Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 建設現場の配筋の写真を配筋図の指定と照らし、黒板の記載と食い違う写真と撮り漏れを配筋検査の前に拾う

建設現場の配筋の写真を配筋図の指定と照らし、黒板の記載と食い違う写真と撮り漏れを配筋検査の前に拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

現場が撮った配筋の写真の黒板を読み、配筋図の部材リストにある径・本数・間隔・かぶり厚さの指定と食い違う写真を拾います。あわせて撮影計画と突き合わせ、撮り漏れを配筋検査の前日までに現場へ返します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Make/Power Automate
対象業界
建設/製造
対象部門
品質管理/生産
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
人手が足りない/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
AIで行う処理
画像認識
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 現場の施工管理が、配筋を組み終えた部位から、黒板を写し込んで写真を撮る
  2. 写真を工事写真のアプリから共有のフォルダに書き出す
  3. 品質管理部の担当が、配筋検査の前日にフォルダを開き、写真を1枚ずつ見る
  4. 配筋図のPDFを開き、写真の黒板の符号と部材リストの行を探して、径・本数・間隔を見比べる
  5. 写真に写る主筋を数え、黒板の本数と合っているかを見る。スケールの目盛でかぶり厚さを読む
  6. 撮るべき部位の写真がそろっているかを、図面の符号と写真を見比べて確かめる
  7. 食い違いと撮り漏れを、現場の工事主任に電話かメールで伝える
導入後(After)
  1. 人現場の施工管理が、黒板とスケールを写し込んで配筋を撮り、共有のフォルダの検査ロット(階・工区)に入れる
  2. 自動一定の間隔でフォルダを見て、新しい写真を拾い、形式と大きさを確かめる
  3. 自動写真から作業用の縮小の写しを作る。元の写真には手を加えない
  4. 自動黒板の記載(部位・符号・径・本数・間隔・かぶり厚さ・実測値)を読み取る
  5. 自動黒板の符号で部材リストの行を引き、黒板の記載と部材リストの指定を照らす
  6. 自動写真に見える主筋の本数とスケールの目盛を読み、黒板の記載と照らす。違いの位置を返す
  7. 自動項目ごとの結果から、`pass` / `review` / `retake` を規則で決める
  8. 自動検査の前日の15時に、撮影計画と届いた写真を突き合わせ、撮り漏れの一覧を作る
  9. 人品質管理部の担当が、`review` と `retake` と撮り漏れだけを確かめる
  10. 人現場の工事主任に、撮り直しと黒板の書き直しと撮り漏れを返す
  11. 人配筋検査では、検査員が配筋そのものを確かめる
各工程の詳しい説明を読む
  1. 現場の施工管理が、配筋を組み終えた部位から、黒板を写し込んで写真を撮る
  2. 写真を工事写真のアプリから共有のフォルダに書き出す
  3. 品質管理部の担当が、配筋検査の前日にフォルダを開き、写真を1枚ずつ見る
  4. 配筋図のPDFを開き、写真の黒板の符号と部材リストの行を探して、径・本数・間隔を見比べる
  5. 写真に写る主筋を数え、黒板の本数と合っているかを見る。スケールの目盛でかぶり厚さを読む
  6. 撮るべき部位の写真がそろっているかを、図面の符号と写真を見比べて確かめる
  7. 食い違いと撮り漏れを、現場の工事主任に電話かメールで伝える

(a)確認が打設の前日に集中する。 写真は検査の直前にまとまって届きます。12現場のうち3つの検査が同じ週に重なると、前日の夕方に数百枚を見ることになります。 見る順番が後ろの写真ほど、確かめ方が粗くなります。

(b)黒板の書き間違いが検査で見つかる。 「D22」を「D25」と書いた、符号を隣の柱のものにした。配筋は正しいのに黒板が違うと、検査ではその写真が使えません。 撮り直しは配筋が隠れる前にしかできません。

(c)撮り漏れが打設の後に分かる。 図面の符号と写真を見比べるのは手間がかかるので、忙しい週ほど省かれます。 打設の後に「この梁の写真が無い」と分かっても、もう撮れません。

