新しい輸出案件の該非判定の前に、過去の該非判定書から型番・仕様・用途の近い品目を探し、当時の判定と根拠の項番を判定時の法令の版と並べて担当者に示す
新しい輸出案件の該非判定を始める前に、過去の該非判定書から型番・仕様・用途の近い品目を探します。当時の判定、照合した項番、根拠の記述を、判定したときの法令の版と、その後に改正があったかの印を付けて担当者に示します。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 対象業界
- 商社/製造
- 対象部門
- 法務/物流
- 対象業務
- 情報検索/比較検討
- 主な課題
- 判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 判断支援/属人化解消/検索時間短縮
- 導入難易度
- ★★★★☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 営業から輸出の案件と品目(型番・仕向地・用途)を受け取る
- 該非判定の一覧で、同じ型番の判定があるかを探す
- 無ければ、系列の名前や似た型番でファイルサーバーを探し、判定書を開いて読む
- 見つけた判定書の決裁の日を見て、その後に関係する項番の改正があったかを、改正の情報で確かめる
- 今回の品目の仕様書と、過去の判定書の仕様の対比を並べ、違う値を書き出す
- 法令とマトリクス表で今回の品目を照合し、判定書を作る
- 該非判定の責任者の決裁を受ける
- 人担当者が、画面に今回の品目の型番・品名・主な仕様・用途・部分品かどうかを入れ、仕様書を添える
- 自動型番の近さ、仕様の文章、用途の言葉で、過去の判定書の索引を探す
- 自動見つかった判定書ごとに、判定時の法令の版と、照合した項番がその後に改正されたかを、改正の表で引いて印を付ける
- 自動判定書の根拠の記述のうち、今回の検索に当たった箇所を取り出す
- 自動判定書を生成AIに渡し、照合した項番・根拠の値・結論を、根拠の箇所の引用付きで並べさせる
- 人担当者が並べられた判定を読み、今回の品目との仕様の違いを確かめる
- 人法令とマトリクス表で今回の品目を照合し、判定書を作る
- 人該非判定の責任者が決裁する
各工程の詳しい説明を読む
- 営業から輸出の案件と品目(型番・仕向地・用途)を受け取る
- 該非判定の一覧で、同じ型番の判定があるかを探す
- 無ければ、系列の名前や似た型番でファイルサーバーを探し、判定書を開いて読む
- 見つけた判定書の決裁の日を見て、その後に関係する項番の改正があったかを、改正の情報で確かめる
- 今回の品目の仕様書と、過去の判定書の仕様の対比を並べ、違う値を書き出す
- 法令とマトリクス表で今回の品目を照合し、判定書を作る
- 該非判定の責任者の決裁を受ける
(a)型番が1文字違うと見つからない。 一覧は型番の完全一致でしか引けません。末尾の記号が一つ違う派生品は「判定なし」になり、 担当者は系列の名前でファイルサーバーを探し直します。逆に、似た型番を見つけて安心すると、その記号が精度の違いを表していたということもあります。
(b)判定の版が分からない。 判定書に法令の版が書かれていないと、決裁の日から当時の版を推し量り、改正の情報をさかのぼって読むことになります。この確認は、案件が急ぐときに最初に省かれます。
(c)複数の項番の照合が抜ける。 過去の判定書が一つの項番しか照合していないと、それを見た担当者も同じ項番だけを見ます。一つの貨物が複数の項番で規制される品目では、前の判定の抜けがそのまま写ります。
(d)判断の経緯が詳しい担当者の頭の中にある。 「この系列は通信の機能があると別の項番も見る」といった経緯は、判定書の結論には書かれず、担当者に聞かないと分かりません。
- 【人】 担当者が、画面に今回の品目の型番・品名・主な仕様・用途・部分品かどうかを入れ、仕様書を添える
- 【自動】 型番の近さ、仕様の文章、用途の言葉で、過去の判定書の索引を探す
- 【自動】 見つかった判定書ごとに、判定時の法令の版と、照合した項番がその後に改正されたかを、改正の表で引いて印を付ける
- 【自動】 判定書の根拠の記述のうち、今回の検索に当たった箇所を取り出す
- 【自動】 判定書を生成AIに渡し、照合した項番・根拠の値・結論を、根拠の箇所の引用付きで並べさせる
- 【人】 担当者が並べられた判定を読み、今回の品目との仕様の違いを確かめる
- 【人】 法令とマトリクス表で今回の品目を照合し、判定書を作る
- 【人】 該非判定の責任者が決裁する
7番目と8番目は、これまでと変わりません。 画面に出るのは過去の判定で、今回の判定ではありません。 該非の判定と決裁は、最新の法令に照らして人が行います。
3番目を、検索の結果に必ず付けているのも意図してのことです。 改正の印が無い過去の判定は、判定書を読む前に、そのまま使えるものと受け取られます。 版と改正の有無を、判定の結論より先に表示します。
02今回想定するシステム構成
