研究開発の各テーマから毎月出る進捗報告を、経営向けの研究開発ポートフォリオの概要にまとめ、前月からの変化と判断が要る事項を示す
研究開発の各テーマから毎月出る進捗報告を読み、経営向けの研究開発ポートフォリオの概要にまとめます。テーマごとに進み・課題・判断が要る事項を同じ形に要約し、前月から何が変わったかを示します。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Make/n8n/Power Automate
- 対象業界
- IT・SaaS/医療/建設/製造
- 対象部門
- 研究開発/経営企画
- 対象業務
- 書類作成/要約
- 主な課題
- 判断に時間がかかる/情報が見つからない/書類作成に時間がかかる
- AIで行う処理
- 要約
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 第2営業日の締めの後、担当者が60件の報告をリストから開く
- 1件ずつ読み、テーマ台帳の予定日と見込み日を見比べて、進みの区分を決める
- 課題と次月の予定を1〜2行に縮める
- 前月の概要を開き、区分や課題が変わったかを見る
- 「経営への相談」欄と、関門の審査の予定から、判断が要る事項を拾う
- Word の書式に一覧と総括を書く
- 研究開発本部長の確認を経て、経営企画部へ渡す
- 人テーマのリーダーが、第2営業日までに「テーマ月報」に報告を出す
- 自動第2営業日の夜に定時のフローが動き、その月の報告と、テーマ台帳の予定日を集める
- 自動マイルストーンの予定日と見込み日を比べ、進みの区分を規則で決める
- 自動関門の審査が翌月までに予定されているテーマに印を付ける
- 自動Azure OpenAI が報告を決まった項目に要約し、根拠の欄と文を付け、判断が要る事項を拾う
- 自動フローが前月の要約と項目どうしで比べ、変化の一覧を作る
- 自動Azure OpenAI が段階別の総括の下書きを、要約だけを材料に書く
- 自動一覧・総括・判断が要る事項を Word の概要に流し込む
- 人企画管理部の担当者が、区分が変わったテーマと判断が要る事項を中心に確かめて直す
- 人研究開発本部長の確認を経て、経営企画部へ渡す
各工程の詳しい説明を読む
- 第2営業日の締めの後、担当者が60件の報告をリストから開く
- 1件ずつ読み、テーマ台帳の予定日と見込み日を見比べて、進みの区分を決める
- 課題と次月の予定を1〜2行に縮める
- 前月の概要を開き、区分や課題が変わったかを見る
- 「経営への相談」欄と、関門の審査の予定から、判断が要る事項を拾う
- Word の書式に一覧と総括を書く
- 研究開発本部長の確認を経て、経営企画部へ渡す
(a)読むだけで月初が埋まる。 報告は1件あたり2,000〜4,000字です。60件を3名で分けても、1人20件を2日で読んで縮めることになります。 締めが遅れたテーマの報告が届くと、その分だけ後ろにずれます。
(b)進みの区分が担当者で違う。 見込み日が予定日から2週間ずれたテーマを「予定どおり」とする担当者もいれば、「遅れ」とする担当者もいます。経営から見ると、同じ遅れでもテーマによって色が違って見えます。
(c)判断が要る事項が埋もれる。 リーダーが「経営への相談」欄ではなく「課題」欄の最後に「追加の装置の購入をご検討いただきたい」と書くことがあります。欄を決めて読んでいると、その1文を拾い損ねます。 経営会議で取り上げられないまま、翌月の報告に同じ文が出てきます。
(d)前月との比較に手が回らない。 前月の概要と並べて読む④は、締めが遅れた月から省かれます。「先月から何が変わったのか」が、経営会議でいちばん聞かれる問いです。
- 【人】 テーマのリーダーが、第2営業日までに「テーマ月報」に報告を出す
- 【自動】 第2営業日の夜に定時のフローが動き、その月の報告と、テーマ台帳の予定日を集める
- 【自動】 マイルストーンの予定日と見込み日を比べ、進みの区分を規則で決める
- 【自動】 関門の審査が翌月までに予定されているテーマに印を付ける
- 【自動】 Azure OpenAI が報告を決まった項目に要約し、根拠の欄と文を付け、判断が要る事項を拾う
- 【自動】 フローが前月の要約と項目どうしで比べ、変化の一覧を作る
- 【自動】 Azure OpenAI が段階別の総括の下書きを、要約だけを材料に書く
- 【自動】 一覧・総括・判断が要る事項を Word の概要に流し込む
