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毎月増える自社と競合の特許を請求項の内容で技術のまとまりに分類し、ポートフォリオの地図を更新して手薄な領域を出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

毎月公開される自社と競合の特許を、要約と請求項の内容の近さで技術のまとまりに振り分けます。まとまりごとに自社と競合の件数と増え方を数え、自社が手薄な領域と競合の出願が増えた領域を出します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Python
対象業界
IT・SaaS/医療/商社/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
分類・仕分け/集計・分析
主な課題
データ分析に時間がかかる/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
分類
主な効果
判断支援/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
83%
年間削減
600h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 月初に、特許データベースで自社と競合5社の前月分の新しい公報を検索し、書誌・要約・請求項を書き出す
  2. 担当が1件ずつ要約と請求項1を読む
  3. 社内の技術分類の一覧を見て、どの区分に入るかを決め、表計算の台帳に書き込む
  4. どの区分にも入りにくいものは「その他」に入れ、迷ったものはベテランの担当に聞く
  5. 区分ごとに、自社と競合の件数を数え、前月・前年と比べる
  6. 件数が増えた区分について、代表的な特許を数件選んでコメントを書く
  7. 動向報告のスライドにまとめ、研究開発本部と経営会議に出す
導入後(After)
  1. 自動月初に、特許データベースから書き出した前月分の公報を、決まったフォルダから読み込む
  2. 自動要約と請求項1をつなぎ、Gemini API の埋め込みモデルで、内容を表す数値の並び(ベクトル)に変える
  3. 自動既存のまとまりの中心とのコサイン類似度を計算し、最も近いまとまりに当てはめる
  4. 自動どのまとまりとも近さがしきい値に届かない特許を「未分類」とする
  5. 自動まとまりごとに、自社と競合各社の件数、直近3か月の増え方、自社の比率を集計する
  6. 自動決めた規則で「自社が手薄」「競合の出願が増加」の印を付ける
  7. 人知財の担当が、印の付いたまとまりと「未分類」の特許を見て、当てはめを確かめる
  8. 人動向報告のコメントを書く
  9. 自動四半期に1回、全件でまとまりを作り直し、Claude API がまとまりの名前と説明の案を作る
  10. 人作り直したまとまりの名前を確かめ、前のまとまりとの対応を承認する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 月初に、特許データベースで自社と競合5社の前月分の新しい公報を検索し、書誌・要約・請求項を書き出す
  2. 担当が1件ずつ要約と請求項1を読む
  3. 社内の技術分類の一覧を見て、どの区分に入るかを決め、表計算の台帳に書き込む
  4. どの区分にも入りにくいものは「その他」に入れ、迷ったものはベテランの担当に聞く
  5. 区分ごとに、自社と競合の件数を数え、前月・前年と比べる
  6. 件数が増えた区分について、代表的な特許を数件選んでコメントを書く
  7. 動向報告のスライドにまとめ、研究開発本部と経営会議に出す

(a)振り分けが担当に依存する。 3番目の判断は、担当が区分の境目をどう見ているかで決まります。同じ特許を2人に渡すと、別の区分に入ることがあります。 担当が替わった月から、区分ごとの件数の推移が不自然に動きます。

(b)「その他」がたまり続ける。 どの区分にも入りにくい特許は「その他」に入れますが、その中に新しい技術の芽が混じっていても、誰も見直しません。 「その他」が月に数十件ずつ増え、区分の一覧を見直すきっかけがありません。

(c)区分の一覧が古くなる。 約30区分は数年前に作ったもので、その後に出てきた技術の区分がありません。新しい技術の特許は、近い古い区分か「その他」に入ります。 区分の件数は数えられていても、その区分の中身が変わっていることに気づけません。

(d)月初の数日が振り分けで終わる。 600件を3名で読むと、月初の1週間近くがかかります。動向報告のコメントを考える時間が、毎月いちばん短くなります。 報告を受ける側が知りたいのはコメントのほうです。

