保険金の支払・一部支払・不支払の査定結果を、約款の該当箇所と査定の記録から契約者に分かる言葉で説明する通知文の下書きにし、査定担当の確認に回す
査定が終わった給付金の請求について、査定の記録と約款の該当条項から、契約者に送る通知文の下書きを作ります。結論、理由、不服の申出先の3つを分かる言葉で書き、査定担当が確かめてから送ります。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/ChatGPT/Claude
- 連携・自動化
- Power Automate/Python
- 対象業界
- 保険/金融
- 対象部門
- カスタマーサポート
- 対象業務
- 問い合わせ対応/書類作成
- 主な課題
- 属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 生成
- 主な効果
- 品質標準化/対応スピード向上/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 査定が終わった請求の一覧から、通知文が要るものを選ぶ
- 支払査定システムで、給付の種類ごとの判定と認定した事実を読む
- 契約管理システムで契約日と商品を確かめ、約款の管理データベースから該当する版の条項を開く
- ひな形を開き、結論・理由・不服の申出先を書く。約款の言葉を契約者向けに言い換える
- 金額・日数・日付をシステムの画面から書き写す
- 上席が読み、言い回しと記載の誤りを直す
- 発送する
- 人査定担当が支払査定システムで査定を確定し、「通知文作成」の状態にする
- 自動査定の記録(判定・日数・金額・適用条項・認定した事実・根拠書類)を取り出す
- 自動契約日と商品から約款の版を決め、適用条項の原文を約款の管理データベースから取り出す
- 自動氏名・住所・証券番号を記号に置き換えてから、ChatGPT(OpenAI API)に渡す
- 自動結論・理由・不服の申出先の3部構成の下書きを作り、1文ごとに根拠(記録の項目か条項番号)を付ける
- 自動金額・日数・日付・条項番号を査定の記録と照らし、必須の3部がそろっているか、使わない表現が無いかを規則で調べる
- 自動記号を元の氏名・住所・証券番号に戻し、ひな形に流し込む
- 人査定担当が下書きと照合の結果を見て直す
- 人不支払の通知は、上席がもう一度読む
- 人発送する
各工程の詳しい説明を読む
- 査定が終わった請求の一覧から、通知文が要るものを選ぶ
- 支払査定システムで、給付の種類ごとの判定と認定した事実を読む
- 契約管理システムで契約日と商品を確かめ、約款の管理データベースから該当する版の条項を開く
- ひな形を開き、結論・理由・不服の申出先を書く。約款の言葉を契約者向けに言い換える
- 金額・日数・日付をシステムの画面から書き写す
- 上席が読み、言い回しと記載の誤りを直す
- 発送する
(a)理由の書き方が担当者ごとに違う。 同じ「責任開始前の発病」による不支払でも、約款の条文をそのまま貼る人、短く言い換える人、経緯から丁寧に説明する人がいます。契約者から見ると、同じ会社の同じ理由の通知が、受け取る人によって違って見えます。
(b)約款の言葉のままでは伝わらない。 「責任開始期前に発病した疾病」「所定の手術」といった言葉は、査定担当には当たり前でも契約者には分かりません。分からない通知を受け取った契約者は、電話で問い合わせます。 その電話に答えるのも、同じ査定担当です。
(c)書き写しで誤りが入る。 支払う日数、対象外の日数、金額、入院の開始日と終了日を画面から写します。通知文の金額が明細と1日分ずれているといった誤りは、上席の確認でも見落とされることがあります。
(d)一部支払の通知がいちばん重い。 全部を支払わない通知より、何が支払われて何が支払われないのかを分けて説明する通知のほうが長く、書き分けに時間がかかります。月240件のうち、半数近くがこの型です。
- 【人】 査定担当が支払査定システムで査定を確定し、「通知文作成」の状態にする
- 【自動】 査定の記録(判定・日数・金額・適用条項・認定した事実・根拠書類)を取り出す
- 【自動】 契約日と商品から約款の版を決め、適用条項の原文を約款の管理データベースから取り出す
- 【自動】 氏名・住所・証券番号を記号に置き換えてから、ChatGPT(OpenAI API)に渡す
- 【自動】 結論・理由・不服の申出先の3部構成の下書きを作り、1文ごとに根拠(記録の項目か条項番号)を付ける
