Media > AI活用ユースケース > 情報システム > 利用中のSaaSから届く規約・プライバシーポリシー・データ処理契約の改定通知を集め、自社の利用条件への影響を判定して確認一覧にする

利用中のSaaSから届く規約・プライバシーポリシー・データ処理契約の改定通知を集め、自社の利用条件への影響を判定して確認一覧にする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

利用中のSaaSから届く規約やプライバシーポリシーの改定通知を1か所に集め、データの保存場所、AI学習への利用、再委託、料金と解約の4つの観点で自社の利用条件とぶつかるかを判定します。結果を情報システムと法務の確認一覧にします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
EC/IT・SaaS/人材/医療/金融
対象部門
情報システム/法務
対象業務
内容確認・チェック/分類・仕分け
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
20h/月
AI導入後
6h/月
想定削減
70%
年間削減
168h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 情報システムの担当者が、管理者のメールボックスと転送されてきたメールから改定通知を探す
  2. 通知の送信元から、どのSaaSのものかを台帳で確かめる
  3. 通知の本文と、リンク先の新しい規約やポリシーを開いて読む
  4. 保存場所、AI学習への利用、再委託、料金と解約の条件に関係する変更があるかを拾い出す
  5. 導入時の審査の記録を開き、当時確かめた条件と照らし合わせる
  6. 気になる変更があれば、法務の担当者にメールで相談する
  7. 法務の担当者が条文を確かめ、同意してよいか、利用部署に何を伝えるかを決める
導入後(After)
  1. 人各部署の担当者は、自分に届いた改定通知を情報システムの共有アドレスへ転送する
  2. 自動Gmail のフィルタが、送信元と件名から改定通知に「規約改定」のラベルを付ける
  3. 自動ラベルが付いたことをきっかけに Zapier が動き、本文と送信元を取り出す
  4. 自動送信元のドメインで台帳を引き、どのSaaSか、預けているデータの区分と自社の条件を取る
  5. 自動AIが通知を読み、4つの観点ごとに「変更あり/記載なし/不明確」と、自社の条件とぶつかるかを判定する
  6. 自動判定の結果から、`conflict` / `needs_review` / `insufficient_info` / `no_impact` の4つに分ける
  7. 自動確認一覧のシートに1行足し、`conflict` は Slack で法務と情報システムに知らせる
  8. 人情報システムの担当者が、`conflict` と `insufficient_info` のものの原文を開いて読む
  9. 人法務の担当者が、`conflict` のものについて、同意するか、利用部署に何を伝えるかを決める
  10. 人週に1回、`no_impact` のものを一覧で流し見る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 情報システムの担当者が、管理者のメールボックスと転送されてきたメールから改定通知を探す
  2. 通知の送信元から、どのSaaSのものかを台帳で確かめる
  3. 通知の本文と、リンク先の新しい規約やポリシーを開いて読む
  4. 保存場所、AI学習への利用、再委託、料金と解約の条件に関係する変更があるかを拾い出す
  5. 導入時の審査の記録を開き、当時確かめた条件と照らし合わせる
  6. 気になる変更があれば、法務の担当者にメールで相談する
  7. 法務の担当者が条文を確かめ、同意してよいか、利用部署に何を伝えるかを決める

(a)通知が読まれないまま効力発生日を過ぎる。 1番がいちばん抜けやすい作業です。改定通知は件名が似ていて、広告のメールと区別がつきにくいためです。 「規約を更新しました」という件名のメールは、ほとんどの場合、読まなくても困りません。困るのは、そのうちの1通だけです。

(b)読む前に、関係があるかが分からない。 月40件のうち、自社の条件に本当に関係するのは一部です。しかしそれを見分けるには、結局すべてを読むしかありません。 3番と4番に、1件あたりの時間の大半がかかっています。

(c)照らす物差しが人の頭の中にある。 5番で照らしているのは、導入時の担当者が確かめた条件です。担当者が替わると、「このサービスには顧客の個人データを入れているから、保存場所の変更は確認が要る」という知識が引き継がれません。

