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病院の医事課で、返戻・査定されたレセプトについて過去の記録から同じ理由のものを探し、再請求の対処と予防の注意点を返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

毎月届く増減点連絡書と返戻内訳書の1行ごとに、過去の返戻・査定とその対処の記録から同じ理由のものを探し、当時の対処と結果、予防の注意点を並べます。医事課の担当者は、何をすれば通ったかを知ったうえで再請求と再審査請求の方針を決められます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
介護/医療
対象部門
経理
対象業務
内容確認・チェック/情報検索
主な課題
属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
品質標準化/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
90h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
73%
年間削減
792h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 増減点連絡書と返戻内訳書の PDF を開き、行ごとに事由、対象の診療行為・薬剤、点数を読む
  2. 対処記録のスプレッドシートで、薬剤名や事由の言葉で過去の記録を探す
  3. 見つかった記録の対処と結果を読み、同じ理由といえるかを、当時のレセプトの写しで確かめる
  4. 見つからないときは、医事課に長くいる担当者に聞く
  5. 返戻は、レセプトコンピュータで直して再請求する。査定は、再審査請求をするかを責任者と決め、必要なら医師に症状詳記を頼む
  6. 今回の対処を、スプレッドシートに1行書き足す
導入後(After)
  1. 自動担当者が通知の PDF を所定のフォルダに置くと、文字を取り出す
  2. 自動Claude が通知を1行ずつに分け、審査月、保険の区分、返戻か査定か、事由、対象の診療行為・薬剤、点数を項目として取り出す
  3. 人担当者が取り出された行を確かめる。レセプトコンピュータの患者番号との対応はここで付ける
  4. 自動対処が終わり結果が出た行を、対処記録のカードとして検索基盤に登録する
  5. 自動確かめた行ごとに、事由・診療行為・薬剤・傷病名で、同義語の辞書を使ったハイブリッド検索を行い、過去の記録を最大20件集める
  6. 自動Claude が上位5件について、新しい行と同じ理由といえるか、違う点はどこかを1文ずつ書く
  7. 人担当者が記録の対処と結果を読み、再請求か、再審査請求か、受け入れるかの案を作る
  8. 人再審査請求をするものは責任者が決め、症状詳記が要るものは医師に頼む
  9. 自動月末に、事由と診療科ごとの件数と、繰り返し出ている理由を一覧にする
各工程の詳しい説明を読む
  1. 増減点連絡書と返戻内訳書の PDF を開き、行ごとに事由、対象の診療行為・薬剤、点数を読む
  2. 対処記録のスプレッドシートで、薬剤名や事由の言葉で過去の記録を探す
  3. 見つかった記録の対処と結果を読み、同じ理由といえるかを、当時のレセプトの写しで確かめる
  4. 見つからないときは、医事課に長くいる担当者に聞く
  5. 返戻は、レセプトコンピュータで直して再請求する。査定は、再審査請求をするかを責任者と決め、必要なら医師に症状詳記を頼む
  6. 今回の対処を、スプレッドシートに1行書き足す

(a)同じ理由の記録に届かない。 薬剤名や傷病名は、書いた人によって書き方が違います。同じ理由の記録はあるのに、言葉で引けません。

(b)何をすれば通ったかが残っていない。 対処の列に「再審査」とだけ書かれ、結果の列が空欄の行が多くあります。通ったのか、原審どおりだったのかが分からないまま、同じ再審査請求をもう一度出すことがあります。

(c)長くいる担当者に聞くしかない。 その人は、どの事由にどう対処すれば通るかを覚えています。そのため質問はその人に集まり、通知の届いた週はその人の仕事が止まります。

(d)予防が続かない。 同じ事由の査定が毎月出ていても、診療科に伝える材料がまとまりません。月に数百件の行を、事由と診療科で数え直す時間がないからです。

取り込み(通知が届くたび、対処が終わるたび)

  1. 【自動】 担当者が通知の PDF を所定のフォルダに置くと、文字を取り出す
  2. 【自動】 Claude が通知を1行ずつに分け、審査月、保険の区分、返戻か査定か、事由、対象の診療行為・薬剤、点数を項目として取り出す
  3. 【人】 担当者が取り出された行を確かめる。レセプトコンピュータの患者番号との対応はここで付ける
  4. 【自動】 対処が終わり結果が出た行を、対処記録のカードとして検索基盤に登録する

