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製造現場の「この不良はどう処置するか」の質問に、不良処置基準書と限度見本の記録を根拠に答え、基準に無いものは品質管理へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

現場の作業者・検査員が品番と不良の内容を入れると、不良処置基準書と限度見本の記録を検索し、基準書に書かれた処置区分を出典付きで返します。基準に無いものは品質管理へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
商社/製造
対象部門
品質管理/生産
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/属人化解消
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
50h/月
想定削減
58%
年間削減
840h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 作業者または検査員が不良を見つけ、不良品を保留の棚へ置く
  2. 品番から該当の基準書を探し、不良の種類と程度で表を引く
  3. 見つからない、または程度の境界が分からないときは、品質管理へ内線で問い合わせる
  4. 品質管理の担当者が基準書と限度見本台帳を開き、必要なら現場まで来て現物を見る
  5. 過去に同じ不良があったかを、処置の記録で探す
  6. 処置区分を伝え、特採や廃却なら承認の手続きに回す
  7. 作業者が処置票に処置を書き、品質管理がシステムへ入力する
導入後(After)
  1. 人作業者がラインのタブレットで品番を読み、不良の種類・部位・程度を選び、必要なら写真を付けて送る
  2. 自動中継プログラムが品番マスタから品番群と工程を引き、検索の絞り込みを組み立てる
  3. 自動Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが、基準書・限度見本の記録・過去の処置記録から回答を作り、出典を付けて返す
  4. 自動中継プログラムが、処置区分の出典が基準書の現行版かを確かめる
  5. 自動回答の処置区分の文を、裏付けの検査(check grounding API)で基準書の断片と照らし、支持の度合いを数値にする
  6. 自動該当行が無い、数値が低い、限度見本の境界に近い、特採・上長判断のいずれかなら、品質管理の待ち行列へ回す
  7. 自動それ以外は、処置区分・基準書の該当箇所・限度見本の写真をタブレットに返す
  8. 人班長が基準書の該当箇所を見て処置を確かめ、手直しを始める
  9. 人品質管理の担当者は、回ってきたものだけを見て処置を決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 作業者または検査員が不良を見つけ、不良品を保留の棚へ置く
  2. 品番から該当の基準書を探し、不良の種類と程度で表を引く
  3. 見つからない、または程度の境界が分からないときは、品質管理へ内線で問い合わせる
  4. 品質管理の担当者が基準書と限度見本台帳を開き、必要なら現場まで来て現物を見る
  5. 過去に同じ不良があったかを、処置の記録で探す
  6. 処置区分を伝え、特採や廃却なら承認の手続きに回す
  7. 作業者が処置票に処置を書き、品質管理がシステムへ入力する

(a)基準書の該当行が見つからない。 基準書は品番群で分かれていますが、現場の作業者が知っているのは品番だけです。どの冊子を開けばよいかから分からず、2番目を飛ばして3番目の内線に進むことが日常になっています。

(b)担当者によって処置が変わる。 境界に近い不良で、ある担当者は「上長判断」に回し、別の担当者は「手直し可」と答えます。基準書を引いて答える担当者と、記憶で答える担当者がいるためです。

(c)過去の特採が前例になる。 5番目で過去の記録を見ると、同じ不良が特採で使われた例が出てきます。その特採は顧客の了承を得た一回限りのものなのに、「前も使った」として同じ処置が検討されます。

(d)品質管理の担当者が席に戻れない。 1日30件の問い合わせのたびに呼ばれ、本来の工程内の不良の分析と再発防止の仕事が夜に回ります。

  1. 【人】 作業者がラインのタブレットで品番を読み、不良の種類・部位・程度を選び、必要なら写真を付けて送る
  2. 【自動】 中継プログラムが品番マスタから品番群と工程を引き、検索の絞り込みを組み立てる
  3. 【自動】 Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが、基準書・限度見本の記録・過去の処置記録から回答を作り、出典を付けて返す
  4. 【自動】 中継プログラムが、処置区分の出典が基準書の現行版かを確かめる
  5. 【自動】 回答の処置区分の文を、裏付けの検査(check grounding API)で基準書の断片と照らし、支持の度合いを数値にする
  6. 【自動】 該当行が無い、数値が低い、限度見本の境界に近い、特採・上長判断のいずれかなら、品質管理の待ち行列へ回す
  7. 【自動】 それ以外は、処置区分・基準書の該当箇所・限度見本の写真をタブレットに返す
  8. 【人】 班長が基準書の該当箇所を見て処置を確かめ、手直しを始める
  9. 【人】 品質管理の担当者は、回ってきたものだけを見て処置を決める

