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保険代理店の募集人から届く引受可否の質問に、保険会社の引受規定と通達を根拠にチャットで答え、規定に無いものを管理者経由で照会する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

乗合代理店の募集人が社内チャットで聞く「この条件で引き受けてもらえるか」「この特約は付けられるか」に、保険会社の引受規定集・商品パンフレット・代理店向け通達を根拠に答えます。規定に無い個別判断は、照会票の下書きにして管理者へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
保険/金融
対象部門
営業
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
64h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
63%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 募集人が、社内チャットで内務担当者に質問を送る。電話で聞くこともある
  2. 内務担当者が、質問の保険会社・商品・始期日を確かめる。書かれていなければ聞き返す
  3. 共有ドライブから、その保険会社の引受規定集を開き、該当する章を探す
  4. 改定の通達が出ていないかを、通達のフォルダで確かめる
  5. 規定に書いてあれば、その内容を募集人に返す
  6. 規定に無い、または「個別に相談」とあるものは、管理者に相談するか、保険会社の代理店担当者に照会する
  7. 照会の答えが来たら、募集人に伝える
導入後(After)
  1. 人募集人が社内チャットのボットを開き、保険会社・商品・始期日を選ぶ
  2. 自動中継プログラムが、選ばれた値を検索の絞り込み条件に変える
  3. 人募集人が質問を書く
  4. 自動中継プログラムが、照会に回す規則に当たるかを先に見る
  5. 自動当たらなければ、検索基盤が絞った規定と通達から根拠を探して答えを作る
  6. 自動答えに出典(規定集の名前・版・章)を付け、「規定上の取扱い」として返す
  7. 自動根拠が見つからない、根拠が弱い、または規定が「個別に相談」としているときは、答えずに照会票の下書きを作る
  8. 人管理者が照会票を確かめ、足りない情報を募集人に聞いてから、保険会社の代理店担当者へ照会する
  9. 人保険会社の答えを募集人へ返し、照会の記録に残す
  10. 人月に1回、照会の記録を見て、一般の取扱いとして社内のFAQに書き起こすものを選ぶ
各工程の詳しい説明を読む
  1. 募集人が、社内チャットで内務担当者に質問を送る。電話で聞くこともある
  2. 内務担当者が、質問の保険会社・商品・始期日を確かめる。書かれていなければ聞き返す
  3. 共有ドライブから、その保険会社の引受規定集を開き、該当する章を探す
  4. 改定の通達が出ていないかを、通達のフォルダで確かめる
  5. 規定に書いてあれば、その内容を募集人に返す
  6. 規定に無い、または「個別に相談」とあるものは、管理者に相談するか、保険会社の代理店担当者に照会する
  7. 照会の答えが来たら、募集人に伝える

(a)探すのに時間がかかる。 3社の規定集はそれぞれ数百ページあり、章立ても用語も保険会社ごとに違います。同じ「車両保険の引受制限」が、ある社では車種の章に、別の社では補償の章に書かれています。 毎回、目次から探し直しています。

(b)改定前の規定で答える。 通達のフォルダを見落とすと、差し替える前のPDFで答えます。逆に、まだ効いていない新しい規定で、来月始期の契約に答えてしまうこともあります。どちらも、見積を出した後に保険会社から差し戻されて分かります。

(c)ベテランの記憶に頼っている。 「その条件はたしかB社なら通る」という答えは速いのですが、どの規定のどこに書いてあるかが残りません。 新しく入った内務担当者は、同じ質問に答えられません。

(d)規定に無いことを、規定のように答える。 募集人に急かされると、過去に保険会社が個別に認めた例を、一般の取扱いのように伝えてしまうことがあります。個別の判断は、その契約についての判断です。 次の契約にも通るとは限りません。

