Media > AI活用ユースケース > 法務 > 商社・物流会社の輸出入の担当から出る「この貨物はどの手続きが要るか」の質問に、社内の通関手順書・税関への照会記録・税関の公開資料を根拠にチャットで答え、判断の要るものを通関の責任者へ回す

商社・物流会社の輸出入の担当から出る「この貨物はどの手続きが要るか」の質問に、社内の通関手順書・税関への照会記録・税関の公開資料を根拠にチャットで答え、判断の要るものを通関の責任者へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

営業部門の輸出入の担当が「この貨物はどの手続きが要るか」とチャットで聞くと、社内の通関手順書、過去の税関への照会記録、税関の公開資料を根拠に、要る手続きと書類を出典付きで返します。判断の要る質問は通関の責任者へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
商社/物流/製造
対象部門
法務/物流
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/問い合わせが多い/属人化している
AIで行う処理
対話
主な効果
判断支援/対応スピード向上/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
35h/月
想定削減
65%
年間削減
780h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 営業部門の担当が、品名・用途・仕入先・輸出入の別をチャットで通関チームに送る
  2. 通関チームの担当者が、足りない情報(成分、材質、用途の詳細)を聞き返す
  3. 通関手順書の該当する章を開き、手続きの流れと書類を確かめる
  4. 部門のフォルダで、同じ品目や同じ仕入先の照会記録を探す
  5. 税関の公開資料で、関係しそうな他法令を確かめる
  6. 手続きと書類をまとめて返す。他法令に当たるかが分からないものは、主管の省庁に確かめるよう伝える
導入後(After)
  1. 人営業部門の担当がチャットのボットを開き、輸出か輸入か、品目の区分(食品、化学品、機械、雑貨、その他)を選ぶ
  2. 人品名・用途・仕入先を書いて質問する
  3. 自動中継プログラムが、責任者へ回す規則に当たるかを先に見る(該非、関税分類、輸出の規制、事前教示の要否)
  4. 自動当たらなければ、検索基盤が絞った文書から根拠を探し、要る手続きと書類の一覧を作る
  5. 自動中継プログラムが、照会記録を根拠にしたときは、文書の回答か口頭のメモかと、回答日を添える
  6. 自動根拠が見つからない、根拠が弱い、照会記録が3年を過ぎた文書の回答だけ、のどれかなら答えずに責任者へ回す
  7. 人営業部門の担当が、返ってきた書類の一覧で案件の準備を進める
  8. 人通関の責任者が、回ってきた質問を判断し、必要なら主管の省庁や税関に照会する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 営業部門の担当が、品名・用途・仕入先・輸出入の別をチャットで通関チームに送る
  2. 通関チームの担当者が、足りない情報(成分、材質、用途の詳細)を聞き返す
  3. 通関手順書の該当する章を開き、手続きの流れと書類を確かめる
  4. 部門のフォルダで、同じ品目や同じ仕入先の照会記録を探す
  5. 税関の公開資料で、関係しそうな他法令を確かめる
  6. 手続きと書類をまとめて返す。他法令に当たるかが分からないものは、主管の省庁に確かめるよう伝える

(a)同じ質問が部門をまたいで来る。 「食品の輸入で、通関の前に何が要るか」は、食品原料の部門の担当が替わるたびに届きます。答えた内容はチャットの個別のやり取りに埋もれ、次の担当者は探せません。

(b)照会記録が探せない。 同じ仕入先の同じ品目について、5年前に事前教示を受けていたことが、質問に答えた後で分かることがあります。

(c)口頭の答えと文書の答えが混ざる。 古いメモに「税関に確認済み」と書かれていても、電話で聞いたのか、文書で回答を受けたのかが分かりません。 前者は通関の審査で尊重されるものではありません。

(d)言い切ってしまう。 急ぐ営業部門に「たぶん要りません」と答えると、それが社内では「通関チームの判断」として扱われます。 他法令の該非は、通関チームが決められることではありません。

