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自治体の窓口の新人職員が、AIに住民役をさせて手続きの案内と苦情の応対を練習し、説明の抜けと言い回しの振り返りを受ける

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

窓口に配属された新人職員が、AIに住民役をさせて手続きの案内と苦情の応対を練習します。練習の記録は、所管課が作った説明すべき事項の一覧と照らされ、説明の抜けと言い回しの振り返りの下書きになります。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
その他/自治体
対象部門
人事
対象業務
内容確認・チェック/記録・議事録作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/属人化解消/教育コスト削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
80h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
70%
年間削減
672h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 指導役が、窓口の当番の合間に練習の時間を確保する
  2. 指導役が、練習する手続きと住民の設定をその場で考える
  3. 指導役が住民役を演じ、新人が窓口の応対をする(15分前後)
  4. 指導役が、気づいた点を思い出しながら口頭で伝える
  5. 気が向けば、研修の記録の表に一言書く
  6. 新人は、言われたことを自分のノートに書く
導入後(After)
  1. 人所管課が、手続きごとに「説明すべき事項の一覧」と「住民役のシナリオカード」を作る
  2. 人新人が練習画面でシナリオカードを選ぶ(または人事課が週の練習を割り当てる)
  3. 自動練習画面が、シナリオカードを住民役の指示にして生成AIを呼ぶ
  4. 【人/自動】 新人が文字で応対し、生成AIが住民役として返す(10〜15往復)
  5. 人新人が「終了」を押す。上司を呼ぶ判断をしたときは「上司に引き継ぐ」を押して終える
  6. 自動練習の記録と説明事項の一覧を、別の呼び出しで生成AIに渡し、振り返りの下書きを決まった形で受け取る
  7. 自動練習画面が、振り返りの根拠にした新人の発言が記録に実在するかを照合する
  8. 人指導役が、振り返りの下書きと「一覧に無い説明」を読み、コメントを足して確定する
  9. 人新人が、確定した振り返りを読む
  10. 自動研修の記録に、手続き・シナリオ・説明の抜けの項目が残る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 指導役が、窓口の当番の合間に練習の時間を確保する
  2. 指導役が、練習する手続きと住民の設定をその場で考える
  3. 指導役が住民役を演じ、新人が窓口の応対をする(15分前後)
  4. 指導役が、気づいた点を思い出しながら口頭で伝える
  5. 気が向けば、研修の記録の表に一言書く
  6. 新人は、言われたことを自分のノートに書く

(a)住民役を演じる時間が取れない。 指導役は窓口の当番を持っており、練習に付き合うと、その分だけ窓口の人数が減ります。 繁忙期(3〜4月の転入・転出、6〜7月の保険料の通知)ほど練習が止まり、新人が練習の足りないまま窓口に出ることになります。

(b)指導役によって見る点が違う。 ある指導役は本人確認の手順を、別の指導役は言葉づかいを中心に見ます。同じ転入の手続きでも、新人によって指摘された内容がまったく違います。 手順書には「説明すべきこと」が書かれていますが、それと照らして練習を振り返る仕組みがありません。

(c)説明の抜けが本番で見つかる。 練習の振り返りは口頭で、手順書のどの項目を説明しなかったかまでは言われません。 本番の窓口で「転入から14日以内」の説明が抜け、住民が後日もう一度来ることになって初めて分かります。

(d)住民役の設定が偏る。 指導役が考える設定は、自分が過去に応対して印象に残った場面に寄ります。同じ設定を何度も練習し、ほかの場面は一度も練習しないまま育成期間が終わることがあります。