- 【自動】 金額・日数・日付・条項番号を査定の記録と照らし、必須の3部がそろっているか、使わない表現が無いかを規則で調べる
- 【自動】 記号を元の氏名・住所・証券番号に戻し、ひな形に流し込む
- 【人】 査定担当が下書きと照合の結果を見て直す
- 【人】 不支払の通知は、上席がもう一度読む
- 【人】 発送する
4番目と7番目で、個人を特定できる情報を外に出しません。 通知文の中身を作るのに、契約者の氏名も住所も要りません。要るのは、判定と事実と条項です。
6番目を規則で行うのが、この設計の分かれ目です。 金額と日数は、査定の記録に正しい値があります。AIに「合っていますか」と聞くのではなく、文字列から数字を拾って記録と突き合わせます。 一致しない数字が1つでもあれば、その下書きは査定担当に回す前に作り直します。
02今回想定するシステム構成
支払査定システム ── 「通知文作成」の状態 │ 判定・日数・金額・適用条項・認定した事実・根拠書類 ▼ 契約管理システム ── 契約日・商品 → 約款の版を決める 約款の管理データベース ── 適用条項の原文 │ ▼ 氏名・住所・証券番号を記号に置き換え ChatGPT(OpenAI API) │ ① 結論(給付の種類ごとに、支払う・支払わない) │ ② 理由(条項の引用+言い換え+認定した事実) │ ③ 不服がある場合の申出先 │ 1文ごとに根拠の項目・条項番号 ▼ 規則による照合(数字・日付・条項番号・3部の有無・使わない表現) ▼ 記号を戻してひな形へ 【査定担当が確認】→(不支払は上席も確認)→ 発送
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | ChatGPT(OpenAI API。Responses API と Structured Outputs) | Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude |
| 連携 | Python(支払査定システムと約款データベースからの取り出し、記号への置き換え、照合) | Power Automate |
| 保管 | 通知文の管理フォルダ(下書き・確定版・照合の結果) | 文書管理システム |
支払査定システムと約款の管理データベースは、新しく足すものではありません。 この構成はどちらも読むだけで、査定の記録を書き換えることはしません。 書き込むのは、通知文の下書きと照合の結果を置く場所だけです。
生成には OpenAI API の Responses API を使います。 指示は開発者のメッセージとして渡し、開発者のメッセージはユーザーのメッセージより優先されるとされています。返させる形は Structured Outputs の JSON スキーマで固定します。指定した JSON スキーマに沿った応答が生成され、必須の項目の抜けや決めていない値の混入を防ぐとされています。
モデルは、本番ではスナップショットを固定します。 OpenAI のドキュメントは、本番のアプリケーションでは特定のモデルのスナップショットに固定して振る舞いを安定させることを勧めています。通知文は書きぶりが揃っていることに価値があるので、モデルの更新は検証してから切り替えます。
社内の規程で外部の API に出せない場合は、Azure OpenAI(Microsoft Foundry)に置き換えます。 指示文、JSON スキーマ、照合の規則はそのまま使えます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
支払査定システムで、査定担当が請求を「通知文作成」の状態にしたことを起点にします。 1時間ごとに状態を見て、該当する請求を順に処理します。夜にまとめて処理することはしません。 不支払の通知は、迅速性にも留意して行う必要があるとされていて、確定した査定が翌日まで寝ていることを避けます。
全額を支払う請求のうち、定型の明細書で済むものは対象にしません。 対象は、一部支払、不支払、そして査定担当が「説明を添える」に印を付けた支払の3つです。印を付ける判断は査定担当に残します。 支払でも、契約者が想定していた日数より少ない、といった請求には説明が要ります。
処理が終わった請求は「下書き確認待ち」に変え、照合で不一致が出た請求は「作り直し」のまま残します。 状態ごとの件数が、そのまま滞留の数になります。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 査定の記録 | 給付の種類ごとの判定(支払/一部支払/不支払)、支払う日数・回数と金額、支払わない日数・回数、適用した約款の条項番号、認定した事実関係、根拠にした書類の名称 | 支払査定システム |
