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社員から届くアカウントのロック・パスワードの再設定・多要素認証の再登録の依頼を、エージェントが本人確認の手順に沿って受け、定型の対応は手順どおりに進めて、例外を担当へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

アカウントのロック、パスワードの再設定、多要素認証の再登録の依頼を、Teams のエージェントが受けます。手順書に沿って本人確認と上長の承認を進め、定型の対応は手順どおりに片付け、当てはまらないものを担当へ回します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Microsoft Copilot
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/医療/小売/製造/金融
対象部門
情報システム
対象業務
問い合わせ対応
主な課題
人手が足りない/問い合わせが多い/属人化している
AIで行う処理
エージェント
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
75%
年間削減
1,080h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 電話・Teams・メールで依頼を受け、チケットを作る
  2. 社員番号と氏名を聞き、Microsoft Entra 管理センターでアカウントを探す
  3. 本人確認をする(社員番号・生年月日・上長への確認など、担当者のやり方で)
  4. アカウントの状態を見る(ロックか、登録されている認証方法は何か)
  5. ロックなら待つよう伝えるか、パスワードをリセットして一時的なパスワードを伝える
  6. 多要素認証なら、認証方法を消すか、一時アクセス パスを作って伝える
  7. 本人がサインインできたかを確かめ、チケットを閉じる
導入後(After)
  1. 人社員が Teams のエージェントに「ロックされた」「パスワードを忘れた」「機種変更した」と書く
  2. 自動エージェントが依頼の種類を見分け、足りない情報を聞く
  3. 自動フローが Microsoft Graph でアカウントと登録済みの認証方法を確かめる
  4. 自動エージェントが手順書の分岐に当てはめ、進め方を決める
  5. 自動ロック・パスワード:SSPR の手順を案内する(登録がある場合)
  6. 自動多要素認証:上長へ承認の依頼を出す
  7. 人上長が依頼に心当たりがあるかを確かめ、承認する
  8. 自動承認されたら、フローが1回限り・短い有効期間の一時アクセス パスを作り、本人に渡す
  9. 自動本人が新しい認証方法を登録したかを確かめ、古い認証方法の削除を案内する
  10. 自動手順書に当てはまらないものを、状況をまとめて担当へ回す
  11. 人担当者が回ってきたものに対応する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 電話・Teams・メールで依頼を受け、チケットを作る
  2. 社員番号と氏名を聞き、Microsoft Entra 管理センターでアカウントを探す
  3. 本人確認をする(社員番号・生年月日・上長への確認など、担当者のやり方で)
  4. アカウントの状態を見る(ロックか、登録されている認証方法は何か)
  5. ロックなら待つよう伝えるか、パスワードをリセットして一時的なパスワードを伝える
  6. 多要素認証なら、認証方法を消すか、一時アクセス パスを作って伝える
  7. 本人がサインインできたかを確かめ、チケットを閉じる

(a)管理者の操作が要らない依頼にも、担当者が手を動かしている。 ロックの依頼の多くは、SSPR で本人が片付けられるものです。それでも「電話が来たからリセットする」が習慣になり、一時的なパスワードを口頭で伝える件数が減りません。

(b)本人確認の確かめ方が人によって違う。 社員番号と生年月日は、同じ部署の人なら知りうる情報です。どの依頼にどの確かめ方を使うかが決まっていないので、確かめ方の弱い担当者のところに、なりすましが通る余地があります。

(c)朝に依頼が集まり、待ち時間が延びる。 5名で受けても、朝の1時間に30件が重なれば、最後の社員は1時間近くサインインできません。 工場のラインでは、その間の作業記録が紙に戻ります。

(d)記録が残らない。 何を確かめ、何を操作したかがチケットに書かれていないことがあります。後から「誰の依頼で一時アクセス パスを出したか」を問われても、たどれません。

