製造現場の「この不良はどう処置するか」の質問に、不良処置基準書と限度見本の記録を根拠に答え、基準に無いものは品質管理へ回す
現場の作業者・検査員が品番と不良の内容を入れると、不良処置基準書と限度見本の記録を検索し、基準書に書かれた処置区分を出典付きで返します。基準に無いものは品質管理へ回します。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- 商社/製造
- 対象部門
- 品質管理/生産
- 対象業務
- 問い合わせ対応/情報検索
- 主な課題
- 判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 品質標準化/対応スピード向上/属人化解消
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 作業者または検査員が不良を見つけ、不良品を保留の棚へ置く
- 品番から該当の基準書を探し、不良の種類と程度で表を引く
- 見つからない、または程度の境界が分からないときは、品質管理へ内線で問い合わせる
- 品質管理の担当者が基準書と限度見本台帳を開き、必要なら現場まで来て現物を見る
- 過去に同じ不良があったかを、処置の記録で探す
- 処置区分を伝え、特採や廃却なら承認の手続きに回す
- 作業者が処置票に処置を書き、品質管理がシステムへ入力する
- 人作業者がラインのタブレットで品番を読み、不良の種類・部位・程度を選び、必要なら写真を付けて送る
- 自動中継プログラムが品番マスタから品番群と工程を引き、検索の絞り込みを組み立てる
- 自動Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが、基準書・限度見本の記録・過去の処置記録から回答を作り、出典を付けて返す
- 自動中継プログラムが、処置区分の出典が基準書の現行版かを確かめる
- 自動回答の処置区分の文を、裏付けの検査(check grounding API)で基準書の断片と照らし、支持の度合いを数値にする
- 自動該当行が無い、数値が低い、限度見本の境界に近い、特採・上長判断のいずれかなら、品質管理の待ち行列へ回す
- 自動それ以外は、処置区分・基準書の該当箇所・限度見本の写真をタブレットに返す
- 人班長が基準書の該当箇所を見て処置を確かめ、手直しを始める
- 人品質管理の担当者は、回ってきたものだけを見て処置を決める
各工程の詳しい説明を読む
- 作業者または検査員が不良を見つけ、不良品を保留の棚へ置く
- 品番から該当の基準書を探し、不良の種類と程度で表を引く
- 見つからない、または程度の境界が分からないときは、品質管理へ内線で問い合わせる
- 品質管理の担当者が基準書と限度見本台帳を開き、必要なら現場まで来て現物を見る
- 過去に同じ不良があったかを、処置の記録で探す
- 処置区分を伝え、特採や廃却なら承認の手続きに回す
- 作業者が処置票に処置を書き、品質管理がシステムへ入力する
(a)基準書の該当行が見つからない。 基準書は品番群で分かれていますが、現場の作業者が知っているのは品番だけです。どの冊子を開けばよいかから分からず、2番目を飛ばして3番目の内線に進むことが日常になっています。
(b)担当者によって処置が変わる。 境界に近い不良で、ある担当者は「上長判断」に回し、別の担当者は「手直し可」と答えます。基準書を引いて答える担当者と、記憶で答える担当者がいるためです。
(c)過去の特採が前例になる。 5番目で過去の記録を見ると、同じ不良が特採で使われた例が出てきます。その特採は顧客の了承を得た一回限りのものなのに、「前も使った」として同じ処置が検討されます。
(d)品質管理の担当者が席に戻れない。 1日30件の問い合わせのたびに呼ばれ、本来の工程内の不良の分析と再発防止の仕事が夜に回ります。
- 【人】 作業者がラインのタブレットで品番を読み、不良の種類・部位・程度を選び、必要なら写真を付けて送る
- 【自動】 中継プログラムが品番マスタから品番群と工程を引き、検索の絞り込みを組み立てる
- 【自動】 Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが、基準書・限度見本の記録・過去の処置記録から回答を作り、出典を付けて返す
- 【自動】 中継プログラムが、処置区分の出典が基準書の現行版かを確かめる
- 【自動】 回答の処置区分の文を、裏付けの検査(check grounding API)で基準書の断片と照らし、支持の度合いを数値にする
- 【自動】 該当行が無い、数値が低い、限度見本の境界に近い、特採・上長判断のいずれかなら、品質管理の待ち行列へ回す
- 【自動】 それ以外は、処置区分・基準書の該当箇所・限度見本の写真をタブレットに返す
- 【人】 班長が基準書の該当箇所を見て処置を確かめ、手直しを始める
- 【人】 品質管理の担当者は、回ってきたものだけを見て処置を決める
6番目が、この設計の分かれ目です。 現場へ直接返すのは、基準書に「手直し可」または「廃却」と明記されている場合だけです。特採申請と上長判断は、基準書に書いてあっても必ず品質管理に回します。 特採は不適合品を使う判断で、承認の手続きを現場で始めさせないためです。
