Media > AI活用ユースケース > 営業 > 保険代理店の募集人と顧客のメール・Teams のやり取りから、家族・住まい・仕事の変化を毎月拾い、保障の見直しを提案する先と話題の一覧を作る

保険代理店の募集人と顧客のメール・Teams のやり取りから、家族・住まい・仕事の変化を毎月拾い、保障の見直しを提案する先と話題の一覧を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

募集人が毎月の初めに、前月の顧客とのメールと Teams のチャットを Copilot に読ませ、家族・住まい・仕事の変化を根拠付きで拾います。見直しを提案する先と話題、住所や車の変更の手続きが要るかもしれない先を一覧にします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
保険/金融
対象部門
営業
対象業務
分類・仕分け/情報検索
主な課題
営業フォローが追いつかない/情報が見つからない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
必須
現在工数
30h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
67%
年間削減
240h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 募集人が月の初めに、前月に顧客とやり取りしたメールを Outlook で順に開く
  2. Teams のチャットで顧客とやり取りしたものも開き直す
  3. 家族・住まい・仕事の変化が書かれていたら、顧客名と内容を手元のメモに書く
  4. 顧客管理システムで、その顧客の契約を開き、見直しの話題になりそうかを考える
  5. 転居や車の買い替えの話があれば、住所や車両の変更の手続きが済んでいるかを確かめる
  6. 提案の予定と手続きの確認の結果を、営業会議の一覧に書き込む
導入後(After)
  1. 人募集人が月の初めに、Copilot の画面を開き、共有の指示文を貼る
  2. 【AI】 Copilot が、募集人が見られる前月のメールと Teams のチャットから、顧客の暮らしの変化を根拠のやり取り付きで抜き出す
  3. 【AI】 変化の種類ごとに、見直しの話題の候補と、手続きの確認が要るかを付ける
  4. 人募集人が根拠のメールやチャットを開き、変化が本当に書かれているかを確かめる
  5. 人募集人が顧客管理システムで契約を確かめ、提案するかどうか、何を話すかを決める
  6. 人募集人が確かめた行を、営業の見直し提案先のリストに書き込む
  7. 人営業の管理者がリストを見て、営業会議で提案の予定と手続きの確認を聞く
各工程の詳しい説明を読む
  1. 募集人が月の初めに、前月に顧客とやり取りしたメールを Outlook で順に開く
  2. Teams のチャットで顧客とやり取りしたものも開き直す
  3. 家族・住まい・仕事の変化が書かれていたら、顧客名と内容を手元のメモに書く
  4. 顧客管理システムで、その顧客の契約を開き、見直しの話題になりそうかを考える
  5. 転居や車の買い替えの話があれば、住所や車両の変更の手続きが済んでいるかを確かめる
  6. 提案の予定と手続きの確認の結果を、営業会議の一覧に書き込む

(a)変化の話は用件のついでに書かれる。 件名は「事故の件」「書類送付のお願い」で、変化の話は本文の最後の1行にあります。 件名で探しても見つからず、1通ずつ開くしかありません。

(b)手続きが漏れる。 「引っ越しました」とメールに書かれていても、それが事故の連絡のメールの中なら、住所の変更の手続きとして扱われないことがあります。 満期の案内が旧住所に届いて初めて気づきます。

(c)読み返す時間が取れない。 300世帯分の1か月のやり取りは、多い月で数百通です。営業会議の前日に慌てて読み返し、目に付いたものだけを拾うことになります。

(d)提案が募集人の記憶に頼っている。 ある募集人は顧客の子どもの年齢まで覚えていて、進学の時期に学資や保障の話を持ちかけます。別の募集人は、顧客から言われるまで動きません。 同じ代理店の顧客なのに、受けられる提案が担当によって違います。

