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設備の保守マニュアルと過去の対応履歴から現場の質問に根拠付きで答える

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

現場からの「この型式でこのエラーが出たときはどうするか」という質問に対し、該当する設備のマニュアルと過去の対応履歴を探して、出典付きの回答案を返します。保全員の作業は、書庫と過去の日報を探すことから、示された根拠を読んで自分の設備に当てはまるかを判断することに変わります。

サマリー
利用ツール
Amazon Kendra/Azure AI/Azure OpenAI Service/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
その他/医療/建設/物流/製造
対象部門
品質管理/生産
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
対応スピード向上/属人化解消/教育コスト削減/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
45h/月
想定削減
63%
年間削減
900h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 設備が停止し、操作盤にエラーコードが表示される
  2. 保全員が現場へ行き、型式と号機を確認する
  3. 共有フォルダから、その型式のマニュアルPDFを探す
  4. PDFを開き、エラーコードの一覧から該当箇所を探す
  5. 見つからなければ、紙のファイルを書庫から探す
  6. 過去に同じ事象がなかったか、保全管理システムの履歴を検索する
  7. それでも分からなければ、ベテランに電話で聞く
  8. 対応後、作業内容を保全管理システムに記録する
導入後(After)
  1. 設備が停止し、保全員が現場のタブレットまたはスマートフォンから質問する
  2. 自動質問文と、選択された設備(型式・号機)から検索条件を組み立てる
  3. 自動該当する型式のマニュアルと過去履歴に絞って検索する
  4. 自動キーワード検索とベクトル検索を同時に行い、結果を統合する
  5. 自動上位の候補を並べ替え、関連の高いものを選ぶ
  6. 自動根拠となる文書の該当箇所を引用しながら、回答案を作る
  7. 保全員が回答案と引用元を読み、自分の設備に当てはまるかを判断する
  8. 必要に応じて原典(マニュアルの該当ページ)を開いて確認する
  9. 自動質問と参照した文書、実際の対応結果を記録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 設備が停止し、操作盤にエラーコードが表示される
  2. 保全員が現場へ行き、型式と号機を確認する
  3. 共有フォルダから、その型式のマニュアルPDFを探す
  4. PDFを開き、エラーコードの一覧から該当箇所を探す
  5. 見つからなければ、紙のファイルを書庫から探す
  6. 過去に同じ事象がなかったか、保全管理システムの履歴を検索する
  7. それでも分からなければ、ベテランに電話で聞く
  8. 対応後、作業内容を保全管理システムに記録する

問題は4つあります。

(a)探す時間が対応時間より長いことがある。 実際の作業が5分でも、手順を探すのに15分かかることがあります。設備が止まっている間は生産が止まっています。

(b)マニュアルがPDFで、中の文字が検索できないものがある。 スキャンした古いマニュアルは画像のままで、ファイル名以外は検索に引っかかりません。

(c)過去の対応履歴が探せない。 保全管理システムの履歴はキーワード検索しかできず、「振動」と書いた人と「異音」と書いた人の記録が別々にしか出てきません。同じ事象が別の言葉で記録されています。

(d)ベテランに集中する。 結局、20年勤めている数名に質問が集まります。その数名が定年を迎えることが分かっていて、対策が進んでいません。

  1. 設備が停止し、保全員が現場のタブレットまたはスマートフォンから質問する
  2. 【自動】 質問文と、選択された設備(型式・号機)から検索条件を組み立てる
  3. 【自動】 該当する型式のマニュアルと過去履歴に絞って検索する
  4. 【自動】 キーワード検索とベクトル検索を同時に行い、結果を統合する
  5. 【自動】 上位の候補を並べ替え、関連の高いものを選ぶ
  6. 【自動】 根拠となる文書の該当箇所を引用しながら、回答案を作る
  7. 【人】 保全員が回答案と引用元を読み、自分の設備に当てはまるかを判断する
  8. 【人】 必要に応じて原典(マニュアルの該当ページ)を開いて確認する
  9. 【自動】 質問と参照した文書、実際の対応結果を記録する

自動化されるのは「探す」「言い換えを吸収する」「該当箇所を絞る」の3つです。残るのは「自分の設備に当てはまるかを判断する」ことで、ここは保全員の仕事のまま残します。