8番目で班長が見るのは、AIの回答の文ではなく基準書の該当箇所です。 回答の文は、どの表のどの行を見ればよいかを示すためのものです。
02今回想定するシステム構成
ラインのタブレット(品番の読み取り・不良の種類/部位/程度・写真) ▼【トリガー】問い合わせの送信 中継プログラム(Python、Cloud Run) ├──▶ 品番マスタ → 品番群・工程・顧客区分 ▼ Agent Search(Vertex AI Search)── answer メソッド │ データストア:不良処置基準書(約120冊)+限度見本の記録(約900点) │ +過去の処置記録(直近3年) │ 絞り込み:product_family/process/status: current ▼ check grounding API ── 処置区分の文が基準書の断片で支えられているか ▼ 中継プログラム ── 振り分けの規則 ├──▶ 手直し可・廃却(基準書に明記) → タブレットへ回答 └──▶ 特採申請・上長判断・該当なし・低い支持 → 品質管理の待ち行列
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド | Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル) | ─ |
| 検証 | Agent Search の check grounding API(回答の裏付けの数値化) | 中継プログラムで出典の文字列一致を見る |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、タブレット・検索・待ち行列をつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 保管 | Cloud Storage(基準書・限度見本の写真・処置記録の原本とメタデータ) | ─ |
品番マスタと不適合処置のシステムは、新しく足すものではありません。 中継プログラムは品番マスタを読むだけで、処置の確定と入力はこれまでどおり品質管理が行います。最初の準備は、基準書の冊子ごとに、対象の品番群と現行/廃止の状態を管理表にまとめることです。
検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、includeCitations で回答に出典を付けられます。関係の薄い内容しか無いときは ignoreLowRelevantContent で回答を作らず、理由を answerSkippedReasons で返すとされています。基準書に該当行が無い不良に、それらしい処置区分を作らせないための設定です。
基準書の表を読むのは、レイアウトパーサーです。 段落・表・画像・リスト・見出しを検出し、PDF・DOCX・XLSX などに対応するとされています。表の注釈と画像の注釈を付ける機能もあり、限度見本の写真には説明が付いた断片として検索に入ります。
裏付けの検査は、check grounding API で行います。 回答の候補と根拠の断片を渡すと、0から1の支持の度合いと、文ごとの出典を返すとされています。根拠の断片は1回に200件まで、1件1万文字まで、出典と見なす境目の既定は0.6です。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は、作業者がラインのタブレットから問い合わせを送ったことです。 品番はバーコードで読み、不良の種類・部位・程度は選択肢で選ばせます。自由文の欄は最後に1つだけ置きます。 自由文だけで聞かせると、「白い筋」「ウエルド」「流れ跡」のように同じ不良が人によって違う言葉で届き、検索が外れます。
問い合わせは1件ずつ、送られたその場で処理します。 不良品が保留の棚に置かれている時間を縮めるのが目的なので、まとめて処理する理由がありません。
同じ品番・同じ不良の問い合わせが30分以内に続いたら、新しく検索せず、最初の回答と同じものを返します。 1つの金型の不具合で、同じ不良が続けて見つかることがよくあります。そのたびに品質管理の待ち行列が埋まらないよう、2件目からは件数だけを足します。 件数が5件を超えたら、品質管理へ「同じ不良が続いている」と知らせます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 問い合わせ | 品番、ライン、工程、不良の種類、部位(外観面/非外観面)、程度、写真、自由文 | ラインのタブレット |
| 品番マスタ | 品番、品番群、工程、顧客区分 | 生産管理のシステム |
| 不良処置基準書 | 不良の種類×程度×部位ごとの処置区分と、手直しの方法 | 共有フォルダのPDF |
| 基準書のメタデータ | 冊子の番号、対象の品番群、版、現行/廃止、施行日 | 品質管理の管理表 |
| 限度見本の記録 | 見本の番号、品番群、不良の種類、写真、「ここまでは良品」の注記 | 限度見本台帳 |
