社内規程を改定したときに、他の規程や様式との食い違いを洗い出す
規程の改定案を入力に、他の規程からの参照、用語の定義、数値や期間の食い違いを洗い出します。法務担当の作業は、影響しそうな規程を記憶で探して読み比べることから、指摘された箇所を確かめることに変わります。
- 利用ツール
- ChatGPT/Claude/Gemini/Make/n8n/Power Automate/Python
- 対象業界
- IT・SaaS/士業/製造/金融
- 対象部門
- 法務/総務
- 対象業務
- 内容確認・チェック/情報検索
- 主な課題
- 属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 校正
- 主な効果
- 品質標準化/属人化解消/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 所管部門から改定案を受け取る(Wordの変更履歴付き)
- 法務担当が改定内容を読み、影響しそうな規程を思い浮かべる
- SharePointで規程を検索し、該当しそうなものを開く
- 目次から関係のありそうな章を探し、読み比べる
- 条番号が変わる改定の場合、他の規程が引用していないかを探す
- 改定内容に対応する様式・帳票がないかを確認する
- 食い違いが見つかれば、所管部門と協議して修正する
- 施行日を確認し、他の規程の改定と整合させる
- 改定案を確定し、稟議に回す
- 所管部門から改定案を受け取り、SharePointの改定フォルダに置く
- 自動改定前後を比較し、変更箇所(追加・削除・修正・条番号の移動)を特定する
- 自動規程の参照地図から、改定した規程を引用している他の規程を洗い出す
- 自動条番号が移動した条文について、他の規程からの引用が壊れていないかを確認する
- 自動改定で定義や数値が変わった語について、他の規程での記述と突き合わせる
- 自動改定内容に対応する様式・帳票を、様式台帳から洗い出す
- 自動食い違いを一覧にする(該当箇所の原文つき)
- 人法務担当が指摘を確かめ、所管部門と協議する内容を決める
- 人改定案を修正し、稟議に回す
- 自動施行後、規程の参照地図を更新する
各工程の詳しい説明を読む
- 所管部門から改定案を受け取る(Wordの変更履歴付き)
- 法務担当が改定内容を読み、影響しそうな規程を思い浮かべる
- SharePointで規程を検索し、該当しそうなものを開く
- 目次から関係のありそうな章を探し、読み比べる
- 条番号が変わる改定の場合、他の規程が引用していないかを探す
- 改定内容に対応する様式・帳票がないかを確認する
- 食い違いが見つかれば、所管部門と協議して修正する
- 施行日を確認し、他の規程の改定と整合させる
- 改定案を確定し、稟議に回す
問題は5つあります。
(a)62本を横断して探せない。 「この改定に関係する規程はどれか」を機械的に出す手段がありません。担当者の記憶が唯一の索引です。
(b)参照の書き方が揺れている。 「別に定める」「◯◯規程による」「就業規則第32条」「前項の定めるところにより」と、書き方がばらばらです。文字列検索では拾えません。
(c)条番号のずれで引用が壊れる。 条文を1つ追加すると、以降の条番号が1つずつずれます。他の規程が「第32条」を引いていれば、その引用は別の条文を指すようになります。 これがもっとも多い事故です。
(d)様式・帳票への影響が漏れる。 規程で記載事項を追加したのに、申請書の様式がそのまま、ということが起きます。180種の様式を毎回確認する時間はありません。
(e)2名に依存している。 規程の全体像を把握しているのがこの2名だけで、異動すると再現できません。
- 所管部門から改定案を受け取り、SharePointの改定フォルダに置く
- 【自動】 改定前後を比較し、変更箇所(追加・削除・修正・条番号の移動)を特定する
- 【自動】 規程の参照地図から、改定した規程を引用している他の規程を洗い出す
- 【自動】 条番号が移動した条文について、他の規程からの引用が壊れていないかを確認する
- 【自動】 改定で定義や数値が変わった語について、他の規程での記述と突き合わせる
- 【自動】 改定内容に対応する様式・帳票を、様式台帳から洗い出す
- 【自動】 食い違いを一覧にする(該当箇所の原文つき)
- 【人】 法務担当が指摘を確かめ、所管部門と協議する内容を決める
- 【人】 改定案を修正し、稟議に回す
- 【自動】 施行後、規程の参照地図を更新する
自動化されるのは「差分を取る」「引用元を探す」「定義を突き合わせる」「様式を洗い出す」の4つです。残るのは「どちらに合わせるかを決める」で、これは法務担当と所管部門の仕事です。
02今回想定するシステム構成