検索(通知の行ごと)

  1. 【自動】 確かめた行ごとに、事由・診療行為・薬剤・傷病名で、同義語の辞書を使ったハイブリッド検索を行い、過去の記録を最大20件集める
  2. 【自動】 Claude が上位5件について、新しい行と同じ理由といえるか、違う点はどこかを1文ずつ書く
  3. 【人】 担当者が記録の対処と結果を読み、再請求か、再審査請求か、受け入れるかの案を作る
  4. 【人】 再審査請求をするものは責任者が決め、症状詳記が要るものは医師に頼む
  5. 【自動】 月末に、事由と診療科ごとの件数と、繰り返し出ている理由を一覧にする

3番目が、この設計の分かれ目です。 通知の行の取り出しが違えば、その後の検索はすべて外れます。担当者が通知の PDF と見比べて1回確かめれば、読み違いはその場で直せます。

4番目で、結果が出てから登録するのも意図してのことです。 対処しただけの記録を登録すると、通ったのか原審どおりだったのかが空欄の記録が、検索結果に並びます。 それではこれまでのスプレッドシートと同じです。

02今回想定するシステム構成

構成図
【取り込み】増減点連絡書・返戻内訳書(PDF)
   ▼【トリガー】所定のフォルダへの保存
AWS Lambda ── PDF から文字を取り出す
   ▼
Claude(Amazon Bedrock)── 通知を1行ずつの項目に分ける
   ▼【人】担当者が行を確かめ、患者番号と対応付け
   ▼(対処が終わり結果が出たら)
Amazon Titan Text Embeddings V2 ── 事由と対処の文を埋め込み
   ▼
Amazon OpenSearch Service(対処記録の索引。同義語の辞書)

【検索】確かめた通知の行
   ▼
Amazon OpenSearch Service ── ハイブリッド検索(同義語で広げた語の一致+文章の近さ)
   ▼
Claude(Amazon Bedrock)── 「同じ理由といえるか・違う点」の1文
   ▼
担当者が対処の案 → 責任者の判断 → 再請求・再審査請求
   ▼(月末)
事由×診療科の件数の一覧 → 診療科への予防の働きかけ
役割想定する製品代替候補
検索基盤Amazon OpenSearch Service(ハイブリッド検索と同義語の辞書)Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search)
埋め込みAmazon Titan Text Embeddings V2(Amazon Bedrock)Cohere Embed、OpenAI の埋め込みモデル
生成AIClaude(Amazon Bedrock。通知の行の取り出しと、同じ理由かの1文)Gemini API、OpenAI API
連携AWS Lambda(取り込み、検索、月末の集計の処理)AWS Step Functions
保管Amazon S3(通知の PDF と取り出した文字の写し)院内のファイルサーバー
医事既存のレセプトコンピュータとオンライン請求システム―

オンライン請求システムとレセプトコンピュータは、新しく足すものではありません。 返戻されたレセプトの修正と再請求、再審査請求の提出は、これまでどおりそこで行います。この構成は、その前の「過去にどうしたか」を調べるところだけを受け持ちます。

同義語の辞書は、Amazon OpenSearch Service のパッケージとして持たせます。 ドキュメントでは、停止語や同義語のような辞書のファイルを S3 にアップロードし、パッケージとしてドメインに関連付ける手順が示されています。関連付けたら analyzers/<パッケージのID> の形で synonyms_path に指定します。

辞書の更新が自動で効くかは、設定で決まります。 同義語のフィルタに updateable: true を付け、検索用のアナライザーだけで使う形にしておけば、パッケージを更新したときに検索アナライザーが自動で更新されるとされています。索引用のアナライザーで使うと、索引を閉じて開き直すか、再索引が要ります。医事課が辞書を毎月育てる運用なので、検索用のアナライザーに置きます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

取り込みには起点が2つ、検索には1つあります。

通知の取り込みは、担当者が通知の PDF を所定のフォルダに置いたことを起点にします。 通知はオンライン請求システムから PDF で受け取れるので、毎月の配信の日に、担当者がダウンロードしてフォルダに入れるところまでを手順にします。 オンライン請求システムへの自動のログインは作りません。資格の確認と端末の管理が要るシステムだからです。

対処記録のカードの登録は、担当者が対処の結果を入れたことを起点にします。 返戻は再請求が受け付けられたとき、査定は再審査の結果が届いたとき、受け入れたものは受け入れると決めたときです。結果の入っていない行は、カードにしません。

