Media > AI活用ユースケース > 総務 > 大学の教務担当が学生と教員から受ける履修・成績・休学の質問に、入学年度に合った学則・教務規程・通知を探し、根拠の条項付きで回答案を返す

大学の教務担当が学生と教員から受ける履修・成績・休学の質問に、入学年度に合った学則・教務規程・通知を探し、根拠の条項付きで回答案を返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

学生や教員から履修・成績・休学の手続きを聞かれたとき、その学生の入学年度と学部に適用される学則・教務規程・履修要項・通知から、該当する条項を探します。条項番号を付けた回答案を作り、教務担当が確かめてから返信します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
教育
対象部門
総務
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
問い合わせが多い/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
150h/月
AI導入後
60h/月
想定削減
60%
年間削減
1,080h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 質問を受け、学生の入学年度・学部・学年を学務システムで確かめる
  2. その入学年度に適用される学則・教務規程・履修要項の版を、ポータルのPDFの一覧から探す
  3. 該当しそうな条項を、PDFを開いて探す。見つからなければ別の規程も開く
  4. 教務委員会の決定や特例の通知で、条項の扱いが変わっていないかを探す
  5. 判断に迷うものは、経験の長い職員に確かめる
  6. 回答の文を書き、根拠の条項を添えて返信する
導入後(After)
  1. 人教務担当が回答支援の画面に、学生の入学年度・学部・学年と、質問の要点を入れる
  2. 自動中継プログラムが、入学年度と学部から規程の版の絞り込みの式を作る
  3. 自動今日の日付で、効力のある通知だけを加える
  4. 自動Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、条項番号付きの回答案と、併せて聞かれそうな質問の候補を作る
  5. 自動引用が絞り込んだ版の中か、個々の学生の可否を言い切っていないかを確かめる
  6. 人教務担当が引用された条項の原文を開き、学務システムで学生の状況を確かめる
  7. 人回答案を直して返信する。判断の要るものは教務委員会や学部の担当へ回す
  8. 自動返信した回答のうち、条項だけで答えられたものを、承認を経てよくある質問の候補にする
各工程の詳しい説明を読む
  1. 質問を受け、学生の入学年度・学部・学年を学務システムで確かめる
  2. その入学年度に適用される学則・教務規程・履修要項の版を、ポータルのPDFの一覧から探す
  3. 該当しそうな条項を、PDFを開いて探す。見つからなければ別の規程も開く
  4. 教務委員会の決定や特例の通知で、条項の扱いが変わっていないかを探す
  5. 判断に迷うものは、経験の長い職員に確かめる
  6. 回答の文を書き、根拠の条項を添えて返信する

(a)版を間違える。 ポータルの一覧は最新の版が上にあり、古い版は「過去の版」の下にあります。急いでいると最新の版で答えてしまい、4年生に1年生の卒業要件を案内することがあります。

(b)通知が見落とされる。 「追試験の申請は試験日から1週間以内」と教務規程にあっても、教務委員会の決定で期間が延びている年度があります。通知は年度ごとのフォルダに入っていて、規程の条項から通知へたどる手段がありません。

(c)答えられる人が限られる。 改正の経緯と通知の関係を覚えている職員は数名で、その人の席に質問の付箋が集まります。 繁忙期には、その人が自分の仕事を進められません。

(d)答えの言い回しが人によって違う。 同じ質問に、条項を引いて答える職員と、経験から答える職員がいます。学生が別の職員に同じことを聞くと、違う答えが返ることがあります。

  1. 【人】 教務担当が回答支援の画面に、学生の入学年度・学部・学年と、質問の要点を入れる
  2. 【自動】 中継プログラムが、入学年度と学部から規程の版の絞り込みの式を作る
  3. 【自動】 今日の日付で、効力のある通知だけを加える
  4. 【自動】 Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、条項番号付きの回答案と、併せて聞かれそうな質問の候補を作る
  5. 【自動】 引用が絞り込んだ版の中か、個々の学生の可否を言い切っていないかを確かめる
  6. 【人】 教務担当が引用された条項の原文を開き、学務システムで学生の状況を確かめる
  7. 【人】 回答案を直して返信する。判断の要るものは教務委員会や学部の担当へ回す
  8. 【自動】 返信した回答のうち、条項だけで答えられたものを、承認を経てよくある質問の候補にする