  1. 【人】 所管課が、手続きごとに「説明すべき事項の一覧」と「住民役のシナリオカード」を作る
  2. 【人】 新人が練習画面でシナリオカードを選ぶ(または人事課が週の練習を割り当てる)
  3. 【自動】 練習画面が、シナリオカードを住民役の指示にして生成AIを呼ぶ
  4. 【人/自動】 新人が文字で応対し、生成AIが住民役として返す(10〜15往復)
  5. 【人】 新人が「終了」を押す。上司を呼ぶ判断をしたときは「上司に引き継ぐ」を押して終える
  6. 【自動】 練習の記録と説明事項の一覧を、別の呼び出しで生成AIに渡し、振り返りの下書きを決まった形で受け取る
  7. 【自動】 練習画面が、振り返りの根拠にした新人の発言が記録に実在するかを照合する
  8. 【人】 指導役が、振り返りの下書きと「一覧に無い説明」を読み、コメントを足して確定する
  9. 【人】 新人が、確定した振り返りを読む
  10. 【自動】 研修の記録に、手続き・シナリオ・説明の抜けの項目が残る

8番目が、この設計の分かれ目です。 指導役は住民役を演じなくなりますが、振り返りを読む役は残します。 「一覧に無い説明」が出たとき、その説明が正しいかを判断できるのは指導役だけだからです。

3番目と6番目を別の呼び出しにしているのは、意図してのことです。 住民役を演じた会話の流れのまま振り返りをさせると、住民役の立場に引っ張られた評価になります。 振り返りは、記録と一覧だけを渡した新しい呼び出しで作ります。

02今回想定するシステム構成

構成図
【準備】所管課:説明事項の一覧/住民役のシナリオカード
   ▼【トリガー】新人がシナリオカードを選んで「開始」
練習画面(庁内のWebアプリ)+ 中継の処理(Azure Functions)
   ├── シナリオカードを住民役の指示に組み立てる
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 住民役として応答(会話の履歴は中継の処理が持つ)
   ▼【トリガー】新人が「終了」または「上司に引き継ぐ」
中継の処理 ── 練習の記録と説明事項の一覧をまとめる
   ▼
Azure OpenAI(構造化出力)── 説明の抜け/言い回し/苦情の応対の流れ/一覧に無い説明
   ▼
中継の処理 ── 根拠の発言が記録に実在するかを照合
   ▼
【人】指導役が読み、コメントを足して確定 ──▶ 新人へ/研修の記録へ
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(住民役の指示の組み立て、会話の履歴の保持、照合)Power Automate
画面練習画面(庁内のWebアプリ)Microsoft Teams のアプリとして組み込む
保管SharePoint(説明事項の一覧・シナリオカード・練習の記録)庁内のファイルサーバー

住民の個人情報は、この構成のどこにも入りません。 シナリオカードの住民は架空の人物で、本番の窓口の記録を練習に流用しないことを最初に決めます。 この点で、窓口の本番の業務に生成AIを入れる構成よりも始めやすくなります。

住民役は、生成AIの安全のしくみの内側で演じさせます。 Microsoft Learn によると、Azure OpenAI には既定の安全ポリシーがあり、テキストのモデルではヘイトと公平性・暴力・性的・自傷行為の4つについて、プロンプトと出力の両方に「中」の重大度のしきい値が設定されています。しきい値を超えるコンテンツが検出されると API 要求はブロックされ、フィルターをトリガーしたカテゴリを示すエラー応答が返されます。暴力の「中」の説明にはいじめと脅迫が含まれています。住民役に脅しを演じさせる設計は、ここで止まります。 住民役の強さに上限を設けるのは、このためでもあります。

振り返りは、構造化出力で受け取ります。 Microsoft Learn では、構造化出力を使うとモデルは推論 API 呼び出しの一部として指定した JSON スキーマの定義に従うとされています。説明事項ごとの判定と根拠を、毎回同じ形で研修の記録に残すために使います。

総務省は「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック〈導入手順編〉」を第4版に改訂し(令和7年12月)、生成AIの利用方法や利活用事例、利用における留意事項の記述と、自治体が作成する生成AIシステム利用ガイドラインのひな形を加えています。 この構成を入れる前に、庁内の生成AIの利用ガイドラインで研修への利用が認められているかを確かめてください。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