過去7年分の約2万5千行は、別に一括で取り込みます。 結果の列が空欄の行は、「結果不明」の印を付けて登録します。 対処の手がかりにはなるので捨てませんが、検索結果では区別して表示します。

検索は、担当者が通知の行を確かめ終えた時点で、行ごとに自動で動きます。 担当者は確かめた行の一覧を開くと、各行の横に過去の記録が並んでいる状態になります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
増減点連絡書・返戻内訳書審査月、レセプトの識別、増減点数、事由、対象の診療行為・薬剤オンライン請求システムから受け取った PDF
対処記録審査月、保険の区分、返戻か査定か、診療科、事由、対象、傷病名、対処の内容、結果、予防の注意点医事課の共有フォルダ(スプレッドシート)
対処記録のカード取り込み時に作る。上記をまとめ、確認の状態を足したもの検索基盤
同義語の辞書薬剤の商品名と一般名、傷病名の正式名と略称、診療行為の言い換え医事課が育てる辞書のファイル
診療科の対応表診療科のコードと名前、予防の働きかけの窓口医事課が持つ一覧

質を決めるのは、いちばん下から2つ目の同義語の辞書です。 辞書が無ければ、商品名で書かれた通知の行から、一般名で書かれた過去の記録に届きません。最初は査定の多い薬剤と診療行為の上位から作り、検索で届かなかった組を毎月足していきます。

対処記録の項目は、最初に固定します。 事由(通知の記載をそのまま)、対象の種類(drug/procedure/material/diagnosis/other)、対象の名前、対処(resubmit/reexamine/accept)、結果(restored/partially_restored/upheld/accepted/unknown)、対処の内容、予防の注意点です。結果の区分が決まっていないと、「通った記録だけ」という絞り込みができません。

Step3

データの取得方法を決める

通知の PDF からは、Lambda で文字を取り出します。文字の層が無く画像だけになっている PDF は、この構成の対象外にし、担当者が手で行を入れます。 対処記録のスプレッドシートは、一括取り込みのときに CSV にして読み込みます。

取るものどこから何に使うか
事由、対象、増減点数通知の PDF の文字検索の問い合わせと、取り込む項目
傷病名担当者が確かめるときにレセプトコンピュータから写す同じ理由かの手がかり
対処と結果対処記録検索結果に並べる内容
診療科レセプトコンピュータの患者の情報月末の件数の一覧

通知の行には、患者の名前を持たせません。 検索に要るのは事由と対象で、誰の診療だったかは要りません。患者番号は担当者がレセプトコンピュータで引くための手がかりとして、医事課の中の一覧にだけ残し、検索基盤には入れません。

検索の問い合わせは、ハイブリッドクエリで組みます。 サブクエリは、事由・対象の名前・傷病名の語の一致と、事由と対処の文の埋め込みによる近さの2つにし、filter で保険の区分と、返戻か査定かを絞ります。語の一致の側のアナライザーに同義語のフィルタを入れ、商品名と一般名の違いを吸収します。

同義語のフィルタは synonym_graph を使います。 ドキュメントでは、synonym_graph は synonym の発展版で、複数の語からなる同義語を扱えるとされています。「経皮的冠動脈形成術」と「PCI」のように、片方が複数の語に分かれる組が多いからです。書式は既定の solr 形式で、次のように1行に1組を書きます。

経皮的冠動脈形成術, PCI
ランソプラゾール, タケプロン
2型糖尿病, Ⅱ型糖尿病, 2型DM

expand は既定のままにします。 既定では、1行に並べた語が互いに同じものとして扱われます。false にすると、すべてが行の先頭の語に寄せられます。商品名から一般名、一般名から商品名のどちらでも引けるように、既定のままが合っています。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 行への分割 … 通知の表は1行に1件の事由が並ぶ形なので、行の区切りを規則で取り、崩れたものだけを Claude に任せます
  2. 全角と半角、記号の統一 … 「Ⅱ」と「2」、全角の英数字をそろえます。同義語の辞書で吸収しきれない揺れを先に消します
  3. 患者の情報の除去 … 通知の文字から、患者の名前と生年月日にあたる部分を取り除いてから Claude に渡します
  4. 事由の文言の保持 … 事由は通知に書かれた記号と文言をそのまま持ちます。言い換えません
  5. 埋め込みの対象を絞る … 事由と対処の内容、予防の注意点の文だけを埋め込みます。点数は埋め込まず、数値の項目として持ちます
  6. 重複の検知 … 同じレセプトの同じ行が返戻と再請求の後の査定で二度出る場合は、ひも付けて1件の経緯として持ちます

