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社内の研究テーマの申請書を評価の基準に照らして読み、審査会の前に論点と記載の不足のコメントを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

研究テーマの申請書を、新しさ・事業への効き方・実現の見込み・必要な資源の4つの評価の基準ごとに読みます。記載が足りているかを根拠付きで判定し、審査会の前に論点と補足の依頼のコメントにまとめます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/製造
対象部門
研究開発/経営企画
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
25h/月
想定削減
58%
年間削減
420h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 申請者が、申請書を SharePoint の申請書のライブラリに置く
  2. 研究企画室の担当者が、申請書を評価の基準の観点ごとに読み、記載の有無を確かめる
  3. 予算・人員・日程の数字が、章どうしで合っているかを確かめる
  4. 継続のテーマは、前回の審査会の議事録を開き、指摘に答えているかを確かめる
  5. 記載の不足と食い違いを、申請者への補足の依頼として書く
  6. 審査委員に渡す論点のメモを書く
  7. 審査会で審議する
導入後(After)
  1. 人申請者が、申請書をPDFにして SharePoint の申請書のライブラリに置く
  2. 自動ファイルの作成をきっかけにフローが動き、申請書と申請の種類(新規・継続)を取り出す
  3. 自動評価の基準の文書と、継続のテーマは前回の審査会の議事録の該当部分をそろえる
  4. 自動Claude API が、観点ごとに記載が足りているかを判定し、根拠のページと文を書き出す
  5. 自動同じ呼び出しで、予算・人員・日程の数字を取り出す
  6. 自動フローが、取り出した数字の合計と掛け算を検算し、食い違いに印を付ける
  7. 自動記載の不足と食い違いから、申請者への補足の依頼の下書きと、審査委員への論点のメモの下書きを作る
  8. 人研究企画室の担当者が判定と下書きを確かめ、加筆して、補足の依頼を申請者に送る
  9. 人審査委員が論点のメモを読んで審査会に臨む
各工程の詳しい説明を読む
  1. 申請者が、申請書を SharePoint の申請書のライブラリに置く
  2. 研究企画室の担当者が、申請書を評価の基準の観点ごとに読み、記載の有無を確かめる
  3. 予算・人員・日程の数字が、章どうしで合っているかを確かめる
  4. 継続のテーマは、前回の審査会の議事録を開き、指摘に答えているかを確かめる
  5. 記載の不足と食い違いを、申請者への補足の依頼として書く
  6. 審査委員に渡す論点のメモを書く
  7. 審査会で審議する

(a)読み込みが追いつかない。 1件の申請書は10〜20ページで、評価の基準の観点が全部で15あまりあります。丁寧に読めば1件1時間を超え、30件では1週間の大半が消えます。 研究企画室には、ほかに予算の管理や知財との調整の仕事もあります。

(b)コメントの質が読み手で違う。 技術に詳しい担当者は計画の中身に踏み込み、予算に詳しい担当者は数字を見ます。同じ申請書でも、誰が読んだかで指摘される点が違い、申請者からは基準が分かりにくく見えます。

(c)記載の不足が審査会の場で見つかる。 事前の読み込みが間に合わなかった申請書は、審査会で「先行技術との違いが書かれていない」と指摘され、翌月に持ち越しになります。 テーマの開始が1か月遅れます。

(d)前回の指摘が引き継がれない。 継続の審査で、前回の指摘を覚えているのは出席した審査委員だけです。議事録を開いて確かめる手間が省かれると、同じ指摘が半年ごとに繰り返されます。

  1. 【人】 申請者が、申請書をPDFにして SharePoint の申請書のライブラリに置く
  2. 【自動】 ファイルの作成をきっかけにフローが動き、申請書と申請の種類(新規・継続)を取り出す
  3. 【自動】 評価の基準の文書と、継続のテーマは前回の審査会の議事録の該当部分をそろえる
  4. 【自動】 Claude API が、観点ごとに記載が足りているかを判定し、根拠のページと文を書き出す
  5. 【自動】 同じ呼び出しで、予算・人員・日程の数字を取り出す
  6. 【自動】 フローが、取り出した数字の合計と掛け算を検算し、食い違いに印を付ける
  7. 【自動】 記載の不足と食い違いから、申請者への補足の依頼の下書きと、審査委員への論点のメモの下書きを作る
  8. 【人】 研究企画室の担当者が判定と下書きを確かめ、加筆して、補足の依頼を申請者に送る
  9. 【人】 審査委員が論点のメモを読んで審査会に臨む