(d)見る人によって確かめ方が違う。 主筋の本数まで数える人もいれば、黒板の符号だけを見る人もいます。品質管理部の4名と応援の工事主任で、同じ写真から返す指摘が違います。

  1. 【人】 現場の施工管理が、黒板とスケールを写し込んで配筋を撮り、共有のフォルダの検査ロット(階・工区)に入れる
  2. 【自動】 一定の間隔でフォルダを見て、新しい写真を拾い、形式と大きさを確かめる
  3. 【自動】 写真から作業用の縮小の写しを作る。元の写真には手を加えない
  4. 【自動】 黒板の記載(部位・符号・径・本数・間隔・かぶり厚さ・実測値)を読み取る
  5. 【自動】 黒板の符号で部材リストの行を引き、黒板の記載と部材リストの指定を照らす
  6. 【自動】 写真に見える主筋の本数とスケールの目盛を読み、黒板の記載と照らす。違いの位置を返す
  7. 【自動】 項目ごとの結果から、pass / review / retake を規則で決める
  8. 【自動】 検査の前日の15時に、撮影計画と届いた写真を突き合わせ、撮り漏れの一覧を作る
  9. 【人】 品質管理部の担当が、review と retake と撮り漏れだけを確かめる
  10. 【人】 現場の工事主任に、撮り直しと黒板の書き直しと撮り漏れを返す
  11. 【人】 配筋検査では、検査員が配筋そのものを確かめる

9番目が、この設計の分かれ目です。 担当者が見るのは、食い違いが出た写真と撮り漏れだけです。pass の写真は一覧で流し見て、検査に回します。 全件を開く設計にすると、60.0時間はあまり減りません。

8番目の撮り漏れの確認は、AIにさせません。 撮影計画は部材リストから作る表で、届いた写真の符号と突き合わせるのは表どうしの照合です。スクリプトで機械的に出します。AIに任せるのは、写真と黒板を読むところだけです。

02今回想定するシステム構成

構成図
現場(工事写真のアプリ・電子小黒板)
   ▼ 共有のフォルダ(Google ドライブ)に検査ロットごとに書き出す
   ▼【トリガー】15分おきの時間主導型トリガー
Google Apps Script ── 形式・大きさの確認、作業用の縮小の写しを作る
   ▼
Gemini API ── ①黒板の読み取り(部位・符号・径・本数・間隔・かぶり・実測値)
   ▼
Google Apps Script ── 符号で部材リストを引き、黒板と指定を照らす(規則)
   ▼
Gemini API ── ②写真の主筋の本数とスケールの目盛(match/mismatch/not_visible + 位置)
   ▼
Google Apps Script ── 規則で pass/review/retake を決める
   ▼
確認の一覧(Google スプレッドシート)
   ▼【検査の前日15時】撮影計画との突き合わせ ──▶ 撮り漏れの一覧
   ▼【品質管理部の担当が確認】
現場の工事主任へ ── 撮り直し・黒板の書き直し・撮り漏れ
役割想定する製品代替候補
処理Gemini API(黒板の読み取り、主筋の本数とスケールの目盛の読み取り、違いの位置)Claude API、OpenAI API
連携Google Apps Script(フォルダの見回り、呼び出し、規則の判定、撮り漏れの突き合わせ)Make、Power Automate
連携Google スプレッドシート(部材リスト、撮影計画、確認の一覧)Microsoft Lists
保管Google ドライブ(元の写真と作業用の写し)Microsoft OneDrive、SharePoint

最初の準備は、配筋図の部材リストを表に直すことです。 図面のPDFのままでは、符号から行を引けません。符号、部位、主筋の径と本数、帯筋やあばら筋の径と間隔、かぶり厚さの設計値を1行ずつ表にします。かぶり厚さは特記仕様書と標準図から部位ごとに書き写します。

判定の土台は Gemini API の画像理解です。 対応する形式は PNG、JPEG、WEBP、HEIC、HEIF で、1回の入力に複数の画像を並べられます。物体の検出では、位置を [ymin, xmin, ymax, xmax] の形で、0から1000に正規化した座標で返します。数え違いが疑われる箇所や、目盛を読んだ箇所に枠を付け、担当者は写真に重ねた枠で確かめます。

