保険会社で約款・特約を改定したときに、パンフレット・重要事項説明書・ご契約のしおりの記載が改定後の約款と食い違っていないかを校正する
約款・特約を改定したとき、パンフレット・契約概要と注意喚起情報・ご契約のしおりの記載を改定後の約款と照らし、食い違いと旧い記載の残りを条文の根拠付きで指摘します。審査担当は全文の読み合わせから、指摘を確かめる作業に移ります。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Power Automate
- 対象業界
- 保険
- 対象部門
- 法務
- 対象業務
- 内容確認・チェック/比較検討
- 主な課題
- 人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 校正
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 商品部が約款・特約の改定案と新旧対照表を作り、影響する募集文書の一覧を付けて審査を依頼する
- 制作会社が、パンフレット・契約概要と注意喚起情報・しおりの改定原稿を PDF で届ける
- 審査担当が新旧対照表を読み、変更点をメモにする
- 文書ごとに原稿を頭から読み、変更点に関係する記載を探して、改定後の約款の条文と照らす
- 給付の金額・日数・年齢・回数などの数字を、約款と1つずつ見比べる
- 食い違いと気になる表現を指摘の一覧にまとめ、商品部に返す
- 商品部と制作会社が直した原稿を、もう一度審査する
- 人商品部が改定後の約款・新旧対照表・影響する文書の原稿を、審査の受付のフォルダに入れる
- 自動中継の処理が、新旧対照表を変更点の一覧にし、約款を条文ごとに、原稿を記載の単位(見出し・本文・注記・表のセル)に分ける
- 自動変更点ごとに、各文書から関係しそうな記載の候補を語句と条文番号で拾う
- 自動Azure OpenAI が、変更点と記載の候補を改定後の約款の条文と照らし、食い違い・旧い記載・制限条件の書き漏れを、文書と約款の両方の引用とともに返す
- 自動中継の処理が、引用が原文に一字一句あるかを照合し、数字は商品の諸元表とプログラムで見比べる
- 人審査担当が指摘の一覧を、引用と並べて確かめ、採る・採らないを決め、表現の指摘を足す
- 人指摘を商品部に返し、直した原稿は同じ流れでもう一度確かめる
各工程の詳しい説明を読む
- 商品部が約款・特約の改定案と新旧対照表を作り、影響する募集文書の一覧を付けて審査を依頼する
- 制作会社が、パンフレット・契約概要と注意喚起情報・しおりの改定原稿を PDF で届ける
- 審査担当が新旧対照表を読み、変更点をメモにする
- 文書ごとに原稿を頭から読み、変更点に関係する記載を探して、改定後の約款の条文と照らす
- 給付の金額・日数・年齢・回数などの数字を、約款と1つずつ見比べる
- 食い違いと気になる表現を指摘の一覧にまとめ、商品部に返す
- 商品部と制作会社が直した原稿を、もう一度審査する
(a)変更点から離れた場所の旧い記載が残る。 変更点の近くは誰でも直しますが、パンフレットの比較の表の注記、しおりの「よくあるご質問」、契約概要の保険料の例の欄に旧い条件が残ります。直したつもりの文書の中で、1か所だけが古いという形です。
(b)制限の条件の書き漏れ。 給付に「契約後一定の期間は対象外」「年齢によって減額」のような条件が付いたのに、パンフレットの表では給付の金額だけが大きく書かれ、条件が抜けていることがあります。 監督指針の同じ項は、こうした制限条件が表示されていない場合などに、実際のものよりも著しく優良であるとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある、としています。
(c)全文の読み合わせに時間がかかる。 1件の改定で影響する文書は数本から十数本あり、しおりは数十ページあります。 変更点の数だけ、全文を探し直します。
(d)観点が人によって違う。 経験のある担当は「この改定ならしおりの手続きの章も変わるはず」と当たりを付けられますが、経験の浅い担当は依頼の一覧に載った文書しか見ません。
- 【人】 商品部が改定後の約款・新旧対照表・影響する文書の原稿を、審査の受付のフォルダに入れる
- 【自動】 中継の処理が、新旧対照表を変更点の一覧にし、約款を条文ごとに、原稿を記載の単位(見出し・本文・注記・表のセル)に分ける
