Media > AI活用ユースケース > カスタマーサポート > 海外の顧客から届く問い合わせを訳して担当に回し、日本語で書いた回答を用語をそろえて原語で返す

海外の顧客から届く問い合わせを訳して担当に回し、日本語で書いた回答を用語をそろえて原語で返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

海外の顧客から届いた問い合わせを日本語に訳し、原文と並べて担当者に回します。担当者が日本語で書いた回答は、用語集どおりに原語へ訳し、逆翻訳を添えて送信前に意味のずれを確かめられるようにします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Zapier
対象業界
EC/製造
対象部門
カスタマーサポート
対象業務
内容確認・チェック/問い合わせ対応
主な課題
人手が足りない/問い合わせが多い/属人化している
AIで行う処理
翻訳
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
21h/月
想定削減
65%
年間削減
468h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が共有アドレスの受信箱を開き、外国語の問い合わせを見つける
  2. 外国語を扱える担当者に回す。その担当者が本文を翻訳サイトに貼り、日本語で読む
  3. 注文番号から受注管理画面を開き、配送状況や購入品目を確かめる
  4. 日本語で回答の中身を考える。必要なら他の担当者や製造部門に聞く
  5. 回答を原語に組み立てる。翻訳サイトに貼っては直し、製品名と型番を製品ページから写す
  6. 返品条件などの決まった言い回しを、過去の送信メールから探して合わせる
  7. 送信し、スプレッドシートに対応状況を書き込む
導入後(After)
  1. 自動共有アドレスに届いたメールにラベルが付き、それを起点にワークフローが動く
  2. 自動本文をプレーンテキストにし、引用された過去のやり取りを切り落とす
  3. 自動AIが言語を判定し、返金・法的な主張・安全に関わるかどうかを分類する
  4. 自動日本語のメールは処理を止める。返金・法的・安全に当たるものは、訳さずに責任者へ回す
  5. 自動それ以外は用語集を渡して日本語に訳し、原文と段落ごとに並べて対応表へ書き込む
  6. 人担当者(3名の誰でもよい)が日本語で読み、回答を日本語で対応表に書く
  7. 自動用語集を渡して原語へ訳し、用語集にない製品名を原文のまま残して印を付ける
  8. 自動原語の回答を、日本語の原稿を見せない別の呼び出しで日本語に戻す
  9. 人担当者が日本語の原稿と逆翻訳を見比べ、承認する
  10. 自動承認されたものだけ、Gmailに返信の下書きを作る
  11. 人担当者が下書きを開いて送信する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が共有アドレスの受信箱を開き、外国語の問い合わせを見つける
  2. 外国語を扱える担当者に回す。その担当者が本文を翻訳サイトに貼り、日本語で読む
  3. 注文番号から受注管理画面を開き、配送状況や購入品目を確かめる
  4. 日本語で回答の中身を考える。必要なら他の担当者や製造部門に聞く
  5. 回答を原語に組み立てる。翻訳サイトに貼っては直し、製品名と型番を製品ページから写す
  6. 返品条件などの決まった言い回しを、過去の送信メールから探して合わせる
  7. 送信し、スプレッドシートに対応状況を書き込む

(a)外国語を扱える人に集まる。 2番目で1名に回るため、残り2名は外国語の問い合わせに手を出せません。回答の中身を決める力はあるのに、読めないので待っています。

(b)訳のたびに言い回しが変わる。 5番目と6番目は担当者の記憶と過去メールの検索に頼っています。同じ返品条件が、ある月は "within 30 days of delivery"、別の月は "30 days after purchase" になります。 起算日が違うので、意味が変わります。

(c)送る訳が正しいか確かめる手段がない。 翻訳サイトで作った原語の文を、担当者本人も完全には読めません。英語以外では特にそうで、意味がずれていても送ってから分かります。