担当者の画面(型番・品名・仕様・用途・部分品か・仕様書) ▼【トリガー】担当者が「過去の判定を探す」を押す AWS Lambda ── 型番の系列の部分を切り分け、仕様の文章を整える ▼ Amazon OpenSearch Service(該非判定書の索引) ├─ fuzzy:型番の近さ(系列の部分は prefix_length で固定) ├─ match:仕様と用途の文章(Sudachi で分けた言葉) └─ highlight:根拠の記述のうち当たった箇所 ▼ AWS Lambda ── 判定時の版と、照合した項番の改正の有無を改正の表で引く ▼ Claude API(Citations)── 判定書の根拠を引用付きで並べる ▼ 担当者の画面(版と改正の印 → 照合した項番と根拠の値 → 結論)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Amazon OpenSearch Service(fuzzy、highlight、Sudachi) | Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search) |
| 生成AI | Claude API(Citations で判定書の根拠を引用付きで並べる) | OpenAI API、Gemini API |
| 連携 | AWS Lambda(型番の切り分け、改正の表の参照) | AWS Step Functions |
| 保管 | Amazon S3(判定書の写しと、検索と参照の記録) | ― |
該非判定の一覧とファイルサーバーは、残します。 この構成は判定書を読んで索引にするだけで、判定書を書き換えません。 判定書の正本は、これまでどおりファイルサーバーと決裁の記録にあります。
型番の近さは、fuzzy で探します。 公式のドキュメントでは、fuzzy は1文字の置き換え・挿入・削除・隣り合う2文字の入れ替えを1回と数える距離で近い語を探します。距離を指定しない AUTO では、3〜5文字の語で1回、6文字以上の語で2回までの違いを許します。prefix_length で先頭の何文字を違いの対象から外せるので、系列を表す先頭の部分を固定し、末尾の記号の違いだけを拾います。
日本語の仕様と用途の文章は、Sudachi で分けて探します。 Amazon OpenSearch Service の対応プラグインの一覧では、Sudachi Analysis が日本語向けに推奨とされています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
担当者が画面で「過去の判定を探す」を押したことを起点にします。 該非判定は、営業から案件を受け取ってから始まります。出荷の日から逆算して判定を急ぐ案件が多いので、受け取ったその場で過去の判定を引けるようにします。
索引の更新は、判定書の決裁のたびに行います。 決裁された判定書をファイルサーバーの決まったフォルダに置くと、その判定書だけを読み取って索引に入れます。 今日決裁した判定が、明日の別の案件の検索に出るようにします。
改正の表の更新は、法令の改正のたびに人が行います。 改正の情報が出たら、貿易管理室が改正された項番と施行の日を表に書き足します。 この表が古いと、第5章の3番目の印が付かなくなるので、更新の担当と期限を決めておきます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 今回の品目 | 型番、品名、主な仕様(精度・範囲・周波数など)、用途、部分品か附属品か、元の製品 | 担当者の画面と仕様書 |
| 過去の判定書 | 判定の番号、型番、品名、照合した項番、項番ごとの仕様の対比、結論、決裁の日、判定時の法令の版 | ファイルサーバーの判定書 |
| 改正の表 | 法令の版、施行の日、改正された項番 | 貿易管理室が作る表 |
| 型番の系列の表 | 系列の名前、型番の先頭の部分、末尾の記号の意味 | 事業部が作る表 |
| 名称の読み替えの表 | 製品の一般的な名称と、法令での名称の対応 | 貿易管理室が作る表 |
質を決めるのは、判定時の法令の版です。 判定書に版が書かれていないと、改正の表を引けません。過去の判定書は決裁の日から版を割り当て、割り当てたことを印で残します。 今日からの判定書には、版を書く欄を足します。
型番の系列の表は、fuzzy の結果を読むためのものです。 末尾の記号が「H」なら高精度、「N」なら通信の機能付き、といった意味が分かれば、型番が1文字違う判定書を見たときに、どの仕様が違うかがすぐに分かります。 経済産業省のページでも、法令等に記載の名称は一般に使われている名称と異なる場合があるとされており、名称の読み替えの表も同じ役割を持ちます。
データの取得方法を決める