  1. 【人】 社員が Teams のエージェントに「ロックされた」「パスワードを忘れた」「機種変更した」と書く
  2. 【自動】 エージェントが依頼の種類を見分け、足りない情報を聞く
  3. 【自動】 フローが Microsoft Graph でアカウントと登録済みの認証方法を確かめる
  4. 【自動】 エージェントが手順書の分岐に当てはめ、進め方を決める
  5. 【自動】 ロック・パスワード:SSPR の手順を案内する(登録がある場合)
  6. 【自動】 多要素認証:上長へ承認の依頼を出す
  7. 【人】 上長が依頼に心当たりがあるかを確かめ、承認する
  8. 【自動】 承認されたら、フローが1回限り・短い有効期間の一時アクセス パスを作り、本人に渡す
  9. 【自動】 本人が新しい認証方法を登録したかを確かめ、古い認証方法の削除を案内する
  10. 【自動】 手順書に当てはまらないものを、状況をまとめて担当へ回す
  11. 【人】 担当者が回ってきたものに対応する

7番目の上長の承認が、この設計の要です。 一時アクセス パスは、サインインと認証方法の登録ができてしまう鍵です。エージェントは本人の言葉だけで鍵を出しません。 本人以外の、本人を知っている人の承認を必ず通します。

10番目の「回す」を、エージェントの失敗にしないことも大事です。 管理者のアカウント、不正なサインインの疑い、承認が得られない依頼。これらはエージェントが受け持たない範囲として、最初から手順書に書いておきます。

02今回想定するシステム構成

構成図
社員(Teams のエージェントに依頼を書く)
   ▼
Copilot Studio のエージェント(手順書に沿って会話を進める)
   ├──▶ フロー①:アカウントと認証方法の確認(Microsoft Graph)
   ├──▶ フロー②:上長への承認の依頼(開始して承認を待機)
   ├──▶ フロー③:一時アクセス パスの作成(Microsoft Graph)
   ├──▶ フロー④:登録の確認(Microsoft Graph)
   └──▶ フロー⑤:担当への引き継ぎ(チケットの作成と Teams の通知)
全フロー → 対応の記録(SharePoint のリスト)
【例外だけ担当者が対応】
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(エージェントから呼ぶエージェント フロー)Make、n8n
生成AIMicrosoft Copilot Studio のエージェントAzure OpenAI(Microsoft Foundry)
認証の管理Microsoft Entra ID(Microsoft Graph の認証方法の API)―
承認Power Automate の承認Teams のアダプティブ カード
保管SharePoint のリスト(手順書の分岐、対応の記録)Dataverse

エージェントは会話を受け持ち、操作はすべてフローが行います。 Microsoft Learn では、エージェント フローは決定論的で、ルール ベースのパスに従い、同じ入力が常に同じ出力を生成するとされています。エージェントが会話で決めるのは「どのフローを呼ぶか」までで、Graph への書き込みはフローの中の決まった手順だけです。

エージェント フローは、Copilot Studio の容量を消費します。 公式ドキュメントでは、フローが実行するアクションごとに容量を消費し、前払いの容量を使い切ると新しいフローの実行がブロックされるとされています。朝の集中で容量が尽きないよう、月の件数から見積もっておきます。

土台になるのは、一時アクセス パス(TAP)です。 公式ドキュメントでは、TAP は1回の使用または複数のサインイン用に構成できる時間制限付きのパスコードで、強力な認証方法を失ったり忘れたりした場合の回復も容易になるとされています。TAP はユーザーのパスワードを置き換えません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

社員が Teams のエージェントに書き込んだことを起点にします。 エージェントは Teams のアプリとして配り、「ヘルプデスク」の名前で見つけられるようにします。ロックされた社員がどうやって Teams を開くのかは、最初に考えておく点です。

社員の状態入口
パソコンではサインインしたまま、スマートフォンの認証アプリが使えないパソコンの Teams からエージェントへ
スマートフォンの Teams は使えるが、パソコンでロックされたスマートフォンの Teams からエージェントへ
どの端末でもサインインできないヘルプデスクの電話。 担当者がエージェントの画面に代理で入力するか、担当者が対応する

