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病院で、入院中の経過記録・検査結果・処方の記録から退院時サマリの下書きを作り、主治医が確認・修正して仕上げる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

退院が決まった患者の経過記録・検査結果・処方の記録を集め、入院中の経過を要約した退院時サマリの下書きを作ります。主治医の仕事は、カルテを初日から読み返して書くことから、根拠付きの下書きを記録と照らして直すことに変わります。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
医療
対象部門
総務
対象業務
書類作成/要約
主な課題
人手が足りない/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
300h/月
AI導入後
120h/月
想定削減
60%
年間削減
2,160h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 診療情報管理室が、前日の退院患者のうち退院時サマリが未作成のものを一覧にし、主治医に知らせる
  2. 主治医が電子カルテで入院時記録を開き、主訴・現病歴・既往歴を確かめる
  3. 入院初日から退院日まで、経過記録を日付順に読み返し、要点をメモする
  4. 検査結果の画面を開き、主な検査値を入院時・経過中・退院時の時点で書き写す
  5. 処方と注射のオーダを開き、入院中に使った主な薬剤と退院時処方を書き写す
  6. 様式に沿って、入院までの経過、入院中の経過、退院時の状態、退院後の方針を書く
  7. 見直して確定し、研修医が書いたものは指導医が確かめて承認する
導入後(After)
  1. 自動電子カルテで退院オーダが確定すると、中継の処理が対象の患者を受け取る
  2. 自動中継の処理が、入院時記録・経過記録・検査結果・処方と注射のオーダ・病名を電子カルテの出力から集める
  3. 自動氏名・患者番号・生年月日などを記号に置き換え、重複した記載を除き、検査値と処方を表にする
  4. 自動Azure OpenAI が、記録を区間ごとに要約し、入院までの経過・入院中の経過・退院時の状態・退院後の方針に分けた下書きを、文ごとの根拠の記録番号とともに返す
  5. 自動中継の処理が、根拠の記録番号が実在するか、下書きの中の数値と薬剤名が表とデータにあるかを照合し、検査値と退院時処方の表を差し込む
  6. 人主治医が下書きを根拠の記録と並べて読み、直し、評価と退院後の方針の欄を自分で書いて確定する
  7. 人研修医が書いたものは指導医が確かめて承認する
  8. 人診療情報管理室が、これまでどおり様式と記載の抜けを点検する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 診療情報管理室が、前日の退院患者のうち退院時サマリが未作成のものを一覧にし、主治医に知らせる
  2. 主治医が電子カルテで入院時記録を開き、主訴・現病歴・既往歴を確かめる
  3. 入院初日から退院日まで、経過記録を日付順に読み返し、要点をメモする
  4. 検査結果の画面を開き、主な検査値を入院時・経過中・退院時の時点で書き写す
  5. 処方と注射のオーダを開き、入院中に使った主な薬剤と退院時処方を書き写す
  6. 様式に沿って、入院までの経過、入院中の経過、退院時の状態、退院後の方針を書く
  7. 見直して確定し、研修医が書いたものは指導医が確かめて承認する

(a)読み返しに時間がかかる。 3番目がいちばん長く、退院から日がたつほど長くなります。書いた本人でも、2週間前の経過記録を読まないと、なぜ抗菌薬を変えたのかを思い出せません。

(b)書き写しで誤記が出る。 4番目と5番目は画面を見ながらの書き写しです。単位の付け忘れ、日付の取り違え、退院時処方の用量の写し間違いが、診療情報管理室の点検で毎月見つかります。

(c)書き方が医師ごとに違う。 日ごとの経過を細かく書く医師もいれば、「抗菌薬治療にて軽快」の1行で済ませる医師もいます。どの抗菌薬を何日使ったのかが分からないサマリもあります。