判定書1件を、索引の1件にします。 照合した項番ごとの仕様の対比は、項番ごとに分けて持たせます。 一つの判定書が複数の項番を照合していることがあるためです。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 型番の近い判定書 | fuzzy(型番、prefix_length で系列を固定) | 派生品の前例 |
| 仕様と用途の近い判定書 | match(仕様と用途の文章、Sudachi) | 型番が違う似た品目の前例 |
| 根拠の当たった箇所 | highlight(項番ごとの根拠の記述) | どの記述が今回の仕様と関係するか |
| 改正の有無 | 改正の表 | 判定時の版より後に、照合した項番が改正されたか |
組み合わせると、検索の要求はおおよそ次の形になります。
{
"size": 8,
"query": {
"bool": {
"should": [
{ "fuzzy": { "model_no": { "value": "MX-4200HN", "fuzziness": "AUTO", "prefix_length": 4 } } },
{ "match": { "spec_text": { "query": "測定範囲 0.1μm 分解能 外部通信", "boost": 2 } } },
{ "match": { "usage_text": "半導体の検査工程" } }
]
}
},
"highlight": {
"fields": { "rationale_text": { "number_of_fragments": 3, "fragment_size": 150 } }
}
}
prefix_length を4にしているので、MX-4 までは完全に一致する型番だけが対象です。 系列の違う型番が、1文字違いというだけで候補に混ざるのを防ぎます。fuzzy は検索語を近い語に広げて探すもので、広げる語の数の上限 max_expansions の既定は50です。 公式のドキュメントでは、prefix_length が0で max_expansions を大きくすると性能が落ちうるとされています。
highlight は、当たった箇所だけを返させます。 公式のドキュメントでは、number_of_fragments の既定は5、fragment_size の既定は100文字です。根拠の記述のうち、今回の仕様の言葉に当たった数か所だけを画面に出し、 判定書の全文は開けば読めるようにします。
AIへ渡す前に整形する
- 判定書を文字にする … PDF の判定書は文字を取り出し、取り出せないものは読み取りをかけます。項番ごとの仕様の対比の表は、表の形を保って取り出します
- 項番ごとに分ける … 一つの判定書の中の、照合した項番ごとの対比と結論を分けます
- 判定時の版を割り当てる … 版が書かれていない判定書は、決裁の日から版を割り当て、「推定」の印を付けます
- 型番を正規化する … 全角と半角、ハイフンの有無、空白をそろえます。fuzzy は1文字の違いを数えるので、表記の違いだけで距離が増えるのを防ぎます
- 系列の部分を切り分ける … 型番の系列の表で、先頭の系列の部分と末尾の記号を分けて持たせます
- 名称を読み替える … 品名に名称の読み替えの表を当て、法令での名称も検索の対象に足します
- 他社の判定書を分ける … 購入品について仕入先から受け取った判定書は、「他社の判定」の印を付けます
3番目を軽く見ないでください。 版を割り当てないと、改正の印を付けられず、古い判定と新しい判定が同じ重さで並びます。 推定の印は、決裁の記録で確かめられたものから外していきます。
7番目は、責任の所在を分けるためです。 経済産業省のページでは、メーカー等の該非判定書に誤りがあって該当のものを非該当として輸出した場合も、責任を問われるのは輸出を行う者とされています。他社の判定は、自社の判定と同じ扱いで並べません。
AIに処理させる
探すのは検索基盤で、版と改正の印は改正の表から規則で付けます。生成AIには、見つかった判定書の根拠を、担当者が読み比べられる形に並べさせます。
| させること | 中身 |
|---|---|
| 照合した項番の一覧 | 判定書ごとに、照合した項番と、項番ごとの結論 |
| 根拠の値 | 項番ごとに、結論を分けた仕様の値(例:精度の閾値と製品の値) |
| 今回の品目との違い | 型番の系列の表から分かる違いと、仕様書の値の違い |
| 照合の抜けの注意 | 似た品目の別の判定書が照合している項番を、この判定書が照合していないとき |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 今回の品目の該非の結論 | 判定は最新の法令に照らして人が行い、責任者が決裁する |
| 改正の有無の判断 | 改正の表から規則で付ける |
| 過去の判定の正しさの評価 | 当時の判定の是非は、この検索の役割ではない |
| 仕様の値の補完 | 判定書や仕様書に無い値を推測させない |
| 項番の解釈 | 法令とマトリクス表の解釈は人が行う |
