Media > AI活用ユースケース > カスタマーサポート > 火災保険の事故受付で契約者が送る住宅の被害写真から、被害の部位・損傷の種類・程度を見分けて受付票の下書きにし、撮り直しが要る写真と現地調査が要る案件を拾う

火災保険の事故受付で契約者が送る住宅の被害写真から、被害の部位・損傷の種類・程度を見分けて受付票の下書きにし、撮り直しが要る写真と現地調査が要る案件を拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

火災保険の事故受付で契約者が送る住宅の被害写真を1枚ずつ見て、被害の部位・損傷の種類・程度を写真の位置付きで返し、受付票の下書きにします。あわせて、撮り直しが要る写真と、現地調査に回す候補の案件を拾います。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
不動産/保険/金融
対象部門
カスタマーサポート
対象業務
データ入力・転記/内容確認・チェック
主な課題
人手が足りない/入力作業が多い/判断に時間がかかる
AIで行う処理
画像認識
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
200h/月
AI導入後
80h/月
想定削減
60%
年間削減
1,440h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 契約者がWebのフォームから事故の内容と写真を送る
  2. 受付の担当者が事故受付システムで受付票を開き、契約の内容(建物か家財か、補償の範囲)を確かめる
  3. 写真を1枚ずつ開き、どの部位の写真か、何が写っているかを見る
  4. 受付票の「被害の状況」に、部位・損傷・程度を書き起こす
  5. 写真が足りない・ぼけている・暗い場合は、契約者に撮り直しを頼むメールを書く
  6. 被害が大きい、写真で判断できない、説明と写真が合わない案件を、現地調査の手配に回す
  7. 受付票を損害サービスの担当者に回す
導入後(After)
  1. 人契約者がWebのフォームから事故の内容と写真を送る(これまでと同じ)
  2. 自動フォームの受付をきっかけに処理が動き、写真の形式・大きさ・枚数を確かめる
  3. 自動写真に人の顔や表札、車のナンバーが写っていないかを先に確かめる
  4. 自動写真ごとに、部位・損傷の種類・程度と、写真で確かめられたかを返す
  5. 自動部位ごとにまとめ、撮り直しが要る写真と不足している撮り方を規則で拾う
  6. 自動規則で現地調査の候補に印を付け、受付票の下書きと撮り直しの依頼の下書きを作る
  7. 人受付の担当者が下書きを写真と並べて確かめ、直して受付票に確定する
  8. 人撮り直しの依頼を確かめて契約者に送る。現地調査に回すかを決める
  9. 人受付票を損害サービスの担当者に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 契約者がWebのフォームから事故の内容と写真を送る
  2. 受付の担当者が事故受付システムで受付票を開き、契約の内容(建物か家財か、補償の範囲)を確かめる
  3. 写真を1枚ずつ開き、どの部位の写真か、何が写っているかを見る
  4. 受付票の「被害の状況」に、部位・損傷・程度を書き起こす
  5. 写真が足りない・ぼけている・暗い場合は、契約者に撮り直しを頼むメールを書く
  6. 被害が大きい、写真で判断できない、説明と写真が合わない案件を、現地調査の手配に回す
  7. 受付票を損害サービスの担当者に回す

(a)写真を見て書き起こすのに時間がかかる。 1件に8〜10枚の写真があり、全景、近接、室内が順不同で並んでいます。どの写真がどの部位かを見分けるところから始まり、書き起こしの時間の大半がここです。

(b)撮り直しの依頼が遅れる。 写真の不足に気づくのは、3番目で1枚ずつ見た後です。災害の後は受付が溜まり、撮り直しの依頼が届くのが事故から何日も後になります。 その間に契約者が片付けや応急の修理を始め、被害の状態が撮れなくなることがあります。

(c)現地調査に回す基準が担当者で違う。 屋根の被害を地上から撮った写真で「軽微」と書く担当者もいれば、写真では分からないとして調査に回す担当者もいます。同じ写真でも、担当者によって後の流れが変わります。

