AI製品のFit&Gapが外れる原因と対策|機能が変わる前提の比べ方

AI製品のFit&Gapが外れる原因と対策|機能が変わる前提の比べ方

「Fit&Gapで九割は標準の機能で足りると判定したのに、使い始めたら現場の要望の半分も通らなかった」「Gapとして追加の開発を見積もった機能が、契約から数か月後に標準で付いてしまった」。AI製品を入れた情シスや業務部門の責任者から、こうした声が届きます。照合の手間を惜しんだ結果のように見えますが、多くはそうではありません。AI製品のFit&Gapが外れるのは、照合が雑だったからではありません。本当は、「できる・できない」が決まっていて機能も変わらない製品を前提にした照合表を、そのまま当てているからです。この記事では、外れる3つの原因と、照合表の作り替え方、Gapの4つの埋め方を整理します。


カメ先生カメ先生

フィットギャップ分析は、業務の要件と製品の機能を1行ずつ照らして、合う所と合わない所を分ける手法なんだ。ふつうの業務パッケージなら、機能は契約したときの形のまま変わらないから、丸か罰かで判定できた。


カメ子カメ子

AI製品では、その前提が成り立たないということですか。


カメ先生カメ先生

そう。同じ機能でも試すたびに結果が少しずつ違うし、機能そのものが数週間ごとに増えていく。だから、丸か罰かを1回付けるだけの表では、外れるのが当たり前なんだよ。


カメ子カメ子

表の作り方より前に、判定の書き方そのものを変える必要があるのですね。


この記事のポイント
  • 外れる原因は3つ。AIの機能は確率で動く、機能が月単位で増えて順に届く、Gapを埋める道が増えた
  • 確率で動く機能は、自社の材料で何件試して何件通ったかで判定し、照合表に確かめた版と日付を残す
  • Gapは「待つ・設定や指示文で埋める・業務を製品に合わせる・作る」の4つに分け、どれにするかは人が決める

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目次

Fit&Gapが外れたと分かるのは、使い始めてから

AI製品のFit&Gapの外れは、照合の場ではなく、使い始めてから見えてきます。よくあるのは3つの形です。合うと判定した機能が、現場の書類や問い合わせでは思ったほど通らない。合わないと判定して追加の開発を見積もった機能が、しばらくして標準で付く。合わない所の扱いを、作るか諦めるかの2つで決め、ほかの道を検討しないまま費用が膨らむ。

どれも、照合を担当した人の手抜きで起きるわけではありません。照合表の形が、機能の決まった業務パッケージを前提にしていることが、共通の原因です。丸と罰で1回だけ判定し、その結果で契約と開発の範囲を決める、という流れそのものが、AI製品には合いにくくなっています。

外れの影響は、契約の後に効いてきます。合うと判定した機能に頼って業務の手順を組むと、通らない分を人が手で補う作業が残ります。合わないと判定して作った部品は、製品に同じ機能が付いた後も、保守の費用がかかり続けます。どちらも、照合の段階で前提を変えていれば避けられた費用です。

この記事が扱うのは、製品の機能と業務の要件を照らす表と、合わない所の埋め方に限ります。提案依頼書の書き方、契約で確かめる項目、入れた後の検収の基準、業務の流れの描き直しは、それぞれ別の記事で整理しています。

そもそもFit&Gapは、何と何を照らす手法か

フィットギャップ分析は、パッケージ製品の機能と自社の業務の要件が合っているかを調べ、評価する手法です。IT用語辞典の説明では、要件に合っている部分をフィット、合っていない部分をギャップとして整理し、導入の判断に使うとされています。複数の製品を比べる場合は、製品ごとに合う割合を出して比べる使い方もあります。

合わない部分の扱いとして、同じ説明は3つの選択肢を挙げています。製品を改造する、足りない機能を追加で開発する、業務の手順を製品の標準の機能に合わせて変える、の3つです。それぞれの費用と手間と実現の見込みを見積もり、導入計画の根拠にするのが、本来の使い方です。