1行目がこの構成でいちばん大事な線引きです。 過去の判定書が「非該当」で、今回の品目の型番が1文字違うだけなら、生成AIは「同等品のため非該当と考えられます」と書きたくなります。 それを担当者が読めば、判定の筋道を飛ばして結論を写すことになります。過去の結論は事実として並べ、今回の結論には触れさせません。
4行目は、第3章の(c)への手当てです。 経済産業省のページでは、工作機械のように一つの貨物が複数の項番で規制される場合があり、見落としがないよう確認するよう注意が示されています。似た品目の別の判定書が2つの項番を照合しているのに、この判定書は1つしか照合していないときに、それを指摘させます。
指示内容を固定する
あなたは貿易管理室で、該非判定の担当者に過去の判定書を示す立場です。
渡した判定書だけを根拠にしてください。
【今回の品目】型番 {model_no}、品名 {name}、主な仕様 {specs}、
用途 {usage}、部分品か {is_part}、元の製品 {parent_product}
【型番の系列の表から分かる違い】{suffix_meaning}
【過去の判定書】判定書ごとに文書として渡します。
各文書には、判定時の版、版の推定か、改正の印(照合した項番が
判定の後に改正されたか)、自社か他社の判定か、が付いています。
【やること】
1. 判定書ごとに、照合した項番と、項番ごとの結論を書く
2. 項番ごとに、結論を分けた仕様の値を、判定書の記述から書く
3. 今回の品目の仕様と比べて、値が違う項目を書く
4. 似た品目の判定書どうしで、照合した項番が食い違うときは、
どの判定書がどの項番を照合していないかを書く
【厳守事項】
- 今回の品目が該当か非該当かを書かないでください。
「同等品」「同じ結論と考えられる」とも書かないでください。
- 判定書に書かれた結論は、判定書の結論としてだけ書いてください。
- 改正の印が付いた判定書は、その項番について最初に
「判定の後に改正あり」と書いてください。
- 他社の判定書は、最初に「他社の判定」と書いてください。
- 判定書と仕様書に無い値を推測で埋めないでください。
無いものは「記載なし」と書いてください。
- 項番の意味を説明したり、法令を解釈したりしないでください。
「同等品と書かない」を明記しないと、ほぼ必ず書きます。 型番が近く、過去の結論が一つにそろっていれば、それを今回に当てはめる文章がいちばん自然だからです。結論を写す道を、言葉の段階で塞ぎます。
判定書は、Citations を有効にした文書として渡します。 公式のドキュメントでは、文書を渡して Citations を有効にすると、回答の文章に、元の文書のどこを引いたかが付いて返り、 引用の箇所は渡した文書を必ず指すとされています。カスタムの内容の文書にすると、渡したブロックがそのまま引用の単位になり、ブロックの番号で引用の箇所が返ります。 判定書を項番ごとのブロックに分けて渡し、どの項番の記述を根拠にしたかを番号で受け取ります。
出力形式を固定する
Citations は構造化出力と併用できません。 公式のドキュメントでは、構造化出力を Citations と同時に有効にするとエラー(400)になるとされています。そのため、生成AIからは引用付きの文章で受け取り、Lambda が次の形のJSONに組み直して画面に流し込みます。
{
"query_item": { "model_no": "MX-4200HN", "is_part": false },
"precedents": [
{
"ruling_id": "GH-2024-0318",
"model_no": "MX-4200H",
"law_version": "2024-05",
"version_estimated": false,
"amended_after": ["(項番)"],
"issuer": "own | supplier",
"items_checked": [
{ "item": "(項番)", "conclusion": "該当 | 非該当", "basis_value": "",
"citation": { "document_index": 0, "block_index": 3 } }
],
"differences": [{ "spec": "外部通信", "this_item": "あり", "precedent": "記載なし" }],
"highlight": [""]
}
],
"coverage_warnings": [""]
}
1つ目の理由は、amended_after を結論より前に表示できることです。 照合した項番のうち、判定の後に改正されたものがあれば、その判定書は見出しの段階で色を変えます。 担当者は、改正の後の判定書を先に読めます。
2つ目は、citation で判定書の該当のブロックを開けることです。 根拠の値を画面で読んだあと、判定書のその項番の記述を開いて確かめられます。 生成AIの要約だけで判断させないためです。