新人が練習画面でシナリオカードを選び、「開始」を押したときに動きます。 練習は窓口の空いた時間に新人が自分で始めます。指導役の予定に合わせる必要がありません。

人事課は、毎週月曜の朝に練習の割り当てを出します。 研修の記録から、新人ごとにまだ練習していない手続きと、前回の振り返りで抜けが多かった手続きを選び、その週に練習するシナリオカードを2枚ずつ割り当てます。新人は割り当て以外のカードも選べます。

「終了」と「上司に引き継ぐ」の2つのボタンが、振り返りのきっかけです。 どちらかを押すと会話を閉じ、振り返りの呼び出しが動きます。途中で画面を閉じた練習は振り返りを作らず、未完了として記録します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
説明事項の一覧手続きごとに、説明すべき事項・確認すべき書類・その根拠になる手順書の箇所所管課が作り、SharePoint に置く
シナリオカード住民の設定(事情、持ってきた書類、足りない書類、不満の強さ)、住民役が最初に言うこと、住民役が知らないこと所管課と人事課が作る
応対の基本の一覧名乗り、本人確認の手順、専門用語の言い換え、避ける言い回し人事課が作る
練習の記録新人と住民役のやり取りの全文、時刻、終わり方(終了/上司に引き継ぐ)練習画面
研修の記録新人ごとの練習した手続きと、過去の振り返りの要点SharePoint の表

質を決めるのは、いちばん上の一覧です。 一覧が無いと、振り返りの基準を生成AIの知識に頼ることになり、第1章で避けたかった「もっともらしい誤り」がそのまま振り返りに入ります。

説明事項の一覧の行は、たとえば次のような形です。

手続き番号説明すべき事項手順書の箇所
転入届T-01転入した日から14日以内に届け出ること市民課手順書 2-1
転入届T-02前住所地の転出証明書(またはマイナンバーカード)が要ること市民課手順書 2-2
転入届T-05国民健康保険・児童手当など、ほかの課の手続きが続くこと市民課手順書 2-6
国保の加入K-03加入の届出が遅れても、保険料は加入すべき日にさかのぼること保険年金課手順書 1-4

一覧の事項は、所管課が手順書から写したものだけにします。 人事課や指導役が「これも言ったほうがいい」と思う事項は、所管課に確かめてから足します。 一覧が手順書とずれると、練習が本番と違う説明を教えることになります。

シナリオカードの「住民役が知らないこと」は、住民役が勝手に事情を作らないための欄です。 たとえば「転出証明書を持っていない理由は、住民役から言わない。聞かれたら『前の市で何ももらっていない』と答える」のように書きます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
シナリオカードSharePoint の一覧を、カードの番号で引く住民役の指示
説明事項の一覧SharePoint の一覧を、カードの手続きで引く振り返りの基準
応対の基本の一覧人事課の一覧言い回しの振り返り
練習の記録中継の処理が会話の履歴として持つ振り返りの材料
新人の過去の振り返り研修の記録を新人で引く前回と同じ抜けが続いているかの確認

会話の履歴は、中継の処理の側で持ちます。 1往復ごとに、それまでのやり取りをまとめて送る形です。Microsoft Learn によると、Responses API の会話の履歴を保持する機能などを使うと、サービス側にメッセージ履歴が格納されます。 練習の記録は庁内の保管先に残したいので、サービス側に履歴を持たせない呼び方を選びます。