1番目で入れるのは、入学年度と学部だけです。 氏名や学籍番号は入れません。学生の状況を確かめるのは、6番目で教務担当が学務システムを開くときだけです。

5番目を中継プログラムに置いているのも、意図してのことです。 版の外の条項を引いた回答案は、中身が正しく見えるほど危険です。引用の文書の版を機械で確かめ、外れていれば回答案を出しません。

8番目は、問い合わせそのものを減らすための段階です。 条項だけで答えられる質問がポータルのよくある質問に載れば、学生は問い合わせる前に答えを見つけられます。 ただし、載せる前に責任者が版と文言を確かめます。

02今回想定するシステム構成

構成図
【取り込み】学則・教務規程・履修要項・通知のPDF+版の台帳
   ▼【トリガー】規程の改正または通知の発出の登録
中継プログラム ── 版の台帳から、適用する入学年度・学部・効力の期間を JSONL にする
   ▼
Vertex AI Search(Agent Search)── レイアウトパーサーで解析し、条の見出し付きで分割

【質問】回答支援の画面(入学年度・学部・学年・質問の要点)
   ▼
中継プログラム(Cloud Run)── 版の絞り込みの式と、効力のある通知の条件を作る
   ▼
answer メソッド ── 条項番号付きの回答案、併せて聞かれそうな質問
   ▼
中継プログラム ── 引用の版の確認、可否の言い切りの検出、引用の位置の変換
   ▼
【人】教務担当が条項の原文と学務システムを確かめて返信
   └──▶ 判断の要るものは教務委員会・学部の担当へ
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search。answer メソッドとメタデータの絞り込み)Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Cloud Run 上で動かす。版の決定、引用の検査、位置の変換)Cloud Functions
保管Cloud Storage(規程と通知の原本と、版のメタデータ)─
学務既存の学務システム(教務担当が画面で見るだけ。この構成からはつながない)─

学務システムとは、つなぎません。 学生の成績や単位の状況は、教務担当が自分で画面を開いて確かめます。この構成が扱うのは、規程と通知という学内に公開された文書だけです。 最初の準備作業は、規程と通知の版の台帳を作ることです。

土台になるのは、Vertex AI Search です。 Google Cloud のドキュメントでは、Agent Search へ名称が変わりつつあると注記されています。Cloud Storage に置いた文書から非構造化データのデータストアを作り、文書ごとにメタデータを付けて取り込みます。

回答の生成は、answer メソッドで行います。 根拠を付ける設定(includeCitations)に加え、併せて聞かれそうな質問を返す設定(relatedQuestionsSpec)と、質問を言い換えて何段階かに分けて探す設定(queryRephraserSpec の maxRephraseSteps)があります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

取り込みと質問で、起点が2つあります。

取り込みは、教務課が規程の改正、または通知の発出を版の台帳に登録したことを起点にします。 改正は年に数回、通知は月に数件です。古い版は消しません。 在学生に適用される限り、その版で答える質問が来ます。最後の在学生が卒業した版は、台帳で retired にして絞り込みから外します。

質問の側は、教務担当が回答支援の画面で「回答案を作る」を押したときに動きます。 学生からのメールを自動で読ませることはしません。メールには氏名と学籍番号が書かれているので、教務担当が要点だけを画面に入れ直します。

繁忙期の4月と9月は、同じ質問が短い間に集中します。 履修登録の上限や登録の取り消しの期限など、同じ版・同じ条項で答える質問が何十件も続きます。 回答案は1件ずつ作りますが、教務担当は2件目からは条項の確認を短くできます。

入学年度が入っていないときは動かしません。 版を絞れない検索は、この構成がいちばん防ぎたい版の取り違えを、そのまま起こします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
学則本則と附則(経過措置)。改正ごとに1ファイル教務課の原本(Cloud Storage へ複製)
教務規程履修・試験・成績評価・追試験・再試験の手続き。改正ごとに1ファイル同上
履修要項学部・入学年度ごとの卒業要件、履修登録の上限、科目の区分同上
通知教務委員会の決定、特例の扱い、手続きの期日の変更。効力の期間付き同上
版の台帳文書の種類、学部、適用する入学年度の始めと終わり、効力の始めと終わり、ファイルの場所教務課が作る一覧
質問の要点入学年度、学部、学年、質問の要点(1〜3文)回答支援の画面

