エンタープライズアーキテクチャにAIを描く|情シスが持つ全体の地図

「AIを部署ごとに入れていったら、どこで何が動いているのか、情シスでも説明できなくなった」「会社の全体図を描き直せと言われたが、AIエージェントをどの層に置けばいいのか分からない」。情シスやシステムの設計を担う人から、こうした声が聞こえてきます。どちらの声も、AIのためには新しい図の描き方が要る、と考えている点で共通しています。けれども、エンタープライズアーキテクチャにAIを描くのは、全体図を一から描き直す作業ではありません。本当は、今ある4つの層の図に、AIがつながる線と、その持ち主を書き足す作業です。この記事では、AIの種類ごとに全体図のどこへどう描くか、下書きをAIに任せてよい範囲、描いた図を導入の審査と持ち主の決定にどう使うかを整理します。
カメ先生エンタープライズアーキテクチャは、会社の業務とデータとシステムと基盤を、1枚の地図にする考え方なんだ。AIが入ると新しい地図が要ると思われがちだけど、本当に足りなくなるのは、層と層をつなぐ線と、その線の持ち主なんだよ。
カメ子AIのために、5つ目の層を足すわけではないということですか。
カメ先生層を足す会社もあるけれど、それより先に決めるのは、AIを種類ごとに分けて、どの層の部品として描くかなんだ。社内の対話AIとAIエージェントでは、描く場所も書き込む項目も違うからね。
カメ子同じAIでも、地図の上では別の物として扱うのですね。
- AIは新しい層ではなく、既存の4つの層の部品として描く。足りなくなるのは、層をまたぐ線と持ち主の欄
- 社内の対話AI・AIエージェント・モデルの呼び出し口・AIに読ませるデータは、描く層も書き込む項目も違う
- 既存の資料からの下書きと食い違いの指摘はAIに任せ、図の正しさ・置く層・持ち主は人が決めて審査に使う
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全体の地図は、4つの層で会社を描く考え方
エンタープライズアーキテクチャは、会社の業務とシステムを、部署ごとではなく全体の目で見えるようにする設計と管理の手法です。日本では、経済産業省が2004年1月の講演資料で、組織全体の業務とシステムを共通の言葉と統一された手法で描き、部局ごとではなく全体の最適の観点から改善していく手法、と説明しています。行政の業務とシステムの見直しに取り入れられたのを機に、民間でも知られるようになりました。
同じ資料は、全体図を4つの体系で描くとしています。政策・業務体系(業務の層)、データ体系(データの層)、適用処理体系(アプリケーションの層)、技術体系(基盤の層)の4つです。業務から基盤まで、上から下へのつながりを1枚にするのが要点で、今の姿と目指す姿の2枚を描き、その間を移行の計画と標準でつなぐ形が示されています。
業界標準の枠組みとしては、業界団体オープングループのトーガフがよく知られています。同団体の公式ブログ(2025年7月)によると、現行は2022年4月に発表された第10版で、その後も実務の手引きが追加され、2025年には電子版の読みやすさと検索が改善されました。ただし、そのブログの中では、AIを描くための専用の手引きには触れていませんでした。
つまり、AIをどう描くかについて、枠組みの側に決まった答えが用意されているわけではありません。4つの層の考え方はそのまま使い、AIの部品をどこに置くかを自社で決めるのが、現実的な出発点です。手法そのものの説明はこの節までにして、以降はAIを描く実務に絞ります。
AIを入れると、全体図のどこが描けなくなるか
部署ごとにAIを入れた会社で全体図を見直すと、多くの場合、描かれている箱そのものは間違っていません。描けていないのは、AIが図の外とやりとりしている部分です。たとえば、営業部が使う対話AIは社外の提供元の基盤で動き、社内の文書の置き場を読みに来ます。従来の図には、その読みに来る線がありません。