| 過去の処置記録 | 発生日、品番、不良、数量、処置区分、承認者、特採の承認番号 | 不適合処置のシステムから書き出したもの |
質を決めるのは、品番から品番群を引けることと、基準書の「現行/廃止」です。 品番群が引けなければ絞り込みができず、120冊の基準書全体から似た表を拾います。旧版の基準書が残っていると、変わる前の処置区分を返します。
過去の処置記録に特採の承認番号を残すのは、後段で使うためです。 承認番号のある記録は「その時だけ認められた処置」であることが、中継プログラムに分かります。
データの取得方法を決める
基準書・限度見本の記録・処置記録は、Cloud Storage に置いてデータストアに取り込みます。 文書ごとのメタデータには、冊子の番号、品番群、工程、文書の種類、現行/廃止、施行日を持たせます。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 品番群・工程・顧客区分 | 品番マスタ | 絞り込み |
| 基準書の表の断片 | データストア(doc_type: standard) | 処置区分の根拠 |
| 限度見本の写真と注記 | データストア(doc_type: limit_sample) | 境界の確認の材料 |
| 過去の処置記録 | データストア(doc_type: record) | 参考の表示だけ |
絞り込みに使う項目は、スキーマで索引可能にします。 式は product_family: ANY("PF-12") AND status: ANY("current") のように書けます。日付の項目は比較の演算子で絞り込めるとされ、日付はISO 8601の形式で書きます。 処置記録は occurred_on >= "2023-10-01" のように直近3年に限ります。
基準書・限度見本・処置記録は、別々のデータストアに分けずに1つに入れ、doc_type で引き分けます。 回答の中で「基準書ではこう、限度見本はこれ、過去にはこう処置した」を並べて示すためです。ただし処置区分の根拠に使ってよいのは standard だけ、という規則は中継プログラムが持ちます。
AIへ渡す前に整形する
- 基準書の版をそろえる … 管理表の現行版だけに
status: currentを付け、置き換えられた版にはretiredを付けます - 品番群を基準書に付ける … 冊子ごとに、対象の品番群をメタデータに書きます
- 不良の呼び名をそろえる … 現場の言い方と基準書の言い方の対応表を作り、選択肢の値を基準書の用語に合わせます
- 限度見本の写真に注記を付ける … 写真だけでなく「深さ0.1mm以内は良品」のような注記を文字で添えます
- 処置記録から個人名を除く … 作業者の氏名は伏せ、承認者は役職だけにします
- 文書の分割を設定する … データストアを作るときに分割を有効にし、見出しを各断片に付けます
- パーサーを選ぶ … 基準書はレイアウトパーサーで、表の行と列を保ったまま読みます
6番目は、データストアを作る前に決めます。 分割はデータストアの作成後に切り替えられないとされています。断片の大きさは100〜500トークンの範囲で指定でき、見出しを断片に含める設定(既定は無効)を有効にすると、「どの冊子の、どの不良の表の行か」が断片だけで分かります。
3番目を軽く見ないでください。 現場の言葉で選択肢を作ると、基準書の用語と一致せず、検索の段階で外れます。 選択肢の値は基準書の用語にし、表示の名前だけを現場の言葉にします。
AIに処理させる
させるのは、問い合わせの不良に当たる基準書の行を見つけ、その処置区分と手直しの方法を、出典を付けて短く返すことです。
| 要素 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 該当する基準書の行 | 冊子の番号、表、不良の種類・部位・程度 | 基準書だけ |
| 処置区分 | 手直し可/特採申請/廃却/上長判断 | 基準書だけ |
| 手直しの方法 | 基準書に書かれた方法と条件 | 基準書だけ |
| 限度見本 | 見本の番号と「ここまでは良品」の注記 | 限度見本の記録だけ |
| 過去の処置 | 同じ品番・不良の処置区分と日付 | 処置記録だけ(参考) |
右端の列を混ぜないことが、この構成で最も大事な点です。 過去の処置記録の「特採」は、顧客の了承を得て一度だけ認められたものです。それが処置区分として返ると、承認の手続きを経ない特採が現場で始まります。 処置区分は基準書だけから取らせ、過去の処置は別の欄に「参考」として出します。
answer メソッドの設定は次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
includeCitations | 有効 | 処置区分の文に出典を付ける |
ignoreLowRelevantContent | 有効 | 該当行が無いときに無理に答えない |
ignoreNonAnswerSeekingQuery | 有効 | 質問でない入力に答えない |
searchResultMode | CHUNKS | 基準書の表の該当の断片を返す |