  1. 【人】 契約者がWebのフォームから事故の内容と写真を送る(これまでと同じ)
  2. 【自動】 フォームの受付をきっかけに処理が動き、写真の形式・大きさ・枚数を確かめる
  3. 【自動】 写真に人の顔や表札、車のナンバーが写っていないかを先に確かめる
  4. 【自動】 写真ごとに、部位・損傷の種類・程度と、写真で確かめられたかを返す
  5. 【自動】 部位ごとにまとめ、撮り直しが要る写真と不足している撮り方を規則で拾う
  6. 【自動】 規則で現地調査の候補に印を付け、受付票の下書きと撮り直しの依頼の下書きを作る
  7. 【人】 受付の担当者が下書きを写真と並べて確かめ、直して受付票に確定する
  8. 【人】 撮り直しの依頼を確かめて契約者に送る。現地調査に回すかを決める
  9. 【人】 受付票を損害サービスの担当者に回す

7番目が、この設計の分かれ目です。 受付票は担当者が確定します。AIの下書きは、写真の上に枠が重なった状態で並び、担当者は枠と所見を見て、合っているかを選ぶだけにします。写真を1枚ずつ開いて部位を見分ける時間が、ここで無くなります。

6番目の現地調査の候補を規則で決めているのも、意図してのことです。 AIが返すのは「屋根の面が写真で確かめられない」「浸水の跡が床より上にある」という事実で、調査に回すかは、その事実を会社の基準に当てはめて決めます。 基準は災害の規模や調査の手配の状況で変わるので、AIの指示ではなく規則の側に置きます。

02今回想定するシステム構成

構成図
契約者(スマートフォン・PC)
   │  事故の日・事故の種類・被害の説明・写真
   ▼【トリガー】Webの事故受付フォームの受付
事故受付システム ── 受付番号、契約の情報
   ▼
Python(受付システムからの呼び出し)── 形式・大きさ・枚数の確認
   ▼
Gemini API ── ①写り込みと写真の質の確認(人の顔・表札・ナンバー、ぼけ・暗さ)
   ▼
Gemini API ── ②写真ごとの所見(部位・損傷の種類・程度・位置の枠)
   ▼
Python ── 部位ごとのまとめ、写真の不足、現地調査の候補(規則)
   ▼
受付票の下書き / 撮り直しの依頼の下書き
   ▼
【受付の担当者が確認して確定】──▶ 損害サービスの担当者 / 現地調査の手配
役割想定する製品代替候補
処理Gemini API(写り込みと写真の質の確認、写真ごとの所見、依頼文の下書き)Claude API、OpenAI API
連携Python(受付システムからの呼び出し、規則の判定、下書きの作成)Google Apps Script
保管事故受付システム(受付票、写真、AIの所見)既存の文書管理システム

事故受付システムと契約管理システムは、新しく足すものではありません。 この構成は、受付システムの「写真が届いた」という知らせを受けて動く小さなプログラムで、受付票の下書きを受付システムに返すところまでを受け持ちます。受付票を確定させる書き込みはしません。

判定の土台は Gemini API の画像理解です。 対応する形式は PNG、JPEG、WEBP、HEIC、HEIF です。物体の検出では、位置を [ymin, xmin, ymax, xmax] の形で、0から1000に正規化した座標で返します。損傷の位置を枠で返させ、担当者は写真に重ねた枠で確かめます。画像をリクエストに直接入れる場合は、指示と合わせたリクエスト全体が20MBまでで、大きい場合は Files API を使います。

画像の細かさは media_resolution で決めます。 Gemini 3 のモデルでは、画像1枚に割り当てるトークンを low(280)、medium(560)、high(1120)、ultra_high(2240)から選べ、公式のページは画像の分析には high を勧めています。 ultra_high は画像ごとの指定に限られます。屋根材のずれや外壁の細いひびを見たい写真だけ細かくし、全景の写真は既定のままにする、という使い分けができます。

構造化出力は、いまの公式ページでは Interactions の書き方です。 /v1beta/interactions に、response_format として mime_type に application/json と schema を渡します。スキーマには enum、required、additionalProperties などが使えますが、すべての JSON Schema の機能に対応しているわけではなく、大きすぎる・深すぎるスキーマは拒否されることがあるとされています。出力は文法として正しい JSON でも、値はアプリの側で確かめるよう書かれています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