  1. 【自動】 月初に、特許データベースから書き出した前月分の公報を、決まったフォルダから読み込む
  2. 【自動】 要約と請求項1をつなぎ、Gemini API の埋め込みモデルで、内容を表す数値の並び(ベクトル)に変える
  3. 【自動】 既存のまとまりの中心とのコサイン類似度を計算し、最も近いまとまりに当てはめる
  4. 【自動】 どのまとまりとも近さがしきい値に届かない特許を「未分類」とする
  5. 【自動】 まとまりごとに、自社と競合各社の件数、直近3か月の増え方、自社の比率を集計する
  6. 【自動】 決めた規則で「自社が手薄」「競合の出願が増加」の印を付ける
  7. 【人】 知財の担当が、印の付いたまとまりと「未分類」の特許を見て、当てはめを確かめる
  8. 【人】 動向報告のコメントを書く
  9. 【自動】 四半期に1回、全件でまとまりを作り直し、Claude API がまとまりの名前と説明の案を作る
  10. 【人】 作り直したまとまりの名前を確かめ、前のまとまりとの対応を承認する

7番目が、この設計の分かれ目です。人が見るのは全件ではありません。 既存のまとまりに近さが十分な特許は一覧で流し見て終わりにし、印の付いたまとまりと「未分類」だけを読みます。 全件を読む設計にすると、60.0時間はほとんど減りません。

9番目を四半期に1回にしているのも、意図してのことです。 毎月作り直すと件数の推移が比べられなくなります。分け方を固定する期間と、分け方を見直す時点を分けます。

02今回想定するシステム構成

構成図
特許データベースの書き出し(自社+競合5社の前月分)
   │  書誌・要約・請求項1・特許分類
   ▼【トリガー】毎月第1営業日の定時実行
Python(pandas で読み込み・重複の除去・テキストの整形)
   ▼
Gemini API(gemini-embedding-2 で埋め込み)
   │   要約+請求項1 → 768次元のベクトル
   ▼
Python ── 既存のまとまりの中心とのコサイン類似度で当てはめ
   │   しきい値未満は「未分類」
   ▼
まとまり×出願人×月の集計 ── 手薄・増加の印
   ▼
【人が印と未分類を確かめ、動向報告を書く】

(四半期に1回)
Python(scikit-learn の HDBSCAN で全件のまとまりを作り直す)
   ├──▶ 前のまとまりとの対応表(重なる特許の割合)
   └──▶ Claude API ── まとまりの名前と説明の案
   ▼
【人が名前と対応を承認する】
役割想定する製品代替候補
実行環境Python(pandas・scikit-learn の HDBSCAN)R
埋め込みGemini API(gemini-embedding-2)OpenAI API の埋め込み、Azure OpenAI(Microsoft Foundry)の埋め込み
生成AIClaude API(まとまりの名前と説明の案)OpenAI API、Gemini API
データの取得元契約している特許データベースの書き出し特許庁や各国特許庁のデータ提供
保存社内のデータベースファイルサーバー

特許データベースの台帳にも、社内の技術分類の一覧にも書き込みません。 この構成が出すのは、当てはめの結果と集計と印までです。特許データベースからの書き出しの形式は製品ごとに違うため、要約と請求項1を別の列で取り出せるかを、最初に確かめます。

埋め込みに gemini-embedding-2 を選ぶ理由は2つあります。 1つ目は、入力の上限が8,192トークンあり、要約と請求項1をつないでも収まりやすいことです。前の世代の gemini-embedding-001 は2,048トークンが上限です。2つ目は、出力の次元を128〜3,072の間で選べ、小さい次元でも自動で正規化されることです。768次元にしておけば、保存の容量を抑えつつ、コサイン類似度をそのまま計算できます。