画像を直接入れる場合、指示と合わせたリクエスト全体が20MBまでです。 1枚ずつ送るなら収まりますが、部材リストの同じ符号の写真を数枚まとめて送る場合は Files API で先に上げます。 Files API に上げたファイルは48時間で消え、1ファイル2GB、1プロジェクト20GBまでです。

写真の扱いには、工事写真の決まりが効いてきます。 国土交通省のデジタル写真管理情報基準は、写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めないとしています。AIに送るために縮小や回転をするのは、元の写真とは別の作業用の写しに対してだけにします。同じ基準は有効画素数の指標を「黒板の文字が確認できること」とし、100〜300万画素程度(1,200×900程度〜2,000×1,500程度)を目安に挙げています。この大きさなら、1枚ずつ直接送っても20MBに十分収まります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

15分おきの時間主導型のトリガーで、共有のフォルダを見回ります。 Apps Script には、ドライブにファイルが増えたことを直接受けるインストール型のトリガーがありません。時間主導型のトリガーで前回の見回りの後に増えた写真を拾い、1枚ずつ処理して、処理した写真のIDを一覧に記録します。

1回の実行は6分までです。 検査の前日に数百枚が一度に入っても、1回の実行で処理する枚数を決めておき、残りは次の15分に回します。 トリガーの1日の合計の実行時間は Google Workspace のアカウントで6時間までなので、1日に処理できる枚数の目安を先に見積もります。

もう1つのトリガーは、毎日15時の撮り漏れの確認です。 工程表から翌日に配筋検査がある検査ロットを拾い、撮影計画と届いた写真を突き合わせます。時間主導型のトリガーは指定の時刻から1時間の幅の中で動くので、現場が撮り直せる時間が残るよう、夕方ではなく15時にします。

インストール型のトリガーは作った人のアカウントで動きます。 品質管理部の共用のアカウントで作り、担当者の異動で止まらないようにします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
配筋の写真黒板とスケールを写し込んだ写真。現場・階・工区・撮影日時共有のフォルダ(検査ロットごと)
部材リスト符号ごとの部位、主筋の径と本数、帯筋やあばら筋の径と間隔、かぶり厚さの設計値配筋図と特記仕様書から作った表
撮影計画検査ロットごとに撮る符号と撮る項目(主筋、帯筋の間隔、かぶり厚さ)部材リストから作った表
検査の予定現場・検査ロット・配筋検査の日工程表
現場の連絡先工事主任の宛先現場の一覧

質を決めるのは部材リストです。 図面のPDFをそのままAIに渡して「この写真が合っているか」と聞くと、AIが図面のどの行を見たかが毎回変わります。 符号で行を引くのはスクリプトの仕事にし、AIには写真と黒板から読めたものだけを書かせます。

符号部位主筋帯筋・あばら筋かぶり厚さ(設計)
C1柱12-D25D13@100特記仕様書の柱の値
G2大梁上端4-D22/下端4-D22D13@200特記仕様書の梁の値
S1スラブD13@200(短辺)-特記仕様書のスラブの値

表の値は図面から人が書き写し、別の人が読み合わせます。 ここを誤ると、正しい写真が全部 review に出ます。部材リストの版と、図面の改訂の日も列に持たせます。

Step3

データの取得方法を決める

写真の現場・階・工区は、フォルダの構成から取ります。 工事写真のアプリから書き出すときに、検査ロットごとのフォルダに入れる決まりにします。撮影日時は写真のファイルの情報から取ります。

取るものどこから何に使うか
配筋の写真検査ロットのフォルダの、前回の見回りの後に増えたファイル読み取りの対象
黒板の記載1回目の呼び出しの結果部材リストの行を引く鍵と、照らす値
部材リストの行黒板の符号で引く表の行黒板の記載と照らす指定
撮影計画の行検査ロットで引く表の行撮り漏れの突き合わせ
検査の日工程表撮り漏れの確認を回す日

