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毎月発行される意匠公報の図面を開発中の製品の外観と画像で照らし合わせ、似ている他社意匠の候補を知財の確認リストにする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

その月に発行された意匠公報の図面を画像のベクトルにし、開発中の製品の外観画像と形が近い順に並べます。知財担当が見る他社意匠を、製品ごとの上位の候補に絞った確認リストにします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
EC/商社/小売/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
画像認識
主な効果
判断支援/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
12h/月
想定削減
70%
年間削減
336h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 特許調査サービスで、自社に関係する意匠分類と、その月の発行日で公報を絞り込む
  2. 一覧から1件ずつ公報を開き、図面を表示する
  3. 開発中の製品の一覧(写真と3Dの画面の写し)を横に開き、似ていそうな製品がないかを見る
  4. 似ていると感じたものは、公報の番号と、どの製品に近いかを案件管理表に書き写す
  5. 書き写したものについて、図面をもう一度詳しく見て、どこが近いかのメモを付ける
  6. 月に1回、商品開発部と打ち合わせ、近い意匠のあった製品の担当者へ知らせる
  7. 気になるものは、特許事務所に類否の見解を依頼する
導入後(After)
  1. 人商品開発部が、開発中の製品の3Dデータから、決まった向きの図を決まった形式で書き出し、所定のフォルダに入れる
  2. 自動月に1回、特許調査サービスから取り込んだ当月発行分の公報の図面と書誌を、図ごとの画像に分ける
  3. 自動図の名称の文字や枠線を取り除き、画像の大きさと余白をそろえる
  4. 自動公報の図と開発中の製品の図を、それぞれ画像の埋め込みベクトルにする
  5. 自動公報の図のベクトルを、意匠分類・発行年月・図の向きの属性を付けてベクトル検索のインデックスに足す
  6. 自動開発中の製品の図ごとに、同じ向きで当月発行分に絞って近い順に検索し、公報ごとにまとめて上位の候補を出す
  7. 自動候補ごとに、並べて見比べるための画像と、形の違いを言葉にした観点メモを作る
  8. 人知財担当が、製品ごとの上位の候補だけを開き、詳しく見るものに印を付ける
  9. 人印を付けたものを商品開発部と共有し、必要なら特許事務所へ類否の見解を依頼する
  10. 【人/自動】 担当者の印の付け方を記録し、次の月の上位の件数と絞り込みの条件を見直す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 特許調査サービスで、自社に関係する意匠分類と、その月の発行日で公報を絞り込む
  2. 一覧から1件ずつ公報を開き、図面を表示する
  3. 開発中の製品の一覧(写真と3Dの画面の写し)を横に開き、似ていそうな製品がないかを見る
  4. 似ていると感じたものは、公報の番号と、どの製品に近いかを案件管理表に書き写す
  5. 書き写したものについて、図面をもう一度詳しく見て、どこが近いかのメモを付ける
  6. 月に1回、商品開発部と打ち合わせ、近い意匠のあった製品の担当者へ知らせる
  7. 気になるものは、特許事務所に類否の見解を依頼する

(a)見比べる相手が多すぎる。 1件の公報を20件の製品と見比べるので、実際には1件ごとに20回の比較をしています。比較の回数は、公報の件数と製品の数の掛け算で増えます。 製品が増えた月ほど、1件あたりが雑になります。

(b)向きが違うと気づけない。 公報は斜視図が先頭にあるとは限らず、正面図だけで判断すると、横から見ると同じ形の意匠を見落とします。 かといって全部の図を開くと、1件5分では収まりません。

(c)見る目が人に付いている。 どの製品がどんな形をしているかを覚えている担当者でないと、「これは開発中のあの製品に近い」と気づけません。気づく力が記憶に依存していて、引き継げません。