- 【自動】 変更点ごとに、各文書から関係しそうな記載の候補を語句と条文番号で拾う
- 【自動】 Azure OpenAI が、変更点と記載の候補を改定後の約款の条文と照らし、食い違い・旧い記載・制限条件の書き漏れを、文書と約款の両方の引用とともに返す
- 【自動】 中継の処理が、引用が原文に一字一句あるかを照合し、数字は商品の諸元表とプログラムで見比べる
- 【人】 審査担当が指摘の一覧を、引用と並べて確かめ、採る・採らないを決め、表現の指摘を足す
- 【人】 指摘を商品部に返し、直した原稿は同じ流れでもう一度確かめる
6番目が、この設計の分かれ目です。 指摘を採るかどうか、何を表現の問題として足すかは審査担当が決めます。AIの指摘が無いことは、問題が無いことを意味しません。 審査担当は、変更点ごとに「どの文書のどの記載を見たか」の一覧も確かめます。
5番目で数字をプログラムに任せるのも、意図してのことです。 給付の金額や日数は、約款の条文の中では文章で書かれ、パンフレットでは表の数字になります。数字の見比べは、商品部が持つ諸元表という1つの正解の表に寄せたほうが確実です。
02今回想定するシステム構成
【入力】改定後の約款・新旧対照表・募集文書の原稿(PDF) ▼【トリガー】審査の受付フォルダへの登録 中継の処理(Azure Functions) ├── 新旧対照表 → 変更点の一覧 ├── 約款 → 条文ごと/原稿 → 記載の単位(見出し・本文・注記・表のセル) ├── 変更点ごとに、関係しそうな記載の候補を拾う ▼ Azure OpenAI(Microsoft Foundry。構造化出力) │ 変更点 × 記載の候補 × 改定後の条文 → 指摘(種類・引用・根拠の条文) ▼ 中継の処理 ── 引用の照合/数字と諸元表の見比べ/見た記載の一覧 ▼ 【人】審査担当が指摘を確かめ、採否と表現の指摘を足す → 商品部へ
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 生成AI | Azure OpenAI(Microsoft Foundry) | Claude API、Gemini API |
| 連携 | Azure Functions(中継の処理。分割、候補の拾い出し、照合、数字の見比べ) | Power Automate |
| 正解の表 | 商品部の諸元表(給付の金額・日数・年齢・回数・期間) | ― |
| 記録 | 既存の審査の受付と記録の台帳 | ― |
審査の台帳は、新しく足すものではありません。 指摘の一覧と採否はこれまでどおり台帳に残し、この構成は指摘の下書きと、変更点ごとに見た記載の一覧を作るところまでを受け持ちます。
生成AIは、Azure OpenAI の構造化出力で呼びます。 Microsoft Learn では、構造化出力を使うとモデルは推論 API 呼び出しの一部として指定した JSON スキーマの定義に従うとされ、有効な JSON は保証するがスキーマへの厳密な準拠はできなかった以前の JSON モードとは違うと説明されています。Chat Completions API では response_format に、Responses API では text.format にスキーマを書きます。指摘の種類を列挙型で縛り、引用の欄を必ず持たせるために使います。
発売前の商品の情報を扱うので、データの扱いを確かめます。 Microsoft Learn の「データ、プライバシー、セキュリティ」のページでは、プロンプトと出力は他のお客様には利用できず、OpenAI には提供されず、お客様の許可または指示なしに生成 AI 基盤モデルのトレーニングに使われないとされ、モデルはステートレスで、プロンプトや入力候補はモデルに格納されないとも書かれています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
商品部が、審査の受付フォルダに1件の改定の資料一式を登録したときに動きます。 一式は、改定後の約款、新旧対照表、影響する文書の原稿です。一式がそろったことを示すため、受付票のファイルを最後に置いた時点で動かします。 原稿が1本ずつ届くたびに動かすと、文書の間の食い違いを見る前に指摘が出てしまいます。
直した原稿が届いたときも、同じ受付で動かします。 2回目は、前の回の指摘のうち採ったものが直っているかと、直したことで別の場所に新しい食い違いが出ていないかを見ます。前の回の指摘の一覧を一緒に渡します。