事故受付のフォームで写真付きの受付が入ったことを起点にします。 受付システムが受付番号を発行したところで、このプログラムを呼びます。1回の呼び出しが「1件の事故の写真のまとまり」です。

写真の追加にも同じ処理を動かします。 撮り直しを頼んだ契約者が写真を追加で上げると、受付システムから同じ受付番号で呼ばれます。追加の写真は、前回の所見と合わせて部位ごとのまとめを作り直します。 追加の写真だけで所見を作ると、前回「確かめられない」だった部位が埋まったかが分かりません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
被害写真1件に数枚から十数枚。撮影の日時(残っていれば)、送られた順事故受付のWebフォーム
事故の内容事故の日、事故の種類、契約者が書いた被害の説明事故受付のWebフォーム
契約の情報建物か家財か、建物の構造の区分、補償の範囲(風災・水災などの有無)契約管理システム
部位の一覧屋根、外壁、雨どい、窓・サッシ、ベランダ、カーポート、室内の天井・壁・床など自社で決める一覧
撮り方の基準部位ごとに要る写真(全景、損傷の近接、室内なら部屋全体)自社で決める基準

質を決めるのは、下の2つです。 部位の一覧が無ければ、AIは「屋根の上のほう」「家の右側」のように、受付票の項目に合わない書き方をします。部位を一覧から選ばせると、書き方が担当者をまたいでそろいます。 撮り方の基準が無ければ、写真が足りているかを決められません。

契約の情報は、AIには渡しません。 補償の範囲を見せると、AIは「水災の補償が無いので対象外」のような、支払の判断に踏み込んだ文を書くことがあります。契約の情報は、規則で現地調査の候補を決めるときにだけ使います。 たとえば、建物の契約が無い案件で建物の所見しか無ければ、受付の担当者に契約の確認を促す印を付けます。

事故の説明は、AIに渡します。 説明に「2階の天井から雨漏り」とあれば、室内の天井の写真を探す手がかりになります。ただし、説明と写真が合っているかの判定は、AIに「合わない」と書かせるのではなく、説明にある部位が写真で確かめられたかで見ます。

Step3

データの取得方法を決める

受付システムから、受付番号、事故の内容、写真のファイルを受け取ります。写真の撮影情報(Exif)の日時は、残っていれば記録しますが判定には使いません。 端末やアプリによって消えていることが多く、残っていても書き換えられます。撮影の日時が事故の日より前に見える写真は、規則で担当者への確認の印を付けるだけにします。

取るものどこから何に使うか
写真のファイル事故受付のWebフォーム(受付システムの保管先)写り込みの確認、写真ごとの所見
事故の種類と説明事故受付のWebフォーム所見の手がかり、撮り方の基準の選択
契約の区分と補償の範囲契約管理システム現地調査の候補の規則
前回の所見このプログラムの記録(同じ受付番号)追加の写真のときのまとめ直し

写真は、リクエストに直接入れて渡します。 スマートフォンの写真は1枚数MBあるので、長い辺を決めた画素数に縮め、リクエスト全体で20MBに収まるようにします。 十数枚ある案件や、写り込みの確認と所見の作成の2回に同じ写真を使う案件では、Files API で一度上げて使い回します。Files API に上げたファイルは 48時間で自動的に削除され、上げたファイルは後から取り出せません。 写真の原本は受付システムの側に残し、Files API は呼び出しの間だけの置き場として使います。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … PNG、JPEG、WEBP、HEIC、HEIF のいずれかであることを確かめます。PDFや動画で届いたものは担当者に回します
  2. 大きさの確認 … 長い辺を決めた画素数に縮め、リクエスト全体で20MBに収まるようにします
  3. 枚数の確認 … 枚数が多い案件は Files API で上げ、1回の呼び出しに渡す枚数を決めておきます
  4. 重複の除去 … 同じ写真が二度上げられていれば、片方だけを使います
  5. 写り込みと写真の質の確認 … 人の顔、表札、車のナンバー、郵便物の宛名が写っていないか、ぼけ・暗さ・逆光で見えないかを、Gemini API に先に確かめさせます