工事写真のアプリが黒板の記載を項目として書き出せる場合は、そちらを優先します。 書き出された項目があれば、1回目の呼び出しは読み取りではなく、写真に写る黒板と書き出された値が同じかの確かめに変えられます。書き出せない場合だけ、写真の黒板を読みます。

符号で行が引けないときは、そこで止めます。 黒板の符号が部材リストに無い場合、黒板の書き間違いか、部材リストの漏れのどちらかです。どちらかを決めずに review に回します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … JPEG などの対応する形式であることを確かめます
  2. 作業用の写しを作る … 元の写真はそのまま残し、縮小や回転は写しにだけ行います
  3. 大きさの確認 … 写しと指示を合わせて20MBを超えないことを確かめます
  4. 向きの確認 … 写しの向きをファイルの情報に合わせます。黒板が横倒しのまま送ると読み違えます
  5. 重複の確認 … 同じ符号の同じ項目の写真が複数あれば、すべて残し、確認の一覧では1行にまとめます

2番目を軽く見ないでください。 写真編集は認められていません。AIに送るための加工が元の写真に及ぶと、検査や電子納品に使えない写真になります。 作業用の写しのフォルダを分け、名前の先頭に印を付けます。

Step5

AIに処理させる

させるのは2つの段階です。 黒板の読み取りと、写真の中の主筋の本数とスケールの目盛の読み取りです。黒板と部材リストを照らすのは、間に挟むスクリプトです。

1つ目の段階:黒板を読む

読むもの返し方読めないときの扱い
部位・符号書かれた文字のまま読めなければ unreadable
主筋の径と本数「12-D25」のように書かれたまま同上
帯筋・あばら筋の径と間隔「D13@100」のように書かれたまま同上
かぶり厚さの設計値と実測値書かれた数字と単位のまま同上

2つ目の段階:写真を読む

読むもの返し方判断できないときの扱い
見える主筋の本数数えられた本数と、数えた範囲の位置隠れている可能性があれば not_visible
スケールの目盛(間隔)スケールが当たっている箇所の目盛の値目盛が読めなければ値を空にして not_visible
スケールの目盛(かぶり厚さ)型枠や捨てコンクリートから鉄筋までに当てた目盛の値同上
黒板の実測値との一致目盛の値と黒板の実測値が同じか片方が読めなければ not_visible

mismatch と not_visible の区別が、この構成でいちばん大事です。 柱の主筋は4面に並び、1枚の写真では手前の面しかはっきり見えません。「見える本数は8本」とだけ書かせ、奥の面に隠れている可能性があれば not_visible にします。 現場に「本数が違う」と返すのは、はっきり違うと分かるときだけです。

させないこと理由
配筋の合否の判断検査員と工事監理者が配筋そのものを見て決める
画素からの寸法の割り出し撮る距離と角度で変わる。読むのは目盛だけ
隠れた鉄筋の本数の推定見えない分を足すと、数え違いが消える
黒板の値の補完読めない文字を図面の値で埋めない
部材リストとの照合行の引き方がぶれる。スクリプトで行う

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 「柱なので4面とも同じ本数だろう」と見えない面の本数を足すと、黒板と同じ12本が返ってきて、本当に1本足りない柱を見逃します。

Step6

指示内容を固定する

あなたは建設会社の品質管理部で、配筋の写真を検査の前に確かめる立場です。
写真に写っているものだけを見て、次の2つを返してください。推測で埋めないでください。

【1. 黒板の記載】
黒板に書かれた次の項目を、書かれた文字のまま写してください。
部位、符号、主筋(径と本数)、帯筋またはあばら筋(径と間隔)、
かぶり厚さの設計値、かぶり厚さの実測値、間隔の実測値
読めない項目は value を空にし、status を unreadable にしてください。
図面や一般的な配筋の値で補わないでください。