| 契約の情報 | 商品、契約日、責任開始日、特約の有無 | 契約管理システム |
| 約款の条項 | 適用条項の原文と、条項の中で使われている用語の定義の条文 | 約款の管理データベース(契約時の版) |
| 説明の手引 | 結論・理由・不服の申出先の3部の書き方、使わない表現、用語の言い換えの一覧 | 支払部門で作る手引 |
| 申出先の情報 | 不支払に関する苦情の窓口、社外の紛争解決の窓口の案内文 | 支払部門で決めた定型文 |
質を決めるのは、査定の記録の「認定した事実関係」の欄です。 ここが「告知と相違あり」の一言だと、通知文の理由も一言になります。「◯年◯月に◯◯の治療を受けていたことが、◯◯病院の診断書で確認された」の粒度で書かれていれば、通知文はそれを並べ直すだけで済みます。 この構成を入れる前に、記録の書き方をそろえることが最初の仕事です。
一部支払の請求なら、渡す記録は次のような形になります。
| 項目 | 値の例 |
|---|---|
| 給付の種類 | 入院給付金/手術給付金 |
| 判定 | 入院給付金:一部支払(12日のうち8日)/手術給付金:不支払 |
| 適用した条項 | 入院給付金:第◯条第◯項/手術給付金:第◯条、別表◯ |
| 認定した事実関係 | 入院期間◯月◯日〜◯月◯日(入院証明書)。うち◯月◯日〜◯月◯日は◯◯の治療を目的とする入院と確認(入院証明書)。実施された処置は◯◯(手術等の証明書)で、別表◯の手術に当たらないと判断 |
| 根拠にした書類 | 入院証明書、手術等の証明書 |
判定と条項が給付の種類ごとに分かれていることが前提です。 1つの欄に「一部支払」とだけあると、どの給付のどの日数なのかを ChatGPT が組み立てることになります。
用語の言い換えの一覧は、支払部門で作ります。 「責任開始期」「所定の手術」「継続した入院」などの約款の言葉ごとに、契約者向けの言い方を1つに決めておきます。一覧が無ければ、ChatGPT は毎回違う言い換えをします。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 査定の記録 | 支払査定システムの照会 | 結論と理由の材料、照合の正解 |
| 契約日と商品 | 契約管理システムの照会 | 約款の版の特定 |
| 適用条項の原文 | 約款の管理データベースを、版と条項番号で引く | 理由の中の引用 |
| 用語の定義の条文 | 同じ版の定義の条項 | 言い換えの根拠 |
| 説明の手引と言い換えの一覧 | 支払部門の共有の場所 | 書き方と用語の統一 |
約款の版は、契約日と商品から機械的に決めます。 査定担当の手入力にはしません。版の取り違えは、通知文の誤りの中で最も見つけにくいものです。 条項番号が同じでも、版によって文言が違うことがあるからです。
条項の原文は、適用した条項と、その条項が参照している定義の条項までを渡します。 「所定の手術」は別表を参照していることが多く、本文だけを渡すと、別表の範囲を推測して説明します。
AIへ渡す前に整形する
- 対象の判定 … 判定が一部支払か不支払か、または「説明を添える」の印があるかを見ます
- 記録の欠けの確認 … 適用条項の番号と認定した事実関係が空なら、処理せず査定担当に戻します
- 約款の版の特定 … 契約日と商品から版を決め、条項番号でその版の原文が引けるかを確かめます
- 個人を特定できる情報の置き換え … 氏名・住所・証券番号・医療機関の担当医名を記号に置き換えます。医療機関名と診断名は理由の説明に要るので残します
- 金額と日数の書式の統一 … 査定の記録の数字を、通知文で使う書式(3桁区切り、日付の書き方)にそろえて渡します
- 対象外の事案の除外 … 告知義務違反による解除、重大事由による解除、詐欺による取消しの事案は、この構成で下書きを作らず担当者が書きます
2番目を軽く見ないでください。 記録が空のまま下書きを作らせると、ChatGPT は判定と条項番号から、ありそうな事実を組み立てます。 事実の欄が空の請求は、通知文を作れる状態ではありません。
6番目は、法的な判断を経る事案だからです。 生命保険協会のガイドラインでも、偶発性が無いと判断するような事案は必要に応じて法務部門・弁護士等の法的判断を踏まえて慎重に行うとされています。こうした事案の通知文を生成に任せる理由はありません。