(d)気づくのが遅い。 月末にまとめて見るので、月初の公報に気づくのが1か月後になり、その間に試作が進みます。

  1. 【人】 商品開発部が、開発中の製品の3Dデータから、決まった向きの図を決まった形式で書き出し、所定のフォルダに入れる
  2. 【自動】 月に1回、特許調査サービスから取り込んだ当月発行分の公報の図面と書誌を、図ごとの画像に分ける
  3. 【自動】 図の名称の文字や枠線を取り除き、画像の大きさと余白をそろえる
  4. 【自動】 公報の図と開発中の製品の図を、それぞれ画像の埋め込みベクトルにする
  5. 【自動】 公報の図のベクトルを、意匠分類・発行年月・図の向きの属性を付けてベクトル検索のインデックスに足す
  6. 【自動】 開発中の製品の図ごとに、同じ向きで当月発行分に絞って近い順に検索し、公報ごとにまとめて上位の候補を出す
  7. 【自動】 候補ごとに、並べて見比べるための画像と、形の違いを言葉にした観点メモを作る
  8. 【人】 知財担当が、製品ごとの上位の候補だけを開き、詳しく見るものに印を付ける
  9. 【人】 印を付けたものを商品開発部と共有し、必要なら特許事務所へ類否の見解を依頼する
  10. 【人/自動】 担当者の印の付け方を記録し、次の月の上位の件数と絞り込みの条件を見直す

8番目が、この設計の分かれ目です。人が見るのは480件のすべてではありません。 製品ごとの上位の候補を見て、「似ていない」と確かめるためだけに開いていた公報を開かなくなります。 ただし、上位に入らなかった公報を人が一度も見ないわけではありません。一覧で件名と代表の図だけは流し見ます。 そのための時間を第10章に入れています。

6番目で点数を使わず件数で切るのも、意図してのことです。 点数の高さを類似の度合いとして読まない、というのが、この構成の約束です。

02今回想定するシステム構成

構成図
開発中の製品の3Dデータ           特許調査サービス(当月発行分)
   │ 決まった向きの図を書き出し        │ 公報の図面と書誌を取り込む
   ▼                                   ▼
製品画像フォルダ                 Cloud Storage(公報の図面)
   │                                   │ 図ごとに分割・文字と枠線の除去
   └──────────┬────────────┘
              ▼【トリガー】毎月の定時実行
Python のバッチ ── 画像の大きさと余白をそろえる
              ▼
Gemini Embedding 2(画像の埋め込み)
              ▼
Vertex AI Vector Search
   │  公報の図:意匠分類・発行年月・図の向き・登録番号を属性に持たせて追加
   │  製品の図:同じ向き・当月発行分に絞って近い順に検索
   ▼
公報ごとにまとめ、製品ごとの上位の候補
   ├──▶ Gemini API ── 形の違いを言葉にした観点メモ(類否は書かせない)
   ▼
【知財担当が上位の候補を確認】──▶ 商品開発部・特許事務所へ
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Vector Search(Gemini Enterprise Agent Platform の Vector Search)Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service
埋め込みGemini Embedding 2(gemini-embedding-2 の画像入力)multimodalembedding@001
生成AIGemini API(候補の形の違いを言葉にした観点メモ)Claude API、OpenAI API
連携Python(月次のバッチ、画像の前処理、結果の書き出し)Google Apps Script
保管Cloud Storage(公報の図面、製品の図、検索結果)社内のファイルサーバー

特許調査サービスと案件管理表は、新しく足すものではありません。 公報の図面と書誌はこれまでどおり契約している調査サービスから取り込み、この構成は結果を案件管理表の横に並べる一覧を作るだけです。最初の準備は、商品開発部に「決まった向きの図を決まった形式で書き出す」ことを頼むことです。

検索の土台は、Vector Search です。 Google Research の技術をもとにしたベクトル検索のエンジンで、ScaNN のアルゴリズムを使うとされています。現在は Gemini Enterprise Agent Platform の一部として案内され、Vector Search 2.0(Agent Retrieval)という別の形もありますが、本記事は索引とエンドポイントを使う形を前提にします。

画像をベクトルにするのは、gemini-embedding-2 です。 画像、文章、PDF、音声、動画を入力でき、画像の形式は JPEG、PNG、WebP、BMP、HEIC、HEIF、AVIF、1リクエストで6枚まで、1枚は最大16,384×16,384ピクセルです。出力の次元は既定で3,072で、output_dimensionality で下げられます。旧来の multimodalembedding@001 も使えますが、画像を512×512ピクセルに縮めてから扱うとされているため、細部の形の違いを見たい意匠の図面では、まず gemini-embedding-2 で試します。