質を決めるのは、版の台帳の入学年度の列です。 附則の経過措置を読み、どの入学年度からどの入学年度までにその版が適用されるかを、教務課の職員が台帳に書きます。ここを生成AIに読ませて決めることはしません。

通知には、効力の期間を必ず持たせます。 「令和6年度に限り追試験の申請期間を延長する」という通知は、翌年度には効力がありません。 期間の無い通知は、取り込みを止めます。

Step3

データの取得方法を決める

取り込みでは、版の台帳から JSONL を作ります。 1文書につき1行で、structData に版のメタデータを入れます。

{"id": "rishu-econ-2022",
 "structData": {"doc_type": "rishu_yoko", "faculty": "ECON",
   "cohort_from": 2022, "cohort_to": 2023,
   "effective_from": "2022-04-01", "effective_to": "9999-12-31",
   "title": "経済学部 履修要項(2022・2023年度入学者)"},
 "content": {"mimeType": "application/pdf",
   "uri": "gs://academic-rules/rishu/econ_2022.pdf"}}

doc_type は gakusoku(学則)/kyomu_kitei(教務規程)/rishu_yoko(履修要項)/tsuchi(通知)の4つ、faculty は学部の記号と、全学共通の ALL です。doc_type・faculty・cohort_from・cohort_to・effective_from・effective_to は、スキーマで索引可能にします。 入学年度は数値の項目にし、比べられるようにします。

質問のときの絞り込みは、次の形で作ります。 2023年度入学の経済学部の学生、今日が2026年10月7日の場合です。

faculty: ANY("ECON", "ALL")
AND cohort_from <= 2023 AND cohort_to >= 2023
AND effective_from <= "2026-10-07" AND effective_to >= "2026-10-07"

入学年度の条件と、効力の期間の条件を両方かけます。 規程は入学年度で、通知は効力の期間で絞られます。全学の通知は cohort_from に最も古い入学年度、cohort_to に 9999 を入れ、同じ式で通知も規程も1回で絞れるようにします。

検索結果は、分割した部分の単位で返させます。 searchResultMode を CHUNKS にすると、条ごとの断片が引用の単位になり、条項番号を回答案に付けやすくなります。 検索の段階で返す件数は既定が10、上限が25です。学則・教務規程・履修要項・通知の4種類から引くので、通知の条項が漏れるようなら15件程度まで増やします。 増やす前に、版の絞り込みが効いているかを先に確かめます。

質問の言い換えは、最大で3段階にします。 maxRephraseSteps は既定が1、上限が5です。「休学したら履修登録と学費はどうなるか」のような2つ以上の規程にまたがる質問は、1段階では片方の条項しか引けないことがあります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 原本の確認 … 教務課の原本と同じファイルかを、ファイルのハッシュ値で確かめてから複製します
  2. 版の台帳との突き合わせ … 台帳に無いファイル、ファイルの無い台帳の行を一覧にし、取り込みを止めます
  3. 入学年度の範囲の検査 … 同じ学部・同じ文書の種類で、入学年度の範囲が重なる版や、すき間のある版が無いかを見ます
  4. 通知の効力の期間の検査 … 期間の無い通知、終わりが始めより前の通知を止めます
  5. 解析の設定 … レイアウトパーサーを使い、見出し・段落・表を検出させます。卒業要件の単位数の表が、表として取れることが要です
  6. 分割の設定 … 分割の大きさは100〜500トークン(既定500)です。条ごとに分かれやすいよう300にし、見出しを付ける設定(includeAncestorHeadings)を有効にします

6番目は、データストアを作る前に決めます。 ドキュメントでは、文書の分割はデータストアを作った後で有効にも無効にもできないとされています。includeAncestorHeadings の既定は無効です。「第3章 試験」「第18条 追試験」の見出しが付かない断片は、追試験の話か再試験の話かが分かりません。

3番目の検査を省かないでください。 範囲が重なると、1人の学生に2つの版が当たり、どちらの条項が引かれるかは検索の順位で決まってしまいます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、絞り込まれた版の規程と通知から質問に関係する条項を探し、条項の言葉で回答案を作り、条項番号を付けることだけです。