説明事項の一覧は、その手続きの分だけを引きます。 3課のすべての一覧を渡すと、転入の練習で国保の事項が抜けとして出てきます。 ほかの課へつなぐ事項(表の T-05)は、転入の一覧の側に入れておきます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 住民役の指示の組み立て … シナリオカードの設定・最初に言うこと・知らないことを、決まった枠に流し込みます
  2. 不満の強さの変換 … カードの強さ(1〜3)を、言い回しの指定に置き換えます(下の表)
  3. 練習の記録の整形 … 発言ごとに番号を振り、[N3](新人の3番目の発言)のように参照できるようにします
  4. 一覧の添付 … 手続きの説明事項の一覧と、応対の基本の一覧を、番号付きで付けます
  5. 長さの確認 … 往復が極端に少ない(目安として3往復未満)練習は、振り返りを作らずに「練習が短い」と返します
強さ住民役の言い回し演じさせないこと
1落ち着いて質問する-
2待たされたことや手間への不満を言う人格への非難
3不満を強く繰り返し、上の人を出すよう求める脅し、暴言、差別的な言葉

強さ3の上の段は作りません。 暴言や脅しへの応対は、窓口の一人の職員が言葉で収めるものではなく、上司を呼び、組織で対応する場面です。 強さ3の練習では、新人が「上司に引き継ぐ」を押す判断ができたかも振り返りの対象にします。

3番目の番号付けが、振り返りの根拠を確かめる土台です。 振り返りに「[N3] で14日以内の説明が抜けた」と書かせれば、指導役がその発言をすぐに開けます。

Step5

AIに処理させる

呼び出しは2種類あります。住民役として応答することと、練習の記録から振り返りの下書きを作ることです。

呼び出しさせること
住民役シナリオカードの設定の範囲で、住民として答える。聞かれていない事情は言わない
振り返り説明事項ごとに explained/partial/not_explained を付け、根拠の発言番号を添える
振り返り応対の基本の一覧に照らして、言い回しの改善点を挙げる
振り返り苦情の場面で、聞く・事実を確かめる・できることとできないことを伝える・引き継ぐ、の流れがあったかを見る
振り返り一覧に無い説明を、正誤を判定せずに書き出す
させないこと理由
一覧に無い説明の正誤を判定する制度の中身の判断は所管課と指導役が行う
住民役が制度の中身を教える住民は制度を知らない側。新人の練習にならない
窓口に出してよいかを判定する育成の判断は指導役が行う
点数を付ける点数が独り歩きし、一覧の抜けより点数を見るようになる
住民役が脅し・暴言を演じる練習の目的から外れ、安全のしくみにも止められる

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 新人が「保険料は翌月から計算されます」と一覧に無いことを言うと、生成AIは自分の知識で「正しい説明です」と書きがちです。 自治体ごとに運用が違う事柄も多く、判定させずに「一覧に無い説明」として指導役に返します。

Step6

指示内容を固定する

住民役の指示は次のとおりです。

あなたは市役所の窓口に来た住民を演じます。相手は窓口の新人職員です。

【あなたの設定】{scenario}
【最初に言うこと】{opening}
【あなたが知らないこと・自分から言わないこと】{unknowns}
【不満の強さ】{intensity_rule}

【守ること】
- 住民として話してください。職員に制度や手続きを教えないでください。
- 聞かれたことに、設定の範囲で答えてください。設定に無い事情を作らないでください。
- 設定に無いことを聞かれたら「分からない」「覚えていない」と答えてください。
- 不満の強さの指定を超えないでください。脅し、暴言、人格への非難はしないでください。
- 1回の発言は3文以内にしてください。
- 職員が上司を呼ぶと言ったら、それを受け入れて会話を終えてください。

振り返りの指示は次のとおりです。

あなたは窓口の新人職員の練習を振り返る補助をします。
渡すのは【練習の記録】【説明事項の一覧】【応対の基本の一覧】です。
振り返りの下書きを作りますが、確定させるのは指導役です。