- 【人】 企画管理部の担当者が、区分が変わったテーマと判断が要る事項を中心に確かめて直す
- 【人】 研究開発本部長の確認を経て、経営企画部へ渡す
9番目で人が重点を置くのは、変化のあったテーマです。 区分も課題も前月と同じテーマは、要約を流し見るだけにします。60件すべてを報告に戻って読み直す設計にすると、30.0時間はほとんど減りません。
3番目と6番目をフローに置いているのは、答えが1つに決まる作業だからです。 日付の比較も、前月の値との比較も、AIに任せると「概ね予定どおり」のような丸めた言い方で返ってきます。 経営会議で聞かれるのは、何日ずれているかです。
02今回想定するシステム構成
テーマ月報(SharePoint のリスト) テーマ台帳(マイルストーン・予定日・関門) │ │ ▼【トリガー】繰り返し(毎月 第2営業日の夜) Power Automate ├──▶ その月の報告と台帳を集める ├──▶ 予定日と見込み日を比べ、進みの区分を決める ├──▶ 関門の審査が近いテーマに印 ▼ Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 構造化出力 │ ① テーマ別の要約(根拠の欄と文付き) │ ② 判断が要る事項(報告の記載から) ▼ Power Automate ── 前月の要約と項目どうしで比べ、変化の一覧 ▼ Azure OpenAI ── 段階別の総括の下書き(要約だけを材料に) ▼ Word の概要(Microsoft Word テンプレートを設定する) ▼ 【企画管理部が確認】→ 研究開発本部長 → 経営企画部
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 生成AI | Azure OpenAI(Microsoft Foundry) | Claude、Gemini |
| 連携 | Power Automate | Make、n8n |
| 概要の生成 | Word Online (Business) コネクタ | 文書生成の個別実装 |
| 報告と台帳の置き場 | SharePoint のリスト | Dataverse |
テーマ月報とテーマ台帳は、新しく足すものではありません。 フローはどちらも読むだけで、書き込むのは要約を残す別のリストと、概要のファイルだけです。
土台になるのは、Microsoft Foundry で提供される Azure OpenAI のモデルです。 Azure が販売するモデルは Microsoft の Azure 環境でホストされ、モデルの提供元が運営するサービスとはやり取りしないとされています。入力と出力は他の顧客にもモデルの提供元にも提供されず、許可や指示なしに生成AIの基盤モデルの学習に使われないとされています。公表前の研究の成果と、テーマの継続に関わる情報を扱うので、この点を最初に確かめます。標準のデプロイでは指定した地域の中で処理されますが、「Global」や「DataZone」の種類では処理の場所が広がるので、デプロイの種類も先に決めます。
起点は、Power Automate のスケジュール済みクラウド フローです。 「繰り返し」のトリガーで間隔と頻度を決め、開始時刻とタイム ゾーンを指定します。月の頻度にすると毎月同じ日に動くので、第2営業日のように日付が月ごとに変わる起点には、毎日動かしてフローの中で「今日が第2営業日か」を確かめる形にします。
報告と台帳は、SharePoint コネクタの「アイテムを取得」で読みます。 OData のフィルター クエリで対象の月に絞ってから読みます。概要は、Word Online (Business) コネクタの「Microsoft Word テンプレートを設定する」で作ります。このコネクタは Power Automate ではプレミアムの扱いなので、ライセンスを先に確かめます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
毎日夜に動く定時のフローにし、その日が第2営業日のときだけ先へ進めます。 「繰り返し」のトリガーで頻度を日、実行する時刻を夜に指定し、タイム ゾーンを日本に合わせます。営業日の判定は、会社の休日を並べたリストを引いて行います。月の頻度で「毎月2日」にすると、2日が休日の月にずれます。
締めに遅れた報告は、第3営業日の夜にもう一度拾います。 第2営業日の実行で報告が無かったテーマを覚えておき、翌日の実行ではそのテーマだけを要約します。それでも出ていないテーマは、概要に「報告未提出」と載せます。 未提出を空欄にすると、経営会議で「動きが無い」と読まれます。