  1. 【人】 各部署の担当者は、自分に届いた改定通知を情報システムの共有アドレスへ転送する
  2. 【自動】 Gmail のフィルタが、送信元と件名から改定通知に「規約改定」のラベルを付ける
  3. 【自動】 ラベルが付いたことをきっかけに Zapier が動き、本文と送信元を取り出す
  4. 【自動】 送信元のドメインで台帳を引き、どのSaaSか、預けているデータの区分と自社の条件を取る
  5. 【自動】 AIが通知を読み、4つの観点ごとに「変更あり/記載なし/不明確」と、自社の条件とぶつかるかを判定する
  6. 【自動】 判定の結果から、conflict / needs_review / insufficient_info / no_impact の4つに分ける
  7. 【自動】 確認一覧のシートに1行足し、conflict は Slack で法務と情報システムに知らせる
  8. 【人】 情報システムの担当者が、conflict と insufficient_info のものの原文を開いて読む
  9. 【人】 法務の担当者が、conflict のものについて、同意するか、利用部署に何を伝えるかを決める
  10. 【人】 週に1回、no_impact のものを一覧で流し見る

8番目が、この設計の分かれ目です。 人が原文を読むのは、ぶつかると判定されたものと、通知だけでは判定できなかったものです。insufficient_info を人に回さないと、通知が短いほど「影響なし」が増え、いちばん確かめるべき改定ほど素通りします。

02今回想定するシステム構成

構成図
各SaaSからの改定通知(管理者・請求先・各部署の担当者に届く)
   │  各部署の担当者は共有アドレスへ転送
   ▼
Gmail のフィルタ ── 「規約改定」のラベルを付ける
   ▼【トリガー】ラベルが付いたメール(New Labeled Email)
Zapier
   ├──▶ 送信元のドメインで台帳を引く(Google スプレッドシート)
   │      預けているデータの区分/自社の条件/管理者
   ▼
AI by Zapier ── 4つの観点ごとの判定(出力フィールドで構造化)
   │   ① データの保存場所   ② AI学習への利用
   │   ③ 再委託・再委託先    ④ 料金・解約の条件
   ▼
Paths by Zapier ── conflict / needs_review / insufficient_info / no_impact
   ├──▶ 確認一覧のシートに1行足す
   └──▶ conflict は Slack で法務と情報システムへ
   ▼
【人が conflict と insufficient_info の原文を読む】
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapier(Gmail のトリガー、Paths)Make、Power Automate、n8n
生成AIAI by Zapier(Advanced のモデル)ChatGPT(OpenAI)、Claude、Gemini
台帳と確認一覧Google スプレッドシートMicrosoft 365 の表計算
メールGmail(Google Workspace)Microsoft Outlook
通知SlackGoogle Chat、Microsoft Teams

台帳とメールは、新しく足すものではありません。 台帳のスプレッドシートに、送信元のドメイン、預けているデータの区分、4つの観点ごとの自社の条件、導入時の審査の記録へのリンクの列を足すのが最初の準備作業です。

入口は、Gmail のラベルが付いたことを起点にするトリガーです。 Zapier の Gmail には、検索の文字列に合う新しいメールで動く New Email Matching Search と、ラベルが付いたときに動く New Labeled Email があります。前者は検知できる時間の範囲が1時間とされ、後者は時間の制限が無いとされています。この構成では後者を使います。 転送が遅れたものや、人が後から手でラベルを付けたものも拾えるからです。

判定には AI by Zapier を使います。 Zap の中にアクションとして足し、指示(プロンプト)を書いてモデルを選びます。モデルは Standard、Advanced、Premium の3段階で、Advanced は1回の実行で3倍のタスクを使うとされています。自社の OpenAI、Anthropic、Google などの API キーを接続する方法もあります。出力フィールドを定義すると、決めた項目ごとに値を返させ、後の段階に渡せます。 無料プランでは使えず、Professional、Team、Enterprise のプランで使えるとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

Gmail で「規約改定」のラベルが付いたことを起点にします。 ラベルは Gmail のフィルタで自動で付けます。フィルタの条件は次の2つを OR でつなぎます。

  • 送信元のドメイン … 台帳にあるSaaSのドメインの一覧
  • 件名や本文の言葉 … 「利用規約」「プライバシーポリシー」「データ処理」「改定」「更新」「Terms」「Privacy」「DPA」「Subprocessor」

取りこぼしを、広告のメールが混ざるより重く見ます。 フィルタを広めに作るので、新機能の案内やセミナーの案内にもラベルが付きます。それは AI の判定で not_a_change として落とします(後述)。逆に、フィルタを狭くして改定通知を落とすと、後からは見つけられません。