所管部門(改定案・Wordの変更履歴付き) │ ▼ SharePoint の改定フォルダ │ ▼【トリガー】ファイルが作成されたとき Power Automate │ ├──▶ 改定前後の差分の抽出(追加 / 削除 / 修正 / 条番号の移動) │ ├──▶ 規程の参照地図を引く(どの規程が、どの条文を引いているか) │ ├──▶ LLM API ── 引用の破損の確認 │ + 用語の定義の突合 │ + 数値・期間・金額の突合 │ + 様式・帳票への影響の洗い出し │ ▼ 整合チェックの一覧(該当箇所の原文つき)──【法務担当が確認】 │ ├──▶ 所管部門と協議 │ ▼ 改定案の確定 ── 稟議 ── 施行 │ ▼【施行後】 規程の参照地図を更新
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 生成AI | Claude API | OpenAI API、Gemini API |
| 連携 | Power Automate | Make、n8n、Python |
| 保管 | SharePoint | Box、Google Drive |
| 規程の参照地図 | SharePoint リスト | Google スプレッドシート |
規程管理システム(規程の版管理、参照関係の管理、改定ワークフローを一体で扱うもの)が存在します。 まずそれを検討してください。自前で組む価値があるのは、すでにWordとSharePointで管理していて、システムを入れ替えずに整合チェックだけを足したい場合です。
検索基盤を置かず、生成AIに直接読ませる構成にしています。 規程62本・約1,200ページは、文字数にして100万字程度です。改定のたびに全文を渡すのは効率が悪いため、参照地図で関係する規程を絞ってから渡します。 絞り込んだ結果は、多くの場合3〜8本の規程に収まり、これは1回の呼び出しで扱える範囲です。
Claude を選んだのは、長い文書をまとめて読ませる用途に向くためです。 プロジェクトに規程を置いて参照させる使い方もできます。他の生成AIでも、同じ考え方で成立します。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
SharePointの改定フォルダにファイルが作成されたことを起点にします。Power Automate の SharePoint コネクタには「ファイルが作成されたとき」トリガーが標準で用意されています。
改定案をWordの変更履歴付きで提出してもらうことを、運用の前提にしてください。 変更履歴がないと、差分の抽出を機械的に行えません。「改定前」「改定後」の2ファイルを出してもらう形でも構いませんが、どちらかに統一します。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 改定案 | 変更履歴付きのWord、または改定前後の2ファイル | 所管部門 |
| 全規程 | 62本の規程本文(条番号、見出し、本文) | SharePoint |
| 規程の参照地図 | どの規程の第何条が、どの規程の第何条を引いているか | 法務(新しく作る) |
| 用語の定義集 | 規程ごとに定義されている用語と、その定義 | 法務(新しく作る) |
| 様式台帳 | 様式の名称、様式番号、根拠となる規程と条文 | 総務(整備が必要) |
| 改定の履歴 | 過去の改定と施行日 | SharePoint |
| 法令の対応関係 | 規程が対応している法令(労働基準法、個人情報保護法など) | 法務 |
「規程の参照地図」が、この構成の中核です。
1行に1つの参照を持ちます。
| 列 | 例 |
|---|---|
| 参照元の規程 | 旅費規程 |
| 参照元の条 | 第8条第2項 |
| 参照の文言 | 就業規則第32条に定める |
| 参照先の規程 | 就業規則 |
| 参照先の条 | 第32条 |
| 参照の種類 | 明示(条番号あり)/包括(「別に定める」)/用語の準用 |
この地図は、最初に1度作れば、改定のたびに更新するだけで維持できます。 62本から参照を拾う作業は、生成AIに手伝わせられます(後述)。
「用語の定義集」も同様です。 「従業員」「就業日」「所定労働時間」「機密情報」といった語が、どの規程の第何条で、どう定義されているかを並べます。同じ語が複数の規程で違う定義になっていることが、作った時点で見つかります。
データの取得方法を決める
改定案の差分: Wordの変更履歴から、追加・削除・修正を抽出します。変更履歴がない場合は、改定前後のテキストを比較します。条番号の移動を検出することが重要です。 「第12条を追加した」ことと「旧第12条以降が1つずつ繰り下がった」ことは、別の情報として扱います。
規程本文の構造化: 各規程を「条 → 項 → 号」の構造に分解します。規程の書式が統一されていれば、見出しの正規表現で分解できます。 統一されていない場合は、この整備が先です。