させること中身
該当条項の特定学則・教務規程・履修要項・通知の、どの条と項が関係するか
手続きの並べ方申請の期限、提出先、必要な書類を、条項に書かれた順に
通知による変更の指摘規程の条項が通知で変わっていれば、両方を並べる
確認の要る点の指摘学生の成績・単位・在籍の状況を見ないと決まらない点
させないこと理由
個々の学生の可否の判断卒業・進級・休学の可否は教務委員会や学部長などが決める
版の選択版の台帳から規則で決める。生成AIの判断に任せない
学費の額や返金の計算額は規程と募集要項の数字だけ。計算しない
条項に無い例外の案内「事情によっては認められることもあります」と書かない
他の学部や他の年度の規程による補い絞り込まれた版に無ければ「記載なし」とする

4行目が、いちばん起きやすい失敗です。 学生の質問には事情が書かれていることが多く、AIは「事情を考慮して認められる場合があります」と書きたくなります。教務担当がその文を返信に残せば、学生は大学が例外を約束したと受け取ります。

3行目の学費も、同じくらい慎重に扱います。 休学中の学費の扱いは学則や別の規程に書かれていますが、減免の申請の有無や納付の時期で、学生ごとの額は変わります。 回答案には条項の言葉だけを書かせ、額の案内は学費の担当の部署に回します。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の指示を入れます。

あなたは大学の教務課で、学生や教員からの手続きの質問に答える職員を手伝います。
回答案を読むのは教務課の職員で、引用された条項の原文を開いて確かめ、
学生の状況を学務システムで確かめてから返信します。
検索結果は、この学生の入学年度と学部に適用される規程と、いま効力のある通知だけです。

【答え方】
1. 最初に、質問に関係する規程の名前と条項番号を書いてください。
2. 手続きの期限、提出先、必要な書類を、条項に書かれた言葉のまま並べてください。
3. 通知で規程の扱いが変わっていれば、規程の条項と通知の両方を並べてください。
4. 学生の成績・単位・在籍の状況を見ないと決まらない点を、最後に書いてください。
5. 学生に宛てた返信の文体で、敬語で書いてください。

【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
  他の大学の一般的な扱いや、法令の一般的な知識で補わないでください。
- 「卒業できます」「休学が認められます」「単位が認定されます」と書かないでください。
  個々の可否は「所定の審議を経て決まります」と書いてください。
- 条項に書かれていない例外や配慮を書かないでください。
  「事情によっては」「相談に応じて」のような文を足さないでください。
- 金額、単位数、日数、期限は、条項に書かれているとおりに書いてください。
  計算や言い換えをしないでください。
- 根拠になる条項が見つからないときは、答えを作らないでください。
- 氏名や学籍番号を書かないでください。

可否の文を定型にしているのは、禁じるだけだと言い換えるからです。 「卒業できます」を禁じると「卒業要件は満たされる見込みです」と書きます。返信を受けた学生には、同じ意味に読めます。

「事情によっては」を名指しで禁じているのは、優しさから出る言葉だからです。 学生の困りごとが書かれた質問ほど、この一文が足されます。例外を認めるかどうかは、規程にある手続きで決まります。

Step7

出力形式を固定する

中継プログラムは、answer メソッドの応答を次の形に整えて画面に渡します。

{
  "inquiry_id": "",
  "cohort": 2023,
  "faculty": "ECON",
  "filter": "",
  "status": "answered | skipped | blocked",
  "skipped_reasons": [],
  "draft_reply": "",
  "citations": [
    { "doc_id": "kyomu-2021", "doc_type": "kyomu_kitei",
      "article": "第18条", "snippet": "", "uri": "",
      "char_start": 0, "char_end": 0 }
  ],
  "related_questions": [],
  "eligibility_phrase_detected": false,
  "route_to": "none | committee | faculty_office"
}

1つ目の理由は、filter を残せることです。 後で版の台帳の誤りが見つかったとき、どの式で絞った回答案だったかから、影響を受けた返信を洗い出せます。

2つ目は、citations で中継プログラムが版を検査できることです。 引用の doc_id が台帳の上で、この学生の入学年度・学部の範囲に無ければ、回答案を出さずに blocked にします。

3つ目は、引用の位置を文字の単位に直して持てることです。 ドキュメントでは、引用の始まりと終わりの位置は UTF-8 のバイト数で返り、文字数ではないとされています。日本語は1文字が複数のバイトになるので、そのまま画面の強調に使うと、引用の場所がずれます。 中継プログラムで文字の位置に直し、char_start・char_end に入れます。