6番目が、この設計の分かれ目です。 現場へ直接返すのは、基準書に「手直し可」または「廃却」と明記されている場合だけです。特採申請と上長判断は、基準書に書いてあっても必ず品質管理に回します。 特採は不適合品を使う判断で、承認の手続きを現場で始めさせないためです。

8番目で班長が見るのは、AIの回答の文ではなく基準書の該当箇所です。 回答の文は、どの表のどの行を見ればよいかを示すためのものです。

02今回想定するシステム構成

構成図
ラインのタブレット(品番の読み取り・不良の種類/部位/程度・写真)
   ▼【トリガー】問い合わせの送信
中継プログラム(Python、Cloud Run)
   ├──▶ 品番マスタ → 品番群・工程・顧客区分
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)── answer メソッド
   │  データストア:不良処置基準書(約120冊)+限度見本の記録(約900点)
   │               +過去の処置記録(直近3年)
   │  絞り込み:product_family/process/status: current
   ▼
check grounding API ── 処置区分の文が基準書の断片で支えられているか
   ▼
中継プログラム ── 振り分けの規則
   ├──▶ 手直し可・廃却(基準書に明記) → タブレットへ回答
   └──▶ 特採申請・上長判断・該当なし・低い支持 → 品質管理の待ち行列
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
検証Agent Search の check grounding API(回答の裏付けの数値化)中継プログラムで出典の文字列一致を見る
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、タブレット・検索・待ち行列をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(基準書・限度見本の写真・処置記録の原本とメタデータ)─

品番マスタと不適合処置のシステムは、新しく足すものではありません。 中継プログラムは品番マスタを読むだけで、処置の確定と入力はこれまでどおり品質管理が行います。最初の準備は、基準書の冊子ごとに、対象の品番群と現行/廃止の状態を管理表にまとめることです。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、includeCitations で回答に出典を付けられます。関係の薄い内容しか無いときは ignoreLowRelevantContent で回答を作らず、理由を answerSkippedReasons で返すとされています。基準書に該当行が無い不良に、それらしい処置区分を作らせないための設定です。

基準書の表を読むのは、レイアウトパーサーです。 段落・表・画像・リスト・見出しを検出し、PDF・DOCX・XLSX などに対応するとされています。表の注釈と画像の注釈を付ける機能もあり、限度見本の写真には説明が付いた断片として検索に入ります。

裏付けの検査は、check grounding API で行います。 回答の候補と根拠の断片を渡すと、0から1の支持の度合いと、文ごとの出典を返すとされています。根拠の断片は1回に200件まで、1件1万文字まで、出典と見なす境目の既定は0.6です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、作業者がラインのタブレットから問い合わせを送ったことです。 品番はバーコードで読み、不良の種類・部位・程度は選択肢で選ばせます。自由文の欄は最後に1つだけ置きます。 自由文だけで聞かせると、「白い筋」「ウエルド」「流れ跡」のように同じ不良が人によって違う言葉で届き、検索が外れます。

問い合わせは1件ずつ、送られたその場で処理します。 不良品が保留の棚に置かれている時間を縮めるのが目的なので、まとめて処理する理由がありません。

同じ品番・同じ不良の問い合わせが30分以内に続いたら、新しく検索せず、最初の回答と同じものを返します。 1つの金型の不具合で、同じ不良が続けて見つかることがよくあります。そのたびに品質管理の待ち行列が埋まらないよう、2件目からは件数だけを足します。 件数が5件を超えたら、品質管理へ「同じ不良が続いている」と知らせます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
問い合わせ品番、ライン、工程、不良の種類、部位(外観面/非外観面)、程度、写真、自由文ラインのタブレット
品番マスタ品番、品番群、工程、顧客区分生産管理のシステム
不良処置基準書不良の種類×程度×部位ごとの処置区分と、手直しの方法共有フォルダのPDF
基準書のメタデータ冊子の番号、対象の品番群、版、現行/廃止、施行日品質管理の管理表
限度見本の記録見本の番号、品番群、不良の種類、写真、「ここまでは良品」の注記限度見本台帳
過去の処置記録発生日、品番、不良、数量、処置区分、承認者、特採の承認番号不適合処置のシステムから書き出したもの