02今回想定するシステム構成

構成図
マニュアルPDF(共有フォルダ)    保全管理システムの作業履歴
        │                                │
        ▼                                ▼
   テキスト化・分割・メタデータ付与(型式・号機・設備種別・日付)
        │
        ▼
   Azure AI Search のインデックス
        ├─ 本文テキスト(キーワード検索用)
        ├─ ベクトル(意味の近さ用)
        └─ メタデータ(型式・号機・工場・文書種別)
        │
        ▼【質問】現場のタブレットから
   検索(キーワード+ベクトルのハイブリッド)→ 上位を並べ替え
        │
        ▼
   Claude API ── 引用付きの回答案を作る
        │
        ▼【人が判断】保全員が根拠を読んで適用を決める
        │
        ▼
   質問・参照文書・対応結果を記録
役割想定する製品代替候補
検索基盤Azure AI SearchAmazon Kendra、OpenSearch
埋め込みAzure OpenAI ServiceGoogle Vertex AI
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
文書の保管SharePointBox、Google Drive
保全管理システム既存の保全管理システム各社のCMMS

検索基盤が構成の中心です。 生成AIは最後に文章化するだけで、品質の大半は検索の段階で決まります。「AIに聞けば答える」仕組みだと考えると、設計の重心を取り違えます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

保全員が質問を入力したときを起点にします。設備の停止を検知して自動で回答を出す構成も考えられますが、最初は作りません。

理由は、停止の原因が1つに決まらないためです。同じ停止信号でも、原因が部品の摩耗か、原料の詰まりか、操作の誤りかで手順が変わります。自動で回答を出すと、最初に示された手順に引っ張られます。 質問を人が言葉にする過程そのものが、状況の切り分けになっています。

質問時に、型式と号機を選択必須にします。ここを自由入力にすると、表記ゆれで絞り込みが効きません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
設備マニュアル取扱説明書、保全手順書、部品表、エラーコード一覧共有フォルダのPDF、紙のスキャン
作業履歴日時、設備、事象、原因、処置、部品、担当者保全管理システム
設備マスタ号機、型式、メーカー、設置工場、設置年保全管理システム
安全に関する社内基準停止手順、ロックアウト、立入制限文書管理

3番目の設備マスタが、この構成の背骨になります。 号機と型式の対応が正しく整理されていないと、絞り込みが成立しません。設備マスタが整っていない工場では、ここを直すことが最初の作業になります。

Step3

データの取得方法を決める

マニュアル: 共有フォルダのPDFを取り込みます。文字情報を持つPDFはそのまま、スキャン画像のPDFはOCRでテキスト化します。古いマニュアルほど画像のままであることが多く、ここが取り込みの山場になります。

分割(チャンク)の考え方: 1冊のPDFを丸ごと1件として扱うと、検索で引っかかっても「この400ページのどこか」としか言えません。かといって細かく切りすぎると、手順の途中で切れて意味が通らなくなります。手順書は「手順の単位」で切ります。 見出しと番号付きの手順をひとまとまりとして扱い、前後の見出しを各断片に付けておきます。

メタデータの付与: 分割した各断片に、型式・メーカー・文書種別・版・ページ番号を必ず付けます。このメタデータが検索時の絞り込みに使われるため、ここが空だと構成全体が成り立ちません。

作業履歴: 保全管理システムから書き出します。自由記述の「事象」「処置」欄が主な対象です。日次または週次の更新で足ります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 画像PDFのテキスト化 … スキャンされたマニュアルをOCRにかけます。表や図中の文字は取れないことがあり、その旨を断片に記録しておきます
  2. 手順単位への分割 … 見出しと番号付き手順を単位に切ります。1断片は数百字から千字程度を目安にします
  3. メタデータ付与 … 型式、メーカー、文書種別、版、ページを付けます。ファイル名や表紙から機械的に取れない場合は、フォルダ構成から補います
  4. 作業履歴の正規化 … 「異音」「振動」「うるさい」のような言い換えを、同じ事象として扱えるように、用語辞書を作って併記します。この辞書は現場の言葉で作ります
  5. 版の管理 … 同じ型式のマニュアルが複数版あるとき、旧版を検索対象から外すか、版を明示します。旧版の手順を返すのは、間違った手順を返すのと同じです
  6. ベクトル化 … 各断片を埋め込みモデルでベクトルにし、検索インデックスへ登録します
Step5

