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生命保険の新契約で、告知書の内容と診査・健康診断の結果を照らし、食い違いと追加で確かめる事項を引受査定の担当へ論点として出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

生命保険の新契約で、告知書の回答と、診査医の診査結果や提出された健康診断の結果を項目ごとに照らし、食い違いと追加で確かめるべき事項を論点の一覧にします。査定者は、論点から読み始められます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Power Automate/Python
対象業界
保険
対象部門
営業
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
入力漏れ削減/判断支援/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
300h/月
AI導入後
125h/月
想定削減
58%
年間削減
2,100h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 新契約システムで申込内容と告知の回答を開く。紙の告知書はイメージを開く
  2. 診査医の診査結果と、健康診断の結果通知書のイメージを開く
  3. 告知で「はい」と答えた項目について、詳細の記入と、診査・健診の記載を見比べる
  4. 告知で「いいえ」と答えた項目について、診査・健診の書類に対応する所見が無いかを探す
  5. 気になった点を査定のメモに書き、査定者へ回す
  6. 査定者がメモと書類を読み、引受の判断をするか、追加の確認(告知の補足、書類の追加など)を依頼する
導入後(After)
  1. 自動新契約システムに診査結果か健診結果のイメージが登録されたら、その申込みを照合の対象にする
  2. 自動紙の告知書と、診査・健診の書類のイメージから、文字と表とチェック欄を読み取る
  3. 自動告知の回答を、質問の番号ごとの「はい」「いいえ」と詳細にそろえる
  4. 自動健診の数値と判定を、項目の名前と判定の記号の対応表で自社の項目にそろえる
  5. 自動告知の各質問と、診査・健診の記載を照らし、食い違いと確認が要る事項を根拠付きで書き出させる
  6. 自動論点の種類と数から、`no_issue` / `review` / `priority` を規則で決める
  7. 人担当者が論点の一覧を見て、根拠の箇所を書類のイメージで確かめる
  8. 人査定者が論点を読み、引受の判断をするか、追加の確認を依頼する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 新契約システムで申込内容と告知の回答を開く。紙の告知書はイメージを開く
  2. 診査医の診査結果と、健康診断の結果通知書のイメージを開く
  3. 告知で「はい」と答えた項目について、詳細の記入と、診査・健診の記載を見比べる
  4. 告知で「いいえ」と答えた項目について、診査・健診の書類に対応する所見が無いかを探す
  5. 気になった点を査定のメモに書き、査定者へ回す
  6. 査定者がメモと書類を読み、引受の判断をするか、追加の確認(告知の補足、書類の追加など)を依頼する

(a)4番目がいちばん重く、いちばん省かれる。 「はい」の項目は詳細を読めば済みますが、「いいえ」の項目は、書類のどこかに対応する記載が無いかを探す作業です。健診の結果通知書の全項目を、告知書の質問ごとに見直すことになります。忙しい日ほど、ここが目立つ判定だけを見る作業になります。

(b)通知書の書式がばらばら。 判定の記号がA〜Eの通知書もあれば、「異常なし」「要経過観察」「要精密検査」と文字で書かれたものもあります。「要精密検査」の欄が別のページの総合判定にだけ書かれていることもあり、 数値の表だけを見ていると見落とします。

(c)照合の深さが人によって違う。 経験のある担当者は、診査医の記載にある「服薬中」という一語から告知書の通院の項目を見直しますが、経験の浅い担当者は数値の表だけを見ます。同じ書類で、査定者に回る論点が担当者によって変わります。

(d)見落としは、支払のときに見つかる。 引受のときに拾われなかった食い違いは、給付金の請求のときに初めて問題になります。告知義務違反があった場合、責任開始日から2年以内であれば契約が解除されることがあり、契約者にとっても会社にとっても、引受のときに確かめておけばよかったことになります。