参照地図の初期作成: 全規程の本文から、他の規程・条文への参照を抽出します。
生成AIに1規程ずつ読ませ、「この規程が他の規程や条文を参照している箇所」を挙げさせます。62本で62回の呼び出しです。 抽出結果を法務担当が確認して、地図を作ります。この作業に1〜2週間かかりますが、1度だけです。
AIへ渡す前に整形する
- 改定箇所の分類 … 変更を「文言の修正」「条文の追加」「条文の削除」「条番号の移動」「別表・様式の変更」に分けます
- 条番号の移動の追跡 … 追加・削除によって何条から何条に移ったかの対応表を作ります。これが引用の破損を見つける材料です
- 参照地図の引き当て … 改定した条文を参照している他の規程を洗い出します
- 定義が変わった語の抽出 … 改定で定義や数値が変わった語を特定します
- 関係規程の絞り込み … 参照地図と用語の定義集から、今回読む必要のある規程を3〜8本に絞ります
- 様式の引き当て … 改定した条文を根拠とする様式を、様式台帳から洗い出します
2番目を必ず実装してください。 条番号の移動による引用の破損は、この業務でもっとも多く、かつ機械的に確実に検出できる種類の問題です。
AIに処理させる
条番号の移動の追跡と、参照地図の引き当ては、プログラムで行います。 機械的に決まることにLLMを使う必要はありません。
LLMにさせること:
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 引用の破損の確認 | 移動した条番号を引いている記述が、意味として通るかを確認する |
| 包括的な参照の解釈 | 「別に定める」「関係規程による」が、今回の改定に関係するかを判断する材料を出す |
| 用語の定義の突合 | 改定で定義が変わった語が、他の規程でどう使われているかを並べる |
| 数値・期間・金額の突合 | 「60日」「2か月」のように表記が違う同じ値を見つける |
| 様式への影響の指摘 | 記載事項の追加・変更が、様式の項目に影響するかを指摘する |
| 施行日の整合の確認 | 関連する規程の施行日が揃っているかを確認する |
「どちらが正しいか」を決めさせないでください。
「就業規則では60日、育児介護休業規程では2か月」と並べるところまでです。どちらに合わせるかは、法令の要請、実務の運用、所管部門の意向を踏まえて決めることであり、文書を読むだけでは決まりません。
同じ理由で、改定案の修正文を作らせないでください。 「第8条を『就業規則第33条』に修正してください」という指摘までは出しますが、修正後の条文そのものをAIに書かせると、確認が形骸化します。
指示内容を固定する
あなたは、社内規程の改定における整合の確認を支援する担当者です。
改定案と関係する規程を読み、食い違いを指摘してください。
【厳守事項】
- どちらが正しいかを判断しないでください。
「就業規則に合わせるべきです」「こちらが誤りです」と書かないでください。
食い違っている事実と、双方の記述を並べるだけにしてください。
- 修正後の条文を書かないでください。
「どの条文の、どの記述が、何と食い違っているか」を示すところまでです。
- 指摘には必ず、双方の原文を quote として引用してください。
要約した文言で指摘しないでください。
- 規程に書かれていないことを補わないでください。
「おそらく意図としては〜」と推測しないでください。
- 法令の解釈をしないでください。
「労働基準法に違反する可能性があります」と書かないでください。
法令との関係が疑われる場合は、needs_legal_review に該当箇所を挙げるだけにしてください。
- 包括的な参照(「別に定める」「関係規程による」)については、
今回の改定に関係するかどうかを断定せず、
「確認が必要」として関係しうる規程を挙げてください。
- 数値・期間・金額については、表記が違っても同じ値なら食い違いとしないでください
(60日と2か月が同じ意味かどうかは文脈によるため、
判断できない場合は uncertain に入れてください)。
【改定する規程】
{target_policy_name}
【改定の内容(差分)】
{diff}
【条番号の移動の対応表】
{article_renumbering}
【この改定を参照している他の規程(参照地図より)】
{referencing_policies}
【関係する規程の本文】
{related_policy_texts}
【用語の定義集の該当行】
{term_definitions}
【改定した条文を根拠とする様式(様式台帳より)】
{related_forms}
「どちらが正しいかを判断しないでください」の1行が、この構成の安全装置です。 これを書かないと、LLMは「就業規則の記載が正しく、旅費規程を修正すべきです」と書きます。その判断が誤っていても、読んだ担当者が気づかないまま所管部門に伝えてしまいます。