質を決めるのは、品番から品番群を引けることと、基準書の「現行/廃止」です。 品番群が引けなければ絞り込みができず、120冊の基準書全体から似た表を拾います。旧版の基準書が残っていると、変わる前の処置区分を返します。

過去の処置記録に特採の承認番号を残すのは、後段で使うためです。 承認番号のある記録は「その時だけ認められた処置」であることが、中継プログラムに分かります。

Step3

データの取得方法を決める

基準書・限度見本の記録・処置記録は、Cloud Storage に置いてデータストアに取り込みます。 文書ごとのメタデータには、冊子の番号、品番群、工程、文書の種類、現行/廃止、施行日を持たせます。

取るものどこから何に使うか
品番群・工程・顧客区分品番マスタ絞り込み
基準書の表の断片データストア(doc_type: standard)処置区分の根拠
限度見本の写真と注記データストア(doc_type: limit_sample)境界の確認の材料
過去の処置記録データストア(doc_type: record)参考の表示だけ

絞り込みに使う項目は、スキーマで索引可能にします。 式は product_family: ANY("PF-12") AND status: ANY("current") のように書けます。日付の項目は比較の演算子で絞り込めるとされ、日付はISO 8601の形式で書きます。 処置記録は occurred_on >= "2023-10-01" のように直近3年に限ります。

基準書・限度見本・処置記録は、別々のデータストアに分けずに1つに入れ、doc_type で引き分けます。 回答の中で「基準書ではこう、限度見本はこれ、過去にはこう処置した」を並べて示すためです。ただし処置区分の根拠に使ってよいのは standard だけ、という規則は中継プログラムが持ちます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 基準書の版をそろえる … 管理表の現行版だけに status: current を付け、置き換えられた版には retired を付けます
  2. 品番群を基準書に付ける … 冊子ごとに、対象の品番群をメタデータに書きます
  3. 不良の呼び名をそろえる … 現場の言い方と基準書の言い方の対応表を作り、選択肢の値を基準書の用語に合わせます
  4. 限度見本の写真に注記を付ける … 写真だけでなく「深さ0.1mm以内は良品」のような注記を文字で添えます
  5. 処置記録から個人名を除く … 作業者の氏名は伏せ、承認者は役職だけにします
  6. 文書の分割を設定する … データストアを作るときに分割を有効にし、見出しを各断片に付けます
  7. パーサーを選ぶ … 基準書はレイアウトパーサーで、表の行と列を保ったまま読みます

6番目は、データストアを作る前に決めます。 分割はデータストアの作成後に切り替えられないとされています。断片の大きさは100〜500トークンの範囲で指定でき、見出しを断片に含める設定(既定は無効)を有効にすると、「どの冊子の、どの不良の表の行か」が断片だけで分かります。

3番目を軽く見ないでください。 現場の言葉で選択肢を作ると、基準書の用語と一致せず、検索の段階で外れます。 選択肢の値は基準書の用語にし、表示の名前だけを現場の言葉にします。

Step5

AIに処理させる

させるのは、問い合わせの不良に当たる基準書の行を見つけ、その処置区分と手直しの方法を、出典を付けて短く返すことです。

要素中身根拠
該当する基準書の行冊子の番号、表、不良の種類・部位・程度基準書だけ
処置区分手直し可/特採申請/廃却/上長判断基準書だけ
手直しの方法基準書に書かれた方法と条件基準書だけ
限度見本見本の番号と「ここまでは良品」の注記限度見本の記録だけ
過去の処置同じ品番・不良の処置区分と日付処置記録だけ(参考)

