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社員から届いた発明届出書を読み取り、技術分野と出願・秘匿の方針区分で一次仕分けして、職務発明審査会の資料にする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

社員から届いた発明届出書を読み取り、技術分野、出願か秘匿かの方針区分、先行調査の要否で一次仕分けします。結果を根拠の文とともに一覧にし、毎月の職務発明審査会の資料の下書きにします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Google Apps Script/Make/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/医療/建設/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
分類・仕分け/書類作成
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
分類
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
50h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
60%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 知財部の受付担当が、届いた届出書を共有ドライブの「受付」フォルダに保存し、受付番号を振る
  2. 仕分け担当が届出書を開き、発明の名称、発明者、所属、従来技術、課題、解決手段、実施例、発表予定の欄を読む
  3. 社内の技術分類の一覧を見ながら、技術分野を1つ選ぶ
  4. 製品を分解すれば分かる技術か、工場の中だけで使う製造方法か、他社が実施していたら見つけられるかを考え、出願候補か秘匿候補かを決める
  5. 知財管理システムで、同じ発明者・同じ技術分野の過去の出願を探し、改良発明かどうかを確かめる
  6. 先行調査が要るか、要るなら社内で J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)を引くか特許事務所に頼むかを決める
  7. 欄が空いている届出書は、発明者に書き足しを頼むメールを書く
  8. 1件1行で審査会の一覧に書き、所見を書く。ベテランが全件を見直す
導入後(After)
  1. 人受付担当が届出書を「受付」フォルダに保存する。紙はスキャンし、WordはPDFに書き出す
  2. 自動1時間ごとの見回りで新しいファイルを見つけ、形式・ページ数・サイズを確かめる
  3. 自動OCRが届出書の文字、キーと値のペア、表、読み取りの信頼度を返す
  4. 自動様式の欄ごとに本文を切り出し、欄ごとに `filled` / `empty` / `unreadable` を付ける
  5. 自動知財管理システムの出願台帳から、同じ発明者・近い名称の過去の出願を引く
  6. 自動生成AIが、技術分野の候補と、方針を決める観点ごとの事実を根拠の文とともに書き出す
  7. 自動観点の組み合わせから、方針区分と先行調査の要否を規則で決める
  8. 自動発表予定の日付が審査会より前なら、至急の印を付けて担当者に通知する
  9. 自動`empty` の欄がある届出書について、発明者への書き足し依頼の下書きを作る
  10. 人仕分け担当が一覧を見て、区分と根拠を確かめ、所見を書く
  11. 人審査会が1件ずつ方針を決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 知財部の受付担当が、届いた届出書を共有ドライブの「受付」フォルダに保存し、受付番号を振る
  2. 仕分け担当が届出書を開き、発明の名称、発明者、所属、従来技術、課題、解決手段、実施例、発表予定の欄を読む
  3. 社内の技術分類の一覧を見ながら、技術分野を1つ選ぶ
  4. 製品を分解すれば分かる技術か、工場の中だけで使う製造方法か、他社が実施していたら見つけられるかを考え、出願候補か秘匿候補かを決める
  5. 知財管理システムで、同じ発明者・同じ技術分野の過去の出願を探し、改良発明かどうかを確かめる
  6. 先行調査が要るか、要るなら社内で J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)を引くか特許事務所に頼むかを決める
  7. 欄が空いている届出書は、発明者に書き足しを頼むメールを書く
  8. 1件1行で審査会の一覧に書き、所見を書く。ベテランが全件を見直す

(a)1件ずつ全文を読まないと、区分が付けられない。 発表予定が「その他」の欄に書かれていたり、実施例に製造条件が埋もれていたりします。方針を決める手がかりが、どの欄にあるか決まっていません。

(b)区分の付け方が担当者で違う。 4番の「製品から分かる技術か」の判断は、ベテランは製品の構造を知っているので速く、若手は迷います。迷った若手は「判断保留」を多く付け、審査会の議論が長引きます。 ベテランの見直しがなければ回らない状態です。