5番目を、所見の作成と分けて先に行います。 1回の呼び出しで両方をさせると、ぼけた写真からも所見が返り、見えていない損傷が受付票に書かれます。 質の確認で unusable(使えない)とされた写真は、所見の作成に渡さず、撮り直しの依頼の材料にします。

写り込みは、写真を止めるのではなく印を付けます。 住宅の写真には、表札や家族、隣家、車が写るのが普通です。病院の写真のように撮り直しを求めると、契約者の負担が大きすぎます。 受付票に貼る写真では、写り込んだ位置にぼかしをかけた版を作り、元の写真は受付システムの中だけで扱います。

Step5

AIに処理させる

させるのは、写真ごとに、どの部位が写っていて、そこにどんな損傷が見えるかを返すことです。

見るもの判定の仕方判断できないときの扱い
写っている部位部位の一覧から選ぶ。1枚に複数あれば複数部位が分からなければ unknown_part
損傷の種類破損・割れ、はがれ・ずれ、変形・へこみ、穴、浸水の跡、しみ・変色、焼け・すす、から選ぶ損傷か汚れか区別がつかなければ uncertain
損傷の程度軽微(表面の傷・小さな欠け)、中程度(部材の一部の破損)、大きい(部材の脱落・貫通・広い範囲)、から選ぶ近接の写真が無ければ not_assessable
写真で確かめられたか部位の面が見えているか遠すぎる・角度が浅い・隠れていれば not_visible
浸水の跡の高さ床からどのあたりまでか(床より下・床の上・壁の中ほど)基準になる物が写っていなければ not_assessable

右端の列がいちばん大事です。 not_visible は、その部位が写真に写っていないか、見える状態で写っていないということで、被害が無いということではありません。 地上から見上げた屋根の写真で、屋根材のずれが見えないのは当然で、それを「屋根に被害なし」と書くと、現地調査に回すべき案件が落ちます。

させないこと理由
損傷の原因の推定(台風か、経年劣化か)支払の判断に直結する。現地調査と鑑定で決める
補償の対象になるかの判断契約の内容と約款で決まる。担当者が決める
損害額や修理費の見積り修理の見積書と現地調査で決まる
写っていない部位の推測写っていないものは not_visible。「おそらく被害なし」と書かない
契約者の説明の真偽の評価説明と写真の食い違いは事実として並べ、評価は人がする

1行目が、いちばん起きやすい失敗です。 色あせた屋根材やさびた雨どいの写真を渡すと、AIは「経年劣化と思われる」と書きがちです。受付票にその一文が残ると、後の支払の判断に先入観を持ち込みます。 原因は見たままの事実(「さびが見える」「色あせが見える」)だけを書かせます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは損害保険会社の事故受付で、契約者から届いた住宅の被害写真の所見を書く担当です。
渡された写真だけを見て、写っている部位と、見える損傷を書いてください。
写真に写っていないことを推測しないでください。

【写真】{images}(写真番号つき)
【事故の種類】{accident_type}
【契約者の説明】{description}
【部位の一覧】{part_list}

【写真ごとに返すこと】
- parts:写っている部位を部位の一覧から選ぶ。分からなければ unknown_part
- visibility:その部位の面が見えているか
    visible ...... 部位の面が見え、損傷の有無を判断できる
    not_visible .. 遠すぎる、角度が浅い、物に隠れている
- damages:見える損傷ごとに、種類・程度・位置の枠・根拠
    種類:break(破損・割れ)/peel(はがれ・ずれ)/deform(変形・へこみ)/
          hole(穴)/water_mark(浸水の跡)/stain(しみ・変色)/burn(焼け・すす)/uncertain
    程度:minor(軽微)/moderate(中程度)/severe(大きい)/not_assessable
    位置:box_2d に [ymin, xmin, ymax, xmax]、0〜1000 に正規化した座標

