
  「別紙参照」などで原稿の外にあると書かれていれば external です。
- 判断できないときは unclear を選び、理由を書いてください。迷ったときに present や問題なしを選ばないでください。
- 条文がこの原稿に当たらないときは not_applicable です。

【厳守事項】
- 使ってよいか、保険業法に違反するかを書かないでください。
- 指摘の重さ(must_fix など)を書かないでください。
- 登録番号は読み取った文字列をそのまま extracted に入れてください。桁を補ったり、
  それらしい番号に直したりしないでください。台帳との照合はしないでください。
- 保険料・返戻率・配当などの数値は、原稿に書かれたとおりに単位ごと拾ってください。
  計算や換算をしないでください。正しいかどうかも判断しないでください。
- 直し方の案(suggestion)では、不利益事項や注意喚起の文言を自分で作文しないでください。
  「根拠資料の◯ページの記載を、この位置に入れる」のように、どこに何を足すかを書いてください。
  根拠資料に該当する文言が見つからなければ「保険会社の資料で文言を確認」と書いてください。
- 表現の言い換えを提案するときは、差し戻し事例の言い回しを参考にしてください。
- 画像では、文字の大きさ、写真に重なった文字、注記の位置も見てください。
  文字として読めても、背景に埋もれて読みにくい場合は、その旨を書いてください。

【差し戻し事例】{past_cases}
【根拠資料の文字】{reference_text}
【原稿の文字】{draft_text}
(原稿のページ画像を添付します)

「必ず1つずつ答えてください」を required の条文に書いているのが要です。 書かないと、AIは問題のある箇所だけを答え、書かれていない事項について何も言いません。 何も言わないことは「書かれている」と同じに見えます。

「自分で作文しない」も同じ理由です。 補った文章を募集人がそのまま貼ると、保険会社の資料と食い違う注記が出回ります。

Step7

出力形式を固定する

structured outputs の strict: true で、次の形のJSONに固定します。 公式のドキュメントでは、structured outputs は与えたJSONスキーマに従わせる機能で、有効なJSONを保証するだけで厳密にスキーマに沿うとは限らない旧来の JSON モードとは異なるとされています。

{
  "doc_id": "",
  "doc_type": "comparison | flyer | sns",
  "findings": [
    {
      "rule_id": "",
      "rule_type": "prohibited | required",
      "status": "violation | present | absent | external | unclear | not_applicable",
      "page": 0,
      "location": "",
      "quote": "",
      "reason": "",
      "suggestion": ""
    }
  ],
  "extracted": {
    "registration_numbers": [""],
    "insurers": [""],
    "products": [""],
    "figures": [ { "label": "", "value": "", "unit": "", "page": 0 } ]
  }
}

1つ目の理由は、区分を後から付けられることです。 AIが返すのは status までで、must_fix / should_fix / ask は Python が条文の区分から付けます。ルールを改めたときは、条文の区分を書き換えるだけで済みます。

2つ目は、答えの抜けを数えられることです。 Python が渡した条文の rule_id がすべて返っているかを確かめ、足りなければ再実行します。

スキーマには制約があります。 すべての項目を required に入れ、オブジェクトには additionalProperties: false を付ける必要があります。項目は合計100個まで、入れ子は5段までです。文字列の maxLength や pattern、配列の minItems は使えないとされているため、条文が全部返っているかは、スキーマではなく Python の側で数えます。

Python は一覧に、区分と、登録番号の照合(matched / expired / old_version / not_found)、数値の照合(found / not_found)の列を足します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
「募集文書点検」ライブラリPower Automate のトリガーと「Get file content」原稿と根拠資料を取り出す
Python の処理フローからの呼び出し(Azure Functions などに置く)前処理と照合
Azure OpenAIAPI呼び出し条文ごとの指摘と拾い出し
指摘一覧のリスト「Create item」1件の指摘を1行として登録
ライブラリの列「Update file properties」点検状態を書き換える
Teams通知must_fix がある原稿を担当者へ知らせる