  1. 【人】 募集人が月の初めに、Copilot の画面を開き、共有の指示文を貼る
  2. 【AI】 Copilot が、募集人が見られる前月のメールと Teams のチャットから、顧客の暮らしの変化を根拠のやり取り付きで抜き出す
  3. 【AI】 変化の種類ごとに、見直しの話題の候補と、手続きの確認が要るかを付ける
  4. 【人】 募集人が根拠のメールやチャットを開き、変化が本当に書かれているかを確かめる
  5. 【人】 募集人が顧客管理システムで契約を確かめ、提案するかどうか、何を話すかを決める
  6. 【人】 募集人が確かめた行を、営業の見直し提案先のリストに書き込む
  7. 【人】 営業の管理者がリストを見て、営業会議で提案の予定と手続きの確認を聞く

4番目が、この設計の分かれ目です。 Copilot の出力は、変化の「兆し」の一覧です。「引っ越しを考えている」と「引っ越した」は違い、前者で住所の変更の手続きをしてはいけません。 根拠を開いて、書かれた言葉を自分の目で読みます。

5番目の判断は、必ず募集人がします。 出産の知らせがあった顧客でも、すでに十分な保障を持っているかもしれず、提案すること自体が顧客の意向に合わないこともあります。 一覧は、提案の材料であって、提案の指示ではありません。

02今回想定するシステム構成

構成図
前月の顧客とのやり取り(Outlook のメール、Teams のチャット)
   ▼【トリガー】月の初めの最初の営業日(募集人が自分で動かす)
Microsoft Copilot(Copilot Chat の職場のデータに基づく応答)
   │  共有の指示文:拾う変化の種類、拾わない情報、出力の表の形
   ├──▶ 変化の一覧(顧客・変化の種類・顧客の言葉・根拠のやり取り)
   ├──▶ 見直しの話題の候補
   └──▶ 手続きの確認が要るかもしれない先
   ▼【募集人が根拠を開いて確かめ、契約を見て判断する】
見直し提案先のリスト(SharePoint のリスト)
   ▼
営業の管理者が月次の営業会議で確認
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot。Copilot Chat の職場のデータに基づく応答)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
メール・チャットOutlook、Microsoft Teams-
一覧SharePoint のリスト(見直し提案先のリスト)-

新しく足すのは、募集人15名の Copilot のライセンスだけです。 Copilot は、利用者が権限を持つメール、チャット、文書、予定、会議などの組織のデータに基づいて応答を作るとされています。募集人が自分のメールとチャットを読ませるのに、新しいつなぎ込みは要りません。

共有のエージェントは作りません。 Agent Builder でメールを知識に加えることはできますが、メールの知識は範囲を絞れず、メールボックスのすべてが対象になり、エージェントを共有された人は作った人のメールを知識として使えないとされています。15名がそれぞれ自分のメールを読ませる形にするには、各自の Copilot の画面に共通の指示文を貼るのがいちばん素直です。

顧客管理システムとは、つなぎません。 契約の内容は募集人が自分で開いて確かめます。Copilot に契約の一覧まで渡すと、保障の内容と変化を組み合わせて、提案の中身までAIが決める形に近づきます。 この構成では、変化を拾うところまでをAIの仕事にします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎月の最初の営業日に、募集人が自分で動かします。 営業会議は毎月第2週に開くので、第1週のうちに一覧を作り、確かめ、リストに書き込むという日程にします。

自動で動かす仕組みは作りません。 Copilot が読むのは募集人本人のメールとチャットで、本人が自分の画面で頼むことが、この構成の前提です。 管理者がまとめて15名分を動かす形にすると、管理者が募集人のメールを読む形に近づきます。

動かす単位は、前月の1か月分です。 指示文の中で「前月1日から末日までのやり取り」と期間をはっきり書きます。期間を書かないと、Copilot は最近のやり取りを中心に探し、月の初めの分が抜けることがあります。 拾い漏れが気になる募集人は、前半と後半に分けて2回頼みます。

月の途中でも、顧客から変化を直接聞いた場合は、その場で見直し提案先のリストに書き込みます。 月の初めの振り返りは、聞き流してしまった変化を拾い直すためのものです。両方の経路で同じ顧客が出たら、リストの1行にまとめます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
顧客とのメール前月に送受信した顧客とのメールの本文と日付募集人の Outlook
顧客との Teams のチャット前月の顧客とのチャットの発言と日付募集人の Teams
共有の指示文拾う変化の種類、拾わない情報、出力の形営業部の共有のメモ
顧客の一覧(顧客番号と氏名)担当の顧客の顧客番号、氏名、メールアドレス募集人が顧客管理システムから出力(指示文と一緒に貼らない。照合に使う)