AIに処理させる
させるのは、査定の記録と条項の原文を、決めた3部構成で契約者向けの文章に直すことです。 3部は、生命保険協会のガイドラインが不支払の場合に説明すべき事項として挙げる、①支払えないこと、②支払えない理由(該当する約款条項・事実関係)、③決定に不服がある場合の対応方法 に合わせています。
| させること | やり方 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 結論 | 給付の種類ごとに、支払う・支払わない、日数と金額を記録から写す | 記録に無い給付の種類は書かない |
| 理由の引用 | 適用条項の原文をそのまま引用する | 原文が渡っていなければ空ける |
| 理由の言い換え | 引用の下に、言い換えの一覧の言葉で説明する | 一覧に無い用語は原文のまま残し、印を付ける |
| 認定した事実 | 記録の事実関係を、日付と書類の名称とともに並べる | 記録に無い事実は書かない |
| 不服の申出先 | 決めた定型文をそのまま入れる | 変えない |
| 根拠の付記 | 1文ごとに、記録の項目名か条項番号を付ける | 付けられない文は「根拠なし」 |
3行目の「原文のまま残し、印を付ける」が大事です。 一覧に無い用語を ChatGPT が自分で言い換えると、言い換えの範囲が約款より広くなったり狭くなったりします。 狭く言い換えれば、契約者は対象外だと思い込み、広く言い換えれば、次の請求で食い違います。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 支払の可否の判断・見直し | 判断は査定担当のもの。下書きで結論を変えない |
| 記録に無い事実・経緯の補足 | 認定していない事実を通知に書くことになる |
| 金額・日数の計算 | 計算は支払査定システムの値を使う |
| 契約者の落ち度を示唆する言い回し | 事実を書けば足りる。評価の言葉は苦情を招く |
| 「今後の請求も対象外」などの将来の約束 | 別の請求の判断を先取りすることになる |
2行目がいちばん起きやすい失敗です。 「責任開始前の発病」と判定と条項があれば、ChatGPT は「加入前から通院されていたため」と経緯を補います。 記録にその通院の事実があれば正しく、無ければ通知に書いてはいけない事実です。
指示内容を固定する
あなたは生命保険会社の給付金の支払部門で、契約者にお送りする
査定結果の通知文の下書きを作る担当です。
支払うかどうかの判断はすでに済んでいます。判断を変えないでください。
下の【査定の記録】と【約款の条項】に書かれていることだけを材料にしてください。
【構成】次の3部で書いてください。
1. 結論 … 給付の種類ごとに、お支払いする・お支払いできないこと、
日数・回数・金額。
2. 理由 … 適用した条項の原文をそのまま引用し、その下に
【用語の言い換え】の言葉で意味を説明し、続けて記録の
「認定した事実関係」を日付と書類の名称とともに書く。
3. 決定にご不服がある場合 … 【申出先の定型文】をそのまま入れる。
【厳守事項】
- 金額・日数・回数・日付は【査定の記録】の値をそのまま写してください。
計算したり、丸めたり、合計を作ったりしないでください。
- 【査定の記録】に無い事実、経緯、医学的な説明を書き足さないでください。
記録が足りないと感じたら、missing_in_record に書いてください。
- 条項の引用は一字一句変えないでください。
- 【用語の言い換え】に無い約款の用語は、自分で言い換えず原文のまま残し、
unexplained_terms に入れてください。
- 契約者の落ち度や責任を示す言い回し、評価の言葉を使わないでください。
事実だけを書いてください。
- 今後の請求の扱いについては書かないでください。
- 1文ごとに、根拠にした記録の項目名か条項番号を sources に入れてください。
- 敬体で、1文を60字程度までにしてください。
【査定の記録】{assessment_record}
【約款の条項(契約時の版)】{clauses}
【用語の言い換え】{glossary}
【申出先の定型文】{appeal_text}
【説明の手引】{style_guide}
「判断を変えないでください」を冒頭に置くのは、条項と事実を読ませると、ChatGPT が判断を検討し始めるからです。 「この事実なら支払の対象になる可能性もあります」と書き添えることがあります。通知文の下書きに、査定への意見は要りません。