ここに落とし穴が1つあります。 ドキュメントでは、gemini-embedding-001 と gemini-embedding-2 の埋め込みの空間は互換性がなく、直接比べられないとされ、モデルを替えるときは既存のデータを埋め込み直す必要があるとされています。ベクトルには必ずモデル名を付けて保存し、違うモデルのベクトルを同じ計算に混ぜません。

まとまりの作り直しに HDBSCAN を選ぶ理由は、まとまりの数を決めなくてよいことと、どこにも入らないものを分けられることです。 ドキュメントでは、HDBSCAN は密度の違うまとまりを見つけられ、どのまとまりにも入らないサンプルには labels_ で -1 が付くとされています。技術の領域は大きさも密度もばらばらで、数を先に決める手法では、小さな新しい領域が大きな領域に吸い込まれます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎月第1営業日の定時実行を起点にします。 特許データベースの前月分の書き出しを、担当が決まったフォルダに置いたことを確かめてから動かします。書き出しの件数がいつもより大きく少なければ、処理を止めて担当に知らせます。 検索の条件を誤ったまま当てはめると、競合の出願が減ったように見えます。

作り直しは四半期に1回、別の処理として回します。 1月・4月・7月・10月の当てはめの後に、それまでの全件でまとまりを作り直します。作り直しの結果は、人が承認するまで当てはめに使いません。 承認までのあいだは、前のまとまりで当てはめを続けます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
新しい公報公報番号、出願人、出願日、公開日・登録日、発明の名称、要約、請求項1、特許分類特許データベースの書き出し
過去の公報上記と、埋め込みのベクトル、当てはめたまとまり社内のデータベース
まとまりの一覧まとまりの番号、名前、説明、中心のベクトル、作った時点社内のデータベース
出願人の名寄せ表競合5社とその子会社・旧社名の対応知財部で用意する一覧
印の規則「手薄」「増加」の判定の条件知財部で決めた表

質を決めるのは、いちばん下の2つです。 出願人の名寄せ表が無ければ、子会社名義の出願が競合の件数から抜け、競合の動きを小さく見誤ります。 印の規則が無ければ、件数の表は出ても、どこを見ればよいかが決まりません。

請求項は1だけを使います。 請求項全体を入れると、従属項の細かな限定が内容の近さを左右し、同じ技術の特許が、実施の形の違いで別のまとまりに散ります。 技術の中身を表すのは要約と請求項1で十分です。

Step3

データの取得方法を決める

特許データベースの書き出しは、出願人を指定した保存済みの検索式で行います。検索式は知財部で管理し、名寄せ表と同じ出願人の範囲にそろえます。

取るものどこから何に使うか
前月分の公報特許データベースの書き出し(CSV)当てはめと集計
埋め込みのベクトルGemini API の embed_content内容の近さの計算
まとまりの中心社内のデータベース(作り直しの時点で保存)当てはめの基準
出願人の名寄せ知財部の一覧自社・競合各社の件数の集計

埋め込みは、同じ公報を二度作りません。 公開公報と登録公報で同じ出願が二度出てくることがあり、出願番号で重複を除いてから埋め込みます。 登録で請求項が補正されていれば、登録公報の請求項1で埋め込み直し、公開時のベクトルは履歴として残します。

ベクトルの次元は、最初に決めたら変えません。 output_dimensionality を768で始めたら、全件を768で作ります。次元を変えるときは、モデルを替えるときと同じく、全件を埋め込み直します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 重複の除去 … 出願番号で公開と登録をまとめ、新しい方の請求項1を使います
  2. 出願人の名寄せ … 名寄せ表で、子会社・旧社名を競合各社に寄せます。表に無い出願人は「その他」として担当に知らせます
  3. テキストの整形 … 要約と請求項1から、図面の符号(「(10)」など)と改行を除きます
  4. 埋め込み用の文 … 「task: clustering | query: 」の後に、発明の名称・要約・請求項1をつなぎます
  5. 長さの確認 … 入力の上限(8,192トークン)を超えるものは、請求項1の後半を落とします
  6. 外国語の公報 … 日本語の公報と英語の公報を同じ空間で比べます。翻訳はしません
  7. 特許分類の扱い … IPC・FI は埋め込みの文に入れず、集計の切り口として別の列に残します