(d)退院後に積み残される。 督促を受けてまとめて書くと、読み返しがさらに浅くなります。

  1. 【自動】 電子カルテで退院オーダが確定すると、中継の処理が対象の患者を受け取る
  2. 【自動】 中継の処理が、入院時記録・経過記録・検査結果・処方と注射のオーダ・病名を電子カルテの出力から集める
  3. 【自動】 氏名・患者番号・生年月日などを記号に置き換え、重複した記載を除き、検査値と処方を表にする
  4. 【自動】 Azure OpenAI が、記録を区間ごとに要約し、入院までの経過・入院中の経過・退院時の状態・退院後の方針に分けた下書きを、文ごとの根拠の記録番号とともに返す
  5. 【自動】 中継の処理が、根拠の記録番号が実在するか、下書きの中の数値と薬剤名が表とデータにあるかを照合し、検査値と退院時処方の表を差し込む
  6. 【人】 主治医が下書きを根拠の記録と並べて読み、直し、評価と退院後の方針の欄を自分で書いて確定する
  7. 【人】 研修医が書いたものは指導医が確かめて承認する
  8. 【人】 診療情報管理室が、これまでどおり様式と記載の抜けを点検する

6番目が、この設計の分かれ目です。 下書きは主治医が直すことを前提に作ります。確定の操作は主治医にしかなく、評価の欄が空のままでは確定できない作りにします。

02今回想定するシステム構成

構成図
【トリガー】電子カルテの退院オーダ確定
   ▼
中継の処理(Azure Functions。院内ネットワークから閉じた経路で接続)
   ├── 電子カルテの出力から、入院時記録・経過記録・検査結果・オーダ・病名を集める
   ├── 氏名・患者番号・生年月日などを記号に置き換える
   ├── 重複した記載を除き、検査値と処方を表にする
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry。構造化出力。プライベート エンドポイント経由)
   │  区間ごとの要約 → 4つの欄に分けた下書き(文ごとに根拠の記録番号)
   ▼
中継の処理 ── 記号を元に戻す/根拠の記録番号・数値・薬剤名を照合/表を差し込む
   ▼
【人】主治医が根拠と並べて直し、評価と方針を書いて確定 → 電子カルテの退院時サマリ
   ▼
【人】指導医の承認(研修医のとき) → 診療情報管理室の点検
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(中継の処理。置き換え、表の作成、照合、受け渡し)Power Automate
診療記録既存の電子カルテ(経過記録、検査結果、オーダ、退院時サマリの様式)―
点検診療情報管理室の未作成一覧―

電子カルテは、新しく足すものではありません。 退院時サマリの確定と保存はこれまでどおり電子カルテで行い、この構成は下書きを作って主治医の画面に返すところまでを受け持ちます。電子カルテに直接書き込むことはしません。

生成AIは、Azure OpenAI の構造化出力で呼びます。 Microsoft Learn では、構造化出力を使うとモデルは推論 API 呼び出しの一部として指定した JSON スキーマの定義に従うとされ、有効な JSON は保証するがスキーマへの厳密な準拠はできなかった以前の JSON モードとは違うと説明されています。Chat Completions API では response_format に、Responses API では text.format にスキーマを書きます。

院内からの接続は、閉じた経路にします。 Microsoft Learn の「Foundry Tools の仮想ネットワークを構成する」では、既定ではリソースは任意のネットワーク上のクライアントからの接続を受け入れるとされ、ネットワーク ルールで特定のサブネットや IP アドレスからの要求だけを許可できます。プライベート エンドポイントを使うと、仮想ネットワーク上のクライアントとリソースの間の通信は Azure Private Link を経由し、パブリック インターネットにさらされないと説明されています。Azure OpenAI はこの仕組みの対象のサービスに挙げられています。

データの扱いは、「データ、プライバシー、セキュリティ」のページで確かめます。 プロンプトと出力は他のお客様には利用できず、OpenAI には提供されず、お客様の許可または指示なしに生成 AI 基盤モデルのトレーニングに使われないとされ、モデルはステートレスで、プロンプトや入力候補はモデルに格納されないとも書かれています。一方で、Responses API や保存済みの補完のような機能を使うと、メッセージ履歴などがリソースに保存されます。 本記事は、こうした保存の機能を使わない呼び方を想定します。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

電子カルテで退院オーダが確定したときに動きます。 退院の前日か当日に確定することが多く、その時点で入院中の記録はほぼそろっています。退院後に診療情報管理室の一覧を見てから動かすのでは、積み残しの始まりが変わりません。

退院当日の夕方に、もう一度だけ作り直します。 退院日の朝の採血や、退院時の診察の記録は、退院オーダの確定のあとに入ることがあるからです。作り直したときは前の下書きを残し、主治医がどちらを開いても最新のものが上に出るようにします。