リーダーが報告を出したたびに動かす形は取りません。 要約は個別に作れますが、前月との比較と段階別の総括は全テーマがそろってからでないと書けないためです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 進捗報告 | 実施内容、成果、課題、次月の予定、マイルストーンの見込み日、経営への相談 | テーマ月報のリスト |
| テーマ台帳 | テーマ名、段階、リーダー、マイルストーンと予定日、関門の審査の予定月 | テーマ台帳のリスト |
| 前月の要約 | テーマごとの要約の各項目と区分 | 要約を残すリスト |
| 進みの区分の規則 | 予定日と見込み日の差の日数で区分を決める表。段階ごと | SharePoint のリスト |
| 社外の名前の置き換え表 | 共同研究の相手、顧客、委託先の名前と、置き換えた表記 | SharePoint のリスト |
質を決めるのは、テーマ台帳のマイルストーンです。 「年度内に試作」のような粗い予定しか無いテーマは、見込み日と比べようがありません。区分を規則で決めるには、マイルストーンごとに日付が入っていることが前提です。 日付の無いテーマは、区分を「判定不可」にして概要に載せます。
前月の要約は、AIの出力をそのまま残したものを使います。 担当者が直した後の版を残し、翌月はそれと比べます。 直す前の版と比べると、担当者が直した箇所が「変化」として出てきます。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | どう取るか |
|---|---|---|
| その月の報告 | テーマ月報のリスト | 「アイテムを取得」。対象月でフィルター クエリを指定して絞る |
| テーマ台帳 | テーマ台帳のリスト | 「アイテムを取得」。状態が「進行中」のテーマに絞る |
| 前月の要約 | 要約を残すリスト | 「アイテムを取得」。前月で絞る |
| 規則・置き換え表 | SharePoint のリスト | 「アイテムを取得」 |
台帳は「進行中」のテーマだけを引きます。 中止や完了になったテーマを含めると、報告が無いことが「未提出」として出てきます。台帳にあって報告が無いテーマと、報告があって台帳に無いテーマの両方を、フローで突き合わせます。 後者は、台帳への登録漏れです。
AIへ渡す前に整形する
- 報告のそろいの確認 … 台帳の進行中のテーマと、報告を突き合わせます。未提出と、台帳に無い報告を分けて印を付けます
- 進みの区分の決定 … マイルストーンごとに、見込み日 − 予定日 の日数を計算し、段階ごとの規則の表で区分を決めます。テーマの区分は、マイルストーンの中でいちばん悪い区分にします
- 関門の審査の印 … 審査の予定月が当月か翌月のテーマに印を付けます
- 社外の名前の置き換え … 報告の中の共同研究の相手、顧客、委託先の名前を、置き換え表で
共同研究先Aのような表記にします - 欄に番号を振る … 報告の6つの欄を
R1〜R6とし、欄の中の文にR3-02のような番号を付けます - AIに渡す単位を作る … テーマごとに、報告の文、台帳の項目、区分とその理由(何日ずれているか)を1つにまとめます
2番目で「いちばん悪い区分」にするのは、楽観に寄らないためです。 3つのマイルストーンのうち2つが予定どおりでも、1つが大きく遅れていれば、テーマとしては遅れです。どのマイルストーンが区分を決めたかを、要約に一緒に載せます。
6番目でまとめる1テーマ分は、次のような形です。
テーマ: T-014 高耐熱樹脂の量産試作(段階: 製品化)
区分: delayed(規則の版 2026-04)
区分を決めたマイルストーン: M3 量産試作の完了 予定 2026-11-30 見込み 2026-12-24(24日遅れ)
関門の審査: 2026-12(当月・翌月ではないため印なし)
R1-01 今月は試作設備の据え付けを行った。
R2-01 小型機での耐熱試験は目標値を満たした。
R3-01 試作設備の立ち上げが、部品の納入遅れで3週間ずれた。
R3-02 量産時の金型の寿命が未確認。
R4-01 来月は設備の試運転と、金型の耐久試験に着手する。
R5-01 M3 の見込み日は 2026-12-24。
R6-01 (経営への相談の欄は空欄)