  1. 【自動】 新契約システムに診査結果か健診結果のイメージが登録されたら、その申込みを照合の対象にする
  2. 【自動】 紙の告知書と、診査・健診の書類のイメージから、文字と表とチェック欄を読み取る
  3. 【自動】 告知の回答を、質問の番号ごとの「はい」「いいえ」と詳細にそろえる
  4. 【自動】 健診の数値と判定を、項目の名前と判定の記号の対応表で自社の項目にそろえる
  5. 【自動】 告知の各質問と、診査・健診の記載を照らし、食い違いと確認が要る事項を根拠付きで書き出させる
  6. 【自動】 論点の種類と数から、no_issue / review / priority を規則で決める
  7. 【人】 担当者が論点の一覧を見て、根拠の箇所を書類のイメージで確かめる
  8. 【人】 査定者が論点を読み、引受の判断をするか、追加の確認を依頼する

7番目が、この設計の分かれ目です。 AIの論点には、必ず書類の該当箇所が付いています。担当者はその箇所だけを開いて確かめます。 書類を最初から読み直す設計にすると、③の5分はほとんど減りません。

8番目は、最初から最後まで人の仕事です。 論点の一覧は、査定者が書類を読む順番を決めるためのものです。論点が無いことも「引き受けてよい」という意味ではなく、 書類どうしの食い違いが見つからなかったというだけです。

02今回想定するシステム構成

構成図
新契約システム(申込内容・電子告知の回答)+ 書類のイメージ(紙の告知書・診査結果・健診結果)
   │【トリガー】診査結果か健診結果のイメージの登録
   ▼
Azure AI Document Intelligence(レイアウトモデル)
   │   文字、表、チェック欄の状態、読み取りの信頼度
   ▼
Python(前処理)
   │  ・告知の回答を質問の番号ごとにそろえる
   │  ・健診の項目名と判定の記号を、自社の項目に対応させる
   │  ・氏名・住所・勤務先を外す
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
   │  ・告知の質問ごとに、診査・健診の記載との食い違いを書き出す
   │  ・引受の判断に要る情報が足りない事項を書き出す
   │  ・structured outputs(strict)でスキーマどおりのJSONを返させる
   ▼
Python(判定)── 根拠の照合と、no_issue / review / priority の決定
   ▼
論点の一覧(査定の画面)
   ▼
【人】担当者が根拠を確かめ、査定者が引受を判断する
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
読み取りAzure AI Document Intelligence(レイアウトモデル)Google Document AI
差異計算Python(健診の項目と判定の対応、根拠の照合、判定の規則)Google Apps Script
連携Python(新契約システムからの取り出しと、査定の画面への書き出し)Power Automate
保管書類のイメージを保管する仕組み文書管理システム

新契約システムと査定の記録は、今のものを使います。 この構成は書類を読み、論点の一覧を作るところまでです。査定の結果や引受の条件は書き込みません。

最初の準備作業は、2つの対応表を作ることです。 1つは、告知書の質問の番号と、その質問に関係する診査・健診の項目の対応。もう1つは、健診の結果通知書によく出てくる項目名と判定の記号を、自社の項目と判定にそろえる表です。この2つが、照合の深さを担当者によらずそろえる土台になります。

読み取りには、Azure AI Document Intelligence のレイアウトモデルを使います。 文字、表、チェック欄(選択マーク)と文書の構造を取り出すモデルで、チェック欄は選択されているか(selected/unselected)と信頼度が返ります。 表は行と列の数、行や列をまたぐセルの情報と一緒に取り出されます。日本語は、印刷の文字と手書きの文字の両方が対応言語に含まれています。 入力はPDFと画像(JPEG/JPG、PNG、BMP、TIFF、HEIF)などで、PDFとTIFFは最大2,000ページ、サイズは有料(S0)で500MBまでです。

判定に Azure OpenAI を選ぶのは、データの取り扱いが明示されているためです。 公開されている説明では、プロンプトと出力は他の顧客にも OpenAI などのモデルの提供元にも提供されず、提供元のモデルの改善や、許可のない学習に使われないとされています。Global または DataZone のデプロイでは、指定した地理の外で処理されることがあるため、デプロイの種類は社内の規程に照らして選びます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

