重要事項説明書の記載を、登記事項証明書と売買契約書案に突き合わせて食い違いを出す
売買の重要事項説明書の案を、登記事項証明書と売買契約書案に突き合わせます。登記の表示・所有者・乙区の権利と、手付金・違約金などの取引条件が書類どうしで合っているかを項目ごとに判定し、説明の前に直す点を一覧にします。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Document AI
- 連携・自動化
- Power Automate
- 対象業界
- 不動産/建設
- 対象部門
- 営業/法務
- 対象業務
- 内容確認・チェック/比較検討
- 主な課題
- 人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 判定
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 営業が重要事項説明書の案、登記事項証明書、売買契約書案を案件のフォルダに置き、Teams で点検を頼む
- 担当者が3つを画面に並べ、登記の表題部(所在、地番、地目、地積/家屋番号、種類、構造、床面積)と、重要事項説明書の物件の表示を1項目ずつ見比べる
- 甲区の所有者と、重要事項説明書の登記名義人、契約書案の売主を見比べる
- 乙区の権利(抵当権など)を1本ずつ拾い、重要事項説明書に書かれているか、抹消の予定が書かれているかを見る
- 手付金、手付解除の期日、違約金、ローン特約の金額と期日を、重要事項説明書と契約書案で見比べる
- 食い違いをメモにまとめ、Teams で営業に返す
- 直った案をもう一度見て、宅地建物取引士の説明に回す
- 人営業が3つの書類を SharePoint の点検用のライブラリに置き、「状態」の列を「点検依頼」にする
- 自動Power Automate がファイルの変更を受けて動き、状態が「点検依頼」かを確かめる
- 自動3つの書類を Azure AI Document Intelligence のレイアウトモデルで読み、本文と表を取り出す
- 自動登記事項証明書から表題部・甲区・乙区を、重要事項説明書と契約書案から該当の欄を切り出す
- 自動Azure OpenAI が項目ごとに `match` / `mismatch` / `explainable` / `missing_in_disclosure` / `unreadable` を付ける
- 自動証明書の日付が自社の決めた日数より古ければ、取り直しの印を付ける
- 自動項目ごとの結果から、`ready` / `fix_required` / `needs_review` を機械的に決め、点検表を作る
- 人担当者が `missing_in_disclosure` と `mismatch` を先に、証明書の該当箇所を見て確かめる
- 人直す点を営業に返す。営業は重要事項説明書と契約書案の両方を直し、もう一度「点検依頼」にする
- 自動2回目は、前回の点検表と比べて変わった項目と、まだ直っていない項目だけを出す
- 人担当者が確かめて「点検済み」にし、宅地建物取引士の説明に回す
各工程の詳しい説明を読む
- 営業が重要事項説明書の案、登記事項証明書、売買契約書案を案件のフォルダに置き、Teams で点検を頼む
- 担当者が3つを画面に並べ、登記の表題部(所在、地番、地目、地積/家屋番号、種類、構造、床面積)と、重要事項説明書の物件の表示を1項目ずつ見比べる
- 甲区の所有者と、重要事項説明書の登記名義人、契約書案の売主を見比べる
- 乙区の権利(抵当権など)を1本ずつ拾い、重要事項説明書に書かれているか、抹消の予定が書かれているかを見る
- 手付金、手付解除の期日、違約金、ローン特約の金額と期日を、重要事項説明書と契約書案で見比べる
- 食い違いをメモにまとめ、Teams で営業に返す
- 直った案をもう一度見て、宅地建物取引士の説明に回す
(a)乙区の書き漏れを見落とす。 4番目は、乙区の順位番号を1つずつ追う作業です。根抵当権が複数本ある、共同担保で他の物件にもかかっている、すでに抹消された権利の記録が並んでいる、といった証明書では、今生きている権利を数え間違えます。
(b)直したところと直していないところがずれる。 5番目で見つけた手付金の食い違いを営業が重要事項説明書だけ直し、契約書案が古いまま戻ってきます。2回目の点検は、1回目と同じ時間がかかります。
(c)担当者ごとに見る順番が違う。 ある担当は乙区から、別の担当は取引条件から見ます。時間が足りない日には、最後に見る項目が薄くなります。 どの項目が薄くなるかは担当者で違います。
(d)表記の揺れで手が止まる。 「一丁目」と「1丁目」、「123番4」と「123番の4」、和暦と西暦。食い違いではないものを、その都度確かめています。
- 【人】 営業が3つの書類を SharePoint の点検用のライブラリに置き、「状態」の列を「点検依頼」にする