主治医が画面の「下書きを作り直す」を押したときにも動きます。 経過記録を書き足したあとや、転科で前の科の記録を加えたいときです。作り直しの回数と、確定に使った下書きを記録します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
入院時記録主訴、現病歴、既往歴、入院時の身体所見と方針電子カルテ
経過記録医師の日ごとの記録(SOAP 形式など)、手術・処置の記録、他科への依頼と回答電子カルテ
検査結果検体検査の項目・値・単位・基準値・採取日時。画像検査は所見の文章電子カルテ
処方・注射のオーダ入院中の薬剤と期間、退院時処方(薬剤・用量・用法・日数)電子カルテ
病名登録された病名と、主病名の区別電子カルテ
様式の定義退院時サマリの欄(入院までの経過、入院中の経過、退院時の状態、退院後の方針など)院内の様式

質を決めるのは、経過記録です。 治療を変えた日の記録に「なぜ変えたか」が1行あるかどうかで、下書きの入院中の経過の欄が大きく変わります。記録に理由が無ければ、下書きにも理由は出ません。 そこを補わせない設計にしているからです。

看護記録は、最初は入れません。 医師の記録と同じ出来事を別の言葉で書いているため、入れると同じ出来事が二重に出ます。 退院時の状態だけを看護記録から取る運用は、段階を踏んで試します。

Step3

データの取得方法を決める

電子カルテから、中継の処理(Azure Functions)が対象の患者の記録を受け取ります。電子カルテに外部から記録を出力する口がどの形で用意されているかは、ベンダーと製品の版によって違います。 CSV の定期出力、データ連携用のデータベース、標準の形式での出力など、いずれかの口をベンダーと個別に決める必要があります。ここは利用している電子カルテによって変わる部分です。

取るものどこから何に使うか
入院時記録と経過記録電子カルテの記録の出力要約の材料。記録ごとの記録番号を付けたまま渡す
検体検査の値検査結果の出力表にして差し込む。AIには項目名と行番号だけを渡す
処方・注射のオーダオーダの出力入院中の主な薬剤の期間の表と、退院時処方の表
病名病名の出力下書きの病名欄にそのまま入れる
置き換えの表中継の処理の中で作る記号を元に戻す

経過記録は、記録番号を付けたまま渡します。 「R-0153(入院5日目 医師記録)」のように、記録ごとに番号と日付と書いた職種を先頭に付けます。下書きの根拠として返ってくる番号を、主治医の画面でその記録に結び付けるための鍵です。

検査値は、値そのものを生成AIに渡しません。 「L-12:CRP(入院3日目)」のように項目名と行番号だけを渡し、基準値の範囲外かどうかの印は中継の処理が付けて渡します。 経過を書くのに要るのは「高かった値が下がった」という向きで、数値そのものは表が受け持ちます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 固有の情報の置き換え … 氏名、患者番号、生年月日、住所、電話番号、家族の氏名を、「患者」「妻」「長男」のような記号に置き換えます。紹介元・紹介先の医療機関名は「紹介元医療機関」のように置き換えます
  2. 重複した記載の除去 … 前日の記録をそのまま写した記載(コピー&ペースト)を、文の単位で比べて除きます。除いたことは印で残します
  3. 検査値の表の作成 … 主な項目について、入院時・経過中の最大または最小・退院時の値を表にし、基準値の範囲外に印を付けます
  4. 処方の表の作成 … 入院中の薬剤を開始日と終了日で並べ、退院時処方は薬剤・用量・用法・日数をオーダのまま表にします
  5. 区間への分割 … 経過記録を入院からの日数で区間(おおむね3〜4日ごと)に分け、区間ごとに要約させてから全体をまとめさせます
  6. 日付の正規化 … 「昨日」「術後2日目」のような書き方を、入院日を基準にした年月日に直し、直したことを印で残します

2番目を軽く見ないでください。 経過記録には前日の記載を写して書き足す書き方が多く、そのまま渡すと同じ所見が日ごとに繰り返され、下書きでは「毎日発熱していた」かのように読めてしまいます。 除いた記載は消さずに残し、主治医が根拠をたどるときには元の記録が見えるようにします。