質を決めるのは、3行目の共有の指示文です。 15名がそれぞれ自分の言葉で頼むと、拾う変化の範囲も、出てくる表の形もばらばらになり、管理者がリストでまとめて見られません。 営業部で1つの指示文を決め、全員が同じ文を貼ります。

Teams のチャットで顧客とやり取りしていることが前提です。 社外の人とのチャットが自分の組織の Teams で行われていれば、Copilot の材料になります。どこまでのチャットが応答に使われるかは、組織の設定と契約で変わるため、最初の試行で確かめます(第8章)。

4行目の顧客の一覧は、Copilot に渡しません。 出力の顧客名とメールアドレスを、募集人が手元で顧客番号に引き当てるために使います。見直し提案先のリストには顧客番号で書き、氏名は顧客管理システムの側で見ます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
前月のメールとチャットCopilot Chat の職場のデータに基づく応答(Microsoft Graph 経由)変化を拾う
根拠のやり取り出力の引用からメールやチャットを開く変化が書かれているかを確かめる
契約の内容募集人が顧客管理システムで開く提案するかと話題を決める

Copilot は、組織のデータを Microsoft Graph を通じて取り、利用者が少なくとも閲覧の権限を持つものだけを示すとされています。募集人が頼めば募集人のメールとチャットが、管理者が頼めば管理者のメールとチャットが材料になります。他の募集人のメールが混ざることはありません。

応答には、根拠にしたやり取りへの引用が付きます。 Copilot とのやり取りの記録には、プロンプトと応答に加えて、応答の根拠にした情報への引用も保存されるとされています。募集人は引用からメールやチャットを開いて確かめます。

メールの件名では絞り込ませません。 第3章の(a)のとおり、変化の話は件名と関係のないメールに書かれます。指示文で「件名にかかわらず本文を見る」と書きます。 ただし、メールマガジンや保険会社からの一斉配信は対象から外させます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 顧客とのやり取りを、自分のメールボックスと Teams に集める … 個人の携帯電話のメッセージでやり取りしたものは、この構成に乗りません
  2. 共有の指示文の期間を書き換える … 「2026年9月1日から9月30日まで」のように、前月の日付を入れます
  3. 社内のやり取りを外す … 指示文で「顧客(社外の個人)とのやり取りだけ」と書きます。社内の募集人どうしの相談は対象にしません
  4. 保険会社からの一斉配信やメールマガジンを外す … 差出人の種類で外すよう指示文に書きます
  5. 顧客の一覧のメールアドレスを最新にする … 出力の顧客を顧客番号に引き当てるのに使います。顧客がメールアドレスを変えたら、顧客管理システムの側を直しておきます

1番目は、運用の決まりです。 顧客とのやり取りを会社のメールと Teams に集めることは、この構成のためというより、代理店の記録として本来そうあるべきことです。携帯電話のメッセージで受けた変化は、拾われないだけでなく、代理店の記録にも残りません。

2番目を毎月書き換えるのが面倒なら、指示文に「前月」と書くだけでも動きます。 ただし、月の初めの何日に頼むかで「前月」の解釈がぶれないよう、日付で書くほうが確かです。 営業部の共有のメモに、毎月の初めに管理者が日付を入れた版を置いておく運用にすると、15名が書き換える手間がなくなります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、顧客自身が書いた暮らしの変化を抜き出し、種類を付け、根拠のやり取りを示すことだけです。