3行目の社員は、エージェントの対象から外しません。 担当者が電話を受け、エージェントに「代理入力」と書いて同じ手順に乗せます。本人確認と上長の承認は同じように通るので、記録も同じ形で残ります。

多要素認証の依頼の多くは1行目です。 機種変更の前に、パソコンで Teams にサインインしたまま依頼してもらうよう、社内に案内しておきます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
依頼の文社員がエージェントに書いた内容Teams の会話
依頼者Teams にサインインしている社員のアカウントエージェントの会話の情報
アカウントの状態登録済みの認証方法の種類、管理者のロールの有無、ゲストかどうかMicrosoft Graph
上長依頼者の上長のアカウントMicrosoft Entra ID のユーザーの情報
手順書の分岐依頼の種類と状態ごとの進め方、回す条件SharePoint のリスト
過去の対応同じ社員の直近の依頼と、出した TAP対応の記録

質を決めるのは、手順書の分岐です。 「ロックで、SSPR の登録あり → SSPR を案内」「多要素認証で、パソコンで本人がサインイン中 → 上長の承認 → TAP」のように、依頼の種類と状態の組み合わせごとに、進め方を1つに決めておきます。 エージェントへの指示は、この表を読むことを前提に書きます。

過去の対応は、同じ社員から短い間に繰り返し依頼が来ていないかを見るために持ちます。 1週間に2回の TAP の依頼は、それ自体が担当へ回す理由になります。

Step3

データの取得方法を決める

アカウントの状態は、フロー①が Microsoft Graph の「認証方法の一覧」を呼んで取ります。 公式ドキュメントでは、GET /users/{id | userPrincipalName}/authentication/methods で登録済みの認証方法の一覧が返り、他のユーザーに対しては、アプリケーションの権限 UserAuthenticationMethod.Read.All が最小の権限とされています。

取るもの呼ぶもの何に使うか
登録済みの認証方法認証方法の一覧(authentication/methods)SSPR を案内できるか、TAP が要るか
管理者のロールの有無ユーザーのロールの割り当て管理者なら担当へ回す
ユーザーの種類ユーザーの情報(userType)外部ゲストなら担当へ回す
上長ユーザーの上長承認の依頼先

公式ドキュメントでは、認証方法の API を全社員を繰り返し調べる用途に使うことは勧められていません。 この構成では、依頼があった社員1人について、その都度1回だけ呼びます。

フローから Graph を呼ぶには、HTTP のアクションと、Microsoft Entra ID に登録したアプリを使います。 アプリに与える権限は、読み取りと TAP の作成に要るものだけに絞ります。パスワードのリセットや認証方法の削除の権限は、この構成のアプリに与えません。 それらは担当者が管理センターで行います。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 依頼者の確定 … Teams にサインインしているアカウントを依頼者とします。「同僚の代わりに」と書かれた依頼は、本人の依頼として扱わず担当へ回します
  2. 代理入力の確認 … ヘルプデスクの担当者が代理で入力したものは、担当者のアカウントと本人の社員番号の両方を記録します
  3. 状態の取得 … フロー①で認証方法・ロール・ユーザーの種類・上長を取ります
  4. 回す条件の先回りの判定 … 管理者のロールがある、外部ゲスト、上長が設定されていない、直近7日に TAP を出している。どれかに当たれば、会話を進める前に担当へ回します
  5. 会話の文の扱い … 社員がパスワードそのものを書き込んだ場合は、記録から伏せ、パスワードを変えるよう案内します

4番目を会話の前に置くのは、エージェントが途中まで進めてから「やはり回します」とならないためです。 管理者のアカウントは、公式ドキュメントでも認証管理者は管理者の TAP を作れず、特権認証管理者だけが作れるとされています。最初から扱いが違うものは、最初に分けます。