診査結果か健診結果のイメージが、新契約システムに登録されたことを起点にします。 告知の回答は申込みの時点でそろっていますが、診査は後日、健診の結果通知書は後から送られてくることが多く、照合できるのは書類がそろってからだからです。

診査と健診の両方が提出される申込みでは、2つ目の書類が登録されたときにもう一度照合します。 1回目の論点は残したまま、2回目の結果を並べます。後から届いた書類で前の論点が解消することも、新しい論点が出ることもあります。

照合は1件ずつ動かします。 夜間にまとめると、翌朝の担当者に論点が届くまでの時間が空き、申込みから成立までの日数が延びます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申込内容商品、保険金額、被保険者の性別と年齢新契約システム
告知の回答質問の番号ごとの「はい」「いいえ」と詳細(傷病名、時期、医療機関、治療の内容)電子告知のデータ、または紙の告知書の読み取り結果
診査医の診査結果身長・体重、血圧、尿検査、診査医が聞き取った既往と現症、所見書類のイメージの読み取り結果
健康診断の結果通知書受診日、項目ごとの数値と判定、総合判定、医師のコメント書類のイメージの読み取り結果
質問と項目の対応表告知書の質問の番号と、関係する診査・健診の項目新契約部で用意する
健診の項目と判定の対応表通知書によく出る項目名と判定の記号を、自社の項目と判定にそろえたもの新契約部で用意する

募集人の面談のメモは、入力に入れません。 生命保険会社が指定した医師以外の、営業職員や保険代理店の担当者に健康状態を口頭で伝えても、告知したことにはならないとされています。照合の元を告知書と診査医の記載に限っておかないと、「募集人には伝えた」という記載が告知のように扱われます。

質を決めるのは、2つの対応表です。 「過去5年以内に健康診断で異常を指摘されたか」という質問に対して、健診のどの項目と判定を見るのかが決まっていなければ、AIは見る範囲を毎回自分で決めます。 対応表は、査定の手引きと、経験のある担当者が実際に見ている項目から作ります。質問の期間や内容は自社の告知書に合わせます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
申込内容と電子告知の回答新契約システムのデータ照合の基準
紙の告知書のチェック欄レイアウトモデルの選択マーク「はい」「いいえ」の読み取り
診査・健診の表レイアウトモデルの表項目ごとの数値と判定
診査・健診の文章レイアウトモデルの文字(Markdown 形式で出力)所見、医師のコメント、総合判定
読み取りの信頼度文字とチェック欄ごとの信頼度読み取りが怪しい箇所の検出

レイアウトモデルは、本文を Markdown 形式で返せます。 表はHTMLの表として出るので、結合されたセルや複数行の見出しを持つ健診の表も、構造を保ったまま生成AIに渡せます。 数値の表だけでなく、総合判定や医師のコメントの文章も同じ流れで取れるのが、この構成でレイアウトモデルを使う理由です。

紙の告知書のチェック欄は、信頼度を見て扱いを分けます。 「はい」と「いいえ」の両方に印があるように読めるもの、どちらにも印が無いように読めるものは、照合に進めず、担当者がイメージで確かめる側に回します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 書類の種類の確認 … 告知書、診査結果、健診の結果通知書、それ以外を分けます。それ以外の書類は照合に使いません
  2. 告知の回答をそろえる … 電子告知と紙の告知書の回答を、質問の番号ごとの同じ形にします
  3. 健診の項目をそろえる … 項目名と判定の記号を、対応表で自社の項目と判定に置き換えます。対応表に無い項目名は、置き換えずに原文のまま残します
  4. 受診日の確認 … 健診の受診日と申込日の間隔を計算し、告知書の質問の期間に入るかを付けます
  5. 個人の情報を外す … 氏名、住所、勤務先、健診機関の名前を置き換えます。性別と年齢は残します
  6. 読み取りが怪しい箇所の印 … 信頼度の低い文字とチェック欄に印を付け、AIに「読み取りが不確か」と伝えます