【すること】
1. 説明事項の一覧の各事項について、新人が説明したかを判定してください。
   explained ..... 一覧の事項の内容を説明した
   partial ....... 一部だけ説明した、または住民に伝わったか分からない
   not_explained . 説明していない
   迷ったときに explained を選ばないでください。
2. 応対の基本の一覧に照らして、言い回しの改善点を3つまで挙げてください。
3. 住民が不満を述べた場面について、聞く・事実を確かめる・できることと
   できないことを伝える・必要なら上司に引き継ぐ、の流れがあったかを書いてください。
4. 一覧に無い説明を新人がした場合は、その発言を書き出してください。

【厳守事項】
- 判定の基準は【説明事項の一覧】だけです。あなたの知識で制度の正誤を判定しないでください。
- 一覧に無い説明は、正しいとも誤りとも書かず、outside_list に入れてください。
- 根拠には、発言番号([N3] など)と、その発言の文をそのまま写してください。
- 点数や合否、窓口に出してよいかは書かないでください。
- 新人の人柄や態度を評価しないでください。発言の内容だけを扱ってください。

「迷ったときに explained を選ばない」を書かないと、言いかけた説明が説明したことになります。 「期限があるので早めに」と言っただけで「14日以内」を伝えたことにすると、本番で抜ける説明が練習では抜けていないように見えます。 迷うものは partial にし、指導役が読みます。

Step7

出力形式を固定する

振り返りは、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "procedure": "転入届",
  "checklist": [
    { "id": "T-01", "status": "explained | partial | not_explained",
      "turn_ref": "[N3]", "evidence": "" }
  ],
  "phrasing": [
    { "turn_ref": "", "quote": "", "issue": "", "suggestion": "" }
  ],
  "complaint_flow": {
    "occurred": true,
    "listened": "yes | partly | no", "checked_facts": "yes | partly | no",
    "explained_limits": "yes | partly | no", "escalation": "done | not_needed | missed",
    "evidence": ""
  },
  "outside_list": [ { "turn_ref": "", "quote": "" } ],
  "ended_by": "finish | escalate"
}

1つ目の理由は、一覧の番号で研修の記録に残せることです。 T-01 が not_explained だった回数を新人ごとに数えれば、人事課が翌週の割り当てを決める材料になります。 自由文の振り返りでは、この集計ができません。

2つ目は、outside_list を判定と別の場所に置けることです。 一覧に無い説明は、正誤を判定しないまま指導役に届きます。指導役が「正しい」と確かめたものは、所管課に一覧への追加を相談する材料になります。

3つ目は、turn_ref で根拠の発言を照合できることです。 練習画面は、turn_ref の番号の発言に evidence の文が実在するかを確かめ、合わなければその項目を partial に戻して指導役に返します。

構造化出力では、すべてのフィールドを必須にし、additionalProperties: false を設定する必要があります。苦情の場面が無かった練習では、occurred を false にし、ほかの欄も決まった値で返させます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
SharePoint中継の処理が一覧を読むシナリオカード・説明事項・応対の基本
Azure OpenAI(住民役)API呼び出し会話の履歴を渡し、住民役の発言を受け取る
Azure OpenAI(振り返り)API呼び出し(構造化出力)振り返りの下書きを受け取る
練習画面中継の処理が書き込む会話の表示と、振り返りの下書き
研修の記録指導役の確定時に書き込む手続き・判定・指導役のコメント

研修の記録へは、指導役が確定したものだけを書き込みます。 下書きのまま記録に入ると、AIの判定が育成の記録として残ります。

Step9

人が確認する

振り返りを確定させるのは指導役です。読む順番を決めておきます。

  1. outside_list を先に読む … 新人が一覧に無いことを話した箇所です。誤った説明なら、ここで正します
  2. not_explained と partial の項目を読む … 根拠の発言を開き、本当に抜けたかを確かめます
  3. 苦情の場面の流れを読む … 強さ3の練習では、上司に引き継ぐ判断ができたかを見ます
  4. 言い回しの改善点を読み、コメントを足す … 指導役が自分の言葉で一言足してから確定します