  1. 【人】 募集人が社内チャットのボットを開き、保険会社・商品・始期日を選ぶ
  2. 【自動】 中継プログラムが、選ばれた値を検索の絞り込み条件に変える
  3. 【人】 募集人が質問を書く
  4. 【自動】 中継プログラムが、照会に回す規則に当たるかを先に見る
  5. 【自動】 当たらなければ、検索基盤が絞った規定と通達から根拠を探して答えを作る
  6. 【自動】 答えに出典(規定集の名前・版・章)を付け、「規定上の取扱い」として返す
  7. 【自動】 根拠が見つからない、根拠が弱い、または規定が「個別に相談」としているときは、答えずに照会票の下書きを作る
  8. 【人】 管理者が照会票を確かめ、足りない情報を募集人に聞いてから、保険会社の代理店担当者へ照会する
  9. 【人】 保険会社の答えを募集人へ返し、照会の記録に残す
  10. 【人】 月に1回、照会の記録を見て、一般の取扱いとして社内のFAQに書き起こすものを選ぶ

4番目が、この設計の分かれ目です。 「今回だけ例外で通せないか」「事故歴が多いお客さまだが」のような個別の判断を求める質問は、検索にかける前に規則で取り出します。 検索してから判断すると、規定の一般的な一節を根拠に「引き受けられます」と読める答えを作ってしまいます。

8番目で、照会は必ず管理者を通します。 募集人が直接照会すると、保険会社の答えが代理店の中に残りません。

02今回想定するシステム構成

構成図
社内チャットのボット(募集人が使う)
   │  ① 保険会社・商品・始期日を選ぶ  ② 質問を書く
   ▼
中継プログラム(Cloud Run)
   ├──▶ 照会に回す規則に当たるか(例外・個別事情・規定外)
   │       当たる → 照会票の下書き → 管理者の受付の一覧
   ▼  当たらない
Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド
   │   絞り込み:insurer・product・effective_from/effective_to・status
   │   データストア:引受規定集/商品パンフレット/代理店向け通達
   │   (レイアウトパーサーで表を読み、見出し付きで分割)
   ▼  答え・出典・根拠の強さ
中継プログラム ── 根拠が弱い、「個別に相談」なら答えずに照会へ
   ▼
チャットに返す / 会話と照会の記録を保管・集計
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、社内チャットと検索基盤と受付の一覧をつなぐ)Node.js で同じものを書く
集計BigQuery(会話と照会の記録の保管と、月次の集計)Google スプレッドシート
保管Cloud Storage(規定集・パンフレット・通達の原本とメタデータ)─

保険会社の代理店向けシステムにはつなぎません。 見積や契約の計上は、これまでどおり各社のシステムで行います。この構成は、規定に何が書いてあるかを探して示すところまでで、見積の結果や契約の状態を扱いません。

土台になるのは、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式のドキュメントには「Vertex AI Search is being renamed to Agent Search.」と書かれており、製品は Agent Search へ改称されつつあります。 本記事では両方の名前を併記します。answer メソッドは、データストアから根拠を探して答えを作り、includeCitations で答えの文ごとに出典を示せます。

規定集は表が多いので、レイアウトパーサーで取り込みます。 既定のデジタルパーサーは文字の塊を取り出しますが、表・リスト・見出しは検出しません。 レイアウトパーサーは PDF などから表や見出しを見分けて文書の構造を捉え、表の注釈(表の説明を分割した塊に付ける)も選べます。引受の条件は「車種×用途×年式」のような表で書かれていることが多く、表が文字の羅列になると、どの行の条件かが分からなくなります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

募集人がボットに質問を書いたときに動きます。 最初に保険会社・商品・始期日を選んでもらい、3つがそろうまで質問欄を開きません。 保険会社を選ばずに質問できる作りにすると、3社の規定が混ざった答えになります。

保険会社は「A社」「B社」「C社」「比較したい」から選びます。「比較したい」を選んだときは、3社の規定をそれぞれ別の検索で引き、答えを保険会社ごとに分けて返します。 1回の検索で3社をまとめて引くと、ある社の条件を別の社の答えに混ぜて書くことがあるためです。