4つ目は、related_questions を教務担当への手がかりにできることです。 併せて聞かれそうな質問の候補を返す設定で、回答がスキップされたときには返りません。 教務担当は、この候補を見て学生が次に聞きそうなことを先に返信に書き足すかを決めます。学生にそのまま見せることはしません。

5つ目は、eligibility_phrase_detected で可否の言い切りを検出できることです。 中継プログラムが「できます」「認められます」「認定されます」などの語を回答案の中で探し、見つかれば画面の上に警告を出します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
版の台帳改正・発出の登録適用する入学年度・学部・効力の期間
Cloud Storageファイルの配置と JSONL規程と通知の原本と、版のメタデータ
Vertex AI Searchデータストアの取り込み登録のたびに1回ごとの取り込み
Vertex AI Searchanswer メソッドfilter で版を絞り、引用付きの回答案と併せて聞かれそうな質問
回答支援の画面中継プログラムの画面回答案、引用、原文へのリンク、警告
問い合わせのメール教務担当が手で返信自動では送らない

返信は、教務担当が自分のメールから送ります。 回答支援の画面からメールを送る機能は作りません。送る前に学務システムで学生の状況を確かめる手順を、画面の外に置いておくためです。

Step9

人が確認する

  1. 版を確かめる … 画面の上の「入学年度・学部・適用した版」が、学務システムの学生の情報と合っているかを見ます
  2. 条項の原文を開く … 引用のリンクから該当の条を開き、前後の条と附則を読みます
  3. 学生の状況を確かめる … 学務システムで成績・単位・在籍の状況を見て、回答案の「確認の要る点」を埋めます
  4. 可否の判断が要るものを回す … 卒業・進級・休学の可否に関わるものは、教務委員会や学部の担当へ回します
  5. 返信する … 回答案を直し、条項番号を添えて返信します

教務課の責任者は、週に一度、返信した回答を10件抜き取って読みます。 適用した版が学生の入学年度と合っていたか、可否や例外の言い回しが残っていないかを見て、台帳と指示の見直しに返します。

目標は、600件をならして1件6分です。 版と条項の確認に3分、学生の状況の確認に2分、返信の手直しに1分を見ています。6分を大きく超える月は、blocked が増えているか、版の台帳の入学年度に誤りがあります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
入学年度が入っていない検索しない。版を絞れない検索は行わない
編入学・転学部・再入学の学生適用される版が規程の上で決まっていれば、その入学年度を入れる。決まっていなければ教務の責任者へ
1人の学生に2つの版が当たる台帳の範囲の重なり。回答案を出さず、台帳を直すまで経験の長い職員が答える
引用が版の範囲の外回答案を出さずに blocked
可否の言い切りが検出された警告を出し、定型の文に直すよう促す
回答がスキップされた「関係する条項が見つかりません」と出し、検索で当たった文書の一覧を示す
効力の期間の無い通知が見つかった取り込みを止め、台帳を直す
質問の要点に氏名や学籍番号が入った送る前に検出して止め、入れ直してもらう
学費の額を聞かれた条項の場所だけを示し、額の案内は学費の担当の部署へ回す
Vertex AI Search が応答しないポータルの規程の一覧へのリンクを出す

2行目は、台帳の作り方で決まります。 編入学の学生にどの入学年度の版が適用されるかは、大学ごとに規程で定めています。 決まっていない大学では、この構成を入れる前に教務委員会で決めてもらう必要があります。

Step11

記録を残す

  • 質問の受付の日時、教務担当、入学年度・学部・学年、質問の要点
  • そのときの絞り込みの式と、適用した版の一覧
  • answer メソッドの応答の全文(回答案、引用、併せて聞かれそうな質問、スキップの理由)
  • 中継プログラムの検査の結果(版の外の引用、可否の言い切り)
  • 教務担当が返信した文と、回答案から変えた点
  • 教務委員会や学部の担当へ回したものと、その結論

5つ目は、よくある質問の候補を作る材料になります。 回答案をほとんど直さずに返信できた質問は、条項だけで答えられる質問です。月に一度、教務課の責任者が選び、承認したものをポータルのよくある質問に足します。