募集人へは自動で差し戻しません。 一覧をそのまま見せると、担当者が捨てるはずの指摘まで直そうとします。 保険会社の審査の窓口にもつなぎません。

Step9

人が確認する

担当者は、指摘一覧と原稿を並べて読みます。 一覧は must_fix → ask → should_fix の順に並べます。

  1. must_fix を確かめる … 引用された箇所を原稿で見て、本当に条文に外れているかを確かめます
  2. ask と unclear を判断する … AIが判断できなかったものです。ここが担当者の仕事の中心です
  3. absent を原稿全体で探す … 書かれていないと出た事項が、別のページや裏面に無いかを確かめます
  4. 指摘の無い箇所に目を通す … 原稿を一通り読みます。AIが拾わなかった表現が無いかを見ます
  5. 採否を記録する … 指摘ごとに「採る/捨てる」を付け、捨てた理由を一言残します
  6. 差し戻す … 採った指摘と直し方の案を手直しして、募集人へ返します

4番目を省かないでください。 条文に無い言い回しは、AIも拾いません。拾った型は条文か事例に足します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
WordやPowerPointのまま置かれた点検状態を 要PDF化 にして募集人へ戻す
文字が取れないページがある画像だけで読ませ、そのページの指摘には unclear を付けて担当者へ
画像が10枚を超える10ページずつに分けて送り、結果を合わせる
返ってきた rule_id が足りない同じ原稿で再実行。2回目も足りなければ担当者へ
応答が拒否されたrefusal を記録して担当者へ。原稿の中身ではなく指示の書き方を見直す
登録番号が台帳に無いnot_found。新規の原稿なら正常(審査前なので番号が無い)
登録番号が旧版のものold_version で must_fix に。改訂後の番号への差し替えを求める
数値が根拠資料に見つからないnot_found で ask。改定後の資料が添えられているかをまず確かめる
根拠資料が添えられていない数値の照合をせず、一覧の先頭に「根拠資料なし」と出す
Azure OpenAI が応答しない点検状態を 要再実行 にする

登録番号の not_found を一律に差し戻さないでください。 改訂か新規かの列で扱いを分けます。

Step11

記録を残す

  • 原稿と根拠資料のPDF、置いた日時と募集人、種類と保険会社
  • そのとき当てた条文の版と、差し戻し事例の件数
  • Azure OpenAI が返したJSONの全文と、使ったモデルのデプロイ名
  • 照合の結果(登録番号、数値)
  • 担当者の採否と、捨てた理由
  • 差し戻した日時、直った原稿、保険会社の審査に出した日と結果

2つ目で条文の版を残すのは、ルールが後から変わるためです。 条文を改めた後に過去の点検を見直すとき、当時どの条文で見たかが分からないと、通した理由が説明できません。

5つ目は、条文を見直す材料になります。 同じ条文の指摘を何度も捨てているなら、条文の書き方が実態に合っていません。

04実装レベルの3段階

最小構成:条文と原稿を手でAIの画面に貼り、指摘を出させる / 1本ごとの条文に沿った読み
半自動化:上記+ライブラリを起点に自動で動かし、登録番号と数値を照合して指摘一覧に書き出す / 読みと照合、一覧化
本格構成:上記+採否の記録から条文と事例を毎月見直し、保険会社の審査結果も取り込む / 点検とルールの見直しの循環