1番目を最初に置くのは、誤った説明がいちばん害が大きいからです。 抜けは本番で住民が聞き返せば補えますが、誤った説明は住民がそのまま信じて帰ります。

指導役の確認は、1件あたり数分を目安にします。 住民役を演じる15分が無くなる代わりに、読む時間を確保することが、この構成の条件です。

確定した振り返りを新人と一緒に読む時間は、週に1回、まとめて取ります。 1回ごとに対面で伝える形をやめても、同じ事項を続けて落としている新人には、指導役が直接話すほうが早く直ります。 研修の記録の回数がその目安になります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
住民役の応答が安全のしくみで止められたその発言を言い直させず、「この場面は上司に引き継ぐ練習に切り替え」と表示する
住民役が制度の中身を教え始めた練習画面に印を付け、そのカードの指示を所管課と見直す
住民役が設定に無い事情を作った振り返りの対象から外し、カードの「知らないこと」に足す
説明事項の一覧が無い手続きのカードが選ばれた練習は止め、所管課に一覧の作成を依頼する
練習が3往復未満で終わった振り返りを作らず、未完了として記録する
構造化出力が拒否・不完全で返る1回だけ再実行し、続けば指導役が口頭で振り返る
turn_ref の発言に根拠の文が無いその項目を partial に戻して指導役に返す
新人が個人情報らしいものを入力した練習画面で警告し、記録から消す

1行目を軽く見ないでください。 止められた応答を言い直させる設定にすると、しきい値ぎりぎりの住民役を探す仕組みになってしまいます。 止められたことそのものを、上司を呼ぶ場面の練習に使います。

最後の行は、本番の窓口で会った住民の話を練習に持ち込んだときのためのものです。 架空の設定だけで練習するという約束を、画面の側でも守ります。

Step11

記録を残す

  • 練習の記録の全文(新人と住民役の発言、時刻、終わり方)
  • 使ったシナリオカードと説明事項の一覧の版
  • 振り返りの下書き(JSON)と、指導役が確定した版との差分
  • 指導役のコメント
  • 安全のしくみで止められた応答の回数と、そのときのカード
  • 新人ごとの、一覧の事項ごとの not_explained の回数

2つ目で一覧の版を残すのは、手順書が改正で変わるためです。 制度の改正で一覧の事項が変わると、古い一覧で「抜けた」とされた練習の意味が変わります。 版が残っていれば、どの基準で振り返ったのかが分かります。

最後の行は、研修の割り当てと、手順書の見直しの両方に使います。 多くの新人が同じ事項を落とすなら、手順書の書き方か、窓口の流れの側に理由があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:生成AIの画面に住民役の指示を貼って練習し、記録を貼って振り返りを作る / 住民役と振り返りの下書き
半自動化:上記+練習画面でカードを選ぶと住民役が始まり、終了で振り返りが出る / 練習の開始から振り返りの下書きまで
本格構成:上記+根拠の照合、指導役の確認画面、研修の記録への書き込み、週ごとの練習の割り当てまで / 練習・振り返り・記録・割り当て