3つ目は、coverage_warnings で照合の抜けを一覧にできることです。 似た品目の判定書どうしで照合した項番が食い違っていれば、今回の判定で両方の項番を見るべきことが分かります。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 担当者の画面 | 社内の画面 | 品目を受け取り、過去の判定を表示する |
| ファイルサーバー | 読み取り | 決裁された判定書を取り込む |
| Amazon OpenSearch Service | 検索の API | 判定書を探し、根拠の当たった箇所を返す |
| 改正の表 | 読み取り | 判定時の版より後の改正を引く |
| Claude API | API呼び出し | 判定書の根拠を引用付きで並べる |
判定書と該非判定の一覧には書き込みません。 今回の判定書は、これまでどおり担当者が作り、責任者の決裁を経てファイルサーバーに置きます。この画面から判定書を作れる作りにすると、過去の判定書の記述をそのまま写した判定書が増えます。
受注の仕組みにもつなぎません。 出荷を止める・進める判断は、判定と決裁の結果を見て人が行います。
人が確認する
担当者が過去の判定を読み、今回の判定は法令に照らして担当者が行い、責任者が決裁します。
- 版と改正の印を見る … 改正の印が付いた判定書は、その項番について、改正の後の法令で照合し直す前提で読みます
- 照合した項番をそろえる …
coverage_warningsがあれば、似た品目が照合した項番を今回も照合します - 仕様の違いを確かめる …
differencesと根拠の値を見て、今回の品目の値が閾値のどちら側にあるかを仕様書で確かめます - 他社の判定を読み直す … 他社の判定は、型番と仕様が今回の品目と合っているか、判定の理由が明確か、最新の法令で確かめているかを見ます
- 判定書を作り、決裁を受ける … 判定書に判定時の法令の版を書きます
3番目を省かないでください。 型番が1文字違うだけの派生品でも、その1文字が、閾値をまたぐ精度の違いを表していることがあります。過去の判定と同じ結論になるかどうかは、値を見て初めて分かります。
目標は、1件18分です。 過去の判定を読み、改正の印と照合の抜けを確かめ、仕様の違いを書き出すまでの時間です。判定書を探す時間と、版をさかのぼって調べる時間が、ほぼ無くなります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 近い判定書が1件も無い | 「過去の判定なし」と表示し、初めての品目として詳しい担当者の確認を求める |
| 判定時の版が推定 | 「版は推定」と表示し、決裁の記録で確かめる |
| 照合した項番がすべて改正されている | 判定書は出すが「全項番で改正あり」と表示し、根拠の値は参考とする |
| 改正の表が最新の改正に追いついていない | 表の最終更新日を画面に出し、更新が施行の日より前なら警告する |
| 他社の判定しか無い | 「他社の判定のみ」と表示し、自社での判定を前提にする |
| 部分品・附属品で元の製品が分からない | 元の製品の入力を求める。元の製品の名前で探し直す |
| 判定書の文字が取り出せない | 型番と品名だけで索引に入れ、「本文なし」と表示する |
| 検索基盤か生成AIが応答しない | 「表示できない」と出し、これまでどおり一覧とファイルサーバーで探す手順に戻す |
4行目を必ず作ってください。 改正の表の更新が遅れると、改正の印が付かないまま、古い判定が新しい判定のように並びます。 表がいつ更新されたかを画面に出すことが、印の信頼を保つ条件です。
6行目は、経済産業省のページの注意に沿ったものです。 リスト規制は装置全体だけでなく部分品や附属品も対象になる場合があり、元となる製品の名称で探して確かめる方法が示されています。
記録を残す
- 今回の品目の入力と、検索の条件
- 返した判定書の番号、判定時の版、改正の印、highlight の箇所
- 生成AIに渡した判定書と、返ってきた文章と引用の全文
- 担当者が開いた判定書と、照合し直した項番
- 今回の判定書の番号と、決裁の日(判定書の側の記録と結び付ける)
- 改正の表を参照したときの表の最終更新日
4行目は、照合の筋道を後から追うためです。 判定の根拠を問われたとき、どの過去の判定を見て、どの項番を照合し直したかが残っていれば、判定の経緯を説明できます。
最後の行は、改正の表の更新の遅れを後から確かめるためです。 改正の施行の日より後に、古い表で検索していた件数が分かれば、その期間の判定を見直す範囲が決まります。
04実装レベルの3段階