5番目は、第3章の(c)への対策です。 「課題」欄の最後に書かれた相談も、R3-05 のような番号で渡されるので、AIは欄ではなく文の中身で拾えます。 拾った根拠の番号が付くので、担当者はその文だけを確かめれば済みます。
AIに処理させる
させるのは、テーマごとに報告を決まった項目に要約することと、判断が要る事項を報告の記載から拾うことです。進みの区分は渡したものを使わせ、決めさせません。
| 項目 | 書かせること | 根拠が無いときの扱い |
|---|---|---|
| 今月の進み | 実施内容と成果を1〜2文で | 成果の記載が無ければ「成果の記載なし」 |
| 区分の理由 | 区分を決めたマイルストーンについて、遅れの原因として報告に書かれていること | 原因の記載が無ければ「原因の記載なし」 |
| 課題 | 報告に書かれた課題を、重いものから3つまで | 無ければ空 |
| 判断が要る事項 | 報告の中で、経営・本部に判断や支援を求めている文 | 無ければ空 |
| 次月の予定 | 1文で | 記載が無ければ「記載なし」 |
「判断が要る事項」は、報告がはっきり求めているものに限ります。 「ご検討いただきたい」「ご判断をお願いしたい」「追加の予算が必要」のように、リーダーが判断や支援を求めている文です。関門の審査の印が付いたテーマは、それとは別に「関門の審査が翌月」として一覧に載せます。
段階別の総括は、要約がそろってから別に書かせます。 材料は要約のJSONだけで、報告の原文は渡しません。 原文を渡すと、総括に要約に無い細部が入り、担当者が確かめる範囲が広がります。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 進みの区分を決める・変える | 規則で決めている。文章の調子で区分が動く |
| テーマの継続・中止・資源配分の提案 | 経営と研究開発の責任者が決める |
| 報告に無い課題やリスクの指摘 | リーダーが書いていない評価を概要に載せることになる |
| 遅れの日数の計算 | フローが計算済み |
| 研究の成果の評価(有望かどうか) | 判断の材料が報告に無く、評価は専門家が行う |
指示内容を固定する
あなたは研究開発本部の企画管理部で、経営会議向けに各テーマの進捗を要約する担当です。
渡された報告とテーマ台帳に書かれていることだけを根拠にしてください。
【書くこと】
テーマごとに、今月の進み、区分の理由、課題(3つまで)、判断が要る事項、
次月の予定を書いてください。
【厳守事項】
- 進みの区分は、渡された status をそのまま使ってください。変えないでください。
報告の書きぶりが楽観的・悲観的でも、区分を言い換えないでください。
- 区分の理由には、区分を決めたマイルストーンと、渡された遅れの日数をそのまま書き、
遅れの原因として報告に書かれていることを添えてください。
原因が書かれていなければ「原因の記載なし」と書いてください。
- 各文に、根拠にした報告の文の番号(R1-01 など)を付けてください。
番号を付けられない文は書かないでください。
- 判断が要る事項は、報告の中で経営・本部に判断や支援を求めている文だけを挙げてください。
どの欄に書かれていても拾ってください。
あなたの考えで「中止を検討すべき」「資源を増やすべき」などを書き足さないでください。
- 報告に無い課題やリスクを指摘しないでください。
- 研究の成果が有望かどうかを評価しないでください。
- 日数・数量を計算しないでください。渡された値をそのまま使ってください。
- 社外の名前は、置き換えた表記(共同研究先A など)のまま使ってください。
- 1テーマの要約は全体で200字以内にしてください。
【テーマ台帳の項目】{theme}
【進みの区分と、区分を決めたマイルストーン・遅れの日数】{status}
【報告(文の番号付き)】{report}
「区分を言い換えない」まで書くのは、AIが要約の文で区分をやわらげるからです。 区分は「遅れ」でも、本文に「概ね順調に推移」と書けば、経営はそちらを読みます。区分と本文が食い違う概要は、区分を規則で決めた意味をなくします。
「どの欄に書かれていても拾う」は、第3章の(c)をそのまま指示にしたものです。 欄の名前だけで探させると、「経営への相談」欄が空のテーマからは何も出てきません。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。 Azure OpenAI の構造化出力を使い、JSON Schema に沿った形で返させます。