【厳守事項】
- 部位が見えていないときに「損傷なし」と書かない。visibility を not_visible にする。
- 損傷の原因(台風、雪、経年劣化、施工の不良など)を書かない。
  さび、色あせ、こけなどは、見えたままを evidence に書くだけにする。
- 補償の対象になるか、保険金が出るかを書かない。
- 損害額や修理の費用を書かない。
- 契約者の説明が正しいか、うそかを評価しない。
- 説明にある部位が写真に見つからないときは、missing_from_photos にその部位を入れる。
- 損傷か汚れか影かを区別できないときは uncertain にする。迷ったら uncertain。
- 程度は、近くから撮った写真が無いときは not_assessable にする。
- evidence には、写真のどこに何が見えるかを短く書く。

「損傷の原因を書かない」を明記しないと、ほぼ必ず書きます。 住宅の被害写真は「台風の被害」として送られてくるので、AIは説明に引きずられて「強風による破損と考えられる」と書きます。原因の言葉が1つでも入った所見は、受付票の記録として残すべきではありません。

「見えていないときに損傷なしと書かない」も同じです。 屋根の写真が全景の1枚しかないとき、AIは見える範囲で「目立った損傷は見られない」と書きます。この一文が、現地調査の要らない案件に見せてしまいます。

写り込みと写真の質の確認は、別の短い指示で先に行います。 「この写真に、人の顔、表札の文字、車のナンバー、郵便物の宛名が写っているか。写っていれば位置を枠で返す。ぼけ・暗さ・逆光で写真の内容が判断できなければ unusable」と指示し、迷ったら unusable の側に倒します。 撮り直しを頼むほうが、見えない写真から所見を書くより害が小さいためです。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "claim_no": "",
  "photos": [
    { "photo_no": 1, "quality": "ok | unusable",
      "parts": ["roof"], "visibility": "visible | not_visible",
      "damages": [
        { "part": "roof", "type": "break | peel | deform | hole | water_mark | stain | burn | uncertain",
          "severity": "minor | moderate | severe | not_assessable",
          "box_2d": [0, 0, 0, 0], "evidence": "" }
      ] }
  ],
  "missing_from_photos": [""],
  "privacy_marks": [ { "photo_no": 1, "kind": "face | nameplate | license_plate | address", "box_2d": [0, 0, 0, 0] } ]
}

スキーマでは type・severity・visibility を enum にし、damages の各要素の additionalProperties を false にします。

1つ目の理由は、部位ごとのまとめを規則で作れることです。 Python は写真ごとの結果を部位でまとめ、部位ごとに「確かめられた写真があるか」「いちばん重い程度は何か」を出します。

部位ごとの状態受付票の下書きでの扱い
visible の写真があり、損傷あり損傷の種類と、いちばん重い程度を書く
visible の写真があり、損傷なし「写真の範囲では損傷は確認できず」と書く。「被害なし」とは書かない
not_visible の写真しかない「写真では確認できず」。撮り直しか現地調査の候補
説明にあるが写真が無い「写真なし」。撮り直しの依頼に入れる

2行目の書き方が要です。 写真で見えた範囲に損傷が無いことと、部位に被害が無いことは違います。受付票の文言を最初から固定しておけば、担当者ごとに書き方が分かれません。

2つ目は、現地調査の候補を規則で決められることです。 たとえば次のような規則を、会社の基準に合わせて持ちます。

規則の例理由
屋根が not_visible のみ、かつ事故の種類が風災・雪災地上からは屋根の被害が見えない
severe が1つ以上ある部材の脱落や貫通は、写真だけで範囲が決まらない
浸水の跡が床の上にある床上の浸水かどうかは現地で確かめる
損傷のある部位が一定の数を超える被害の範囲が広い
説明にある部位が撮り直しの後も写真に無い写真での確認が続けられない

3つ目は、撮り直しの依頼を具体的に書けることです。 missing_from_photos と not_visible の部位、unusable の写真の番号から、「2階の天井のしみを、部屋全体が入るように1枚と、しみに近づいて1枚」のように、何をどう撮ってほしいかを部位ごとに書いた依頼の下書きを作ります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
事故受付システム受付の知らせを受けて Python を呼ぶ受付番号、事故の内容、写真を受け取る
Gemini APIPython から呼び出し写り込みと写真の質の確認、写真ごとの所見
契約管理システム読み取りのみ契約の区分と補償の範囲(規則にだけ使う)
事故受付システム下書きを返す受付票の下書き、撮り直しの依頼の下書き、枠付きの写真