始期日は、日付で入れてもらいます。 「来月」「4月から」のような書き方は受け付けません。始期日が改定日の前か後かで、検索する規定の版が変わるからです。 始期日が決まっていない見込みの段階なら、「本日時点で効いている規定」で検索し、答えの冒頭にその旨を書きます。

1つの会話は、同じ保険会社・商品・始期日のまま続けます。 answer メソッドはセッションを使った複数回のやり取りに対応し、前の質問を踏まえて言い換えて検索します。保険会社を変えるときは会話を新しく始めます。 前の社の質問を踏まえた言い換えが混ざるためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
募集人の質問質問の文面、選んだ保険会社・商品・始期日、会話の中の前の質問社内チャットのボット
引受規定集商品ごとの引受の条件、引受を制限する条件、特約の付帯の条件保険会社から代理店に届くPDF
商品パンフレット補償の内容と特約の一覧、お客さま向けの説明同上
代理店向け通達規定の改定、取扱いの変更、適用を始める始期日同上
照会に回す規則個別の判断を求める質問の種類と、その見分け方管理者が決めて持つ一覧
社内のFAQ照会の答えのうち、管理者が一般の取扱いとして書き起こしたもの管理者が確定したもの

質を決めるのは、通達の扱いです。 通達は、規定集の一部を書き換える内容を数ページで伝えてきます。通達を規定集と同じ重みで検索に入れると、古い規定集の記述と新しい通達の記述の両方が根拠に出ます。 通達には、どの規定集のどの章を書き換えるかと、適用を始める始期日を必ずメタデータで付けます。

照会の答えは、そのままでは載せません。 保険会社が個別に認めた答えは、その契約についての判断です。管理者が一般の取扱いとして使えると判断し、保険会社にも確かめたものだけを、社内のFAQとして書き起こして載せます。

Step3

データの取得方法を決める

文書は Cloud Storage のフォルダに置き、メタデータの JSONL と一緒にデータストアへ取り込みます。 1文書ごとに次のメタデータを付けます。

メタデータ値の例使いどころ
insurera、b、c保険会社で検索の範囲を切る
productauto、fire、liability、accident商品で範囲を切る
doc_typerules、pamphlet、notice、faq出典の表示と、通達の優先
effective_from規定や通達の適用を始める始期日(ISO 8601 の日付)始期日で効いている版を選ぶ
effective_to次の版に置き換わる始期日。未定なら遠い日付置き換わった版を外す
statuspublished、draft、archived確定した版だけを検索させる

絞り込みに使う項目は、データストアのスキーマで「Indexable」にします。 指定しないと、メタデータを付けていても絞り込みに使えません。絞り込みの式は ANY() による完全一致と AND・OR・NOT で書け、日時の項目は ISO 8601 の形式で比較の演算子を使えます。

insurer: ANY("b") AND product: ANY("auto") AND status: ANY("published")
AND effective_from <= "2026-11-01T00:00:00Z" AND effective_to > "2026-11-01T00:00:00Z"

始期日は2つの比較で挟みます。 effective_from だけで絞ると、改定前の古い版も残ります。新しい版が効き始めたら、古い版の effective_to にその日を入れます。 PDFを消さずに版を重ねて持てるので、改定の前後で始期日の違う契約に、それぞれ正しい版で答えられます。

取り込みは1回だけか、定期の同期(1日・3日・5日の間隔)かを選べます。通達は届いた日に反映したいので、差し替えたあとに手動で取り込みます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 選択値の確認 … 保険会社・商品・始期日が、決まった値の一覧と日付の形式に合うかを確かめます
  2. 個人情報の除去 … 質問の文面から、お客さまの氏名、電話番号、証券番号らしい文字列、登録番号(ナンバー)を伏せてから検索にかけます
  3. 照会に回す規則の照合 … 「例外」「今回だけ」「事故歴」「前回断られた」「特別に」などの語と、引受審査の結果を尋ねる言い回しを見ます
  4. 絞り込みの式の組み立て … 選択値から式を作ります。募集人の書いた文字を式に混ぜません
  5. 取り込み前の文書の確認 … 新しいPDFを置くとき、通達なら書き換える規定集と章、適用の始期日がメタデータに入っているかを確かめます