04実装レベルの3段階

最小構成:入学年度の版を手で選び、AIサービスに渡して回答案を作らせる / 1学部・30件の試し
半自動化:上記+規程をデータストアに入れ、入学年度と学部で絞って回答案を作る / 版の選択と条項の検索
本格構成:上記+通知の効力の期間による絞り込み、引用の版の検査、可否の言い切りの検出、引用の位置の変換、併せて聞かれそうな質問 / 質問の要点を入れてから、根拠付きの回答案が出るまで

半自動化では、通知が入りません。 規程の条項だけで答えるので、特例や期日の変更がある年度には古い扱いを案内します。 本格構成との差はここで、本記事の想定は本格構成です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、版の台帳の入学年度の範囲の誤りが見つかります。それを直してから通知を足します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
10 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  600件 × 15分 ÷ 60 = 150 時間/月
導入後 600件 × 6分 ÷ 60 = 60 時間/月
月間削減時間
90h
削減率
60%
年間削減時間
1,080h
年間金額換算(時間単価2,800円)
302万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 学生数が数千名以上で複数の学部を持つ大学・短期大学・大学院で、教務課に履修・成績・休学の手続きの質問が毎月数百件届く場合。学則や履修要項を入学年度ごとに改正しており、学生によって適用される版が違う場合。教務委員会の決定や特例の通知が年度ごとにたまり、ベテランの職員しか全体を把握していない場合。規程と通知の電子の原本に、適用される入学年度と期間を付けて管理できる場合。
向いていない
  1. 学生数が数百名で、規程が1つの冊子にまとまり、改正がほとんど無い場合。規程や通知が紙でしか残っておらず、電子の原本を用意できない場合。質問の多くが個々の学生の成績や単位の状況の確認で、規程を引く必要がない場合。なお、個々の学生が卒業や進級の要件を満たすか、休学や復学を認めるかの判断は教務委員会や学部長などが行うもので、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 在学生に適用される版が多い学部を1つ選び、その学部の学則・教務規程・履修要項を、入学年度ごとに集める
  2. 先月の質問から30件を選び、入学年度・学部と質問の要点を、氏名を除いて書き出す
  3. 30件それぞれについて、当時の回答と根拠にした条項を控える
  4. 1件ずつ、その入学年度の版のPDFだけを手元のAIサービスに渡し、条項番号付きの回答案を作らせる
  5. 「この規程だけを根拠に答えてください。個々の学生の可否を書かないでください。条項に無い例外を書かないでください」と指示する
  6. 出てきた回答案と、当時の回答と条項を突き合わせる

4番目で、版を手で選んで渡すことが試しの要です。 ここで正しい条項が引けるなら、本格構成で難しいのは版の絞り込みの側だと分かります。

30件には、入学年度の境目の学生の質問を必ず入れてください。 改正の前後の入学年度で答えが変わる質問が、版を取り違えたときにいちばん影響の大きい質問です。当時の回答が正しかったかも、あわせて確かめます。

出てきた内容判断
当時と同じ条項が引ける版の台帳の整備とデータストアの構築に進む
通知で変わった扱いが反映されない通知の取り込みと効力の期間が要る。 台帳に通知を足す
「事情によっては」が混ざる指示の書き方で直る。構成は有効

2行目は失敗ではありません。 規程だけで答えると古い扱いになる質問が、どれくらいあるかが分かります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
最新の版で上の学年に答える入学年度の範囲で絞る。 入学年度が無ければ検索しない
1人の学生に2つの版が当たる取り込みの前に、範囲の重なりとすき間を検査する
通知で変わった扱いが反映されない通知に効力の期間を持たせ、今日の日付で絞る
期限の切れた特例を案内する効力の終わりの日を必ず入れ、無い通知は取り込まない
引用の強調の位置がずれる引用の位置は UTF-8 のバイト数。 文字の位置に直す
2つの規程にまたがる質問で片方しか引かれないmaxRephraseSteps を増やす(上限5)
条の途中で切れて何の話か分からないincludeAncestorHeadings を有効にする。作成後は分割を変えられない
「卒業できます」と書く可否の文を定型にし、中継プログラムで語を検出する
条項に無い例外を案内する「事情によっては」を名指しで禁じる
メールの氏名が検索に渡る要点を画面に入れ直す運用にし、入力で検出して止める
卒業した入学年度の版が残り続ける台帳で retired にし、絞り込みから外す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも版の取り違えで、返信の中身が正しく見えるほど、学生も職員も気づきません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 学則・教務規程・履修要項・通知という学内に公開された文書と、質問の要点(入学年度・学部・学年)です。学生の氏名・学籍番号・成績は扱いません。