7番目で特許分類を文に入れないのは、記号が内容の近さを引っ張るからです。 「H01M 4/62」のような記号を文に混ぜると、同じ記号を持つ特許どうしが近く出やすくなり、特許分類で分けたのと変わらない結果になります。 分類は、まとまりと並べて「このまとまりはどの分類にまたがっているか」を見るのに使います。

4番目の書き方は、ドキュメントの指定に合わせます。 gemini-embedding-2 では task_type の指定は使えず、テキストの作業は「task: clustering | query: {content}」のように、作業の指示を入力の文に直接書くとされています。指定をそろえないと、同じ特許でも作った時期によってベクトルの性質が変わります。

6番目で翻訳をしないのは、ドキュメントで gemini-embedding-2 が100を超える言語でのまとまり作りに対応するとされているからです。 競合の米国出願を翻訳してから埋め込むと、翻訳の言い回しで内容の近さが動きます。

Step5

AIに処理させる

この構成の「AI」は3つの部品に分かれます。 内容を数値にするのが埋め込み、まとまりを作るのが HDBSCAN、まとまりに名前を付けるのが生成AIです。生成AIは、どの特許をどのまとまりに入れるかを決めません。

部品させることさせないこと
Gemini API(埋め込み)要約と請求項1を768次元のベクトルにする特許の重要さの評価
HDBSCAN四半期に1回、全件でまとまりを作り、どこにも入らないものを分ける毎月の当てはめ(新しいデータの予測の機能が無い)
当てはめ(Python)新しい特許を、中心とのコサイン類似度で既存のまとまりに入れるしきい値未満の特許を無理に入れる
Claude APIまとまりの名前と2文の説明の案権利範囲・侵害・有効性の判断

毎月の当てはめを HDBSCAN でしないのは、HDBSCAN に新しいデータを既存のまとまりに当てはめる機能が無いからです。 ドキュメントでは、使える方法は fit と fit_predict で、全件で作り直す形になります。そこで、作り直しのときに store_centers="centroid" で各まとまりの中心を保存し、毎月はその中心との近さで当てはめます。

当てはめのしきい値は、作り直しのときに決めます。 各まとまりについて、中に入った特許と中心とのコサイン類似度の分布を見て、下から5%の値をそのまとまりのしきい値にします。 まとまりごとに広がりが違うため、全体で1つのしきい値にすると、広いまとまりに何でも入り、狭いまとまりに何も入らなくなります。

min_cluster_size は、知財部が「1つの領域として見たい最小の件数」で決めます。 既定は5です。小さくすると領域が細かく割れ、大きくすると新しい領域が「どこにも入らない」に落ちます。 最初は20前後で始め、作り直しのたびに担当と見直します。

印の規則は、AIではなく表で持ちます。

印条件(例)
自社が手薄競合の合計が直近12か月で30件以上、かつ自社の比率が10%未満
競合の出願が増加ある競合の直近3か月の件数が、前年同期の2倍以上かつ5件以上
新しい領域の候補「未分類」のうち、互いに近い特許が直近3か月で5件以上
生成AIにさせないこと理由
権利範囲が重なるかを書く内容の近さは権利の重なりを意味しない
「自社はこの領域に出願すべき」と書く出願の判断は研究開発と知財が決める
代表の特許に無い技術の言葉を名前に使う名前がまとまりの中身から離れる
競合の戦略を推測して書く件数は出願の結果で、意図は出てこない
Step6

指示内容を固定する

まとまりの名前の案は、Claude API に次の指示で作らせます。 渡すのは、中心に近い特許10件と、中心から遠い特許3件の発明の名称・要約・請求項1です。

あなたは製造業の知財部で、特許のまとまりに分かりやすい名前を付ける立場です。
渡された特許の記載だけを使って、このまとまりの名前と説明の案を作ってください。

【渡す情報】
- 中心に近い特許10件:発明の名称、要約、請求項1
- 中心から遠い特許3件:発明の名称、要約、請求項1
- 前の四半期で対応するまとまりの名前と説明(ある場合)