5番目は、長い入院のための処理です。 数百件の記録を一度に渡すと、後半の記録が要約から抜けやすくなります。区間ごとの要約を先に作り、それを材料に全体の下書きを作る2段階にすると、どの区間の要約にどの記録を使ったかも追えます。

Step5

AIに処理させる

欄させること
入院までの経過入院時記録の主訴と現病歴を、時系列の短い文章にまとめる
入院中の経過経過記録を問題ごと(例:肺炎、心不全、血糖の管理)に分け、行った検査・治療・その変更と、記録に書かれた変更の理由を時系列でまとめる
検査所見の参照経過の文の中で、根拠にした検査の行番号(L-xx)を示す。値は書かない
退院時の状態退院前日と当日の記録に書かれた状態を、記録の言葉に沿ってまとめる
退院後の方針の材料記録に書かれた外来の予定、続ける薬、紹介先への依頼を拾う
書かれていない事項様式の欄のうち、記録から材料が見つからなかったものを挙げる
させないこと理由
病名の付与・変更病名は電子カルテに登録されたものを使う。診断は主治医の判断
治療の評価(奏効した、予後良好など)評価は主治医の欄。AIの評価が院外の医師への情報になる
数値と薬剤の用量の記入表をデータから差し込む。書き写しの誤記を生まない
記録に無い理由の補完「おそらく副作用のため変更」のような推測が、事実として残る
退院後の方針の決定記録に書かれた予定を拾うまで。方針は主治医が書く

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 経過記録に「抗菌薬をAからBへ変更」とだけあると、AIは「効果が不十分なため」と理由を足したくなります。理由が記録に無ければ「変更の理由は記録に記載なし」とさせ、主治医が直すときに埋めます。 実際の理由が薬剤の供給や副作用だった場合、足された一文は誤った臨床情報になります。

問題ごとに分けるのは、外来の担当医の読み方に合わせるためです。 日付順の経過は書いた側には自然ですが、読む側が知りたいのは「肺炎はどう治療され、どうなったか」です。 問題の立て方は、記録の中の見出しや病名に沿わせ、AIが新しい問題名を作らないようにします。

Step6

指示内容を固定する

区間ごとの要約:

あなたは病院で、主治医の退院時サマリづくりを手伝う担当です。
渡された経過記録の区間だけを根拠にしてください。推測で埋めないでください。

【書くこと】
- 区間の中で起きた出来事を、問題ごとに時系列で短く書く
- 各文に、根拠にした記録番号(R-xxxx)を1つ以上付ける
- 検査に触れるときは行番号(L-xx)と、上がった・下がった・範囲内に戻った
  などの向きだけを書く。数値を書かない
- 治療を変えた記録があれば、変更の内容と、記録に書かれた理由を書く。
  理由が書かれていなければ「理由は記録に記載なし」と書く

【厳守事項】
- 記録に無いことを補わないでください。
- 病名を新しく付けたり、言い換えたりしないでください。
- 治療の評価(奏効、改善傾向、予後など)を自分の言葉で書かないでください。
  記録に書かれた評価は、その記録番号を付けて写してください。
- 薬剤の用量・回数・数値を書かないでください。
- 記号(患者、妻、紹介元医療機関など)は記号のまま使ってください。

【区間】入院{start_day}日目〜{end_day}日目
【経過記録】{notes}
【検査の項目と行番号(範囲外の印付き)】{lab_index}
【登録された病名】{diagnoses}

全体の下書き:

あなたは同じ担当です。区間ごとの要約と入院時記録だけを根拠に、
退院時サマリの下書きを作ってください。

【欄】
1. course_before_admission:入院までの経過(入院時記録から)
2. hospital_course:入院中の経過。問題ごとに分け、時系列で書く
3. status_at_discharge:退院前日と当日の記録に書かれた状態
4. plan_candidates:記録に書かれた外来の予定・続ける治療・紹介先への依頼
5. not_documented:様式の欄のうち、記録に材料が無かったもの

【厳守事項】
- すべての文に、区間の要約から引き継いだ記録番号を付けてください。
  記録番号の無い文を書かないでください。
- assessment は必ず空の文字列にしてください。評価は主治医が書きます。
- 問題の名前は、区間の要約に出てきた名前だけを使ってください。
- 数値・用量を書かないでください。検査は行番号で示してください。