  1. 【人】 営業部門の担当がチャットのボットを開き、輸出か輸入か、品目の区分(食品、化学品、機械、雑貨、その他)を選ぶ
  2. 【人】 品名・用途・仕入先を書いて質問する
  3. 【自動】 中継プログラムが、責任者へ回す規則に当たるかを先に見る(該非、関税分類、輸出の規制、事前教示の要否)
  4. 【自動】 当たらなければ、検索基盤が絞った文書から根拠を探し、要る手続きと書類の一覧を作る
  5. 【自動】 中継プログラムが、照会記録を根拠にしたときは、文書の回答か口頭のメモかと、回答日を添える
  6. 【自動】 根拠が見つからない、根拠が弱い、照会記録が3年を過ぎた文書の回答だけ、のどれかなら答えずに責任者へ回す
  7. 【人】 営業部門の担当が、返ってきた書類の一覧で案件の準備を進める
  8. 【人】 通関の責任者が、回ってきた質問を判断し、必要なら主管の省庁や税関に照会する

3番目が、この設計の分かれ目です。 「この貨物は〇〇法に当たるか」は、検索で根拠を探せば答えらしいものが作れてしまう質問です。作れてしまうからこそ、検索にかける前に規則で取り出します。

6番目で、3年を過ぎた文書の回答を止めるのは、事前教示の回答書が尊重される期間が原則3年だからです。 過ぎた回答は、今の通関で同じ扱いになるとは限りません。責任者が、照会し直すかを決めます。

02今回想定するシステム構成

構成図
社内チャットのボット(営業部門の輸出入の担当が使う)
   │  ① 輸出入の別・品目の区分を選ぶ  ② 質問を書く
   ▼
中継プログラム(Cloud Run)
   ├──▶ 責任者へ回す規則に当たるか(該非・関税分類・輸出の規制・事前教示の要否)
   ▼  当たらない
Vertex AI Search(Agent Search)── answer メソッド
   │   絞り込み:direction・goods_class・doc_type・status
   │   データストア:通関手順書/照会記録(文書・口頭)/税関の公開資料の写し
   ▼
中継プログラム ── 照会記録の種類と回答日を添える/根拠が弱い・3年超なら責任者へ
   ▼
チャットに返す / 会話と引き継ぎの記録を保管・集計
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドとデータストアAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、チャットと検索基盤と受付の一覧をつなぐ)Node.js で同じものを書く
集計BigQuery(会話と引き継ぎの記録の保管と、月次の集計)Google スプレッドシート
保管Cloud Storage(手順書・照会記録・税関の資料の写しとメタデータ)─

案件管理の表と通関業者のシステムには、つなぎません。 案件の情報をチャットから引かないことで、取引先と金額の情報がこの構成を通らないようにします。

土台になるのは、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式のドキュメントには「Vertex AI Search is being renamed to Agent Search.」と書かれており、製品は Agent Search へ改称されつつあります。 本記事では両方の名前を併記します。answer メソッドはセッションを使った複数回のやり取りに対応し、includeCitations で出典を、答えの裏付けの強さを0〜1の値で返せます。

税関の公開資料は、ウェブサイトとしてではなく、文書として取り込みます。 ウェブサイトのデータを答えの生成に使うには、高度なウェブサイトのインデックス登録が要り、それにはドメインの所有の確認が必要です。税関のサイトは自社のドメインではないので、この方法は使えません。 そこで、使うページを通関チームが取得し、取得日と元のURLを付けて Cloud Storage に置きます。取得日が付いていることで、「いつの時点の一覧で答えたか」を後から示せます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

営業部門の担当がボットに質問を書いたときに動きます。 最初に輸出か輸入か、品目の区分を選んでもらい、選ぶまで質問欄を開きません。 輸出と輸入では、関係する他法令の一覧そのものが違います。選ばせることで、輸入の手続きを輸出の質問に返す誤りを防ぎます。

1つの会話は、同じ輸出入の別と品目の区分のまま続けます。 answer メソッドはセッションで前の質問を踏まえ、queryRephraserSpec で質問を言い換えて検索します。別の品目の話をするときは、会話を新しく始めてもらいます。

税関の資料の取り込みは、月に1回、通関チームが行います。 他法令の一覧には「令和〇年〇月現在」と書かれており、更新されたら取り直します。 取り直したら、古い写しは archived にして検索から外します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
営業部門の質問質問の文面、選んだ輸出入の別と品目の区分、会話の中の前の質問社内チャットのボット
通関手順書輸出・輸入の手続きの流れ、品目の区分ごとの準備書類、通関業者への依頼の仕方通関チームが持つ正本
照会記録(文書)事前教示の照会書と回答書の写し、回答日、対象の品目部門ごとのフォルダから集めたもの
照会記録(口頭)電話・窓口で税関に聞いたときのメモ、聞いた日、相手の部署同上
税関の公開資料輸出入の他法令の一覧、手続きの解説(カスタムスアンサー)税関のページから取得した写し
責任者へ回す規則回す質問の種類と見分け方通関の責任者が決めて持つ一覧