拾う変化例話題の候補手続きの確認
結婚・離婚「入籍しました」受取人、死亡保障氏名・受取人の変更
出産「子どもが生まれました」死亡保障、学資-
子の進学・独立「娘が春から大学に」学資の満期、保障の見直し自動車保険の運転者の範囲
転居「新しい住所に送ってください」火災保険の所在地住所の変更
住宅の購入「家を買いました」火災保険・地震保険、団体信用生命保険との重なり-
転職・独立・退職「会社を辞めて独立しました」所得補償、事業の保険勤務先の変更
車の買い替え「来月、車を替えます」車両保険車両の入替え
させないこと理由
健康・病気・けが・介護の情報を抜き出す機微(センシティブ)情報。ガイドラインで取得・利用が限られる
書かれていない変化を推し量る「最近忙しい」から転職を推し量らない
提案するかどうかの判断顧客の意向と契約を見て募集人が決める
提案の文面の作成意向の把握の前に提案の文を作らない
社内の人の言動を評価する募集人の働きぶりの評価に使わない

1行目がいちばん大事です。 金融分野の個人情報保護のガイドラインは、保健医療に関する情報などを機微(センシティブ)情報とし、定められた場合を除いて取得・利用・第三者提供を行わないこととしています。 保険業の適切な業務運営のために本人の同意に基づいて必要な範囲で取得・利用する場合は除かれますが、見直しの提案先を探すためにメールから健康の情報を拾い集めることは、その範囲として扱いません。 「入院していました」「親の介護で」と書かれていても、一覧には「機微な情報を含むやり取りあり」とだけ出させ、中身は書かせません。

拾う変化を7種類に絞っているのは、確認の手間を一定に保つためです。 「旅行に行った」「趣味を始めた」まで拾わせると、一覧が長くなり、募集人は根拠を開かずに読み流すようになります。 保障の見直しか契約の手続きにつながる変化だけを拾わせ、種類を増やすのは、半年ほど運用して「拾われなかったが提案につながった変化」が記録にたまってからにします。

「変化を考えている」と「変化した」を分けさせます。 「引っ越しを考えている」は予定、「引っ越しました」は事実です。出力の列に「予定/事実」を設け、予定のものは手続きの確認の対象にしません。 予定の段階で住所の変更の手続きを始めると、顧客の確認を取らない変更になります。

Step6

指示内容を固定する

あなたは保険代理店の募集人を手伝う立場です。
2026年9月1日から9月30日までの、私と顧客(社外の個人)との
メールと Teams のチャットだけを見てください。
社内の人とのやり取り、保険会社からの一斉配信、メールマガジンは除いてください。
件名にかかわらず、本文を見てください。

【拾うもの】
顧客自身が書いた、次の変化だけを拾ってください。
結婚・離婚/出産/子の進学・独立/転居/住宅の購入/
転職・独立・退職/車の買い替え

【厳守事項】
- 顧客が書いた言葉をそのまま「顧客の言葉」に写してください。
  書かれていない変化を推し量らないでください。
- 予定(〜する予定、〜を考えている)と事実(〜した)を分けてください。
- 健康、病気、けが、入院、介護、障害に関わる内容は、
  中身を書かないでください。該当するやり取りがあれば、
  「機微な情報を含むやり取りあり」とだけ書いてください。
- 提案するべきかどうかは書かないでください。
- 各行に、根拠にしたメールまたはチャットの日付を付けてください。

【出力】
1. 変化の一覧(表):顧客名/メールアドレス/変化の種類/予定・事実/
   顧客の言葉/日付
2. 手続きの確認が要るかもしれない先(転居・車の買い替え・結婚・離婚・転職で、事実のもの)
3. 機微な情報を含むやり取りがあった顧客(顧客名と日付だけ)

この指示文は、営業部の共有のメモに置き、15名が同じ文を貼ります。 毎月の初めに、管理者が期間の日付を書き換えた版を置きます。

「顧客の言葉をそのまま写す」を入れているのは、確認を速くするためです。 「転居」とだけ出ても、根拠を開くまで本当かが分かりません。顧客の言葉が表にあれば、多くの行は表を読むだけで見当がつき、怪しい行だけを開けば済みます。

話題の候補は、指示文では作らせません。 変化の種類から話題の候補への対応は、第7章「AIに何をさせるのか」の表として営業部で決めておき、募集人が見て使います。 AIに話題を作らせると、契約を見ないままの提案の案が一覧に並びます。