- 【自動】 Power Automate がファイルの変更を受けて動き、状態が「点検依頼」かを確かめる
- 【自動】 3つの書類を Azure AI Document Intelligence のレイアウトモデルで読み、本文と表を取り出す
- 【自動】 登記事項証明書から表題部・甲区・乙区を、重要事項説明書と契約書案から該当の欄を切り出す
- 【自動】 Azure OpenAI が項目ごとに
match/mismatch/explainable/missing_in_disclosure/unreadableを付ける - 【自動】 証明書の日付が自社の決めた日数より古ければ、取り直しの印を付ける
- 【自動】 項目ごとの結果から、
ready/fix_required/needs_reviewを機械的に決め、点検表を作る - 【人】 担当者が
missing_in_disclosureとmismatchを先に、証明書の該当箇所を見て確かめる - 【人】 直す点を営業に返す。営業は重要事項説明書と契約書案の両方を直し、もう一度「点検依頼」にする
- 【自動】 2回目は、前回の点検表と比べて変わった項目と、まだ直っていない項目だけを出す
- 【人】 担当者が確かめて「点検済み」にし、宅地建物取引士の説明に回す
8番目が、この設計の分かれ目です。 担当者は全項目を最初から見ません。漏れと食い違いと判断のつかなかった項目だけを、証明書の原本で確かめます。 match の項目は点検表で流し見ます。
10番目が、2回目の点検を短くします。 前回の点検表を残しておけば、直ったはずの項目が本当に直ったかだけを見れば済みます。
02今回想定するシステム構成
重要事項説明書の案・登記事項証明書・売買契約書案(SharePoint の点検用ライブラリ) ▼【トリガー】ファイルの変更(状態の列が「点検依頼」) Power Automate ├──▶ ファイル コンテンツの取得 ▼ Azure AI Document Intelligence(レイアウトモデル) │ 本文・表・キーと値のペアを取り出す ▼ Power Automate ── 表題部・甲区・乙区、重要事項説明書と契約書案の該当欄を切り出す ▼ Azure OpenAI(Microsoft Foundry) ── 項目ごとの突き合わせ │ ① 物件の表示 ② 所有者・登記名義人・売主 ③ 乙区の権利 │ ④ 手付金・手付解除 ⑤ 違約金 ⑥ ローン特約 ⑦ 代金以外の金銭 ▼ 判定(ready / fix_required / needs_review)→ 点検表(SharePoint のリスト) ▼ 【人が漏れと食い違いだけ確認】→ 営業へ返す → 2回目は差分だけ
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 生成AI | Azure OpenAI(Microsoft Foundry) | Claude API、Gemini API |
| 連携 | Power Automate(SharePoint のトリガー、読み取りと判定の呼び出し、点検表の作成) | Azure Logic Apps |
| 連携 | Azure AI Document Intelligence(レイアウトモデルによる本文と表の取り出し) | Google Document AI |
| 保管 | SharePoint(点検用のライブラリと点検表のリスト) | Box |
| 書類の作成 | 既存の重要事項説明書の作成ソフト | 各社の製品 |
判定の中心は、Azure OpenAI の構造化出力です。 公式には、指定した JSON スキーマに従う応答を返し、response_format に json_schema と strict: true を設定して使うとされています。古い JSON モードは有効なJSONを保証するだけで、スキーマへの厳密な準拠はできなかったとされ、その違いがこの構成では効きます(第7章の「出力形式」)。
データの扱いも公式に書かれています。 プロンプトと出力は他の顧客には提供されず、OpenAI にも提供されず、明示的な許可なしに基盤モデルのトレーニングに使われないとされています。プロンプトと応答は、お客様が指定した地域の中で処理されます。ただし「グローバル」や「データゾーン」の展開の種類を選ぶと、処理の場所が広がるとされているので、展開の種類は第13章の方針で選びます。
読み取りはレイアウトモデルです。 公式の入力要件の表では、レイアウトモデルは PDF と画像に加え、Word(DOCX)などの Office 形式も読めます。 スキャンの証明書はPDFで、作成ソフトから出た重要事項説明書と契約書案はWordのままで渡せます。ただしアドオン機能(キーと値のペアなど)は、Office のファイルでは使えないとされています。 証明書の読み取りにだけアドオンを使います。