(d)製品名が訳される。 翻訳サイトは製品名も普通の語として訳します。固有の製品名が一般名詞に置き換わり、顧客が製品ページで探せない名前になります。

  1. 【自動】 共有アドレスに届いたメールにラベルが付き、それを起点にワークフローが動く
  2. 【自動】 本文をプレーンテキストにし、引用された過去のやり取りを切り落とす
  3. 【自動】 AIが言語を判定し、返金・法的な主張・安全に関わるかどうかを分類する
  4. 【自動】 日本語のメールは処理を止める。返金・法的・安全に当たるものは、訳さずに責任者へ回す
  5. 【自動】 それ以外は用語集を渡して日本語に訳し、原文と段落ごとに並べて対応表へ書き込む
  6. 【人】 担当者(3名の誰でもよい)が日本語で読み、回答を日本語で対応表に書く
  7. 【自動】 用語集を渡して原語へ訳し、用語集にない製品名を原文のまま残して印を付ける
  8. 【自動】 原語の回答を、日本語の原稿を見せない別の呼び出しで日本語に戻す
  9. 【人】 担当者が日本語の原稿と逆翻訳を見比べ、承認する
  10. 【自動】 承認されたものだけ、Gmailに返信の下書きを作る
  11. 【人】 担当者が下書きを開いて送信する

6番目で、外国語を読めない担当者も問い合わせを引き受けられます。 1名に集まっていた仕事が3名に分かれます。

9番目がこの設計の要です。 担当者は外国語を読まずに、日本語どうしで意味のずれを探します。逆翻訳が原稿と食い違うところだけを見ればよいので、確認は2分で済む想定です。

送信は自動にしません。 10番目は下書きを作るところまでで、11番目の送信は人が行います。

02今回想定するシステム構成

構成図
海外の顧客
   │ 外国語のメール
   ▼
Gmail(共有アドレス)── フィルタでラベルを付ける
   ▼【トリガー】ラベルの付いた新着メール
Zapier(受信のZap)
   ├─ Formatter ── HTMLをテキストに/引用部分を分割して切り落とす
   ├─ OpenAI API ── 言語の判定と、返金・法的・安全の分類(JSON)
   ▼
Paths
   ├─ 日本語 ────────▶ 終了
   ├─ 返金・法的・安全 ─▶ 責任者へ通知(訳さない)
   └─ 通常 ──▶ OpenAI API ── 用語集つきで日本語訳(JSON)
                 ▼
            対応表(スプレッドシート)に原文と訳を並べて書き込む
   ▼【人】担当者が日本語で回答を書き、状態を「翻訳依頼」にする
Zapier(返信のZap)
   ├─ Filter ── 状態が「翻訳依頼」のものだけ通す
   ├─ OpenAI API ── 用語集つきで原語へ訳す(JSON)
   ├─ OpenAI API ── 原語の回答だけを渡して日本語に戻す(逆翻訳)
   ▼
Human in the Loop ── 原稿と逆翻訳を並べて承認を依頼
   ▼【人】承認
Gmail ── 返信の下書きを作る
   ▼【人】送信
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapierMake、n8n
生成AIOpenAI APIClaude API、Gemini API

Gmailと対応表のスプレッドシートは、すでに使っているものです。 新しく足すのは Zapier と OpenAI API の2つだけです。ヘルプデスクの製品を使っている場合も、受信と下書きの作成を担う部分が入れ替わるだけで、流れは同じです。

Zapier は、Gmail のトリガーとアクションを持っています。 トリガーには新着メール、検索条件に合う新着メール、ラベルの付いた新着メールなどがあり、いずれも定期的に確認する方式です。ラベルの付いた新着メールは、会話の返信にも反応するとされています。アクションには、送信、下書きの作成、既存のメールへの返信の下書きの作成、ラベルの付与があります。本構成は返信の下書きの作成を使い、送信のアクションは使いません。

分岐には Paths を使います。 条件に応じて別々のアクションを動かす機能で、1つの分岐のまとまりに最大10本の枝、1つのZapに入れ子で3つまで置けます。どの条件にも当たらないときに動くフォールバックの枝を1本持てます。 注意点は、Paths を置くと、それがZapの最後のステップになることです。分岐の後の処理は、それぞれの枝の中に置きます。

OpenAI とは API キーで接続します。 Zapier のヘルプでは、前払いの請求を有効にした OpenAI のアカウントが必要とされ、ChatGPT の有料契約は要りません。用意されたアクションには、会話、テキストの分析、構造化データの抽出などがあります。API で送ったデータは、利用者が共有を選ばない限りモデルの学習に使われないとされています。

AIの出力の形を固定したいときは、Webhooks by Zapier から OpenAI API を直接呼びます。 POST と JSON のペイロードを指定でき、アクションで送れるペイロードは最大5MBです。第7章の「出力形式」で述べる Structured Outputs を指定するために、この経路を使います。

Zapier の Paths、Filter、Formatter、Webhooks は Free プランでは使えず、Professional 以上が必要です。Human in the Loop の承認を窓口の3名に送るには、Team 以上が前提です(第7章の「人間の確認」)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