質を決めるのは、照会記録の持ち方です。 文書の回答と口頭のメモを同じフォルダに混ぜて載せると、答えの出典に「税関に照会済み」とだけ出て、重みの違いが消えます。 取り込むときに、どちらかを必ず項目にします。

照会記録からは、取引先の名前と金額を伏せます。 必要なのは、品目と、何を聞いて何と答えられたかです。

Step3

データの取得方法を決める

文書は Cloud Storage のフォルダに置き、メタデータと一緒にデータストアへ取り込みます。 1文書ごとに次のメタデータを付けます。

メタデータ値の例使いどころ
directionimport、export、both輸出入の別で範囲を切る
goods_classfood、chemical、machinery、sundries、common品目の区分で範囲を切る
doc_typemanual、ruling_written、inquiry_oral、customs_public出典の表示と、重みの区別
answered_at照会の回答日(ISO 8601 の日付)3年を過ぎた文書の回答の検知
retrieved_at税関の資料の取得日いつの時点の資料かを示す
source_url税関の資料の元のURL出典として原文へ案内する
section通関手順書の章の番号と見出し出典を章まで示す
statuspublished、archived確定した版だけを検索させる

絞り込みに使う項目は、データストアのスキーマで「Indexable」にします。 絞り込みの式は ANY() による完全一致と AND・OR・NOT、数値の比較、ISO 8601 の日時の比較で書けます。

direction: ANY("import", "both") AND goods_class: ANY("food", "common")
AND status: ANY("published")

日付で絞らないのは、3年を過ぎた回答も根拠として見つけたいからです。 見つけたうえで、中継プログラムが answered_at を見て止めます。絞り込みで消すと、「前に照会していた」という事実まで見えなくなります。

税関の資料の写しは、ページごとに1文書にし、表を崩さずに取ります。 他法令の一覧は「法令名/主な品目/主管省庁課」の表で、行が崩れると、法令名と主管省庁の組がずれます。 取得したHTMLから表の行を「法令名:〇〇 主な品目:〇〇 主管省庁:〇〇」の1行に直してから置き、ページの「〇年〇月現在」の表記と取得日を文書の先頭に書きます。

通関手順書は、章ごとに分けて載せます。 1冊を1文書にすると、出典が「通関手順書」までしか分からず、営業部門の担当は手順書の中を探し直すことになります。 章の番号と見出しをメタデータの section に持たせ、出典に章まで出します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 輸出入の別と品目の区分の確認 … 選ばれた値から、絞り込みの式を作ります。質問の文字を式に混ぜません
  2. 取引先の名前と金額の除去 … 質問の文面から、取引先の社名、価格、数量の具体的な値を伏せてから検索にかけます
  3. 責任者へ回す規則の照合 … 「当たるか」「該当するか」「対象外か」「HSコード」「税番」「該非」「リスト規制」などの言い回しを見ます
  4. 照会記録の整形(取り込み時) … 照会書と回答書を1つの文書にまとめ、品目・照会の内容・回答の内容を見出しで分けます
  5. 税関の資料の写しの確認(取り込み時) … 一覧の「〇年〇月現在」の表記を読み、retrieved_at と並べて記録します

3番目で迷うものは、責任者へ回す側に倒します。 「この溶剤は届出が要りますか」は、手続きの質問にも、該非の質問にも読めます。手続きの流れだけを返したうえで、当たるかどうかは責任者が受ける形にします。

4番目を軽く見ないでください。 回答書だけを載せると、何を聞いた答えかが分かりません。照会書と回答書を対にして1文書にすると、出典を開いた人が、質問と答えの組で読めます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、絞った文書から手続きの流れと書類を探し、出典ごとに並べることだけです。

質問の種類答え方根拠にする文書
手続きの流れ社内の手順を順番に並べる通関手順書
準備する書類品目の区分ごとの書類を一覧にする通関手順書
関係しうる他法令の一覧税関の一覧に載った法令名と主な品目と主管省庁を示す税関の公開資料
過去の照会照会の内容と回答を、文書か口頭かと回答日を添えて示す照会記録
通関業者への依頼依頼の仕方と期日の目安を示す通関手順書