各部署の担当者に届いたものは、共有アドレスへの転送で集めます。 転送されたメールにもフィルタが効き、ラベルが付きます。フィルタに掛からなかったものは、情報システムの担当者が手でラベルを付ければ同じ流れに乗ります。 ラベルが付いたときに動くトリガーを選んだのは、この手作業の入口を残すためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
改定通知のメール件名、送信元、受信日時、本文、本文中のリンクGmail
SaaSの基本情報サービス名、契約形態(規約への同意/個別の契約書)、管理者、利用部署台帳
預けているデータの区分顧客の個人データ/従業員の個人データ/機密情報/社外秘でない情報台帳に足した列
自社の条件4つの観点ごとに、自社として求めること台帳に足した列
過去の判定同じSaaSについての直近の判定と日付確認一覧

質を決めるのは、自社の条件の列です。 たとえば次のように、SaaSごとに書きます。

観点顧客の個人データを預けるSaaSの条件の例社外秘でない情報だけのSaaSの条件の例
データの保存場所国内、または台帳に書いた国・地域に限る条件なし
AI学習への利用預けたデータを事業者のモデルの学習に使わない学習に使う場合は記録する
再委託・再委託先再委託先の追加は事前に通知される条件なし
料金・解約の条件自動更新の有無と解約の予告期間が導入時と同じ同左

この表を書くのが、この構成でいちばん大事な準備です。 条件が書かれていなければ、AIは「何とぶつかるか」を判定できません。条件の列が空のSaaSは、判定せずに needs_review に回します。

Step3

データの取得方法を決める

Zapier の Gmail のトリガーが、ラベルの付いたメールの件名、送信元、本文を取り出します。台帳はGoogle スプレッドシートの行の検索で引きます。

取るものどこからどう引くか
SaaSの行台帳送信元のドメインで検索。転送されたものは、本文の元の送信元から取る
自社の条件台帳の同じ行4つの観点の列
直近の判定確認一覧サービス名で検索し、最新の1行

転送されたメールの送信元に注意してください。 転送されたメールの送信元は、転送した社員のアドレスになります。本文の中の「From:」の行から元の送信元を取り出してから台帳を引きます。 これをしないと、転送されたものがすべて「台帳に無いSaaS」になります。

リンク先の新しい規約の本文は、この段階では取りに行きません。 規約のページはサービスごとに作りが違い、一律に本文を取り出すのは難しいためです。通知の本文だけで判定できないものは insufficient_info にして、人が原文を開きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 元の送信元の取り出し … 転送されたものは、本文から元の送信元と件名を取り出します
  2. 台帳の照合 … 送信元のドメインで台帳を引きます。見つからなければ unregistered として人に回します
  3. 本文の整形 … HTMLの装飾、配信停止の案内、署名、フッターの住所を落とします
  4. 言語の確認 … 英文の通知もそのまま渡します。判定の結果は日本語で返させます
  5. 長さの確認 … 決めた文字数を超える本文は、先頭から切り詰め、truncated の印を付けます
  6. 重複の確認 … 同じSaaSから同じ件名のものが直近にあれば、二重に判定しません

2番目の unregistered は、それ自体が成果です。 台帳に無いSaaSから改定通知が届いたということは、どこかの部署が情報システムの知らないSaaSを使っているということです。判定の対象から外さず、台帳に足すかどうかを人が決めます。

5番目の truncated が付いたものは、判定が no_impact でも人の確認に回します。 切り詰めた後ろの部分に、保存場所の話が書かれているかもしれないためです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、4つの観点ごとに、通知に何が書かれているかを判定し、自社の条件とぶつかるかを判定することです。

観点通知に書かれているか(mention)自社の条件と照らして(impact)
データの保存場所changed / not_mentioned / unclearconflict / needs_review / no_impact / insufficient_info
AI学習への利用同上同上
再委託・再委託先同上同上
料金・解約の条件同上同上

mention が not_mentioned のとき、impact は必ず insufficient_info にします。 通知に書かれていないことは、変わっていないことの証拠になりません。「書かれていないから影響なし」という判定を、指示で禁じます。 no_impact にできるのは、通知の中にその観点について変わらない、または自社の条件の範囲内に収まる、と読める記述があるときだけです。