受信のZap:共有アドレスに届いたメールに、ラベルが付いたことを起点にします。 Gmail のフィルタで、サポート用のアドレス宛てのメールすべてに「CS受信」のラベルを付けます。言語はこの時点では判定しません。判定はAIの側で行い、Gmail のフィルタに言語の条件を書かないようにします。フィルタで言語を絞ろうとすると、件名だけ英語で本文が日本語のもの、その逆のものが漏れます。

返信のZap:対応表の行が更新されたことを起点にします。 Google Sheets のトリガーには新しい行と、新しい行または更新された行があります。担当者が日本語の回答を書き、状態の列を「翻訳依頼」に変えたら動くようにします。書きかけの段階で動かないよう、状態の列を後段の Filter で見ます。

受信と返信を1つのZapにしないのは、間に人の作業が入るからです。担当者が回答を書く時間は数分のこともあれば翌日のこともあり、1つのZapで待たせる設計は向きません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
問い合わせのメール送信者、件名、本文、受信日時、スレッドの識別子Gmail
用語集製品名、型番、返品・保証の決まった言い回し。言語ごとの訳語と「訳さない」の印用語集のシート(版番号つき)
日本語の回答担当者が書いた回答の原稿対応表
対応の記録問い合わせの番号、言語、分類、担当者、状態対応表

質を決めるのは用語集です。 1行が1つの語で、列は「日本語」「英語」「繁体字中国語」「韓国語」「タイ語」「訳さない」「種類(製品名/型番/言い回し)」です。型番は全行で「訳さない」にします。 製品名は、英語の正式名が製品ページにあるものだけ訳語を埋め、ほかは空欄にします。

返品・保証の言い回しは、文の単位で持ちます。 「未使用で、到着日から30日以内であれば返品を受け付けます」のように文ごと登録し、言語ごとの確定訳を並べます。語の単位で持つと、組み合わせ方で起算日が変わります。

注文番号や受注の内容は、この構成ではAIに渡しません。 担当者が受注管理画面で確かめ、回答の原稿に必要な分だけ書きます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
新着の問い合わせGmailラベルの付いた新着メールのトリガー
本文のテキストGmail の本文Formatter でHTMLをプレーンテキストへ
日本語の回答対応表新しい行または更新された行のトリガー
用語集用語集のシート版ごとにテキストへ書き出し、プロンプトに入れる

用語集は、版を切ってプロンプトに入れます。 シートを直接読む構成にもできますが、途中で誰かが書き換えると、同じ日のうちに訳が変わります。版番号をログに残し、どの版で訳したかを後から追えるようにします。 約400品目のうち、問い合わせに出てくるのは一部です。全件を毎回渡すと長くなるので、型番と返品の言い回しは全件、製品名は販売中のものに絞ります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. テキスト化 … Formatter の変換で、HTMLのメールをプレーンテキストにします
  2. 引用の切り落とし … Formatter の Split Text で、返信の引用の区切り("On … wrote:" や "-----Original Message-----" など)で分け、先頭だけを取ります
  3. 長さの制限 … Formatter の Truncate で上限の文字数に切ります。切った場合は印を付けます
  4. カード番号の伏せ字 … Formatter の正規表現の置換で、カード番号に見える数字の並びを伏せ字にします
  5. 重複の確認 … 同じスレッドの識別子で処理中のものがあれば、新しいメッセージとして扱います

引用の切り落としは完全にはできません。 区切りの文言はメールソフトと言語で変わり、Formatter の余分なテキストを落とす変換も、前後の空白の除去と文字数の切り詰めで、署名や引用を見分けるものではありません。取り切れなかった引用は、AIへの指示で「最新のメッセージだけを訳す」として受けます。

Formatter のステップは、Zapier のタスクの数に数えられないとされています。前処理を細かく分けても費用は増えません。

Step5

AIに処理させる

させることは3つの呼び出しに分けます。 1つにまとめると、分類を誤ったときに訳まで進んでしまいます。

呼び出しさせることさせないこと
分類言語の判定、返金・法的な主張・安全に関わるかの判定、その根拠の原文の抜き出し訳すこと。回答の方針を書くこと
翻訳受信時は原文を日本語へ、返信時は日本語の原稿を原語へ。用語集の語で訳し、用語集にない製品名は原文のまま残して一覧にする内容を足す、省く、丁寧さを変えること。約束を強めること
逆翻訳原語の回答だけを渡し、日本語へ直訳させる日本語の原稿を見ること。意訳で整えること