2番目を省かないでください。 募集人はお客さまの名前やナンバーをそのまま書いてきますが、規定を探すのには要りません。

レイアウトパーサーと分割の設定は、データストアを作る時点で決めます。 分割(チャンク)は、データストアを作った後に有効・無効を切り替えられません。また、パーサーの設定を後から変えても、すでに取り込んだ文書は解析し直されません。 分割の大きさは100〜500トークンで、既定は500です。分割した塊に見出しを含める設定は、既定で無効なので有効にします。規定集の表は、どの章のどの商品の表かが見出しに書かれているからです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、絞った規定の中から該当する条件を探し、規定の言葉で「規定上どうなっているか」を答えることだけです。

質問の種類答え方根拠にする文書
引受の可否(車種・用途・建物の構造など)規定の条件をそのまま示し、該当する行を挙げる引受規定集、通達
特約の付帯の可否付帯できる条件と、付帯できない組み合わせを示す引受規定集、パンフレット
補償の内容パンフレットの説明の言葉で示すパンフレット
改定の有無通達の名前と適用の始期日を示す通達
必要な確認書類規定に書かれた書類の名前を示す引受規定集
3社の比較保険会社ごとに分けて、それぞれの規定を示す各社の引受規定集

答えの頭には、必ず3つのどれかを付けさせます。 「規定上、引受の対象」「規定上、引受の対象外」「規定上、保険会社への相談が必要」の3つです。どれにも当てはまらないときは、答えを作らせずに照会へ回します。

させないこと理由
「引き受けます」「通ります」と確約する引受の可否を最終的に決めるのは保険会社
規定に無い条件を推し量って答える個別の判断は照会で確かめる
過去の照会の答えを一般の取扱いとして示すその契約についての判断だから
保険料の計算や見積の金額各社の代理店向けシステムで出す
告知の内容をどう書くかの助言告知はお客さまご本人が事実を書くもの
他社の規定を使った言い換え乗合代理店で最も起きやすい混同
Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の内容を入れます。

あなたは損害保険の乗合代理店で、募集人からの引受と特約の質問に答える社内の案内係です。
検索された保険会社の引受規定集・商品パンフレット・代理店向け通達だけを根拠に答えてください。

【答え方】
- 答えの1行目に、次のどれか1つを書いてください。
  「規定上、引受の対象」「規定上、引受の対象外」「規定上、保険会社への相談が必要」
  どれとも言えないときは「規定に記載がないため、管理者経由で照会します」とだけ答えてください。
- 2行目以降に、規定の条件をそのまま示し、どの章のどの表の記載かを書いてください。
- 通達と規定集の記載が両方ある場合は、通達の記載を優先し、通達の名前と適用の始期日を書いてください。
- 年式、年齢、金額、日付は、文書の表記のまま写してください。言い換えや計算をしないでください。
- 規定に「個別に相談」「保険会社に確認」などと書かれている場合は、
  「規定上、保険会社への相談が必要」としてください。

【答えないこと】
- 「引き受けます」「通ります」「大丈夫です」など、引受を確約する言い方をしないでください。
- 検索された文書に無い条件を、推し量って補わないでください。
- 検索された保険会社以外の会社の取扱いに触れないでください。
- 保険料の金額、見積の結果を答えないでください。
- 告知の内容をどう書くかについて、助言をしないでください。

「確約する言い方をしない」を書かないと、規定上の対象を「引き受けられます」と言い換えます。 規定上の対象でも、お客さまの告知の内容や過去の事故の状況で、保険会社が引受を断ることはあります。規定に合うことと、引き受けてもらえることは違うので、1行目の言い方を3つに固定します。