【書き方】
- name は20字以内で、まとまりに共通する技術の要素を表す名前にしてください。
- description は2文で、1文目に共通する技術の要素、
  2文目に中心から遠い特許との違い(まとまりの広がり)を書いてください。
- common_terms には、10件のうち半数以上の請求項1に出てくる技術の言葉を、
  最大5つ、記載のとおりに並べてください。
- 前の四半期の名前がある場合、内容が同じなら同じ名前を使ってください。
  変える場合は rename_reason に理由を書いてください。

【厳守事項】
- 渡された特許に書かれていない技術の言葉を、名前や説明に使わないでください。
- 権利範囲が広い・狭い、侵害のおそれ、有効性について書かないでください。
- 出願人の名前、出願の意図、今後の出願の見込みを書かないでください。
- 「自社は〜すべき」のような提案を書かないでください。
- 10件に共通する要素が見つからない場合は、名前を付けず、
  name を空にして mixed を true にしてください。

【中心に近い特許】{core_patents}
【中心から遠い特許】{edge_patents}
【前の四半期のまとまり】{previous_cluster}

「中心から遠い特許」を渡すのは、名前を狭くしすぎないためです。 中心の10件だけを渡すと、名前はその10件の共通点に絞られ、まとまりの端にある特許が名前から外れます。 端の3件があると、どこまでを含む名前にすべきかが分かります。

「共通する要素が見つからなければ名前を付けない」を明記するのは、HDBSCAN が性質の違う特許を1つにまとめることがあるからです。 何も言わなければ生成AIは、ばらばらの10件にもそれらしい名前を付けます。mixed が立ったまとまりは、min_cluster_size の見直しの材料になります。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで、まとまりごとに受け取ります。 件数と印は Python が埋め、name から rename_reason までを Claude API の構造化出力(output_config.format に type: "json_schema")で受け取ります。

{
  "cluster_id": "C2026Q4-07",
  "previous_cluster_id": "C2026Q3-05",
  "overlap_with_previous": 0.82,
  "embedding_model": "gemini-embedding-2",
  "dimensions": 768,
  "name": "",
  "description": "",
  "common_terms": [],
  "mixed": false,
  "rename_reason": "",
  "counts_12m": { "own": 4, "competitor_A": 21, "competitor_B": 9, "others": 6 },
  "growth_3m": { "competitor_A": 2.3 },
  "flags": ["own_thin", "competitor_A_growth"],
  "approved": { "by": "", "at": "" }
}

1つ目の理由は、名前と件数を別の層に置けることです。 件数と印は集計の規則で決まり、生成AIは名前だけを書きます。名前の案が気に入らなくても、件数と印は変わりません。

2つ目は、前の四半期との対応を残せることです。 overlap_with_previous は、前のまとまりに入っていた特許のうち、今回このまとまりに入った割合です。8割を超えれば同じまとまりとして名前と推移を引き継ぎ、それ未満は人が対応を決めます。 これが無いと、作り直しのたびに推移のグラフが途切れます。

3つ目は、embedding_model と dimensions です。 モデルや次元が違うベクトルを混ぜていないかを、集計の前に機械的に確かめられます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
特許データベース保存済みの検索式での書き出し(読み取りのみ)前月分の公報
Gemini APIAPI呼び出し要約と請求項1の埋め込み
社内のデータベース読み書きベクトル、当てはめ、まとまりの一覧
Claude APIAPI呼び出し(四半期に1回)まとまりの名前と説明の案
動向報告の表表の書き出しまとまりごとの件数と印

社内の技術分類の一覧は、自動では書き換えません。 新しいまとまりを社内の区分として採用するかは、知財部と研究開発本部で決めます。まとまりは区分の見直しの材料で、区分そのものではありません。