{
"theme_id": "",
"period": "2026-09",
"status": "on_track | delayed | at_risk | not_assessable | not_submitted",
"progress": [ { "text": "", "sources": ["R1-02", "R2-01"] } ],
"status_reason": { "milestone": "", "delay_days": 0, "cause": "", "sources": ["R3-01"] },
"issues": [ { "text": "", "sources": ["R3-02"] } ],
"decisions_requested": [ { "text": "", "sources": ["R3-05"] } ],
"next_month": { "text": "", "sources": ["R4-01"] }
}
1つ目の理由は、status を enum で縛り、渡した値のまま返させられることです。 構造化出力は enum に対応しているので、区分が「概ね順調」のような6つ目の値に崩れることがありません。フローは返ってきた status が渡した値と同じかを確かめ、違えば渡した値で上書きして印を付けます。
2つ目は、項目ごとに配列で持てるので、前月との比較が項目どうしでできることです。 区分は値の比較、課題と判断が要る事項は前月の配列との突き合わせで、「新しく出た」「解消した」「続いている」を出します。 課題の文面は毎月少しずつ違うので、突き合わせは根拠の文ではなく、課題の要約どうしを Azure OpenAI に対で渡して「同じ課題か」だけを答えさせます。
3つ目は、空の配列で「無い」を表せることです。 構造化出力ではすべての項目を必須にする決まりがあるので、decisions_requested が空なら判断を求める文が無かったことがはっきりします。書き忘れと区別できます。
前月との比較の結果は、フローが次のような表にして概要の冒頭に置きます。
| テーマ | 区分(前月→今月) | 変化 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| T-014 高耐熱樹脂の量産試作 | 予定どおり → 遅れ | 試作設備の立ち上げが遅れ、量産試作が予定日から24日遅れの見込み | R3-01、R5-01 |
| T-027 リサイクル原料の配合 | 遅れ → 遅れ | 新しい課題:原料の受け入れ検査の基準が未定 | R3-03 |
| T-031 塗工プロセスの省エネ化 | 要注意 → 予定どおり | 解消した課題:乾燥炉の温度ムラ | R2-01 |
| T-042 次世代電池材料の探索 | 予定どおり → 予定どおり | 判断が要る事項:分析装置の追加購入 | R3-05 |
4行目のように、区分が変わらなくても判断が要る事項が出たテーマは「変化あり」に入れます。 区分だけで変化を拾うと、課題欄の最後に書かれた相談がまた埋もれます。
段階別の総括は、この表と要約のJSONだけを渡して、別の呼び出しで書かせます。 指示は短く、「区分の件数、区分が悪くなったテーマ、判断が要る事項を、段階ごとに3〜5文で整理してください。テーマの評価や今後の提案を書かないでください。各文にテーマの番号を付けてください」とします。総括の1文ごとにテーマの番号が付くので、担当者は一覧の該当行と照らすだけで確かめられます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| テーマ月報・テーマ台帳 | SharePoint コネクタ | 報告と台帳を読む。書き込まない |
| 要約を残すリスト | SharePoint コネクタ | テーマごとの要約と区分を「項目を作成する」で書く |
| Azure OpenAI | API呼び出し | テーマ別の要約、課題の対の突き合わせ、段階別の総括 |
| Word の概要 | 「Microsoft Word テンプレートを設定する」 | 一覧・変化・判断が要る事項・総括を流し込む |
概要の一覧は、繰り返しセクションのコンテンツ コントロールで表の行にします。 テーマの数は月によって変わるので、フローで値の配列を作って渡します。コントロールの名前はテンプレートの中で一意にする必要があります。総括の本文はプレーン テキストのコントロールにし、「複数の段落」を許可しておきます。リッチ テキストのコントロールには対応していません。