8番目は省けません。 AIの判定は、記載があるかどうかの判定です。技術の中身として筋が通っているか、事業としてやる意味があるかは、担当者と審査委員が読みます。 担当者の時間を、記載を探す作業から、中身を読む作業に移すのがこの構成の狙いです。

6番目を、AIではなくフローの検算にしているのも意図してのことです。 人員×単価×期間が人件費と合うかは、計算で確かめられる事実です。 AIに「合っていますか」と聞くより、取り出した数字をフローで計算するほうが確実です。

02今回想定するシステム構成

構成図
申請書(Word → PDF)
   │
   ▼【トリガー】SharePoint の申請書のライブラリにファイルが作成されたとき
Power Automate
   ├──▶ ファイルの中身と、申請の種類・テーマ番号を取り出す
   ├──▶ 評価の基準の文書をそろえる
   ├──▶ 継続のテーマは、前回の議事録の該当部分を引く
   ▼
Claude API(PDFをそのまま渡す。構造化出力で返させる)
   │   ① 観点ごとの記載の判定と根拠(ページと文)
   │   ② 予算・人員・日程の数字の取り出し
   │   ③ 前回の指摘への回答の有無
   ▼
Power Automate ── 数字の検算と、食い違いの印
   ▼
Claude API ── 補足の依頼と論点のメモの下書き
   ▼
SharePoint のリスト(審査の事前確認の一覧)
   ├──▶【研究企画室】確かめ、加筆して申請者へ
   └──▶【審査委員】論点のメモを読んで審査会へ
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(記載の判定、数字の取り出し、下書き)OpenAI API、Gemini API
連携Power AutomateMake、n8n
保管SharePoint(申請書のライブラリと事前確認の一覧)Box、Google ドライブ

申請書には、この構成から書き込みません。 補足の依頼は申請者に送り、申請書を直すのは申請者です。 審査の結果を記録する仕組みにも書き込みません。採択の記録は審査会のあとに事務局が付けます。

起点になるのは、SharePoint のコネクタのトリガーです。 「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」はライブラリで項目が作成されたときに動き、ライブラリの列に保存されたプロパティだけを返します。 中身は、返された「ファイル識別子」を使って「ファイル コンテンツの取得」の手順を足して取ります。なお「フォルダーにファイルが作成されたとき」は非推奨とされており、サブフォルダーへの追加では動かないので使いません。

土台になるのは、Claude API のPDFの読み取りです。 標準的なPDFをそのまま渡せ、各ページを画像に変換し、ページごとの文字と画像をあわせて読む仕組みです。申請書の計画の章にあるガントチャートや、背景の章のグラフも、文字だけでなく図として読めます。

大きさの上限もはっきりしています。 1回のリクエストは最大32MB、1回に渡せるページは最大600ページ(コンテキストの枠が100万トークン未満のときは100ページ)で、パスワードや暗号化の無いPDFが対象です。文字のトークンは、1ページあたりおおむね1,500〜3,000トークンとされ、各ページは画像としても数えられます。申請書は20ページ前後なので、評価の基準と前回の議事録を足しても1回に収まります。

返させる形には、構造化出力を使います。 output_config.format で JSON Schema を渡すと、応答がそのスキーマに沿った形になります。この機能は一般提供で、オブジェクトには additionalProperties: false の指定が必須です。数値の最小・最大や文字列の長さの制約は使えないため、値の範囲はフローの側で確かめます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

申請書のライブラリにファイルが作成されたときに動かします。 「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」のトリガーを使い、ライブラリの列に持たせたテーマ番号、申請の種類(新規・継続)、申請者、審査会の開催月を受け取ります。これらの列は、申請者がファイルを置くときに入力する決まりにします。

PDFだけを対象にします。 Wordのファイルが置かれたら処理せず、「PDFにして置き直してください」と申請者へ返します。Wordのままだと変更履歴やコメントが残っていることがあり、 どれが申請の本文か分からなくなるためです。PDFにする時点で、申請者が最終の版を決めることになります。

同じテーマ番号で2つ目のファイルが置かれたら、差し替えとして扱います。 前のファイルの判定は残したまま、新しいファイルで判定し直し、一覧には新しい版の結果を出して、前の版との差を補足の依頼の確認に使います。