改定と関係なく、年に一度、全商品の文書を約款と照らす棚卸しにも使えます。 ただしこれは月々の審査とは別の扱いにし、工数の試算にも入れていません。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 改定後の約款 | 主契約と特約の条文(条番号・項番号付き)、別表 | 商品部 |
| 新旧対照表 | 改定前と改定後の条文の対照、改定の理由 | 商品部 |
| 募集文書の原稿 | パンフレット、契約概要と注意喚起情報、ご契約のしおり(PDF。文字を取り出せるもの) | 制作会社から商品部経由 |
| 諸元表 | 給付の金額・日数・年齢の範囲・回数・保険期間・不担保の期間などの数字 | 商品部 |
| 審査の観点の一覧 | 制限条件として必ず併記させる事項、使ってはいけない表現 | コンプライアンス統括部 |
| 前の回の指摘 | 直した原稿の再審査のときだけ | 審査の台帳 |
質を決めるのは、新旧対照表と諸元表です。 新旧対照表に変わった条文が漏れていれば、その変更点からは文書を見に行きません。諸元表の数字が約款と合っていなければ、数字の見比べが間違った正解で行われます。 どちらも商品部が作るものなので、審査を依頼する前に商品部の中で確かめる手順を決めます。
審査の観点の一覧は、いまの審査担当の経験を文字にしたものです。 例えば「給付の金額を表に書くときは、減額の条件と不担保の期間を同じ表の中に書く」のような取り決めです。監督指針が例に挙げる制限条件(契約後一定の不担保期間、年齢・入院日数・対象疾病等による減額や消滅、先進医療の対象外となる場合)を、まず一覧の最初に入れます。
データの取得方法を決める
受付フォルダから中継の処理(Azure Functions)がファイルを受け取り、約款は Word から条文の単位で、原稿は PDF から文字と位置を取り出します。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 変更点の一覧 | 新旧対照表の行 | 照らし合わせの起点 |
| 改定後の条文 | 約款を条・項・号で分けたもの | 指摘の根拠。引用の照合の相手 |
| 記載の単位 | 原稿の見出し・本文・注記・表のセル | 照らす相手。ページと位置を持たせる |
| 数字の表 | 諸元表 | 原稿の中の数字との見比べ |
原稿の文字は、制作会社から受け取った PDF から取り出します。 文字が画像になっていて取り出せないページは、制作会社に文字を含む PDF を出し直してもらいます。 画像から読み取る仕組みを足すより、元データを受け取るほうが確実で、読み取りの誤りが指摘の誤りになることもありません。
記載の単位には、ページと位置を付けます。 「パンフレット p.6 表2 3行目の注記」のように、審査担当が原稿の該当の場所をすぐ開けるようにするためです。 表は行と列の位置まで持たせます。
AIへ渡す前に整形する
- 変更点の一覧化 … 新旧対照表の1行を1つの変更点にし、変わった語句、条文番号、変更の種類(給付の条件、支払わない場合、保険期間、告知、手続き、用語の整備)を付けます
- 約款の分割 … 条・項・号の単位に分け、条文番号を付けます。別表は表のまま持ちます
- 原稿の分割 … 見出し・本文・注記・表のセルに分け、ページと位置を付けます
- 候補の拾い出し … 変更点ごとに、変わった語句・その言い換え(「入院給付金」と「入院一時金」など、用語の対応表から)・条文番号を含む記載を、全文書から拾います
- 数字の抽出 … 原稿の中の金額・日数・年齢・回数・期間を、単位と一緒に取り出します
- 用語の対応表の適用 … 約款の用語と募集文書のやさしい言い換えの対応(「責任開始期」と「保障の始まる日」など)を、商品部の用語の表から引きます
4番目を軽く見ないでください。 変わった語句そのものだけで拾うと、パンフレットで言い換えた記載が候補から漏れます。 約款では「疾病入院給付金」、パンフレットでは「病気で入院したとき」と書かれているのが普通で、言い換えの対応表が、拾い出しの網の目の細かさを決めます。
表は、セルを単独で渡しません。 表のセルの「10日」だけでは何の日数か分からないので、行の見出しと列の見出しを添えて「入院給付金/支払限度の日数:10日」のような形にして渡します。 パンフレットの給付の説明の多くは表で書かれているため、この添え方で拾い出しと判定の精度が変わります。