Step9

人が確認する

人が読むのは、印の付いたまとまりと「未分類」の特許です。

  1. 「未分類」を先に見る … 既存のどのまとまりとも遠い特許です。新しい技術の芽か、検索式の誤りで混じった無関係の特許かを見分けます
  2. 印の付いたまとまりの新しい特許を読む … 競合の出願が増えたまとまりの新しい特許を数件読み、増えた中身を確かめます
  3. 当てはめの誤りを直す … 明らかに違うまとまりに入った特許は、担当が付け替えます。付け替えた記録を残します
  4. 作り直しの名前と対応を承認する … 四半期に1回、名前の案と前のまとまりとの対応を確かめます

3番目の付け替えの記録を省かないでください。 同じまとまりで付け替えが続くなら、そのまとまりの中心かしきい値がずれています。 次の作り直しで直す材料になります。

「新しい領域の候補」の印は、研究開発の担当と一緒に見ます。 「未分類」のうち互いに近い特許が数件そろったものは、知財の担当だけでは技術の意味が判断しにくいことがあります。研究開発の担当が「これは既存の領域の言い換え」と言えば次の作り直しで既存に寄せ、「新しい領域」と言えば社内の区分の見直しの候補にします。

目標は、600件をならして1件1分です。 近さが十分な特許は一覧で流し見て、「未分類」と印の付いたまとまりに時間を使います。

Step10

例外に対処する

起きること対応
書き出しの件数がいつもより大きく少ない処理を止めて担当に知らせる。検索式の誤りを疑う
名寄せ表に無い出願人「その他」として集計し、担当に知らせる
要約が空の公報請求項1だけで埋め込み、印を付けて担当に回す
入力の上限を超える請求項1の後半を落として埋め込む。落としたことを記録する
Gemini API が応答しないその公報は「未処理」として翌日に回す。未分類と混ぜない
埋め込みのモデルや次元が混ざる集計を止める。違うモデルのベクトルを比べない
「未分類」が月の2割を超える作り直しを前倒しで検討する
名前の案が mixed名前を付けずに番号で扱い、min_cluster_size を見直す

5行目で「未処理」と「未分類」を分けるのは、意味が逆だからです。 「未分類」は既存のどこにも近くない特許、「未処理」はまだ近さを測っていない特許です。混ぜると、APIの一時的な停止が新しい技術の芽に見えます。

Step11

記録を残す

  • 特許データベースの書き出しと、そのときの検索式
  • 公報ごとのベクトル、モデル名と次元、埋め込んだ日
  • 当てはめの結果(まとまり、中心とのコサイン類似度、しきい値)
  • 人が付け替えた記録 … どの特許を、どのまとまりから、どこへ移したか
  • 四半期ごとのまとまりの一覧(中心、名前、説明、前のまとまりとの対応、承認者)
  • 月ごとのまとまり×出願人の件数と印、そのとき使った印の規則の版

5つ目で前のまとまりとの対応を残すのは、推移を後から読み直すためです。 経営会議で「A社はいつからこの領域に出願を増やしたか」と聞かれたとき、作り直しをまたいで件数をつなげる根拠になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:過去の300件で埋め込みとまとまりを作り、社内の区分と比べる / 分け方が使えるかの確認
半自動化:上記+毎月の書き出しを埋め込み、まとまりの中心との近さで当てはめて一覧にする / 新しい特許の当てはめ
本格構成:上記+出願人の名寄せと件数の集計、印の規則、「未分類」の抽出、四半期の作り直しと名前の案、前のまとまりとの対応 / 地図の更新と、見るべき領域の洗い出し