「assessment は必ず空に」を書かないと、最後に「経過良好にて退院となった」と添えてきます。 サマリでよく見る締めの一文ですが、主治医がそのまま確定すると、主治医が評価していない言葉が院外の医師に渡ります。 指示で禁じたうえで、評価の欄に文が入っていたら中継の処理で消し、主治医の画面に「評価は主治医が記入」と表示します。

区間の要約と全体の下書きを分けるのは、根拠をたどれるようにするためです。 全体の下書きの記録番号は、区間の要約から引き継いだものしか使わせません。区間の要約に無い番号が全体の下書きに出たら、それは作られた番号です。

Step7

出力形式を固定する

区間ごとの要約と全体の下書きは、どちらも構造化出力で受け取ります。全体の下書きは次の形です。

{
  "encounter": "入院-2026-1234",
  "course_before_admission": [ { "text": "", "sources": ["R-0001"] } ],
  "hospital_course": [
    { "problem": "",
      "events": [ { "day": 3, "text": "", "sources": ["R-0153"], "lab_refs": ["L-12"] } ] }
  ],
  "status_at_discharge": [ { "text": "", "sources": [""] } ],
  "plan_candidates": [ { "kind": "外来予定 | 継続治療 | 紹介先への依頼", "text": "", "sources": [""] } ],
  "assessment": "",
  "not_documented": [""]
}

1つ目の理由は、文ごとに sources を必ず持たせられることです。 Microsoft Learn では、構造化出力ではすべてのフィールドを必須にする必要があり、省略可能な項目は null との共用体型で表すとされています。sources を必須の配列にしておけば、根拠の欄が無い文は返ってきません。 空の配列で返ってきた文は、中継の処理で印を付けます。

2つ目は、assessment を空の文字列として必ず返させられることです。 欄が無いのか、空なのかを区別でき、中身が入っていたら消して表示を出す検査が書けます。

3つ目は、スキーマの制限を先に知っておけることです。 オブジェクトには常に additionalProperties: false を設定し、スキーマには最大100個のオブジェクト プロパティ、最大5レベルの入れ子までです。文字列の pattern や format、配列の minItems などはサポートされていません。記録番号の形や、配列が空でないことはスキーマで縛れないので、中継の処理で検査します。 kind のように値の決まった項目は列挙型で縛れます。

項目中継の処理での検査
sources の記録番号実在するか。その区間の要約が使った番号か
text の中の数字日付と日数以外の数字があれば印を付ける(数値は書かせていない)
text の中の薬剤名入院中のオーダにある薬剤か
lab_refs検査の表の行番号として実在するか
assessment空でなければ消して、主治医の画面に表示

検査の結果は、主治医の画面で下書きの文の横に出します。 印の付いた文から先に読めば、確かめる場所が絞られます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
電子カルテ(退院オーダ)ベンダーと決めた通知または定期の照会(個別に作る)対象の患者を受け取る
電子カルテ(記録の出力)ベンダーと決めた出力の口(個別に作る)記録・検査結果・オーダ・病名を受け取る
Azure Functions中継の処理置き換え、表の作成、分割、照合、受け渡し
Azure OpenAIChat Completions API(構造化出力)、プライベート エンドポイント経由区間ごとの要約と全体の下書き
主治医の画面電子カルテの文書作成画面への貼り付け、または中継の処理の確認画面下書きと根拠の並べた表示

Azure OpenAI のデプロイの種類は、処理の場所で選びます。 Microsoft Learn では、プロンプトと応答はお客様が指定した geography の中で処理される一方、「グローバル」のデプロイでは関連するモデルがデプロイされている任意の地域で、「DataZone」ではデータ ゾーン内の任意の地域で処理されうるとされています。患者の診療の記録を扱うので、処理の場所が geography の中に収まる種類を選びます。