最小構成では、記録のコピーと貼り付けが手で残ります。 確かめるための段階です。 半自動化で、指導役の30分が14分程度になります。 住民役を演じる時間は無くなりますが、振り返りの下書きを読んで研修の記録に転記する作業が残ります。本格構成で9分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、研修の記録と練習の割り当てが、指導役と人事課の手作業だからです。 半自動化の1か月で、カードの指示の弱いところが分かります。 住民役が事情を作りすぎるカード、制度を説明し始めるカードを直してから、本格構成で練習の量を増やしてください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
10 名
月間件数
160 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  160件 × 30分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 160件 × 9分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
56h
削減率
70%
年間削減時間
672h
年間金額換算(時間単価2,800円)
188万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 市民課・保険年金課・子育て支援の窓口に、新規採用・異動・会計年度任用職員が年間を通じて配属され、先輩職員が住民役を演じて応対の練習に付き合っている市区町村。所管課が手続きごとの窓口の手順書を持っていて、「何を説明すべきか」を一覧にできる場合。先輩職員の窓口の当番が詰まっていて、練習の相手と振り返りの時間が取れず、新人ごとに練習の量と中身がばらついている場合。
向いていない
  1. 窓口に新しく出る職員が年に数名で、先輩職員が付き添う形で足りる場合。手続きの手順書が無く、説明すべき事項を一覧にできない場合(先に手順書の整備が要る)。暴言や威圧を伴う応対の訓練をしたい場合(本記事は手続きの案内と、強い不満を伝える住民への応対までを扱う)。なお、制度の内容が正しく説明されたかの最終的な判断と、窓口に一人で出してよいかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 市民課の転入届について、説明事項の一覧(10項目ほど)を手順書から作る
  2. シナリオカードを3枚作る(落ち着いた住民/書類が足りない住民/待たされて不満を言う住民)
  3. 庁内で利用が認められた生成AIの画面に住民役の指示を貼り、新人2名に1枚ずつ練習してもらう
  4. 練習の記録をコピーし、別の画面で振り返りの指示と一覧を貼って振り返りを作る
  5. 同じ練習を指導役も見て、生成AIの振り返りと指導役の気づきを突き合わせる

ここで確かめたいのは、住民役のうまさではありません。 「一覧に無い説明の正誤を判定しないか」「言いかけた説明を explained にしないか」の2点です。

出てきた内容判断
抜けの判定が指導役の気づきと合い、一覧に無い説明は判定されずに出た練習画面の仕組みづくりに進む
言いかけた説明が explained になった指示に迷ったときの側を書けば直る。構成は有効
一覧に無い説明に「正しい」と書いた指示を直して再試行。直らなければ振り返りの範囲を一覧の判定だけに絞る
住民役が制度を説明し始めたシナリオカードの書き方を先に直す

3行目が直らないときは、振り返りから一覧に無い説明の書き出しを外してください。 指導役が記録を読んで拾えば足ります。誤った「正しい」が新人に届くよりはましです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
一覧に無い説明が「正しい」と判定される判定させず outside_list に出す。指導役が読む
言いかけた説明が説明したことになる迷ったら partial と指示に書く
住民役が制度を教え始める「住民は制度を知らない側」と指示し、カードを直す
住民役が事情を作りすぎるカードに「知らないこと・自分から言わないこと」の欄を持たせる
苦情の住民役が安全のしくみで止まる強さに上限を決め、止まったら引き継ぎの練習に切り替える
住民役の立場に引っ張られた振り返りになる住民役と振り返りを別の呼び出しにする
一覧が手順書とずれる一覧の事項は所管課が手順書から写したものだけにし、版を残す
本番の住民の話が練習に持ち込まれる架空の設定だけで練習すると決め、画面で警告する
点数を付けたくなる付けない。 事項ごとの抜けの回数で見る
振り返りが新人に直接届く指導役の確定を通す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「振り返りの基準を一覧の外に置いてしまう」という同じ形をしています。一覧だけを基準にしているかどうかで、振り返りが信頼できるかが決まります。

下から2行目は、人事課から要望として出てきます。 点数は比べやすいのですが、点数が上がることと、本番で説明が抜けないことは別です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 架空の住民のシナリオ、新人職員の練習の記録、指導役のコメントです。住民の個人情報は扱いません。 一方で、新人職員の練習の記録は、その職員の育成の記録にあたります。