候補は広めに拾い、絞るのはAIに任せます。 関係の無い記載が候補に入っても、AIが「関係なし」と返せば済みますが、候補から漏れた記載は誰にも見られません。 拾った候補と、AIが関係ありとした記載は、どちらも一覧に残します。
AIに処理させる
| 指摘の種類 | させること |
|---|---|
conflict(食い違い) | 記載の内容が改定後の条文と違う。給付の条件、支払わない場合、期間などの違いを指摘する |
outdated(旧い記載) | 記載が改定前の条文のとおりになっている。新旧対照表の改定前の文言と照らして判定する |
missing_condition(制限条件の書き漏れ) | 条文にある制限の条件が、その給付を書いた記載の近くに書かれていない |
term_mismatch(用語の不一致) | 用語の対応表と違う言い換えが使われている |
unclear(判断できない) | 条文の解釈が要る、記載が抽象的で照らせない |
not_related(関係なし) | 候補として拾われたが、この変更点とは関係が無い |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 直した文言の作成 | 表現は商品部とコンプライアンス担当部門が決める |
| 表示が適正かどうかの結論 | 監督指針に照らした判断は審査の仕事 |
| 約款の解釈 | 解釈が分かれる条文は unclear で人に回す |
| 数字の見比べ | 諸元表とプログラムで行う。AIに数字を照らさせない |
| 引用の言い換え・要約 | 引用は原文のまま。照合で一字一句確かめる |
3行目がいちばん起きやすい失敗です。 「疾病の定義」のような条文で、パンフレットの記載が約款より広く読めるか狭く読めるかを、AIは自信を持って判定してしまいます。解釈が分かれうる条文は、unclear とさせて審査担当に回します。 解釈は、商品部・支払管理部門・コンプライアンス担当部門で決めることです。監督指針も、商品の開発・改定にあたって約款解釈を関連部門で十分に検討し、その結果がパンフレット等に適切に反映されているかに触れています。
missing_condition の「近く」は、プログラムが決めて渡します。 給付の金額を書いた記載と同じ表、同じページ、同じ見出しの下にある記載を「周辺の記載」としてまとめて渡し、その中に制限の条件が書かれているかを見させます。 AIに「近いかどうか」を判断させると、10ページ先の注記を見つけて「書かれている」と返すことがあるからです。監督指針も、条件が保障内容を強調した表示から離れたところに表示されている場合などに見落とされるおそれがあるとしています。
not_related を返させるのは、見た記載の一覧を残すためです。 関係なしと判定した記載も、変更点ごとに「見た」ことが分かります。審査担当は、関係なしとされた記載を流し見て、見落としが無いかを確かめられます。
指示内容を固定する
あなたは保険会社のコンプライアンス担当部門で、募集文書の記載が
改定後の約款と合っているかを確かめる担当です。
渡された変更点・改定後の条文・記載の候補だけを根拠にしてください。
【確かめること】
変更点ごとに、記載の候補を1つずつ見て、次のどれかに分けてください。
- conflict:記載の内容が改定後の条文と違う
- outdated:記載が改定前の文言のとおりになっている
- missing_condition:条文にある制限の条件(不担保の期間、減額、対象外となる場合など)が、
その給付を書いた記載に併記されていない
- term_mismatch:用語の対応表と違う言い換えになっている
- unclear:条文の解釈が要る、または記載が抽象的で照らせない
- not_related:この変更点とは関係が無い
【厳守事項】
- doc_quote には記載の候補の文を、clause_quote には改定後の条文の文を、
一字一句そのまま写してください。要約・言い換えをしないでください。
- 条文の解釈が分かれうるときは、判定せず unclear にしてください。
- 直した文言を書かないでください。表示が適正かどうかの結論を書かないでください。
- 金額・日数・年齢などの数字を見比べないでください。数字は別の仕組みで確かめます。