3番目で、置き換えられない項目を捨てないのが大事です。 対応表に無い項目は、まさに担当者が見落としやすい項目です。原文のまま残して、AIに読ませます。

4番目は、AIより先に機械で済ませます。 日付の計算は答えが決まっていて、AIに任せると期間の内か外かを取り違える余地が生まれます。結果を「確認済みの事実」として渡します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、告知書の質問ごとに、診査・健診の記載と照らして論点を書き出すことだけです。 論点は3つの種類に分けます。

種類中身例
conflict告知の回答と、書類の記載が食い違う「健診で異常の指摘なし」と回答、通知書に要精密検査の判定
missing_detail「はい」の回答の詳細が、判断に要る程度に書かれていない「通院中」とあり、傷病名や治療の内容が無い
needs_confirmation食い違いとまでは言えないが、確かめる価値がある診査医の記載に「服薬中」とあり、告知の通院の項目は「いいえ」

種類を分けるのは、査定者の次の行動が違うためです。 conflict は書類どうしを読み比べて扱いを決めるもの、missing_detail は告知の補足を求めるもの、needs_confirmation は追加の書類や確認を検討するものです。どれを依頼するかは査定者が決めますが、一覧の上で分かれていれば、読む順番が決まります。

3つ目の例は、食い違いとは書かせません。 「服薬中」の薬が、告知書の質問の対象になる病気のものかどうかは書類からは分かりません。分からないことを、分からないまま確認の論点として出すのが、この種類の役目です。

させないこと理由
引き受けるかどうか、条件の判断査定者が、査定の基準に照らして決める
告知義務違反かどうかの認定書類の食い違いと、告知が事実と違うことは別のこと
病名や重さの推測数値の外れと病気であることは別のこと
数値の基準の判定判定は通知書に書かれた判定か、対応表で決める
申込者への問い合わせの文面告知の補足を求めるかどうかと、その方法は人が決める

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 血糖の数値が高い通知書を渡すと、AIはそれらしい病名を添えて論点を書きます。病名が一覧に載ると、査定者はそれを前提に書類を読み始めます。 書かせるのは「通知書の血糖の項目に、要精密検査の判定がある」までです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは生命保険会社の新契約部で、告知書と医的な書類の照合を手伝う立場です。
引受の判断や、告知義務違反かどうかの判断はしないでください。
書類どうしを突き合わせて、査定者が確かめるべき論点を書き出すことだけをしてください。

【やること】
告知書の質問ごとに、【質問と項目の対応表】で示した診査・健診の項目と記載を見て、
次のいずれかに当たるものを論点として書き出してください。
- conflict ............. 告知の回答と、書類の記載が食い違う
- missing_detail ....... 「はい」の回答の詳細が、傷病名・時期・治療の内容のいずれかを欠く
- needs_confirmation ... 食い違いとは言えないが、査定者が確かめる価値がある
対応表に無い項目でも、告知書の質問に関係しうる記載があれば needs_confirmation で書いてください。

【厳守事項】
- 病名、病気の重さ、将来の見込みを推測して書かないでください。
  書類に書かれている項目名、数値、判定、医師のコメントだけを書いてください。
- 数値が基準を外れているかを、あなたが判断しないでください。
  通知書に書かれた判定か、【確認済みの事実】の判定だけを使ってください。
- 告知書・診査結果・健診結果の、どの書類のどの記載を根拠にしたかを、
  doc_type と quote で示してください。quote は書類の文字を一字も変えずに写してください。
- 読み取りが不確かと印の付いた箇所を根拠にする場合は、uncertain を true にしてください。
- 募集人の記載や、告知書・診査結果・健診結果以外の書類は根拠にしないでください。
- 受診日が告知書の質問の期間に入るかは【確認済みの事実】に従ってください。
- 論点が無い質問は、checked_questions に番号だけを入れてください。