【2. 写真の配筋】
- 見える主筋の本数を数え、observed_count に入れてください。
  手前の鉄筋の陰に隠れている可能性がある場合は、見えない分を足さず、
  status を not_visible にしてください。
- スケールや定規が写っている場合は、当たっている箇所の目盛の値を
  scale_reading に読んでください。目盛が読めない場合は空にしてください。
- 写真の大きさや画素から寸法を見込まないでください。目盛だけを読んでください。
- 黒板の本数と見える本数、黒板の実測値と目盛の値を比べ、
  match(同じ)/mismatch(はっきり違う)/not_visible(写真では判断できない)
  のどれかを付けてください。迷ったら not_visible です。
- mismatch または数えた範囲には、位置を box_2d に [ymin, xmin, ymax, xmax] で
  0〜1000 に正規化して入れてください。
- evidence には、判断の根拠にした見た目を短く書いてください。
- 配筋が正しいか、検査に通るかは書かないでください。

【写真の情報】現場:{site} 階:{floor} 工区:{zone} 撮影日時:{taken_at}

「図面や一般的な配筋の値で補わない」を明記しないと、読めない黒板が埋まります。 「D1?」と半分読めた文字を、よくある「D13」として返すことがあります。埋まった値は部材リストと一致してしまい、黒板の不備が消えます。

部材リストの値を指示に入れていないのも意図してのことです。 「設計は12本」と知らせると、AIは12本に寄せて数えます。比べる相手を知らせずに読ませ、照らすのはスクリプトにします。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 Gemini API の構造化出力では、response_format に mime_type: "application/json" と JSON Schema を渡し、status を enum で限ります。公式の案内では、出力がJSONとして正しくても、値はアプリケーションの側で必ず検証するようにとされています。

{
  "photo_quality": "good | retake",
  "board": {
    "member": { "value": "C1", "status": "ok | unreadable" },
    "main_bar": { "value": "12-D25", "status": "ok | unreadable" },
    "hoop": { "value": "D13@100", "status": "ok | unreadable" },
    "cover_design": { "value": "", "status": "ok | unreadable" },
    "cover_measured": { "value": "", "status": "ok | unreadable" }
  },
  "photo_checks": [
    { "item": "main_bar_count", "observed_count": 8, "scale_reading": "",
      "status": "match | mismatch | not_visible", "evidence": "",
      "box_2d": [0, 0, 0, 0] }
  ]
}

1つ目の理由は、AIが読んだ値と、部材リストとの照合を別の層に置けることです。 board の値をスクリプトが部材リストの行と比べ、spec_check を足します。

verdict条件
retakephoto_quality が retake、または黒板の符号が unreadable
review黒板の値が部材リストと違う、mismatch が1つでもある、符号が部材リストに無い、not_visible が半分以上
pass上のどれにも当たらない

2つ目は、スクリプトで検証できることです。 box_2d が0から1000の範囲か、mismatch に box_2d があるか、observed_count が0以上の整数かを確かめます。項目が欠けていれば review にします。 読み飛ばしたまま pass になるのを防ぎます。

3つ目は、集計に使えることです。 現場ごとに retake と黒板の書き間違いの数を数えれば、どの現場の撮り方を直せばよいかが、検査を待たずに分かります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有のフォルダ時間主導型トリガーでの見回り新しい写真を拾い、作業用の写しを作る
Gemini APIApps Script から呼び出し黒板の読み取り、写真の読み取り
部材リスト・撮影計画スプレッドシートの読み取り符号で行を引く、撮り漏れを突き合わせる
工程表検査の日の読み取り撮り漏れの確認を回す検査ロットを決める
確認の一覧スプレッドシートへの書き込み写真へのリンク、読み取った値、照合の結果、枠
現場の工事主任担当者からの連絡撮り直し、黒板の書き直し、撮り漏れ

工事写真のアプリと電子納品のデータには書き込みません。 この構成が出すのは、検査の前の確認の結果までです。黒板の書き直しや撮り直しは現場が行い、新しい写真がまたフォルダに入ってきます。

呼び出しの回数は1日の上限の範囲です。 外部への呼び出しは Google Workspace のアカウントで1日100,000回までで、1枚あたり2回の呼び出しなら、月1,200枚は十分に収まります。