審査会の10日前を、置く期限にします。 期限を過ぎたファイルも処理しますが、一覧に「期限後」の印を付けます。事前の読み込みに使える日数が短いことを、担当者が一目で分かるようにするためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申請書PDF。目的、背景と先行技術、計画、体制、予算、事業への効き方の見込み申請書のライブラリ
申請の情報テーマ番号、新規・継続、申請者、開催月ライブラリの列
評価の基準4つの基準と、それぞれの観点(何が書かれていれば評価できるか)研究企画室の文書
前回の議事録継続のテーマについて、前回の審査会での指摘と条件審査会の議事録
単価の表研究員の職位ごとの人件費の単価研究企画室の表

質を決めるのは、評価の基準の観点の書き方です。 「新しさがあること」のような書き方では、何が書かれていれば足りるかが決まりません。「先行技術または社内の過去のテーマを1つ以上挙げ、それとの違いを述べていること」のように、記載の有無で判定できる文に直します。 この書き直しが、導入でいちばん時間のかかる作業です。

前回の議事録は、テーマ番号で該当部分だけを切り出して渡します。 審査会1回分の議事録をすべて渡すと、他のテーマへの指摘を、このテーマへの指摘と取り違えるおそれがあります。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
申請書の中身「ファイル コンテンツの取得」Claude API に渡すPDF
申請の情報トリガーが返すライブラリの列新規・継続の切り替え、議事録の引き当て
評価の基準SharePoint に置いた基準の文書指示に入れる観点の一覧
前回の指摘議事録のリスト(テーマ番号ごとの行)継続のテーマの確認
単価単価の表人件費の検算

前回の議事録は、審査会のあとに事務局がテーマ番号ごとの行にしておきます。 議事録の文書から毎回切り出すより、審査会の直後に「テーマ番号・指摘・条件」の行で残すほうが、引き当てが確実です。 この行づくり自体も、議事録からの下書きをAIに作らせて事務局が確かめる形にできます。

PDFは、文書のブロックとしてそのまま渡します。 公式の案内は、リクエストの中でPDFを文章より前に置くことを勧めています。指示の文は、申請書のPDFのあとに置きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … PDFであること、パスワードや暗号化が無いことを確かめます
  2. 大きさの確認 … 32MBとページの上限に収まるかを確かめます。添付の資料が大きいものは、本文と添付を分けて置いてもらいます
  3. 様式の確認 … 様式の章の見出しがそろっているかを確かめます。古い様式で書かれた申請書は、様式の更新を申請者に頼みます
  4. 申請の種類の確認 … 継続なのに前回の議事録の行が無い場合は、事務局に知らせます
  5. 評価の基準の版の固定 … どの版の基準で判定したかを記録するため、基準の文書の版を控えます
  6. 単価の表の版の固定 … 同じく、検算に使った単価の版を控えます

3番目を軽く見ないでください。 様式の古い申請書では、「事業への効き方」の章が無く、背景の章に混ざって書かれていることがあります。AIは混ざった記載も拾えますが、根拠のページがばらけ、担当者の確認が遅くなります。 様式をそろえてもらうほうが早く済みます。

5番目と6番目は、後から判定をたどるためです。 評価の基準は年に1〜2回見直されます。見直しの前後で同じ申請書の判定が変わったとき、どちらの基準で判定したかが残っていないと説明できません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、観点ごとに記載を4つの区分に分け、根拠のページと文を書き出し、数字を取り出すことです。

区分何を指すか次の扱い
sufficient観点に答える記載がある一覧で流し見る
partial記載はあるが、観点の一部にしか答えていない論点のメモへ
missing観点に答える記載が見当たらない補足の依頼へ
inconsistent記載はあるが、別の章の記載と食い違う論点のメモへ。両方の根拠を並べる

missing と inconsistent の区別が、この構成でいちばん大事です。 前者は申請者に「書いてください」と頼むもの、後者は審査会で「どちらが正しいですか」と確かめるものです。混ぜると、書いてあるのに「書いてください」と返され、申請者が事務局を信用しなくなります。