3番目を軽く見ないでください。 通知の PDF には、患者を識別できる情報が載っています。行の取り出しに要るのは事由と対象だけなので、生成AIには渡さないところから始めます。

Step5

AIに処理させる

AIの仕事は2か所です。通知の行の取り出しと、検索結果の1文です。

場面させること
取り込み規則で分けられなかった通知の行を分け、審査月、区分、事由、対象の種類と名前、増減点数を取り出す
検索上位5件の過去の記録それぞれについて、新しい行と同じ理由といえるか(same/similar/different)と、違う点を1文で書く
させないこと理由
再審査請求をするかの判断責任者が、過去の結果と病院の方針で決める
症状詳記の文案診療の内容は医師が書く。医事課の記録から作った文案が詳記に入ると、事実と違うことが書かれるおそれがある
査定の当否の判断審査の判断を病院の側で決めつけない。過去の結果を示すだけにする
事由の言い換え通知の文言をそのまま使う。言い換えると次の検索で引けなくなる
記録に無い対処の提案過去の記録に無い対処は、担当者と責任者が考える

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 過去の記録に「症状詳記を付けて再審査、復活」とあると、AIは詳記の文案まで書こうとします。医事課の記録から作られた文案は、その患者の診療の事実を知らないまま書かれます。 詳記は医師に頼み、AIには書かせません。

Step6

指示内容を固定する

取り込み時(通知の行の取り出し):

あなたは病院の医事課で、審査支払機関からの通知を整理する担当です。
渡された通知の文字だけを根拠にしてください。推測で埋めないでください。

【やること】
通知を1行ずつに分け、それぞれについて次を取り出してください。
- 審査月
- 区分:返戻 / 査定
- 事由:通知に書かれた記号と文言をそのまま写す
- 対象の種類:drug / procedure / material / diagnosis / other
- 対象の名前:通知の表記をそのまま写す
- 増減点数(数値。書かれていなければ null)

【厳守事項】
- 事由の文言を言い換えたり、要約したりしないでください。
- 対象の名前を一般名や正式名に直さないでください。表記のまま写してください。
- 行の区切りが判断できない箇所は、split_uncertain を true にしてください。
- 患者の名前や生年月日にあたる文字が残っていても、出力に含めないでください。

検索時(同じ理由かの1文):

あなたは医事課の担当者が過去の対処を調べるのを助ける担当です。
渡された情報だけを根拠に、新しい通知の行と過去の記録を比べてください。

【新しい通知の行】{line}
【過去の記録(上位5件)】{records}

【書くこと】
各記録について、
1. 新しい行と同じ理由といえるか:same / similar / different
2. 違う点(1文。無ければ「なし」)

【厳守事項】
- 再審査請求をすべきか、受け入れるべきかを書かないでください。
- 症状詳記の文案を書かないでください。
- 査定が妥当かどうかを書かないでください。
- 記録に書かれていない対処や結果に触れないでください。
- 「結果不明」の印のある記録は、その旨を書いてください。

「同じ理由か」を3つの値に限るのは、担当者の読み方をそろえるためです。 自由文で「おおむね同様と考えられます」と書かれると、担当者によって読み方が分かれます。same は事由と対象がどちらも一致、similar は片方だけ、different はどちらも違う、と指示の外で定義し、担当者の手順書にも書きます。

「再審査請求をすべきか書かない」を入れないと、過去の結果から推して「再審査請求が有効と考えられます」と添えてきます。 過去に通った1件があるだけで、今回も通るとは限りません。判断の材料と判断そのものを、ここで分けます。

Step7

出力形式を固定する

取り込み時の行は、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "notice_month": "2026-09",
  "notice_type": "increase_decrease | return",
  "lines": [
    {
      "line_no": 0,
      "category": "返戻 | 査定",
      "reason_text": "",
      "target_type": "drug | procedure | material | diagnosis | other",
      "target_name": "",
      "points": null,
      "split_uncertain": false
    }
  ]
}