【申込内容】{application}
【告知の回答】{disclosure}
【診査結果】{exam}
【健康診断の結果】{checkup}
【質問と項目の対応表】{question_map}
【確認済みの事実】{facts}

「数値の基準を判断しない」を書いておかないと、AIは自分の知っている基準で判定します。 健診機関によって基準値は違い、通知書の判定とAIの判定が食い違うと、どちらを信じるかという新しい論点が生まれます。 判定は通知書のものを使うと決めておけば、この迷いは起きません。

checked_questions を返させるのは、見たことを記録するためです。 論点が無い質問について何も返さないと、見て問題が無かったのか、見ていないのかが区別できません。 後段の Python で、告知書の全質問がどちらかに入っているかを照合します。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "application_id": "",
  "issues": [
    {
      "question_no": "",
      "type": "conflict | missing_detail | needs_confirmation",
      "disclosure_answer": "",
      "evidence": [
        { "doc_type": "disclosure | exam | checkup", "page": 0, "quote": "" }
      ],
      "uncertain": false,
      "note": ""
    }
  ],
  "checked_questions": [""],
  "unread_items": [""]
}

unread_items には、対応表に無く、告知書の質問との関係も判断できなかった記載を入れさせます。捨てずに一覧に残し、担当者が見るかどうかを決めます。

1つ目の理由は、根拠をイメージにさかのぼれることです。 doc_type と page と quote があれば、担当者は書類のイメージの該当ページを開き、その文字を探すだけで確かめられます。quote が読み取りの結果の中に一字一句そのまま存在するかは、Python で照合します。 見つからない論点は uncertain に落とします。

2つ目は、AIの論点と、論点の重さの決め方を分けられることです。 Python が issues の種類と数から、規則で一覧の扱いを決めます。

扱い条件(規則の例)
no_issueissues が空で、全質問が checked_questions に入っている
reviewmissing_detail か needs_confirmation だけがある
priorityconflict が1つ以上ある、または uncertain の論点がある、または checked_questions に漏れがある

3つ目は、規則を変えても論点の書き出しを触らずに済むことです。 たとえば「保険金額が一定以上の申込みは needs_confirmation でも priority」という規則を足すときも、プロンプトは変えずに済みます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
新契約システムデータの取り出し(読み取りのみ)申込内容と電子告知の回答、書類のイメージの登録の検知
書類のイメージを保管する仕組み読み取りのみ告知書・診査結果・健診結果のイメージ
Azure AI Document IntelligenceAPI呼び出し(レイアウトモデル)文字、表、チェック欄、信頼度
Azure OpenAIAPI呼び出し(structured outputs)論点の書き出し
査定の画面論点の一覧の書き出し担当者と査定者が読む

新契約システムと査定の記録へは書き込みません。 論点の一覧は査定の画面に表示するだけで、引受の判断、条件、追加の確認の依頼は査定者が記録します。 AIの論点を査定の記録に自動で写す経路を作ると、論点が判断の結論のように残ります。

Step9

人が確認する

担当者と査定者が見る順番を、一覧の扱いで決めておきます。

  1. priority を先に見る … conflict の論点は、evidence の両方の書類を開き、本当に食い違っているかを目で確かめます
  2. uncertain の論点はイメージで読み直す … 読み取りの誤りで生まれた論点が混ざっています
  3. review の論点を見る … 告知の補足や追加の書類が要るかを、査定者が決めます
  4. no_issue は抜き取りで見る … 毎日一定の件数を選び、書類を最初から読んで、論点の見落としが無いかを確かめます
  5. 論点を覆したら記録する … どの論点を、なぜ取り下げたか、または足したかを残します