Step7

出力形式を固定する

表の形で返させます。 出力は募集人が確かめてから見直し提案先のリストに写すので、読んで確かめやすい表を形にします。

【変化の一覧(2026年9月)】
| 顧客名 | 変化の種類 | 予定/事実 | 顧客の言葉 | 日付 |
| 〇〇様 | 転居 | 事実 | 書類は今月から新しい住所の方にお願いします | 9/12 |
| △△様 | 出産 | 事実 | おかげさまで先週無事に生まれました | 9/20 |
| □□様 | 車の買い替え | 予定 | 年内に車を替えようと思っていて | 9/25 |

【手続きの確認が要るかもしれない先】
| 顧客名 | 変化の種類 | 確認すること |
| 〇〇様 | 転居 | 住所の変更の手続き |

【機微な情報を含むやり取りがあった顧客】
| 顧客名 | 日付 |
| ◇◇様 | 9/8 |

募集人が確かめた後、見直し提案先のリストには次の列で書き込みます。 顧客番号、変化の種類、予定・事実、根拠の日付、提案の予定(する・しない・保留)、話題、手続きの確認の結果、担当の募集人、次の連絡の予定日です。リストには顧客の言葉を写しません。 顧客の言葉はメールにあり、リストに二重に残す必要がありません。

1つ目の理由は、「予定/事実」の列で手続きの誤りを防げることです。 手続きの確認の一覧は事実のものだけで作られるので、予定の段階の変化で手続きを始める経路がなくなります。

2つ目は、機微な情報を含むやり取りが独立した一覧になることです。 中身は書かれず、顧客名と日付だけが出ます。募集人が、そのやり取りへの対応(給付金の請求の案内など)を忘れていないかを確かめるための一覧です。見直しの提案先のリストには載せません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Outlook・TeamsCopilot が Microsoft Graph を通じて読む前月のやり取りを材料にする
見直し提案先のリスト募集人が確かめた行を書き込む顧客番号・変化・提案の予定
顧客管理システム募集人が開く契約の確認と手続き

Copilot から顧客管理システムへは何も書き込みません。 住所の変更の手続きは、これまでどおり募集人が顧客に確かめてから行います。

見直し提案先のリストの権限は、営業部に絞ります。 募集人は自分の行を書き込み、管理者は全員の行を見ます。リストには顧客番号と変化の種類だけが並び、顧客の言葉や機微な情報は載りません。

Step9

人が確認する

  1. 顧客の言葉を読む … 表の「顧客の言葉」で、変化が本当に書かれているかの見当をつけます
  2. 怪しい行の根拠を開く … 顧客の言葉があいまいな行、予定か事実かが分かれる行は、メールやチャットを開きます
  3. 手続きの確認の一覧を全件確かめる … 顧客管理システムで、住所や車両の変更が済んでいるかを見ます
  4. 提案するかを決める … 契約を見て、提案する・しない・保留を決めます
  5. リストに書き込む … 確かめた行だけを顧客番号で書き込みます

3番目は全件です。 手続きの漏れは、顧客に書類が届かない、事故のときに補償の確認に手間がかかる、といった形で顧客の不利益になります。見直しの提案は保留できますが、手続きの確認は保留しません。

4番目で「保留」とした行は、次の連絡のついでに顧客の意向を聞く行です。 たとえば出産の知らせには、まずお祝いを伝え、「ご家族が増えたので、保障を一度確かめてみませんか」と聞くところまでにします。顧客が望まなければ、提案はしないと記録します。 一覧は、顧客の意向を聞くきっかけであって、提案を押しつける根拠ではありません。

目標は、1回あたり40分です。 顧客の言葉を読むのに5分、根拠を開いて確かめるのに5分、手続きの確認に5分、契約を見て提案を決めるのに20分、リストへの書き込みに5分という配分です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
社内のやり取りや一斉配信が混ざる指示文の除外の書き方を見直す。該当の行は採らない
同じ顧客が複数の変化で出るリストでは1顧客1行にまとめ、変化の種類を並べる
顧客名の表記が顧客の一覧と合わないメールアドレスで引き当てる。引き当てられなければ根拠を開く
家族の代理でやり取りしている誰の変化かを根拠で確かめる。契約者と被保険者を取り違えない
健康の情報の中身が一覧に書かれた行を採らず、指示文を見直す。その出力を営業部の共有の場所に貼らない
予定のものが翌月に事実になる翌月の一覧で事実として出たときに手続きを確かめる
前月のやり取りが多すぎて拾い漏れる前半と後半に分けて2回頼む
顧客が他の代理店の契約の話をしている拾ってよいが、提案は顧客の意向を確かめてから