既存の無料の道具も先に確かめてください。 INPIT は、意匠公報の画像部分を抽出した画像データの中から、入力した画像と類似度の高い画像を順に並べて表示する「画像意匠公報検索支援ツール」を提供しています。年月日、意匠に係る物品、意匠分類・Dタームで絞り込めるとされています。1件ずつ手で試すなら、まずこれで足ります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

月に1回の定時実行にします。 当月に発行された公報の取り込みが終わった翌営業日に動かします。公報の発行のたびに動かす形にはしません。 開発中の製品の図は月の途中でも差し替わるため、毎回違う製品の版で照らし合わせることになり、結果を月ごとに比べられなくなります。

開発中の製品の側は、フォルダへの追加でも検索を動かします。 新しく企画に上がった製品は、過去12か月分の公報に対して一度だけ検索し、月次の実行では見ない過去分を埋めます。

実行の単位は製品の図1枚ごとにします。1枚ずつに分けておけば、途中で止まっても、止まった図から再開できます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
公報の図面図ごとの画像(正面図・背面図・左右側面図・平面図・底面図・斜視図など)特許調査サービスから取り込んだ当月発行分
公報の書誌登録番号、発行日、意匠に係る物品、意匠分類、権利者同上
開発中の製品の図3Dデータから書き出した、公報と同じ向きの図商品開発部が置くフォルダ
製品の情報製品コード、開発の段階、関係する意匠分類、担当者知財部の案件管理表

質を決めるのは、3つ目の図の書き出し方です。 公報の図面は、線で描かれた図もあれば写真のものもあります。一方、3Dデータの画面をそのまま写すと、色と光沢と影が付いた画像になります。 埋め込みはこの見た目の違いも拾うため、形が近いのに遠い順位になります。

そこで、製品の図は2通り書き出します。 1つは輪郭と稜線だけの線画、もう1つは背景を白にした陰影付きの図です。公報の図面が線画ならば線画どうし、写真ならば陰影付きの図と比べます。どちらの公報かは、取り込むときに画像の色の数で見分けて属性にしておきます。

4つ目の「関係する意匠分類」は、絞り込みの条件になります。 掃除機の開発品を照明器具の公報と比べても意味がありません。製品ごとに、見る意匠分類を知財担当が決めて案件管理表に持たせます。

Step3

データの取得方法を決める

公報の図面は、契約している特許調査サービスから取り込みます。 取り込める形式や、取り込んだ画像を社内の検索に使ってよいかは契約によって違うため、利用環境に応じた確認が必要です。

J-PlatPat をプログラムで巡回して集めることはしません。 J-PlatPat の利用上の注意では、データの単純な収集を目的とした大量データのダウンロードや、プログラムによる定期的な自動データ収集のような行為は禁止されており、違反が検出された場合は予告なくアクセスを制限するとされています。

取るものどこから何に使うか
図ごとの画像と図の名称調査サービスの図面データ埋め込みと、向きの属性
意匠分類、発行日同上の書誌絞り込みの属性(分類は文字、発行年月は数値)
登録番号同上の書誌同じ公報の図をまとめるための目印
製品の図と製品コード製品画像フォルダ検索の問い合わせ

属性は、Vector Search の絞り込みの形に合わせて持たせます。 意匠分類や図の向きのような区分は名前空間と値の組(トークンの絞り込み)で、発行年月のような数は数値の絞り込みで持ちます。問い合わせでは、名前空間の間は AND、名前空間の中は OR で組み合わされ、数値は LESS、LESS_EQUAL、EQUAL、GREATER_EQUAL、GREATER のいずれかで比べます。