右端の列を混ぜないことが、この構成で最も大事な点です。 過去の処置記録の「特採」は、顧客の了承を得て一度だけ認められたものです。それが処置区分として返ると、承認の手続きを経ない特採が現場で始まります。 処置区分は基準書だけから取らせ、過去の処置は別の欄に「参考」として出します。

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
includeCitations有効処置区分の文に出典を付ける
ignoreLowRelevantContent有効該当行が無いときに無理に答えない
ignoreNonAnswerSeekingQuery有効質問でない入力に答えない
searchResultModeCHUNKS基準書の表の該当の断片を返す
maxReturnResults10既定のまま。最大は25
filter品番群と status: ANY("current")他の品番群と旧版を除く
answerLanguageCodeja回答を日本語にする
preamble下の指示答え方の規則を与える

回答が返ったら、処置区分の文だけを取り出して check grounding API にかけます。 根拠の断片には、出典になった基準書の断片だけを渡します。限度見本と処置記録は渡しません。 処置区分が基準書だけで支えられているかを見たいので、他の文書で支えられても意味がないからです。

させないこと理由
特採の可否の判断不適合品を使う判断で、品質管理と顧客の承認が要る
境界に近い不良の良否の判定現物と限度見本を見比べる必要がある
基準書に無い処置区分の提案一般的な知識からの処置は、顧客との取り決めに反しうる
過去の処置を処置区分とすることその時だけの承認を前例にしない
写真からの程度の測定深さや長さは現物で測る

3行目が最も起きやすい失敗です。 回答を作るモデルは、樹脂成形のヒケやバリに一般的にどう対処するかを知っています。それで答えると、基準書に無い「研磨で手直し可」が、基準書の答えと同じ顔で届きます。 検索結果の文書だけで答えることを指示で明記し、さらに裏付けの検査で数値として確かめます。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。

あなたは製造現場の作業者と検査員に、不良品の処置を基準書から示す担当です。
読むのはラインの横にいる作業者で、あなたの回答を見て基準書の該当箇所を開きます。

【答え方】
1. 最初に、該当する不良処置基準書の冊子の番号と、表の名前を書いてください。
2. 次に、問い合わせの不良の種類・部位・程度に当たる行の処置区分を、
   「手直し可」「特採申請」「廃却」「上長判断」のどれか1つで書いてください。
3. 処置区分が「手直し可」なら、基準書に書かれた手直しの方法と条件を、そのまま書いてください。
4. 関係する限度見本があれば、見本の番号と注記を書いてください。
5. 過去の処置記録があれば、最後に「参考:過去の処置」として、日付と処置区分だけを書いてください。

【厳守事項】
- 処置区分は、不良処置基準書に書かれていることだけで答えてください。
  過去の処置記録の処置区分を、今回の処置区分として書かないでください。
- 一般的な知識で手直しの方法を補わないでください。
- 程度の数値(深さ、長さ、個数)は、基準書に書かれているとおりに書いてください。
  問い合わせの程度が基準書の境界の値と同じか近いときは、処置区分を書かずに
  「限度見本の境界に近いため、品質管理の確認が必要です」と書いてください。
- 特採を勧めたり、特採で使えると書いたりしないでください。
- 廃止と書かれた基準書を使わないでください。
- 該当する行が見つからないときは、
  「基準書に該当する行が見つかりません。品質管理へ回します」とだけ書いてください。
- 人の氏名を書かないでください。

「境界に近いときは処置区分を書かない」が、この指示の要です。 程度の値が境界と同じ不良は、基準書の行がどちらにも読めます。どちらかを選ばせると、半分の確率で外れた処置区分が現場に届きます。 書かないことを答えにさせ、品質管理へ回す合図にします。

検索の文は、中継プログラムがタブレットの入力から組み立てます。 例えば「品番群:PF-12、工程:塗装、不良:ブツ、部位:外観面、程度:直径0.5mm・2個。処置区分と手直しの方法を教えてください」のように、選択肢の値を決まった順に並べます。 自由文は最後に足すだけにします。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答と裏付けの検査の結果を、中継プログラムが次の形に整えます。