maxReturnResults | 10 | 既定のまま。最大は25 |
filter | 品番群と status: ANY("current") | 他の品番群と旧版を除く |
answerLanguageCode | ja | 回答を日本語にする |
preamble | 下の指示 | 答え方の規則を与える |
回答が返ったら、処置区分の文だけを取り出して check grounding API にかけます。 根拠の断片には、出典になった基準書の断片だけを渡します。限度見本と処置記録は渡しません。 処置区分が基準書だけで支えられているかを見たいので、他の文書で支えられても意味がないからです。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 特採の可否の判断 | 不適合品を使う判断で、品質管理と顧客の承認が要る |
| 境界に近い不良の良否の判定 | 現物と限度見本を見比べる必要がある |
| 基準書に無い処置区分の提案 | 一般的な知識からの処置は、顧客との取り決めに反しうる |
| 過去の処置を処置区分とすること | その時だけの承認を前例にしない |
| 写真からの程度の測定 | 深さや長さは現物で測る |
3行目が最も起きやすい失敗です。 回答を作るモデルは、樹脂成形のヒケやバリに一般的にどう対処するかを知っています。それで答えると、基準書に無い「研磨で手直し可」が、基準書の答えと同じ顔で届きます。 検索結果の文書だけで答えることを指示で明記し、さらに裏付けの検査で数値として確かめます。
指示内容を固定する
answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。
あなたは製造現場の作業者と検査員に、不良品の処置を基準書から示す担当です。
読むのはラインの横にいる作業者で、あなたの回答を見て基準書の該当箇所を開きます。
【答え方】
1. 最初に、該当する不良処置基準書の冊子の番号と、表の名前を書いてください。
2. 次に、問い合わせの不良の種類・部位・程度に当たる行の処置区分を、
「手直し可」「特採申請」「廃却」「上長判断」のどれか1つで書いてください。
3. 処置区分が「手直し可」なら、基準書に書かれた手直しの方法と条件を、そのまま書いてください。
4. 関係する限度見本があれば、見本の番号と注記を書いてください。
5. 過去の処置記録があれば、最後に「参考:過去の処置」として、日付と処置区分だけを書いてください。
【厳守事項】
- 処置区分は、不良処置基準書に書かれていることだけで答えてください。
過去の処置記録の処置区分を、今回の処置区分として書かないでください。
- 一般的な知識で手直しの方法を補わないでください。
- 程度の数値(深さ、長さ、個数)は、基準書に書かれているとおりに書いてください。
問い合わせの程度が基準書の境界の値と同じか近いときは、処置区分を書かずに
「限度見本の境界に近いため、品質管理の確認が必要です」と書いてください。
- 特採を勧めたり、特採で使えると書いたりしないでください。
- 廃止と書かれた基準書を使わないでください。
- 該当する行が見つからないときは、
「基準書に該当する行が見つかりません。品質管理へ回します」とだけ書いてください。
- 人の氏名を書かないでください。
「境界に近いときは処置区分を書かない」が、この指示の要です。 程度の値が境界と同じ不良は、基準書の行がどちらにも読めます。どちらかを選ばせると、半分の確率で外れた処置区分が現場に届きます。 書かないことを答えにさせ、品質管理へ回す合図にします。
検索の文は、中継プログラムがタブレットの入力から組み立てます。 例えば「品番群:PF-12、工程:塗装、不良:ブツ、部位:外観面、程度:直径0.5mm・2個。処置区分と手直しの方法を教えてください」のように、選択肢の値を決まった順に並べます。 自由文は最後に足すだけにします。
出力形式を固定する
answer メソッドの応答と裏付けの検査の結果を、中継プログラムが次の形に整えます。
{
"inquiry_id": "",
"part_no": "",
"product_family": "",
"defect": { "type": "", "area": "appearance | non_appearance", "degree": "" },
"status": "answered | routed | skipped",
"route_reason": "not_in_standard | low_support | borderline | concession | supervisor | none",
"disposition": "rework | concession_request | scrap | supervisor_judgement | none",
"standard_ref": { "doc_id": "", "table": "", "row": "", "version": "", "uri": "" },
"rework_method": "",