クラウドで提供される製品の導入では、最初から業務を製品の標準に合わせる「フィット・トゥ・スタンダード」という考え方も広がっています。ある導入支援の会社のコラムは、追加で開発した部分は製品の版が上がるたびに改修が必要になり、仕様を特定の担当者しか分からなくなる、という運用の課題を挙げています。

AI製品の照合は、この2つの考え方の間で揺れます。標準の機能に寄せたいのに、その標準が数週間ごとに変わる。合わせる相手が動き続けることが、AI製品のFit&Gapを難しくしている根っこです。以降の節で、その中身を3つの原因に分けて見ていきます。

原因1:AIの機能は、同じ入力でも結果が変わる

業務パッケージの機能は、同じ操作をすれば同じ結果を返します。AI製品の多くは、そうではありません。マイクロソフトの開発者向けの公式の解説は、対話型のモデルに同じ質問を何度もすると、既定では違う答えが返りやすく、その意味で応答は毎回同じとは限らない性質を持つ、と説明しています。

同じ解説は、結果をそろえやすくする設定を使っても、毎回同じになることは保証されないと注意しています。つまり、AIの機能は「できる・できない」ではなく、「何回に何回できるか」でしか表せません。デモで1回うまくいったことは、その機能が業務で通ることの証明にはなりません。

照合表の丸と罰は、この性質を表せません。たとえば「請求書から取引先名と金額を読み取る」という要件に、デモを見て丸を付けたとします。実際の請求書には、手書きの追記、かすれた印字、例外の多い書式が混ざります。丸の中身が「10件中9件」なのか「10件中5件」なのかで、業務の組み方はまったく変わります。

さらに、通る割合は製品の側の事情でも変わります。提供元がモデルを入れ替えたり、設定の既定を変えたりすると、同じ材料でも結果が変わることがあります。照合の時点の結果は、その日のその版での結果にすぎない、という前提で表を作る必要があります。

原因2:機能が月単位で増え、利用者ごとに順に届く

2つ目の原因は、製品の変わる速さです。マイクロソフトの業務向けAI(コパイロット)の公式の更新記録を見ると、2026年7月から9月にかけて、ほぼ2週間ごとに更新の記録が追加されています。表計算、文書、メール、管理画面など、多くの機能に変更が入っています。

同じ更新記録の冒頭には、新しい機能は安全のため段階的に配られ、会社の中の一部の利用者から先に届き、その後に全体へ広がると書かれています。照合の担当者の画面にある機能が、現場の全員に届いているとは限らないということです。逆に、照合のときに無かった機能が、数週間後に一部の社員にだけ現れることもあります。

この速さは、Gapの判定を短命にします。照合の時点でGapと判定し、追加の開発を見積もった機能が、数か月後に標準の機能として付くことは珍しくありません。業務パッケージなら数年に1回の大きな版の更新で起きていたことが、AI製品では1年のうちに何度も起きます。

反対向きの変化もあります。提供元が機能を整理し、名前を変えたり、別の機能にまとめたり、提供を終えたりすることです。フィットと判定した機能が、契約の期間中に形を変えることもある前提で、照合表には判定の根拠にした機能の名前と、確かめた日付を残しておきます。

原因3:Gapを埋める道が、作るか諦めるか以外に増えた

3つ目の原因は、合わない所を埋める道具が増えたことです。業務パッケージの時代は、合わない所は改造するか、追加で開発するか、業務を変えるかでした。AI製品では、これに加えて、製品の設定や、AIへの指示文を工夫することで埋められる場合があります。

たとえば、社内の言い回しに合わない回答が返るという合わない所は、社内の用語集を読ませる設定や、答え方の決まりを書いた指示文で、かなりの程度まで近づけられることがあります。複数の手順をつなぐ必要がある要件は、製品の中で作れるAIエージェントで埋められることもあります。

道が増えたこと自体は良い知らせですが、照合表の側が追いついていないと判定が外れます。合わない所を「作る」でしか見積もらない表では、設定や指示文で済む所まで開発の費用が積み上がります。反対に、指示文で何でも埋められると考えると、確率で動く部分を業務の要の所に置いてしまいます。