AIに処理させる

検索と生成で役割を分けます。

検索基盤にさせること: 質問に関連する断片を探すこと。ここでは次の3つを組み合わせます。

  • ハイブリッド検索 … キーワード検索(BM25)とベクトル検索を同時に実行し、結果を統合します。統合には Reciprocal Rank Fusion(RRF)が使われます。型番やエラーコードのような「文字列そのもの」が効く質問はキーワード検索が、「異音がする」のような言い換えの多い質問はベクトル検索が拾います。保全の質問は両方が混ざるため、片方だけでは足りません
  • メタデータでの絞り込み … 選択された型式・工場に一致する断片だけを対象にします
  • 並べ替え(セマンティックランカー) … 統合後の結果に対して、言語理解モデルで関連度を測り直します。並べ替えの対象になるのは最初の検索結果の上位50件だけです。 上位50件に正しい断片が入っていなければ、並べ替えでは拾えません。絞り込みとハイブリッド検索の段階で、候補を50件の中に入れる設計が要ります。なお、フィールドに同義語マップを設定しておくと、並べ替えの際にも適用されます。前処理で作る用語辞書は、ここに載せられます

生成AIにさせること:

処理内容
回答案の作成検索で得た断片の内容だけを使って、手順の要点をまとめる
引用の明示どの文書のどの箇所を根拠にしたかを示す
不足の申告断片の中に答えがない場合、「見つからない」と答える
前提の確認型式・状況によって手順が分かれる場合、どの条件かを問い返す
Step6

指示内容を固定する

あなたは設備保全の調べものを手伝う担当者です。
検索で見つかった文書の断片だけを使って、質問に答えてください。

【厳守事項】
- 断片に書かれていないことを答えないでください。
  一般的な設備の知識で補わないでください。
- 答えが断片の中に無い場合は「見つかりませんでした」と答え、
  何を探せばよいかの手がかりだけを書いてください。
- 回答の各文に、根拠となった断片の番号を [1][2] の形で付けてください。
  根拠を付けられない文は書かないでください。
- 型式が一致しない断片は使わないでください。
  似た型式の手順を流用しないでください。
- 安全にかかわる手順(停止操作、通電、開放)は、
  要約せずに原文のまま引用してください。
- 断片の版が古い可能性がある場合は、その旨を先に書いてください。

【質問】
{question}

【対象設備】
型式: {model}  号機: {unit}  工場: {plant}

【検索で見つかった断片】
{retrieved_chunks}

「安全にかかわる手順は要約せず原文のまま引用する」の1行が、この構成でもっとも重要です。 要約は必ず何かを落とします。締め付けトルクの値、順番、待ち時間が落ちると、作業そのものが危険になります。

Step7

出力形式を固定する

{
  "answer": "",
  "citations": [
    {
      "ref": 1,
      "doc_type": "マニュアル | 作業履歴",
      "title": "",
      "model": "",
      "page": "",
      "revision": "",
      "url": "",
      "quote": ""
    }
  ],
  "answer_found": true,
  "model_mismatch": false,
  "revision_warning": "",
  "follow_up_question": "",
  "safety_notice": ""
}

answer_found を必ず持たせます。「見つからなかった」を明示的に返せない設計にすると、AIは何かしらの答えを作ります。 これが保全の現場でもっとも避けたい挙動です。

model_mismatch は、検索結果の型式が質問の型式と違う場合に立てます。ここが立っているのに回答が出ている状態は、運用上の異常として扱います。

Step8

システムへ連携する

連携先内容
保全管理システム質問と対応結果を、その作業の記録に紐づける
文書の保管先引用元のPDFの該当ページを開くリンク
通知「見つからなかった」質問を、月次で保全のリーダーへ

3番目が、この仕組みを育てる経路です。 答えが見つからなかった質問は、文書が無いか、取り込めていないか、言葉が違うかのどれかです。月次で見直すことで、次第に守備範囲が広がります。

現場からの利用は、工場のタブレットまたはスマートフォンからにします。手袋をしたまま操作することを前提に、入力は選択式を多くし、音声入力も選べるようにします。

Step9

人が確認する

回答をそのまま作業に使わせません。引用元を開くことを前提にした運用にします。

条件によって扱いを分けます。

質問の種類扱い
部品番号・型式の確認回答と引用で完結してよい
定期保全の手順確認引用元の該当ページを開いて確認する
停止・異常時の対応手順必ず原典を開く。 回答は該当箇所への案内として使う
安全にかかわる操作原典と社内の安全基準の両方を確認する。回答は参照の入口にとどめる