Step9

人が確認する

品質管理部の担当は、review と retake の行と、撮り漏れの一覧だけを開きます。 確認の一覧の各行には、写真へのリンク、黒板の読み取りの結果、部材リストの行、写真に重ねた枠が並びます。

  1. 黒板と部材リストの食い違いを見る … 黒板の書き間違いか、部材リストの写し間違いかを確かめます
  2. mismatch の枠を見る … 数えた範囲と目盛の箇所が正しいかを写真で確かめます
  3. not_visible を見る … 撮る角度を変えて撮り直してもらうか、検査で見るかを決めます
  4. 撮り漏れを返す … 検査ロットの撮り漏れの一覧を、工事主任にまとめて送ります
  5. 判定を覆したら記録する … mismatch を match に直したら、その理由を短く残します

1番目で部材リストの側の誤りが見つかったら、すぐに表を直します。 表の誤りは、同じ符号のすべての写真を review に出し続けます。直した日と直した人を、部材リストの列に残します。

pass の写真も、検査ロットごとに数枚を抜き取って見ます。 AIが見逃した食い違いは review の確認だけでは見つからないので、抜き取りが見逃しを知る唯一の手がかりです。

配筋そのものの確認は、検査員と工事監理者が行います。 この構成の確認は、検査に出す写真と黒板の不備を減らすところまでです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
黒板の文字が小さい・反射で読めないretake。黒板を鉄筋の手前に置き、正面から撮り直してもらう
スケールが写っていない目盛の値を空にして not_visible。撮影の決まりに「スケールを写す」を足す
黒板の符号が部材リストに無いreview。黒板の書き間違いか、部材リストの漏れかを担当者が確かめる
図面が改訂された部材リストの版を上げ、改訂の前に撮った写真は旧版で照らしたことを記録する
柱の奥の面の主筋が見えないnot_visible。2面から撮る決まりにするか、検査で見る
1枚の写真に複数の符号が写る黒板の符号を正とし、写真の範囲が合わなければ review
検査の前日になっても写真が届かない撮り漏れの一覧の先頭に「未提出」で出し、工事主任に連絡する
写真の向きが横倒し作業用の写しで向きを直す。元の写真は直さない
Gemini API が応答しない確認の一覧に「未処理」で残し、次の見回りで再度処理する。3回失敗したら担当者が目で見る

上から2行目までが大半を占めます。 どちらもAIの問題ではなく、撮り方の決まりの問題です。 黒板を置く位置とスケールを当てる位置を、写真の手本付きで現場に配ると、retake が減ります。

Step11

記録を残す

  • 元の写真(手を加えないもの)と、作業用の写し
  • 指示の全文と、返ってきたJSONの全文
  • 照らした部材リストの版と、引いた行
  • verdict と、担当者が覆した項目とその理由
  • 現場に返した撮り直し・書き直し・撮り漏れと、その日時
  • 現場ごとの retake と黒板の書き間違いの数の推移

照らした部材リストの版を残すのは、図面が改訂されるからです。 改訂の前に撮った写真を後から見直すと、どの版で照らしたかが分からなければ、その指摘が正しかったかを判断できません。

覆した理由は、短い選択肢で残します。 「隠れていた」「目盛の読み違い」「部材リストの誤り」「黒板は正しい」の4つ程度にしておくと、月末に数えられます。「部材リストの誤り」が多ければ、表の読み合わせの手順を直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:写真を手で Gemini の画面に貼り、黒板と本数と目盛を読ませる / 1枚ごとの読み取り
半自動化:上記+フォルダを見回って Gemini API を呼び、部材リストと照らした結果を一覧に書き出す / 読み取りと照合の一覧化
本格構成:上記+規則で `pass` と `review` を分け、検査の前日に撮り漏れの一覧を出す / 照合、撮り漏れの突き合わせ、確認の絞り込み