  1. 学生の個人の情報を検索に渡さない … 回答支援の画面に入れるのは入学年度・学部・学年と要点だけです。学生の状況は、教務担当が学務システムで確かめます
  2. 学生が直接使う窓口にしない … この構成は教務担当の回答案を作るものです。回答案は職員が確かめてから返信し、学生にAIの文をそのまま見せません
  3. 可否の判断を生成させない … 卒業・進級・休学・単位の認定の可否は、規程にある手続きで決まります。定型の文と語の検出の両方で守ります
  4. 例外を約束させない … 条項に無い配慮の案内は、大学が約束したと受け取られます
  5. 版の台帳の変更を記録する … 誰が、いつ、どの入学年度の範囲を直したかを残し、誤りの影響を受けた返信を洗い出せるようにします
  6. よくある質問への転用は承認を経る … 回答案から作ったよくある質問は、教務課の責任者が承認してから公開します

規程と通知は学内に公開された文書ですが、改正の案や教務委員会の審議中の資料は入れません。 決まる前の扱いが回答案に出ると、学生には決まったこととして伝わります。

誤りが起きた場合のリスクは、別の版の規定を案内することと、可否や例外を約束することの2つです。 前者は版の台帳と引用の検査、後者は定型の文と語の検出で防ぎます。どちらもAIの精度ではなく、設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:版の台帳を1学部分作る

在学生に適用される版が多い学部を1つ選び、学則・教務規程・履修要項の版と、適用する入学年度の範囲を台帳にします。附則の経過措置は、教務課の経験の長い職員と読みます。

2週目:30件で試す

先月の質問から30件を選び、入学年度の版を手で選んでAIサービスに渡します。当時の回答と条項と突き合わせ、「事情によっては」や可否の言い切りが出ていないかを最優先で見ます。

3週目:通知を台帳に足す

過去6年の通知に、効力の始めと終わり、適用する学部と入学年度を付けます。効力の終わりが書かれていない通知は、教務委員会の記録で確かめます。

4週目:データストアを作り、1学部で使う

分割の大きさと includeAncestorHeadings を決めてデータストアを作り、1学部の規程と通知を取り込みます。入学年度の境目の学生の質問で、正しい版が引けるかを最初に確かめます。

2か月目: 引用の版の検査、可否の言い切りの検出、引用の位置の変換を足し、全学部に広げます。3か月目以降: 併せて聞かれそうな質問とよくある質問の候補を足し、1件15分が何分になったかを実測します。繁忙期の4月に、経験の長い職員の席に付箋が集まらなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
学則に少なくとも記載しなければならない事項に、学習の評価及び課程修了の認定に関する事項、入学・退学・転学・休学及び卒業に関する事項が含まれること(学校教育法施行規則第4条第1項)e-Gov法令API: 学校教育法施行規則 第4条2026-10-07
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの includeCitations、promptSpec.preamble、filter、answerSkippedReasons。検索の段階で返す件数が既定10・上限25で、searchResultMode で分割した部分の単位を選べること。relatedQuestionsSpec で併せて聞かれそうな質問を返し、回答がスキップされたときは返らないこと。queryRephraserSpec の maxRephraseSteps が既定1・上限5であること。引用の始まりと終わりの位置が UTF-8 のバイト数で返り、文字数ではないことGoogle Cloud: Get answers and follow-ups(answer method)2026-10-07
絞り込みの ANY()、数値と日付の比較の演算子、AND/OR/NOT の組み合わせ。絞り込みに使う項目を索引可能にする必要があることGoogle Cloud: Filter search by metadata2026-10-07
レイアウトパーサーが段落・表・見出しを検出すること。分割の大きさが100〜500トークン(既定500)で、includeAncestorHeadings の既定が無効であること。分割がデータストアの作成後に切り替えられないこと。レイアウトパーサーに Document AI の機能の料金がかかることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-07

個々の学生の卒業・進級・休学・単位の認定の可否は、大学の規程にある手続きで判断してください。 本記事は法令と Google Cloud の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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