逆翻訳に日本語の原稿を見せないのが大事です。 原稿を見せると、AIは原稿に寄せて戻します。ずれを見つけるための逆翻訳が、ずれを消してしまいます。

分類の3つの区分は、次のとおりに決めます。

区分当たるもの当たらないもの
返金返金の要求、支払の取り消し、返品条件を外れた返金の求め返品の手続きの問い合わせ
法的な主張弁護士、訴訟、当局への申し立て、保証違反の主張保証の期間の問い合わせ
安全発火、発煙、けが、感電、破損による危険使い方が分からないという問い合わせ

迷ったら当たる側に倒します。 人に回るものが少し増えても、安全の申し出を通常の流れで訳して送るよりは軽い失敗です。

Step6

指示内容を固定する

受信時の翻訳(原文から日本語へ):

あなたは工具メーカーのカスタマーサポートで、海外の顧客からの問い合わせを
日本語に訳す担当です。訳すだけで、回答や助言は書かないでください。

【守ること】
- 最新のメッセージだけを訳してください。引用された過去のやり取りは訳しません。
- 段落ごとに、原文と訳を対にしてください。
- 用語集にある語は、用語集の日本語で訳してください。
- 用語集にない製品名・商品名は訳さず、原文のまま残してください。
  そのうえで unlisted_terms に書き出してください。
- 数字、日付、注文番号、型番は、原文の表記のまま写してください。
  換算や言い換えをしないでください。
- 意味の取れない箇所は推測で埋めず、「(不明:原文を参照)」と書いてください。
- 顧客の感情や強い表現は弱めず、そのまま訳してください。

【用語集 v{glossary_version}】{glossary}
【原文】{message}

返信時の翻訳(日本語から原語へ):

あなたは工具メーカーのカスタマーサポートで、担当者が日本語で書いた回答を
{target_language} に訳す担当です。

【守ること】
- 原稿に書かれていることだけを訳してください。足さない、省かない。
- 約束の強さを変えないでください。「検討します」を「対応します」にしない、
  「対応します」を「検討します」にしないでください。
- 用語集の「言い回し」にある文は、登録された訳文をそのまま使ってください。
  語順を変えたり、一部だけ使ったりしないでください。
- 用語集に訳語がない製品名は、原稿の表記のまま残し unlisted_terms に書いてください。
- 型番、数字、日付、金額、日数は原稿の表記のまま写してください。
- 敬語の度合いは、{target_language} の丁寧な顧客対応の文体にそろえてください。

【用語集 v{glossary_version}】{glossary}
【日本語の原稿】{reply_ja}

逆翻訳:

次の {target_language} の文を日本語に直訳してください。
読みやすく整えず、原文の語の強さと順序をできるだけ残してください。
意味の取れない箇所は「(不明)」と書いてください。
【原文】{reply_target}

「約束の強さを変えない」は、例を挙げて書きます。 抽象的に「正確に」と書くだけでは、顧客対応の文体に整える過程で「検討します」が丁寧な確約の表現に変わります。窓口の訳でいちばん困るのは、この種の変化です。

逆翻訳の指示に、元の原稿のことは書きません。 何を確かめたいかを伝えると、それに合わせて戻してきます。

Step7

出力形式を固定する

3つの呼び出しとも、Structured Outputs で JSON の形を固定します。 スキーマを渡し、strict を true にすると、応答は必ずそのスキーマに沿うとされています。必要なキーが抜けたり、決めていない値が区分に入ったりしないので、後段の Paths の条件がそのまま使えます。すべての項目を必須にし、additionalProperties を false にする必要があります。

分類の出力:

{
  "language": "en",
  "is_japanese": false,
  "flags": {
    "refund": false,
    "legal": false,
    "safety": false
  },
  "evidence": "",
  "route": "normal | escalate | stop"
}

翻訳の出力:

{
  "direction": "to_ja | to_target",
  "target_language": "en",
  "glossary_version": "",
  "segments": [
    { "source": "", "translation": "" }
  ],
  "unlisted_terms": [""],
  "unclear_parts": [""],
  "fixed_phrases_used": [""]
}

segments を段落の対にするのは、担当者が原文と訳を並べて読むためです。 対応表には、原文と訳を左右の列に書き込みます。

unlisted_terms が空でなければ、承認依頼の冒頭に出します。 用語集に足すべき語の候補でもあります。fixed_phrases_used には、用語集の言い回しから使った文を並べます。 返品条件を書いた回答でこれが空なら、登録された訳文を使っていないということです。