- reason には、何がどう違うかを1〜2文で書いてください。
【変更点】{change}
【改定後の条文】{clauses}
【改定前の文言(新旧対照表)】{old_text}
【用語の対応表】{terms}
【審査の観点の一覧】{checklist}
【記載の候補(文書・ページ・位置付き)】{candidates}
「一字一句そのまま写してください」を書かないと、引用を要約してきます。 要約された引用は照合で原文に当たらず、正しい指摘まで落ちることになります。 逆に、指示どおりに写していれば、照合で当たらない引用は作られた引用だと分かります。
「数字を見比べないでください」を書くのは、二重の判定を避けるためです。 AIにも数字を見させると、諸元表との見比べと違う結果を返すことがあり、どちらを信じるかで審査担当が迷います。 数字は1つの仕組みにだけ任せます。
出力形式を固定する
変更点ごとに、次の形のJSONで受け取ります。
{
"change_id": "C-03",
"findings": [
{ "doc": "pamphlet | overview | caution | guidebook",
"location": "p.6 表2 3行目 注記",
"doc_quote": "",
"clause_ref": "第12条第2項",
"clause_quote": "",
"type": "conflict | outdated | missing_condition | term_mismatch | unclear | not_related",
"reason": "" }
]
}
1つ目の理由は、type を列挙型で縛れることです。 指摘の種類が決まっていれば、conflict と outdated を先に、unclear を次に、not_related を最後に、という並べ方を機械でできます。審査担当は上から読めば済みます。
2つ目は、doc_quote と clause_quote を必須にできることです。 Microsoft Learn では、構造化出力ではすべてのフィールドを必須にする必要があり、オブジェクトには常に additionalProperties: false を設定するとされています。引用の無い指摘は形として返ってこないので、照合の対象から漏れません。
3つ目は、スキーマで縛れない検査を先に決めておけることです。 文字列の pattern などはサポートされていないため、条文番号の書き方や引用の中身は、中継の処理で確かめます。
| 項目 | 中継の処理での検査 |
|---|---|
doc_quote | 記載の候補の文に一字一句あるか。無ければ指摘を落として記録 |
clause_quote | 改定後の条文に一字一句あるか。無ければ指摘を落として記録 |
clause_ref | 約款の条文番号として実在するか |
location | 渡した記載の候補の位置と一致するか |
| 候補の数と返った数 | 渡した候補が全部、何かの type で返っているか |
最後の行が大事です。 返ってこなかった候補は、AIが見落としたか、出力の途中で切れたものです。その候補だけを、もう一度渡して判定させます。
数字の見比べの結果は、同じ一覧に別の種類として足します。 原稿の数字が諸元表と合わなければ number_mismatch として、ページと位置、原稿の数字、諸元表の数字を並べます。 これはAIの出力ではなく、プログラムの出力です。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 審査の受付フォルダ | 受付票の登録の検知 | 改定の資料一式を受け取る |
| Azure Functions | 中継の処理 | 分割、候補の拾い出し、照合、数字の見比べ |
| Azure OpenAI | Chat Completions API(構造化出力) | 変更点ごとの指摘 |
| 諸元表・用語の表 | 読み取り | 数字の正解と、言い換えの対応 |
| 審査の台帳 | 指摘の一覧の書き出し | 審査担当が採否を付ける |
審査の台帳には、指摘の下書きとして書き出します。 採否の欄は空のまま渡し、審査担当が採ったものだけが商品部への指摘になります。 商品部や制作会社に、AIの指摘が直接届く経路は作りません。
人が確認する