電子カルテへの書き込みは、主治医の操作でだけ行います。 最初は、確認画面で直した下書きを主治医が様式に貼り付ける運用にします。

Step9

人が確認する

  1. 印の付いた文を先に見る … 根拠の無い文、数字の入った文、オーダに無い薬剤名の入った文を、根拠の記録と並べて確かめます
  2. 問題の分け方を確かめる … 入院中の経過の欄が、主治医の考える問題の立て方と合っているかを見ます。合わなければ並べ替えます
  3. 「理由は記録に記載なし」を埋める … 治療を変えた理由を書き足します。記録にも書いておくべきだった理由は、経過記録にも追記します
  4. 評価と退院後の方針を書く … assessment と方針の欄は主治医が書きます。plan_candidates は材料として使います
  5. 検査値と退院時処方の表を見る … 表はデータから入っていますが、退院当日に変わった処方が反映されているかを確かめます
  6. 確定する … 研修医が書いたものは、これまでどおり指導医が承認します

1件12分を目安にします。 下書きを根拠と並べて直し、評価と方針を書き、表を確かめる時間です。確定までの時間が極端に短いものは、診療情報管理室が抜き取って読みます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
経過記録がほとんど無い(短期入院、記録の入力漏れ)下書きを作らず、「経過記録が少ないため下書きなし」と主治医の画面に出す
転科があり、主治医が途中で替わった科ごとに区間を分け、欄の中で科の替わり目を明示する。両方の主治医に通知する
置き換えのあとに固有名詞らしい語が残る送らずに中継の処理で止め、置き換えの表を足して作り直す
根拠の記録番号が実在しないその文を消して印を残し、全体の下書きを1回だけ作り直す
assessment に文が入って返る消して「評価は主治医が記入」と表示
記録が長く、区間を分けても入りきらない区間を細かくして作り直す。それでも入らなければ、手術前後など主治医が選んだ区間だけで作る
死亡退院対象外。これまでどおり主治医が書く
Azure OpenAI の呼び出しに失敗した主治医の画面に「下書きなし」と出し、これまでどおり手で書けるようにする。退院当日の作り直しで再度試す

上の2行が、運用の初めにいちばん多く出ます。 どちらも下書きの出来の問題ではなく、記録の書き方と診療の体制の問題です。 下書きを作らなかった件数を科ごとに数えると、記録の入力の習慣が見えてきます。

Step11

記録を残す

  • 退院ごとの、下書きを作った日時と回数、確定に使った下書き
  • 生成AIに渡した記録の範囲(記録番号の一覧)と、返ってきたJSON(置き換えたあとのもの)
  • 主治医が直した文と、直す前と後の文
  • 照合で付けた印の件数と種類(根拠なし、数字の混入、オーダに無い薬剤名、評価の混入)
  • 退院から確定までの日数と、診療情報管理室の点検で指摘された件数

3つ目は、下書きの質を測る材料になります。 「理由は記録に記載なし」を主治医が埋めた件数が多い科は、経過記録に変更の理由を書く習慣を作るほうが効きます。置き換えの表そのものは、ログに残しません。 置き換えたあとの文と電子カルテの記録を突き合わせれば元に戻せるので、ログが患者を特定できる情報の置き場所にならないようにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:手で置き換えた記録を生成AIの画面に貼り、下書きを作らせる / 1件ごとの下書き
半自動化:上記+中継の処理で置き換え・分割・Azure OpenAI の呼び出しを行い、主治医が記録の出力を渡すと下書きが返る / 置き換えと下書きの作成
本格構成:上記+退院オーダを起点にした自動の起動、検査値と処方の表の差し込み、根拠・数値・薬剤名の照合、主治医の確認画面 / 退院オーダの確定から、根拠付きの下書きと表が主治医の画面に出るまで