1番目を省かないでください。 conflict は、告知が事実と違うかもしれないという論点です。読み取りの誤りや、別の年の健診を照らしただけということもあります。 書類の上で確かめないまま申込者に補足を求めると、申込者に不要な負担をかけます。

4番目の抜き取りが、この構成の精度を支えます。 論点の一覧だけを見ていると、AIが見落とした側の誤りに気づけません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
紙の告知書のチェック欄が両方とも印あり・印なしに読める照合に進めず、担当者がイメージで確かめて入力する
健診の通知書が画像で読み取れない文字の信頼度が低い箇所に印を付け、全体が読めなければ人の照合に回す
健診の受診日が告知書の質問の期間の外期間の外として事実を渡す。論点にするかは対応表の定めに従う
対応表に無い項目名原文のまま渡し、関係が判断できなければ unread_items に入れる
診査と健診で同じ項目の数値が違う論点として両方を並べる。どちらが正しいかは決めない
告知書と関係の無い書類が混ざる書類の種類の確認で外し、担当者に知らせる
quote が読み取り結果に見つからないその論点を uncertain にする
AIの応答が途中で終わる・拒否される再実行し、再び失敗したものは人の照合に回す
後から2つ目の書類が届くもう一度照合し、1回目の論点と並べて表示する

5行目は、AIに選ばせません。 診査の血圧と健診の血圧が違うのは、測った日も状況も違うからです。どちらを引受の判断に使うかは、査定の基準で決まります。

最初の2行は、紙の告知書の様式で減らせます。 チェック欄が小さすぎる、記入欄がチェック欄に近すぎるといった様式は、読み取りの迷いを生みます。

Step11

記録を残す

  • 照合の対象にした申込みの番号と、使った書類のイメージの番号
  • 読み取りの結果のJSONの全文(文字、表、チェック欄、信頼度)
  • AIに渡した内容(個人の情報を置き換えた後のもの)と、対応表の版
  • AIが返したJSONの全文と、使ったモデルのデプロイ名
  • 規則で決めた扱い(no_issue / review / priority)と、その条件
  • 担当者と査定者が論点を取り下げた・足した記録と理由
  • 抜き取りで見つかった見落としの記録

3つ目で対応表の版を残すのは、照合の範囲が後から変わるためです。 告知書の質問を改定すると、同じ書類でも見る項目が変わります。当時の対応表が残っていないと、支払の段階で引受のときに何を見たかを説明できません。

6つ目と7つ目は、対応表を育てる材料になります。 取り下げが多い論点の種類は対応表の定めが広すぎ、抜き取りで見つかる見落としは対応表に足りない項目を示しています。

04実装レベルの3段階

最小構成:書類の内容を手でAIに渡し、告知の質問ごとに論点を書き出させる / 1件ごとの照合
半自動化:上記+書類のイメージをレイアウトモデルで読み取り、APIで論点を一覧に書き出す / 読み取りと論点の一覧化
本格構成:上記+書類の登録を起点に自動で動かし、健診の項目の対応、根拠の照合、扱いの決定まで行う / 照合の全体と、論点の優先順