Step5

AIに処理させる

エージェントの仕事は、会話で依頼を見分け、手順書の分岐を選び、決まったフローを呼ぶことです。

依頼の種類と状態進め方人の関与
ロック。SSPR の登録あり待つか、SSPR で「パスワードを忘れた」を選ぶよう案内無し
パスワードを忘れた。SSPR の登録ありSSPR の手順を案内無し
ロック・パスワード。SSPR の登録なし担当へ回す(パスワードのリセットは担当者)担当
多要素認証。機種変更で、パソコンで本人がサインイン中上長の承認 → TAP(1回限り)→ 新しい方法の登録 → 古い方法の削除の案内上長
多要素認証。端末の紛失上長の承認 → 担当へ回す(古い方法の削除と紛失の手続き)上長・担当
手順書のどれにも当たらない担当へ回す担当

ロックの案内の中身は、公式ドキュメントに沿って書きます。 スマート ロックアウトの既定は、Azure Public で10回の失敗でロックされ、ロックアウトの期間は最初は1分で、以降は長くなるとされています。SSPR で「パスワードを忘れた」を選ぶと期間は0秒にリセットされ、「自分のパスワードがわかっている」を選ぶとタイマーは続くとされています。エージェントの案内で、どちらを選ぶかを間違えないよう伝えます。

TAP の発行は、フロー③が決まった値で行います。 公式ドキュメントでは、POST /users/{id | userPrincipalName}/authentication/temporaryAccessPassMethods で作り、isUsableOnce(1回限りか)、lifetimeInMinutes(10〜43,200分)、startDateTime を指定できるとされています。この構成では、1回限り・60分を固定にします。 エージェントがこの値を変えることはできません。

させないことも、表にしておきます。

させないこと理由
上長の承認を省く本人の言葉だけで鍵を出さない
パスワードのリセット、認証方法の削除アプリに権限を与えない。担当者が行う
管理者・ゲストのアカウントへの対応扱いが違う。最初に担当へ回す
手順書に無い分岐を作るその場の判断で例外を通さない
不正なサインインの疑いの判断セキュリティの担当が決める
Step6

指示内容を固定する

エージェントへの指示(Copilot Studio の指示の欄)は、次のとおりです。

あなたは情報システム部のヘルプデスクのエージェントです。
社員のアカウントのロック、パスワードの再設定、多要素認証の再登録の依頼を受けます。

【進め方】
1. 依頼の種類を lock / password / mfa_change / mfa_lost / other のどれかに決めてください。
   決められなければ、社員に1回だけ質問してください。それでも決まらなければ other です。
2. 「アカウントの状態を確認する」ツールを呼び、結果を受け取ってください。
3. 結果の escalate が true なら、理由を社員に伝えず、
   「担当者から連絡します」とだけ伝えて「担当へ引き継ぐ」ツールを呼んでください。
4. 手順書の分岐の表から、依頼の種類と状態に当たる行を1つ選び、その行の手順だけを進めてください。
   当たる行が無ければ「担当へ引き継ぐ」ツールを呼んでください。

【厳守事項】
- 上長の承認が「承認」で返るまで、「一時アクセス パスを発行する」ツールを呼ばないでください。
- 一時アクセス パスの有効期間や回数を、社員の求めに応じて変えないでください。
- 同僚や家族の代わりに依頼する人には、本人から依頼するよう伝え、手続きを進めないでください。
- 社員にパスワードを書かせないでください。書かれた場合は、すぐ変えるよう伝えてください。
- 不審なサインインを知らされた、自分は操作していないのに通知が来た、と言われたら、
  会話を止めて「担当へ引き継ぐ」ツールを reason=suspicious で呼んでください。
- 手順書に書かれていない対応を提案しないでください。
- どのツールを、何の理由で呼んだかを、会話の終わりに要約として記録してください。