受付票の確定と、契約者への送信は人が行います。 このプログラムは、受付システムの「下書き」の欄に書き込むだけで、確定の操作をしません。撮り直しの依頼も、担当者が文面を確かめてから送ります。 被害を受けた直後の契約者に送る連絡で、言葉の選び方を人が決めるためです。

Step9

人が確認する

下書きは全件を受付の担当者が確かめます。 受付票は、その後の損害サービスの担当者、鑑定人、契約者への説明のすべての出発点になるためです。

  1. 現地調査の候補と撮り直しの要る案件を先に見る … 一覧の上に出ます。調査の手配と撮り直しの依頼は、早いほど被害の状態が残ります
  2. 枠を見て、所見が合っているかを選ぶ … 写真に重ねた枠を見て、部位・種類・程度を確かめます。違えば直します
  3. uncertain と not_assessable を決める … 写真を拡大して見るか、撮り直しの依頼に入れます
  4. 撮り直しの依頼の文面を確かめて送る … 契約者の状況(高齢、避難中など)に合わせて言葉を直します
  5. 現地調査に回すかを決める … 規則の候補を見て、手配の状況も踏まえて決めます

目標は、1件をならして8分です。 写真が足りていて損傷の少ない案件は枠を流し見て数分、写真の多い案件や撮り直しの要る案件は10分を超えます。それを大きく超える月は、unusable の写真が増えているか、部位の一覧が実際の住宅に合っていないかのどちらかです。

2番目で直した内容を記録します。 部位の取り違え、損傷の見落とし、汚れを損傷と読んだもの、のどれかを選ばせると、多い型から指示と部位の一覧を直せます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
写真の形式が対応していない対応形式は PNG・JPEG・WEBP・HEIC・HEIF。変換して再投入。動画は担当者に回す
写真が大きすぎるリクエスト全体で20MBまで。縮めるか Files API を使う
すべての写真が unusable所見を作らず、撮り直しの依頼の下書きだけを作る
住宅の写真でない(書類、見積書、車など)所見から外し、担当者に書類として回す
火災で室内が暗く、すすで部位が分からないunknown_part が多ければ、写真での所見をやめて現地調査の候補にする
撮影の日時が事故の日より前に見える判定に使わず、担当者への確認の印だけを付ける
Gemini API が応答しない・形が崩れる受付票に「所見の下書きなし」と出し、担当者がこれまでどおり書く。次の呼び出しで再試行する
災害の後で受付が急増する所見の作成は順に進め、一覧は現地調査の候補から並べる
Step11

記録を残す

  • 元の写真と、受付票に貼るぼかしをかけた版(どちらも受付システムの中)
  • 写り込みと写真の質の確認の結果
  • 写真ごとの所見のJSONの全文と、呼び出した日時、使ったモデルの名前
  • 部位ごとのまとめと、適用した規則(どの規則で現地調査の候補にしたか)
  • 担当者が直した所見と、直した理由の区分
  • 撮り直しを頼んだ日時と、追加の写真が届いた日時

4つ目で「適用した規則」を残すのは、規則が後から変わるためです。 災害の規模によって現地調査の基準を変えると、過去の案件がなぜ調査に回ったのかが分からなくなります。規則の版を一緒に残せば、後から説明できます。

04実装レベルの3段階

最小構成:写真と部位の一覧をAIの画面に貼り、写真ごとの所見を返させる / 1件ごとの所見の確認
半自動化:上記+受付システムから Python で呼び、写り込みの確認と所見を一覧に書く / 写り込みの確認と写真ごとの所見の一覧化
本格構成:上記+部位ごとのまとめ、現地調査の候補、受付票と撮り直しの依頼の下書きを枠付きで作る / 写真から受付票の下書きと依頼の下書きまで