  1. 庁内の生成AIの利用ガイドラインを確かめる … 総務省のガイドブック第4版には、自治体が作成する生成AIシステム利用ガイドラインのひな形が添えられています。研修への利用が庁内の規程で認められているかを、情報部門と確かめてから始めてください
  2. 本番の窓口の記録を練習に使わない … シナリオは架空の設定だけにし、練習画面で個人情報らしい入力を警告します
  3. 練習の記録の扱いを職員に伝える … 練習の記録と振り返りが研修の記録に残ること、誰が読むのか、人事評価に使うのかどうかを、始める前に新人に伝えてください
  4. データの扱いを確かめる … Microsoft Learn では、プロンプトと出力は他のお客様に利用されず、OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないとされています。不正使用の監視のためにサンプルが人間のレビュー用に保存される場合があることも書かれています。苦情の場面を練習する構成なので、その点を情報部門と共有しておいてください
  5. 住民役の強さの上限を守る … 安全のしくみの設定を緩めて強い住民役を作ることはしません。それを超える場面は、上司に引き継ぐ練習として扱います
  6. 窓口に出してよいかの判断をAIにさせない … 振り返りは下書きで、育成の判断は指導役が行います

誤りが起きた場合のリスクは、誤った説明が練習で「正しい」とされることと、抜けた説明が練習で「説明した」とされることの2つです。 どちらも本番の窓口で、住民に誤りか抜けとして届きます。一覧だけを基準にすること、迷ったら partial にすることの2つは、運用が慣れても外さないでください。

10まず何から始めるか

1週目:1つの手続きの一覧を作る

市民課で、転入届の説明事項の一覧を手順書から作ります。一覧の事項ごとに、手順書のどこから写したかを書きます。 人事課は、応対の基本の一覧を作ります。

2週目:シナリオカードを3枚作る

落ち着いた住民、書類が足りない住民、待たされて不満を言う住民の3枚です。「住民役が知らないこと・自分から言わないこと」の欄を必ず埋めます。

3週目:新人2名で試す

庁内の生成AIの画面で住民役と振り返りを作り、指導役の気づきと突き合わせます。一覧に無い説明を判定しないか、言いかけた説明を explained にしないかだけを見ます。

4週目:練習の記録の扱いを決める

人事課で、練習の記録を誰が読み、何に使うのかを決め、新人に伝える文面を作ります。人事評価に使うかどうかは、ここで決めます。

2か月目: 練習画面と中継の処理を作り、市民課で半自動化を回します。安全のしくみで止められた回数と、住民役が事情を作った回数を毎週数えます。3か月目以降: 指導役の確認画面と研修の記録の連携、週ごとの割り当てを足し、保険年金課と子育て支援課の一覧を作ります。指導役の30分が何分になったかと、本番で抜けやすい事項が練習で減ったかを数えた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Azure OpenAI に既定の安全ポリシーがあり、テキストのモデルではヘイトと公平性・暴力・性的・自傷行為の4つについてプロンプトと出力の両方に「中」の重大度のしきい値が設定されていること。しきい値を超えるコンテンツが検出されると API 要求がブロックされ、カテゴリを示すエラー応答が返されること。すべての安全ポリシーが構成可能であること。暴力の「中」の説明にいじめと脅迫が含まれること。テキストのフィルタリングモデルが日本語を含む言語でトレーニング・テストされていることMicrosoft Learn: Azure OpenAI の既定のガードレール ポリシー2026-10-07
構造化出力で、モデルが指定した JSON スキーマの定義に従うこと。Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書くこと。すべてのフィールドを必須にすること。additionalProperties: false を設定することMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-07
プロンプトと出力が他のお客様に利用されず、OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないこと。Responses API などの機能でメッセージ履歴がサービス側に格納されること。不正使用の監視でサンプルが人間のレビュー用に保存される場合があることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-07
総務省が「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック〈導入手順編〉」を第4版に改訂し(令和7年12月16日)、生成AIの利用方法や具体的な利活用事例、利用における留意事項等の記述と、自治体が作成する生成AIシステム利用ガイドラインのひな形を追加したこと総務省: 「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」の公表2026-10-07

制度の説明が正しいか、新人を窓口に一人で出してよいかは、所管課の手順書と指導役の判断で決めてください。 本記事は公開仕様と総務省の公表資料で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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