2つ目に描けなくなるのが、層をまたぐ動きです。AIエージェントは、利用者の頼みを受けて、顧客の管理の仕組みを読み、表計算の台帳を書き換え、メールを送る、といった動きを1回の作業でこなします。従来の図ではシステム同士のつながりを決まった連携として描いてきましたが、エージェントのつながりは頼まれた内容によって毎回変わります。
3つ目は持ち主です。業務システムには、たいてい業務の側の持ち主と、情シスの側の管理者がいます。部署が自分で契約したAIや、社員が作ったエージェントは、誰が持ち主なのかが図にも台帳にも書かれていないことが少なくありません。線と持ち主が欠けた図では、障害や情報漏えいの疑いが出たときに、影響の範囲を答えられません。
運用中の構成を1件ずつ記録する構成の台帳とは、役割が違う点も押さえておきます。台帳は今どう動いているかを記録するもの、全体図はどうあるべきかと、どこへ向かうかを示すものです。台帳に持たせる記録の項目は、構成の台帳をAIの構成まで追える形にする別の記事で整理しています。
描く対象を4つに分けると、置く層が決まる
AIをひとまとめに「AI」と描くと、図の上で何も決められません。この記事では、全体図に描くAIを4つに分けます。社員が質問して答えを受け取る社内の対話AI、利用者に代わって複数の仕組みを操作するAIエージェント、社内の仕組みからAIのモデルを呼び出す口、そしてAIに読ませるために整えた社内のデータです。
4つは、置く層も、図に書き込む項目も違います。下の表は、それぞれをどの層の部品として描き、何を書き込むかの目安です。層の名前は、前の節の4つの層に合わせています。
| 種類 | 主に描く層 | 図に書き込む項目 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| 社内の対話AI | アプリケーションの層 | 提供元・契約の単位・読みに行く社内の場所 | 社外で動くことが図から消える |
| AIエージェント | 業務の層とアプリケーションの層にまたがる | 任された業務・触れてよい仕組み・持ち主・止める人 | 線が毎回変わり、決まった連携として描けない |
| モデルの呼び出し口 | 基盤の層 | 使うアプリ・つながる提供元・記録の置き場・費用の付け先 | アプリごとに直接つながっていると図に出ない |
| AIに読ませるデータ | データの層 | 元のデータの場所・読ませてよい範囲・更新の頻度 | 元のデータとAI用の写しが二重にある |
表の右の2列が、従来の図に足りない部分です。どの種類でも、箱を1つ増やすことより、その箱から出る線と持ち主の欄を描くことに手間をかけます。以降の節では、4つの種類を1つずつ、全体図に描く場面として見ていきます。
4つに当てはまらないAIもあります。表計算や文書作成の製品に組み込まれたAIの機能は、その製品の箱の注記に書くにとどめ、独立した箱にはしません。独立した箱にするかどうかは、そのAIが製品の外にある社内の場所を読むか、書き込むかで決めます。外へ線が伸びないAIの機能まで箱にすると、全体図が製品の機能の一覧になってしまいます。
場面1:社内の対話AIは、アプリケーションの層の1つの箱
全社員が使う対話AIや、部署で契約した対話AIは、まずアプリケーションの層に1つの箱として描きます。中で使われているモデルの種類や仕組みまで、図に描く必要はありません。描くのは、どこの提供元のサービスで、どの契約の単位(全社か部署か)で使っているかです。
同じ製品を部署ごとに別の契約で使っているなら、箱は契約の数だけ描きます。1つの箱にまとめて描くと、設定や記録の扱いが部署ごとに違うことが図から消えます。全社で1つに寄せるか部署ごとに分けるかは別の判断なので、ここでは今の契約の姿を、そのまま正直に描くことに徹します。
対話AIの箱には、社外で動くことを示す印を付けます。社内の基盤の層ではなく、提供元の基盤の上で動いているからです。入力した内容がどこに保存され、どの地域で処理されるかは、契約と提供元の公開情報で確かめた範囲だけを、図の注記として1行で書いておきます。