SharePoint のトリガーは「ファイルが作成または変更されたとき (プロパティのみ)」です。 公式には、ライブラリの列に格納されたプロパティだけを返し、中身は「ファイル コンテンツの取得」で別に取るとされています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
営業が点検用のライブラリの「状態」の列を「点検依頼」に変えたことを起点にします。 Power Automate の SharePoint のトリガー「ファイルが作成または変更されたとき (プロパティのみ)」で変更を受け、最初の条件で状態が「点検依頼」のときだけ先に進めます。
ファイルを置いたことではなく、状態を変えたことを起点にするのは、3つの書類がそろうまで待つためです。 登記事項証明書が先に届き、契約書案が翌日にできることはよくあります。1つ置くたびに動かすと、そのたびに「契約書案が無い」という結果が出ます。
同じ案件で状態の変更が続けて起きても、二重に動かさないよう、流れの最初で状態を「点検中」に変えます。終わったら「点検結果あり」にし、営業が直して再び「点検依頼」にすると2回目が動きます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 重要事項説明書の案 | 物件の表示、登記記録に記録された事項(所有権・所有権以外の権利)、取引条件の欄 | 点検用のライブラリ(Word または PDF) |
| 登記事項証明書 | 土地と建物それぞれ。表題部、権利部の甲区・乙区。証明の日付 | 同上(スキャンしたPDF) |
| 売買契約書案 | 売主・買主、売買代金、手付金、手付解除の期日、違約金、ローン特約 | 同上(Word または PDF) |
| 案件の情報 | 案件番号、物件の種別(土地/戸建て/区分マンション)、筆の数 | ライブラリの列 |
| 表記の対応表 | 「一丁目/1丁目」「番/番の」、和暦と西暦、「㎡/平方メートル」など | 自社で用意する一覧 |
| 前回の点検表 | 2回目以降の点検のとき、前回の項目ごとの結果 | 点検表のリスト |
登記事項証明書の構成は法務省の説明どおりに扱います。 登記記録は1筆の土地または1個の建物ごとに表題部と権利部に分かれ、権利部はさらに甲区と乙区に分かれます。表題部には土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積などが、甲区には所有者に関する事項が、乙区には抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
物件の種別と筆の数を必ず持たせます。 土地が3筆に分かれている案件で証明書が2枚しか置かれていなければ、読み取る前に「証明書が足りない」と返せます。
データの取得方法を決める
- トリガーから案件のフォルダを特定し、「ファイル コンテンツの取得」で3種類の書類を取り出す
- 登記事項証明書のPDFを、レイアウトモデルに
keyValuePairsを付けて送る - 重要事項説明書と契約書案は、Word ならそのままレイアウトモデルに送る(アドオンは付けない)
- 返ってきた本文と表から、次の単位に切り出す
| 切り出す単位 | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 表題部の各項目 | 証明書の表 | 物件の表示との突き合わせ |
| 甲区の最新の所有者 | 証明書の甲区の表 | 登記名義人・売主との突き合わせ |
| 乙区の各順位番号の権利 | 証明書の乙区の表 | 重要事項説明書の記載の有無 |
| 重要事項説明書の該当欄 | 見出し(「登記記録に記録された事項」など)で区切った本文 | 登記・契約書案との突き合わせ |
| 契約書案の取引条件 | 条文の見出しで区切った本文 | 重要事項説明書の取引条件との突き合わせ |
切り出しは見出しの文字列で行います。 作成ソフトの様式が決まっていれば、「登記記録に記録された事項」「契約の解除に関する事項」「損害賠償額の予定又は違約金に関する事項」といった見出しは毎回同じ位置に出ます。見出しが見つからない書類は、切り出さずに needs_review にします。
AIへ渡す前に整形する
- 書類の数の確認 … 物件の種別と筆の数に対して、証明書の枚数が足りているかを確かめます
- 証明書の日付の確認 … 証明の日付を取り出し、自社の決めた日数より古ければ取り直しの印を付けます
- 現在の権利と抹消された権利の区別 … 証明書には、すでに抹消された権利の記録が並んでいることがあります。抹消の記録が読み取れた順位番号には印を付け、区別がつかないものは
needs_reviewに回します - 表記の正規化 … 対応表にある表記を、比べるときだけそろえます。元の表記は残します