AIが応答を断った場合は、refusal の欄に理由が入り、スキーマどおりの出力は返りません。 出力の上限に達して途中で切れた場合は、incomplete_details の reason が max_output_tokens になります。どちらもワークフローの側で検知して、人へ回します(第7章の「例外処理」)。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
GmailZapier のトリガーとアクションラベルの付いた新着を検知し、承認後に返信の下書きを作る
対応表Google Sheets のトリガーとアクション原文と訳の書き込み、日本語の回答の受け取り、状態の更新
OpenAI APIWebhooks by Zapier分類、翻訳、逆翻訳
責任者通知返金・法的・安全に当たるものの連絡

Paths の枝は3本にします。 route が stop の枝で終了、escalate の枝で責任者への通知、normal の枝で翻訳と対応表への書き込みです。normal を明示の条件にし、フォールバックの枝は責任者への通知に向けます。 どの条件にも当たらない出力が来たときに、黙って訳す側へ流れないようにするためです。

Gmail へは送信のアクションを使いません。 返信の下書きの作成だけを使い、送信は担当者が下書きを開いて行います。

Step9

人が確認する

確認は Human in the Loop の承認依頼で行います。 Zap をその場で止め、担当者に承認、却下、データの変更を求める機能です。

  1. 承認依頼に並べるもの … 日本語の原稿、逆翻訳、unlisted_terms、fixed_phrases_used、原語の回答の順に並べます。担当者が読むのは上の2つです
  2. 見比べる点 … 約束の強さ、数字と日数、否定の向き(「できます」と「できません」)、宛先の取り違え
  3. 却下したら … 対応表の日本語の原稿を直し、状態を「翻訳依頼」に戻します。原語の文を担当者が直接直すことはしません
  4. 承認したら … 返信の下書きが作られ、担当者が開いて送ります

承認依頼では、依頼を受けた人がデータを書き換えられるかを選べます。本構成では書き換えを「いいえ」にします。 原語の回答をその場で直せるようにすると、逆翻訳と食い違ったまま下書きになります。直すのは日本語の原稿だけにし、訳し直しと逆翻訳をもう一度通します。

応答がないまま期限が来たときは、「続行」ではなく「実行を終了」を選びます。 承認のないものが下書きに進まないようにするためです。期限の前に催促を送る設定もできます。

承認を送れる相手はプランで変わります。 Professional では自分にしか送れず、窓口の3名に送るには Team 以上が必要です。 承認者は Zapier のアカウントを持っている必要があります。

返金・法的・安全の枝は、この承認の流れに乗りません。 責任者が原文から扱いを決め、訳が必要な場合も、責任者の判断で参考訳として取り、送る文は責任者が確かめます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
言語を判定できない、複数の言語が混ざるroute を escalate にし、外国語を扱える担当者へ
分類の出力が予期しない値フォールバックの枝で責任者へ。訳す側に流さない
AIが応答を断ったrefusal を検知して責任者へ
出力が途中で切れたmax_output_tokens を検知し、本文を分けて再実行するか人へ
本文が長すぎて切り詰めた対応表に印を付け、担当者が原文の続きを確かめる
unlisted_terms に製品名が出た原文のまま残して承認依頼の冒頭に出す。用語集の担当へ回す
unclear_parts がある担当者が原文を見る。外国語を扱える担当者に聞く
承認の期限切れ実行を終了。対応表の状態を「期限切れ」に戻す
画像だけの問い合わせ(写真で不具合を伝える)本文の訳だけを回し、画像は担当者が見る
同じ顧客から続けて届く同じスレッドの問い合わせとして対応表の同じ行に追記

上の2行が最も起きやすい例外です。 タイ語と英語が1通に混ざる、件名は英語で本文は中国語、といったメールは珍しくありません。判断のつかないものを通常の流れに流さない設計を、分岐の側で守ります。

Step11

記録を残す

  • 受信したメールの識別子、受信日時、言語、分類の結果と evidence
  • 受信時の訳(segments)と、そのとき使った用語集の版番号
  • 担当者が書いた日本語の原稿と、原語の回答、逆翻訳
  • 承認・却下の記録と、却下の理由
  • unlisted_terms と、その後に用語集へ足したかどうか
  • 送信した日時と担当者