本記事の想定は半自動化です。 1本20分が6分になるのはこの段階で、効いているのは不利益事項を探す時間と、台帳を開く時間が無くなることです。 本格構成は、工数より基準をそろえるための段階です。 採否の記録が半年分たまると、担当者が繰り返し捨てている条文と、保険会社の審査で差し戻される型が見えます。そこを直すと、最初の点検で止まる原稿が増え、審査での差し戻しが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
180 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  180件 × 20分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 180件 × 6分 ÷ 60 = 18 時間/月
月間削減時間
42h
削減率
70%
年間削減時間
504h
年間金額換算(時間単価3,000円)
151万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店で、募集人が顧客向けの比較表、セミナーや相談会の案内チラシ、SNSやブログの投稿を自分で作っている場合。月に百本以上の原稿を本部の募集管理の担当者が数名で読んでおり、比較表示・断定的な表現・不利益事項の記載・保険会社の登録番号の確認に時間を取られている場合。担当者によって差し戻す基準が違い、募集人から「前は通った」と言われることがある場合。社内の募集文書のルールを、番号付きの条文の形で書き出せる場合。
向いていない
  1. 募集人が保険会社の作った資料だけを使い、自作の資料や投稿が原則として無い代理店。原稿が月に数十本で、担当者1名の目視で足りる場合。社内の募集文書のルールがまだ文書になっておらず、担当者の経験だけで判断している場合(まずルールを書き出すのが先)。なお、その資料が保険業法や監督指針に照らして使ってよいかの最終的な判断と、保険会社による審査・承認は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月点検した原稿から20本を選ぶ(比較表・チラシ・SNSを混ぜ、担当者が差し戻したものを半分入れる)
  2. 社内ルールの文書から、比較表示・断定的判断・不利益事項・注意喚起に関わる条文を10本ほど抜き出し、番号を振る
  3. 手元のAIサービスに、条文と原稿のPDFを1本ずつ貼る
  4. 「条文ごとに、外れている箇所を原稿の文字をそのまま引いて挙げてください。type が required の条文は、書かれているかを必ず1つずつ答えてください。使ってよいかは書かないでください」と指示する
  5. 出てきた指摘を、当時の担当者の差し戻しと突き合わせる
出てきた内容判断
担当者が差し戻した箇所が指摘に出たライブラリからの自動化に進む
書かれていない事項について何も言わない指示の書き方で直る。required の条文を1つずつ答えさせる
条文に無い基準で指摘が出る条文の書き方が抽象的。監督指針の型に分けて書き直す

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、担当者ごとに基準が違っていた理由が、条文の書き方にあったと分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
書かれていない事項が一覧に出ないrequired の条文を1つずつ答えさせ、rule_id が全部返ったかを数える
unclear が問題なしに混ざる区分を分け、unclear は必ず担当者へ回す
不利益事項の文言をAIが作文する案は「どの資料の文言を、どこに入れるか」までにする
比較していない原稿に比較の指摘が出る原稿の種類で条文を絞ってから渡す
写真に重なった注記を「書かれている」とするページを画像でも送り、detail を high にする
新規の原稿の登録番号を差し戻す改訂か新規かで扱いを分ける
改定前の保険料のまま通る根拠資料の添付を必須にし、無ければ一覧の先頭に出す
画像のURLが読めない公開URLしか読めない。Base64で本文に入れる
スキーマで件数を縛ろうとして弾かれるminItems は使えない。件数は Python で数える
条文が抽象的で指摘がぶれる監督指針が挙げる型ごとに条文を分ける
担当者が指摘の無い箇所を読まなくなる確認の手順に「全体に目を通す」を入れ、採否の記録に残す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「指摘が無い」という同じ見た目から出発しています。指摘が無いのが、問題が無いからなのか、答えが返っていないからなのかを、機械の側で区別しておくことが、運用に乗るかを決めます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 未公表の商品の保険料や返戻率、保険会社との取り決め、そして原稿に載ることのある顧客の事例(年齢、家族構成、保険金の支払事例)です。