「記録が足りないと感じたら書く」場所を用意しているのも同じ理由です。 書く場所が無いと、足りない部分を文章で埋めます。埋めずに申告させれば、査定の記録の書き方を直す材料になります。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。
{
"claim_id": "",
"decision_type": "full | partial | denied | paid_with_note",
"sections": [
{ "part": "conclusion | reason | appeal",
"sentences": [ { "text": "", "sources": ["査定記録:支払日数", "第◯条"] } ] }
],
"quoted_clauses": [ { "clause_no": "", "edition": "", "text": "" } ],
"unexplained_terms": [],
"missing_in_record": []
}
1つ目の理由は、1文ごとの sources で照合ができることです。 照合のスクリプトは、文の中の数字と日付を拾い、sources に書かれた記録の項目の値と突き合わせます。根拠の項目が書かれていない数字、記録と食い違う数字は、その場で不一致です。
2つ目は、quoted_clauses を原文と機械的に比べられることです。 引用の文字列を、約款の管理データベースの同じ版・同じ条項番号の原文と比べ、1文字でも違えば不一致にします。
3つ目は、unexplained_terms と missing_in_record が査定担当への申し送りになることです。 下書きを開く前に、どこを自分で書き足す必要があるかが分かります。
照合の規則は次のとおりです。
| 規則 | 不一致とする条件 | 次にすること |
|---|---|---|
| 数字・日付 | 記録の値と違う、または根拠の項目が無い | 作り直し。2回続けば担当者が書く |
| 引用 | 原文と1文字でも違う | 作り直し |
| 条項番号 | その版に存在しない番号がある | 担当者へ。版の特定を疑う |
| 3部の有無 | 結論・理由・申出先のどれかが無い | 作り直し |
| 使わない表現 | 手引の使わない表現を含む | 該当する文に印を付けて担当者へ |
decision_type は記録から決め、AIには決めさせません。 スキーマの値は記録の判定をそのまま入れて渡し、返ってきた値が渡した値と違えば不一致にします。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 支払査定システム | 照会(読み取り) | 「通知文作成」の請求と査定の記録 |
| 契約管理システム | 照会(読み取り) | 契約日・商品・責任開始日 |
| 約款の管理データベース | 照会(読み取り) | 版と条項番号で原文を引く |
| OpenAI API | Responses API の呼び出し | 下書きを JSON で受け取る |
| 通知文の管理フォルダ | 書き込み | ひな形に流し込んだ下書きと照合の結果 |
支払査定システムには、状態の変更以外は書き込みません。 通知文の下書きが査定の記録を上書きする経路を作らないためです。通知文と記録が食い違ったとき、正しいのは常に記録の側です。
人が確認する
査定担当は、すべての下書きを読みます。 通知文は契約者に直接届き、支払の判断を伝える文書です。低信頼のものだけを見る設計にはしません。
- 照合の結果を先に見る … 不一致が0件か、印の付いた文があるかを確かめます
missing_in_recordとunexplained_termsを見る … 記録の書き足しか、言い換えの一覧への追加が要るかを決めます- 理由の言い換えを読む … 引用した条項より広く・狭く言っていないかを、引用と並べて読みます
- 事実の並びを読む … 認定した事実が、契約者に誤解のない順で並んでいるかを見ます
- 不支払の通知は上席に回す … 上席がもう一度読みます
3番目を省かないでください。 数字と引用は機械で照合できますが、言い換えが条項の意味から外れていないかは、人が読まないと分かりません。 時間をかけるのはここです。
直したら、直した理由を1つ選んで記録します。 選択肢は「言い換えの修正」「事実の並びの修正」「記録の不足」「表現の修正」の4つです。理由の集計が、言い換えの一覧と記録の書き方のどちらを直すべきかを教えてくれます。