(c)発表予定の見落としが、いちばん重い。 学会や展示会で発表する予定が書かれているのに、それを見落として翌月の審査会に回すと、発表のほうが先に来てしまうことがあります。

(d)書き足しの依頼が遅れる。 空欄に気づくのが一覧を作る段階なので、回答が間に合わずに翌月送りになります。

  1. 【人】 受付担当が届出書を「受付」フォルダに保存する。紙はスキャンし、WordはPDFに書き出す
  2. 【自動】 1時間ごとの見回りで新しいファイルを見つけ、形式・ページ数・サイズを確かめる
  3. 【自動】 OCRが届出書の文字、キーと値のペア、表、読み取りの信頼度を返す
  4. 【自動】 様式の欄ごとに本文を切り出し、欄ごとに filled / empty / unreadable を付ける
  5. 【自動】 知財管理システムの出願台帳から、同じ発明者・近い名称の過去の出願を引く
  6. 【自動】 生成AIが、技術分野の候補と、方針を決める観点ごとの事実を根拠の文とともに書き出す
  7. 【自動】 観点の組み合わせから、方針区分と先行調査の要否を規則で決める
  8. 【自動】 発表予定の日付が審査会より前なら、至急の印を付けて担当者に通知する
  9. 【自動】 empty の欄がある届出書について、発明者への書き足し依頼の下書きを作る
  10. 【人】 仕分け担当が一覧を見て、区分と根拠を確かめ、所見を書く
  11. 【人】 審査会が1件ずつ方針を決める

10番目が、この設計の分かれ目です。人は全件を見ますが、読み方が変わります。 届出書を頭から読むのではなく、AIが書き出した根拠の文を読み、その文が届出書のどこにあるかを確かめます。全文を読み込むのは、区分に違和感があったものだけです。

7番目を規則にしているのも、意図してのことです。 観点ごとの事実はAIに書き出させますが、出願候補か秘匿候補かは、知財部が決めた規則の側に置きます。

02今回想定するシステム構成

構成図
発明届出書(押印済みの紙のスキャン、WordをPDFにしたもの、手書きの補足図)
   │  共有ドライブの「受付」フォルダへ保存
   ▼【トリガー】1時間ごとの見回り
Google Apps Script ── 形式・ページ数・サイズの確認
   ▼
Google Document AI(Form Parser)
   │   文字、キーと値のペア、表、信頼度、画像の品質
   ▼
Google Apps Script ── 欄ごとの切り出し、記載の有無の判定
   │               出願台帳から過去の出願を引く
   ▼
Claude API ── 技術分野の候補と、方針の観点ごとの事実を根拠の文つきで書き出す
   │   ① 製品から読み取れるか  ② 他社の実施を見つけられるか
   │   ③ 社外への発表予定      ④ 過去の出願との関係
   ▼
規則 ── 方針区分(出願候補/秘匿候補/判断保留)と先行調査の要否
   ▼
審査会の一覧(下書き)+ 至急の通知 + 書き足し依頼の下書き
   ▼
【人】仕分け担当が確かめて所見を書く → 【人】審査会が決める
役割想定する製品代替候補
OCRGoogle Document AI(Form Parser)Azure AI Document Intelligence(レイアウト モデル)
生成AIClaude API(技術分野の候補と方針の観点の書き出し、書き足し依頼の下書き)OpenAI API、Gemini API
連携Google Apps Script(フォルダの見回り、欄の切り出し、一覧への書き出し)Power Automate、Make
保管共有ドライブ(受付フォルダと処理済みフォルダ)SharePoint、Box

知財管理システムと技術分類の一覧は、新しく足すものではありません。 台帳からは読むだけです。技術分類の一覧に「分類ごとの説明文」の列を足すのが最初の準備作業です。

土台になるのは、Google Document AI の Form Parser です。 文書から、キーと値のペア(「発明の名称」という項目名と、そこに書かれた内容の組)、11種類の一般的な項目(日付、人名、組織名など)、表、チェックボックスを取り出す処理で、日本語も対応言語に含まれます。 事前学習済みのプロセッサで、追加の学習はできません。