あわせて、answer メソッドの設定で次を有効にします。

設定値目的
includeCitationstrue答えの文ごとに出典を示す
ignoreLowRelevantContenttrue関係の薄い規定から無理に答えを作らない
ignoreNonAnswerSeekingQuerytrue挨拶や雑談に答えを作らない
searchSpec.searchParams.filter前処理で組んだ式保険会社・商品・始期日で範囲を切る
searchSpec.searchParams.boostSpecdoc_type が notice の文書を上げる規定集より通達を先に根拠にする
searchSpec.searchParams.maxReturnResults10(上限25)規定集の複数の章をまたぐ質問に備える

boostSpec を使うのは、数ページの通達が数百ページの規定集に検索の当たりで負けるためです。 絞り込みで版を選び、ブーストで通達を前に出します。

Step7

出力形式を固定する

中継プログラムは、answer メソッドの応答から次の形の記録を作ります。 チャットに返すのは answer_text と citations だけです。

{
  "session_id": "",
  "insurer": "b",
  "product": "auto",
  "inception_date": "2026-11-01",
  "question_masked": "",
  "route": "answered | escalated_rule | escalated_no_answer | escalated_low_support | escalated_consult",
  "rule_status": "eligible | not_eligible | consult_required | none",
  "answer_text": "",
  "citations": [ { "doc_type": "rules", "title": "", "version": "", "section": "", "uri": "" } ],
  "support_score": 0.0,
  "inquiry_draft": null,
  "created_at": ""
}

1つ目の理由は、rule_status を答えの文から切り離して持てることです。 1行目の3つの言い方を中継プログラムが読み取り、決まった値にします。consult_required なら、答えを返したうえで照会票の下書きも作ります。 規定が相談を求めているものを、募集人の判断で止めないためです。

2つ目は、support_score で答えを止められることです。 answer メソッドは、答えがデータストアの内容にどれだけ裏付けられているかを0〜1の値で返せます。この値が自社で決めた境目を下回ったら、答えを表示せずに照会へ回します。 境目は、最初の1か月の記録を見て決めます。

3つ目は、citations の version で、どの版で答えたかが残ることです。 改定の前後で、募集人が「前と言っていることが違う」と言ってきたときに、始期日と版の組み合わせで説明できます。

照会に回したときは、inquiry_draft に次の形の照会票を入れ、管理者の受付の一覧に書き込みます。

列中身
保険会社・商品・始期日b/auto/2026-11-01
照会の理由escalated_consult(規定が保険会社への相談を求めている)
質問(伏せた後)会話の中の質問を順に
検索で見つかった規定の箇所規定集の名前・版・章。見つからなければ「該当なし」
保険会社に確かめる点規定のどの条件に当てはまるかが分からない点を1〜3行で
足りない情報車の用途、所有者、補償の内容など、照会に要るのに会話に無いもの
対応の状態未対応/募集人に確認中/保険会社に照会中/回答済み

「足りない情報」の列が、照会の往復を減らします。 保険会社がいつも聞いてくる項目のうち、会話に無いものを中継プログラムが書き出します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
社内チャットのボット中継プログラムのAPI選択値と質問を受け、答えと出典を返す
Vertex AI Search(Agent Search)answer メソッドの呼び出し絞り込みの式・ブースト・セッションを渡し、答えを受け取る
管理者の受付の一覧書き込み照会票の下書きと会話の記録を入れる
Cloud Storage文書の配置規定集・パンフレット・通達の原本とメタデータを置く
BigQuery書き込み会話と照会の記録を保管し、月次で集計する

保険会社への照会は、自動では送りません。 照会は保険会社が決めた経路(代理店担当者への連絡や、代理店向けシステムの照会の機能)で、管理者が行います。 中継プログラムは照会票の下書きを作るところまでです。

社内チャットのボットの作り方は、使っているチャットの製品によって変わります。 本記事では、チャットから中継プログラムのAPIを呼べることを前提にしており、この部分は利用環境に応じた個別実装が必要です。