社員が個人で使っている無料の対話AIは、図に描くかどうかで迷う所です。使ってよいと認めていないものを図に描くと、認めたように見えるという心配があります。描かない場合も、図の外に「把握しているが認めていない利用」の一覧を添えておくと、全体の地図として実態を隠さずに済みます。
場面1の続き:箱の中身より、社内へ伸びる線を描く
対話AIの箱で大事なのは、そこから社内のどこへ線が伸びているかです。社内の文書の置き場を読ませる設定にしているなら、その置き場へ線を引きます。メールや予定表、会議の録画を読む機能を有効にしているなら、それぞれに線を引きます。
線には向きを付けます。AIが読むだけなのか、書き込みもするのかで、影響の大きさが違うからです。読むだけの線と書き込む線は、色か線の種類で描き分けます。書き込む線が1本でもある対話AIは、次の節で扱うエージェントに近い扱いにします。
線のもう1つの属性は、誰の権限で読むかです。多くの製品は、使っている社員の権限の範囲で社内の情報を読みます。この場合、図の注記には「利用者の権限で読む」と書き、権限の設定そのものが適切かどうかは、別の確認の項目として残します。全体図で権限の中身まで描こうとすると、図そのものが読めなくなります。
線を描き終えたら、線の先にある仕組みの持ち主に見せます。文書の置き場の持ち主が、自分の置き場がAIに読まれていることを知らなかった、という食い違いは、この段階で見つかることが多いはずです。見つかった食い違いは、その場で直さず一覧にして、持ち主の判断を待ちます。
場面2:AIエージェントは、2つの層にまたがって描く
AIエージェントは、全体図でいちばん描き方に迷う部品です。業務の一部を任されているので業務の層の要素であり、同時に複数の仕組みを操作するのでアプリケーションの層の要素でもあります。どちらか一方の層に押し込まず、業務の層の「任された仕事」と、アプリケーションの層の「操作する仕組み」を線で結ぶ形で描きます。
業務の層には、エージェントが任された仕事を、業務の名前で書きます。「請求書の受け付けと仕分け」「問い合わせの一次回答」のように、人が担当していたときと同じ粒度にそろえます。製品の名前で書くと、業務の地図の上で何が自動になったのかが読めなくなります。
アプリケーションの層では、エージェント自体を1つの箱として描き、そこから操作する仕組みへ線を引きます。線は毎回すべて使われるわけではないので、「操作してよい範囲」として描きます。実際にどの線がいつ使われたかは、図ではなく動作の記録で追うものです。
製品の提供元の中には、エージェントを独立した層として描く見方を示しているところもあります。たとえば、業務アプリの大手の設計の手引きは、エージェントの層を含む11の層に分けた図を示しています。層を増やすかどうかは、会社の規模とエージェントの数で決めればよく、数体のうちは既存の層の上に描くほうが全体を見渡しやすいはずです。
場面2の続き:エージェントの箱に書き込む3つの名前
エージェントの箱には、必ず3つの名前を書き込みます。任された業務の持ち主、エージェントの設定を変えられる人、止める判断をする人です。3つが同じ人のこともありますが、どれかが空欄のまま図に載せることはしません。
触れてよい仕組みの一覧も箱に添えます。読むだけの仕組み、書き込める仕組み、社外へ送れる経路の3つに分けて書くと、審査のときに見るべき所がはっきりします。社外へ送れる経路を持つエージェントには、図の上で目立つ印を付けておきます。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、2026年3月31日に第1.2版が公表され、AIエージェントについての記述が加わったと紹介されています。細かな項目は原文で確かめる必要がありますが、エージェントの動きに人がどこで関わるかを、使う側が先に決めておくという考え方とは、方向が合っています。