ただし、注意が2つあります。 ラテン文字以外の言語ではキーと値のペアの品質が低くなることがあること、そして値が空欄のペアを確実には取り出せないことです。空欄を見つけたいこの構成では、2つ目が効きます。 空欄の判定をキーと値のペアだけに頼らず、ページ上の位置から欄を切り出して確かめる理由がここにあります(第7章の前処理)。

分類に Custom Classifier を使わないのは、公式の対応言語が英語だけだからです。 仕分けは、読んだ文字を生成AIに渡して行います。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

「受付」フォルダを1時間ごとに見回り、新しいファイルがあれば処理を始めます。 1日1回にすると発表予定の見落としに気づくのが翌日になるため、1時間おきを上限にします。

審査会の締め切り日の翌朝に、全件を見直す処理を別に動かします。 未処理や unreadable のまま残ったものがないかを確かめ、一覧を確定前の形で書き出します。

処理が終わったファイルは「処理済み」フォルダへ移します。移すのは、一覧への書き出しまで成功したときだけです。 受付フォルダに残っている数が、そのまま未処理の数になります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
発明届出書PDFまたは画像。受付番号、受け付けた日時、届いた経路受付フォルダ
読み取り結果全文、キーと値のペア、表、要素ごとの信頼度、画像の品質Google Document AI
様式の定義様式の版ごとの欄の名前と、ページ上のおおよその位置知財部で用意する定義ファイル
技術分類の一覧分類コード、名前、分類ごとの説明文、代表的な製品社内の技術分類の一覧
過去の出願同じ発明者・近い名称の出願番号、名称、技術分野、方針知財管理システムの出願台帳
審査会の日程次回の開催日と、届出の締め切り日知財部の予定表

質を決めるのは、様式の定義と技術分類の説明文です。 様式の定義がなければ空欄の判定ができません。様式は改訂されるので、版ごとに定義を持ちます。

過去の出願は、改良発明かどうかを見るために持ちます。 同じ発明者の過去の出願の改良なら、先行調査の多くは済んでいます。

Step3

データの取得方法を決める

届出書の読み取りは、Google Apps Script から Form Parser を呼び出して行います。同期処理(その場で結果を受け取る呼び方)は15ページ・40MBまでです。実験データの添付で15ページを超えるものは、バッチ処理(後から結果を受け取る呼び方。100ページまで)に回します。

取るものどこから何に使うか
全文text欄の中身と、生成AIに渡す本文
要素の位置と信頼度pages[].layout(boundingPoly、confidence)欄の切り出しと、unreadable の判定
キーと値のペアpages[].formFields(fieldName、fieldValue)発明の名称、発明者、所属などの値の候補
表pages[].tables発明者が複数いるときの氏名と持分の欄
画像の品質imageQualityScoresスキャンのやり直しが要るかの判断

text には欄の区切りが残りません。 スペース・タブ・改行以外のレイアウトの構造を含まないので、どの文がどの欄のものかは、要素の位置(boundingPoly)と様式の定義を重ねて決めます。 要素と text の対応は textAnchor で引けます。

出願台帳は、毎晩書き出している一覧を読みます。照合は発明者の社員番号が先、名称が後です。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … Document AI が受け付けるのはPDF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP、GIF などです。WordのファイルはPDFに書き出してから入れます(Word を直接読めるのは Layout Parser だけのため)
  2. 解像度の確認 … ドキュメントでは、スキャンは200dpi以上が推奨されています。複合機の設定がこれを下回っていないかを最初に確かめます
  3. ページ数とサイズの確認 … 同期処理は15ページ・40MBまで。超えるものはバッチ処理に回します
  4. 様式の版の判定 … 1ページ目の版番号を読み、欄の定義を選びます。版番号が読めなければ needs_human にします
  5. 欄の切り出し … 様式の定義と要素の位置を重ね、欄ごとに文字を集めます
  6. 記載の有無の判定 … 欄に文字がなければ empty、文字はあるが信頼度が低い、または画像の品質に問題があれば unreadable、それ以外は filled
  7. 添付の分離 … 様式のページと添付資料のページを分け、添付は「補足資料あり」の印だけを付けます