- 数字の正規化 … 地積・床面積・金額を数値に直した列を別に作ります。比べるのは数値、点検表に載せるのは元の表記です
- 個人の情報の範囲の確認 … 甲区に過去の所有者の氏名・住所が並ぶ場合、比べるのに要るのは最新の所有者だけなので、それ以外は判定に渡しません
3番目がいちばん気をつける前処理です。 抹消された抵当権を今も生きている権利として数えると、重要事項説明書に正しく書かれていない権利がある、という誤った漏れが出ます。逆に、生きている権利を抹消済みと取り違えると、本物の漏れを見逃します。機械で決めきれないものは、人に回す側へ倒します。
AIに処理させる
させるのは、7つの観点それぞれで、書類どうしが合っているかの判定だけです。
| 観点 | 比べるもの | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| ① 物件の表示 | 表題部 ⇔ 重要事項説明書の物件の表示 | 表記の対応表にある違いなら explainable |
| ② 所有者 | 甲区の最新の所有者 ⇔ 登記名義人の欄 ⇔ 契約書案の売主 | 氏名が違えば mismatch。住所だけの違いも mismatch として理由を書く |
| ③ 乙区の権利 | 乙区の生きている権利 ⇔ 重要事項説明書の所有権以外の権利の欄 | 登記にあって重要事項説明書に無ければ missing_in_disclosure |
| ④ 手付金・手付解除 | 重要事項説明書 ⇔ 契約書案 | 金額・期日が違えば mismatch |
| ⑤ 違約金 | 同上 | 同上 |
| ⑥ ローン特約 | 同上(融資の金額・承認の期日・解除の期日) | 同上 |
| ⑦ 代金以外の金銭 | 同上(固定資産税の清算金など) | 目的の書き方の違いだけなら explainable |
③の missing_in_disclosure が、この構成でいちばん大事な値です。 重要事項説明書に書いてあることの誤りは mismatch、書いていないことの漏れは missing_in_disclosure と分けます。点検表では後者を必ず先頭に出します。
④から⑦の観点は、宅地建物取引業法第35条の説明事項に対応させています。 条文では、代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭、契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定又は違約金に関する事項、代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容とそれが成立しないときの措置が挙げられています。これらは契約書案にも書かれるので、2つの書類で食い違いが起きやすい項目です。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 重要事項説明書の内容が法令上足りているかの判断 | 宅地建物取引士が判断する |
| 抵当権が決済までに抹消されるかの見込み | 売主と金融機関の手続きによる |
| 所有者と売主の違いの理由の推測(相続、住所変更など) | 事実を確かめて人が書く |
| 食い違ったときに、どちらが正しいかの決定 | 登記と契約書案のどちらに合わせるかは人が決める |
| 金額・面積の計算 | 数値の比べは前処理の列で行う |
4行目を明記しないと、AIは「重要事項説明書を登記に合わせて修正してください」と書きます。 登記が古い、契約書案が新しい、という場合もあります。どちらを直すかを決めるのは営業と担当者です。
指示内容を固定する
あなたは不動産会社の契約管理の担当で、売買の重要事項説明書の案を点検します。
重要事項説明書の内容が法令上足りているかは判断しません。
3つの書類のあいだで、同じ事実が同じように書かれているかだけを判定してください。
【観点】
1. 物件の表示(登記の表題部と、重要事項説明書の物件の表示)
2. 所有者(登記の甲区の最新の所有者、重要事項説明書の登記名義人、契約書案の売主)
3. 乙区の権利(登記の乙区の生きている権利と、重要事項説明書の所有権以外の権利の欄)
4. 手付金・手付解除 5. 違約金 6. ローン特約 7. 代金以外の金銭
(4〜7は重要事項説明書と契約書案)
【status の選び方】
- match ................. 一致している
- mismatch .............. 書かれているが、内容が違う
- explainable ........... 違うが、表記の対応表にある違いだけである
- missing_in_disclosure . 登記または契約書案にあるのに、重要事項説明書に書かれていない
- unreadable ............ 読み取り結果が欠けている、または抹消済みかどうか区別できない