社員が自分で作れるエージェントは、数が増えると全部を図に描けなくなります。その場合は、1体ずつではなく、作る場所(作成の画面や基盤)を1つの箱として描き、その中で作られたものが触れてよい仕組みの外枠を描きます。1体ずつの持ち主は、図ではなく別の一覧で管理します。
場面3:モデルの呼び出し口は、基盤の層の共通部品
社内で作ったアプリや業務の仕組みが、AIのモデルを直接呼び出している場合、その呼び出しは図にほとんど現れません。プログラムの中の1行として入り込むからです。全体図では、モデルを呼び出す口を基盤の層の共通部品として描き、どのアプリがその口を使っているかを線で示します。
呼び出しが共通の口を通らず、アプリごとに直接提供元へつながっている場合も、そのまま描きます。直接の線が何本あるかが、今の姿の図の大事な情報だからです。呼び出しを1か所に集める仕組みを入れるかどうかの判断は、呼び出し口を集約する仕組みを扱った別の記事で整理しています。
呼び出し口の箱に書き込むのは、つながっているモデルの提供元、呼び出しの記録の置き場、費用をどの部署に付けるかの3点です。モデルの種類や版の細目は変わりやすいので図には描かず、別の一覧に置きます。図には変わりにくいつながりだけを描くと、更新の手間が減ります。
社内に置いたモデルと社外のモデルを両方使っている会社は、どちらにつながるかの線を分けて描きます。どこに置くべきかの判断の軸は別の記事に譲り、ここでは今つながっている先を正しく描くことに専念します。正しく描けていれば、置き場所を見直す議論も同じ図の上でできます。
場面4:AIに読ませるデータは、読ませてよい範囲として描く
AIに社内の文書やデータを読ませて答えさせる仕組みでは、元のデータとは別に、AIが探しやすい形に整えた写しを作ることが多くあります。ある大手のシステム会社の2026年4月のコラムも、生成AIの仕組みの構成要素の1つとして、データの倉庫や検索用のデータベースといった、データの置き場を挙げています。
全体図では、この写しをデータの層に、元のデータとは別の箱として描きます。元のデータからの線には、更新の頻度を書き込みます。写しの更新が月に1回なら、AIは最大で1か月前の内容で答えることが、図から読み取れるようにするためです。
データの層で最も大事なのは、読ませてよい範囲の線引きです。人事や給与、顧客の個人情報のように、AIに読ませない区分を、データの層の図に塗り分けで示します。読ませてよい範囲を決めるのはデータの持ち主で、AIでも情シスでもありません。図は、その決定を全員が同じ形で見られるようにするための道具です。
写しが増えると、同じ文書が元の置き場と写しの両方にあり、片方だけが直される事態が起きます。全体図に写しを描いておけば、元のデータを直したときに、どの写しを作り直すかを追えます。写しを作る仕組みの持ち主も、箱に書き込んでおきます。
今の姿と目指す姿を、AIについても2枚描く
経済産業省の資料は、全体図を今の姿と目指す姿の2枚で描き、その間を移行の計画で結ぶ形を示していました。AIを描くときも、この2枚の考え方がそのまま使えます。今の姿の図には、部署ごとに入ったAI、直接の呼び出し、持ち主が空欄の箱を、ありのままに描きます。
目指す姿の図には、AIの部品をどの層にどう置くかの決まりを描きます。たとえば、エージェントは決められた作成の場所でだけ作る、モデルの呼び出しは共通の口を通す、AIに読ませるデータは写しの箱を経由する、といった決まりです。決まりを図に描いておくと、新しいAIの導入の相談が来たとき、図と照らして判断できます。
2枚の差が、移行の計画になります。持ち主が空欄の箱に持ち主を決める、直接の呼び出しを共通の口に寄せる、読ませてはいけないデータが写しに入っていないか確かめる、といった作業を、順番と期限をつけて並べます。全部を一度に直そうとせず、影響の大きい箱から手を付けます。