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ書類の内容を渡すので、1,500件には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1件12分が8分程度になります。 読み取りと論点の書き出しは自動になりますが、健診の項目の読み替えと、根拠の確かめと、扱いの振り分けが手作業で残ります。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、通知書ごとに違う項目名と判定の記号を読み替える作業が、1件ずつの手作業だからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月回すと、対応表に無い項目名のうち、よく出てくるものが分かります。それを対応表に足してから本格構成に進むほうが、unread_items が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
1,500 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  1,500件 × 12分 ÷ 60 = 300 時間/月
導入後 1,500件 × 5分 ÷ 60 = 125 時間/月
月間削減時間
175h
削減率
58%
年間削減時間
2,100h
年間金額換算(時間単価4,000円)
840万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 死亡保障や医療保障の新契約で、告知書に加えて診査医による診査の結果や、会社の健康診断・人間ドックの結果通知書の写しの提出を受けている生命保険会社。月に千件以上の申込みについて、新契約部門の担当者が告知書と診査・健診の書類を並べて読み、食い違いを査定者に回しているが、照合の深さが担当者によって違う場合。告知書の回答が電子データか、紙でもチェック欄の様式が決まっている場合。
向いていない
  1. 告知書だけで引き受ける商品が中心で、診査や健診結果の提出がほとんど無い場合。月の申込みが数十件で、査定者が自分で全件を読める場合。引受の可否や特別条件の付け方そのものを自動化したい場合、この構成では代替できません。告知の内容が事実と違うかどうかの認定と、引受の判断は、査定者と診査医が行います。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の申込みから30件を選ぶ(うち数件は、査定者が告知の補足を求めたものを入れる)
  2. その30件について、当時の担当者がどの論点を査定者に回したかを、査定のメモで確かめる
  3. 告知書の質問のうち、健診と関係の深いもの5問程度について、質問と項目の対応表を作る
  4. 30件の告知の回答と健診の結果通知書から氏名などを外し、社内で利用が認められたAIサービスに1件ずつ渡す
  5. 「告知書の質問ごとに、健診の記載と食い違う点、詳細が足りない点、確かめる価値がある点を、根拠の記載を写して書き出してください。病名を推測しないでください」と指示する
  6. 出てきた論点を、当時の査定のメモと突き合わせる

30件は必ずやってください。 読み取りやAPIを組む前に、「対応表があれば論点がそろうか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時のメモと同じ論点が出た読み取りとAPIの連携に進む
論点に病名が書き込まれる指示の書き方で直る。構成は有効
当時のメモに無い論点が出た見落としか、取り下げてよい論点か。 査定者に読んでもらう

3行目は、試す価値のいちばん大きい結果です。 査定者が「確かめるべきだった」と言えば、第3章の(c)が実際に起きていたことになり、「不要」と言えば対応表を絞る材料になります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
論点に病名が書き込まれる病名と重さの推測を禁じる。 書類の記載だけを書かせる
AIが自分の基準で数値を判定する判定は通知書のものか対応表で決める
見ていない質問と問題の無い質問が区別できないchecked_questions を返させ、全質問を照合する
募集人のメモが告知のように扱われる照合の元を告知書と診査医の記載に限る
対応表に無い項目が捨てられる原文のまま渡し、unread_items に残す
チェック欄の読み取りの誤りが論点になる信頼度の低いチェック欄は照合に進めない
別の年の健診を照らしてしまう受診日と質問の期間を機械で照らしてから渡す
conflict をそのまま申込者に問い合わせる書類で確かめてから、査定者が決める
no_issue を誰も見ない毎日の抜き取りで、見落としの側の誤りを確かめる
論点が査定の記録に自動で写る論点は画面に出すだけにする

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、書類に書かれていないことをAIが足す失敗です。書類の記載から一歩も出ないことを、指示と根拠の照合の両方で守れるかどうかで、運用に乗るかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 被保険者の告知の内容、診査の結果、健康診断の結果、申込みの内容です。病歴や健康診断の結果は、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように取扱いに特に配慮を要する要配慮個人情報に当たります。

  1. 外部へ渡す範囲を照合に要る項目に限る … 照合に要るのは告知の回答と医的な記載で、氏名、住所、勤務先は要りません。健診機関の名前も置き換えます
  2. 処理する場所を規程で決める … Global または DataZone のデプロイでは、指定した地理の外で処理されることがあるとされています。健康に関する情報をどの地理で処理してよいかを先に決めてください
  3. この構成は引受の判断を代替しません … 引き受けるかどうか、条件を付けるかどうかは査定者が、査定の基準に照らして決めます。この構成が出すのは、書類どうしの食い違いと、確かめるべき事項だけです
  4. 告知義務違反の認定に使わない … 論点の conflict は書類の食い違いで、告知が事実と違ったという認定ではありません。論点の一覧を、支払の段階で契約を解除する根拠の記録として使わないでください
  5. 論点の一覧の閲覧者を絞る … 新契約部の担当者と査定者に限り、営業の部門からは見えないようにします
  6. 保存の期間を決める … 読み取りの結果やAIに渡した内容を、いつまで残すかを社内の規程で決めます