最小構成は、確かめるための段階です。 半自動化で、下書きの作成までは自動になります。 ただし検査値と処方の表は主治医が自分で書き写すままで、照合も無いため、根拠の無い文を見分けるのに主治医が記録を開き直すことになります。 書き写しの誤記と読み返しの時間が両方減るのは本格構成で、本記事の想定は本格構成です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
60 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  600件 × 30分 ÷ 60 = 300 時間/月
導入後 600件 × 12分 ÷ 60 = 120 時間/月
月間削減時間
180h
削減率
60%
年間削減時間
2,160h
年間金額換算(時間単価6,000円)
1,296万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 一般病床を持つ200〜500床規模の急性期病院で、月に数百件の退院があり、退院時サマリの作成が退院後に積み残されている場合。経過記録が電子カルテに入力されていて、検査結果と処方・注射のオーダを電子カルテから出力できる場合。診療情報管理室が退院時サマリの未作成を毎週追いかけていて、督促の手間が大きい場合。院内で Microsoft Azure の利用が医療情報の取扱いの規程に沿って認められている場合。
向いていない
  1. 退院が月に数十件で、主治医がその日のうちにサマリを書き終えられている病院。経過記録が紙のカルテで、文字として取り出す手段がない場合。電子カルテから経過記録・検査結果・オーダを出力する手段がなく、ベンダーとの個別の連携も見込めない場合。医療情報を外部のクラウドの生成AIで扱うことについて、院内の医療情報の安全管理の責任者と確認ができていない場合。なお、診断、治療の評価、退院後の方針の判断は主治医に残ります。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の退院から、在院日数の短いもの・平均的なもの・長いものを合わせて20件選ぶ
  2. その20件の経過記録・検査結果の一覧・処方の一覧を電子カルテから出し、氏名・患者番号・生年月日を手で「患者」などに置き換える
  3. 院内で利用が認められた生成AIの画面に置き換えた記録を貼り、第7章の指示で下書きを作らせる
  4. 下書きと、当時確定した退院時サマリを、書いた主治医と診療情報管理室の担当者が見比べる
  5. 「すべての文に根拠の記録番号があるか」「記録に無い理由や評価が書かれていないか」「数値を書いていないか」を1件ずつ確かめる

20件は必ず、サマリを書いた主治医と一緒に見てください。

出てきた内容判断
当時のサマリと同じ経過が、根拠付きで問題ごとに出る電子カルテの出力と中継の処理の連携に進む
記録に無い理由や評価が書かれている指示の書き方と照合で直る。構成は有効
経過記録に治療の変更の理由が書かれておらず、下書きが「記載なし」だらけになる記録の書き方が先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、読み返しが長かった理由が1つ分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
下書きに評価の一文が入る指示で禁じ、assessment を中継の処理で検査して消す
記録に無い変更の理由が補われる「理由は記録に記載なし」とさせ、根拠の記録番号を照合する
検査値や用量を写し間違える値はAIに渡さず、データから表を差し込む
前日の記載の写しで同じ所見が繰り返される重複した記載を文の単位で除き、除いた印を残す
長い入院の後半が要約から抜ける区間ごとに要約してから全体をまとめる
作られた記録番号が出る全体の下書きは区間の要約にある番号だけを使わせ、実在しない番号を照合で落とす

| 氏名の置き換えが漏れる | 置き換えのあとに固有名詞らしい語を機械で探し、残れば送らない |

| グローバルのデプロイを選ぶ | 処理が任意の地域で行われうる。処理の場所が geography に収まる種類を選ぶ |

| 公開の経路のまま接続する | 既定では任意のネットワークから接続を受け入れる。ネットワーク ルールとプライベート エンドポイントで閉じる |

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 サマリに残すのは記録に書かれたことだけ、評価と数値は主治医とデータが受け持つ、という線を仕組みで守れるかどうかで、主治医に使われるかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 患者の病名、症状、検査の結果、使った薬、手術と処置、家族の状況、そして医師が書いた診療の記録です。要配慮個人情報を含み、病院が保有する情報の中でも特に慎重に扱う情報です。

  1. 医療情報の安全管理のガイドラインに沿って設計する … 厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は令和8年6月に第7.0版へ見直され、概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編・保守委託機関編で構成されています。厚生労働省のページは、医療機関等に対して医療情報システムの取扱いにおいて本ガイドラインの遵守をお願いしています。 生成AIへの接続も医療情報システムの一部として、院内の規程と責任者の確認のもとに置きます
  2. 通信の経路を閉じる … 第6章のとおり、ネットワーク ルールで接続元を絞り、プライベート エンドポイントで Private Link を経由させます。既定のままでは任意のネットワークからの接続を受け入れることを、構築の最初に確かめます
  3. 機械学習に利用されないこと、保存されないことを確かめる … 第6章のとおりです。メッセージ履歴を保存する機能は使いません
  4. 不正使用の監視の扱いを確かめる … Microsoft Learn では、不正使用の兆候が検出されたときにプロンプトと入力候補のサンプルがレビューのために選ばれることがあるとされ、変更された不正使用の監視の承認を受けた場合は、そのためのデータの保存と人によるレビューが行われないとされています。承認を受けたかは、リソースの JSON ビューで ContentLogging が false になっているかで確かめられます
  5. 渡す情報を必要最小限にする … 置き換えで氏名・患者番号・生年月日を外し、検査値は項目名と行番号だけを渡します
  6. 判断をAIに寄せない … この構成が出すのは記録の要約までです。診断、治療の評価、退院後の方針は主治医が決め、確定の操作も主治医が行います