Step9

人が確認する

AIの答えを、募集人に返す前に人が見ることはしません。 その代わり、答える範囲を規定の記載に限り、照会と記録の点検で守ります。

  1. 照会の受付を毎日見る … escalated_rule と escalated_consult を先に見ます。お客さまを待たせている質問が多いためです
  2. 答えた会話を週に1回抜き取る … answered から数十件を選び、出典の版と始期日が合っているか、確約する言い方が出ていないかを見ます
  3. 通達を取り込んだら確かめる … 取り込みの後、改定の対象の質問を数件投げ、始期日の前後で答えが切り替わるかを見ます
  4. 月に1回、照会の記録を見る … 一般の取扱いとして書き起こせるものを選び、保険会社に確かめてから社内のFAQに載せます

2番目では、取り違えの影響が大きい3社の比較を優先して見ます。

このチャットは規定を探す時間を減らすもので、引受の確認を代わりに行うものではありません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
始期日が未定本日時点で効いている版で答え、答えの冒頭にその旨を書く
始期日が改定日をまたぐかもしれない両方の始期日で検索し、版ごとに分けて答える
答えが出ない(根拠が見つからない)「管理者経由で照会します」と返し、escalated_no_answer で受付の一覧へ
根拠の裏付けが弱い答えを表示せず、escalated_low_support で照会へ
規定が「個別に相談」としているconsult_required として規定の箇所を示し、照会票を作る
個別の事情や例外を求める質問規則で照会へ回す(escalated_rule)
告知の書き方を聞かれた答えず、管理者へ回す
通達はあるが規定集の差し替えがまだ通達を優先して答え、規定集の差し替え待ちを管理者に知らせる
規定集と通達が食い違う回答を止め、管理者へ知らせて保険会社に確かめる
検索基盤が応答しない「時間をおいて再度お試しください」と返し、内務担当者への連絡先を示す
Step11

記録を残す

  • 会話ごとの保険会社・商品・始期日、伏せた後の質問の文面、答え、出典の版、support_score
  • 使った絞り込みの式とブーストの設定
  • 照会票の内容、照会した日時、保険会社の答え、募集人へ返した日時
  • 抜き取りで見つけた答えのずれと、直した内容
  • 文書の取り込みの履歴(いつ、どの版を、どの適用期間で入れたか)
  • 月ごとの route と rule_status の件数、照会の理由の種類

5つ目を残すのは、版の誤りを後から追うためです。 適用の始期日を間違えて入れていたと分かったとき、その期間の会話を洗い出せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:規定集を生成AIに読み込ませ、内務担当者が回答の下書きを作らせる / 1件ごとの該当箇所探しと下書き
半自動化:上記+検索基盤に3社の規定と通達を載せ、内務担当者が社内で検索に使う / 保険会社と始期日で絞った該当箇所探し。回答は人
本格構成:上記+募集人がボットで直接質問し、照会票の下書きと記録を自動で回す / 規定から答えられる質問への回答と、照会の取りまとめ