4つの基準で、AIが見る観点の例は次のとおりです。

基準観点の例
新しさ先行技術または社内の過去のテーマとの違いが述べられているか。特許の調査の範囲が書かれているか
事業への効き方想定する製品・顧客・事業部が書かれているか。効果の見込みに根拠の数字があるか
実現の見込み技術的な課題と、その解き方の仮説があるか。中間の判断の時期と基準があるか
必要な資源人員・設備・予算・期間が書かれ、互いに合っているか
させないこと理由
テーマの採点や採否の推奨採択は審査委員が決める
本当に新しいかの判断社外の先行技術を網羅して見ているわけではない
事業の見込みの数字の妥当性の判断根拠の有無までは見るが、数字の当否は事業部の判断
書かれていない内容を補って sufficient にする申請者に書いてもらうべきことが消える
申請者や研究員の能力についての所見申請書の評価の範囲を越える

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 背景の章に「既存の手法では耐熱性が不足する」と1文あれば、AIは先行技術との違いが述べられていると読みがちです。どの先行技術と比べたのかが無ければ、観点には答えていません。 指示で、観点の文を1語ずつ満たしているかで判定するよう求めます。

Step6

指示内容を固定する

(申請書のPDFを先に置く)

あなたは研究テーマの審査会の事務局として、申請書を事前に確認します。
テーマの良し悪しを評価する役目ではありません。
評価の基準の観点ごとに、それに答える記載が申請書にあるかを判定してください。

【評価の基準と観点】{criteria}
【申請の種類】{new_or_continuation}
【前回の審査会での指摘(継続のみ)】{previous_findings}

【status の選び方】
- sufficient ..... 観点の文が求めることすべてに答える記載がある
- partial ........ 記載はあるが、観点の一部にしか答えていない
- missing ........ 観点に答える記載が見当たらない
- inconsistent ... 記載はあるが、別の章の記載と食い違う
迷ったときに sufficient を選ばないでください。

【厳守事項】
- 観点の文を1語ずつ満たしているかで判定してください。
  関係のありそうな記載があるだけで sufficient にしないでください。
- evidence には、根拠にしたページ番号と、申請書の文をそのまま写してください。
  要約や言い換えをしないでください。missing のときは空にしてください。
- inconsistent のときは、食い違う2か所の evidence を両方入れてください。
- 予算・人員・期間の数字は、書かれているとおりに figures に取り出してください。
  計算や合計をしないでください。
- テーマの採否、点数、優先順位を書かないでください。
- 本当に新しいか、事業の見込みが妥当かは判断しないでください。
- 申請者や研究員の能力について書かないでください。
- 継続の申請では、前回の指摘ごとに、回答する記載があるかを判定してください。
- discussion_points には、審査会で確かめるべき問いを、問いの形で書いてください。

「迷ったときに sufficient を選ばない」を明記しないと、AIは関係のありそうな記載を好意的に読みます。この確認の目的は、審査会の前に足りないものを見つけることで、申請書を褒めることではありません。

「数字の計算をしない」も同じ理由です。 AIに人件費の合計を出させると、書かれていない端数を補って「合っている」と書くことがあります。取り出すのは書かれた数字だけにし、計算はフローで行います。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "theme_no": "",
  "application_type": "new | continuation",
  "criteria_version": "",
  "checks": [
    {
      "criterion": "novelty | business_impact | feasibility | resources",
      "viewpoint_id": "",
      "status": "sufficient | partial | missing | inconsistent",
      "evidence": [ { "page": 0, "quote": "" } ],
      "note": ""
    }
  ],
  "previous_findings_check": [
    { "finding_id": "", "status": "answered | partially_answered | not_answered",
      "evidence": [ { "page": 0, "quote": "" } ] }
  ],
  "figures": {
    "members": [ { "grade": "", "count": "", "months": "" } ],
    "personnel_cost": "",
    "equipment_cost": "",
    "total_budget": "",
    "period_months": ""
  },
  "discussion_points": [""]
}

1つ目の理由は、status を観点ごとに enum で持てることです。 一覧で missing だけを集めれば補足の依頼に、partial と inconsistent を集めれば論点のメモになります。下書きを作る2回目の呼び出しには、この区分だけを渡します。

2つ目は、evidence にページと原文を持たせることです。 担当者は一覧からページ番号で申請書を開き、AIの判定が原文のどこに基づいているかを数十秒で確かめられます。 フローは quote が申請書の文字に実在するかを照らし、実在しないものには印を付けます。