一覧の並びは、変化のあったテーマを先にします。 区分が悪くなったテーマ、判断が要る事項のあるテーマ、関門の審査が近いテーマ、それ以外の順です。経営会議で上から読めば、議論が要るところに先に着きます。
人が確認する
企画管理部の担当者が重点を置くのは、変化のあったテーマと、判断が要る事項です。
- 区分が悪くなったテーマの理由を確かめる … 区分を決めたマイルストーンと遅れの日数、原因の要約を、報告の根拠の文と照らします
- 判断が要る事項の根拠を開く … 拾われた文が、本当に判断や支援を求めているかを確かめます。拾い損ねが無いかは、「経営への相談」欄が空のテーマを流し見て確かめます
- 「判定不可」と「報告未提出」のテーマに連絡する … マイルストーンの日付が無いテーマには台帳の更新を、未提出のテーマには提出を頼みます
- 段階別の総括を直す … 要約に無いことが入っていないかを見ます
- 直した箇所を記録する … どのテーマの、どの項目を直したかを残します
区分そのものは、担当者も直しません。 区分がおかしいと思ったら、台帳の予定日か規則の表のほうを直します。 その月の概要で区分だけを手で変えると、翌月の比較が狂います。
目標は、60件をならして1件12分です。 変化の無いテーマは数分、区分が悪くなったテーマと判断が要る事項のあるテーマは報告に戻って確かめるので長くなります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 報告が未提出 | 第3営業日に再度拾い、それでも無ければ「報告未提出」で概要に載せる |
| マイルストーンに日付が無い | 区分を「判定不可」にし、台帳の更新を担当者からリーダーに頼む |
| 報告があって台帳に無いテーマ | 要約はせず、台帳への登録漏れとして担当者へ |
| 見込み日の欄が空 | 区分を「判定不可」にする。予定どおりとみなさない |
返ってきた status が渡した値と違う | 渡した値で上書きし、印を付けて担当者へ |
| 1テーマの要約が200字を超える | 次の処理には進め、印を付けて担当者が縮める |
| テンプレートへの流し込みが失敗する | 入力ファイルの最大は10MB。要約のリストから概要を手で作れるようにしておく |
| Azure OpenAI が応答しない | そのテーマを「要約未作成」として残し、翌日の実行で拾う |
上から4行目が、いちばん気をつけたい例外です。 見込み日が空のテーマを予定どおりとみなすと、書かないほうが良い区分になるという仕組みができてしまいます。リーダーが見込み日を書かなくなります。
記録を残す
- 実行の日時と、対象月、集めた報告の一覧
- テーマごとの区分の計算(マイルストーン、予定日、見込み日、差の日数、規則の版)
- Azure OpenAI に渡した指示と、返ってきたJSONの全文
- 担当者が直した後の要約(翌月の比較に使う版)
- 前月との比較の結果(区分の変化、新しい課題、解消した課題)
- 経営企画部へ渡した概要のファイルと、渡した日時
- 経営会議で取り上げられた判断が要る事項と、その結論
4つ目を「直した後」の版で残すのは、第7章の入力データで書いたとおりです。 ここを取り違えると、翌月の「変化」に担当者の手直しが混ざります。
最後の行は、翌月の要約と突き合わせるために残します。 判断が出た事項が翌月の報告でまた相談として出てきたら、結論がテーマ側に届いていないことが分かります。
04実装レベルの3段階
最小構成では60件をさばけません。 番号を振る作業が手作業だからです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が18分程度になります。 読み込みと要約は自動になりますが、前月との比較と、一覧から Word の概要への転記が残ります。本格構成で12分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を2〜3か月見ると、「判定不可」が多いテーマと、要約を直されることが多いテーマが分かります。台帳と報告の書き方を直してから本格構成に進むほうが、概要の手直しが減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 60件 × 12分 ÷ 60 = 12 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 研究開発のテーマを数十件抱え、各テーマのリーダーが毎月進捗報告を出している製造業・医療機器メーカー・IT企業など。研究開発の企画の担当が報告を1件ずつ読んで経営会議向けの一覧と総括を作っており、月初の数日がそれで埋まる場合。テーマごとにマイルストーンと予定日が決まっていて、報告の書式がそろっている場合。