  1. 原稿に顧客が特定できる情報を載せない … 事例は加工したものを使うのが前提です。点検で個人が特定できそうな記載を見つけたら、must_fix の条文として扱います
  2. データの扱いを確かめてから使う … 公開されている説明では、プロンプトと出力はモデルの提供元に提供されず、許可なく基盤モデルの学習に使われないとされています。デプロイの種類によって処理される場所が変わるため、社内の規程に合う種類を選びます
  3. 不正利用の監視の扱いを決めておく … 兆候が検出されると、プロンプトと生成内容の一部が確認の対象に選ばれ、必要に応じて権限のある Microsoft の従業員が確認するとされています。管理された顧客は、この監視の変更を申請できるとされています
  4. 台帳と社内ルールを丸ごと外へ出さない … 台帳の照合は Python の側で行い、AIへは原稿の種類で絞った条文だけを渡します
  5. この構成は使ってよいかの判断を代替しない … 出すのは条文に照らした指摘までです。最終的な判断は本部と保険会社の審査が行います
  6. 自動で外へ送らない … 募集人への差し戻しも保険会社への提出も、人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、不適切な資料が顧客に渡ることと、問題の無い原稿を差し戻して募集人の信頼を失うことの2つです。 前者は unclear と absent を問題なしに混ぜると起き、後者は条文が抽象的なまま指摘を出すと起きます。

10まず何から始めるか

1週目:条文に番号を振る

社内ルールの文書から、比較表示・断定的判断・不利益事項・注意喚起・登録番号に関わる条文を抜き出し、番号を振ります。それぞれに prohibited か required か、どの原稿の種類に当てるかを付けます。

2週目:20本で試す

先月の原稿20本を手元のAIサービスに貼り、指摘を当時の差し戻しと突き合わせます。書かれていない事項について答えが返っているかを、最優先で見ます。

3週目:区分を決める

条文ごとに must_fix / should_fix / ask を、担当者3名で読み合わせて決めます。 ここで基準の違いが表に出ます。

4週目:ライブラリから一覧までをつなぐ

Power Automate でライブラリを見張り、Azure OpenAI の指摘を一覧に書き出すところまで作ります。この時点では登録番号と数値の照合を入れず、条文の指摘だけを見ます。

2か月目以降: 台帳と根拠資料の照合を足し、採否の記録を毎週見ます。担当者が捨てる指摘が減り、保険会社の審査での差し戻しが減った時点で、この構成は運用に乗っています。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-01/最終更新:2026-10-02
確認した内容情報源確認日
比較表示で不適切な例(客観的事実に基づかない表示、一部のみの表示、長所のみの強調、同等でない保険種類間の比較、提供されていない契約との比較、他社の誹謗)。比較表に契約概要の入手方法とすべての内容を記載していない旨の注意喚起が要ること、保険料の比較では保険料のみに注目させない旨の注意喚起が要ること(II-4-2-2(9))。断定的判断の提供の関係(II-4-2-2(10))。契約概要・注意喚起情報の書面の文字の大きさを8ポイント以上とすることなどの「適切な表示の確保」金融庁: 保険会社向けの総合的な監督指針(II-4 業務の適切性)2026-10-01
structured outputs が与えたJSONスキーマに従わせる機能であり、JSON モードと異なること。すべての項目を required にすること、additionalProperties: false が必要なこと、項目は100個・入れ子は5段まで、maxLength・pattern・minItems などが使えないことMicrosoft Learn: structured outputs2026-10-01
画像に対応したモデルに画像を送る方法。1回の要求で画像10枚まで、形式が JPEG・PNG・GIF(最初のフレーム)・WEBP であること、公開されていないURLは使えないこと、Base64で送れること、detail の low(512×512)と high の違いMicrosoft Learn: 画像に対応したチャットモデルの使い方2026-10-01
プロンプトと出力が他の顧客やモデルの提供元に提供されず、学習に使われないこと。Global・DataZone のデプロイでの処理の場所。不正利用の監視での確認と、監視の変更の申請Microsoft Learn: データ、プライバシー、セキュリティ2026-10-01
「When a file is created (properties only)」のトリガー、「Get file content」「Create item」「Update file properties」のアクション、フォルダ単位のトリガーが非推奨と表示されていることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-01

資料を使ってよいかの判断は、本部の担当と保険会社の審査で行ってください。 本記事は監督指針のページで確認できた範囲だけを扱っています。登録番号の付け方と使用期限の扱いは保険会社ごとに異なるため、委託元の保険会社との取り決めに従ってください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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