検索結果は、次の形で画面に返します。

{
  "line_no": 0,
  "matches": [
    {
      "record_id": "",
      "review_month": "",
      "department": "",
      "reason_text": "",
      "target_name": "",
      "action": "resubmit | reexamine | accept",
      "action_detail": "",
      "outcome": "restored | partially_restored | upheld | accepted | unknown",
      "prevention_note": "",
      "sameness": "same | similar | different",
      "difference": ""
    }
  ]
}

1つ目の理由は、reason_text と target_name を通知の表記のまま持てることです。 言い換えずに持つので、同義語の辞書を足せば、過去のカードを作り直さずに検索で届くようになります。 正式名に直して持つと、直し方の誤りが索引に残ります。

2つ目は、outcome で絞り込めることです。 「同じ理由で、再審査で復活した記録だけ」「原審どおりだった記録だけ」を並べられるので、同じ再審査請求をもう一度出す前に、通らなかった記録が目に入ります。

3つ目は、sameness と department で月末の一覧が作れることです。 same の記録が毎月出ている事由と診療科の組は、繰り返している理由として、診療科への予防の働きかけの候補になります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
所定のフォルダ(S3)保存の通知で Lambda が動く通知の PDF の取り込み
Claude(Amazon Bedrock)Lambda からの呼び出し通知の行の取り出しと、同じ理由かの1文
Amazon Titan Text Embeddings V2Lambda からの呼び出し事由と対処の文の埋め込み
Amazon OpenSearch Service索引への登録、ハイブリッド検索対処記録の検索
同義語の辞書(S3 とパッケージ)辞書のファイルの更新とパッケージの更新検索用のアナライザーの同義語
医事課の画面行の確認、対処と結果の入力担当者の操作

辞書のファイルを S3 に置くときは、暗号化のかけ方に注意します。 ドキュメントでは、辞書に機密の情報が含まれるなら S3 が管理する鍵でのサーバー側の暗号化を指定するよう案内され、AWS KMS の鍵で保護したファイルには OpenSearch Service がアクセスできないとされています。薬剤名の辞書に患者の情報は入りませんが、鍵の選び方で取り込みが止まることを先に知っておきます。

レセプトコンピュータとオンライン請求システムには書き込みません。 再請求と再審査請求は、担当者がこれまでどおりの手順で行います。

Step9

人が確認する

  1. 通知の行を確かめる … 取り出した行を PDF と見比べます。split_uncertain の付いた行を優先します
  2. 同じ理由かを確かめる … same と出た記録も、当時のレセプトの写しで傷病名と診療行為を確かめます
  3. 方針は責任者が決める … 再審査請求をするか、受け入れるかは、医事課の責任者が決めます
  4. 症状詳記は医師が書く … 過去の記録で詳記を付けて通ったものがあれば、その事実を医師に伝えて頼みます
  5. 結果を入れる … 再請求の受付や再審査の結果が出たら、結果の区分を入れます。これが次の検索の材料になります

1件4分を目安にします。 行の確認、上位の記録の確認、対処の案を作る時間です。1文だけを読んで方針を決める運用にはしません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
PDF に文字の層が無い担当者が手で行を入れる。件数を月ごとに数える
行の区切りが崩れるsplit_uncertain。担当者が PDF を見て分ける
同じ理由の記録が0件「過去の記録なし」と表示し、同義語の辞書に足す組がないかを担当者が見る
結果不明の記録しか出ない印を付けて表示し、長くいる担当者に当時の結果を聞いて入れる
辞書を更新しても検索が変わらない検索用のアナライザーに updateable: true が付いているかを確かめる
辞書のパッケージの取り込みが失敗するS3 のファイルが KMS の鍵で暗号化されていないかを確かめる
Bedrock の呼び出しに失敗した検索結果だけを表示し、1文は再試行を促す
再審査請求に資料を添付するオンラインではなく郵送で提出する。添付した資料と提出の方法を記録に残す

上から3行目が、運用の初めにいちばん多く出ます。 多くは記録が無いのではなく、辞書に組が無いだけです。 届かなかった組を毎月足すと、この行は減っていきます。

Step11

記録を残す

  • 取り込んだ通知の審査月と、取り出した行のJSON、担当者が直した項目
  • 検索のたびの問い合わせと、候補の記録、1文
  • 担当者が作った対処の案と、責任者の決定
  • 対処の結果と、結果を入れた日
  • 再審査請求の提出の方法(オンライン/郵送)と、添付した資料の有無
  • 「過去の記録なし」になった行と、その後に辞書へ足した組