「法令の解釈をしないでください」も必ず入れてください。 規程が法令に適合しているかの判断は、法務部門と顧問弁護士・社会保険労務士の業務です。
出力形式を固定する
{
"revision_id": "",
"target_policy": "",
"diff_summary": {
"articles_added": [],
"articles_deleted": [],
"articles_renumbered": [],
"text_changes": 0
},
"findings": [
{
"type": "broken_reference | term_definition | numeric_mismatch | form_impact | effective_date | uncertain",
"severity": "high | medium | low",
"source": {
"policy": "",
"article": "",
"quote": ""
},
"counterpart": {
"policy": "",
"article": "",
"quote": ""
},
"description": "",
"action_required_by": "法務 | 所管部門 | 総務(様式) | 未定"
}
],
"forms_to_review": [],
"needs_legal_review": [],
"uncertain": [],
"reference_map_updates": []
}
双方の quote(原文)を必ず残します。 「食い違いがあります」だけでは、法務担当が該当箇所を探すことになり、削減効果が消えます。
severity の目安は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
high | 条番号の引用が壊れている/用語の定義が矛盾している/法令に関わる数値の食い違い |
medium | 様式への影響/施行日のずれ |
low | 表記の揺れ(「従業員」と「社員」の混在など) |
reference_map_updates には、この改定によって参照地図をどう更新すべきかを入れます。施行後にこれを反映すれば、地図が維持されます。
なお、Claude API には出力をJSONスキーマに沿わせる構造化出力の機能があります(2026-09-16時点ではベータ機能として提供)。項目が多い出力なので、利用できると形の崩れを防げます。
システムへ連携する
| つなぐ先 | 内容 |
|---|---|
| SharePoint | 改定案の受け取り、規程本文の取得、結果の保管 |
| SharePoint リスト(参照地図) | 参照関係を引く。施行後に更新する |
| SharePoint リスト(用語の定義集) | 定義を引く |
| SharePoint リスト(様式台帳) | 様式への影響を洗い出す |
| Teams / Outlook | 所管部門・総務に協議の依頼を出す |
改定案そのものを自動で修正しないでください。 規程の条文は、承認の経路(稟議・取締役会)を経て確定するものです。機械が書き換えた条文が混ざると、どの版が正か分からなくなります。
参照地図の更新は、施行後に行います。 改定案の段階で更新すると、稟議で差し戻されたときに地図が現実と合わなくなります。
人が確認する
すべての指摘を法務担当が確認します。
見る優先順位は次のとおりです。
| 優先 | 対象 | 対応 |
|---|---|---|
| 1 | broken_reference(条番号の引用の破損) | 確実に直す。 機械的に検出できるので見落としてはいけない |
| 2 | term_definition(用語の定義の矛盾) | 所管部門と協議して、どちらに合わせるかを決める |
| 3 | needs_legal_review | 顧問弁護士・社会保険労務士に確認する |
| 4 | numeric_mismatch | 数値の意味を確認する |
| 5 | form_impact(様式への影響) | 総務と協議する |
| 6 | uncertain | 内容を読んで、食い違いかどうかを人が判断する |
uncertain を軽く見ないでください。 「60日」と「2か月」が同じ意味かどうかは、起算日の定め方によって変わります。AIが判断できないと言っているものは、実際に判断が難しいものです。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 改定案に変更履歴がない | 改定前後の2ファイルの比較に切り替える。どちらもなければ処理を止める |
| 規程の書式が統一されておらず条文に分解できない | 分解できた範囲で処理し、できなかった規程を明示する。黙って飛ばさない |