迷ったときに match を選ばないでください。
【厳守事項】
- 乙区の権利は、印の付いた抹消済みの順位番号を除いて、1本ずつ判定してください。
重要事項説明書に「抵当権あり」とまとめて書かれていても、本数と権利者が合わなければ mismatch です。
- 重要事項説明書に抹消の予定が書かれていても、権利そのものの記載が無ければ missing_in_disclosure です。
- 所有者と売主が違う場合、理由を推測しないでください。mismatch とし、違いだけを書いてください。
- 金額・面積・日付は、【数値の列】の値で比べてください。自分で計算しないでください。
- どちらの書類が正しいか、どちらを直すべきかを書かないでください。
- 法令上の適否、説明の十分さ、抹消の見込みを書かないでください。
- evidence には、各書類の該当部分の文字列をそのまま写してください。
【登記事項証明書(表題部・甲区・乙区。抹消済みの印つき)】{registry}
【重要事項説明書の該当欄】{disclosure}
【売買契約書案の取引条件】{contract}
【数値の列】{normalized_numbers}
【表記の対応表】{variant_table}
【物件の種別】{property_type}
「まとめて書かれていても本数と権利者が合わなければ mismatch」が効きます。 重要事項説明書には「抵当権設定あり(決済時抹消予定)」と1行で書かれることがあり、乙区に抵当権が2本、権利者が別々にあっても、1行の記載で済んだように見えます。
「どちらを直すべきかを書かない」も同じくらい大事です。 書かせると、担当者は登記に合わせる直し方をそのまま営業に返しがちです。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。 response_format に json_schema と strict: true を設定します。
{
"case_no": "",
"certificate_date": "",
"checks": [
{ "aspect": "encumbrance", "item": "乙区 順位番号2 抵当権",
"status": "match | mismatch | explainable | missing_in_disclosure | unreadable",
"registry_value": "", "disclosure_value": "", "contract_value": "",
"evidence": "", "note": null }
]
}
aspect は property_display / owner / encumbrance / deposit / penalty / loan_contingency / other_money の7つです。
1つ目の理由は、項目の数が案件ごとに違っても同じ形で受け取れることです。 乙区の権利が0本の物件も5本の物件もあり、checks の要素の数が変わります。公式には、配列の minItems と maxItems はサポートされないとされているので、件数の確かめは Power Automate の側で行います。乙区の生きている権利の数と、encumbrance の要素の数が合わなければ needs_review にします。
2つ目の理由は、すべての項目が必ず返ってくることです。 公式には、構造化出力ではすべてのフィールドを必須にする必要があり、省略できる項目は null との共用型で表すとされています。note を ["string", "null"] にしておけば、書くことが無いときは null が入り、欄そのものが消えることはありません。 あわせて、スキーマのオブジェクトには additionalProperties: false が必要で、オブジェクトのプロパティは最大100個、入れ子は5段までとされています。この形はその範囲に収まります。
3つ目は、判定と扱いを分けられることです。 verdict はスキーマに入れず、Power Automate の条件で決めます。
| 条件 | 判定 |
|---|---|
すべてが match か explainable、証明書が期限内 | ready |
missing_in_disclosure か mismatch が1つでもある | fix_required |
unreadable がある、件数が合わない、証明書の取り直しの印がある | needs_review |
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| SharePoint の点検用ライブラリ | Power Automate のトリガーと「ファイル コンテンツの取得」 | 状態の変更を受け、3つの書類を取り出す |