6番目を、この構成でいちばん丁寧に作ります。 Form Parser は値が空のキーと値のペアを確実には取り出せないので、formFields に出てこないことを「空欄」とみなしてはいけません。 欄の位置に文字の要素が1つもないことを確かめて、はじめて empty にします。

Step5

AIに処理させる

させるのは、技術分野の候補を選ぶことと、方針を決める観点ごとに「届出書にどう書かれているか」を根拠の文とともに書き出すことだけです。

見るもの書き出す内容判断できないときの扱い
技術分野一覧から候補を最大2つ。選んだ理由の文当てはまる分類がなければ none
製品から読み取れるか発明の特徴が完成品の外観・構造・動作に現れるか製造工程の中だけの話か分からなければ unknown
他社の実施を見つけられるか市販品の分析や公開情報で、他社の実施が確かめられそうか書かれていなければ unknown
社外への発表予定学会・展示会・論文・顧客への提示の予定と日付予定の有無が書かれていなければ not_stated
過去の出願との関係渡した過去の出願との関係(改良/無関係/判断できない)過去の出願が渡されていなければ no_data
記載の不足課題と解決手段の対応が書かれているか対応が読み取れなければ unclear

2行目と3行目が、方針区分の中心です。 製品を見れば分かる発明は秘匿しても知られてしまうので出願に向き、工場の中だけの製造条件は出願すると公開されるので秘匿に向く、というのが一般的な考え方です。どちらに寄せるかは会社の知財戦略で決まるので、AIには事実だけを書き出させます。権利化と秘匿化の判断は、INPIT(工業所有権情報・研修館)の営業秘密支援窓口でも相談を受け付けている論点です。

させないこと理由
出願するか秘匿するかの結論審査会が決めるもの。AIは観点ごとの事実まで
特許になるか(新しさ・進歩性)の評価先行調査の前に判断できない。調査の要否だけを出す
空欄の補完課題や実施例を推測で埋めると、書き足し依頼が出なくなる
発表予定の日付の推測「秋の学会」を特定の日付に直さない。書かれたとおりに写す
発明者の貢献度の評価処遇に関わる。この構成の対象外

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 実施例の欄が空の届出書を渡すと、解決手段の欄から実施例らしい文を組み立てて「記載あり」と書き出し、その瞬間、発明者に書き足しを頼む機会が消えます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは知財部で、社員から届いた発明届出書を審査会の前に一次仕分けする立場です。
渡された届出書の欄の内容だけを見て書き出してください。推測で埋めないでください。

【やること】
1. 技術分野の候補を、渡した技術分類の一覧から最大2つ選び、理由を1文で書く
2. 次の観点ごとに、届出書の記載を根拠の文とともに書き出す
   - product_visible : 発明の特徴が、完成品の外観・構造・動作に現れるか
   - detectable      : 他社が実施した場合に、市販品や公開情報から確かめられそうか
   - disclosure_plan : 学会・展示会・論文・顧客への提示などの予定と日付
   - prior_filing    : 渡した過去の出願との関係
   - problem_solution: 課題と解決手段が対応して書かれているか

【値の選び方】
- product_visible / detectable : yes / no / unknown
- disclosure_plan : planned / none / not_stated
- prior_filing    : improvement / unrelated / unclear / no_data
- problem_solution: clear / unclear
迷ったときは unknown または unclear を選んでください。

【厳守事項】
- 出願すべきか、秘匿すべきかは書かないでください。
- 特許になりそうか、新しいかどうかの評価も書かないでください。
- evidence には、判断の根拠にした文を届出書からそのまま写してください。
  要約や言い換えをしないでください。根拠の文がなければ空にしてください。
- 欄の状態が empty のものは「記載なし」として扱い、他の欄から補って
  埋めないでください。実施例が空なら、解決手段から実施例を作らないでください。
- 欄の状態が unreadable のものは判断に使わず、その観点を unknown にしてください。
- 発表予定の日付は書かれたとおりに写してください。「秋」「来年度」を
  特定の日付に直さないでください。
- 技術分類の一覧にない分類名を作らないでください。当てはまらなければ none です。
- 発明者の評価や、貢献の大小に触れないでください。