| 「別に定める」が今回の改定に関係するか判断できない | uncertain として、関係しうる規程を挙げる。断定しない |
| 参照地図に載っていない参照がある | 検出したら reference_map_updates に追加候補として挙げる |
| 用語の定義集に載っていない語の定義が変わった | 定義集への追加候補として挙げる |
| 様式台帳が整備されていない | 様式への影響の洗い出しができない。「確認できていない」と明示する |
| 複数の規程を同時に改定する | 改定案どうしの整合も確認対象にする。1本ずつ独立に処理しない |
| 法令改正への対応で、複数の規程が一斉に変わる | 施行日の整合を必ず確認する。先に施行された規程が、まだ改定されていない規程を引く状態を検出する |
| 改定が差し戻された | 参照地図を更新しない。施行を条件にする |
| 過去の版を参照している記述がある | 版数まで含めて突き合わせる |
記録を残す
- 改定案(改定前後、変更履歴つき)
- 差分の抽出結果と、条番号の移動の対応表
- 整合チェックの一覧と、双方の原文
- 法務担当が「食い違いではない」と判断した指摘と、その理由
- 所管部門との協議の記録
- 確定した改定案と施行日
- 参照地図・用語の定義集の更新履歴
「食い違いではないと判断した指摘と理由」が資産になります。 「この2つの規程で『従業員』の範囲が違うのは意図的(一方は出向者を含む)」といった判断が蓄積すれば、次回から同じ指摘を抑えられます。 誤検知が減ることで、一覧が読まれ続けます。
参照地図と用語の定義集の更新履歴を必ず残してください。 過去のある時点で規程がどう繋がっていたかを、後から確認する必要が生じることがあります。
04実装レベルの3段階
半自動化で効果の大半が出ます。 240分が100分程度になります。影響しそうな規程を探す90分がほぼ消えるためです。本格構成にすると80分程度ですが、本格構成の価値は時間より「参照地図が維持されること」にあります。 地図が古くなると、この構成は機能しなくなります。
05工数削減シミュレーション
導入後 6件 × 80分 ÷ 60 = 8 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 社内規程が30本以上あり、改定が月2件以上ある企業。規程が電子データ(WordまたはPDF)で管理されていること。規程どうしの参照や、規程と様式の対応があること。
- 規程が10本以下で、担当者が全文を把握できている場合。改定が年に数回しかない場合。規程が紙でしか存在せず、電子化の計画もない場合。規程管理システムに整合チェックの機能があり、それで足りている場合。
07最小構成で試す方法
- 過去に行った改定を1件選ぶ(条文の追加を含むもの)
- その改定に関係する規程を3本選ぶ(当時、法務担当が読み比べたもの)
- 改定案と3本の規程を生成AIに貼り、食い違いを挙げさせる
- 当時、法務担当が見つけた食い違いと比べる
見るのは次の4点です。
| 見る点 | 判断 |
|---|---|
| 当時見つけた食い違いを、AIも挙げたか | 挙げていれば下敷きとして使える |
| 当時見落としていた食い違いがあるか | 1つでもあれば、この構成には価値があります |
| どちらが正しいかを断定していないか | 断定していたら、プロンプトを強める。ここが最重要 |
| 双方の原文が引用されているか | されていなければ、確認に時間がかかる |
そのうえで、参照地図の作成を試してください。
- 規程を3本選び、生成AIに「この規程が他の規程や条文を参照している箇所をすべて挙げて」と指示する
- 法務担当が目で確認し、漏れと誤りを数える
この作業が現実的な時間で終わるかが、この構成を作れるかどうかの分かれ目です。 3本で試して、漏れが多いようなら、規程の書式の統一が先になります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| AIがどちらが正しいかを断定する | プロンプトで明確に禁止する。「すべき」「誤り」「正しい」といった語が出力に含まれていないか機械的に検査する。最重要 |
| 修正後の条文をAIが書く | 禁止する。指摘までにとどめる |
| 条番号の移動を追跡していない | 対応表を必ず作る。引用の破損はここでしか見つからない |
| 規程の書式が統一されておらず分解できない | 書式の統一を先に行う。できない規程は明示して人が見る |
| 参照地図が古くなる | 施行後に必ず更新する。更新を運用フローに組み込む |
| 「別に定める」を関係なしと自動判定する | uncertain にする。断定しない |
| 誤検知が多くて一覧が読まれない | 「食い違いではない」と判断した指摘を記録し、次回の前提に加える |
| 様式台帳がなく、様式への影響が確認できない | 「確認できていない」と明示する。黙って省かない |