登録番号は「クラウディングタグ」に入れます。 1件の公報には6〜7枚の図があり、そのまま近い順に並べると、同じ公報の図が上位を埋めて、他の公報が押し出されます。 Vector Search には、同じクラウディングタグから返す件数に上限を付けて結果を分散させる機能があるため、登録番号をタグにして1件の公報から返す図を2枚までに抑えます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 図ごとに分ける … 1ページに複数の図が載っているものは、枠で分けて1図1画像にします
  2. 図の名称の文字を消す … 「正面図」「斜視図」といった文字と図の枠線を取り除きます
  3. 余白をそろえる … 形の外接矩形を求め、周りに同じ割合の白い余白を付けて正方形にします
  4. 色を見分ける … 線画か写真かを色の数で判定し、style の属性にします
  5. 製品の図の書き出し … 公報と同じ7つの向きで、線画と陰影付きの2通りを書き出します
  6. 形式と大きさの確認 … JPEG か PNG にそろえ、1枚が最大16,384×16,384ピクセルに収まることを確かめます
  7. 同じ図の重複を除く … 関連意匠や再掲などで同じ図が二度入らないよう、画像のハッシュで照合します

2番目を軽く見ないでください。 公式のドキュメントには、このモデルは画像の中の文字を光学式文字認識(OCR)のように見分けられると書かれています。「正面図」という文字が全部の図に残っていると、その文字の共通点で近くなります。 形ではなく図の名称で並んでしまうので、文字は必ず消します。

3番目も同じくらい効きます。 同じ形でも、画像の中で小さく描かれているか大きく描かれているかで、埋め込みは変わります。公報の図は余白の取り方がまちまちなので、形の大きさを画像の中でそろえます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、2つのことだけです。 1つは、図をベクトルにして近い順に並べること。もう1つは、並んだ候補について形のどこが同じでどこが違うかを言葉にしたメモを作ることです。

見るものさせることさせないこと
公報の図と製品の図埋め込みベクトルにする図の加工や補正
製品の図ごとの検索同じ向き・当月発行分・関係する意匠分類に絞って、近い順に並べる点数で候補を切る
公報ごとのまとめ同じ公報の図の順位をまとめ、最も近い向きを記録する図の枚数で点数を足し上げる
観点メモ全体の形、輪郭、主な面の構成、目立つ部分の違いを短く書く類否や権利侵害の結論

右端の列の1行目と2行目が、この構成でいちばん大事な制約です。 公式のドキュメントは、埋め込みの内積は較正された確率ではなく、用途によって点数の分布が違うため、固定の閾値で質を測るのを避け、検索には順位を使うことを勧めています。製品ごとに上位10件、と件数で決めます。

させないこと理由
似ている・似ていないの結論類否は物品の用途や機能、形のありふれ具合を踏まえて人が判断する
権利侵害のおそれの判断登録の範囲や権利の有効性は、弁理士の見解を取るべきもの
公報の図の欠けを推測で補う図が無い向きは「無い」と記録する。他の図から描き起こさない
点数の読み替え「0.8だから8割似ている」と書かない。点数は並べる順だけに使う
製品の図の修正の提案デザインの変更は商品開発部と知財部が決める

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 一覧に点数を載せると、読む人は必ず割合として読みます。確認リストには順位だけを出し、点数はログに残します。

Step6

指示内容を固定する

観点メモを作る Gemini API への指示です。埋め込みと検索には指示文を使いません。

あなたは知財部で、意匠公報の図面と自社の開発中の製品の図を見比べる
担当者の補助をする立場です。
2つの画像を見て、形の同じところと違うところを書き出してください。

【渡すもの】
- 画像A:意匠公報の図({view_name})
- 画像B:自社の開発中の製品の図(同じ向き)
- 公報の書誌:登録番号 {reg_no}、意匠に係る物品 {article}

【書き出す観点】
1. 全体の形(箱型、円筒、曲面の多さなど)
2. 輪郭の特徴(角の丸み、くびれ、張り出し)
3. 主な面の構成(面の分かれ方、段差、開口の位置)
4. 目立つ部分(取っ手、ボタン、吹き出し口など)の位置と形

【厳守事項】
- 似ている、似ていない、類似する、非類似である、と書かないでください。
- 権利を侵害する・しない、問題がある・ないも書かないでください。
- 点数、割合、度合いを書かないでください。
- 画像に写っていないことを推測で書かないでください。
  見えない面は「この図からは分からない」と書いてください。
- 図の中に文字や記号が残っていても、それを根拠にしないでください。
- 色や質感の違いは、形の違いとは別に1行だけ書いてください。
  図の描き方(線画か写真か)による違いは書かないでください。
- 各観点は、同じところと違うところを1文ずつにしてください。
- 画像が図面でない、または判別できない場合は、
  観点を書かず、image_issue に理由を書いてください。