【届出書の欄と状態】{sections}
【技術分類の一覧(コード・名前・説明文)】{tech_fields}
【過去の出願(同じ発明者・近い名称)】{prior_filings}
【次回の審査会の開催日】{meeting_date}

「evidence は届出書からそのまま写す」を明記しないと、要約した文が入ります。 要約された根拠は読みやすい一方で、届出書のどこに書いてあったかを探せなくなります。仕分け担当が確かめるのは、根拠の文が届出書に本当にあるかどうかなので、原文のまま写させます。

「出願すべきかを書かない」を最初に置くのは、 観点の後に「以上から出願が適当」とまとめたがるからです。結論の一文があると、読む人は根拠より先にそれを見ます。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 Claude API の構造化出力(あらかじめ決めたJSONの形に沿った応答だけを返させる機能)を使い、enum で値の選択肢を固定します。

{
  "receipt_no": "",
  "form_version": "",
  "sections": [
    { "name": "background", "state": "filled | empty | unreadable" }
  ],
  "tech_field": [
    { "code": "", "reason": "" }
  ],
  "aspects": [
    { "aspect": "product_visible", "value": "yes | no | unknown", "evidence": "" }
  ],
  "disclosure": { "value": "planned | none | not_stated", "date_text": "", "evidence": "" },
  "policy_track": "file_candidate | secret_candidate | on_hold",
  "prior_art": "internal_search | outside_firm | covered_by_prior | on_hold",
  "urgent": false,
  "resend_draft": ""
}

sections には様式の欄の数だけ要素を並べ、aspects には観点を4つ並べます。policy_track、prior_art、urgent の3つは、生成AIではなく Google Apps Script の規則が埋めます。

1つ目の理由は、観点と方針区分を別の層に置けることです。 aspects はAIが埋め、policy_track は規則が決めます。

観点の組み合わせpolicy_track
product_visible が yesfile_candidate
product_visible が no、かつ detectable が nosecret_candidate
unknown が1つでもある、または problem_solution が unclearon_hold

会社の方針が変わっても、直すのはこの表だけです。 たとえば「見つけにくい技術でも、事業の中核なら出願する」と決めたら、技術分類ごとの例外を規則に足します。

2つ目は、至急の印を機械的に付けられることです。 disclosure が planned で、date_text から日付が読み取れ、それが次回の審査会より前なら urgent を true にします。日付が読み取れない「秋の学会」のようなものも urgent にします。 空振りは担当者が1分で外せますが、見落としは取り返しがつきません。

3つ目は、prior_art を規則で決められることです。 improvement なら covered_by_prior、出願の少ない分類なら outside_firm、それ以外は internal_search にして担当者が J-PlatPat で引きます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
受付フォルダGoogle Apps Script の時間主導の見回り新しいファイルを見つけ、処理済みへ移す
Google Document AIAPI呼び出し届出書の文字・位置・信頼度を返す
知財管理システム毎晩の書き出しファイルの読み取り同じ発明者・近い名称の過去の出願を引く
Claude APIAPI呼び出し技術分野の候補、観点の書き出し、書き足し依頼の下書き
審査会の一覧表計算への書き出し1件1行。区分、根拠、至急の印
担当者への通知メールurgent のものと、unreadable が残るもの

知財管理システムへは書き込みません。 出願案件として台帳に載せるのは、審査会で「出願する」と決まってからで、それは人が登録します。 仕分けの段階で台帳に書くと、審査会で不採用になった届出書が案件として残ります。