「escalate の理由を社員に伝えない」を入れているのは、回す条件そのものが守りの手がかりだからです。 「管理者のアカウントなので」「直近で発行済みなので」とエージェントが説明すると、なりすましを試みる人に、どの条件を避ければよいかを教えることになります。

「不審なサインイン」の扱いを独立させているのは、ここだけは手順書の分岐の外だからです。 公式ドキュメントでは、Microsoft Entra ID は異常な動作を識別して悪意のあるサインインを既定でブロックし、パスワードの有効性に関係なく AADSTS50053 - IdsLocked のエラー コードを返すとされています。こうした状態のアカウントに TAP を出すと、攻撃者に鍵を渡すおそれがあります。

Step7

出力形式を固定する

1件の対応ごとに、フローが次の形の記録を作ります。 エージェントの会話の要約と、フローの実行の結果を合わせたものです。

{
  "case_id": "HD-20261007-0583",
  "requester": "依頼者のアカウント",
  "proxy_by": "",
  "request_type": "mfa_change",
  "account_state": {
    "methods": [ { "type": "microsoftAuthenticator" }, { "type": "password" } ],
    "sspr_ready": true, "is_admin": false, "is_guest": false
  },
  "branch_id": "MFA-01",
  "approval": { "approver": "上長のアカウント", "result": "approved", "at": "2026-10-07T08:42:00+09:00" },
  "tap": { "issued": true, "is_usable_once": true, "lifetime_minutes": 60 },
  "registration_confirmed": true,
  "escalated": false,
  "escalation_reason": ""
}

1つ目の理由は、branch_id で手順書のどの行を通ったかが分かることです。 後から対応を見直すとき、エージェントがどの判断をしたかではなく、どの決まりに当てはめたかを見ます。 手順書を直せば、次から同じ依頼の扱いが変わります。

2つ目は、TAP の値そのものを記録しないことです。 tap に残すのは、発行の有無と、1回限りか、有効期間だけです。TAP の値は本人に渡したら、どこにも残しません。

3つ目は、escalation_reason で回した理由を数えられることです。 「SSPR の登録なし」が多ければ、SSPR の登録の呼びかけが先です。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
TeamsCopilot Studio のエージェントのチャネル社員との会話
Microsoft Graphフローの HTTP のアクション(Entra ID に登録したアプリ)認証方法の一覧、TAP の作成
上長Power Automate の承認依頼に心当たりがあるかの確認
担当者チケットの作成と Teams の通知回したものの引き継ぎ
対応の記録SharePoint のリスト1件ごとの記録

上長への承認の依頼には、依頼者・依頼の種類・依頼の日時だけを書きます。 「本人から多要素認証の再登録の依頼がありました。心当たりがあれば承認してください」。上長に求めるのは、本人が今そう言っているはずかの確認で、技術の判断ではありません。 上長が30分以内に応えなければ、担当へ回します。

TAP は、承認の後に、依頼者とのエージェントの会話の中でだけ渡します。 メールや別のチャットには送りません。公式ドキュメントでは、1回限りの TAP でパスワードレスの方法を登録する場合は10分以内に登録を完了する必要があるとされているので、渡すときに「すぐに登録してください」と添えます。

Step9

人が確認する

人が関わるのは、上長の承認と、担当へ回ってきたものだけです。

  1. 上長は、多要素認証の依頼を毎回承認する … 心当たりが無ければ却下します。却下されたら、エージェントは手続きを止め、担当へ回します
  2. 担当者は、回ってきたものを優先度の順に見る … suspicious が最優先、次に管理者のアカウント、次に SSPR の登録なし
  3. 担当者は、週に1回、自動で片付いた記録を抜き取りで見る … 20件ほどを選び、branch_id と会話の要約が手順書と合っているかを確かめます

3番目を省かないでください。 自動で片付いた依頼は誰の目にも触れません。エージェントが手順書の行を取り違えていても、社員がサインインできていれば気づかれないまま続きます。