指示文や設定で埋めた所は、製品の更新で効き方が変わることがある点にも注意が要ります。原因1と原因2が、ここでも効いてきます。だからこそ、どの道で埋めたかを照合表に残し、更新のたびに確かめ直せるようにしておきます。

対策の全体像:照合表を3か所作り替える

3つの原因に合わせて、照合表を3か所作り替えます。1つ目は判定の欄で、丸と罰の代わりに試した件数と通った件数を書きます。2つ目は根拠の欄で、判定に使った機能の名前、製品の版や契約の区分、確かめた日付を書きます。3つ目は埋め方の欄で、合わない所ごとに4つの埋め方のどれを選んだかを書きます。

作り替えた表の進め方は、次の5つの手順です。業務パッケージの照合と大きく違うのは、手順3で自社の材料を使って試すことと、手順5で見直しの時期を決めることです。複数の製品を比べる場合は、同じ表を製品の数だけ横に並べます。合う割合を1つの数字にまとめて比べるより、必須の要件のうち条件つきフィットとギャップが何行あるかを比べるほうが、判断を誤りにくくなります。合う割合が高くても、必須の1行がギャップのままなら、その製品は業務の要を埋められないからです。

STEP1
要件を業務の言葉で並べる

機能の名前ではなく、どの業務で何ができればよいかを1行ずつ書く。必須と、あればよいを分ける。

STEP2
製品の資料と1行ずつ照らす

公式の機能の説明と更新記録を材料に、要件ごとに対応しそうな機能を書き出す。ここはAIに下書きさせてよい。

STEP3
確率で動く要件は、自社の材料で試す

実際の書類や問い合わせを使い、何件試して何件通ったかを数える。試した日付と版を残す。

STEP4
合わない所の埋め方を選ぶ

4つの埋め方のどれにするかを、費用・期限・業務への影響で比べて決める。決めるのは業務の持ち主と情シス。

STEP5
見直しの時期を決める

更新の頻度に合わせて、照合表を見直す時期を決める。待つを選んだ行は、期限の日に必ず見直す。

表を作り替えると、照合の作業は増えます。ただ、増えるのは主に試す部分で、契約の後に起きる手直しや、不要になった開発の費用に比べれば小さく済むはずです。照合の手間を、契約の前に払うか後に払うかの違いだと考えると、判断がしやすくなります。

照合表のひな形:判定の根拠と見直しの列を足す

照合表の列の例を示します。業務パッケージの照合表に、判定の根拠と見直しの列を足した形です。1行が1つの要件に当たります。書き方の例は、請求書の読み取りを要件にした場合の架空の記入例です。

列書く内容書き方の例
要件業務の言葉で、何ができればよいか取引先の請求書から、取引先名・金額・支払期日を読み取る
必須か必須/あればよい必須
対応する機能製品の機能の名前と、資料の場所書類の読み取りの機能(公式の機能説明の該当ページ)
確かめた版と日付契約の区分・製品の版・確かめた日法人向けの上位の区分・2026年10月1日
試した結果試した件数と通った件数、通らなかった型50件中43件。手書きの追記がある請求書で外れる
判定フィット/条件つきフィット/ギャップ条件つきフィット(手書きの追記は人が確かめる)
埋め方待つ/設定・指示文/業務を合わせる/作る業務を合わせる(追記のある請求書は人の受付へ回す)
判定した人業務の持ち主と情シスの担当経理の課長・情シスの担当
次に見直す日期限や定期の見直しの時期2027年1月の定期の見直し

判定の欄に「条件つきフィット」を置いたのが要点です。確率で動く機能の多くは、完全なフィットでもギャップでもなく、条件を付ければ使えるという判定になります。その条件を業務の手順に書き込むところまでが、照合の仕事です。