目標は1件12分です。 下書きを一から書く時間が無くなり、読む・直す時間が残ります。12分を大きく超える請求が続くなら、記録の書き方か言い換えの一覧に足りないものがあります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 記録の「認定した事実関係」が空 | 下書きを作らず、査定担当に戻す |
| 約款の版が特定できない | 契約管理システムの商品と契約日を担当者が確かめる |
| 照合で数字の不一致が2回続く | 作り直しをやめ、担当者が書く |
| 引用が原文と一致しない | 作り直す。改行や全角半角の違いなら、比べ方を見直す |
| 応答が拒否された・途中で終わった | refusal と応答の状態を見て、担当者に回す |
| 1つの請求に給付の種類が多い | 給付の種類ごとに結論を分けて書かせる。分けきれなければ担当者へ |
| 対象外の事案(解除・取消し)だった | 前処理で外す。外れなかった場合は担当者が書く |
| 契約者から再照会が来た | 送った通知文と記録の版を開いて答える |
3行目で作り直しを打ち切るのは、同じ材料で何度作らせても同じところで誤るからです。 2回続くなら、記録の値の書き方が通知文の書式と合っていない、といった材料の側の問題を疑います。
記録を残す
- 査定の記録の取り出し時点の値と、使った約款の版・条項番号
- 記号に置き換えた後の入力と、返ってきたJSONの全文
- 照合の結果(項目ごとの一致・不一致)
- 査定担当が直した後の通知文と、直した箇所
- 上席の確認の記録(不支払のもの)
- 発送した日付と、発送した通知文の確定版
1つ目で「使った約款の版」を残すのは、再照会と苦情に答えるためです。 ガイドラインでは、不支払に関する苦情の内容は処理結果を含めて記録・保存するとされています。通知文がどの版の条項を根拠にしたかが残っていないと、苦情の対応で当時の説明を再現できません。
4つ目の「直した箇所」は、言い換えの一覧を育てる材料です。 毎月同じ言い換えを直しているなら、それは一覧に載せるべき言い方です。
04実装レベルの3段階
最小構成では、件数がさばけません。 記録と条項を探して貼る時間が、今の書く時間と大きく変わらないからです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が20分程度になります。 書く時間は無くなりますが、数字と引用を人が照らす時間が残ります。本格構成で12分になり、この段階が本記事の想定です。 照合を機械に移すと、査定担当は言い換えと事実の並びを読むことに集中できます。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、missing_in_record に何が多く出るかが分かります。そこから査定の記録の書き方を直してから本格構成に進むほうが、作り直しが減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 240件 × 12分 ÷ 60 = 48 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 医療保険・がん保険などの給付金の請求を月に数千件受け付け、そのうち一部支払や不支払となる数百件について、査定担当が通知文を一から書いている生命保険会社・損害保険会社・共済。査定の記録が項目ごとにシステムに残っていて、適用した約款の条項番号を記録する運用がある場合。通知文の書きぶりが担当者ごとに違い、契約者からの再照会や苦情につながっている場合。
- 請求が月に数十件で、通知文を書く時間そのものが小さい場合。査定の記録が自由記述のメモだけで、結論・適用条項・認定した事実を項目として取り出せない場合(先に査定記録の項目化が必要です)。支払の可否そのものの判断を機械に任せたい場合(この構成は判断を代替しません)。死亡保険金の免責や告知義務違反による解除など、法務部門や弁護士の判断を経る事案の通知文(この構成の対象から外します)。
07最小構成で試す方法
- 先月送った一部支払・不支払の通知文から30件を選ぶ(理由の型が偏らないようにする)
- その30件の査定の記録と、該当する版の条項の原文を用意する
- 氏名・住所・証券番号を記号に置き換える
- 第7章の指示文に記録と条項を貼り、社内で利用が認められた環境で下書きを作らせる
- 実際に送った通知文と並べ、査定担当2名が読み比べる