「似ている、と書かない」を明記しないと、ほぼ必ず書きます。 見比べを頼まれると、最後に「全体として類似した印象を与える」とまとめたがります。その一文が確認リストに載ると、知財担当の判断より先に結論が回ってしまいます。

「図の描き方による違いを書かない」も同じ理由です。 線画と陰影付きの図を渡すと、何も言わなければ「Aは線画、Bは写真的」と書きます。形の違いではない違いで、メモが埋まります。

Step7

出力形式を固定する

検索と観点メモの結果を、次の形のJSONにまとめます。

{
  "run_month": "2026-09",
  "product_code": "",
  "product_stage": "企画 | 試作 | 金型発注前",
  "classes": [""],
  "candidates": [
    {
      "rank": 1,
      "reg_no": "",
      "article": "",
      "design_class": "",
      "issue_date": "",
      "best_view": "front | back | left | right | top | bottom | perspective",
      "views_hit": ["front", "perspective"],
      "style_pair": "line-line | photo-shaded",
      "memo": { "overall": "", "outline": "", "surfaces": "", "features": "", "color_note": "" },
      "image_issue": ""
    }
  ],
  "missing_views": ["bottom"],
  "reviewer_mark": "detail | skip | ask_attorney | null"
}

1つ目の理由は、候補に点数を持たせないことです。 rank だけを出し、内積の値は検索のログにだけ残します。 確認リストを開いた人が、点数を割合として読む余地を作りません。

2つ目は、views_hit で「どの向きで近かったか」が分かることです。 正面図だけで近いのか、斜視図でも近いのかで、見るべき度合いが変わります。複数の向きで上位に入った公報ほど、先に見ます。

3つ目は、missing_views で比べられなかった向きを残せることです。 「照らし合わせて出なかった」と「照らし合わせていない」を分けられます。

並べる順条件
1views_hit が3つ以上の公報
2best_view が斜視図または正面図の公報
3それ以外の上位の候補
共通image_issue があるものは順位にかかわらず末尾に別枠で出す

reviewer_mark は人が付けます。 detail は詳しく見る、skip は見なくてよい、ask_attorney は特許事務所へ見解を依頼する、の3つです。この印の付き方が、次の月に上位の件数を決める材料になります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
特許調査サービス契約に基づくデータの取り込み当月発行分の図面と書誌
製品画像フォルダPython のバッチが読む開発中の製品の図と製品コード
Gemini Embedding 2API呼び出し図を埋め込みベクトルにする
Vector Search索引の更新と近傍検索公報の図を追加し、製品の図で検索する
Gemini APIAPI呼び出し候補ごとの観点メモ
案件管理表一覧の書き出し製品ごとの候補と人が付けた印

索引の更新は、バッチ更新を前提にします。 月に1回、当月分をまとめて足すだけなので、Cloud Storage に置いた差分だけを索引に反映する部分更新で足ります。ストリーミング更新は数秒で反映されますが、ストリーミング更新用に作った索引にはバッチ更新ができないとされています。後から切り替えられないので、最初に決めます。

案件管理表には書き込みではなく、横に並べる一覧として出します。 担当者が印を付けた結果だけを、人が案件管理表に移します。機械が案件管理表を書き換えると、候補に上がっただけの公報が「要注意の意匠」として記録に残ります。

Step9

人が確認する

人が開くのは、製品ごとの上位10件と、image_issue の別枠だけです。 それ以外の公報は、件名と代表の図だけを一覧で流し見ます。

  1. 製品ごとに上位の候補を見る … views_hit の多いものから、公報の全部の図を開いて見ます
  2. 観点メモは読むだけにする … メモは見比べる場所の手がかりです。判断の根拠にはしません
  3. 印を付ける … detail、skip、ask_attorney のどれかを付けます
  4. 上位に入らなかったものを流し見る … 関係する意匠分類の残りを、代表の図だけで一覧します
  5. 見落としに気づいたら記録する … 上位に入らなかったのに見るべきだった公報は、順位とあわせて残します