試した結果の欄の数字は、例として置いたものです。何件中何件通れば足りるかは、業務ごとに違います。間違えたときの影響が小さい業務なら低めの割合でも使え、支払いや契約に関わる業務なら、高い割合と人の確認の両方が要ります。

確率で動く機能は、自社の材料で何件通ったかで決める

条件つきフィットを判定するには、自社の材料で試すしかありません。製品の紹介資料にある精度の数字は、提供元が選んだ材料での結果で、自社の書類や問い合わせで同じ数字が出るとは限りません。判定の根拠にするのは、自社の材料で試した件数と通った件数だけにします。

材料は、業務で実際に扱うものから選びます。きれいな見本だけで試すと、通る割合が高く出ます。よくある形のものと、まれだが間違えると重い形のもの(手書き・かすれ・例外の多い書類)を、実際の比率に近い形で混ぜます。社外の製品に渡してよい材料かどうかは試す前に確かめ、個人情報を含むものは伏せるか、試しに使いません。

通ったかどうかの基準も、試す前に決めておきます。「取引先名と金額が両方合っていれば通った」のように、1件ごとに丸か罰かを付けられる形にします。試した後に基準を決めると、結果に合わせて基準が緩みます。通らなかったものは、どんな型で外れたかも書き残します。外れ方の型が、条件つきフィットの「条件」になるからです。

ここでの試しは、製品を選ぶための見極めで、入れた後の合否を決める検収とは目的が違います。検収で使う合格の線や、何を1件と数えるかの決め方は、AI導入の検収の基準を扱った別の記事で整理しています。

試す件数の目安と、同じ材料を残しておく理由

何件試せばよいかに決まった答えはありませんが、数件では判断がつきません。5件中4件通った製品と5件中5件通った製品の違いは、偶然で入れ替わる程度の差です。少なくとも数十件、外れ方の型が見えてくるまで試すのが目安です。複数の製品を比べる場合は、同じ材料を同じ順番で使います。

同じ材料は、照合が終わった後も残しておきます。原因1と原因2で見たとおり、製品の側の更新で結果が変わることがあるからです。見直しのたびに同じ材料で試し直せば、結果が良くなったのか悪くなったのかを比べられます。材料を残していないと、見直しのたびに一から集め直すことになります。

試しの結果には、試した日付、製品の版や契約の区分、使った設定と指示文を記録します。同じ製品でも、契約の区分によって使える機能や上限が違うことがあります。照合の担当者が上位の区分の試用で試し、実際の契約は下位の区分だった、という食い違いは、この記録で防げます。

試しを繰り返すと、照合の担当者の負担が増えます。材料の用意と結果の丸付けは業務の担当者、試す作業と記録は情シス、というように役割を分けておくと続けやすくなります。業務の担当者が丸付けに関わると、どの外れ方なら業務で補えるかの判断も早くなります。

Gapの4つの埋め方:待つ・設定や指示文・業務を合わせる・作る

合わない所の埋め方を4つに分けます。待つ、設定や指示文で埋める、業務を製品に合わせる、作る、の4つです。業務パッケージで言われてきた改造や追加の開発は「作る」に入り、AI製品で増えたのが「待つ」と「設定や指示文で埋める」です。

埋め方向いている場合決めておくこと落とし穴
待つ提供元が予定を公表している・急がない待つ期限と、期限までの代わりの手予定が延びても待ち続ける
設定・指示文で埋める言い回しや手順の型の違い指示文の持ち主と、更新のときの確かめ直し製品の更新で効き方が変わる
業務を製品に合わせる業務の側の手順に理由が薄い変える手順と、変える決裁の持ち主理由のある手順まで消してしまう
作る業務の要で、製品の進む方向と違う保守の担当と費用、標準に付いたときの扱い標準に付いた後も保守が続く

4つのどれを選ぶかは、1行ずつ決めます。1つの製品の中でも、ある要件は待ち、ある要件は業務を合わせる、と分かれるのが普通です。埋め方を選ぶのは業務の持ち主と情シスで、AIの見立てや提供元の営業の説明だけで決めません。