3行目は「一覧を示す」までです。 税関の一覧に載った法令名と主管省庁を示し、この貨物が当たるかどうかは、主管省庁に確かめるものだと添えます。 税関の資料そのものが、他法令に当たるかの確認は主管省庁へ、と案内しているためです。

させないこと理由
他法令に当たるか、当たらないかの判断主管省庁が判断する。税関も答えない
関税分類(税番)の判断事前教示か通関の責任者の判断
輸出の規制に当たるかの判断貿易管理の担当が確かめる
口頭のメモを、文書の回答と同じ重みで示す口頭の照会は通関の審査で尊重されない
照会記録の回答を、別の品目に当てはめる回答は照会した品目についてのもの

4行目は、指示だけでなく中継プログラムでも守ります。 出典に inquiry_oral が出たときは、答えの中に「口頭での照会の記録(参考)」という文言を中継プログラムが必ず付けます。 AIの書き方に頼りません。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の内容を入れます。

あなたは専門商社の通関チームで、営業部門の輸出入の担当からの手続きの質問に答える案内係です。
検索された社内の通関手順書、税関への照会記録、税関の公開資料の写しだけを根拠に答えてください。

【答え方】
- 手続きを順番に箇条で並べ、各手順の後に「準備する書類:」として、
  手順書に書かれた書類の名前を書いてください。書かれていなければ「記載なし」と書いてください。
- 税関の公開資料を根拠にしたときは、法令名、主な品目、主管省庁を資料の表記のまま写し、
  資料の取得日を添えてください。
- 照会記録を根拠にしたときは、照会の内容と回答を分けて書き、
  文書による回答か口頭の照会の記録か、回答日を書いてください。
- 最後に必ず「他法令に当たるかどうかは主管省庁に、関税分類は通関の責任者に確かめてください」
  と書いてください。

【答えないこと】
- この貨物が特定の法令に当たる、当たらない、対象外である、と判断しないでください。
- 関税分類(税番、HSコード)を示さないでください。
- 輸出の規制に当たるかどうかを判断しないでください。
- 照会記録の回答を、照会した品目と違う品目に当てはめないでください。
- 手順書や資料に無い手続きや書類を足さないでください。

「対象外である、と判断しない」を名指しで書かないと、否定の形で判断します。 「当たるかは判断しない」とだけ書くと、「〇〇法の対象品目には含まれていないようです」と当たらない方向の判断を、判断ではない言い回しで書きます。

あわせて、answer メソッドの設定で次を有効にします。

設定値目的
includeCitationstrue答えの文ごとに出典を示す
ignoreLowRelevantContenttrue関係の薄い文書から無理に答えを作らない
ignoreNonAnswerSeekingQuerytrueあいさつや雑談に答えを作らない
searchSpec.searchParams.filter前処理で組んだ式輸出入の別と品目の区分で範囲を切る
searchSpec.searchParams.maxReturnResults15(上限25)手順書と照会記録と税関の資料をまたぐ質問に備える
queryRephraserSpec.maxRephraseSteps2(1〜5、既定1)手続きと書類を同時に聞く質問を分けて検索する
Step7

出力形式を固定する

中継プログラムは、answer の応答から次の形の記録を作ります。

{
  "session_id": "",
  "direction": "import",
  "goods_class": "food",
  "question_masked": "",
  "route": "answered | escalated_rule | escalated_no_answer | escalated_low_support | escalated_stale_ruling",
  "steps": [ { "step": "", "documents": [""], "source": { "doc_type": "manual", "section": "" } } ],
  "related_laws": [ { "law": "", "goods": "", "ministry": "", "retrieved_at": "" } ],
  "past_inquiries": [ { "type": "ruling_written | inquiry_oral", "answered_at": "", "summary_q": "", "summary_a": "" } ],
  "support_score": 0.0,
  "created_at": ""
}

1つ目の理由は、past_inquiries の type で、重みの違いを項目にできることです。 チャットの画面では、文書の回答と口頭のメモを別の見出しで表示します。