4番目を省かないでください。 埋め込みの近さは形の近さと一致しないことがあります。一覧の流し見は、この構成が見落とす型を知るための作業です。 5番目の記録がたまると、どの向きや描き方の組み合わせで順位が落ちるかが分かります。

判断の最終は、知財担当と弁理士です。 ask_attorney を付けた公報は、これまでどおり特許事務所に類否の見解を依頼します。この構成は、依頼する公報を選ぶところまでです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
公報に図面の画像が無い、または取り込めないimage_issue に記録し、別枠で人が見る。順位を付けない
1ページの図を分けられない分割できないものはページのまま入れ、image_issue に「未分割」と書く
製品の図に足りない向きがあるmissing_views に記録し、その向きでは検索しない。商品開発部に書き出しを頼む
画像の形式や大きさが範囲外JPEG か PNG にし、16,384×16,384ピクセルに収まるよう縮める
図の名称の文字が消えずに残る文字の領域を検出して塗りつぶし直す。残る場合は image_issue
同じ公報の図が上位を埋めるクラウディングタグの上限(登録番号あたり2枚)を確かめる
部分意匠で、破線の部分が多い図破線を消さずに入れ、image_issue に「部分意匠」と書いて人が見る
埋め込みのAPIが応答しないその図だけを後で再実行する。止まった図から再開できる単位で動かす
観点メモが「似ている」と書いた禁止語を検出してメモを捨て、作り直す。2回続けば空欄で出す

上から3行目までが大半を占めます。 どれもAIの問題ではなく、公報の取り込みと製品の図の書き出しの問題です。 直すほうが、埋め込みのモデルを変えるより効きます。

部分意匠の行は、特に注意が要ります。 部分意匠の図では、権利を求める部分以外が破線で描かれることがあり、全体の形で比べると、権利を求めていない部分の近さで上位に来ます。 順位をそのまま信じず、人が見ます。

Step11

記録を残す

  • 当月の実行で使った公報の一覧と、取り込んだ日時
  • 公報の図と製品の図の、前処理の前後の画像
  • 埋め込みに使ったモデルの名前と出力の次元、検索の条件(絞り込みの属性、上位の件数、クラウディングの上限)
  • 製品の図ごとの近傍の結果と、内積の値
  • 観点メモの全文と、禁止語で捨てたメモ
  • 人が付けた印と、上位に入らなかったのに見るべきだった公報の記録

3つ目で検索の条件を残すのは、条件を月ごとに変えるためです。 上位の件数や絞り込む意匠分類を変えると、同じ公報でも出る・出ないが変わります。当時の条件が残っていないと、先月の結果と比べられません。

開発中の製品の図は、ログでも社外秘として扱います。 画像そのものと埋め込みの両方を、保存先の地域を決めたプロジェクトに置きます。

04実装レベルの3段階

最小構成:画像意匠公報検索支援ツールに製品の図を手で入れ、上位を見る / 1枚ごとの近い画像の並べ替え
半自動化:上記+当月発行分の図面を埋め込み、製品の図ごとの上位を一覧に書き出す / 全製品と当月分の照らし合わせ
本格構成:上記+属性で絞り込み、公報ごとにまとめ、観点メモと人の印の記録まで出す / 候補の一覧の全体と、条件の見直し