30件で確かめたいのは、記録に無い事実を書き足さないかどうかです。 文章の上手さは二の次です。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 記録に無い事実が出てこない | システム連携に進む |
| 記録に無い経緯を補っている | 指示の書き方で直る。記録の事実の欄の粒度も見直す |
| 言い換えが担当者ごとの書き方より揃っている | 言い換えの一覧を作れば、さらに揃う |
2行目が出たときは、その請求の記録を見てください。 事実の欄が一言しか無い請求ほど、補われます。AIの問題に見えて、記録の書き方の問題であることが多いのです。
読み比べは、どちらが機械の下書きか伏せて行うと公平です。 査定担当2名に、実際に送った通知文と下書きを並び順を変えて渡し、「契約者に分かりやすいのはどちらか」「理由が条項から外れていないか」の2点だけを付けてもらいます。分かりやすさで下書きが劣るなら、言い換えの一覧を先に作ります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 記録に無い経緯が書き足される | 書き足しを禁じ、missing_in_record に申告させる。事実の欄の粒度をそろえる |
| 約款の版を取り違える | 版は契約日と商品から機械で決める。手入力にしない |
| 別表を参照する条項で範囲を推測する | 定義と別表の条文まで渡す |
| 言い換えが約款より広い・狭い | 言い換えの一覧に無い用語は原文のまま残させる |
| 金額や日数が記録とずれる | 計算させない。照合を規則で行う |
| 下書きが査定に意見を述べる | 「判断を変えない」を冒頭に置き、意見を書く欄を作らない |
| 契約者を責める言い回しが入る | 使わない表現を手引にし、照合で印を付ける |
| 解除・取消しの事案が混ざる | 前処理で外す。法的判断を経る事案は対象にしない |
| モデルの更新で書きぶりが変わる | スナップショットを固定し、更新前に30件で読み比べる |
| 確認が流し読みになる | 言い換えを引用と並べて表示し、読む場所を決める |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、契約者に誤った理由を伝えることにつながります。数字の誤りは照合で止まりますが、理由の誤りは読まないと止まりません。
下の2行は、運用に慣れたころに起きます。 下書きの質が安定すると、確認が短くなります。言い換えを引用と並べて表示する画面にしておけば、短い時間でも読む場所を外しません。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 契約者と被保険者の氏名・住所・証券番号、入院・手術・診断名などの病歴、医療機関名、支払の金額です。病歴は、個人情報保護法で要配慮個人情報とされる情報に当たります。 要配慮個人情報は、本人の病歴など、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないよう取扱いに特に配慮を要するものとされています。
- 外部へ渡す範囲を絞る … 氏名・住所・証券番号・担当医名は記号に置き換え、通知文の中身に要らない情報を渡しません。 診断名と医療機関名は理由の説明に要るため、渡す前提で社内の承認を取ります
- API の利用条件を確かめる … OpenAI の API に送ったデータは、2023年3月1日以降、明示的に共有を選ばない限り学習や改善に使われないとされています。不正利用の監視のログは最大30日保持されます。 データを保持しない設定(Zero Data Retention)は事前の承認が要るとされているので、必要なら申請するか、Azure OpenAI に置き換えます
- 判断を代替しない … この構成は査定の記録を文章に直すだけです。支払の可否、事実の認定、条項の適用は査定担当のものです
- 不支払の通知は上席が読む … 生命保険協会のガイドラインは、不支払の通知・説明を、お客さまの理解と納得が得られるよう丁寧かつわかりやすい内容にすることを求めています。機械で作った下書きこそ、2人の目で読みます
- 根拠の提示に備える … 同じガイドラインでは、事実関係を認定した根拠等の提示を求められた場合は、個人情報保護法等に留意しつつ誠実に対応するとされています。通知文の1文ごとの根拠と、使った約款の版を残しておくことが、その備えになります