conflictとoutdatedを先に見る … 引用と根拠の条文を並べて読み、採るかどうかを決めますmissing_conditionを見る … 制限の条件がその記載の近く(同じ表、同じページ)に本当に無いかを、原稿の該当の場所を開いて確かめますunclearを商品部と相談する … 解釈が要るものは、商品部・支払管理部門と確かめますnot_relatedを流し見る … 関係なしとされた記載の中に、関係のあるものが無いかを見ます- 見た記載の一覧を確かめる … 変更点ごとに、どの文書のどの記載を見たかを確かめ、一覧に1つも記載が無い文書があれば、その文書を自分で開きます
- 表現の指摘を足す … 分かりやすさ、強調の仕方、文字の大きさのような表現の問題は、審査担当が足します
再審査のときは、前の回に採った指摘から見ます。 直っているかを引用で確かめたあと、直した段落の周りに新しい指摘が出ていないかを見ます。文言を直すと、同じページの別の記載との言い回しがずれることがあるからです。
1件35分を目安にします。 指摘を引用と並べて確かめ、制限の条件の場所を原稿で開き、見た記載の一覧を確かめる時間です。5番目を省かないでください。 AIの指摘が無い文書は、問題が無いのではなく、候補が拾えていないだけかもしれません。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 原稿の文字が画像で取り出せない | そのページを処理せず、制作会社に文字を含む PDF を求める |
| 新旧対照表に無い変更が原稿にある | 原稿と前の版の原稿の差分を取り、新旧対照表に無い変更として審査担当に知らせる |
| 引用が原文に当たらない | 指摘を落とし、落とした件数を記録。多ければ指示を見直す |
| 返ってこない候補がある | その候補だけで再度判定させる。2回目も返らなければ審査担当に回す |
| 1つの変更点に候補が多すぎる | 文書ごとに分けて判定させる |
| 約款の別表の変更(給付の倍率の表など) | 表は諸元表との数字の見比べで扱い、AIには表の見出しの変更だけを見させる |
| Azure OpenAI の呼び出しに失敗した | 受付を保留にし、審査担当に知らせる。これまでどおり読み合わせで審査できるようにする |
2行目は、AIではなく仕組みで拾う例外です。 制作会社が改定に合わせて、頼まれていない箇所まで直すことがあります。新旧対照表を起点にする設計だと、その変更は見に行きません。 前の版の原稿との差分を別に取っておくと、起点の漏れを補えます。
記録を残す
- 改定ごとの資料一式(約款、新旧対照表、原稿)の版と受付日時
- 変更点ごとの、拾った候補、AIに渡した内容、返ってきたJSON
- 照合で落とした指摘と理由(引用が当たらない、条文番号が実在しない)
- 審査担当が採った指摘、採らなかった指摘、自分で足した指摘
- 直した原稿の再審査で、前の回の指摘が直っていたかどうか
- 変更点ごとの、候補の数と関係ありとされた記載の数
4つ目は、仕組みの精度を測る材料です。 審査担当が自分で足した指摘のうち、表現の問題でないものが多ければ、候補の拾い出しの網の目が粗いか、審査の観点の一覧が足りていません。 用語の対応表と観点の一覧を直す手がかりになります。
04実装レベルの3段階
最小構成は、確かめるための段階です。 記載を手で拾うので、月60件には使えません。 半自動化で、候補を探す時間が大きく減ります。 ただし引用の照合が無いため、審査担当は指摘ごとに原稿と約款を開いて引用を確かめることになります。 数字の見比べも手で残ります。照合と数字の見比べまで入るのは本格構成で、本記事の想定は本格構成です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2〜3か月回すと、どの言い換えが候補から漏れやすいか、どの種類の変更で unclear が多いかが分かります。それを用語の対応表と観点の一覧に入れてから本格構成に進むほうが、審査担当の確認が短くなります。
05工数削減シミュレーション
導入後 60件 × 35分 ÷ 60 = 35 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 商品と特約の数が多く、約款・特約の改定が毎月どこかで起きている生命保険会社・損害保険会社・少額短期保険業者。改定のたびに、コンプライアンス担当部門がパンフレット・契約概要・注意喚起情報・ご契約のしおりを約款と読み合わせて審査しており、審査の待ちが募集文書の改定の遅れになっている場合。審査の観点が担当者の経験に頼っている場合。社内で Microsoft Azure の利用が認められている場合。
