数理最適化と生成AIの組み方|計画をAIに作らせる前に

「営業の訪問計画を生成AIに作らせたら、それらしい表は出てきたが、よく見ると同じ日に遠く離れた2社が入っていた」「窓口のシフトをAIに組ませたいが、どこまで任せてよいのか判断がつかない」。計画業務にAIを入れようとする経営企画や情報システムの担当者から、試した直後によく届く声です。生成AIは計画らしい文章や表を作るのが得意なので、計画そのものも作れるように見えます。けれども、条件をすべて守ったうえでいちばん良い組み合わせを1つ選ぶ仕事は、文章を書く仕事とは別物です。必要なのは、生成AIに計画を作らせることではありません。本当は、組み合わせを選ぶ計算は数理最適化に任せ、生成AIはその前後の工程に置くことです。この記事では、計画業務にAIを入れる発注側の判断として、両者の分担、人が決める条件と重み、4つの業務での組み方を整理します。
カメ先生生成AIに頼めば計画も作ってくれると思われがちなんだけど、本当は、条件を全部守ったかどうかを確かめずに、もっともらしい案を返してしまうことがあるんだ。
カメ子見た目は整っているのに、中身の条件が破れている、ということですか。
カメ先生そう。だから組み合わせを選ぶところは、条件を守れないときに守れないと答える計算の仕組みに任せる。生成AIは、条件を聞き出す、結果を説明する、といった言葉の仕事に回すんだ。
カメ子計算する役と、話を通す役を分けるんですね。
- 訪問計画・人員配置・予算の割り当て・シフトのように、条件を全部守って組み合わせを選ぶ計画は、生成AIにそのまま作らせず数理最適化に解かせる
- 生成AIは、条件の聞き取りの下書き・計算の下書き・計算の呼び出し・結果の言い換えと、条件を変えたときの差の説明に置く
- 守る条件と破ってよい条件、何を優先するか、その重みは人が決めて書き残す。書き漏れた条件はそのまま答えに出る
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この記事でいう計画は、人と時間と予算の割り当て
計画という言葉は広く使われます。この記事で扱うのは、限られた人・時間・予算を、守るべき条件の中でどこに割り当てるかを決める計画です。営業担当者が週のどの日にどの顧客を回るか、展示会の何時の枠に誰を立たせるか、広告とイベントにいくらずつ振るか、問い合わせ窓口に何人を何時から置くか。いずれも、選べる候補の組み合わせが多く、守る条件が何本もあります。
AIの記事で計画と言うと、AIが仕事の段取りを先に立ててから実行する設計を指すことがあります。こちらは調べる順番や使う道具の順番を決める話で、本稿の割り当ての計画とは別物です。段取りの設計については、別の記事「AIに計画を先に立てさせるか」で整理しています。本稿の計画は、作業の順番ではなく、資源をどこに置くかの組み合わせです。
割り当ての計画には、3つの要素があります。1つ目は選べるもの(誰を、どの枠に、いくら)。2つ目は守る条件(1人が1日に回れる件数、休憩の時間、予算の上限)。3つ目は目的(移動の時間を短く、待ち時間を少なく、成果の見込みを大きく)です。この3つが言葉で書き出せる業務が、数理最適化の出番です。
反対に、3つのどれかが書き出せない業務もあります。目的が「なんとなく良い感じに」としか言えない、条件が人によって違う、そもそも選べる候補が少ない。こうした業務では、計算の仕組みを入れる前に、目的と条件を言葉にする作業が先になります。この言葉にする作業こそ、後で述べるように生成AIが手伝える部分です。
生成AIに計画を作らせると、条件が静かに破れる
生成AIは、次に来る語を選び続ける仕組みです。計画の表を頼むと、過去に見た多くの計画に似た、もっともらしい表を作ります。ところが、表のどの行も条件を守っているかを、1つずつ確かめながら作っているわけではありません。条件が3本なら守れても、10本、20本と増えると、どこかが破れます。しかも破れた箇所は表の見た目からは分かりません。
この傾向は研究でも確かめられています。2024年の国際学会で発表された旅行計画の評価では、1,225件の依頼に対して、予算や日程などの条件を全部守った計画を作れた割合は、当時の上位の言語モデルで0.6%でした。論文は、モデルが複数の条件を追い続けるのが苦手だとまとめています。個々の条件は守れても、全部を同時に守るのが難しいという結果です。
モデルは2024年から大きく進歩しているので、この数字が今もそのまま当てはまるとは言えません。ただ、仕組みの上での弱さは変わっていません。生成AIの出力は、条件を守ったという保証を持たないのです。「守れていない」と自分から言わずに、守れたように見える案を返すことがある点が、計画業務ではいちばん困ります。
もう1つの落とし穴は、同じ依頼でも聞くたびに答えが変わることです。計画は、作った後に「なぜこの組み合わせなのか」を説明し、条件が変わったら作り直します。答えが毎回揺れると、どの案を採ったのか、前の案と何が違うのかを追えません。計画の中身を、再現できない出力に預けないことが、組み方の出発点です。
- 旅行計画の評価は2024年に発表された研究で、当時のモデルでの結果です。現在のモデルでの割合を示すものではありません
- 条件を守ったかどうかを確かめる手段を持たない出力は、モデルが新しくなっても、人か計算の仕組みで確かめる前提で扱います
数理最適化は、条件を守れないときに守れないと答える
数理最適化は、選べるもの・守る条件・目的の3つを計算の形に書き、条件をすべて満たす組み合わせの中から、目的がいちばん良くなるものを探す手法です。この計算を実際に解く道具をソルバーと呼びます。無償で公開されている道具一式も、商用の製品もあり、配送の経路、予定表、割り当て、箱への詰め込みといった問題を扱えます。