| 複数規程の同時改定で、改定案どうしの整合を見ていない | 同時改定は1セットとして処理する |
| 法令の解釈がAIの出力に混ざる | 禁止する。needs_legal_review に挙げるだけにする |
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 社内規程の全文、改定の検討内容、施行前の改定案。施行前の改定案には、組織変更や制度変更の意思決定が含まれることがあります。
- 施行前の改定案の取り扱い … 人事制度の変更、組織再編、報酬制度の改定は、社内でも限られた範囲でのみ扱う情報です。外部サービスに送ることの可否を、自社の情報管理規程で確認してください
- 外部AIへの入力可否 … 規程には、自社の内部統制の仕組み、権限の分掌、セキュリティ対策が書かれています。これらは組織の構造を示す情報です。 テナント内で処理が完結する構成を選ぶ判断も合理的です
- 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
- アクセス権限 … 改定案と整合チェックの結果の閲覧を、法務部門と所管部門に限定します。人事制度に関わる改定は、さらに範囲を絞ってください
- 法令解釈をAIに委ねない … 規程が法令に適合しているかの判断は、法務部門と顧問の専門家の業務です。AIの出力に法令の解釈が混ざっていないか、検査する仕組みを入れてください
- 版の管理 … どの版が施行中かが分からなくなることが、規程管理の最大の事故です。AIが扱うのは改定案の検討であり、正本は従来どおり承認された版であることを、明確にしてください
- 自動実行してよい範囲 … 差分の抽出と食い違いの指摘までです。改定案の修正、所管部門への依頼、参照地図の更新の確定は、必ず人が行います
誤りが起きた場合のリスクは、不整合な規程の施行です。条番号の引用が壊れた規程は、その条文を根拠とする処分や手続きの正当性に影響します。 労務トラブルや監査の指摘として、後から問題になります。
10まず何から始めるか
1週目:規程の書式を点検する
62本の規程を開き、次を確認します。
- 条・項・号の書き方が統一されているか
- 目次と本文の条番号が一致しているか
- 改定履歴が各規程に記載されているか
統一されていないなら、そこを直すのが先です。 機械的に分解できない規程は、この構成の対象外になります。
2〜3週目:参照地図を作る
全規程から、他の規程・条文への参照を抽出します。生成AIに1本ずつ読ませ、法務担当が確認します。300〜600行の地図になります。
この作業の途中で、すでに壊れている引用が見つかります。 過去の改定で条番号がずれたまま放置されているものです。それ自体が、この構成を導入する理由になります。
4週目:用語の定義集を作る
規程で定義されている語を抽出し、規程ごとの定義を並べます。同じ語が違う定義になっている箇所が見つかります。
2か月目:過去の改定1件で試す
参照地図と定義集ができたら、過去の改定1件で整合チェックを試します。当時見落としていた食い違いが出るかを確かめてください。
3か月目以降: SharePointへの提出をきっかけとした自動チェックを作り、実際の改定で使います。240分が何分になるかを実測します。 並行して様式台帳を整備し、様式への影響の洗い出しを追加します。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| Claude のプロジェクトに参照用の文書(PDF、テキスト、Markdown など)をアップロードでき、そのプロジェクト内の会話で読ませられること | Claude Help Center: What are projects? | 2026-09-16 |
| Claude API に、出力をJSONスキーマに沿わせる構造化出力の機能があること(2026-09-16時点ではベータ機能) | Claude Platform Docs: Structured outputs | 2026-09-16 |
| Power Automate の SharePoint コネクタに「ファイルが作成されたとき」トリガーがあること | Microsoft Learn: SharePoint コネクタ | 2026-09-16 |
規程が法令に適合しているかの判断は、法務部門および顧問弁護士・社会保険労務士の業務です。この構成はその判断を行うものではありません。 施行前の改定案を外部サービスに送ることの可否は、自社の情報管理規程によります。規程の版管理と承認の経路は、自社の規程管理規程に従ってください。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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