この線引きを、画面上でも表示します。質問の種類を選ばせ、種類に応じて「原典を開く」ボタンを目立たせる設計にします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
該当する断片が見つからないanswer_found: false で返す。推測で答えない
型式の違う断片しか見つからないmodel_mismatch を立て、回答を出さずに「この型式の文書は登録されていない」と返す
旧版のマニュアルが引っかかる版を表示し、最新版の有無を併記する。旧版のみの場合は警告を先に出す
マニュアルが画像のままでテキストが無い取り込み時に検出し、OCR未処理の一覧として管理する
作業履歴の記述が短すぎて使えない検索対象から除外する基準(文字数など)を決める
同じ事象に別の言葉が使われている用語辞書に追記する。現場の言い方を正とする
質問が漠然としている(「調子が悪い」)問い返しを返す。型式・症状・いつからを聞く
安全手順を要約してしまった出力を検査し、安全区分の断片は原文一致かを機械的に確認する
現場の電波が届かないオフラインでよく使う手順書を端末に持たせる。この仕組みへの依存を前提にしない
Step11

記録を残す

  • 質問文、選択された型式・号機
  • 検索で返した断片(順位付き)
  • 生成した回答と引用
  • 保全員が原典を開いたかどうか
  • 実際の対応結果(保全管理システム側の記録との紐づけ)
  • 「見つからなかった」質問の一覧

4番目と5番目を突き合わせると、この仕組みが役に立っているかが測れます。 回答は出たが毎回原典を開いて別の箇所を見ているなら、検索の精度が足りていません。利用回数ではなく、この一致率で評価してください。

04実装レベルの3段階

最小構成:マニュアルの該当章を人が貼り付けて、生成AIに要点をまとめさせる / 読む作業の一部
半自動化:全文検索でPDFを引けるようにし、上位の文書を人が選んで生成AIに渡す / 探す作業の一部
本格構成:ハイブリッド検索+メタデータ絞り込み+並べ替え+引用付き回答+履歴の蓄積 / 探す作業のほぼ全部

半自動化でも効果は出ますが、この業務では本格構成との差が大きく出ます。 型式での絞り込みと言い換えの吸収は、全文検索では届かないためです。12分が、半自動化で8分、本格構成で4.5分程度というのが想定です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
25 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
4.5 分
現在  600件 × 12分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 600件 × 4.5分 ÷ 60 = 45 時間/月
月間削減時間
75h
削減率
63%
年間削減時間
900h
年間金額換算(時間単価3,200円)
288万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 設備の型式が複数あり、マニュアルと過去の対応履歴が紙・PDF・個人のメモに分散している工場。ベテラン保全員の退職が近く、聞いて解決している状態が続いている場合。
向いていない
  1. 設備が数台で、手順が1冊のマニュアルに収まっている場合。過去の対応履歴が記録として残っていない場合(まず記録から始める)。

07最小構成で試す方法

  1. 設備1機種を選ぶ(質問の多い機種がよい)
  2. その機種のマニュアルPDFと、過去1年の作業履歴を集める
  3. 保全員に、直近で実際に調べた質問を20件書き出してもらう
  4. 生成AIの画面に、マニュアルの該当章と質問を貼り付けて答えさせる
  5. 「引用元が正しいか」「原典を開かずに済むか」を保全員に判定してもらう

4番の時点では検索基盤を作りません。 手で該当章を貼り付けます。それで答えが役に立たないなら、検索を作っても役に立ちません。文書の中身に答えが書かれているかどうかを、先に確かめます。

判断の目安は次のとおりです。

20件の結果判断
15件以上で使える回答が出た検索基盤の構築に進む価値がある
8〜14件文書の不足箇所を特定する。マニュアルより作業履歴の整備が先かもしれない
7件以下文書に答えが書かれていない。仕組みではなく、記録の習慣から着手する