最小構成は確かめるための段階です。 20件の製品の7つの向きを手で入れるのは、それだけで1日かかります。 半自動化で、1件5分が3分程度になります。 近い順の一覧は出ますが、向きの絞り込みと公報ごとのまとめが無いため、同じ公報の図が何度も出てきて、人がまとめ直すことになります。 本格構成で1.5分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を2か月見ると、上位に入らなかったのに見るべきだった公報の型が分かります。そこから向きの絞り込みと図の書き出し方を決めてから本格構成に進むほうが、見落としが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
480 件
1件あたり現在時間
5 分
1件あたり導入後時間
1.5 分
現在  480件 × 5分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 480件 × 1.5分 ÷ 60 = 12 時間/月
月間削減時間
28h
削減率
70%
年間削減時間
336h
年間金額換算(時間単価4,000円)
134万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 家電・日用品・家具・工具・雑貨など、外観のデザインが商品の価値を左右する製品を毎年いくつも開発している製造業や、自社企画の商品(プライベートブランド)を扱う小売・EC・商社。開発中の製品が常に10件以上あり、3Dデータや外観の画像がそろっている場合。関係する意匠分類の公報が毎月数百件あり、知財担当が目で見比べる作業が一部の人に偏っている場合。
向いていない
  1. 開発中の製品が年に数件しかなく、発売前に特許事務所へ意匠調査を依頼すれば足りる場合。製品の外観が規格で決まっていて、デザインで差を付けない場合。開発中の製品の画像を社外のクラウドへ出すことが社内規程で認められていない場合。似ているかどうか(類否)の結論そのものを機械に出させたい場合(この構成は候補を並べるだけで、類否の判断は知財担当と弁理士が行います)。

07最小構成で試す方法

  1. 開発中の製品から3件を選び、正面図と斜視図を線画で書き出す
  2. 過去に特許事務所へ類否の見解を依頼した公報を3件用意する(答えが分かっているもの)
  3. INPIT の画像意匠公報検索支援ツールに、製品の図を1枚ずつ入れる
  4. 意匠分類と年月日で絞り込み、並んだ画像の上位に、用意した3件の公報が入るかを見る
  5. 同じことを、図の名称の文字を消した図と消さない図、線画と陰影付きの図で比べる

答えの分かっている公報で必ず試してください。 プログラムを組む前に、「画像の近さで並べると、見るべき公報が上位に来るのか」を確かめます。

出てきた内容判断
用意した公報が上位に入った埋め込みと検索を自前で組む段階に進む
線画どうしなら入るが、陰影付きだと入らない図の書き出し方で直る。構成は有効
どの図でも上位に入らない形より細部で判断していた意匠の可能性。この物品の区分には向かない

3行目が出た区分は、これまでどおり人が見る範囲として残してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
点数で候補を切って、製品ごとに件数がばらつく内積は較正された確率ではない。 製品ごとに上位の件数で切る
図の名称の文字で近くなる画像の中の文字も見分ける。 前処理で消す
同じ公報の図が上位を埋める登録番号をクラウディングタグにし、1件あたりの件数に上限を付ける
線画と陰影付きの図で順位が落ちる製品の図を2通り書き出し、描き方の属性で組み合わせる
向きの違う図どうしで比べている図の向きを属性に持たせ、同じ向きに絞って検索する
ストリーミング更新の索引にバッチで足せない作った後に切り替えられない。 月次ならバッチ更新で作る
J-PlatPat を巡回して集めようとするロボットアクセスは禁止。 契約している調査サービスから取り込む
観点メモが「類似する」と結論を書く指示で禁じ、禁止語の検出で捨てる
確認リストに点数が載って割合として読まれる順位だけを出し、点数はログにだけ残す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「画像が近い」という数値を、そのまま「形が近い」と読んだところから出発しています。点数を順位にしか使わないことと、形以外の手がかりを前処理で消すことで、運用に乗るかが決まります。

下の2行も早く効いてきます。 「類似」「78点」と書かれた一覧が商品開発部に回ると、それだけで製品の形が変わりかねません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 発売前の製品の3Dデータから書き出した外観の図、製品コードと開発の段階、そしてどの他社の意匠を気にしているかという知財部の関心そのものです。

  1. 開発中の製品の図は、最も重い社外秘として扱う … 発売前の外観は、それ自体が他社に知られてはならない情報です。画像を送るプロジェクトの権限を知財部と開発部の担当者に限り、保存先の地域を決めて置きます
  2. 3Dデータそのものを送らない … 送るのは決まった向きの図だけです。寸法や内部の構造が入った3Dデータは、この構成の外に置きます
  3. この構成は類否や侵害の判断を代替しない … 出すのは見る順番だけです。似ているかどうか、権利に触れるかどうかは、知財担当と弁理士が判断します
  4. 候補の一覧の配り先を絞る … 商品開発部に渡すのは、知財担当が印を付けた後のものに限ります
  5. 観点メモを判断の記録として残さない … メモは見比べの手がかりで、知財部の見解ではありません。 案件管理表には、人が付けた印と人が書いた所見だけを移します