目標は、600件をならして1件3分です。 ロックと SSPR の案内で片付く依頼は担当者の時間を使わず、回ってきたものに時間を残せます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
管理者のロールを持つアカウント最初に担当へ回す。特権認証管理者の手順で扱う
外部ゲストのアカウント担当へ回す。外部ゲストには TAP を追加できない
上長が設定されていない、不在、却下担当へ回す
直近7日に TAP を出している担当へ回す
不審なサインインの申告、IdsLocked の状態会話を止め、セキュリティの担当へ回す
SSPR の登録が無い担当がパスワードをリセットする。あわせて SSPR の登録を案内する
端末の紛失上長の承認の後、担当が古い認証方法を削除し、紛失の手続きへ
TAP の有効期間内に登録できなかったもう一度上長の承認から。有効期間を延ばさない
オンプレミスの Active Directory のロックこの構成の範囲外として担当へ回す
Copilot Studio の容量が尽きたエージェントが応えなくなる。ヘルプデスクの電話に戻す案内を、Teams の入口に出しておく

最後の行は、朝の集中の日に起きやすい事故です。 公式ドキュメントでは、前払いの容量を使い切ると新しいエージェント フローの実行がブロックされるとされています。容量の使用状況を毎週見て、足りなくなる前に従量課金の設定などを検討します。

Step11

記録を残す

  • 会話の要約(依頼の種類、選んだ branch_id、呼んだツール)
  • フロー①の結果(認証方法の種類、ロール、ユーザーの種類)
  • 承認の依頼と結果、承認者、日時
  • TAP の発行の有無と、1回限りか、有効期間(値は残さない)
  • 登録の確認の結果
  • 担当へ回した理由と、担当者の対応の結果

会話の全文は、短い期間だけ残します。 社員がパスワードを書いてしまうことがあるので、全文は不審な事案の調べに要る期間だけ残し、それ以降は要約だけにします。 期間は、自社のログの保存の決まりに合わせます。

escalation_reason と branch_id は、月ごとに数えます。 手順書の分岐ごとの件数が分かれば、どの行を手順書に足すと担当への回りが減るかが見えます。

04実装レベルの3段階

最小構成:手元のAIサービスに手順書と依頼を貼り、当たる行を選ばせる / 手順書の分け方の確かめ
半自動化:上記+Teams のエージェントで依頼を受け、アカウントの状態を取り、ロックと SSPR の案内まで行う。多要素認証は担当へ回す / 受付、状態の確認、案内
本格構成:上記+上長の承認、TAP の発行、登録の確認、記録 / 多要素認証のやり直しまで

最小構成では件数はさばけません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件12分が7分程度になります。 ロックとパスワードの多くは案内で片付きますが、件数の多い多要素認証が担当に残ります。本格構成で3分になり、この段階が本記事の想定です。 本格構成で初めて Graph への書き込み(TAP の作成)が入るので、半自動化の記録を1か月見て、手順書の分岐が正しく選ばれていることを確かめてから進みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  600件 × 12分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 600件 × 3分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
90h
削減率
75%
年間削減時間
1,080h
年間金額換算(時間単価3,500円)
378万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 社員が数千名いて Microsoft Entra ID でサインインを管理し、アカウントのロック、パスワードを忘れた、スマートフォンの機種変更や紛失で多要素認証をやり直したい、という依頼がヘルプデスクに毎月数百件届く会社。対応の手順は決まっているのに、担当者が1件ずつ本人確認をして管理センターで操作している場合。Microsoft 365、Teams、Copilot Studio、Power Automate を使える場合。
向いていない
  1. 社員が数十名で、依頼が月に数件の場合。サインインをオンプレミスの Active Directory だけで管理していて、クラウドの認証方法を API で扱えない場合。本人確認の手順が決まっておらず、担当者の判断で毎回違う確かめ方をしている場合(手順を決めるのが先)。なお、不正なサインインの疑いがあるときの判断と、管理者の権限を持つアカウントの扱いは、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月のチケットから30件を選ぶ(担当者が判断に迷ったもの、上長に確認したものを入れる)
  2. 手順書の分岐を、依頼の種類と状態の組み合わせごとに表にする
  3. 手元のAIサービスに、手順書の分岐の表と、チケットの依頼の文(氏名とアカウントを伏せたもの)とアカウントの状態を貼る
  4. 「この依頼に当たる手順書の行を1つ選び、その理由を書いてください。当たる行が無ければ『担当へ回す』としてください」と指示する
  5. 当時の担当者の対応と並べる