{
  "inquiry_id": "",
  "part_no": "",
  "product_family": "",
  "defect": { "type": "", "area": "appearance | non_appearance", "degree": "" },
  "status": "answered | routed | skipped",
  "route_reason": "not_in_standard | low_support | borderline | concession | supervisor | none",
  "disposition": "rework | concession_request | scrap | supervisor_judgement | none",
  "standard_ref": { "doc_id": "", "table": "", "row": "", "version": "", "uri": "" },
  "rework_method": "",
  "support_score": 0,
  "limit_samples": [ { "id": "", "note": "", "image_uri": "" } ],
  "past_records": [ { "date": "", "disposition": "", "approval_no": "" } ],
  "answer_text": ""
}

1つ目の理由は、disposition と route_reason を回答の文と別に持てることです。 振り分けは文を読んで決めるのではなく、この2つの値で決めます。

条件振り分け
standard_ref が空、または回答が作られなかったrouted/not_in_standard
support_score が0.6未満routed/low_support
回答に「限度見本の境界に近い」が含まれるrouted/borderline
disposition が concession_requestrouted/concession
disposition が supervisor_judgementrouted/supervisor
disposition が rework または scrap で、上のどれにも当たらないanswered

2つ目は、past_records を処置区分と別の欄にできることです。 タブレットの画面では、過去の処置を灰色の「参考」の枠に出します。承認番号のある記録には「特採(一回限りの承認)」と表示し、前例でないことを画面で示します。

3つ目は、support_score を残せることです。 数値の分布を毎月見て、0.6の境目が厳しすぎるか緩すぎるかを品質管理が決めます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
ラインのタブレット社内向けの画面問い合わせを受け、回答を返す
品番マスタ読み取り品番群・工程・顧客区分を引く
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し基準書と記録から回答を作る
check grounding API呼び出し処置区分の文の裏付けを数値にする
品質管理の待ち行列書き込み回すものを、問い合わせと回答の候補と一緒に載せる

不適合処置のシステムには書き込みません。 処置の確定は、これまでどおり品質管理の担当者がシステムに入力します。この構成が処置票まで自動で作ると、確認を経ない処置が記録として残ります。

Step9

人が確認する

現場へ直接返った回答も、処置を始める前に班長が基準書の該当箇所を開きます。

  1. 冊子の番号と表を確かめる … 品番群と合っているか、版が現行かを見ます
  2. 該当の行を原文で読む … 回答の文ではなく、基準書の行の不良の程度と処置区分を見ます
  3. 限度見本の写真と現物を比べる … 境界に近いと感じたら、手直しを始めずに品質管理を呼びます
  4. 処置票に冊子の番号と行を書く … 根拠を処置票に残します

品質管理の担当者は、待ち行列に回ってきたものだけを見ます。 回答の候補と出典が付いているので、基準書を探すところからではなく、判断するところから始められます。 特採申請は、これまでどおりの承認の手続きに乗せます。

目標は、600件をならして1件5分です。 直接返る回答を班長が確かめる時間と、回ってきたものを品質管理が判断する時間の平均です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
品番が品番マスタに無い絞り込みができないので、検索せずに品質管理へ回す
基準書に該当する行が無い回答を作らず not_in_standard で回す。月次で基準書の追記の候補にする
程度が境界の値に近い処置区分を出さず borderline で回す
裏付けの数値が低い回答を表示せず low_support で回す
出典が廃止の基準書だけ回答を表示せず回し、管理表の担当者に知らせる
同じ不良が続けて届く30分以内は最初の回答を返し、件数が5件を超えたら品質管理へ知らせる
写真が暗い・ぼけている写真は判断に使わないので、そのまま回答する。品質管理へ回すときは撮り直しを頼む
検索の呼び出しが失敗する「回答を作れませんでした」と表示し、品質管理へ回す

2行目は、基準書を育てる材料になります。 基準書に無い不良が毎月同じ品番群で出ているなら、その不良の行を基準書に足すべきだという合図です。 品質管理が処置を決めたら、その処置を基準書に足すかを月次で見直します。

Step11

記録を残す

  • 問い合わせの入力の全文(品番、不良の種類・部位・程度、写真、自由文)と日時
  • 中継プログラムが組み立てた検索の文と、使った絞り込みの式
  • answer メソッドの応答の全文(回答、出典、回答しなかった理由)
  • check grounding API の結果(支持の度合い、文ごとの出典)
  • 振り分けの結果(status、route_reason)と、品質管理が最終的に決めた処置区分
  • そのとき参照した基準書の版と、現行/廃止の状態