誤りが起きた場合のリスクは、記録に無いことや評価が院外の医師への情報になることと、患者の情報が想定外の経路や場所で扱われることの2つです。 前者は根拠の照合と評価の欄の検査で、後者は置き換え・閉じた経路・デプロイの種類の選び方で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:経過記録の書き方を1つだけそろえる

診療科の医師に、治療や検査の方針を変えた日の記録に、変えた理由を1行書くことをお願いします。

2週目:20件で試す

先月の退院20件の記録を手で置き換え、下書きを作らせて、当時のサマリと見比べます。記録に無い理由や評価が書かれていないか、根拠の記録番号が付いているかを最優先で見ます。

3週目:院内の確認をする

医療情報の安全管理の責任者と情報システムの担当者に、置き換える項目、渡す範囲、通信の経路、デプロイの種類、不正使用の監視の扱いを説明し、確認を受けます。あわせて、電子カルテのベンダーに記録の出力の口を相談します。

4週目:中継の処理を作る

置き換え、区間への分割、Azure OpenAI の構造化出力の呼び出し、根拠の照合を作り、主治医が記録の出力を渡すと下書きが返る形で、協力してくれる1つの診療科から使い始めます。

2か月目: 検査値と処方の表の差し込みと、数値・薬剤名の照合を足します。3か月目以降: 退院オーダを起点にした自動の起動と主治医の確認画面を足し、1件30分が何分になったかを実測します。退院から確定までの日数が縮み、診療情報管理室の督促の一覧が短くなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
構造化出力で、モデルが指定した JSON スキーマの定義に従うこと。以前の JSON モードとの違い。Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書くこと。すべてのフィールドを必須にし、省略可能な項目は null との共用体型で表すこと。additionalProperties: false が必要なこと。最大100個のオブジェクト プロパティ、最大5レベルの入れ子であること。文字列の pattern・format、配列の minItems などがサポートされないこと。列挙型がサポートされることMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-06
プロンプトと出力が他のお客様に利用できず、OpenAI に提供されず、許可または指示なしに基盤モデルのトレーニングに使われないこと。モデルがステートレスであること。Responses API や保存済みの補完などでメッセージ履歴が保存されること。指定した geography の中で処理され、グローバル・DataZone では処理の場所が広がること。不正使用の監視でサンプルがレビューに選ばれることがあり、変更された不正使用の監視の承認で保存と人のレビューが行われないこと。ContentLogging が false で確かめられることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-06
既定では任意のネットワーク上のクライアントからの接続を受け入れること。ネットワーク ルールで特定のサブネットや IP アドレスからの要求に制限できること。プライベート エンドポイントでは仮想ネットワーク上のクライアントとリソースの間の通信が Private Link を経由し、パブリック インターネットにさらされないこと。Azure OpenAI が対象のサービスに含まれることMicrosoft Learn: Foundry Tools の仮想ネットワークを構成する2026-10-06
医療情報システムの安全管理に関するガイドラインが令和8年6月に第7.0版へ見直されたこと。概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編・保守委託機関編で構成されること。医療機関等に本ガイドラインの遵守をお願いしていること厚生労働省: 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版2026-10-06
電子カルテ情報共有サービスが全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有する仕組みであること。診療情報提供書を電子で共有するサービスで、退院時サマリーは診療情報提供書に添付するとされていること厚生労働省: 電子カルテ情報共有サービス2026-10-06

診断、治療の評価、退院後の方針は、主治医が判断してください。 本記事は公開仕様で確認できた範囲だけを扱っています。電子カルテからの記録の出力の方法は、利用している電子カルテのベンダーに確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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