ほかに、次の3つを取り出させます。

  • 改定の種類 … 利用規約/プライバシーポリシー/データ処理契約/再委託先の一覧/その他/改定ではない
  • 効力発生日 … 通知に書かれていれば日付。書かれていなければ空
  • 同意・拒否の手続き … 「継続して利用した場合は同意したものとみなす」「期日までに申し出れば解約できる」などの記述と期日
させないこと理由
同意するか、解約するかを決める契約上の判断。法務が決める
法的に有効かどうかを書く判定は通知の記述と自社の条件の照合まで
書かれていない観点を推測で埋めるinsufficient_info が消える
効力発生日を推定する書かれていなければ空。受信日から推し量らない
自社の条件を読み替える条件は台帳の文言どおりに使う

3行目が、いちばん起きやすい失敗です。 「プライバシーポリシーを更新しました。主な変更点は問い合わせ先の変更です」という通知を渡すと、4つの観点がすべて no_impact で返ってきます。 「主な変更点」以外が変わっていないとは書かれていません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは情報システム部で、利用中のSaaSから届いた規約の改定通知を
点検する立場です。通知の本文だけを見て判定してください。
推測で補わないでください。

【見る観点】
1. data_location ...... データの保存場所(国・地域、データセンター)
2. ai_training ........ 預けたデータを事業者のAIの学習に使うか
3. subprocessing ...... 再委託、再委託先の追加・変更
4. pricing_termination  料金、自動更新、解約の条件と予告期間

【mention の選び方】
- changed ........ その観点について変更があると書かれている
- not_mentioned .. その観点について何も書かれていない
- unclear ........ 触れているが、何がどう変わるか読み取れない

【impact の選び方】
- conflict .......... 変更後の内容が、自社の条件に反する
- needs_review ...... 変更があり、自社の条件に反するかどうか決められない
- no_impact ......... 変わらない、または自社の条件の範囲内と読める記述がある
- insufficient_info . 通知の本文からは判定できない

【厳守事項】
- mention が not_mentioned なら、impact は必ず insufficient_info にしてください。
  書かれていないことを、変わっていないこととして扱わないでください。
- 「主な変更点」「主な改定内容」と書かれていても、
  そこに挙がっていない観点を no_impact にしないでください。
- 迷ったときに no_impact を選ばないでください。
- 自社の条件は、与えられた文言のとおりに使ってください。
  緩めたり厳しくしたりしないでください。
- 効力発生日は、本文に書かれている日付だけを入れてください。
  書かれていなければ空にしてください。
- evidence には、判定の根拠にした本文の文をそのまま写してください。
  英文の場合は原文のまま写し、reason を日本語で書いてください。
- 同意すべきか、解約すべきか、法的に有効かは書かないでください。
- 改定の通知でない場合(新機能の案内、セミナーの案内など)は、
  doc_type を not_a_change にし、観点の判定をしないでください。

【サービス名】{service_name}
【預けているデータの区分】{data_class}
【自社の条件】{our_conditions}
【通知の本文】{notice_body}

「主な変更点に挙がっていない観点を no_impact にしない」を明記しないと、要約を信じます。 通知の本文に「主な変更点」の箇条書きがあると、モデルはそれを改定の全体として読みます。事業者が要点として挙げなかったことを、自社にとっての要点ではないと決めつけないための一文です。

Step7

出力形式を固定する

AI by Zapier の出力フィールドで、次の項目を定義します。 出力フィールドを定義しないと、ひとまとまりの文章で返ってきます。項目ごとに型を決め、必ず返す項目には印を付けます。

{
  "service_name": "",
  "doc_type": "terms | privacy_policy | dpa | subprocessor_list | other | not_a_change",
  "effective_date": "",
  "consent_mechanism": "",
  "opt_out_deadline": "",
  "checks": {
    "data_location":       { "mention": "", "impact": "", "evidence": "", "reason": "" },
    "ai_training":         { "mention": "", "impact": "", "evidence": "", "reason": "" },
    "subprocessing":       { "mention": "", "impact": "", "evidence": "", "reason": "" },
    "pricing_termination": { "mention": "", "impact": "", "evidence": "", "reason": "" }
  }
}

出力フィールドは入れ子にしにくいので、実際には data_location_mention、data_location_impact のように平らな項目名で16項目を並べます。

1つ目の理由は、回し先を規則で決められることです。 Paths by Zapier で、次のように分岐させます。

回し先条件
conflict4つの観点のどれか1つでも impact が conflict
insufficient_infoconflict が無く、どれかが insufficient_info、または truncated の印がある
needs_review上の2つに当たらず、どれかが needs_review
no_impact4つすべてが no_impact。または doc_type が not_a_change