半自動化で、1枚3分が1.5分程度になります。 黒板の読み取りと部材リストとの照合は自動になりますが、全件の結果を見て撮り漏れを探す作業が残ります。本格構成で1分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、retake の多い現場と、部材リストの写し間違いが先に分かります。そこを直してから規則で絞り込むほうが、現場への空振りの連絡が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
1,200 件
1件あたり現在時間
3 分
1件あたり導入後時間
1 分
現在  1,200件 × 3分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 1,200件 × 1分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,500円)
168万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の建築・土木の現場を同時に動かし、コンクリートの打設の前の配筋検査に向けて、現場が撮った配筋の写真を品質管理の部署や工事主任が確かめている建設会社。配筋図の部材リスト(部位・符号ごとの鉄筋の径・本数・間隔・かぶり厚さ)を表にできる場合。工事写真を電子小黒板付きで撮り、共有のフォルダに集めている場合。プレキャストコンクリートの工場で、製品ごとの配筋を写真で残している場合にも当てはまります。
向いていない
  1. 現場が1つで、工事主任が配筋をすべて自分の目で見られる場合。配筋図が紙だけで、部材リストを表にする人手が無い場合。写真から鉄筋の間隔やかぶり厚さをミリ単位で測りたい場合(写真からは測れません。スケールの目盛を読むだけです)。なお、配筋が設計どおりかの合否の判断と、配筋検査そのものは、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 1つの現場の、検査が終わった1つの階を選び、部材リストを表に直す
  2. その階の配筋の写真から30枚を選ぶ(検査で黒板の書き間違いや撮り直しを指摘されたものを数枚入れる)
  3. 手元の Gemini の画面に写真を1枚ずつ貼り、第7章の指示を貼り付ける
  4. 返ってきた黒板の読み取りを部材リストと見比べ、見える本数と目盛の値を当時の検査の記録と並べる
出てきた内容判断
検査で指摘されたのと同じ食い違いが出たフォルダとスクリプトの連携に進む
隠れた主筋を足して本数を合わせる指示の「見えない分を足さない」を強める。2面から撮る
読めない黒板を一般的な値で埋める指示の書き方で直る。構成は有効
黒板の文字がほとんど読めない撮り方が先。 AIの問題ではない

4行目が出たら、黒板を置く位置を決めて2〜3枚撮り直してください。 黒板と鉄筋の距離と角度をそろえると、読み取りがどれだけ変わるかが分かります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
隠れた主筋を足して本数を合わせる見えない分を足さない。 迷ったら not_visible
読めない黒板を一般的な値で埋める図面や一般的な値で補わないことを指示に書く
写真の画素から寸法を見込む目盛だけを読む。 画素からの寸法は求めない
部材リストの値を指示に入れて寄せられる比べる相手を知らせず、照合はスクリプトで行う
元の写真を縮小・回転してしまう作業用の写しにだけ加工する。 写真編集は認められていない
部材リストの写し間違い2人で読み合わせ、版と改訂の日を持たせる
図面の改訂の後も旧版で照らす版を上げ、どの版で照らしたかを記録する
検査の前日に一度に入ってきて処理が終わらない1回の実行の枚数を決め、残りを次の見回りに回す
撮り漏れの確認をAIに任せる表どうしの突き合わせはスクリプトで行う
担当者の異動でトリガーが止まる部署の共用のアカウントで作る

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、AIが「それらしい答え」を埋める方向に寄ることから来ます。 見えないものを見えないと書かせ、比べる相手を知らせないことで、食い違いが食い違いのまま残ります。

5行目も、最初から仕組みで防ぎます。 一度でも元の写真を加工すると、その写真は検査や電子納品に使えなくなります。作業用の写しを別のフォルダに作る処理を、最初の呼び出しの前に置きます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 配筋の写真、黒板の記載(工事名・部位・符号)、配筋図から作った部材リストです。個人の情報はほとんど含みませんが、建物の構造の情報です。 撮り方によっては作業員の顔が写ります。