"support_score": 0,
"limit_samples": [ { "id": "", "note": "", "image_uri": "" } ],
"past_records": [ { "date": "", "disposition": "", "approval_no": "" } ],
"answer_text": ""
}
1つ目の理由は、disposition と route_reason を回答の文と別に持てることです。 振り分けは文を読んで決めるのではなく、この2つの値で決めます。
| 条件 | 振り分け |
|---|---|
standard_ref が空、または回答が作られなかった | routed/not_in_standard |
support_score が0.6未満 | routed/low_support |
| 回答に「限度見本の境界に近い」が含まれる | routed/borderline |
disposition が concession_request | routed/concession |
disposition が supervisor_judgement | routed/supervisor |
disposition が rework または scrap で、上のどれにも当たらない | answered |
2つ目は、past_records を処置区分と別の欄にできることです。 タブレットの画面では、過去の処置を灰色の「参考」の枠に出します。承認番号のある記録には「特採(一回限りの承認)」と表示し、前例でないことを画面で示します。
3つ目は、support_score を残せることです。 数値の分布を毎月見て、0.6の境目が厳しすぎるか緩すぎるかを品質管理が決めます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| ラインのタブレット | 社内向けの画面 | 問い合わせを受け、回答を返す |
| 品番マスタ | 読み取り | 品番群・工程・顧客区分を引く |
| Agent Search | answer メソッドの呼び出し | 基準書と記録から回答を作る |
| check grounding API | 呼び出し | 処置区分の文の裏付けを数値にする |
| 品質管理の待ち行列 | 書き込み | 回すものを、問い合わせと回答の候補と一緒に載せる |
不適合処置のシステムには書き込みません。 処置の確定は、これまでどおり品質管理の担当者がシステムに入力します。この構成が処置票まで自動で作ると、確認を経ない処置が記録として残ります。
人が確認する
現場へ直接返った回答も、処置を始める前に班長が基準書の該当箇所を開きます。
- 冊子の番号と表を確かめる … 品番群と合っているか、版が現行かを見ます
- 該当の行を原文で読む … 回答の文ではなく、基準書の行の不良の程度と処置区分を見ます
- 限度見本の写真と現物を比べる … 境界に近いと感じたら、手直しを始めずに品質管理を呼びます
- 処置票に冊子の番号と行を書く … 根拠を処置票に残します
品質管理の担当者は、待ち行列に回ってきたものだけを見ます。 回答の候補と出典が付いているので、基準書を探すところからではなく、判断するところから始められます。 特採申請は、これまでどおりの承認の手続きに乗せます。
目標は、600件をならして1件5分です。 直接返る回答を班長が確かめる時間と、回ってきたものを品質管理が判断する時間の平均です。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 品番が品番マスタに無い | 絞り込みができないので、検索せずに品質管理へ回す |
| 基準書に該当する行が無い | 回答を作らず not_in_standard で回す。月次で基準書の追記の候補にする |
| 程度が境界の値に近い | 処置区分を出さず borderline で回す |
| 裏付けの数値が低い | 回答を表示せず low_support で回す |
| 出典が廃止の基準書だけ | 回答を表示せず回し、管理表の担当者に知らせる |
| 同じ不良が続けて届く | 30分以内は最初の回答を返し、件数が5件を超えたら品質管理へ知らせる |
| 写真が暗い・ぼけている | 写真は判断に使わないので、そのまま回答する。品質管理へ回すときは撮り直しを頼む |
| 検索の呼び出しが失敗する | 「回答を作れませんでした」と表示し、品質管理へ回す |
2行目は、基準書を育てる材料になります。 基準書に無い不良が毎月同じ品番群で出ているなら、その不良の行を基準書に足すべきだという合図です。 品質管理が処置を決めたら、その処置を基準書に足すかを月次で見直します。
記録を残す
- 問い合わせの入力の全文(品番、不良の種類・部位・程度、写真、自由文)と日時
- 中継プログラムが組み立てた検索の文と、使った絞り込みの式
- answer メソッドの応答の全文(回答、出典、回答しなかった理由)
- check grounding API の結果(支持の度合い、文ごとの出典)
- 振り分けの結果(