誤りが起きた場合のリスクは、食い違いを見落として引き受けることと、食い違いでないものを問い合わせて申込者に負担をかけることの2つです。 前者は抜き取りで、後者は conflict を書類で確かめることで守ります。どちらも、論点に付いた根拠の箇所を人が開く運用が前提です。

10まず何から始めるか

1週目:対応表の最初の版を作る

告知書の質問のうち、健診と関係の深い質問について、見るべき診査・健診の項目と判定を、経験のある担当者と査定者から聞き取って表にします。 あわせて、健診の通知書によく出る項目名と判定の記号の対応表を、過去の通知書から作り始めます。

2週目:30件で試す

過去の申込みから30件を選び、氏名などを外して論点を書き出させます。当時の査定のメモと突き合わせ、論点に病名が書き込まれていないかを最優先で見ます。

3週目:扱いの規則と、データの扱いを決める

どの論点の組み合わせを priority にするかを、査定者と決めます。 あわせて、健康に関する情報をどの地理で処理するか、何を外して渡すか、どれだけ残すかを、社内の情報管理の担当と決めます。

4週目:読み取りから論点の一覧までをつなぐ

書類のイメージをレイアウトモデルで読み取り、論点を一覧に書き出すところまで作ります。この時点では扱いの振り分けをせず、論点と根拠の一覧だけを担当者に見てもらいます。

2か月目: 健診の項目の対応、根拠の照合、no_issue / review / priority の振り分けを足し、取り下げた論点の数を毎週数えます。3か月目以降: 書類の登録を起点にした自動の照合に切り替え、1件12分が何分になったかを実測します。抜き取りで見つかる見落としが減り、対応表の改定が月に一度で足りるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
契約者または被保険者が、過去の傷病歴、現在の健康状態、職業などについて、告知書や生命保険会社の指定した医師の質問に事実をありのまま告げる義務があること。生命保険会社指定の医師以外(営業職員や保険代理店の担当者など)に口頭で伝えても告知したことにはならないこと生命保険文化センター: 契約申込みから契約成立までの流れと重要事項2026-10-06
告知義務違反があった場合、責任開始日から2年以内であれば契約が解除されることがあること生命保険文化センター: 病歴があったのに告知するのを忘れていたら?2026-10-06
要配慮個人情報が、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように取扱いに特に配慮を要する個人情報であり、病歴や健康診断の結果がこれに当たること個人情報保護委員会: 「要配慮個人情報」とはどのようなものを指しますか2026-10-06
レイアウトモデルが文字、表、選択マーク(チェック欄)と文書の構造を取り出し、選択マークの状態と信頼度を返すこと。表に行と列をまたぐセルの情報が含まれること。Markdown 形式で出力でき、表はHTMLの表として出ること。PDFとTIFFが最大2,000ページ、サイズが有料(S0)で500MBであることMicrosoft Learn: Document layout analysis2026-10-06
レイアウトモデルの対応言語に、日本語が印刷の文字と手書きの文字の両方で含まれることMicrosoft Learn: Language support for Read and Layout2026-10-06
structured outputs が指定したJSON Schemaに従わせる機能で、すべての項目を required にし、additionalProperties: false を付ける必要があることMicrosoft Learn: How to use structured outputs with Azure OpenAI2026-10-06
プロンプトと出力が他の顧客や OpenAI などのモデルの提供元に提供されず、モデルの改善や許可のない学習に使われないこと。Global または DataZone のデプロイでは指定した地理の外で処理されることがあることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure2026-10-06

告知書の質問の内容と期間、査定の基準は、各社の定めを確認してください。 本記事は公開されている資料で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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