5行目で品質管理の最終の処置区分を残すのは、外れを数えるためです。 現場へ直接返した回答と、品質管理が決めた処置区分が違っていた件数を毎月数えます。1件でもあれば、その基準書の行の書き方か、選択肢の値の対応を直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:基準書を手元のAIサービスに読み込ませ、品質管理の担当者が問い合わせを貼って聞く / 基準書の該当行の検索
半自動化:上記+データストアを作り、品質管理の担当者が検索画面で聞いて現場に答える / 根拠付きの回答と、旧版の除外
本格構成:上記+現場のタブレットから直接聞き、裏付けの検査と振り分けの規則で、基準書に明記されたものだけを現場へ返す / 問い合わせから回答・振り分けまで

半自動化で、1件12分が8分程度になります。 探す時間は縮みますが、品質管理の担当者が全件を受けて答える形は変わりません。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、基準書に明記された手直しと廃却が、品質管理を通らずに現場で完結するからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、品質管理の回答と検索の回答がどれだけ一致するかを数えます。一致しない行の書き方を直してから現場に開くほうが、外れた処置区分が現場に届きません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  600件 × 12分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 600件 × 5分 ÷ 60 = 50 時間/月
月間削減時間
70h
削減率
58%
年間削減時間
840h
年間金額換算(時間単価3,500円)
294万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 成形・加工・塗装・組立などで、不良品の処置を品番と不良の種類ごとに決めた不良処置基準書と、良否の境界を示す限度見本を持っている製造業。現場から品質管理へ「これは手直しでよいか」「廃却か」の問い合わせが1日に何十件も来て、品質管理の担当者が呼び出されている場合。基準書が品番群ごとに分かれていて、作業者が該当する行を探し当てられない場合。特採(不適合品を条件付きで使う判断)を誰がどの手続きで決めるかが社内で決まっている場合。
向いていない
  1. 不良処置基準書がなく、処置を毎回品質管理の担当者が経験で決めている場合(探す先が無いので、まず基準書を書くのが先です)。品番が少なく、現場の作業者が基準をすべて覚えている場合。処置の判断そのものをAIに任せたい場合(この構成は基準書の該当箇所を示すだけで、特採と廃却の決定は品質管理と責任者が行います)。顧客との取り決めで、品質の記録を社外のクラウドに置けない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の処置の問い合わせから30件を選ぶ(特採になったものと、基準書に無かったものを数件入れる)
  2. その30件について、品質管理がどの基準書の何行目を見て、どう答えたかを記録から拾う
  3. 関係する品番群の基準書と限度見本台帳を、手元のAIサービスに資料として読み込ませる
  4. 問い合わせの内容を貼り、「添付の基準書だけを根拠に、該当する表と行、処置区分を答えてください。過去の処置を処置区分にしないでください。境界に近いときは処置区分を書かないでください」と指示する
  5. 出てきた行と処置区分を、当時の品質管理の回答と突き合わせる
出てきた内容判断
当時と同じ行・処置区分が出たデータストアの構築に進む
一般的な手直しの方法を書き足した指示の書き方で直る。構成は有効
該当する行が出ない件数が多い基準書と不良の呼び名の整備が先。 検索の問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、品質管理の担当者が記憶で答えていた不良が、どれだけ基準書の外にあるかが分かったということです。 その場合は、該当する行が出なかった問い合わせを不良の種類ごとに並べ、基準書に足す行の候補として品質管理の会議に出してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
過去の特採が処置区分として返る処置区分は基準書だけと指示し、出典の doc_type を中継プログラムで検査する
一般的な手直しの方法を書き足す裏付けの検査にかけ、数値が低ければ表示しない
境界の値でどちらかを選ぶ境界に近いときは処置区分を書かせない
旧版の基準書が使われるstatus を索引可能にし、status: ANY("current") で絞り込む
現場の言葉で検索が外れる選択肢の値を基準書の用語にそろえる
表の断片だけが返り、何の表か分からない見出しを断片に含める設定を有効にする。作成後には変えられない
同じ不良で待ち行列が埋まる30分以内の同じ品番・不良はまとめる
写真で程度を判定させたくなるさせない。 程度は現物で測る
品番マスタの品番群が古い新しい品番が品番群に付いていないと絞り込みで外れる。品番の登録の手順に品番群の入力を足す
基準書の改訂が取り込みに遅れる改訂の承認日にその冊子だけを取り込み直し、旧版に retired を付ける