業務を製品に合わせる場合も、業務の流れ全体を描き直す話にはしません。照合表の1行に対して、どの手順をどう変えるかだけを書きます。業務の流れそのものの作り直しは、照合とは別の工程として扱います。

クラウドで提供されるAI製品では、業務パッケージのように製品そのものを改造する道は、多くの場合ありません。改造の代わりに、製品の外に部品を作ってつなぐ形になります。作る行の費用には、製品の更新のたびに、その部品が今までどおり動くかを確かめる手間まで含めます。この手間を見込まないと、作る道が実際より安く見えます。

待つを選ぶときは、期限と代わりの手を決める

待つは、AI製品で初めて現実的になった埋め方です。提供元が公式の予定表や更新記録で、近く付く機能を公表していることがあります。その機能が自社の合わない所を埋めるなら、作らずに待つほうが費用は小さく済みます。

ただし、予定は予定です。公表された時期が延びる、内容が変わる、段階的な配布で自社に届くのが遅れる、といったことは起こり得ます。待つと決めた行には、いつまで待つかの期限と、期限を過ぎたときにどうするかを必ず書きます。期限の無い「待つ」は、何もしないのと同じです。

期限までの間の代わりの手も決めます。人の手で補う、別の小さな道具でつなぐ、その業務だけは今のやり方を続ける、などです。代わりの手の費用と、作る場合の費用を比べ、待つ期間が長くなりそうなら作るほうが安い、という判断もあり得ます。

待っていた機能が付いたら、残しておいた材料で試し直し、判定の欄を書き換えます。付いた機能が、照合表の要件をそのまま満たすとは限りません。機能が付いたことと、要件に合うことは、別のこととして確かめます。

設定や指示文で埋めるときは、持ち主を決める

設定や指示文で埋める道は、費用が小さく、すぐに試せるのが利点です。社内の用語集を読ませる、答え方の型を指示文に書く、回答に使う資料の範囲を絞る、といった工夫で、言い回しや手順の型の違いの多くは近づけられます。

落とし穴は、埋めた所が誰の物でもなくなることです。照合の担当者が試しで書いた指示文がそのまま本番で使われ、担当者の異動とともに中身が分からなくなる、という流れはよく起きます。指示文や設定で埋めた行には、その指示文の持ち主と、置き場所を書きます。

更新の影響を受けやすい道でもあります。提供元がモデルを入れ替えると、同じ指示文でも答えの傾向が変わることがあります。見直しの時期には、残しておいた材料で試し直し、通る割合が落ちていないかを確かめます。落ちていたら、指示文を直すか、別の埋め方に切り替えるかを決めます。

指示文で埋められる範囲には限りがある点も押さえておきます。確率で動く性質そのものは、指示文では消せません。支払いや契約のように間違えたときの影響が大きい要件を、指示文だけで埋めたことにしないのが線です。

業務を合わせるか、作るかの分かれ目

業務を製品に合わせるのは、フィット・トゥ・スタンダードの考え方に近い埋め方です。業務の側の手順に、今となっては理由の薄いものが残っている場合、製品の標準に寄せるほうが、更新で増える機能の恩恵をそのまま受けられます。手順を変える決裁を誰が持つかを、照合表に書いておきます。

作るのは、業務の要の所で、製品の進む方向と自社の要件が違う場合に限ります。AI製品は更新が速いので、作った部品が数か月後に標準の機能と重なることがあります。作ると決めた行には、製品に同じ機能が付いたときに、作った部品をやめるか続けるかを誰が決めるかまで書いておきます。

分かれ目を見るときの問いは2つです。1つは、その手順はなぜ今の形なのか。理由が法令や取引先との約束にあるなら業務は変えにくく、作るか待つかになります。理由が「前からこうしている」だけなら、業務を合わせる候補です。もう1つは、その要件が提供元の進む方向と合っているか。合っているなら待つ、外れているなら作るに傾きます。

作る場合も、製品の外に大きな仕組みを作る前に、製品が用意しているつなぎ口や、製品の中で作れるエージェントで済ませられないかを確かめます。作り込みが大きいほど、製品の更新のたびに確かめ直す範囲が広がります。