半自動化で、1件6分が3分程度になります。 当てはめは自動になりますが、件数の集計と、どのまとまりを見るべきかの判断が手作業で残ります。本格構成で1分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、名寄せと印の規則によって、読む特許が印の付いたものと「未分類」に絞られるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の当てはめを3か月見ると、付け替えが多いまとまりと、「未分類」に落ちやすい領域が分かります。そこを直してから作り直しの仕組みを入れるほうが、まとまりが早く安定します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
6 分
1件あたり導入後時間
1 分
現在  600件 × 6分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 600件 × 1分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
50h
削減率
83%
年間削減時間
600h
年間金額換算(時間単価4,000円)
240万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 自社と競合数社の特許を継続して見ており、毎月数百件の新しい公開公報や登録公報を読んで社内の技術分類に振り分けている製造業などの知財部門。社内の技術分類が担当者の頭の中にあり、担当が替わると振り分けがずれる場合。経営や研究開発から「自社が薄い領域」「競合が出願を増やしている領域」を定期的に聞かれ、そのたびに集計し直している場合。
向いていない
  1. 見ている特許が月に数十件で、担当者が全件を読んで把握できる場合。特許分類(IPC・FI)での集計で用が足りている場合。なお、個々の特許の権利範囲の解釈、侵害や有効性の判断、出願するかどうかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去1年分の自社と競合の公報から、社内の技術分類の付いた300件を選ぶ(「その他」に入ったものを必ず含める)
  2. 要約と請求項1をつないで、手元の環境で埋め込みを作る
  3. 300件を HDBSCAN でまとまりに分ける
  4. まとまりごとに、社内の技術分類がどう散らばっているかを表にする
  5. ベテランの担当に、分かれ方が自分の感覚と合っているかを見てもらう

300件は必ずやってください。 毎月の仕組みを組む前に、「要約と請求項1の近さで、社内の区分に近い分け方が出るのか」を確かめます。

出てきた内容判断
1つのまとまりに1つの区分が多く集まる毎月の当てはめの仕組みに進む
区分は混ざるが、混ざり方に担当が納得する社内の区分の見直しの材料になる。構成は有効
ほとんどが「どこにも入らない」min_cluster_size が大きすぎるか、件数が少なすぎる

2行目が出ることは珍しくありません。 数年前に作った区分が、いまの出願の中身と合っていないということで、第3章の(c)がそのまま見えたことになります。 「その他」に入っていた特許がどのまとまりに入ったかを、先に見てください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
毎月まとまりの形が変わり、推移が比べられない毎月作り直さない。 四半期で固定し、毎月は中心との近さで当てはめる
HDBSCAN で新しい特許を分類しようとする新しいデータに当てはめる機能が無い。 中心を保存して自分で当てはめる
違うモデルのベクトルが混ざるgemini-embedding-001 と 2 は互換性がない。 モデル名と次元を保存し、集計前に確かめる
同じ特許が実施の形の違いで散らばる請求項全体ではなく、要約と請求項1だけを使う
作り直しのたびに名前が変わる前のまとまりとの重なりで対応を付け、同じ内容なら同じ名前を使わせる
ばらばらの特許にそれらしい名前が付く共通の要素が無ければ名前を付けない mixed を用意する
子会社名義の出願が競合の件数から抜ける出願人の名寄せ表を作る
「未分類」と「未処理」が混ざるAPIの停止で測れなかった特許は「未処理」として別に扱う
広いまとまりに何でも入るしきい値をまとまりごとに決める
翻訳してから埋め込む翻訳の言い回しで近さが動く。原文のまま埋め込む
内容が近い競合特許を「権利が重なる」と読む近さは権利範囲と別。侵害の判断は弁理士と行う

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「まとまりは作れた」ので最初は気づかず、3か月目に推移の表が意味を持たないことで初めて分かります。 固定と当てはめを最初から分けて設計してください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公開された特許公報、そして自社がどの競合をどの範囲で見ているかという検索式と、社内の技術分類と、自社が手薄だと見ている領域の一覧です。