status、route_reason)と、品質管理が最終的に決めた処置区分 - そのとき参照した基準書の版と、現行/廃止の状態
5行目で品質管理の最終の処置区分を残すのは、外れを数えるためです。 現場へ直接返した回答と、品質管理が決めた処置区分が違っていた件数を毎月数えます。1件でもあれば、その基準書の行の書き方か、選択肢の値の対応を直します。
04実装レベルの3段階
半自動化で、1件12分が8分程度になります。 探す時間は縮みますが、品質管理の担当者が全件を受けて答える形は変わりません。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、基準書に明記された手直しと廃却が、品質管理を通らずに現場で完結するからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、品質管理の回答と検索の回答がどれだけ一致するかを数えます。一致しない行の書き方を直してから現場に開くほうが、外れた処置区分が現場に届きません。
05工数削減シミュレーション
導入後 600件 × 5分 ÷ 60 = 50 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 成形・加工・塗装・組立などで、不良品の処置を品番と不良の種類ごとに決めた不良処置基準書と、良否の境界を示す限度見本を持っている製造業。現場から品質管理へ「これは手直しでよいか」「廃却か」の問い合わせが1日に何十件も来て、品質管理の担当者が呼び出されている場合。基準書が品番群ごとに分かれていて、作業者が該当する行を探し当てられない場合。特採(不適合品を条件付きで使う判断)を誰がどの手続きで決めるかが社内で決まっている場合。
- 不良処置基準書がなく、処置を毎回品質管理の担当者が経験で決めている場合(探す先が無いので、まず基準書を書くのが先です)。品番が少なく、現場の作業者が基準をすべて覚えている場合。処置の判断そのものをAIに任せたい場合(この構成は基準書の該当箇所を示すだけで、特採と廃却の決定は品質管理と責任者が行います)。顧客との取り決めで、品質の記録を社外のクラウドに置けない場合。
07最小構成で試す方法
- 先月の処置の問い合わせから30件を選ぶ(特採になったものと、基準書に無かったものを数件入れる)
- その30件について、品質管理がどの基準書の何行目を見て、どう答えたかを記録から拾う
- 関係する品番群の基準書と限度見本台帳を、手元のAIサービスに資料として読み込ませる
- 問い合わせの内容を貼り、「添付の基準書だけを根拠に、該当する表と行、処置区分を答えてください。過去の処置を処置区分にしないでください。境界に近いときは処置区分を書かないでください」と指示する
- 出てきた行と処置区分を、当時の品質管理の回答と突き合わせる
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時と同じ行・処置区分が出た | データストアの構築に進む |
| 一般的な手直しの方法を書き足した | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 該当する行が出ない件数が多い | 基準書と不良の呼び名の整備が先。 検索の問題ではない |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、品質管理の担当者が記憶で答えていた不良が、どれだけ基準書の外にあるかが分かったということです。 その場合は、該当する行が出なかった問い合わせを不良の種類ごとに並べ、基準書に足す行の候補として品質管理の会議に出してください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 過去の特採が処置区分として返る | 処置区分は基準書だけと指示し、出典の doc_type を中継プログラムで検査する |
| 一般的な手直しの方法を書き足す | 裏付けの検査にかけ、数値が低ければ表示しない |
| 境界の値でどちらかを選ぶ | 境界に近いときは処置区分を書かせない |
| 旧版の基準書が使われる | status を索引可能にし、status: ANY("current") で絞り込む |
| 現場の言葉で検索が外れる | 選択肢の値を基準書の用語にそろえる |
| 表の断片だけが返り、何の表か分からない | 見出しを断片に含める設定を有効にする。作成後には変えられない |
| 同じ不良で待ち行列が埋まる | 30分以内の同じ品番・不良はまとめる |
| 写真で程度を判定させたくなる | させない。 程度は現物で測る |
| 品番マスタの品番群が古い | 新しい品番が品番群に付いていないと絞り込みで外れる。品番の登録の手順に品番群の入力を足す |