目指す姿の図は、一度描けば終わりではありません。AIの製品は機能の追加が速く、半年前に描いた目指す姿が、今の製品の動きと合わなくなることがあります。見直しの時期を、年に1回などあらかじめ決めておき、その時期に2枚とも描き直します。
下書きはAIに作らせ、正しさは人が決める
全体図の作業で最も時間がかかるのは、散らばった資料から今の姿を拾い集めるところです。システムの一覧、契約の一覧、ネットワークの構成図、各部署の利用の申請書などを生成AIに読ませ、4つの層に振り分けた一覧の下書きを作らせるのは、AIに向いた仕事です。
資料同士の食い違いの指摘も任せられます。契約の一覧にはあるのに構成図に無いAI、申請書には書かれているのに持ち主の欄が空の箱などを、AIに拾わせます。ただし、AIには、指摘ごとにどの資料のどこを根拠にしたかを書かせます。根拠の無い指摘は、確かめる手間だけを増やすからです。
反対に、AIに決めさせてはいけないことが3つあります。図が今の姿として正しいか、エージェントをどの層に置くか、誰を持ち主にするかです。どれも会社の責任の分け方そのものなので、人が決めて、決めた人の名前を図に残します。進め方は次の5つの手順です。
システム・契約・構成図・申請書を1か所に集める。AIに読ませる資料に、読ませてはいけない情報が含まれていないかを先に確かめる。
資料ごとに、どの層の何に当たるかを振り分けさせ、根拠にした資料と箇所を1行ずつ書かせる。
資料同士で合わない所、持ち主の欄が空の所を一覧にさせる。判断は書かせず、事実だけを並べさせる。
食い違いの1件ずつを、仕組みの持ち主と部署の窓口に確かめる。確かめた人と日付を残す。
置く層と持ち主を決めて図を承認する。承認した版の日付を図に書き込む。
描いた全体図を、AI導入の審査に使う
描いた全体図がいちばん役に立つのは、新しいAIの導入の相談が来たときです。相談を受けたら、そのAIが4つの種類のどれに当たるかを決め、全体図のどこに箱が置かれ、どこへ線が伸びるかを、相談した部署と一緒に描き込みます。
審査の問いは、図の上で答えられる形にそろえておきます。どの層に置くか、社内のどこを読むか、書き込むか、社外へ送る経路はあるか、同じ役割の箱がすでに図にあるか、持ち主と止める人は誰か、の6つです。図に描き込めないAIは、何をするのかがまだ決まっていないと判断できます。
同じ役割の箱がすでにある場合は、新しい契約を増やす前に、既存のものを使えないかを相談します。全体図があると、部署ごとに似たAIが増えていく流れを、相談の段階で止められます。ただし、既存のものを使うか新しく入れるかの最終の判断は、業務の持ち主と情シスの責任者が話し合って決めます。
審査が終わったAIは、その場で全体図に描き足します。審査の記録と図が別々に管理されると、審査は通ったのに図に無いAIが生まれます。審査の最後の手順を「図に描き足して版を上げる」にしておくと、図が自然に最新に保たれます。
持ち主の決め方を、図の決まりとして書いておく
全体図の箱に持ち主を書くとき、迷いやすいのは、業務の持ち主と仕組みの管理者のどちらを書くかです。答えは両方です。業務の持ち主はAIが任された仕事の結果に責任を持つ人、仕組みの管理者は設定・契約・停止の操作に責任を持つ人です。
AIエージェントでは、もう1人、動作の記録を見る人を決めておきます。エージェントは人が見ていない間にも動くので、おかしな動きに最初に気づく役割が要るからです。記録を見る人が決まっていないエージェントは動かさない、という決まりを図の凡例に書いておく方法もあります。
持ち主が決まらない箱は、図の上で目立つ色にします。決まらない理由の多くは、AIを入れた部署と、AIが触れる仕組みの持ち主が別の部署であることです。この場合、どちらが持つかは両方の部署の上の責任者が決めます。情シスが代わりに持ち主になると、業務の結果に責任を持てない人が持ち主になってしまいます。
持ち主は異動や退職で変わります。図の箱には個人の名前と役職の両方を書き、人事の異動の時期に合わせて持ち主の欄を見直します。個人の名前だけで書いていると、異動のたびに空欄が増えていきます。