用語集の版番号を残すのは、言い回しを後から変えることがあるからです。 顧客から「前はこう書いてあった」と言われたとき、どの版の訳で送ったかが分かれば、当時の条件で答えられます。

却下の理由は、指示を直す材料になります。 同じ種類のずれが続くなら、プロンプトの「守ること」に1行足します。

04実装レベルの3段階

最小構成:生成AIの画面に用語集と本文を貼り、訳と逆翻訳を手で取る / 1件ごとの訳と逆翻訳
半自動化:上記+Zapier で受信・分類・訳・逆翻訳・承認・返信の下書きまでをつなぐ / 読むための訳と返すための訳、確認の準備
本格構成:上記+ヘルプデスクの製品と連携し、受注情報を画面に並べ、訳の差異の検出を自動で行う / 問い合わせの管理と、ずれの候補の洗い出し

本記事が推すのは半自動化です。 1件20分が7分になる想定は、この段階の数字です。訳と逆翻訳の準備がすべて済んだ状態で担当者に届き、担当者は日本語で読み、日本語で書き、日本語で見比べるだけになります。 本格構成に進むのは、月の件数がこの数倍になってからで足ります。 受注情報の自動取得は便利ですが、顧客の住所や購入履歴まで外部のAIに渡すことになります。 件数が少ないうちは、担当者が受注管理画面を見る手間のほうが軽く済みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
180 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
7 分
現在  180件 × 20分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 180件 × 7分 ÷ 60 = 21 時間/月
月間削減時間
39h
削減率
65%
年間削減時間
468h
年間金額換算(時間単価2,800円)
131万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 自社ECや越境ECで海外の個人客に直接販売していて、英語以外も含む外国語の問い合わせが月100件を超える企業。外国語を読み書きできる担当者が1人に限られ、その人が休むと返信が止まる状態。製品名・型番・返品条件の言い回しが決まっていて、用語集にできる場合。
向いていない
  1. 外国語の問い合わせが月に数件で、担当者が翻訳サイトで足りている場合。問い合わせの多くが返金の例外交渉、事故や安全に関わる申し出、法的な主張で、一語の訳で結論が変わる内容が中心の場合。すでにヘルプデスクの製品に翻訳機能があり、運用に乗っている場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の外国語の問い合わせから20件を選ぶ(英語以外を半分以上入れ、返品条件を書いた返信を数件入れる)
  2. 用語集を小さく作る。型番20件、よく出る製品名20件、返品と保証の言い回し5文
  3. 手元の生成AIの画面に、用語集と問い合わせを貼り、第7章の受信時の指示で日本語に訳させる
  4. 当時送った返信を日本語に書き直し、返信時の指示で原語に訳させる
  5. 別の会話で、原語の回答だけを貼って日本語に直訳させる
  6. 日本語の原稿と逆翻訳を並べ、ずれを数える

5番目は必ず別の会話で行ってください。 同じ会話で戻すと、AIは直前の原稿を覚えていて、原稿どおりに戻します。

出てきた内容判断
逆翻訳で約束の強さのずれを見つけられた半自動化に進む
製品名が訳されていた用語集の「訳さない」を増やし、指示を見直す
返品の言い回しが登録どおりにならない語でなく文の単位で登録し直す

外国語を扱える担当者に、原語の回答を5件だけ読んでもらってください。 逆翻訳で見つけたずれと、担当者が見つけたずれが一致するかを確かめます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
逆翻訳が原稿どおりに戻り、ずれが見つからない逆翻訳の呼び出しに原稿を渡さない。 直訳を指示する
製品名が一般名詞に訳される用語集にない製品名は原文のまま残させ、unlisted_terms に出す
返品条件の起算日が変わる言い回しは文の単位で登録し、登録訳をそのまま使わせる
「検討します」が確約の表現になる約束の強さを変えない指示を、例を挙げて書く
引用された過去のやり取りまで訳されるSplit Text で切り、取り切れない分は指示で最新だけを訳させる
分類が外れて安全の申し出が通常の流れに乗る迷ったら当たる側に倒す。フォールバックの枝を責任者に向ける
Paths の後に処理を足せないPaths は最後のステップになる。後の処理は枝の中に置く
承認依頼が窓口の担当者に届かないProfessional では自分にしか送れない。Team 以上にする
承認の画面で原語を直してしまう書き換えを「いいえ」にし、日本語の原稿だけを直す
書きかけの回答で翻訳が動く状態の列を Filter で見る。「翻訳依頼」のときだけ通す
用語集の書き換えで同じ日の訳が変わる版を切ってからプロンプトに入れ、版番号をログに残す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 逆翻訳がずれを消せば、確認の仕組みそのものが意味を失います。製品名が訳されれば、顧客は存在しない製品を探します。どちらもAIが「気を利かせる」ことで起きるので、指示で先に止めます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 海外の個人客の氏名、メールアドレス、問い合わせの本文、注文番号です。本文には住所や電話番号が書かれていることもあります。