最後の行は、辞書を育てる材料になります。 どの組が足りなかったかを残しておけば、辞書を誰が作っても同じ順で足していけます。

04実装レベルの3段階

最小構成:記録と通知の行を手でAIサービスに貼り、同じ理由の記録を選ばせる / 1つの診療科での試し
半自動化:上記+通知の行の取り出しを Claude で行い、記録は語の一致だけで検索する / 行の取り出しと、語による検索
本格構成:上記+同義語の辞書、埋め込みとハイブリッド検索、同じ理由かの1文、月末の件数の一覧 / 通知が届いてから過去の記録が並ぶまで

最小構成では、1つの診療科しか扱えません。 記録を手で貼るので、確かめるための段階です。 半自動化で、行の取り出しと語による検索までは自動になります。 ただし同義語の辞書と文章の近さが無いので、書き方の違う同じ理由の記録には届きません。 本格構成との差はここで、本記事の想定は本格構成です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
360 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
4 分
現在  360件 × 15分 ÷ 60 = 90 時間/月
導入後 360件 × 4分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
66h
削減率
73%
年間削減時間
792h
年間金額換算(時間単価3,000円)
238万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 病床数が数百床規模で、毎月数百件の返戻・査定を受け、その対処を医事課の数名で回している病院。過去の返戻・査定とその対処の記録がスプレッドシートや医事課の共有フォルダにたまっているが、同じ理由のものを探すのに時間がかかり、経験の長い担当者に聞くしかない場合。同じ理由の査定が毎月のように繰り返され、診療科への予防の働きかけが続かない場合。AWS を病院のシステムの基盤として使える場合。
向いていない
  1. 返戻・査定が月に数十件で、担当者の記憶と一覧表で足りる診療所。過去の対処の記録が残っておらず、何をして結果がどうだったかを辿れない場合(先に記録を残す運用から始める)。院外のクラウドに診療情報を置くことについて、病院の方針が決まっていない場合。なお、再審査請求をするか、症状詳記に何を書くかの判断は、医事課の責任者と医師に残ります。

07最小構成で試す方法

  1. 査定の多い診療科を1つ選び、過去2年分の対処記録から結果の入っている200行を選ぶ
  2. 先月の通知から、その診療科の行を30行選ぶ
  3. 手元のAIサービスに、200行の記録(患者の情報を除いたもの)と30行の通知を貼り、「各通知の行について、同じ理由の記録を5つ選び、same / similar / different と違う点を書いてください。再審査請求をすべきかは書かないでください」と頼む
  4. 選ばれた記録を、長くいる担当者が「この事由ならこれ」と思い浮かべる記録と突き合わせる
  5. 届かなかった組を書き出し、同義語の辞書の最初の版にする

30行は必ず、長くいる担当者と一緒に見てください。 事由と対象で選ぶことが、その人の記憶と合っているかを確かめます。

出てきた内容判断
担当者が思い浮かべる記録が選ばれる取り込みと検索基盤の構築に進む
薬剤名の書き方の違いで届かない同義語の辞書で直る。 構成は有効
事由も対象も同じなのに、担当者が「傷病名が違うから別」と言う傷病名を項目に足す。 比べ方が1つ分かったということ

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、担当者が暗黙に見ていた条件が1つ分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが症状詳記の文案を書く指示で禁じる。 詳記は医師に頼む
結果の入っていない記録をカードにする結果が出てから登録する。 過去分は「結果不明」の印
商品名と一般名で記録に届かない同義語の辞書を検索用のアナライザーに置く
辞書を更新しても検索が変わらないupdateable: true を付け、検索用のアナライザーだけで使う
辞書の取り込みが失敗するKMS の鍵で暗号化したファイルは読めない。 S3 が管理する鍵にする
複数の語からなる診療行為の名前で届かないsynonym ではなく synonym_graph を使う
事由の文言を正式な言い方に直して持つ次の検索で引けなくなる。通知の表記のまま持つ
患者の情報が生成AIに渡る取り出しの前に除き、検索基盤にも入れない