書き足し依頼も、下書きまでにします。 送るのは仕分け担当です。発明者の上長をCCに入れるかどうかは、届出書の中身と部署の事情で変わります。

Step9

人が確認する

仕分け担当は全件を見ます。 ただし、見るのは届出書の全文ではなく、一覧の1行と根拠の文です。

  1. urgent を最初に見る … 発表予定と日付の根拠の文を読み、審査会の前に発表が来るなら、臨時の審査か発表内容の調整を知財部長に相談します
  2. on_hold を見る … unknown になった観点を、届出書の該当箇所で確かめます。多くは発明者への質問1つで解決します
  3. file_candidate と secret_candidate の根拠を確かめる … 根拠の文が届出書にあるか、その文から本当にそう読めるかを見ます
  4. 所見を書く … 区分を変えた場合は、どの観点をどちらに変えたかを残します
  5. 書き足し依頼を直して送る … empty の欄が本当に空欄かを画像で確かめてから送ります

3番目では、根拠の文と値の食い違いを見ます。 食い違っていたら、値を直すのではなく、その届出書を全文で読みます。

ベテランの見直しは、若手が区分を変えたものと on_hold に絞ります。 若手がどの観点で迷ったのかが1行で読めます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
様式の版番号が読めない欄の定義を選べないので needs_human。受付担当が版を指定して再投入
旧様式・様式外の書式で届いた切り出さず、全欄を unreadable として人へ
15ページを超える同期処理の上限。バッチ処理(100ページまで)に回す
画像の品質が低いimageQualityScores で欠陥が出たページは、スキャンし直してから再投入
手書きの補足図に文字がある図の注記は判断に使わず、「補足資料あり」の印だけ付ける
1つのファイルに複数の届出書ページで分けて再投入。分けられないものは needs_human
同じ届出書が二度届く発明者の社員番号・名称・受付日で照合し、二重に一覧へ載せない
技術分野が none分類の一覧に当てはまらない新しい分野の可能性。審査会で分類の追加を議題にする
OCRまたは生成AIが応答しない受付フォルダに残す。処理済みへ移すのは成功時だけ

上から4行目までが大半を占めます。 どれもAIではなく、様式の管理とスキャンの設定の問題です。

Step11

記録を残す

  • 元の届出書ファイルと、受付番号・受け付けた日時・届いた経路
  • OCRが返したJSONの全文と、欄ごとの状態(filled / empty / unreadable)
  • 生成AIへ渡した入力と、返ってきたJSONの全文
  • 規則が決めた policy_track、prior_art、urgent と、そのとき使った規則の版
  • 仕分け担当が区分や観点を変えた記録 … どの観点を、どちらに、なぜ変えたか
  • 審査会の決定(出願/秘匿/保留/不採用)と、一次仕分けとの一致・不一致

4つ目で「規則の版」を残すのは、方針が後から変わるためです。 秘匿に寄せる技術分類を増やせば過去の区分の意味が変わり、当時の規則が残っていないと、どこまで見直せばよいかが決まりません。

最後の行は、規則を見直す材料になります。 ずれが特定の技術分野に偏っていたら、その分野の規則か説明文を直す時期です。

04実装レベルの3段階

最小構成:届出書を手でAIの画面に渡し、観点を書き出させて人が区分を付ける / 1件ごとの観点の書き出し
半自動化:上記+受付フォルダを起点にOCRと生成AIを呼び、規則で区分を付けて一覧に書き出す / 読み取り、欄の判定、区分、至急の通知
本格構成:上記+出願台帳との照合を自動化し、審査会の一覧と書き足し依頼の下書きまで出す / 一次仕分けの全体と、審査会の資料の下書き