半自動化で、①の20分が8分ほどになります。 型番の近さで探せるようになりますが、判定時の版と改正の有無は、担当者が自分で確かめる作業として残ります。 本格構成で、版と改正の印と根拠の並べ替えを画面の中で済ませ、1件18分にします。この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を使うと、版が書かれていない判定書と、根拠の値が書かれていない判定書の多さが見えてきます。それを補い、改正の表を作ってから印を付けるほうが、古い判定が新しい判定に見える事故が減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 120件 × 18分 ÷ 60 = 36 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 計測機器・工作機械・制御装置・電子部品などを輸出し、型番の違う派生品が多い製造業。商社で、仕入れた製品の該非判定書を受け取って自社でも確かめている場合。過去の該非判定書が数千件あり、ファイルサーバーや表計算の一覧から探すのに時間がかかっている場合。該非判定を知っている担当者が少なく、異動や退職で判断の経緯が失われそうな場合。AWS を使っているか、使える場合。
- 輸出する品目が数種類に限られ、該非判定の一覧表で十分に管理できている場合。過去の該非判定書が無いか、判定の根拠(照合した項番と仕様の対比)を残していない場合(先に判定書の書き方をそろえるのが先です)。なお、該非の判定と決裁は該非判定の責任者が最新の法令に照らして行うもので、この構成はそれを代わりに行いません。
07最小構成で試す方法
- 派生品の多い系列を1つ選ぶ
- その系列の過去の判定書を30件ほど集め、型番・照合した項番・結論・決裁の日を書き出す
- 最近の新しい案件を5件選び、型番・仕様・用途を書き出す
- 手元のAIサービスに判定書と案件を渡し、「この案件の型番・仕様・用途に近い過去の判定書を挙げ、照合した項番と根拠の値を書いてください。今回の該非は書かないでください」と指示する
- 出てきた内容を、判定に詳しい担当者に見てもらう
5件は必ずやってください。 索引を作る前に、「過去の判定書の中に、照合の筋道が読める形で残っているか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 詳しい担当者が見るのと同じ判定書が挙がり、根拠の値も読めた | 索引と画面の仕組みに進む |
| 判定書は挙がるが、根拠の値が判定書に書かれていない | 判定書の書き方をそろえるのが先。構成は有効 |
| 今回の該非まで書いてしまう | 指示の書き方で直る。結論を書かせない指示を強める |
2行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、判断の経緯が担当者の頭の中にしか無かった理由が分かったということです。 その場合は、今日からの判定書に、項番ごとの根拠の値を書く欄を足してください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 生成AIが今回の該非を書く | 指示で禁じ、過去の結論は判定書の結論としてだけ書かせる |
| 改正の前の判定が新しい判定に見える | 版と改正の印を結論より先に表示する |
| 改正の表の更新が遅れる | 表の最終更新日を表示し、施行の日より前なら警告する |
| 型番の1文字違いを同等品と思い込む | 型番の系列の表で末尾の記号の意味を出し、仕様の違いを並べる |
| 系列の違う型番が候補に混ざる | prefix_length で系列の部分を固定する |
| 全角と半角の違いで型番が遠くなる | 型番を正規化してから索引に入れる |
| 複数の項番の照合が抜ける | 似た品目どうしで照合した項番の食い違いを示す |
| 他社の判定を自社の判定と同じに扱う | 「他社の判定」の印を付け、自社での判定を前提にする |
| Citations と構造化出力を一緒に使って失敗する | 引用付きの文章で受け取り、プログラムでJSONに組み直す |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「過去に判定したから今回も同じ」という近道から起きます。近道を言葉と表示の両方で塞いでおかないと、検索が速くなった分だけ、結論を写す判定が速く増えます。
型番の1文字違いも、同じくらい早く効いてきます。 fuzzy は近い型番を見つけるための道具で、近い型番が同じ仕様であることは何も保証しません。 末尾の記号の意味を必ず並べて表示してください。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 製品の仕様と型番、過去の該非判定書、輸出の案件の仕向地と用途です。仕様の詳しい値は製品の技術情報そのもので、判定書は輸出管理の社内の判断の記録です。
- 判定と決裁を人に残す … 経済産業省のページでは、判定結果について該非判定の責任者の決裁を得て組織として決定する手順が示され、責任者を定める義務があるとされています。この構成が出すのは過去の判定で、今回の判定ではありません