- テーマが十件に満たず、経営層がテーマのリーダーから直接報告を受けられる場合。進捗報告の書式が無く、テーマごとに自由な形式で書かれている場合(先に書式を決める作業が要ります)。マイルストーンと予定日が決まっていない場合。なお、テーマの継続・中止・資源の配分の判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月の報告から10件を選ぶ(区分が変わったテーマと、判断が要る事項が「課題」欄に書かれていたテーマを含める)
- テーマ台帳から、10件のマイルストーンと予定日、見込み日を表にし、区分を手で決める
- 報告の文に、手で番号を振る
- 社内で利用が認められている生成AIの画面に、報告と区分を貼り付け、「渡した区分を変えずに、今月の進み、区分の理由、課題、判断が要る事項、次月の予定を要約してください。1文ごとに根拠の番号を付けてください」と指示する
- 出てきた要約を、先月実際に作った概要と突き合わせる
10件は必ずやってください。 フローを組む前に、「番号を振った報告から、根拠付きで要約できるのか」と「課題欄の相談を拾えるのか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 課題欄に書かれた相談を拾えている | フローの構築に進む |
| 区分と本文の調子が食い違う | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| マイルストーンの日付が無く、区分が決められないテーマが多い | 台帳の整備が先。 AIの問題ではない |
3行目が出たら、 台帳の整備を先に進め、日付のそろったテーマから試し直してください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 楽観的な報告のテーマが「予定どおり」に寄る | 区分を規則で決め、AIに決めさせない |
| 区分と本文の調子が食い違う | 「区分を言い換えない」と指示し、返ってきた区分を確かめる |
| 課題欄の中の相談を拾い損ねる | 文に番号を振り、欄ではなく中身で拾わせる |
| AIが「中止を検討すべき」と書き足す | 報告に無い提案を禁じる |
| 見込み日が空のテーマが予定どおりになる | 判定不可にする |
| 前月との比較に担当者の手直しが混ざる | 直した後の版を残し、それと比べる |
| 課題の文面が毎月違い、同じ課題が新規に見える | 要約どうしを対で渡し、同じ課題かだけを答えさせる |
| 月の頻度の繰り返しで、第2営業日にずれる | 毎日動かし、営業日をフローで判定する |
| テーマの数が変わり一覧の行が足りない | 繰り返しセクションに配列で渡す |
| 共同研究の相手の名前が概要に残る | 前処理で置き換え、置き換えた表記のまま使わせる |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、報告の書きぶりが区分に漏れ出す誤りです。区分を規則に置き、文章が区分を上書きできない形にしておかないと、概要は書く人の性格を映すものになります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 公表前の研究の成果、出願前の技術の内容、共同研究の相手や顧客の名前、テーマの継続に関わる評価です。出願前の技術と、他社との契約で秘密を守る取り決めのある情報が含まれます。
- 処理の場所とデータの扱いを先に確かめる … Azure OpenAI の入力と出力は、他の顧客にもモデルの提供元にも提供されないとされています。デプロイの種類によって処理の場所が広がるので、社内の規程と照らして決めます
- 共同研究の相手の名前を伏せる … 共同研究の契約で、相手の名前や研究の事実を伏せる取り決めがあることがあります。前処理で置き換えます
- 概要の閲覧を絞る … 概要は60テーマを一覧にしたもので、個々の報告より機密の度合いが高くなります。 経営会議の出席者と事務局に限ります