2つ目は、related_laws に取得日を持てることです。 他法令の一覧は改定されるので、どの時点の一覧で答えたかを、答えた時点で残します。

3つ目は、route で責任者へ回した理由を分けて数えられることです。 escalated_stale_ruling が多い品目は、照会し直す候補の一覧になります。

support_score は、答えがデータストアの内容にどれだけ裏付けられているかを0〜1で示す値です。 自社で決めた境目を下回ったら、答えを表示せずに責任者へ回します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
社内チャットのボット中継プログラムのAPI輸出入の別・品目の区分・質問を受け、手続きの表と出典を返す
Vertex AI Search(Agent Search)answer の呼び出し絞り込みの式を付けて、答えと出典を受け取る
責任者の受付の一覧書き込み回した質問と、伏せた後の文面と、見つかった文書を入れる
BigQuery書き込み会話の記録を保管し、月次で集計する

案件管理の表へは書き込みません。 手続きの準備が済んだかを記録するのは、営業部門の担当です。答えを受けて案件の状態が自動で変わる経路を作ると、確かめる工程が抜けます。

チャットの製品とボットの作り方は、会社が使っているものによって変わります。 チャットから中継プログラムのAPIを呼べることを前提にしており、この部分は利用環境に応じた個別実装が必要です。

Step9

人が確認する

答えを営業部門に返す前に、人が見ることはしません。 その代わり、答える範囲を手続きと書類に限り、判断は責任者に残します。

  1. 責任者へ回った質問を毎日見る … escalated_rule を先に見ます。主管省庁や税関に照会するかを決めます
  2. 答えた会話を週に1回抜き取る … 輸出の質問に輸入の手続きを返していないか、口頭のメモを文書の回答のように書いていないかを見ます
  3. 税関の資料を取り直したら確かめる … 取り込みの後、その一覧に載る品目の質問を数件投げ、新しい写しが出典に出るかを見ます
  4. 照会したら記録に足す … 責任者が税関や省庁に照会した結果は、文書か口頭かを付けて照会記録に足します

4番目が、この構成を育てます。 責任者へ回った質問が照会記録になって戻ると、次に同じ品目の質問が来たときに、根拠として出てきます。

通関チームの手は、回答から判断と記録へ移ります。 1件あたりの手間は、ボットが答えた質問の抜き取りで1分ほど、責任者へ回った質問で30分以上です。回るものの多くは新しい品目の質問なので、新規の取引が多い月は通関チームの時間が増えます。 その分、要る手続きの漏れが案件の前に見つかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
該非・関税分類・輸出の規制を聞かれた規則で責任者へ(escalated_rule)。手続きの流れだけは返す
答えが出ない「通関チームから回答します」と返し、escalated_no_answer で受付の一覧へ
根拠の裏付けが弱い答えを表示せず、escalated_low_support で責任者へ
根拠が3年を過ぎた文書の回答だけ答えを返さず、escalated_stale_ruling で責任者へ
根拠が口頭のメモだけ「参考」と添えて返し、責任者に写しを送る
税関の資料の写しが古い取得日を示し、取り直しの予定を添える
輸出入の別を取り違えて選んだ会話を新しく始めるよう案内する
検索基盤が応答しない「時間をおいて再度お試しください」と返し、通関チームの連絡先を示す

5行目は、止めずに重みを示します。 口頭のメモにも、過去に何を聞いたかという価値はあります。「参考」と分かる形で出し、責任者が文書で照会し直すかを決めます。

Step11

記録を残す

  • 会話ごとの輸出入の別・品目の区分、伏せた後の質問の文面、手続きの表、出典
  • 使った絞り込みの式と、その時点の税関の資料の取得日
  • 根拠にした照会記録の種類(文書・口頭)と回答日
  • 責任者へ回した理由、責任者の判断、照会した先と日付と答え
  • 月ごとの route の件数と、質問の多い品目の区分

2つ目で「税関の資料の取得日」を残すのは、他法令の一覧が改定されるためです。 後から手続きの漏れを聞かれたとき、その時点でどの一覧を根拠に答えたかを示せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:文書を生成AIに読み込ませ、通関チームが回答の下書きを作らせる / 1件ごとの該当箇所探しと下書き
半自動化:上記+検索基盤に手順書・照会記録・税関の資料を載せ、通関チームが検索に使う / 輸出入の別と品目で絞った該当箇所探し。回答は人
本格構成:上記+営業部門の担当がボットで直接質問し、出典付きの手続きの表と引き継ぎを自動で回す / 手続きの質問への回答と、責任者への振り分け