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 1行目は詳記に事実と違うことが書かれる失敗、2行目は使われない検索になる失敗です。判断の材料と判断そのものを分け、結果の付いた記録だけを育てるかどうかで、医事課に使われるかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: レセプトの事由と対象の診療行為・薬剤、傷病名、診療科、そして通知の PDF に載る患者を識別できる情報です。診療の情報は要配慮個人情報にあたり、病院でもっとも慎重に扱う情報です。

  1. 病院の安全管理の方針に沿わせる … 厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は第7.0版(令和8年6月)が公開されており、概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編から成ります。クラウドに何を置くかを、この構成を作る前に病院の情報システムの責任者と決めます
  2. 患者を識別できる情報を検索基盤に入れない … 検索に要るのは事由と対象だけです。患者番号との対応は医事課の中の一覧に残し、索引にも生成AIにも渡しません
  3. 生成AIに渡る範囲を確かめる … Amazon Bedrock のドキュメントでは、モデルの提供者は Bedrock のログや利用者のプロンプトと出力にアクセスできないとされています。それでも渡すのは、患者の情報を除いた通知の行と記録だけにします
  4. 審査への対応の判断をAIに寄せない … この構成が出すのは、過去にどう対処し、結果がどうだったかの事実までです。再審査請求をするか、症状詳記に何を書くかは、責任者と医師が決めます

誤りが起きた場合のリスクは、事実と違う詳記や根拠の薄い再審査請求が出ることと、患者の情報が院外に出ることの2つです。 前者はAIに判断と文案をさせない設計で、後者は取り出しの前の除去と索引の項目の決め方で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:対処記録の項目と結果の区分を決める

医事課の責任者と長くいる担当者で、対処と結果の区分、予防の注意点の書き方を決めます。あわせて、クラウドに置く範囲を病院の情報システムの責任者と確かめます。

2週目:200行と30行で試す

1つの診療科の記録200行と、先月の通知30行で試します。担当者が思い浮かべる記録と合っているか、届かなかった組は何かを見ます。

3週目:同義語の辞書の最初の版を作る

届かなかった組と、査定の多い薬剤・診療行為の上位から、辞書を作ります。商品名と一般名、略称と正式名の組から始めます。

4週目:通知の取り込みを始める

翌月の通知から、行の取り出しと担当者の確認を始め、結果が出たものをカードにためます。この時点では検索は語の一致だけにします。

2か月目: OpenSearch Service の索引を作り、辞書のパッケージを関連付け、埋め込みとハイブリッド検索を足します。3か月目以降: 過去7年分を一括で取り込み、同じ理由かの1文と月末の件数の一覧を足します。通知が届いた週に、長くいる担当者への「この事由、前はどうした」という質問が減り、繰り返す理由が毎月診療科に届くようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
当座口振込通知書、増減点連絡書、返戻内訳書、再審査等支払調整額通知票などが PDF にされ、毎月5日ごろにオンライン請求システムで配信されていること。運営が医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)であることDX審査支払機構: 増減点連絡書・各種通知書の見方2026-10-06
オンライン請求の医療機関は原則オンライン請求システムで再審査等の請求を提出し、ファイル作成ツールかファイルレイアウトでファイルを作ること。紙ではレセプト1件ごとに再審査等請求書を作ること。資料を添付する場合は郵送で提出することDX審査支払機構: 再審査請求(取下げ)の方法2026-10-06
同義語や停止語の辞書のファイルを S3 にアップロードしてパッケージとしてドメインに関連付け、analyzers/<ID> で synonyms_path に指定すること。updateable: true が検索用のアナライザーにだけ効き、更新が自動で反映されること。索引用のアナライザーでは閉じて開くか再索引が要ること。KMS の鍵で保護したファイルに OpenSearch Service がアクセスできないことAmazon OpenSearch Service: Importing and managing packages2026-10-06
synonym_graph が synonym の発展版で複数の語からなる同義語を扱えること。synonyms か synonyms_path の指定が必要なこと。書式が solr(既定)と wordnet であること。expand が既定で有効で、false では先頭の語に寄せられることOpenSearch Documentation: Synonym graph token filter2026-10-06
モデルの提供者が Bedrock のログや利用者のプロンプトと出力にアクセスできないことAmazon Bedrock: Data protection2026-10-06
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第7.0版(令和8年6月)が公開され、概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編から成ること厚生労働省: 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン2026-10-06

再審査請求をするか、症状詳記に何を書くかは、医事課の責任者と医師が判断してください。 本記事は公開仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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