Paths は条件ごとに分岐を作り、1つの分岐のグループに最大10本まで置け、どの条件にも当たらないときに走る予備の分岐も1本置けるとされています。予備の分岐は needs_review に回します。 どの条件にも当たらないのは、出力が崩れたときだからです。

注意点が1つあります。 Paths では、条件が当たる分岐が複数あると、すべてが左から順に走るとされています。上の表の条件は、重ならないように書きます。重なると、同じ通知が確認一覧に2行入ります。

2つ目は、opt_out_deadline で期日の漏れが防げることです。 確認一覧を期日の近い順に並べ、期日の2週間前になっても判断の欄が空のものを、Slack で知らせます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
GmailZapier のトリガー(New Labeled Email)ラベルの付いたメールを取り出す
台帳Google スプレッドシートの行の検索SaaSの行と自社の条件を引く。書き込まない
AI by ZapierZap のアクション4つの観点の判定を出力フィールドで返す
Paths by ZapierZap の分岐4つの回し先に分ける
確認一覧Google スプレッドシートの行の追加判定の結果と根拠を1行で残す
Slack通知conflict と、期日が近いものを知らせる

台帳へは書き込みません。 unregistered のSaaSを台帳に足すか、自社の条件を書き換えるかは、人が決めます。判定の結果で台帳の物差しが変わると、次の判定の根拠が分からなくなるためです。

SaaSの管理画面での同意や解約の操作も、この構成ではしません。 判定から先の操作は、法務の判断を受けて管理者が行います。

Step9

人が確認する

人が原文を開くのは、conflict と insufficient_info のものです。 needs_review は、根拠の文を読んで足りれば原文を開きません。no_impact は週に1回、一覧で流し見ます。

  1. conflict を先に見る … 情報システムの担当者が原文の該当箇所を確かめ、法務へ回します
  2. 法務が判断する … 同意して使い続けるか、利用部署に注意を出すか、解約や別のサービスへの移行を検討するかを決め、確認一覧の判断の欄に書きます
  3. insufficient_info の原文を読む … リンク先の新しい規約を開き、4つの観点を確かめます。確かめた結果は、確認一覧の同じ行に書き足します
  4. unregistered を台帳に足すかを決める … 利用している部署を確かめ、台帳に足すなら自社の条件まで書きます

3番目を省かないでください。 insufficient_info は、AIが判定をあきらめたのではなく、通知だけでは判定できないことを判定した結果です。 ここを読まないなら、この構成を入れる前と何も変わりません。

目標は、40件をならして1件9分です。 原文を開くのは半分前後という想定です。insufficient_info が多すぎる月は、通知の本文が短いSaaSが多いということで、そのSaaSは通知ではなく規約のページそのものを定期的に見る運用に切り替えます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
台帳に無いSaaSから届いたunregistered として人へ。利用している部署を探す
転送で元の送信元が取れない台帳を引かず needs_review で人へ
自社の条件の列が空判定せず needs_review で人へ。条件を書くきっかけにする
本文が長く切り詰めたtruncated の印を付け、no_impact でも人へ
通知が画像だけで本文が無い判定せず insufficient_info で人へ
同じ改定の通知が複数のアドレスに届いたサービス名・件名・効力発生日で照合し、確認一覧は1行にする
出力フィールドが返らない、値が語彙にないPaths の予備の分岐で needs_review へ
AI by Zapier が応答しないZap の実行履歴に残る。ラベルを付け直して再実行する
Step11

記録を残す

  • 改定通知のメール(Gmail に残る。ラベルで検索できる)
  • 確認一覧の1行:受信日、サービス名、改定の種類、効力発生日、期日、4つの観点の判定、根拠の文、回し先
  • 判定のときに使った自社の条件の文言
  • 人の確認の結果:原文を読んだ人と日付、法務の判断、利用部署への連絡
  • unregistered から台帳に足したSaaSの記録

3つ目で「そのときの条件の文言」を残すのは、条件が後から変わるためです。 自社の方針で「AI学習への利用」の条件を厳しくすると、過去の no_impact の意味が変わります。当時の物差しが残っていないと、どこまで見直せばよいかが決まりません。

04実装レベルの3段階

最小構成:通知と自社の条件を手でAIの画面に貼り、4つの観点を判定させる / 1通ごとの判定
半自動化:上記+Gmail のラベルを起点に Zapier で台帳を引き、AI by Zapier で判定し、確認一覧に書き、`conflict` を Slack へ / 収集・照合・判定・回し先の振り分け
本格構成:上記+規約のページそのものを定期的に取りに行き、前回の版との差分を判定に渡す / 通知の無い改定まで含めた追跡