| 基準書の改訂が取り込みに遅れる | 改訂の承認日にその冊子だけを取り込み直し、旧版に retired を付ける |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも基準書に無い処置が基準書の顔をして届く失敗で、出典の種類と裏付けの数値を規則で検査しているかどうかで、現場に開けるかが決まります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 品番ごとの品質の基準、不良の発生の記録、顧客との特採の承認の記録です。顧客から見れば、取引先の品質の弱点がまとまった情報です。
- データストアを使える人を社内の製造と品質管理に限る … 基準書と処置記録は社外に出す文書ではありません
- 顧客名を処置記録から外すか、区分に置き換える … 特採の記録には顧客との取り決めが書かれています
- 処置の確定をAIに任せない … 特採と廃却は、品質管理と責任者が決めます。この構成が出すのは、基準書の該当箇所と処置区分の候補だけです
- 現場へ直接返す範囲を規則で決める … 基準書に明記された手直しと廃却だけにし、範囲を広げるときは品質管理の責任者が決めます
- 作業者の氏名を記録に入れない … 不良を見つけた人が責められる材料にしないためです
- 顧客の監査で説明できる記録を残す … 処置の根拠にした基準書の版と行、品質管理が決めた処置区分を対で残します。AIの回答だけで処置したものが無いことを、記録で示せるようにします
誤りが起きた場合のリスクは、不適合品が承認なく使われることと、良品が廃却されることの2つです。 前者は過去の特採や一般的な知識が処置区分として届くと起き、後者は境界に近い不良でどちらかを選ばせると起きます。どちらも出典と境界の規則で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:基準書の管理表を作る
120冊の基準書について、冊子の番号、対象の品番群、版、現行/廃止を管理表にまとめます。問い合わせの多い上位20の品番群から始めます。
2週目:30件で試す
先月の問い合わせから30件を選び、手元のAIサービスに基準書を読み込ませて聞きます。過去の処置を処置区分として書いていないか、境界の値でどちらかを選んでいないかを最優先で見ます。
3週目:不良の呼び名をそろえる
現場の言い方と基準書の用語の対応表を作り、タブレットの選択肢の値を基準書の用語にします。この時点で、AIが無くても基準書を引きやすくなります。
4週目:データストアを作る
分割と見出しの設定を決め、上位20の品番群の基準書と限度見本の記録を取り込みます。品質管理の担当者が検索画面で使い、自分の回答と比べます。
2か月目: 中継プログラムと裏付けの検査を作り、品質管理の担当者が受けた問い合わせに回答の候補を付けます。3か月目以降: 基準書に明記された手直しと廃却だけを現場へ直接返し、1件12分が何分になったかを実測します。品質管理の最終の処置区分と直接返した回答が3か月続けて一致した時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの includeCitations、ignoreLowRelevantContent、ignoreNonAnswerSeekingQuery、answerSkippedReasons、preamble、answerLanguageCode、filter、searchResultMode(DOCUMENTS/CHUNKS)、maxReturnResults が既定10・最大25であること | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-06 |
| check grounding API が回答の候補と根拠の断片から0〜1の支持の度合いと文ごとの出典を返すこと。根拠の断片が200件まで・1件1万文字まで、出典の境目の既定が0.6であること | Google Cloud: Check grounding | 2026-10-06 |
| レイアウトパーサーが段落・表・画像・リスト・見出しを検出し、HTML・PDF・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM に対応すること。表と画像の注釈。分割の大きさが100〜500、見出しを含める設定の既定が無効、分割はデータストアの作成後に切り替えられないこと | Google Cloud: Parse and chunk documents | 2026-10-06 |
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR/NOT、項目を索引可能にする必要があること、日付をISO 8601で書くこと | Google Cloud: Filter search for structured or unstructured data | 2026-10-06 |
特採と廃却の判断、現場へ直接返す範囲は、品質管理の責任者と、必要に応じて顧客との取り決めに沿って決めてください。 本記事は Google Cloud の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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