30件は必ずやってください。 エージェントを組む前に、手順書の分岐が、実際の依頼を漏れなく分けられるかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の対応と同じ行が選ばれたエージェントに進む
当たらない依頼に、近い行を無理に選んだ指示の書き方で直る。構成は有効
担当者ごとに対応が違い、正解が決められない手順書を決め直すのが先。 AIの問題ではない

3行目は、第3章の(b)がそのまま出てきたものです。 どの依頼にどの確かめ方を使うかを、ここで決め直します。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
本人の言葉だけで TAP を出してしまう上長の承認が返るまで発行のツールを呼ばせない
回す理由を社員に説明してしまう理由は伝えず「担当者から連絡します」だけにする
管理者のアカウントで TAP の作成が失敗する認証管理者は管理者の TAP を作れない。最初に回す
外部ゲストで TAP の作成が失敗する外部ゲストには追加できない。最初に回す
SSPR で「パスワードがわかっている」を選んでロックが続く「パスワードを忘れた」を選ぶよう案内する
1回限りの TAP の10分の制限で登録が終わらない渡すときに「すぐ登録」を伝え、失敗したら承認からやり直す
TAP の値が記録に残る発行の有無と条件だけを残す
社員がチャットにパスワードを書く記録から伏せ、変更を案内する
認証方法の API で全社員を調べてしまう依頼のあった1人だけを、その都度調べる
フローのアプリに削除・リセットの権限を与える与えない。 担当者が行う
朝に容量が尽きてエージェントが止まる容量を毎週見て、電話への切り替えの案内を出しておく
自動で片付いた依頼を誰も見ない週に1回、抜き取りで確かめる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、エージェントが親切に振る舞うほど、守りが弱くなるという同じ形をしています。親切さは案内の文で出し、鍵を出す条件は崩さないようにします。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 社員のアカウント、登録済みの認証方法の種類、管理者のロールの有無、上長、そしてサインインと認証方法の登録ができる一時アクセス パスです。

  1. 鍵を出す条件を、エージェントの外に置く … TAP の発行は、上長の承認が返ったときだけフローが行います。エージェントの指示を書き換えても、承認を通らずに発行できない作りにします
  2. フローのアプリの権限を絞る … 読み取りと TAP の作成だけにし、アプリの資格情報の保管場所と更新の手順を決めます
  3. TAP を1回限り・短い有効期間に固定する … 公式ドキュメントでは、TAP で発行されたトークンは TAP の有効期限に上限が置かれますが、既に確立されたセッションをさかのぼって無効にはしないとされています。サインイン頻度のポリシーと合わせて考えます
  4. 不審なサインインは、すぐに人へ … エージェントは会話を止め、セキュリティの担当へ回します
  5. 会話の全文を長く残さない … 要約と記録だけを長く残します
  6. この構成は、不正なサインインの判断と管理者のアカウントの扱いを代替しません … これらは情報システムとセキュリティの担当が決めることです

誤りが起きた場合のリスクは、他人に鍵を渡すことと、正しい社員を長く待たせることの2つです。 前者は承認を省くと起き、後者は回す条件を広げすぎると起きます。どちらも手順書の分岐で調整できるので、記録を見ながら少しずつ直します。