4行目の家族の代理は、保険代理店ではよくあります。 契約者の妻が手続きのメールを送ってきて、その中で「主人が転職しまして」と書く場合です。変化したのは契約者で、書いたのは家族です。 出力の顧客名は差出人の名前になりがちなので、根拠を開いて誰の変化かを確かめ、契約者の顧客番号で記録します。

5行目は、起きたらその月のうちに指示文を直します。 指示文で禁じていても、顧客が書いた文に健康と住まいの話が混ざっていると、一緒に写してしまうことがあります。 起きた例を管理者に知らせ、指示文の禁止の書き方を強めます。

Step11

記録を残す

  • 毎月の共有の指示文の版(期間の日付と、変更の理由)
  • 見直し提案先のリストの行と、その後の提案の結果(提案した・見送った・顧客が断った)
  • 手続きの確認の結果
  • 採らなかった行の数と理由 … 社内のやり取り、推し量り、予定と事実の取り違え、機微な情報の混入
  • Copilot とのやり取りの記録(組織の保持の設定に従う)

4つ目の数は、管理者が月に一度集めます。 理由ごとの数が分かれば、指示文のどこを直すかが決まります。 機微な情報の混入が1件でもあれば、最優先で直します。

2つ目の提案の結果は、話題の候補の表を直す材料です。 「住宅の購入」で火災保険の話をしても、ほとんどが金融機関の提携の保険にすでに入っていた、という結果が続けば、表の話題を地震保険の確認に替えるといった直しができます。 AIの指示文ではなく、営業部の表を直すところがこの構成の改善の場所です。

Copilot とのやり取りの記録は、管理者が Microsoft Purview で保持の設定をできるとされています。顧客のメールの内容を含むやり取りなので、保存の期間は代理店の個人データの保存の決まりにあわせます。

04実装レベルの3段階

最小構成:募集人2名が指示文の案を貼り、人の読み返しと並べる / 変化の抜き出し
半自動化:上記+15名が毎月同じ指示文を使い、確かめた行を見直し提案先のリストに書き込む。管理者がリストで営業会議を回す / 変化の抜き出し、手続きの確認の一覧、管理者の集計
本格構成:上記+リストの次の連絡の予定日をワークフローで募集人に知らせ、提案の結果を月次で集計する / フォローの期日の管理と結果の集計まで

最小構成では、15名に広がらないので、管理者の集計は変わりません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1回120分が40分程度になり、この段階が本記事の想定です。 読み返しの60分がなくなり、募集人の時間は契約を見て提案を決めることに使われます。 本格構成で、変化を拾う部分まで自動にすることは考えません。 管理者が15名のメールをまとめて読ませる形は、本人が自分のやり取りを振り返るという前提を崩します。 自動にするのは、確かめた後のリストの期日の管理だけです。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
15 名
月間件数
15 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
40 分
現在  15件 × 120分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 15件 × 40分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
20h
削減率
67%
年間削減時間
240h
年間金額換算(時間単価3,000円)
72万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 生命保険と損害保険を扱う乗合代理店で、募集人が顧客と日常的にメールや Teams のチャットでやり取りしており、顧客の暮らしの変化がそのやり取りの中に埋もれている場合。募集人が10名を超え、営業の管理者が「見直しの提案につながる話を拾えているか」を毎月確かめたい場合。Microsoft 365 を使い、募集人が Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot)を使える場合。
向いていない
  1. 顧客とのやり取りが電話と対面だけで、メールやチャットにほとんど残らない場合。顧客が数十名で、募集人が全員の近況を覚えていられる場合。顧客とのやり取りを個人の携帯電話のメッセージで行っている場合。なお、どの顧客に何を提案するか、提案が顧客の意向に合っているかは募集人と管理者が判断することで、この構成は変化の兆しを拾うだけです。