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ貼るので、月600件には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1件20分が14分程度になります。 写真ごとの所見は一覧で出ますが、部位ごとのまとめと受付票への書き写し、撮り直しの依頼の作成が残ります。本格構成で8分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、not_visible の多い部位と、取り違えの多い部位が分かります。そこを直してから現地調査の規則を決めるほうが、調査の空振りと取りこぼしが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  600件 × 20分 ÷ 60 = 200 時間/月
導入後 600件 × 8分 ÷ 60 = 80 時間/月
月間削減時間
120h
削減率
60%
年間削減時間
1,440h
年間金額換算(時間単価3,500円)
504万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 火災保険・共済の事故受付で、契約者や代理店からWebの受付やメールで住宅の被害写真を受け取り、受付の担当者が写真を1枚ずつ見て受付票に書き起こしている損害保険会社・共済。台風・大雪・大雨の後に受付が集中し、写真の見方と現地調査に回す基準が担当者によって違う場合。賃貸住宅の管理会社が、入居者から届く建物の被害写真を保険の請求の前に整理する場合にも当てはまります。
向いていない
  1. 受付の件数が月に数十件で、写真の確認が担当者の目で足りる場合。写真を受け取る仕組みが無く、事故の連絡が電話だけで終わる場合。損害額の算定や、補償の対象になるか(原因が風災か経年劣化かなど)をAIに決めさせたい場合。なお、保険金を支払うかどうか、損害の原因、損害額の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の受付から30件を選ぶ(現地調査に回した案件と、回さなかった案件の両方を入れる)
  2. 人の顔や表札が大きく写っていない写真の案件だけを選ぶ
  3. 社内で使ってよいと認められた生成AIの画面に、写真と部位の一覧を貼る
  4. 第7章の指示で、写真ごとの所見を返させる
  5. 当時の受付票と、現地調査の結果と比べる

比べるのは、所見の細かさではありません。 見るのは、写っていない部位を「損傷なし」にしていないか、原因を書いていないか、現地調査に回った案件で not_visible や severe が出ているか、の3つです。

出てきた内容判断
当時の受付票と同じ部位・損傷が出て、調査に回った案件で印が出た受付システムとの連携に進む
原因や「被害なし」を書いた指示の書き方で直る。構成は有効
汚れやこけを損傷と読む損傷の種類の説明を具体的にする
ほとんどの写真が not_visible か unusable契約者への撮り方の案内が先。 AIの問題ではない

4行目が出たら、フォームの写真の案内から直してください。 「家の全景を1枚」「被害の場所が分かる距離で1枚」「被害に近づいて1枚」のように、撮る位置を見本の画像つきで示すと、人が見るときも速くなります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
地上から撮った屋根を「被害なし」とするnot_visible を設け、見えていないときに損傷なしと書かないと指示する
所見に「経年劣化と思われる」と書く原因を書かせない。 さびや色あせは見えたままを書く
説明に引きずられて「台風による破損」と書く原因の言葉を禁じる。説明は部位を探す手がかりにだけ使う
ぼけた写真から所見を書く写真の質の確認を先に別の呼び出しで行い、unusable は所見に渡さない
汚れ・こけ・影を損傷と読む損傷の種類に uncertain を設け、迷ったら選ばせる
現地調査の基準をAIに決めさせる事実だけを返させ、調査の候補は規則で決める
補償の範囲を渡して支払の判断を書かせてしまう契約の情報はAIに渡さず、規則にだけ使う
撮り直しの依頼が自動で契約者に届く下書きまでにする。 送信は担当者が行う
無償の枠で試してしまう無償のサービスに個人の情報を送らない。有料の利用で始める

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「写真に見えたこと」の外へAIが踏み出す失敗です。見えたことだけを書かせる枠を最初に作れば、残りは調整で直ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 住宅の外観と室内の写真、事故の説明、受付番号です。写真には、表札、家族、車のナンバー、郵便物の宛名、室内の私物が写り込みます。 住所と結びつけば、個人を特定できる情報です。