最小構成では、質問を受けて返すのは人のままです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件8分が5分程度になります。 3社の規定集をまたいで探す時間が減りますが、質問の受付と回答、照会の段取りは残ります。本格構成で3分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、規定から答えられる質問が内務担当者を通らなくなり、照会の情報もそろって届くからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で、表の読み違いと適用期間の誤りが先に見つかります。直してから募集人に開きます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
480 件
1件あたり現在時間
8 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  480件 × 8分 ÷ 60 = 64 時間/月
導入後 480件 × 3分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
63%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の損害保険会社の商品を扱う乗合代理店で、募集人が数十名いて、引受の条件を内務の担当者や管理者に聞く質問が毎月数百件ある場合。保険会社ごとに引受規定集・商品パンフレット・代理店向け通達がPDFで届き、改定のたびに差し替えている場合。ベテランの内務担当者に質問が集中し、その人が休むと回答が止まる場合。
向いていない
  1. 専属代理店で扱う保険会社が1社だけで、保険会社が提供する代理店向けシステムの検索で足りる場合。保険会社との委託契約や情報管理の取り決めで、引受規定集を代理店の側のクラウドに置くことが認められていない場合(先に保険会社に確認する)。質問の多くが、個別の契約の引受審査そのもので、規定から答えられる範囲が小さい場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の質問から40件を選ぶ(3社の比較、改定の前後、規定が相談を求めるものを必ず混ぜる)
  2. 1社分の引受規定集と、直近の通達を用意する
  3. 手元の生成AIのサービスに規定集と通達を読み込ませ、1件ずつ質問する
  4. 「この規定集と通達に書かれていることだけで答えてください。1行目に『規定上、引受の対象』『対象外』『保険会社への相談が必要』のどれかを書き、記載が無ければ『記載がない』と答えてください。引き受けると確約しないでください」と指示する
  5. 出てきた答えを、当時内務担当者が返した答えと突き合わせる

保険会社の規定集を外部のAIサービスに読み込ませてよいかを、先に保険会社に確かめてください。 試す段階でも、委託契約の情報管理の取り決めは同じように効きます。

出てきた内容判断
当時と同じ内容を、規定の箇所付きで答えたデータストアと絞り込みの組み立てに進む
確約する言い方が出た、規定に無い条件を補った指示の書き方で直る。構成は有効
表の条件を読み違えたレイアウトパーサーで取り込む前提で、本格構成で確かめ直す

3行目が出ることは珍しくありません。 表を文字として貼ると、行と列の対応が崩れます。AIの理解ではなく、文書の読み込み方の問題です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
A社の規定でB社の質問に答える保険会社を選ばせてから質問欄を開き、insurer で絞る
改定前の規定で改定後の契約に答える始期日を effective_from と effective_to で挟む
通達が規定集に検索の当たりで負けるboostSpec で通達を上げる
表の条件の行と列がずれるレイアウトパーサーで取り込み、表の注釈を有効にする
後から分割の設定を変えたくなる作った後に切り替えられない。 作る前に決め、変えるならデータストアを作り直す
メタデータを付けたのに絞り込めないスキーマで Indexable にする
「引き受けられます」と言い切る1行目の言い方を3つに固定し、抜き取りで見る
過去の照会の答えを一般の取扱いとして返す照会の答えは載せず、管理者が書き起こしたFAQだけを載せる
照会の情報が足りずに往復する照会票に「足りない情報」の列を持たせる
適用の始期日の無い通達が混ざる取り込み前にメタデータを確かめる
規定集を外部に置いてよいか確かめていない委託契約の取り決めを先に保険会社に確かめる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、正しい言葉で違う規定を答えるという同じ形をしています。AIの精度ではなく、検索の範囲の問題です。 絞り込みが効いていないまま募集人に開くと、出典付きの誤った答えが返ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 保険会社の引受規定集・代理店向け通達(多くは代理店の外に出さない前提の資料)、商品パンフレット、募集人の質問の文面と会話の記録。質問の中に、お客さまの氏名、車のナンバー、事故の経緯が書き込まれることがあります。

  1. 規定集の扱いを保険会社と決める … 引受規定集は、保険会社が代理店の業務のために渡している資料です。クラウドの検索基盤に載せてよいか、どの範囲の社員が見てよいかを、委託契約の情報管理の取り決めに照らして各社に確かめます
  2. お客さまの情報を検索に使わない … 規定を探すのに氏名やナンバーは要りません。検索にかける前に伏せ、記録にも伏せた後の文面を残します
  3. 引受を確約しない … 代理店は保険会社の代理人として契約を締結し、告知を受ける立場にあります。規定上の取扱いを伝えることと、引受を約束することを、答えの言い方で分けます
  4. 告知に関わる助言をしない … 告知はお客さまご本人が事実を書くものです。書き方を指南する答えをAIに作らせず、管理者が受けます
  5. 照会の答えを広げすぎない … 保険会社が個別に認めた取扱いを、他の契約に当てはめない運用にします。一般の取扱いにするかは、保険会社に確かめたうえで管理者が決めます
  6. 社員の範囲で使う … ボットは代理店の社員だけが使える社内チャットに置き、お客さまが直接使う窓口にはしません