誤りが起きた場合のリスクは、誤った理由を伝えることと、認定していない事実を伝えることの2つです。 前者は言い換えの一覧と人の読み比べで、後者は書き足しの禁止と missing_in_record で止めます。どちらも最後は査定担当が読む設計にしておきます。
10まず何から始めるか
1週目:査定の記録の書き方をそろえる
「認定した事実関係」の欄に、日付・書類の名称・確認した内容を書く決まりを作ります。過去分を直す必要はありません。今月の査定から始めます。
2週目:用語の言い換えの一覧を作る
一部支払・不支払の理由に多く出る約款の用語を20個選び、契約者向けの言い方を1つずつ決めます。商品部門と法務部門に確かめてもらいます。
3週目:30件で試す
先月の通知文から30件を選び、記号に置き換えた記録と条項で下書きを作らせます。記録に無い事実を書き足していないかを最優先で見ます。
4週目:照合の規則を作る
数字・日付・引用・条項番号の照合を、表計算かスクリプトで動くようにします。30件の下書きにかけて、人が見落としていた不一致が出るかを確かめます。
2か月目: 支払査定システムと約款データベースからの取り出しを自動化し、半自動化で回します。missing_in_record に出た項目を集計します。3か月目以降: 照合とひな形への流し込みまでつなぎ、1件30分が何分になったかを実測します。言い換えの一覧が毎月の直しでほとんど増えなくなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 保険金等を支払えない場合の通知・説明は、お客さまの理解と納得が得られるよう丁寧かつわかりやすい内容にし、迅速性にも留意して行うこと。説明すべき事項が、①支払えないこと ②支払えない理由(該当する約款条項・事実関係)③決定に不服がある場合の対応方法(苦情対応窓口等)であること。事実関係を認定した根拠等の提示を求められた場合は個人情報保護法等に留意しつつ誠実に対応すること。苦情の内容を処理結果を含めて記録・保存すること。偶発性が無いと判断するような事案は必要に応じて法務部門・弁護士等の法的判断を踏まえて慎重に行うこと | 生命保険協会: 保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン | 2026-10-06 |
Structured Outputs が指定した JSON スキーマに沿った応答を生成し、必須キーの抜けや列挙にない値を防ぐこと。すべての項目を必須にし additionalProperties を false にすること。安全上の拒否が refusal として判別できること。応答が途中で終わった場合に状態で確かめること | OpenAI: Structured Outputs | 2026-10-06 |
| Responses API で指示を渡せること。開発者のメッセージがユーザーのメッセージより優先されること。本番ではモデルのスナップショットに固定することが勧められていること | OpenAI: Text generation | 2026-10-06 |
| 2023年3月1日以降、API に送ったデータは明示的に共有を選ばない限り学習や改善に使われないこと。不正利用の監視のログが最大30日保持されること。Zero Data Retention が事前の承認を要すること | OpenAI: Data controls in the OpenAI platform | 2026-10-06 |
| 要配慮個人情報が、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などを含み、不当な差別、偏見その他の不利益が生じないよう取扱いに特に配慮を要するものとされていること。あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないこと | 個人情報保護委員会: 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) | 2026-10-06 |
生命保険協会のガイドラインは、会員会社が支払業務を行う際の考え方を示したものです。 自社の通知文の書き方と、どの事案を対象から外すかは、自社の支払部門・法務部門で決めてください。損害保険・共済では、それぞれの業界団体の指針も確かめてください。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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