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも基準書に無い処置が基準書の顔をして届く失敗で、出典の種類と裏付けの数値を規則で検査しているかどうかで、現場に開けるかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 品番ごとの品質の基準、不良の発生の記録、顧客との特採の承認の記録です。顧客から見れば、取引先の品質の弱点がまとまった情報です。

  1. データストアを使える人を社内の製造と品質管理に限る … 基準書と処置記録は社外に出す文書ではありません
  2. 顧客名を処置記録から外すか、区分に置き換える … 特採の記録には顧客との取り決めが書かれています
  3. 処置の確定をAIに任せない … 特採と廃却は、品質管理と責任者が決めます。この構成が出すのは、基準書の該当箇所と処置区分の候補だけです
  4. 現場へ直接返す範囲を規則で決める … 基準書に明記された手直しと廃却だけにし、範囲を広げるときは品質管理の責任者が決めます
  5. 作業者の氏名を記録に入れない … 不良を見つけた人が責められる材料にしないためです
  6. 顧客の監査で説明できる記録を残す … 処置の根拠にした基準書の版と行、品質管理が決めた処置区分を対で残します。AIの回答だけで処置したものが無いことを、記録で示せるようにします

誤りが起きた場合のリスクは、不適合品が承認なく使われることと、良品が廃却されることの2つです。 前者は過去の特採や一般的な知識が処置区分として届くと起き、後者は境界に近い不良でどちらかを選ばせると起きます。どちらも出典と境界の規則で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:基準書の管理表を作る

120冊の基準書について、冊子の番号、対象の品番群、版、現行/廃止を管理表にまとめます。問い合わせの多い上位20の品番群から始めます。

2週目:30件で試す

先月の問い合わせから30件を選び、手元のAIサービスに基準書を読み込ませて聞きます。過去の処置を処置区分として書いていないか、境界の値でどちらかを選んでいないかを最優先で見ます。

3週目:不良の呼び名をそろえる

現場の言い方と基準書の用語の対応表を作り、タブレットの選択肢の値を基準書の用語にします。この時点で、AIが無くても基準書を引きやすくなります。

4週目:データストアを作る

分割と見出しの設定を決め、上位20の品番群の基準書と限度見本の記録を取り込みます。品質管理の担当者が検索画面で使い、自分の回答と比べます。

2か月目: 中継プログラムと裏付けの検査を作り、品質管理の担当者が受けた問い合わせに回答の候補を付けます。3か月目以降: 基準書に明記された手直しと廃却だけを現場へ直接返し、1件12分が何分になったかを実測します。品質管理の最終の処置区分と直接返した回答が3か月続けて一致した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの includeCitations、ignoreLowRelevantContent、ignoreNonAnswerSeekingQuery、answerSkippedReasons、preamble、answerLanguageCode、filter、searchResultMode(DOCUMENTS/CHUNKS)、maxReturnResults が既定10・最大25であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-06
check grounding API が回答の候補と根拠の断片から0〜1の支持の度合いと文ごとの出典を返すこと。根拠の断片が200件まで・1件1万文字まで、出典の境目の既定が0.6であることGoogle Cloud: Check grounding2026-10-06
レイアウトパーサーが段落・表・画像・リスト・見出しを検出し、HTML・PDF・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM に対応すること。表と画像の注釈。分割の大きさが100〜500、見出しを含める設定の既定が無効、分割はデータストアの作成後に切り替えられないことGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-06
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR/NOT、項目を索引可能にする必要があること、日付をISO 8601で書くことGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-06

特採と廃却の判断、現場へ直接返す範囲は、品質管理の責任者と、必要に応じて顧客との取り決めに沿って決めてください。 本記事は Google Cloud の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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