| Azure AI Document Intelligence | HTTP の呼び出し | レイアウトモデルで本文と表を取り出す |
| Azure OpenAI | HTTP の呼び出し | 7つの観点の突き合わせ |
| SharePoint の点検表のリスト | Power Automate | 案件ごと・項目ごとの結果と判定を書き込む |
| Teams | Power Automate | 営業と担当者に、点検表のリンクを知らせる |
点検表は1項目1行のリストにします。 案件番号・観点・項目・状態・3つの書類の値・根拠・担当者の確認の列を持たせます。2回目の点検では、前回の行と比べて状態が変わった行と、fix_required のまま変わっていない行を先に出します。
重要事項説明書と契約書案は書き換えません。 直すのは営業で、作成ソフトの側で直します。AIの出力をそのまま書類に反映する経路は作りません。
人が確認する
missing_in_disclosureを先に見る … 証明書の乙区の該当の順位番号を原本で確かめ、本当に生きている権利かを見ますmismatchを確かめる … 3つの書類の値を並べ、どちらを直すかを営業と決めますunreadableと件数の不一致を見る … 証明書の読み取りが欠けていれば、原本で読みますexplainableを流し見る … 表記の違いだけかを確かめます- 判定を覆したら記録する … どの項目を、どの状態からどれに変えたか
1番目を省かないでください。 漏れと出たものの多くは本物の漏れか、抹消済みの権利の取り違えのどちらかです。どちらなのかは、証明書の原本を見ないと決まりません。
点検の最後は宅地建物取引士が見ます。 この構成の点検表は、宅地建物取引士が説明の前に書類を見直すときの材料です。記名する宅地建物取引士の確認を省く設計にはしません。
目標は、80件をならして1件12分です。 乙区の権利の少ない土地の案件は点検表を流し見て数分、権利の多い区分マンションや漏れの出た案件は原本を確かめるので長くかかります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 筆の数に対して証明書が足りない | 読み取らずに「証明書不足」として営業へ返す |
| 証明書の日付が古い | 取り直しの印を付け、needs_review |
| 抹消済みかどうか区別できない権利がある | unreadable として人へ |
| 見出しが見つからず欄を切り出せない | 作成ソフトの様式が違う書類。needs_review |
| 共同担保で他の物件にも権利がかかっている | 対象の物件の権利として判定し、共同担保の記載は人が確かめる |
| 所有者が複数(共有)で持分がある | 所有者ごとに1項目とし、持分も比べる |
乙区の権利の数と encumbrance の要素の数が違う | needs_review |
| Azure OpenAI が応答しない、読み取りが失敗する | 状態を「点検依頼」に戻し、担当者に知らせる |
上から4行目までは、書類の受け渡しの問題です。 証明書をいつ取るか、どの様式で重要事項説明書を出すかを営業と決めておけば、多くは起きません。
記録を残す
- 点検に使った3つの書類の版(SharePoint のバージョン)
- 読み取りの結果のJSONと、切り出した単位
- Azure OpenAI に渡した内容と、返ってきた
checksの全文 - 点検表の各行と、そのときの判定の条件と表記の対応表の版
- 人が判定を覆した記録と、営業へ返した内容
- 2回目以降の点検で、前回から変わった行
1つ目で書類の版を残すのは、どの案を点検したかを後から示すためです。 説明の後で記載の誤りが見つかったとき、点検した時点の案に誤りがあったのか、点検の後に書き換えられたのかが分かります。
04実装レベルの3段階
最小構成では、貼り付けの手間で件数がさばけません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件45分が25分程度になります。 点検表は出ますが、切り出しと抹消済みの区別が手作業で残り、2回目の点検も全体を見直します。本格構成で12分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、2回目の点検が差分だけで済むからです。
05工数削減シミュレーション
導入後 80件 × 12分 ÷ 60 = 16 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 土地・中古住宅・区分マンションの売買の仲介や自社の販売を月に数十件以上行い、重要事項説明書を営業が作り、契約管理や法務の担当が説明の前に登記事項証明書と契約書案に照らして点検している不動産会社・住宅会社。点検の観点が担当者ごとに違い、乙区の権利の書き漏れや、手付金・違約金の記載の食い違いが説明の直前に見つかることがある場合。Microsoft 365 と Azure を使っている場合。