- この構成はテーマの評価と資源配分を代替しません … テーマを続けるか、止めるか、人と予算をどう配るかは、経営と研究開発の責任者が決めることです。 この構成が出すのは、報告に書かれたことの整理と、規則で決めた区分だけです
- 区分を人事評価に使わない … 区分はテーマの進みであって、リーダーの評価ではありません。評価に使うと、見込み日を書かない・予定日を緩めるといった動きを招きます
誤りが起きた場合のリスクは、遅れているテーマが順調に見えることと、判断を求める声が経営に届かないことの2つです。 前者は区分を規則で決めることで、後者は欄ではなく文の中身で拾うことで止めます。
10まず何から始めるか
1週目:テーマ台帳の日付をそろえる
進行中の60テーマについて、マイルストーンごとの予定日が入っているかを確かめます。入っていないテーマは、リーダーに入れてもらいます。あわせて、報告に見込み日の欄があるかを確かめます。
2週目:区分の規則を決める
段階ごとに、見込み日が予定日から何日ずれたら「遅れ」「要注意」かを決めます。研究開発本部と経営企画部で合意し、表にしてリストに置きます。
3週目:10件で試す
先月の報告から10件を選び、番号を振って生成AIの画面で要約させます。課題欄に書かれた相談を拾えているかを最優先で見ます。
4週目:定時のフローから要約の一覧までをつなぐ
毎日動くフローで第2営業日を判定し、報告と台帳を集め、区分を決め、Azure OpenAI の要約をリストに書くところまで作ります。この時点では Word の概要を作らず、一覧だけを見ます。
2か月目: 前月との比較と段階別の総括を足し、Word の概要に流し込みます。3か月目以降: 1件30分が何分になったかを実測し、「判定不可」のテーマの数を毎月数えます。判定不可が無くなり、経営会議で変化のあったテーマから議論が始まるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| Azure が販売するモデル(Azure OpenAI を含む)の入力と出力が、他の顧客やモデルの提供元に提供されず、許可や指示なしに基盤モデルの学習に使われないこと。Microsoft の Azure 環境でホストされ、モデルの提供元のサービスとやり取りしないこと。標準のデプロイでは指定した地域で処理され、Global と DataZone では処理の場所が広がること | Microsoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure | 2026-10-06 |
構造化出力が JSON Schema への準拠をさせる機能であること。enum に対応すること。すべての項目を必須にすること。additionalProperties を false にすること | Microsoft Learn: How to use structured outputs with Azure OpenAI | 2026-10-06 |
| 「アイテムを取得」「項目を作成する」のアクションがあること。「アイテムを取得」で OData のフィルター クエリを指定できること | Microsoft Learn: SharePoint コネクタ | 2026-10-06 |
| スケジュール済みクラウド フローが「繰り返し」のトリガーで間隔・頻度・開始時刻・タイム ゾーンを指定して動くこと。頻度が日なら実行する時刻を指定できること。月の頻度では毎月同じ日に実行されること | Microsoft Learn: Power Automate でスケジュールに従ってクラウド フローを実行する | 2026-10-06 |
| 「Microsoft Word テンプレートを設定する」のアクションがあり、Power Automate ではプレミアムであること。繰り返しセクションのコンテンツ コントロールに配列を渡して行を作れること。リッチ テキストに対応しないこと。入力ファイルの最大が10MBであること。コントロールの名前が一意である必要があること | Microsoft Learn: Word Online (Business) コネクタ | 2026-10-06 |
進みの区分の規則、報告の書式、関門の審査の運用は、各社の研究開発管理の規程によります。 本記事は Microsoft Learn で確認できた製品の仕様だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-0524)についてのご相談はこちらから。