10まず何から始めるか

1週目:手順書の分岐を表にする

依頼の種類と、アカウントの状態の組み合わせごとに、進め方を1つずつ決めて表にします。 回す条件(管理者、ゲスト、上長なし、直近の発行、不審なサインイン)もここで決めます。

2週目:30件で試す

先月のチケットから30件を選び、手元のAIサービスで手順書の行を選ばせます。当時の対応と違う行が選ばれたものを1件ずつ見て、手順書と指示のどちらを直すかを決めます。

3週目:アプリと権限を用意する

Microsoft Entra ID にアプリを登録し、認証方法の読み取りと TAP の作成の権限だけを与えます。TAP のポリシー(1回限り、有効期間)を設定し、上長の情報がそろっているかを確かめます。

4週目:受付と案内までをつなぐ

Copilot Studio でエージェントを作り、アカウントの状態の取得と、ロック・SSPR の案内までを動かします。多要素認証はすべて担当へ回す設定で始めます。

2か月目: 上長の承認と TAP の発行を足し、機種変更の依頼から始めます。3か月目以降: 端末の紛失と代理入力を足し、1件12分が何分になったかを実測します。回す理由の内訳を見て手順書の分岐を足し、担当へ回る割合が下がった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
スマート ロックアウトの既定が Azure Public で10回の失敗、ロックアウトの期間が最初は1分で以降長くなること。SSPR で「パスワードを忘れた」を選ぶと期間が0秒にリセットされ、「パスワードがわかっている」を選ぶとタイマーが続くこと。管理者がクラウド アカウントのロックを期間の満了を待たずに解除できること。悪意のあるサインインを既定でブロックし AADSTS50053 - IdsLocked を返すことMicrosoft Learn: スマート ロックアウト2026-10-07
TAP が1回または複数回のサインイン用に構成できる時間制限付きのパスコードであること。有効期間の範囲(10〜43,200分)と既定値。認証管理者はメンバーの、特権認証管理者は管理者とメンバーの TAP を作成できること。TAP がパスワードを置き換えないこと。1回限りの TAP での登録は10分以内に完了する必要があること。外部ゲストには追加できないこと。TAP の有効期限が既に確立されたセッションをさかのぼって無効にしないことMicrosoft Learn: 一時アクセス パスを構成する2026-10-07
認証管理者が、パスワードのリセット、MFA の再登録の要求、セッションの取り消しを行えること。MFA の再登録で電話番号・Authenticator アプリ・ソフトウェア OATH トークンが削除されることMicrosoft Learn: 多要素認証の認証方法を管理する2026-10-07
POST /users/{id}/authentication/temporaryAccessPassMethods で TAP を作成し、isUsableOnce、lifetimeInMinutes(10〜43,200)、startDateTime を指定できること。権限と、委任の場合に必要なロール(認証管理者、特権認証管理者)Microsoft Graph: Create temporaryAccessPassMethod2026-10-07
GET /users/{id}/authentication/methods で登録済みの認証方法の一覧を取れること。他のユーザーに対するアプリケーションの権限の最小が UserAuthenticationMethod.Read.All であること。全ユーザーを繰り返し調べる用途には推奨されないことMicrosoft Graph: List methods2026-10-07
エージェント フローが決定論的で、同じ入力が同じ出力を生成すること。人の介入(承認)のアクションがあること。アクションごとに Copilot Studio の容量を消費し、前払いの容量を使い切ると新しい実行がブロックされること。「フローを呼び出す」トリガーを持つフローをエージェントのツールとして追加できることMicrosoft Learn: エージェント フローの概要2026-10-07

TAP の有効期間(60分)、上長の承認の待ち時間(30分)、直近の発行で回す期間(7日)は、本記事のモデル条件です。 実際の値は、自社のセキュリティの方針で決めてください。オンプレミスの Active Directory と連携している場合のロックの扱いは、本記事では扱っていません。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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