- 商品が数本で、約款の改定が年に1〜2回しかない場合。募集文書の原稿が画像だけで、文字として取り出せる元データを制作会社から受け取れない場合。約款の新旧対照表を作っておらず、どこが変わったかを文書で示せない場合(先に新旧対照表の作り方を決める)。なお、表示が適正かどうか、どう直すかの判断はコンプライアンス担当部門と商品部門に残ります。
07最小構成で試す方法
- 過去半年の改定から3件を選び、そのときの新旧対照表、改定後の約款、審査した原稿、審査担当が出した指摘の一覧を用意する
- 変更点を1つずつ取り、関係する原稿の記載を手で拾い出す
- 社内で利用が認められた生成AIの画面に、変更点、改定後の条文、拾った記載を貼り、第7章の指示で判定させる
- 出てきた指摘を、当時の審査担当の指摘と並べる
- 「当時の指摘が出ているか」「引用が原文のとおりか」「解釈の要るものを判定してしまっていないか」を確かめる
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の指摘が、引用と根拠の条文付きで出る | 候補の拾い出しと照合の仕組みを作る段階に進む |
| 引用が要約される、解釈を判定してしまう | 指示の書き方と照合で直る。構成は有効 |
| 手で拾った記載の中に、当時の指摘の箇所が入っていない | 拾い出しの言い換えの対応表が先。 AIの問題ではない |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、審査に時間がかかっていた理由が1つ分かったということです。 当時の審査担当がどうやってその箇所を見つけたかを聞き取ると、言い換えの対応表に入れるべき語が見えてきます。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 言い換えた記載が候補から漏れる | 用語の対応表で、約款の用語と募集文書の言い換えを結ぶ |
| 解釈の要る条文をAIが判定してしまう | unclear を選ばせる指示を書き、解釈は関連部門で決める |
| 引用が要約され、照合で正しい指摘まで落ちる | 一字一句写す指示を書く。落ちた件数を見て指示を直す |
| 作られた引用や条文番号が出る | 引用と条文番号を原文と照合し、当たらなければ落とす |
| 返ってこない候補がある | 渡した候補と返った候補の数を比べ、足りない分を再判定 |
| 数字をAIと諸元表で二重に判定する | 数字は諸元表とプログラムだけに任せる |
| 新旧対照表に無い変更を見に行かない | 前の版の原稿との差分を別に取り、知らせる |
| 画像の原稿で文字が取れない | 制作会社に文字を含む PDF を求める |
| AIの指摘が無い文書を問題なしと扱う | 見た記載の一覧を確かめ、記載の無い文書は自分で開く |
| AIの指摘が商品部に直接届く | 台帳には下書きとして書き出し、採ったものだけを返す |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 前者は見落とし、後者は踏み込みすぎで、どちらも審査の責任の所在を曖昧にします。 候補を広く拾うことと、解釈を人に残すことを、仕組みの両端で守ります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 発売前・改定前の約款と特約の条文、新旧対照表、募集文書の原稿、給付の金額や条件の諸元表です。契約者の個人情報は扱いませんが、公表前の商品の情報で、社外に出れば競争上の影響があります。
- 公表前の情報として扱う … Azure OpenAI のリソースは社内で利用が認められたものを使い、受付フォルダ・諸元表・審査の台帳への権限は審査担当と商品部に限ります
- データの扱いを確かめる … 第6章のとおり、プロンプトと出力が許可なく基盤モデルのトレーニングに使われないこと、モデルがステートレスであることを確かめます。メッセージ履歴を保存する機能は使いません
- 審査の責任を人に残す … 監督指針は、適正な表示のためにコンプライアンス担当部門によるリーガルチェック等を含めた十分な審査体制の整備を求めています。この構成は審査の材料を作るもので、審査そのものではありません