07最小構成で試す方法

  1. 募集人2名を選ぶ(顧客とのメールが多い人と、Teams のチャットも使っている人)
  2. 前月の分について、共有の指示文の案を Copilot に貼って一覧を作る
  3. 同じ前月の分を、募集人がこれまでどおり読み返して変化を拾う
  4. 2つの一覧を並べ、拾い漏れ、推し量り、予定と事実の取り違え、機微な情報の混入を数える
  5. Teams のチャットのやり取りが材料に入っているかを確かめる

5番目を必ず確かめてください。 社外の人とのチャットがどこまで応答に使われるかは、組織の設定によって変わります。チャットが拾われていなければ、その分を前提から外し、メールだけの構成で始めます。

出てきた内容判断
人が拾った変化をほぼ拾い、余計な行が少ない15名に広げる
書かれていない変化を推し量った指示文の厳守事項を強める。構成は有効
健康の情報の中身が書かれた指示文を直すまで広げない
拾い漏れが多い期間を半月に分けて頼む

3行目が1件でも出たら、広げるのを止めてください。 指示文を直し、同じ月の分でもう一度試して、出なくなったことを確かめてから次に進みます。

試す2名は、顧客の言葉づかいの違う人を選ぶと差が見えます。 法人の経営者の顧客が多い募集人と、子育て世帯の顧客が多い募集人では、変化の書かれ方が違います。前者は「事務所を移転しました」「代表を交代しました」、後者は「入園しました」「パートを始めました」です。2人で拾い漏れの傾向が違えば、指示文の変化の例を足す場所が分かります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
健康・介護の情報が一覧に書かれる指示文で中身を書かせず、「含むやり取りあり」とだけ出させる
書かれていない変化を推し量る顧客の言葉をそのまま写させる
予定で手続きを始めてしまう「予定/事実」の列を設け、事実のものだけを手続きの確認に回す
期間の初めのやり取りが抜ける期間を日付で書き、多ければ半月に分ける
社内のやり取りが混ざる顧客(社外の個人)とのやり取りだけ、と書く
Teams のチャットが材料に入らない最初の試行で確かめ、入らなければメールだけで始める
共有のエージェントで全員のメールを読ませようとするメールの知識は作った人のものだけ。 各自が指示文を貼る
一覧を見て機械的に提案する契約を見て募集人が決める。話題の候補は営業部の表で持つ

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、顧客が書いた言葉の扱いを誤ったところから起きます。顧客の言葉をそのまま写させ、予定と事実を分け、機微な情報は中身を書かせない。 この3つを指示文に入れれば、残る誤りは根拠を開けば分かるものになります。

4行目から6行目は、指示文と試行で片付く問題です。 期間の書き方と除外の書き方を決め、Teams のチャットが入るかを最初の月に確かめれば、以後は毎月同じ文で動きます。ここで迷うのは最初の1か月だけです。

7行目は、作る前に気づいておきたい点です。 共有のエージェントにすれば指示文を配る手間が省けるように見えますが、メールの知識は作った人のメールボックスに限られます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客とのメールとチャット、顧客の家族・住まい・仕事の変化、契約の手続きの状況です。メールには、健康や事故の内容など、扱いに特に注意が要る情報も含まれます。