最小構成は、確かめるための段階です。 半自動化で、1件50分が20分程度になります。この段階が本記事の想定です。 通読と欄の確認、区分の下書き、一覧への記入が自動になり、残るのは根拠の確かめと所見です。本格構成では出願台帳との照合と書き足し依頼の下書きも自動になりますが、台帳の書き出しの形式を知財管理システムに合わせる作業が要るため、半自動化の運用が固まってから進めます。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2〜3回の審査会で使うと、区分がずれやすい技術分野が分かります。そこを直してから本格構成に進みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
50 分
1件あたり導入後時間
20 分
現在  60件 × 50分 ÷ 60 = 50 時間/月
導入後 60件 × 20分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
60%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価4,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 研究開発・設計の部門から月に数十件の発明届出書が届き、知財部が毎月の職務発明審査会(社内の発明審査の会議)にかける前に一次仕分けをしている製造業・IT企業・医療機器メーカーなど。届出書が紙に上長の押印をしたスキャン、Wordの電子ファイル、手書きの補足図の混在になっている場合。仕分けの基準がベテランの知財担当の頭の中にあり、担当によって「出願候補」「秘匿候補」の付け方が違う場合。社内の技術分類の一覧を用意できる場合。
向いていない
  1. 発明届出が年に数件で、知財担当が技術者と面談して決めている場合。届出書を社外のサービスに送ることを社内規程が一律に禁じており、契約で外部AIの利用条件を整えられない場合。出願するか秘匿するかの結論そのものをAIに決めさせたい場合(結論は審査会が決めるもので、この構成は判断の材料をそろえるところまでです)。

07最小構成で試す方法

  1. 先月と先々月の審査会にかけた届出書から20件を選ぶ(出願・秘匿・保留が混ざるように選ぶ)
  2. 20件について、当時の一次仕分けの区分と、審査会の決定を一覧にしておく
  3. 手元のAIサービスの画面に、技術分類の一覧と届出書を1件ずつ渡す(社内で外部AIの利用が認められた環境で行う)
  4. 「この届出書について、技術分野の候補、製品から読み取れるか、他社の実施を見つけられるか、発表予定を、根拠の文をそのまま写して書き出してください。出願すべきかは書かないでください。空欄の欄は記載なしとし、他の欄から補わないでください」と指示する
  5. 書き出された観点から自分で区分を付け、当時の区分と審査会の決定に突き合わせる

20件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「観点を書き出させれば、区分がぶれずに付くのか」を確かめます。

出てきた内容判断
観点から付けた区分が、審査会の決定と大きく食い違わないOCRと連携の組み立てに進む
根拠の文が要約や言い換えになっている指示の書き方で直る。構成は有効
技術分野の候補が毎回ぶれる分類の説明文が先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 若手が迷っていたのと同じ理由です。説明文を書き足し、同じ20件でもう一度試してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
formFields に出ない欄を空欄とみなす値が空のペアは確実には取れない。 欄の位置に文字がないことで判定する
空欄と読めない欄が混ざる信頼度と画像の品質で分ける。混ぜると、書いた発明者に差し戻す
空欄の実施例を他の欄から作る補完を禁じ、empty の欄は判断に使わせない
根拠の文が要約になる原文のまま写すよう指示し、根拠の文が届出書にあるかを機械で照合する
「出願が適当」と結論を書く指示の最初で禁じ、出力の形に結論の欄を作らない
技術分野がぶれる分類ごとの説明文と代表的な製品を一覧に足す
WordのファイルがOCRに入らないWord を直接読めるのは Layout Parser だけ。PDFに書き出してから入れる
Custom Classifier で分類しようとする公式の対応言語は英語のみ。 日本語の届出書は Form Parser と生成AIで仕分ける
旧様式の届出書が届く部署の共有フォルダの旧様式を消し、様式の版番号を必須にする
発表予定の日付を推測で決める書かれたとおりに写させ、日付が読めないものは至急として扱う
規則を知財部だけで決める審査会の合意を取る。 区分が審査会で使われなくなる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「欄が空に見える」という同じ見た目から出発しています。空欄の判定を、OCRの項目の有無ではなく、欄の位置と信頼度という数値に置けるかで、運用に乗るかが決まります。

下の2行も早く効いてきます。 規則の合意がないと、一次仕分けと審査会の議論が別々に進みます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 出願前の発明の内容、実験データ、製造条件、発明者の氏名と所属、そして社外への発表予定です。社内で最も秘匿性の高い情報の一つです。