- 約款の解釈を仕組みに寄せない … 解釈が分かれうる条文は
unclearとして人に回し、商品部・支払管理部門・コンプライアンス担当部門で決めます - 照合で落とした指摘も残す … 引用が当たらなかった指摘を消してしまうと、仕組みの誤りの傾向が追えません。落とした理由とともに記録します
誤りが起きた場合のリスクは、旧い条件や書き漏れが残ったまま募集文書が使われることと、AIの指摘を鵜呑みにして正しい記載を直してしまうことの2つです。 前者は候補を広く拾うことと見た記載の一覧で、後者は引用の照合と審査担当の採否で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:用語の対応表の最初の版を作る
主力の商品5本について、約款の用語と、パンフレット・しおりでの言い換えを並べます。「疾病入院給付金」と「病気で入院したとき」のような対応を、商品部と一緒に50語ほど拾います。
2週目:3件で試す
過去の改定3件で、変更点と手で拾った記載を判定させ、当時の審査担当の指摘と並べます。引用が原文のとおりか、解釈を判定してしまっていないかを最優先で見ます。
3週目:審査の観点の一覧を作る
審査担当6名に、改定の審査でいつも見ていることを聞き取り、一覧にします。監督指針が例に挙げる制限条件を、一覧の最初に入れます。
4週目:中継の処理を作る
約款と原稿の分割、候補の拾い出し、Azure OpenAI の構造化出力の呼び出しを作り、審査担当が資料一式を入れると指摘の一覧が返る形で使い始めます。
2か月目: 引用の照合と、諸元表との数字の見比べを足します。3か月目以降: 受付を起点にした自動の起動と審査の台帳への書き出しを足し、1件90分が何分になったかを実測します。審査の待ちが募集文書の改定の遅れにならなくなり、経験の浅い担当でも同じ範囲を見られるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
構造化出力で、モデルが指定した JSON スキーマの定義に従うこと。以前の JSON モードとの違い。Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書くこと。すべてのフィールドを必須にすること。additionalProperties: false が必要なこと。文字列の pattern などがサポートされないこと。列挙型がサポートされること | Microsoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法 | 2026-10-06 |
| プロンプトと出力が他のお客様に利用できず、OpenAI に提供されず、許可または指示なしに基盤モデルのトレーニングに使われないこと。モデルがステートレスであること。Responses API などでメッセージ履歴が保存されること | Microsoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ | 2026-10-06 |
| II-4-10 適切な表示の確保:審査の留意点として、約款、「契約概要」、「注意喚起情報」、パンフレット、ご契約のしおり等について表示内容の整合性を確保するためのチェックを行っているか。コンプライアンス担当部門によるリーガルチェック等を含めた十分な審査体制。制限条件(契約後一定の不担保期間、年齢・入院日数・対象疾病等による減額や消滅、先進医療の対象外)が表示されていない場合等に著しく優良との誤解を与えるおそれ。II-4-4-3 保険金等支払管理態勢:商品の開発・改定にあたり約款解釈を関連部門で十分に検討し、その結果がパンフレット等に適切に反映されているか。II-4-2-2(2):「契約概要」と「注意喚起情報」の主な項目 | 金融庁: 保険会社向けの総合的な監督指針(II-4 業務の適切性) | 2026-10-06 |
表示が適正かどうか、どう直すかは、コンプライアンス担当部門と商品部門が判断してください。 本記事は公開仕様と監督指針の記載で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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