  1. 機微な情報を拾い集めない … 金融分野の個人情報保護のガイドラインは、要配慮個人情報と、労働組合への加盟、門地、本籍地、保健医療、性生活に関する情報を機微(センシティブ)情報とし、定められた場合を除いて取得・利用・第三者提供を行わないこととしています。 見直しの提案先を探すために、メールから健康の情報を集めないでください
  2. 利用目的の範囲を確かめる … 同じガイドラインは、利用目的を、提供する金融商品やサービスを示して特定することが望ましいとし、例として「保険の募集」を挙げています。顧客とのやり取りを見直しの提案に使うことが、代理店が公表している利用目的の範囲に入っているかを、個人情報の取扱いの責任者と確かめてください
  3. 本人が自分のやり取りだけを読ませる … Copilot は、利用者が少なくとも閲覧の権限を持つ組織のデータだけを示すとされています。管理者が募集人のメールボックスへの権限を持っていると、管理者の Copilot に募集人のやり取りが出る可能性があります。メールボックスの委任の設定を見直してください
  4. 見直し提案先のリストに顧客の言葉を写さない … リストは顧客番号と変化の種類だけにします
  5. 出力をそのまま信じない … Microsoft は、生成AIの応答が100%事実であることは保証されないとし、ほかの人に送る前に利用者が判断して見直すよう求めています

Copilot に送ったプロンプトと応答、Microsoft Graph を通じて扱うデータは、基盤のモデルの学習に使われないとされています。

誤りが起きた場合のリスクは、顧客の信頼に直結します。 予定の段階の転居で住所を変えれば書類が届かなくなり、健康の話を拾って提案に使えば顧客は二度と相談しなくなります。予定と事実を分けること、機微な情報を拾わないことの2つは、設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:拾う変化と拾わない情報を決める

営業部と個人情報の取扱いの責任者で、拾う変化の7種類、拾わない機微な情報、予定と事実の区別を決めます。変化の種類ごとの話題の候補の表もこのときに作ります。

2週目:共有の指示文を作り、2名で試す

第7章の指示文の例から始め、募集人2名の前月の分で試します。人の読み返しと並べ、拾い漏れと推し量りと機微な情報の混入を数えます。 Teams のチャットが材料に入っているかも確かめます。

3週目:見直し提案先のリストを作る

SharePoint のリストを作り、顧客番号、変化の種類、予定・事実、根拠の日付、提案の予定、話題、手続きの確認の結果、担当、次の連絡の予定日の列を用意します。権限を営業部に絞ります。

4週目:営業会議の進め方を変える

管理者が、会議で募集人ごとに口頭で聞いていたことを、リストの行を見ながら聞く形に変えます。

2か月目: 15名全員が毎月の初めに指示文を使い、採らなかった行の数と理由を管理者が集めます。3か月目以降: 1回120分が何分になったかを実測し、手続きの漏れが見つかった件数を数えます。どの募集人の顧客でも同じ変化が同じ月に拾われるようになった時点で、この構成は定着です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Microsoft 365 Copilot が Microsoft Copilot に改称されたこと。Copilot が利用者の権限のあるメール・チャット・文書・予定・会議などの組織のデータに基づいて応答を作ること。利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを示すこと。プロンプトと応答、Microsoft Graph を通じて扱うデータが基盤のモデルの学習に使われないこと。やり取りの記録に応答の根拠への引用が含まれ、管理者が Microsoft Purview で保持を設定できること。生成AIの応答が100%事実とは保証されないことMicrosoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot2026-10-07
Agent Builder でメールを知識に加えると範囲を絞れずメールボックスのすべてが対象になること。エージェントを共有された利用者は作った人のメールを知識として使えないことMicrosoft Learn: Add knowledge sources to an agent in Agent Builder2026-10-07
金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの掲載ページ(令和6年3月の版)個人情報保護委員会: 金融分野における個人情報保護に関するガイドライン2026-10-07
第5条で、要配慮個人情報と、労働組合への加盟・門地・本籍地・保健医療・性生活に関する情報を機微(センシティブ)情報とし、定められた場合を除いて取得・利用・第三者提供を行わないこととしていること。除かれる場合に、保険業その他金融分野の事業の適切な業務運営を確保する必要性から、本人の同意に基づき業務遂行上必要な範囲で取得・利用・第三者提供する場合があること。第2条で、利用目的を提供する金融商品やサービスを示して特定することが望ましいとし、例に「保険の募集」があること個人情報保護委員会: 金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(PDF)2026-10-07

どの変化を拾い、どの顧客に何を提案するか、機微な情報をどう扱うかは、代理店の営業の責任者と個人情報の取扱いの責任者が決めてください。 本記事は Microsoft と個人情報保護委員会の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0812)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次