  1. 外部へ渡すのは公開された公報の記載だけにする … 埋め込みと名前の案に渡すのは、公開・登録された公報の要約と請求項1です。出願前の自社の発明の内容は、この構成に入れません
  2. 地図と印を社外に出さない … 公報は公開情報でも、どの領域を手薄と見ているか、どの競合を追っているかは、自社の研究開発の方向そのものです。 動向報告の配布範囲を決めておきます
  3. 内容の近さを権利の判断に使わない … 近いまとまりにある競合の特許が、自社の製品に関係するかどうかは、請求項を読んだうえで弁理士と判断します
  4. 出願の判断を印で決めない … 「自社が手薄」の印は、出願すべき領域を意味しません。事業として入らない領域で手薄なのは当然です
  5. 名前の案を承認してから使う … 生成AIが付けた名前がそのまま経営会議の資料に出ると、名前の付け方で領域の印象が変わります。 承認の記録を残します

誤りが起きた場合のリスクは、競合の出願の増加を見落とすことと、増えていない領域を増えたと報告することの2つです。 前者は名寄せの漏れと「未分類」の放置で起き、後者はまとまりの作り直しをまたいだ件数のつなぎ間違いで起きます。どちらも、名寄せ表と前のまとまりとの対応で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:出願人の名寄せ表を作る

競合5社の子会社、旧社名、共同出願の相手を洗い出し、名寄せ表にします。 特許データベースの保存済みの検索式も、この表と同じ範囲にそろえます。

2週目:300件で試す

過去1年分から社内の区分の付いた300件を選び、埋め込みとまとまりを作ります。社内の区分とどう対応するかを、ベテランの担当と一緒に見ます。 「その他」に入っていた特許の行き先を先に見てください。

3週目:印の規則を決める

「自社が手薄」「競合の出願が増加」の条件を、知財部と研究開発本部で決めます。 ここが決まらないうちに仕組みを組むと、件数の表は出るのに、誰もどこを見ればよいか分からない状態になります。

4週目:最初のまとまりを固定する

過去分の全件でまとまりを作り、中心とまとまりごとのしきい値を保存します。名前は生成AIの案を担当が確かめて付けます。 この時点で、当てはめの基準ができます。

2か月目: 毎月の書き出しを当てはめ、件数と印を出します。動向報告は、これまでの区分の表と並べて作ります。3か月目以降: 付け替えの記録を見ながら次の四半期の作り直しを行い、1件6分が何分になったかを実測します。作り直しをまたいで件数の推移がつながり、前のまとまりとの対応を担当が承認できた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
最新の埋め込みモデルが gemini-embedding-2 で、gemini-embedding-001 もテキスト向けに利用できること。入力の上限が gemini-embedding-2 で8,192トークン、gemini-embedding-001 で2,048トークンであること。出力の次元を128〜3,072で選べ、既定が3,072であること。gemini-embedding-2 では小さい次元が自動で正規化されること。gemini-embedding-2 では task_type が使えず、「task: clustering \query: {content}」のように作業の指示を入力に書くこと。100を超える言語でのまとまり作りに対応すること。gemini-embedding-001 と gemini-embedding-2 の埋め込みの空間に互換性がなく、モデルを替えるときは埋め込み直しが要ること。Batch API で埋め込みが通常の料金の50%になることGemini API: Embeddings2026-10-06
HDBSCAN が密度の違うまとまりを見つけられること。どのまとまりにも入らないサンプルに labels_ で -1 が付くこと。min_cluster_size の既定が5であること。store_centers で "centroid" などの中心を計算できること。新しいデータを当てはめる予測の方法が無く、fit と fit_predict で使うことscikit-learn: HDBSCAN2026-10-06
構造化出力で output_config.format に type: "json_schema" を指定して応答をJSONスキーマに沿わせられることClaude Docs: Structured outputs2026-10-06

個々の特許の権利範囲の解釈と、出願するかどうかの判断は、知財部と弁理士で行ってください。 本記事は製品の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。特許データベースからの書き出しの形式は製品ごとに違い、本記事では確かめていません。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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