誤りが起きた場合のリスクは、違う保険会社や違う版の規定を伝えることと、規定に無い取扱いを規定のように伝えることの2つです。 前者は絞り込みで、後者は照会の規則と1行目の言い方の固定で防ぎます。どちらもAIに判断させない場所で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:保険会社に確かめ、文書を集める

3社それぞれに、引受規定集と通達を代理店の側のクラウドに置いて社内検索に使ってよいかを確かめます。あわせて、現行の規定集、パンフレット、直近1年の通達を集め、通達ごとに書き換える章と適用の始期日を一覧にします。

2週目:40件で試す

先月の質問から40件を選び、手元の生成AIに1社分の規定集と通達を読み込ませて答えさせます。確約する言い方が出ていないか、表の条件を読み違えていないかを最優先で見ます。

3週目:照会の規則と照会票を決める

どの質問を照会に回すかを、管理者と内務担当者で決めます。 例外を求めるもの、個別の事情、告知の書き方、引受審査の結果は必ず入れます。保険会社が照会でいつも聞いてくる項目を集め、照会票の「足りない情報」の一覧にします。

4週目:データストアを作り、内務担当者が使う

Cloud Storage に文書と適用期間のメタデータを置き、レイアウトパーサーと分割を有効にして Vertex AI Search(Agent Search)のデータストアを作ります。この時点では募集人に開かず、内務担当者が回答の根拠を探すのに使います。

2か月目: 中継プログラムとボットを作り、support_score の境目を決めて、募集人に開きます。route と rule_status の件数を毎週数えます。3か月目以降: 照会の記録から社内のFAQを書き起こし、1件8分が何分になったかを実測します。改定の前後でも始期日ごとに正しい版で答えられ、照会の往復が1回で済んでいる時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称されつつあること。answer メソッドがセッションによる複数回のやり取りと質問の言い換えに対応すること。includeCitations、ignoreLowRelevantContent、ignoreNonAnswerSeekingQuery、promptSpec.preamble、searchSpec.searchParams の filter・boostSpec・maxReturnResults(既定10、上限25)。答えの裏付けを0〜1の値で返せることGoogle Cloud: Agent Search の answer メソッド2026-10-06
デジタルパーサーが表・リスト・見出しを検出しないこと。レイアウトパーサーが PDF などの表や見出しを見分けること。表の注釈と画像の注釈を有効にできること。分割の大きさが100〜500トークン(既定500)、見出しを含める設定が既定で無効なこと。分割はデータストアを作った後に切り替えられず、パーサーの設定の変更は既存の文書に効かないことGoogle Cloud: Agent Search の文書の解析と分割2026-10-06
絞り込みに使う項目をスキーマで Indexable にすること。ANY() の完全一致、AND・OR・NOT、数値と日時(ISO 8601)の比較の演算子Google Cloud: Agent Search のメタデータによる絞り込み2026-10-06
Cloud Storage などからデータストアを作れること。メタデータを JSON で付けられること。取り込みを1回または定期(1日・3日・5日)の同期から選べることGoogle Cloud: Agent Search の検索データストアの作成2026-10-06
損害保険代理店が保険会社との委託契約により保険会社の代理人として契約を締結する権限を与えられていること。業務に重要事項の説明と告知の受領、契約の締結と保険料の領収が含まれること。複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店があること日本損害保険協会: 損害保険代理店とは2026-10-06

引受規定集・通達をクラウドに置いて使えるかは、各保険会社との委託契約と情報管理の取り決めを確認してください。 本記事は日本損害保険協会のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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