  1. 外部のAIへ渡す範囲を本文までに限る … 受注情報や購入履歴はAIに渡さず、担当者が受注管理画面で見ます。カード番号に見える数字は、前処理で伏せ字にします
  2. API で送ったデータの扱いを確かめる … Zapier のヘルプでは、API で送ったデータは利用者が共有を選ばない限り学習に使われないとされています。組織の設定で共有を選んでいないかを確かめます
  3. 返金・法的な主張・安全は人が決める … これらは往復翻訳の流れに乗せません。訳の一語で、返金の約束や責任の認めになりうるからです
  4. 送信は自動にしない … 承認後も下書きまでで、送るのは担当者です。誤った訳が顧客に届く最後の関門を、人の手に残します
  5. 訳文を正式な文書として扱わない … 保証の条件や規約の説明は、登録された訳文を使い、それ以外の言い回しで条件を約束しません
  6. 海外の個人の情報を扱う前提で、自社の取り扱いを確認する … どの国の顧客がいるか、自社のプライバシーポリシーで外部サービスへの委託をどう書いているかを、法務と確かめてください。本記事はその判断を代替しません

誤りが起きた場合のリスクは、約束していないことを約束する訳が送られることと、安全の申し出が通常の問い合わせとして扱われることです。 前者は逆翻訳による見比べで、後者は翻訳の前の分類と責任者への分岐で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:用語集を作る

型番、よく出る製品名、返品と保証の決まった言い回しをシートにまとめます。言い回しは文の単位で、言語ごとの確定訳を並べます。 確定訳は、外国語を扱える担当者が過去の送信メールから選びます。

2週目:20件で試す

先月の問い合わせ20件で、第8章の手順を行います。逆翻訳で見つけたずれと、外国語を扱える担当者が見つけたずれを突き合わせます。

3週目:分類の基準を決める

返金、法的な主張、安全のそれぞれに、何が当たり、何が当たらないかを責任者と決めます。ここが決まらないうちは受信のZapを動かしません。

4週目:受信のZapをつなぐ

ラベル、Formatter、分類、Paths、日本語訳、対応表への書き込みまでを作ります。この時点では返信のZapを作らず、訳の質と分類の当たり外れだけを見ます。

2か月目: 返信のZapと Human in the Loop の承認を足します。却下の理由を毎週数え、指示を直します。3か月目以降: 1件20分が何分になったかを実測し、unlisted_terms から用語集を育てます。外国語を扱えない担当者が、1人で外国語の問い合わせを最後まで返せた時点で、この構成は目的を果たしています。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-28/最終更新:2026-09-28
確認した内容情報源確認日
Gmail のトリガー(ラベルの付いた新着など)と返信の下書きの作成Zapier: Gmail2026-09-28
新しい行または更新された行のトリガーZapier: Google Sheets2026-09-28
枝は最大10本、フォールバック、Paths が最後のステップになることZapier: Paths2026-09-28
条件に合うときだけ続行することZapier: Filter2026-09-28
HTMLのテキスト化、Split Text、正規表現の置換、タスクに数えないことZapier: Formatter2026-09-28
Truncate と空白の除去Zapier: Remove extra text2026-09-28
承認依頼、書き換えの可否、期限切れ時の扱い、Professional は自分宛てのみZapier: Human in the Loop2026-09-28
API キーでの接続、前払いの請求、学習に使われない条件Zapier: ChatGPT (OpenAI)2026-09-28
POST と JSON、ペイロード上限5MBZapier: Webhooks2026-09-28
strict でのスキーマ準拠、refusal と max_output_tokens の検知OpenAI: Structured Outputs2026-09-28

海外の個人客の情報の取り扱いは、自社の法務と確認してください。 本記事は上記のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0265)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次