半自動化で、1件30分が9分になります。この段階が本記事の想定です。 通知を探す、台帳を引く、関係ないと確かめるために全文を読む、という作業がなくなり、人が原文を読むのは判定で残ったものだけになります。 本格構成は、通知の本文が短いSaaSのためにあります。 規約のページを取りに行き、前回との差分を判定に渡せば、insufficient_info が減ります。insufficient_info の多いSaaSが分かってから、そのSaaSだけに足します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
導入後 40件 × 9分 ÷ 60 = 6 時間/月
月間削減時間
14h
削減率
70%
年間削減時間
168h
年間金額換算(時間単価4,000円)
67万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 業務で使うSaaSが数十から百を超え、利用規約・プライバシーポリシー・データ処理契約の改定通知が毎月何十通も届く会社。通知が請求先や管理者のメールアドレスに散らばって届き、誰も読まないまま効力発生日を過ぎていることがある場合。顧客の個人データや機密情報をSaaSに預けていて、保存場所やAI学習への利用について社内の条件を決めている場合。利用中のSaaSの台帳がすでにある場合。
向いていない
  1. 利用しているSaaSが数件で、改定通知が年に数通しか届かない場合。主要なSaaSとはすべて個別の契約書を交わしていて、相手方が一方的に変更できる条項が無い場合。利用中のSaaSの台帳が無く、どのサービスを誰が使っているかが分からない場合(台帳づくりが先です)。なお、改定に同意するか、解約するかという契約上の判断は、この構成では代替しません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月に届いた改定通知から20通を選ぶ(うち数通は、当時実際に法務へ相談したものを入れる)
  2. その20通のSaaSについて、預けているデータの区分と、4つの観点の自社の条件を書き出す
  3. 手元のAIサービスに、第7章の指示の例と、1通ずつの本文と条件を貼り付ける
  4. 返ってきた判定を、当時の担当者の判断と突き合わせる

ここで見るのは、conflict を当てたかだけではありません。 insufficient_info を no_impact にしていないかを見ます。短い通知を「影響なし」と判定したものが1件でもあれば、指示の書き方を直します。

出てきた内容判断
当時法務へ相談したものが conflict か needs_review で出たZapier の連携に進む
短い通知が no_impact で出た指示の「書かれていないことを変わっていないとしない」を強める
条件が書けないSaaSが多い台帳の整備が先。 AIの問題ではない

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
短い通知が no_impact になる書かれていない観点は insufficient_info と指示し、規則でも確かめる
「主な変更点」だけを見て判定する挙がっていない観点を no_impact にしないと明記する
自社の条件を緩めて読む条件の文言どおりに使うと指示する。条件は具体的に書く
転送されたものが全部 unregistered になる本文から元の送信元を取り出してから台帳を引く
New Email Matching Search で取りこぼす検知の範囲が1時間。New Labeled Email を使う
フィルタが狭く通知が落ちる送信元と言葉を OR でつなぎ、広めに作って AI で落とす
分岐の条件が重なって2行入るPaths は当たる分岐がすべて走る。条件を排他的に書く
個別の契約書を交わしたSaaSも同じに扱う契約形態の列で分け、個別の契約書のものは契約書の条項で見る

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「影響がない」と言い過ぎる方向の誤りです。判定を迷う場面を、すべて人が読む側に倒しておきます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: SaaSの事業者からの通知の本文、利用中のSaaSの一覧、そしてどのSaaSにどの区分のデータを預けているかという台帳の情報です。個人データそのものは扱いません。