3つ目は、figures を文字列で受けることです。 構造化出力では数値の最小・最大の制約が使えないため、数字の妥当性はスキーマでは守れません。 書かれたままの文字列で受け取り、フローの側で数値に直して検算します。

検算中身
人件費職位ごとの人数 × 期間 × 単価の表の単価 の合計と、personnel_cost の差
予算の合計人件費 + 設備費 + その他 と、total_budget の差
期間体制の章の期間と、計画の章の期間の差

差が1割を超えたら、inconsistent として論点のメモに足します。 1割の幅を持たせるのは、単価の表と申請者の見積りの細かな違いまで拾うと、論点が数字の端数で埋まるためです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
申請書のライブラリ「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」と「ファイル コンテンツの取得」申請書と申請の情報
評価の基準・単価の表SharePoint から読み取り観点の一覧と検算の単価
議事録のリストSharePoint のリストの読み取り前回の指摘
Claude APIHTTP の呼び出し判定と数字の取り出し、下書き
事前確認の一覧SharePoint のリストへの書き込み観点ごとの判定、検算の結果、下書き
Teams通知一覧ができたことを担当者へ知らせる

申請者への補足の依頼は、自動では送りません。 下書きは一覧に置き、担当者が確かめて加筆してから送ります。 研究員にとって、審査の事務局からの指摘は重いものです。誤った missing が1件混ざった依頼が届くと、以後の依頼が読まれなくなります。

審査委員への論点のメモも、担当者が確かめてから渡します。 論点のメモは審査会の議論の出発点になります。AIの問いがそのまま議論の筋を決めることのないよう、担当者が並べ替えと削除を行います。

Step9

人が確認する

研究企画室の担当者は、次の順で一覧を見ます。

  1. missing の根拠を確かめる … 本当に書かれていないかを、申請書の該当しそうな章で確かめます。ここが補足の依頼になるので、最も慎重に見ます
  2. inconsistent と検算の差を確かめる … 2か所の原文を並べて読みます
  3. 継続のテーマの not_answered を確かめる … 前回の指摘を議事録の原文で読み直します
  4. 中身を読む … 記載がそろった観点について、技術と事業の筋を担当者の目で読み、所見を足します
  5. 下書きを直して送る … 補足の依頼は申請者へ、論点のメモは審査委員へ

4番目が、この構成で担当者の時間を移したい先です。 これまで①の記載探しに使っていた時間を、記載の中身を読む時間に回します。 AIの判定は、その前の下ごしらえです。

目標は、30件をならして1件50分です。 そのうち40分が判定の確認と中身の読み込み、10分が下書きの仕上げという想定です。新規のテーマは継続より長く、記載の不足が多い申請書は60分を超えます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
Wordのファイルが置かれた処理せず、PDFにして置き直すよう申請者へ返す
パスワード付きのPDF処理せず、解除して置き直すよう返す
大きさの上限を超える本文と添付を分けて置いてもらう
古い様式の申請書判定はするが、様式の更新を補足の依頼に足す
継続なのに前回の指摘の行が無い事務局に知らせ、前回の確認を手作業にする
quote が申請書に実在しないその判定を partial に下げ、担当者の確認を必須にする
数字が「約」「未定」など数値にできない検算をせず、論点のメモに「数字が確定していない」と足す
応答がスキーマに沿わない1回だけやり直す。2回目もだめなら手作業に戻す
審査会の直前に差し替えが来た新しい版で判定し直し、前の版との差を一覧に出す

上から4行目までが大半を占めます。 どれもAIの問題ではなく、申請書の置き方と様式の問題です。 申請の手引きに「PDFで、最新の様式で、本文と添付を分けて」と書くほうが、判定の精度を上げるより効きます。

6行目の扱いが大事です。 原文に無い文を根拠にした判定は、捨てるのではなく partial に下げて人に回します。判定そのものが誤りとは限らず、引用の写し方だけがずれていることがあるからです。

Step11

記録を残す

  • 申請書のPDF(版ごと)と、置かれた日時
  • 判定に使った評価の基準と単価の表の版
  • Claude API の応答のJSONと、引用の照合と検算の結果
  • 補足の依頼と論点のメモの、下書きと送った版
  • 担当者が判定を覆した記録(どの観点を、どの区分に変えたか)
  • 審査会の結果(採択・条件付き・持ち越し)と、論点のメモの問いが議論に使われたか