- 最新の法令で判定する … リスト規制の品目は原則として毎年改正されるとされています。過去の判定は版と改正の印を付けてだけ示し、判定は最新の法令とマトリクス表で行います
- 外のサービスに渡す範囲を決める … 判定書と仕様書を生成AIのサービスに渡します。データの扱いの条件を契約で確かめ、技術の詳しい値を渡すことが社内の規程で許されるかを、輸出管理の担当と決めます
- 画面を見られる人を絞る … 判定書の索引は、輸出管理と事業部の判定の担当に限ります。営業が判定書を自分で検索して、顧客に「非該当です」と答える経路を作りません
- 他社の判定を鵜呑みにしない … 購入品は、仕入先の判定書に誤りがあっても責任を問われるのは輸出を行う者とされています。他社の判定は印を付けて分けます
誤りが起きた場合のリスクは、改正の前の判定を写すことと、型番の近い品目を同じ仕様と思い込むことの2つです。 前者は版と改正の印で、後者は型番の系列の表と仕様の違いの表示で防ぎます。どちらも、判定の前に人が読む画面の作り方で守ります。
10まず何から始めるか
1週目:判定書の書き方を足す
今日からの判定書に、判定時の法令の版と、項番ごとの根拠の値を書く欄を足します。あわせて、改正の表の様式と、更新の担当と期限を決めます。
2週目:1系列で試す
派生品の多い系列の判定書を30件集め、最近の5件の案件で、手元のAIサービスに近い判定と根拠を挙げさせます。詳しい担当者に見てもらい、今回の該非まで書いていないかを最優先で確かめます。
3週目:版を割り当てる
過去の判定書に、決裁の日から版を割り当てます。改正の表を、過去5年分さかのぼって作ります。 型番の系列の表と名称の読み替えの表も、このときに作ります。
4週目:索引を作る
派生品の多い3系列の判定書を Amazon OpenSearch Service に入れ、担当者が型番・仕様・用途で探せる画面を作ります。この時点では版と改正の印を付けず、半自動化として使ってもらいます。
2か月目: 版と改正の印を付け、根拠を引用付きで並べ、照合の抜けを示します。3か月目以降: すべての系列に広げ、過去の判定なしの件数と、改正の印が付いた判定の件数を毎月数えます。1件40分が何分になったかを実測した時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 該非判定がリスト規制に該当するかを判定する手続であること。判定結果について責任者の決裁を得て組織として決定し、責任者を定める義務があること。一度判定したものは関係法令の改正が無い限り原則として再判定不要で、判定結果と根拠を一覧に整理して管理することが有効なこと。リスト規制の品目が原則として毎年改正されること。一つの貨物が複数の項目で規制される場合があること。部分品・附属品も対象になる場合があり元の製品の名称で確認すること。法令の名称が一般の名称と異なる場合があること。他社の判定書に誤りがあっても責任を問われるのは輸出を行う者であること | 経済産業省: 該非判定/貨物・技術のマトリクス表について | 2026-10-08 |
fuzzy が置き換え・挿入・削除・隣り合う2文字の入れ替えを数える距離で探すこと。AUTO の既定で3〜5文字は1回、6文字以上は2回まで許すこと。max_expansions の既定が50、prefix_length で先頭の文字を違いの対象から外せること | OpenSearch Documentation: Fuzzy query | 2026-10-08 |
highlight の number_of_fragments の既定が5、fragment_size の既定が100文字であること | OpenSearch Documentation: Highlight query matches | 2026-10-08 |
| Amazon OpenSearch Service の対応プラグインで Sudachi Analysis が日本語向けに推奨されていること | Amazon OpenSearch Service: Plugins by engine version | 2026-10-08 |
| Citations で文書のどこを引いたかが返り、引用は渡した文書を必ず指すこと。カスタムの内容の文書では渡したブロックが引用の単位になり、ブロックの番号で返ること | Claude Docs: Citations | 2026-10-08 |
| 構造化出力を Citations と同時に有効にすると400のエラーになること | Claude Docs: Structured outputs | 2026-10-08 |
該非の判定は、最新の法令とマトリクス表に照らして、自社の該非判定の責任者の決裁で行ってください。 本記事は公開仕様と経済産業省のページで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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