誤りが起きた場合のリスクは、見るべき意匠を見落とすことと、近いだけの意匠を「類似」として扱ってしまうことの2つです。 前者は点数で切ると起き、後者は点数や観点メモを結論として読むと起きます。どちらも「数値を順位にしか使わない」ことで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:製品の図の書き出し方を決める

商品開発部と、3Dデータから公報と同じ7つの向きで、線画と陰影付きの2通りを書き出す手順を決めます。金型の発注が近い製品から5件を先に書き出します。

2週目:答えの分かっている公報で試す

過去に特許事務所へ見解を依頼した公報と、その製品の図を用意し、画像意匠公報検索支援ツールで上位に入るかを見ます。図の名称の文字を消すかどうか、線画か陰影付きかで、順位がどう変わるかを最優先で見ます。

3週目:公報の取り込みの条件を確かめる

調査サービスで当月発行分の図面と書誌を取り込めるか、社内の検索に使ってよいかを確かめます。 製品ごとに見る意匠分類も案件管理表に持たせます。

4週目:当月分の埋め込みと一覧をつなぐ

当月発行分の図面を前処理して埋め込み、製品の図ごとの近い順の一覧を書き出すところまで作ります。この時点では観点メモを出さず、順位の一覧だけを見ます。

2か月目: 属性による絞り込みとクラウディングの上限を足し、公報ごとにまとめた一覧にします。上位に入らなかったのに見るべきだった公報を毎週数えます。3か月目以降: 観点メモと人の印の記録を足し、1件5分が何分になったかを実測します。見落としの記録から上位の件数と絞り込みの条件を決め直した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-30/最終更新:2026-10-01
確認した内容情報源確認日
Vector Search が Google Research の技術をもとにし、ScaNN のアルゴリズムを使うこと。数値と文字の属性で絞り込めること。Gemini Enterprise Agent Platform の一部として案内され、索引とエンドポイントの形とは別に Vector Search 2.0(Agent Retrieval)があることGoogle Cloud: Vector Search2026-09-30
名前空間とトークンによる絞り込み、名前空間の間が AND・中が OR であること、数値の絞り込みの演算子が LESS/LESS_EQUAL/EQUAL/GREATER_EQUAL/GREATER であること、除外のトークン、クラウディングタグの項目Google Cloud: Filter vector matches2026-09-30
同じクラウディングタグから返す件数に上限を付けて結果を分散させられることGoogle Cloud: Query public index to get nearest neighbors2026-09-30
バッチの索引の部分更新が差分だけを反映すること、ストリーミング更新が数秒で反映されること、ストリーミング更新用に作った索引にはバッチ更新ができないことGoogle Cloud: Update and rebuild an active index2026-09-30
画像と文章の埋め込みが同じ空間にあること。モデルが画像の中の文字を見分けられること。内積は較正された確率ではなく、固定の閾値を避けて順位を使うよう勧めていること。gemini-embedding-2 の画像形式、1リクエスト6枚、最大16,384×16,384ピクセル、既定の出力次元3,072と output_dimensionality。multimodalembedding@001 が画像を512×512に縮めて扱うこと。保存先の地域を指定できることGoogle Cloud: Get multimodal embeddings2026-09-30
画像意匠公報検索支援ツールが、意匠公報の画像部分を抽出した画像データから類似度の高い画像を順に並べて表示すること、年月日・意匠に係る物品・意匠分類・Dタームで絞り込めること、入力できる画像の形式INPIT: 画像意匠公報検索支援ツール2026-09-30
J-PlatPat で、データの単純な収集を目的とした大量ダウンロードや、プログラムによる定期的な自動データ収集が禁止されていることINPIT: J-PlatPat 利用上のご案内2026-09-30

意匠が似ているかどうか、権利に触れるかどうかは、知財担当と弁理士が判断してください。 本記事は公開されている製品の仕様と INPIT のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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