図が古くなる原因と、避けたい描き方
全体図は、描いた直後がいちばん正しく、その後は少しずつ実態から離れていきます。AIは、部署が自分で契約できる、社員が自分で作れる、提供元の更新で機能が増える、という3つの理由で、従来のシステムより速く図から外れていきます。
図を保つ仕組みは、更新の入り口を絞ることです。新しいAIは審査の最後で図に描き足す、契約の更新のときに箱の注記を見直す、半年に1回は食い違いの一覧をAIに作らせて持ち主に確かめる、の3つで、多くのずれは拾えます。運用中の構成の細かな記録は構成の台帳に任せ、全体図はあるべき姿とつながりに絞ります。
- AIを1つの「AIの層」にまとめて描き、どの業務とどの仕組みにつながるかが読めない
- 製品の名前の箱だけを並べ、社内へ伸びる線と、その向きを描かない
- エージェントの持ち主の欄を空けたまま、図を承認する
- AIが作った下書きを、持ち主に確かめずに今の姿の図として配る
- 審査の記録と図を別々に管理し、審査を通ったAIが図に載らない
- モデルの版や設定の細目まで図に描き、毎月の更新に図が追いつかなくなる
どの失敗も、図を描く物として扱い、判断に使う物として扱っていないところから生まれます。審査と持ち主の決定に使われている図だけが、更新され続けます。
よくある質問
Q. 全体図を描くには、専用の製品が必要ですか。
必須ではありません。小さく始めるなら、表計算と一般的な作図の道具で十分です。専用の製品は、箱や線の情報を一覧として管理し、版を残す機能を持つものが多く、システムの数が数百に及び、エージェントも多数ある段階で検討する価値があります。道具を選ぶ前に、層の分け方と書き込む項目を先に決めます。
Q. トーガフのような枠組みを、全部取り入れる必要がありますか。
全部を取り入れる必要はありません。第10版は、組織や設計の型に合わせて使い分けやすいよう、部品に分けた構成になったと紹介されています。AIを描く目的なら、4つの層と、今の姿と目指す姿の2枚という骨組みだけを借りれば始められます。
Q. AIエージェントが数十体ある場合も、全部を図に描きますか。
1体ずつ描く必要はありません。作る場所を1つの箱にし、その外枠で触れてよい仕組みの範囲を示します。社外へ送れる経路を持つものや、業務の結果に直接影響するものだけを、個別の箱として描き出します。
Q. 全体図そのものの持ち主は、誰がよいですか。
図そのものの持ち主は情シスの責任者が担うことが多いですが、業務の層の正しさは各部署の持ち主が確かめます。情シスだけで描いた図は、業務の層が推測で埋まりがちです。承認の手順に、部署の持ち主の確認を入れておきます。
- この記事の枠組みの説明は、経済産業省の講演資料(2004年1月)と、オープングループの公式ブログ(2025年7月)で確かめた範囲に限っています
- 製品の提供元やシステム会社の図の描き方は、各社の見解として紹介したものです。自社の図の層の分け方は、規模とAIの数に合わせて決めてください
まとめ
エンタープライズアーキテクチャにAIを描くとき、新しい図の描き方は要りません。業務・データ・アプリケーション・基盤の4つの層はそのまま使い、AIを社内の対話AI、AIエージェント、モデルの呼び出し口、AIに読ませるデータの4つに分けて、それぞれを置く層と書き込む項目を決めます。足りなくなるのは箱ではなく、社内へ伸びる線と、その向きと、持ち主の欄です。下書きと食い違いの指摘はAIに任せ、根拠の資料を書かせます。図が正しいか、どの層に置くか、誰が持ち主かは人が決め、決めた人の名前を図に残します。そして、描いた図を新しいAIの審査に使い、審査の最後で図を描き足す。判断に使われ続ける図だけが、情シスが持つ全体の地図として生き残ります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