AIに任せる下書きと、人が決める判定

照合の作業そのものにも、生成AIは使えます。要件の一覧と、製品の公式の機能説明、更新記録をAIに読ませ、要件ごとに対応しそうな機能の候補を書き出させるのは、AIに向いた仕事です。要件の一覧の抜けや、似た要件の重複を指摘させることもできます。

このとき、AIには候補ごとに、製品の資料のどこを根拠にしたかを書かせます。根拠の書けない候補は、照合表に載せません。AIは、資料に書かれていない機能を、ありそうな機能としてもっともらしく書くことがあるからです。照合に使った製品の資料は、照合した日付のものを保存しておきます。

反対に、AIに決めさせないのは、フィットかギャップかの判定と、合わない所の埋め方の2つです。判定は自社の材料で試した結果で決め、埋め方は費用と業務への影響を比べて、業務の持ち主と情シスが決めます。AIが書いた候補の一覧は判定の材料であって、判定そのものではありません。避けたい進め方を並べておきます。

  • デモで1回うまくいった機能に丸を付けて、照合を終える
  • 製品の紹介資料の精度の数字を、自社の材料で試さずに判定に使う
  • 照合の担当者の画面にある機能を、全員に届いている前提で数える
  • 合わない所を、作るか諦めるかの2つだけで見積もる
  • 待つと決めた行に期限を書かず、そのまま忘れる
  • AIが書き出した機能の候補を、資料と照らさずに照合表へ写す

照合表は、契約の後も見直し続ける

AI製品の照合表は、契約で役目を終える資料ではありません。製品の更新が続く限り、判定と埋め方は変わり得ます。見直しの時期は、更新の頻度と契約の更新の時期に合わせて決めます。少なくとも、待つと決めた行の期限の日と、契約を更新する前には見直します。

見直しでは、残しておいた材料で試し直し、判定の欄と埋め方の欄を書き換えます。条件つきフィットの外れ方が減っていたら、業務の手順に入れた人の確認を減らせるかを検討します。反対に、通る割合が落ちていたら、人の確認を増やすか、別の埋め方を探します。

見直しの結果は、次の製品選びの材料にもなります。どの種類の要件が待てば埋まり、どの種類は作らなければ埋まらなかったかの記録は、次に別のAI製品を照合するときの見積もりの精度を上げます。照合表を製品ごとの使い捨てにせず、会社の記録として積み上げていきます。

見直しの担当も決めておきます。提供元の更新記録を読み、照合表の行に関わる変更が無いかを拾う役割です。更新記録の読み取りと、関わりそうな行の候補出しはAIに下書きさせてよく、どの行を試し直すかは情シスの担当が決めます。更新記録が2週間ごとに出る製品なら、毎回すべてを読むより、月に1回まとめて読むほうが続きます。

  • この記事の製品の性質(応答が毎回同じとは限らない・機能が段階的に配られる)は、マイクロソフトの公式の解説と更新記録(2026年6〜9月更新)で確かめた範囲に限っています
  • 照合表の記入例の数字は、説明のための架空の例です。何件中何件で足りるかは、業務ごとに決めてください

まとめ

AI製品のFit&Gapが外れるのは、照合の手間が足りないからではなく、機能が決まっていて変わらない製品を前提にした照合表を当てているからです。原因は3つあります。AIの機能は同じ入力でも結果が変わる、機能が月単位で増えて利用者ごとに順に届く、Gapを埋める道が作るか諦めるか以外に増えた。対策は、照合表の判定の欄を試した件数と通った件数に、根拠の欄を確かめた版と日付に、埋め方の欄を待つ・設定や指示文・業務を合わせる・作るの4つに作り替えることです。候補の書き出しと抜けの指摘はAIに任せて根拠を書かせ、判定と埋め方は業務の持ち主と情シスが決める。機能が変わる前提で照合表を持ち続けることが、AI製品を入れる側の基本の構えになります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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