- 売買の件数が月に数件で、宅地建物取引士が自分で見直せば足りる場合。重要事項説明書の内容が法令上足りているかの判断そのものを自動化したい場合(この構成は書類どうしの食い違いを出すまでで、説明の内容の適否は宅地建物取引士が判断します)。賃貸の仲介だけを行っている場合(本記事は売買を対象にしています)。
07最小構成で試す方法
- 過去に説明を終えた売買の案件から10件を選ぶ(乙区の権利が複数ある区分マンションと、筆の多い土地を入れる)
- 10件の書類から、氏名と住所を黒塗りしたコピーを作る
- 社内で利用が認められている生成AIの画面に、登記事項証明書と重要事項説明書の該当欄を貼り、「乙区の権利を1本ずつ、重要事項説明書に書かれているかを判定してください。書かれていなければ漏れとしてください。どちらを直すべきかは書かないでください」と指示する
- 同じように、重要事項説明書と契約書案の取引条件を比べさせる
- 当時の点検のメモと突き合わせ、抹消済みの権利を生きている権利として数えていないかを見る
5番目を必ず見てください。 抹消済みの権利の取り違えが多いなら、前処理で抹消済みに印を付ける作業が先です。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の点検で見つけた食い違いが出た | 読み取りと Power Automate の連携に進む |
| 抹消済みの権利を漏れとした | 前処理で印を付ける。構成は有効 |
| 「登記に合わせて直してください」と書いた | 指示の書き方で直る |
| 表記の違いを食い違いとした | 表記の対応表を先に作る |
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 抹消済みの権利を漏れとして出す | 前処理で抹消済みに印を付け、区別できなければ人へ |
| 「抵当権あり」の1行で漏れが隠れる | 本数と権利者を1本ずつ比べるよう指示する |
| どちらを直すべきかをAIが書く | 書かせない。直す先は営業と担当者が決める |
| 乙区の権利の数と判定の数が合わない | 配列の件数の制約はスキーマで縛れない。Power Automate で数える |
| 省略された欄が消える | すべてのフィールドを必須にし、null との共用型で表す |
| Word の書類でアドオンが効かない | Office のファイルではアドオン機能が使えない。証明書のPDFにだけ使う |
| 見出しが見つからない | 作成ソフトの様式をそろえる。見つからない書類は人へ |
| 表記の違いで食い違いが大量に出る | 表記の対応表と、数値の列で比べる |
| 証明書が古い | 証明の日付を取り出し、自社の日数で取り直しの印を付ける |
| 宅地建物取引士の確認が省かれる | 点検表は材料であり、記名する宅地建物取引士の確認を残す |
上の2行が、この構成が信用されるかどうかを決めます。 どちらも乙区の権利の数え方の問題です。抹消済みを数えれば誤った漏れが出て、まとめ書きを見逃せば本物の漏れが消えます。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 売主・買主の氏名と住所、登記の甲区に並ぶ過去の所有者、乙区の権利者と債権額、売買代金と取引条件。個人の資産と借入の状況が分かる情報です。
- 判定に渡す範囲を絞る … 甲区の過去の所有者は比べるのに要りません。最新の所有者だけを渡します
- 展開の種類を選ぶ … 公式には、プロンプトと応答は指定した地域の中で処理されますが、「グローバル」や「データゾーン」の展開の種類では処理の場所が広がるとされています。取引の情報を国外で処理してよいかを社内で決めてから選んでください
- 学習に使われないことを確かめて使う … 公式には、プロンプトと出力は明示的な許可なしに基盤モデルのトレーニングに使われないとされています。あわせて、不正使用の監視のしくみも公式の説明で確かめておきます
- 法令上の判断をさせない … 説明の十分さ、抹消の見込みはこの構成では扱いません。宅地建物取引士の判断と記名を代替しません
- 書類を自動で書き換えない … AIの出力が重要事項説明書に直接入る経路を作りません
- 点検表の閲覧の範囲を決める … 点検表には3つの書類の値が並びます。案件の担当者と契約管理課だけが見られるように権限を付けます
誤りが起きた場合のリスクは、登記にある権利の書き漏れを見逃すことと、漏れでないものを漏れとして営業を止めることの2つです。 前者はまとめ書きを見逃すと起き、後者は抹消済みを数えると起きます。どちらも乙区の数え方の設計で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:観点と見出しを決める