  1. 写真の信憑性を守る … 写真編集は認められていません。元の写真を残し、AIに送るのは作業用の写しだけにします
  2. 構造の情報の扱い … 部材リストと配筋の写真は、発注者の建物の構造を示す情報です。Gemini API の利用規約では、無料の枠では送った内容が製品の改善に使われ、人が読むことがあるとされ、有料の枠では製品の改善に使わず、禁止事項の違反を見つけるために限った期間だけ記録するとされています。有料の枠で使い、発注者との取り決めで外部のサービスに送れる範囲を先に確かめます
  3. AIの結果で配筋の合否を決めない … 出すのは写真と黒板と部材リストの食い違いだけです。配筋が設計どおりかは、検査員と工事監理者が配筋そのものを見て決めます
  4. 作業員を写さない … 黒板と鉄筋だけが写る角度で撮る決まりにし、人が写った写真は作業用の写しを作る前に担当者が確かめます
  5. 現場ごとの集計を評価に直結させない … retake の数は、部位の形や天候の影響を受けます。数だけで現場を評価せず、撮り方の改善に使います

誤りが起きた場合のリスクは、正しく組んだ配筋に手戻りを頼むことと、食い違いを見逃すことの2つです。 前者は見えない鉄筋を mismatch にすると起き、後者は見えない分を足して match にすると起きます。どちらも「見えないものは not_visible」の1つの規則で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:部材リストを表にする

検査が近い1つの現場の、1つの階の配筋図から部材リストを表に直します。符号、部位、主筋、帯筋やあばら筋、かぶり厚さの設計値を書き、2人で読み合わせます。撮影計画も同じ表から作ります。

2週目:30枚で試す

検査が終わった階の写真30枚を手元の Gemini の画面で読ませ、当時の検査の記録と並べます。隠れた主筋を足していないか、読めない黒板を埋めていないかを最優先で見ます。

3週目:撮影の決まりを配る

黒板を置く位置、スケールを当てる位置、柱を2面から撮ることを、写真の手本付きで1つの現場に配ります。検査ロットごとのフォルダの作り方もここで決めます。

4週目:フォルダから一覧までをつなぐ

時間主導型のトリガーでフォルダを見回り、作業用の写しを作り、Gemini API で読み、部材リストと照らして一覧に書き出すところまで作ります。この時点では verdict を出さず、読み取りと照合の結果だけを見ます。

2か月目: 規則で pass と review を分け、検査の前日の撮り漏れの一覧を足します。現場を3つに広げます。3か月目以降: 12現場に広げ、1枚3分が何分になったかを実測します。担当者が覆す項目の割合が落ち着き、部材リストの更新が図面の改訂と同じ日に回るようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
対応する画像の形式が PNG、JPEG、WEBP、HEIC、HEIF であること。1回の入力に複数の画像を並べて渡せること。画像を直接入れる場合、指示などと合わせたリクエスト全体が20MBに制限されること。物体の検出で位置を [ymin, xmin, ymax, xmax] の形で0〜1000に正規化して返すことGemini API: Image understanding2026-10-07
構造化出力を response_format に mime_type: "application/json" とスキーマを入れて指定すること。enum と required が使えること。出力がJSONとして正しくても値はアプリケーションの側で検証するよう案内されていることGemini API: Structured output2026-10-07
Files API に上げたファイルが48時間保存されること。1ファイル2GB、1プロジェクト20GBまでであることGemini API: Files API2026-10-07
無料の枠では送った内容が製品の改善に使われ、人が読むことがあること。有料の枠ではプロンプトや画像などを製品の改善に使わず、禁止事項の違反を見つけるために限った期間だけ記録することGemini API Additional Terms of Service2026-10-07
写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めないこと。有効画素数は黒板の文字が確認できることを指標とし、100〜300万画素程度(1,200×900程度〜2,000×1,500程度)を目安とすること(令和5年3月)国土交通省: デジタル写真管理情報基準2026-10-07
インストール型トリガーに時間主導型があり、作った人のアカウントで動くこと。指定の時刻のトリガーは1時間の幅の中で動くことGoogle Apps Script: Installable triggers2026-10-07
1回の実行時間が6分まで、トリガーの合計の実行時間が Google Workspace のアカウントで1日6時間まで、外部への呼び出しが1日100,000回までであることGoogle Apps Script: Quotas for Google Services2026-10-07

写真の撮り方と提出のしかたは、発注者の写真管理基準と工事監理者との取り決めに合わせてください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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