半自動化で、1件20分が12分程度になります。 文書をまたいで探す時間が減りますが、質問の受付と回答は残ります。本格構成で7分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、手続きと書類だけで済む質問が通関チームを通らなくなるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の間に、照会記録の文書と口頭の分け方の誤りと、品目の区分の付け間違いが見つかります。直してから営業部門に開くほうが、輸出の質問に輸入の手続きを返す誤りが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
7 分
現在  300件 × 20分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 300件 × 7分 ÷ 60 = 35 時間/月
月間削減時間
65h
削減率
65%
年間削減時間
780h
年間金額換算(時間単価3,500円)
273万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 営業部門ごとに輸出入の担当がいて、通関の手続きの質問が本社の物流部や通関のチームに集まる商社・専門商社・物流会社・メーカーの貿易部門。食品、化学品、機械、雑貨のように扱う品目が広く、関係する他法令が品目ごとに違う場合。過去に税関へ照会した記録や事前教示の回答書を持っているのに、担当者のフォルダに散らばって探せない場合。
向いていない
  1. 扱う品目が数種類に限られ、手続きが毎回同じ場合。通関をすべて通関業者に任せ、社内で手続きの質問がほとんど出ない場合。税関への照会の記録を残していない場合。なお、関税分類(HSコード)の判断、他法令に当たるかどうかの判断、輸出の規制に当たるかの判断は、通関の責任者と主管の省庁が行い、この構成はそれを代わりに行いません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の質問から30件を選ぶ(該非を聞く質問と、過去に照会があった品目の質問を必ず混ぜる)
  2. 通関手順書と、税関の輸入・輸出の他法令の一覧のページ、30件に関係する照会記録を集める
  3. 手元の生成AIのサービスに文書を読み込ませ、1件ずつ質問する
  4. 「この文書に書かれていることだけで、手続きと準備する書類を並べてください。他法令に当たるかは判断しないでください。照会記録を使ったら、文書の回答か口頭の照会かと回答日を書いてください」と指示する
  5. 出てきた答えを、当時通関チームが返した答えと突き合わせる

30件は必ずやってください。 ボットを作る前に、「判断をせずに、手続きと書類だけで答えられる質問がどれだけあるか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時と同じ手続きと書類を、出典付きで返したデータストアと絞り込みの組み立てに進む
「対象外です」と判断した指示の書き方で直る。構成は有効
文書の回答か口頭のメモかが分からない照会記録の持ち方を先に直す

3行目は、照会記録を集め直す作業になります。 古いメモほど、文書か口頭かが書かれていません。分からないものは口頭として扱い、文書の回答は回答書の写しがあるものに限ります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「対象外です」と判断する否定の形の判断も名指しで禁じ、規則で先に取り出す
輸出の質問に輸入の手続きを返す輸出入の別を選ばせ、direction で絞る
口頭のメモを文書の回答のように書くdoc_type を分け、中継プログラムが「参考」を付ける
3年を過ぎた回答で答えるanswered_at を見て止める。絞り込みでは消さない
税関のサイトをそのまま検索させようとする答えの生成にはドメインの確認が要る。写しを文書として取り込む
税関の資料が古いまま取得日を持たせ、月に1回取り直す
メタデータを付けたのに絞り込めないスキーマで Indexable にする
照会記録の回答を別の品目に当てはめる当てはめを禁じ、照会した品目を出典に必ず出す
取引先の名前が記録に残る検索の前に伏せ、伏せた後の文面を残す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、正しい言葉で判断の要ることを答えるという形をしています。AIの精度ではなく、答える範囲の問題です。

6行目は、運用に乗るかを決めます。 他法令の一覧が改定されたのに写しが古いままだと、営業部門の担当は結局、通関チームに聞き直します。 取り直す担当と月の中の日を決め、取得日がひと月より古い写しが残っていないかを集計で見ます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 社内の通関手順書、税関への照会記録、税関の公開資料の写し、営業部門の質問の文面と会話の記録。質問の中に、取引先の名前や価格、新しい商品の成分が書き込まれることがあります。