  1. 台帳の情報を外へ出しすぎない … 判定に渡すのは、そのSaaSの預けているデータの区分と自社の条件だけです。120件の台帳そのものをAIに渡さないでください。 どのSaaSに何を預けているかの一覧は、攻撃する側にとっても価値のある情報です
  2. 保存場所の観点が重い理由を知っておく … 個人情報保護委員会のQ&Aでは、クラウドサービスの事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合には、個人データを提供したことにはならないとされ、その例として契約条項で取り扱わない旨が定められ、適切にアクセス制御を行っている場合が挙げられています。規約の改定でこの前提が変わると、委託や第三者への提供として扱いを見直す必要が出ます。 再委託とAI学習の観点を見るのはこのためです
  3. 外国のサーバでも安全管理は要る … 同じQ&Aでは、外国にある第三者への提供に当たらない場合でも、その外国の個人情報の保護に関する制度等を把握したうえで、安全管理のために必要かつ適切な措置を講ずる必要があるとされています。保存場所の変更を conflict として拾うのは、この把握をやり直すためです
  4. 規約の改定は、既存の契約にも及ぶ … 法務省の説明資料では、インターネットサイトの利用規約は定型約款の例とされ、一定の要件を満たす場合には、定型約款を準備した側が一方的に変更でき、既存の契約の内容も変更されるとされています。通知を読まないことは、変更をそのまま受け入れることに近いと考えてください
  5. この構成は契約上の判断を代替しない … 変更が有効か、同意するか、解約するかは、法務が原文を読んで決めます。 この構成が出すのは、通知に何が書かれていて、自社の条件とどう照らせるかという整理だけです

誤りが起きた場合のリスクは、ぶつかる改定を見落とすことと、期日を過ぎることの2つです。 前者は insufficient_info を人に回すことで、後者は期日の通知で防ぎます。どちらも、AIの判定の外側に置いた規則で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:台帳に列を足す

台帳に、送信元のドメイン、預けているデータの区分、4つの観点の自社の条件の列を足します。120件すべてを一度に埋める必要はありません。顧客の個人データを預けている上位20件から埋めます。

2週目:20通で試す

過去3か月の改定通知から20通を選び、手元のAIサービスで判定させます。短い通知を「影響なし」にしていないかを最優先で見ます。

3週目:集める仕組みを作る

共有アドレスを決め、各部署に「改定通知は転送してください」と依頼します。Gmail のフィルタで「規約改定」のラベルを付けるところまで作り、1週間でどれだけ集まるかを数えます。

4週目:判定と一覧をつなぐ

Zapier で、ラベルを起点に台帳を引き、AI by Zapier で判定し、確認一覧に書くところまで作ります。この時点では Paths と Slack を足さず、一覧だけを見ます。

2か月目: Paths で回し先を分け、conflict を Slack で知らせます。insufficient_info の件数をSaaSごとに数えます。3か月目以降: 期日の通知を足し、1件30分が何分になったかを実測します。台帳の条件の列が埋まり、unregistered が出なくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-01/最終更新:2026-10-02
確認した内容情報源確認日
Zapier の Gmail に New Email Matching Search(検索の文字列に合う新しいメールで動く。検知の範囲が1時間)と New Labeled Email(ラベルが付いたときに動く。返信が足されたときにも動く。時間の制限なし)があることZapier Help: How to get started with Gmail on Zapier2026-10-01
AI by Zapier を Zap のアクションとして足し、指示を書いてモデルを選ぶこと。モデルが Standard(1倍)、Advanced(3倍)、Premium(5倍)のタスクを使うこと。自社の API キーを接続できること。出力フィールドに名前と型を定義し、必ず返す項目を指定できること。定義しないとひとまとまりの出力になること。Professional、Team、Enterprise のプランで使え、無料プランでは使えないことZapier Help: Use AI by Zapier to analyze and return data2026-10-01
Paths がルールに応じて別のアクションを行うこと。1つの分岐のグループに最大10本、入れ子は3段まで。予備の分岐を1本置けること。条件が当たる分岐が複数あるとすべてが左から順に走ること。無料プランでは使えないことZapier Help: Add branching logic to Zap workflows with Paths2026-10-01
クラウドサービスの事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合には、個人データを提供したことにはならないこと。その場合、委託にも当たらず、事業者を監督する義務もないこと個人情報保護委員会: Q&A 7-532026-10-01
外国の事業者のサーバでも、契約条項で個人データを取り扱わない旨が定められ、適切にアクセス制御を行っている場合には外国にある第三者への提供に当たらないこと。その場合でも外国の制度等を把握したうえで安全管理措置を講ずる必要があること個人情報保護委員会: Q&A 12-32026-10-01
インターネットサイトの利用規約が定型約款の例であること。変更が相手方の一般の利益に適合する場合、または契約の目的に反せず合理的な場合には、定型約款を準備した側が一方的に変更でき、既存の契約の内容も変更されること法務省: 約款(定型約款)に関する規定の新設2026-10-01

改定に同意するか、どの観点を自社の条件とするかは、法務と情報システムで決めてください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0407)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次