7つの観点と、それぞれの観点で重要事項説明書・契約書案のどの見出しを見るかを一覧にします。作成ソフトの様式が営業所ごとに違っていないかもここで確かめます。
2週目:10件で試す
黒塗りした10件の書類で、生成AIに乙区の権利と取引条件を突き合わせさせます。抹消済みの権利の取り違えと、まとめ書きの見逃しを最優先で見ます。
3週目:読み取りと切り出しを作る
Document Intelligence のレイアウトモデルで証明書を読み、表題部・甲区・乙区を切り出す処理を作ります。抹消済みの印の付け方を、10件の証明書で確かめます。 表記の対応表もここで作ります。
4週目:点検表までをつなぐ
Power Automate で SharePoint の状態の変更を受け、読み取り、Azure OpenAI の構造化出力で点検表を作るところまで作ります。この時点では判定を出さず、項目ごとの状態だけを見ます。
2か月目: 件数の確かめと判定の条件を足し、missing_in_disclosure と mismatch の件数を毎週数えます。3か月目以降: 2回目の点検の差分の表示を足し、1件45分が何分になったかを実測します。抹消済みの取り違えがほとんど出なくなり、営業所の様式がそろった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 宅地建物取引業法第35条第1項が、説明する事項として、登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は表題部に記録された所有者の氏名(第1号)、代金等以外に授受される金銭の額と目的(第7号)、契約の解除に関する事項(第8号)、損害賠償額の予定又は違約金に関する事項(第9号)、代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容と不成立時の措置(第12号)などを挙げていること。書面の交付に当たり宅地建物取引士が記名しなければならないこと | e-Gov 法令API: 宅地建物取引業法 第35条 | 2026-09-29 |
| 登記記録が1筆の土地・1個の建物ごとに表題部と権利部に分かれ、権利部が甲区と乙区に分かれること。表題部に土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積などが、甲区に所有者に関する事項が、乙区に抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記録されること | 法務省: 不動産登記 | 2026-09-29 |
構造化出力が指定した JSON スキーマに従い、response_format の json_schema と strict: true で使うこと。古い JSON モードはスキーマへの厳密な準拠ができなかったこと。すべてのフィールドを必須にし、省略は null との共用型で表すこと。additionalProperties: false が必要なこと。プロパティは最大100個・入れ子は5段までであること。配列の minItems・maxItems、数値の最小・最大などがサポートされないこと | Microsoft Learn: Azure OpenAI の構造化出力 | 2026-09-29 |
| プロンプトと出力が他の顧客や OpenAI に提供されず、明示的な許可なしに基盤モデルのトレーニングに使われないこと。指定した地域の中で処理され、グローバル・データゾーンの展開の種類では処理の場所が広がること。不正使用の監視のしくみがあること | Microsoft Learn: データ、プライバシー、セキュリティ | 2026-09-29 |
| Document Intelligence のレイアウトモデルが PDF・画像に加えて Word(DOCX)などの Office 形式を読めること。アドオン機能が Office のファイルでは使えないこと(入力要件とアドオンの注記) | Microsoft Learn: Document Intelligence の入力要件 | 2026-09-29 |
| SharePoint コネクタのトリガー「ファイルが作成または変更されたとき (プロパティのみ)」がライブラリの列のプロパティだけを返し、中身は「ファイル コンテンツの取得」で取ること | Microsoft Learn: SharePoint コネクタ | 2026-09-29 |
重要事項説明の内容の適否と説明の方法は、宅地建物取引士と自社の法務で判断してください。 本記事は e-Gov、法務省、Microsoft の公式の情報で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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