  1. 有料の利用条件で使う … 規約では、有料のサービスでは送った内容を製品の改善に使わないとされています。無償の枠では使いません
  2. AIに渡す情報を写真と事故の説明に限る … 契約者の氏名、住所、契約の番号、補償の内容はAIに渡しません。受付番号だけで結びつけ、結びつけは受付システムの側で行います
  3. 写り込みにぼかしをかけた版を使い回す … 受付票に貼る写真、社内で共有する写真は、ぼかしをかけた版にします。元の写真を見られる人を限ります
  4. 支払の判断を代替させない … 規約は、金融などの専門的な助言をサービスに頼らないよう求めています。保険金を支払うか、損害の原因、損害額は、担当者と鑑定人が決めます
  5. 契約者への連絡を自動で送らない … 撮り直しの依頼も、被害を受けた直後の契約者への連絡です。言葉の選び方は人が決めます
  6. 利用者の年齢の条件を確かめる … 規約は、APIの利用者が18歳以上であることを求めています。使うのは受付の担当者に限り、契約者がAIを直接使う構成にしません

誤りが起きた場合のリスクは、見えていない被害を「無い」と記録することと、原因を先取りした所見が支払の判断に影響することの2つです。 前者は not_visible を設けないと起き、後者は原因を書かせると起きます。どちらも、写真に見えたことだけを書かせる設計で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:部位の一覧と撮り方の基準を作る

受付票の項目に合わせて部位の一覧を作り、事故の種類ごとに要る写真(全景、近接、室内の全体)を書き出します。損傷の程度の3段階の言葉も、ここで受付票の区分に合わせます。

2週目:30件の写真で試す

過去の受付から30件を選び、生成AIの画面で写真ごとの所見を返させます。写っていない部位を「損傷なし」にしていないか、原因を書いていないかを最優先で見ます。

3週目:写り込みと写真の質の確認を作る

受付システムから Python を呼び、写り込みと写真の質の確認だけを動かします。この時点では所見を作らず、unusable の判定と撮り直しの依頼の下書きを固めます。

4週目:写真ごとの所見を一覧に書く

質の確認を通った写真について、写真ごとの所見を一覧に書き出します。受付票の下書きはまだ作らず、受付の担当者が一覧と写真を見比べます。

2か月目: 部位ごとのまとめと現地調査の候補の規則を足し、受付票の下書きを作ります。not_visible と unusable の発生率を毎週数えます。3か月目以降: 1件20分が何分になったかを実測します。担当者が直した所見の型を見て指示と部位の一覧を直し、撮り直しの依頼が受付の当日に出せるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
事故の後はまず緊急の措置をし、保険会社または代理店へ連絡すること。保険会社から保険金の請求に必要な書類の用意を依頼されること。保険会社は事故を受け付けた後に事故の調査を行い、調査は提出された資料に基づいて事故の状況や損害の状況を確認すること。手続きは保険会社・商品・契約によって異なること消防庁 防災・危機管理e-カレッジ: 損害保険の請求について2026-10-08
対応する画像の形式が PNG・JPEG・WEBP・HEIC・HEIF であること。画像を直接入れる場合はリクエスト全体で20MBまでで、大きい場合は Files API を使うこと。物体の位置を [ymin, xmin, ymax, xmax] で0〜1000に正規化して返すこと。例が Interactions API で書かれていることGemini API: Image understanding2026-10-08
media_resolution の値が low・medium・high・ultra_high で、Gemini 3 のモデルの画像1枚あたりのトークンがそれぞれ280・560・1120・2240であること。ultra_high は画像ごとの指定に限られること。画像の分析には high が勧められていることGemini API: Media resolution2026-10-08
構造化出力が /v1beta/interactions で response_format に mime_type と schema を渡す形であること。enum・required・additionalProperties などが使えること。すべての JSON Schema の機能には対応せず、大きすぎる・深すぎるスキーマは拒否されうること。値はアプリ側で確かめるよう勧めていることGemini API: Structured output2026-10-08
Files API に上げたファイルが48時間で自動的に削除されること。上げたファイルはダウンロードできないこと。1ファイル2GB、プロジェクトあたり20GBまでであることGemini API: Files API2026-10-08
利用者は18歳以上であること。無償のサービスでは送った内容が製品の改善に使われ人が読むことがあり、機微・機密・個人の情報を送らないこと。有料のサービスでは製品の改善に使わないこと。医療・法律・金融などの専門的な助言をサービスに頼らないことGemini API: Additional Terms of Service2026-10-08

保険金を支払うかどうか、損害の原因と損害額は、損害サービスの担当者と鑑定人が決めてください。 本記事は公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0910)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次