最後の行は、この構成を育てる材料になります。 審査会で使われなかった問いが多いなら、論点の出し方を直します。審査会の場で新たに見つかった記載の不足は、AIが見落とした観点として、評価の基準の観点の書き方を見直す材料にします。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請書と観点を画面に渡し、観点ごとの判定を出させる / 1件ごとの記載の判定
半自動化:上記+フローが申請書の作成を起点に Claude API を呼び、判定を一覧に書き出す / 判定の一覧化
本格構成:上記+前回の議事録との突き合わせ、数字の検算、補足の依頼と論点のメモの下書きまで行う / 事前確認の全体と、下書きづくり

最小構成では30件はさばけません。 1件ずつ画面に渡すので、確かめるための段階です。 半自動化で、1件120分が80分程度になります。 記載の判定は自動になりますが、数字の検算、前回の指摘の確認、補足の依頼と論点のメモを書く作業が残ります。本格構成で50分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を2〜3か月見ると、どの観点で missing が多いか、どの観点の書き方が判定をぶれさせるかが分かります。そこを直してから下書きまで自動にするほうが、申請者に届く依頼の空振りが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
30 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
50 分
現在  30件 × 120分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 30件 × 50分 ÷ 60 = 25 時間/月
月間削減時間
35h
削減率
58%
年間削減時間
420h
年間金額換算(時間単価5,000円)
210万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 研究テーマの新規の申請と継続の審査を毎月の審査会で回している、研究開発の部門を持つメーカーやIT企業。申請書の様式と評価の基準が文書で決まっているが、事前に申請書を読み込んでコメントを付ける事務局の手が足りず、審査会の場で記載の不足が見つかって差し戻しになることが多い場合。
向いていない
  1. 審査するテーマが年に数件で、審査委員が全件をじっくり読める場合。評価の基準が文書になっておらず、審査委員ごとに見るところが違う場合(先に基準を決める必要があります)。なお、テーマを採択するか、どれだけの予算と人員を付けるかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の審査会にかかった申請書から5件を選ぶ(うち2件は、審査会で記載の不足を指摘されたものを入れる)
  2. 評価の基準の観点を、記載の有無で判定できる文に直す
  3. 申請書のPDFと観点の一覧を、手元のAIサービスの画面に渡す
  4. 「観点ごとに、答える記載があるかを sufficient/partial/missing/inconsistent で判定し、根拠のページと原文を示してください。テーマの良し悪しは評価しないでください」と指示する
  5. 出てきた判定を、審査会での指摘と突き合わせる

審査会の指摘を「答え」に使うのが要点です。 審査会で見つかった不足をAIが事前に拾えていれば、持ち越しを1か月早く防げていたことになります。

出てきた内容判断
審査会で指摘された不足を拾えたフローでの自動化に進む
関係のありそうな記載で sufficient にした観点の文の書き方と指示で直る。構成は有効
観点そのものがあいまいで判定がぶれる評価の基準の観点の書き直しが先

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、審査委員ごとにコメントが違っていた理由が1つ分かったということです。 観点を書き直してから、同じ5件で試し直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
関係のありそうな記載で sufficient にする観点の文を1語ずつ満たすかで判定させ、迷ったら sufficient にしないと書く
missing と inconsistent が混ざる区分を分け、inconsistent には2か所の根拠を必須にする
書かれていない数字を補って合計する数字は取り出すだけにし、計算はフローで行う
引用が原文と違うquote を原文と照らし、実在しないものは partial に下げる
観点があいまいで判定がぶれる観点を記載の有無で判定できる文に書き直す
他のテーマへの前回の指摘を取り違える議事録をテーマ番号ごとの行で残し、該当行だけを渡す
Wordのまま置かれ、変更履歴が混ざるPDFだけを対象にする
古いトリガーでサブフォルダーの申請書を拾えない「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」を使う
ページの上限を超える本文と添付を分けて置いてもらう
AIが採否や点数を書く書かないことを指示に書き、出力の項目にも持たせない
補足の依頼が自動で申請者に届く下書きまでにする。送信は担当者
論点のメモがそのまま議論の筋になる担当者が並べ替えと削除を行ってから渡す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、記載があるかどうかの判定が甘くなることから起きます。観点の書き方と、根拠の原文を必須にする出力の形で守ります。