  1. 取引先と金額を通さない … 案件管理の表につながず、質問の文面からも取引先の名前と価格を伏せます。手続きの質問に取引先の名前は要りません
  2. 判断を仕組みに乗せない … 他法令の該非、関税分類、輸出の規制は、規則で責任者へ回します。答えらしいものが作れる質問ほど、検索にかけません
  3. 照会記録の重みを示す … 文書の回答と口頭のメモを分け、口頭の照会が通関の審査で尊重されないことを、答えの中で示します
  4. 事前教示の回答の公開に注意する … 税関のページでは、文書回答の内容は原則として税関のホームページ等で公開されるとされ、照会者の正当な理由があれば180日を超えない非公開の期間を求められます。新しい品目の照会は、公開の時期を見込んで出すかを営業部門と決めます
  5. AIが答えていることを示す … ボットの最初に、AIが手順書と資料から手続きを示すこと、判断は通関の責任者と主管省庁が行うことを書きます

誤りが起きた場合のリスクは、要る手続きを「要らない」と伝えることと、古い照会の回答で答えることの2つです。 前者は判断の質問を規則で止めることで、後者は回答日を見て止めることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:照会記録を集め、文書と口頭に分ける

部門ごとのフォルダから照会記録を集め、回答書の写しがあるものを文書、それ以外を口頭として分けます。照会書と回答書を対にし、品目・照会の内容・回答の内容を見出しで分けます。

2週目:30件で試す

先月の質問から30件を選び、手元の生成AIに文書を読み込ませて答えさせます。「対象外です」と判断していないか、口頭のメモを文書の回答のように書いていないかを最優先で見ます。

3週目:責任者へ回す規則を決める

どの質問を責任者へ回すかを、通関の責任者と貿易管理の担当で決めます。 該非、関税分類、輸出の規制、事前教示の要否は必ず入れます。

4週目:データストアを作り、通関チームで使う

Cloud Storage に手順書と照会記録と税関の資料の写しを置き、Vertex AI Search(Agent Search)のデータストアを作ります。この時点では営業部門に開かず、通関チームが回答の根拠を探すのに使います。

2か月目: 中継プログラムとボットを作り、営業部門に開きます。route ごとの件数を毎週数えます。3か月目以降: 責任者が照会した結果を照会記録に足す流れを作り、1件20分が何分になったかを実測します。責任者へ回る質問が判断の要るものだけになり、その照会の結果が次の質問の根拠として戻ってくるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称されつつあること。answer メソッドがセッションによる複数回のやり取りと質問の言い換えに対応すること。queryRephraserSpec.maxRephraseSteps(1〜5、既定1)、includeCitations、ignoreLowRelevantContent、ignoreNonAnswerSeekingQuery、promptSpec.preamble、maxReturnResults(既定10、上限25)。答えの裏付けを0〜1の値で返せることGoogle Cloud: Agent Search の answer メソッド2026-10-06
高度なウェブサイトのインデックス登録にドメインの確認が要ること。answer メソッドによる要約などの機能に高度なウェブサイトのインデックス登録が要ることGoogle Cloud: Agent Search の高度な機能2026-10-06
絞り込みに使う項目をスキーマで Indexable にすること。ANY() の完全一致、AND・OR・NOT、数値と日時(ISO 8601)の比較。メタデータ付きの非構造化データでも絞り込めることGoogle Cloud: Agent Search のメタデータによる絞り込み2026-10-06
輸入に関して他法令の許可・承認等が要る貨物は、それを税関に証明して確認を受けなければ輸入が許可されないこと(関税法第70条)。輸入関係他法令の一覧。税関では他法令の該非に係る照会に答えられず、主管省庁課に確認するよう案内されていること税関: 1801 税関で確認する輸入関係他法令の概要2026-10-06
輸出に関して他法令の許可・承認等が要る貨物は、それを税関に証明して確認を受けなければ輸出が許可されないこと(関税法第70条)。輸出関係他法令の一覧(令和8年4月現在)。税関では他法令の該非に係る照会に答えられないこと税関: 5501 税関で確認する輸出関係他法令の概要2026-10-06
事前教示が関税分類・原産地・関税評価・減免税についての照会であること。原則として文書で照会し文書で回答され、回答書の内容が原則3年間尊重されること。口頭の照会は輸入通関の審査上尊重されるものではないこと。文書回答は原則として公開され、180日を超えない非公開の期間を求められること東京税関: 事前教示制度について2026-10-06

他法令に当たるかどうかは主管の省庁に、関税分類と通関の手続きの判断は通関の責任者と通関業者、必要に応じて税関の相談官に確認してください。 本記事は公開仕様と税関のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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