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
別の型式の手順が返るメタデータで絞り込む。型式は質問時に選択必須にする。一致しない場合は回答を出さない
手順の途中で断片が切れて意味が通らない見出しと手順の単位で分割し、前後の見出しを各断片に付ける
型番やエラーコードで検索が当たらないベクトル検索だけに頼らず、キーワード検索と併用する(ハイブリッド)
言い換えが吸収できない現場の用語辞書を作る。「異音/振動/うるさい」を同じ事象として扱う
旧版の手順が返る版をメタデータに持ち、最新版を優先する。旧版しかない場合は警告を出す
スキャンPDFが検索に入らない取り込み時にOCRの有無を記録し、未処理の一覧を管理する
回答が長すぎて現場で読めない要点を3行までにし、詳細は引用へ誘導する。現場は立ったまま読む
安全手順が要約されて値が落ちる安全区分の断片は原文引用を必須にし、機械的に検査する
使われない「見つからなかった」質問を月次で見直し、文書を足す。最初の1か月で答えが出ないと、現場は使うのをやめる

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 設備マニュアル、作業履歴、設備マスタ。メーカーから提供されたマニュアルの著作権は、原則としてメーカーに帰属します。

  1. マニュアルの利用範囲 … メーカー提供のマニュアルを社内システムへ取り込むことが、提供時の条件で認められているかを確認してください。社内利用に限る、複製を禁じるといった条件が付いていることがあります。 判断に迷うものは対象から外し、リンクだけを持つ形にします
  2. 外部AIへの入力 … マニュアルの本文と作業履歴が外部のサービスへ渡ります。設備構成や不具合の履歴は、自社の生産能力に関する情報でもあります。データの保存地域と学習利用の有無を契約で確認してください
  3. アクセス権限 … 検索できる範囲を工場・職種で制限します。検索基盤側の権限設計を、元の文書の権限と揃えてください。 ここがずれると、閲覧権限のない文書が回答の引用として出ます
  4. 人名の扱い … 作業履歴には担当者名が入ります。回答の引用に人名が出る必要があるかを検討し、不要なら取り込み時に落とします
  5. 自動実行してよい範囲 … 回答の生成までです。作業指示として現場へ自動配信する構成にはしないでください。 適用の判断は必ず保全員が行います
  6. 安全にかかわる手順 … 要約せず原文引用に限定します。運用開始後も、安全区分の出力を定期的に抜き取り検査してください

誤りが起きた場合のリスクは、誤った手順による設備の損傷、作業者の負傷、品質事故です。この構成は「探す時間を短くする」ものであって、「判断を代行する」ものではありません。 この線引きを、導入時に現場へ明確に伝えてください。

10まず何から始めるか

1週目:設備マスタと文書の棚卸し

号機と型式の対応表を確認します。マニュアルが何冊あり、そのうち何冊が画像PDFかを数えます。この2つが分からないうちは、次に進めません。

2週目:1機種20問で中身を確かめる

質問の多い機種を1つ選び、保全員が実際に調べた質問20件を集めます。マニュアルの該当章を手で貼り付けて生成AIに答えさせ、使える回答が出るかを見ます。ここで7件以下なら、仕組みではなく記録の整備から始めます。

3〜4週目:1機種分だけ取り込んで検索を試す

その機種のマニュアルと作業履歴だけを検索基盤へ取り込み、ハイブリッド検索と絞り込みを設定します。20問を再度流し、どこまで自動で該当箇所へ届くかを測ります。

2か月目以降: 機種を増やしながら、分割の単位とメタデータを調整します。並行して「見つからなかった」質問の一覧を毎月見直し、文書の不足を埋めていきます。この月次の見直しを運用に組み込めるかどうかが、続くかどうかを決めます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-14/最終更新:2026-09-14
確認した内容情報源確認日
Azure AI Search のハイブリッド検索が、全文検索(BM25)とベクトル検索を同時に実行し、Reciprocal Rank Fusion(RRF)で結果を統合することMicrosoftDocs: Hybrid search overview2026-09-14
セマンティックランカーが、BM25またはRRFで順位付けされた初期結果の上位50件を、言語理解モデルで並べ替える機能であること。スコアが @search.rerankerScore(4〜0)として返ること。フィールドに設定した同義語マップが並べ替え時にも適用されること。新しい文字列を生成しないことMicrosoft Learn: Semantic ranking overview2026-09-14

保全管理システムからの履歴の取り出し方式は製品によって異なります。この部分は利用環境に応じた個別確認が必要です。 メーカー提供マニュアルの社内システムへの取り込み可否は、提供時の条件によります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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