下の2行も、早いうちに効いてきます。 事務局からの指摘が機械的に届くと、申請者は中身を読まずに体裁だけを整えるようになります。人が確かめて加筆した依頼だけを送ることが、審査の質を保ちます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 研究テーマの目的と計画、先行技術の調査の結果、事業の見込み、予算と人員、そしてまだ特許を出願していない発明の内容が含まれることがあります。

  1. 出願前の発明を外部へ出す範囲を、知財の担当と決める … 申請書には、出願前の技術の中身が書かれていることがあります。外部のAPIへ渡してよいか、知財の担当と社内の取り決めで確かめます
  2. APIのデータの扱いを確かめる … 構造化出力の案内では、ZDR(データを保持しない取り決め)の下でも、JSON Schema そのものは最後の利用から最大24時間キャッシュされるとされています。スキーマに機密の語を入れないようにします
  3. 採否をAIに決めさせない … AIの出力に点数や採否の項目を持たせません。採択は審査委員が決め、その理由を議事録に残します
  4. 申請者への指摘を自動で送らない … 補足の依頼は担当者が確かめてから送ります
  5. 審査委員の所見とAIの判定を分けて残す … 一覧で、AIの判定と担当者の所見の列を分けます。どちらが人の書いたものか分からなくなることを避けます
  6. 申請書の見られる範囲を絞る … 事前確認の一覧には申請書の原文の引用が入ります。一覧を見られる人を、事務局と審査委員に限ります

誤りが起きた場合のリスクは、書いてあるのに不足と指摘して申請者の信頼を失うことと、不足を見落として審査会で持ち越しになることの2つです。 前者は根拠の原文の照合と担当者の確認で防ぎ、後者は観点の書き方と「迷ったら sufficient にしない」指示で防ぎます。どちらも、判定の根拠を原文に置くことで守ります。

10まず何から始めるか

1週目:評価の基準の観点を書き直す

4つの基準の観点を、記載の有無で判定できる文に直します。研究企画室で下書きを作り、審査委員に見てもらいます。全部を一度に直さず、記載の不足の指摘が多い「新しさ」と「必要な資源」から始めます。

2週目:5件で試す

先月の申請書から5件を選び、手元のAIサービスの画面で観点ごとに判定させます。審査会での指摘と突き合わせ、関係のありそうな記載で sufficient にしていないかを最優先で見ます。

3週目:議事録の残し方を決める

審査会の直後に、テーマ番号・指摘・条件の行で議事録を残す運用を決めます。 あわせて、申請の手引きに「PDFで、最新の様式で、本文と添付を分けて」を足します。

4週目:申請書のライブラリから一覧までをつなぐ

Power Automate で申請書の作成を起点に Claude API を呼び、観点ごとの判定を一覧に書き出すところまで作ります。この時点では下書きを出さず、判定と根拠だけを担当者が見ます。

2か月目: 数字の検算と前回の指摘の突き合わせを足します。担当者が判定を覆した記録を取り始めます。3か月目以降: 補足の依頼と論点のメモの下書きを足し、1件120分が何分になったかを実測します。審査会での持ち越しの件数が減り、観点の書き方を一度見直した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Claude API が標準的なPDFを受け付け、各ページを画像に変換し、ページごとの文字と画像をあわせて読むこと。リクエストの最大が32MB、1回のページの最大が600(コンテキストの枠が100万トークン未満のときは100)で、パスワードや暗号化の無いPDFが対象であること。文字のトークンが1ページあたりおおむね1,500〜3,000で、各ページは画像としても数えられること。リクエストの中でPDFを文章より前に置くよう勧めていることClaude Docs: PDF support2026-10-06
構造化出力が output_config.format で JSON Schema に沿った応答を返させる機能で、一般提供であること。オブジェクトに additionalProperties: false が必須であること。数値の最小・最大や文字列の長さの制約が使えないこと。ZDRの下でも JSON Schema が最後の利用から最大24時間キャッシュされることClaude Docs: Structured outputs2026-10-06
SharePoint のコネクタの「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」がライブラリで項目が作成されたときに動き、ライブラリの列のプロパティだけを返すこと。「ファイル コンテンツの取得」で中身を取ること。「フォルダーにファイルが作成されたとき」が非推奨で、サブフォルダーへの追加では動かないことMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-06

テーマを採択するか、どれだけの予算と人員を付けるかは、審査委員で決めてください。 本記事は公式の案内で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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