  1. 外部のサービスへ送る前に、契約とデータの扱いを確かめる … OCRと生成AIの両方について、入力が学習に使われないか、どこに保存されるかを契約と設定で確かめ、社内規程で外部AIへの入力を認める範囲を決めてから始めます
  2. 秘匿候補の発明ほど、渡す範囲を絞る … 製造条件の数値そのものは、観点の書き出しに要りません。添付の実験データのページは生成AIに渡さない設計にできます
  3. 出願するか秘匿するかを自動で決めない … この構成が出すのは観点と区分の候補までです。決めるのは審査会で、区分を審査会の決定として扱わないでください
  4. 発明者の評価に使わない … on_hold の多さなどを処遇の材料にしないでください。届出をためらわせます
  5. 一覧の閲覧範囲を絞る … 審査会の一覧には、未出願の発明の要点と方針が並びます。閲覧できるのは知財部と審査会の出席者に限ります
  6. ログの保存期間を決める … 入力と出力には発明の内容がそのまま残ります。保存期間と消し方を決めます

誤りが起きた場合のリスクは、発表予定の見落としと、出願すべき発明を秘匿候補に回すことです。 どちらも「分からないものを分からないと書かせる」設計で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:技術分類の一覧に説明文を足す

技術分類の一覧に、分類ごとの説明文と代表的な製品の列を足します。境界で迷いやすい分類の違いを、ベテランの担当に書いてもらいます。

2週目:20件で試す

先月と先々月の届出書から20件を選び、社内で認められた生成AIの画面で観点を書き出させます。観点から付けた区分を審査会の決定と突き合わせ、空欄の欄を他の欄から補っていないかを最優先で見ます。

3週目:方針区分の規則を決める

観点の組み合わせと区分の対応表を、知財部長と審査会の出席者で合意します。 ここが決まらないうちにワークフローを組むと、区分は出るのに審査会で使われない状態になります。あわせて、様式の版ごとの欄の位置を定義します。

4週目:受付フォルダから一覧までをつなぐ

Google Apps Script で受付フォルダを見回り、Form Parser を呼び、欄の状態と観点を一覧に書き出すところまで作ります。この時点では policy_track を出さず、観点の一覧だけを審査会の資料に添えます。

2か月目: 規則による区分と至急の通知を足し、審査会の決定との一致を毎月数えます。3か月目以降: 出願台帳との照合と書き足し依頼の下書きを足し、1件50分が何分になったかを実測します。審査会の決定と一次仕分けのずれが特定の技術分野に偏らなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-29/最終更新:2026-09-30
確認した内容情報源確認日
Form Parser がキーと値のペア、11種類の一般的な項目、表、チェックボックスを取り出すこと。事前学習済みで追加の学習ができないこと。ラテン文字以外の言語ではキーと値のペアの品質が低くなることがあること。値が空欄のキーと値のペアを確実には取り出せないことGoogle Cloud: Form Parser2026-09-29
Form Parser と Enterprise Document OCR の対応言語に日本語が含まれること。Custom Classifier の対応言語が英語のみであることGoogle Cloud: Document AI の対応言語2026-09-29
Form Parser の同期処理が15ページまで、バッチ処理が100ページまでであること。同期処理のファイルサイズが40MBまでであることGoogle Cloud: Document AI の上限2026-09-29
対応するファイル形式(PDF、TIFF、JPEG、PNG、BMP、WebP、GIF など)。HTML と Office 形式は Layout Parser に限られること。スキャンは200dpi以上が推奨されることGoogle Cloud: 対応するファイル形式2026-09-29
応答の text にレイアウトの構造が含まれないこと。textAnchor、layout の confidence と boundingPoly、formFields の fieldName と fieldValue、tables、imageQualityScores の構造Google Cloud: 処理結果の扱い2026-09-29
構造化出力でJSONスキーマに沿った応答を返させられること。enum が使えることClaude: Structured outputs2026-09-29
INPIT の営業秘密支援窓口が、権利化/秘匿化の判断やそれらを組み合わせた知財戦略の相談を受け付けていることINPIT: 営業秘密支援窓口2026-09-29
J-PlatPat で特許・実用新案の文献と分類を検索できることJ-PlatPat: ヘルプ2026-09-29

出願するか秘匿するかの判断と、職務発明の取り扱いは、自社の規程と知財部・審査会、必要に応じて弁理士と決めてください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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