生成AIとの最大の違いは、答えの性質です。ソルバーが返す案は、書かれた条件をすべて満たしています。条件が厳しすぎて満たせる組み合わせが1つもなければ、案を出さずに「解なし」と返します。無理な条件のときに、無理だと分かるのが計算の仕組みの強みで、生成AIのように条件を破った案をそれらしく差し出すことはありません。
ただし、守ってくれるのは書かれた条件だけです。「この顧客は午前中しか会えない」という事情を書き忘れれば、ソルバーは平気で午後に入れます。目的に「移動の時間を短く」としか書かなければ、担当者の負担の偏りは気にしません。答えの良し悪しは、条件と目的の書き方で決まるので、最適化を入れれば最適になる、というものでもありません。
数式の書き方は専門の領域ですが、発注側が知っておくべきことは多くありません。3つの要素を言葉で書き出せるか、条件が多くて人の手では確かめきれないか、同じ計画を何度も作り直すか。この3点に当てはまる業務ほど、計算の仕組みを入れる値打ちが大きくなります。当てはまらない業務は、表計算と人の目で足りることも多いでしょう。
組み方の全体像:生成AIは計算の前後に置く
両者を組むときの基本の形は、真ん中にソルバーを置き、その前後に生成AIを置く形です。マイクロソフト研究所が2023年に発表した供給計画の仕組みも、この形をとっています。言語モデルが担当者の問いを最適化の計算に翻訳し、ソルバーが解き、その結果を言語モデルが人の言葉に直して返します。クラウドの供給計画の担当者の問いに、本番で使われていると説明されています。
この形を業務に引き直すと、生成AIの置き場所は4つの工程になります。現場の言葉から条件と目的を聞き出す工程、聞き出した内容を計算の形の下書きにする工程、ソルバーを呼び出す工程、出た答えを説明し条件を変えたときの差を言葉で返す工程です。組み合わせを選ぶ工程そのものには、生成AIを置きません。
| 工程 | 生成AIの役 | 人が確かめること |
|---|---|---|
| 条件と目的の聞き取り | 現場の担当者への質問の下書き、出てきた事情の箇条書き | 守る条件と破ってよい条件の区分、優先の順番 |
| 計算の形の下書き | 箇条書きの条件を計算の形に書き起こす下書き | 条件が1本ずつ漏れなく入っているか |
| ソルバーの呼び出し | 依頼の中身を決めた形の入力に詰める | 入力の値が推測で埋められていないか |
| 結果の説明と比較 | 案の読み方の説明、条件を変えた案との差の言い換え | 説明が計算の結果と合っているか |
この形には、もう1つ利点があります。先の研究の説明では、自社の機密のデータを言語モデルに送らずに済む設計になっていると書かれています。顧客の一覧や個人のシフトの希望は、ソルバーの側で扱い、生成AIには条件の名前や結果の要約だけを渡す、という切り分けができます。どこまで渡してよいかは、社内のAIの扱いの決まりに合わせて決めます。
人が決める3つ:破れない条件、優先、重み
組み方の中で、AIに決めさせないものがあります。1つ目は、条件の区分です。絶対に破れない条件と、できれば守りたい条件を分けるのは人の仕事です。法律や契約で決まった休憩の時間、顧客と約束した訪問の時間帯は破れません。担当者の希望の曜日や、同じ顧客は同じ担当者が回る、といった条件は、守れないときに破ってよいかもしれません。
2つ目は、何を優先するかです。移動の時間を短くするのか、成果の見込みが大きい顧客を先に回るのか、担当者の負担を均すのか。目的が複数あるとき、どれを先に満たすかで答えは大きく変わります。生成AIに「普通はどちらを優先しますか」と聞けば、一般論の答えは返ります。けれども自社の方針として何を優先するかは、AIに決めさせないでください。
3つ目は、重みです。できれば守りたい条件を破ったとき、どれだけ減点するか。担当者の希望を1件破るのと、移動の時間が30分延びるのでは、どちらが重いか。この重みは、計算の中では数字1つですが、その数字が現場の働き方を決めます。重みは、決めた人の名前と理由を添えて書き残します。後で案に不満が出たとき、どの数字を見直せばよいかが分かるからです。
この3つを決める場には、計画で影響を受ける人を入れます。営業の訪問計画なら営業の責任者、窓口のシフトなら窓口の主任です。生成AIは、決める場に出す材料を用意するのに使えます。たとえば「この条件を破ってよいと決めると、どんな案が出うるか」を例で示させれば、決める人が判断しやすくなります。決めるのは、あくまで人です。
生成AIがソルバーを道具として呼ぶ仕組み
生成AIからソルバーを呼ぶには、AIの提供元が開発者向けに公開している「道具を使う」仕組みを使います。アンソロピックの公式の説明では、開発者が道具の名前と受け取る値の形を定義しておくと、モデルは必要なときに呼び出しの形を返し、実際の実行は自社のアプリが行って結果を返す流れになっています。ソルバーはこの道具の1つとして登録します。
この仕組みで大事なのは、計算をモデルが自分で行わないことです。モデルは「この条件で解いてほしい」という依頼の形を作るだけで、組み合わせを選ぶのはソルバーです。返ってきた結果をモデルが読み、人に説明します。計算の結果と説明を、別々に保存しておくと、説明が結果とずれていないかを後で確かめられます。
注意したいのは、値が足りないときの振る舞いです。同じ公式の説明には、必須の値が依頼の中に無いとき、モデルによっては聞き返さずに、もっともらしい値を推測して埋めることがあると書かれています。計画業務でこれが起きると、聞いていない条件が勝手に入った案が出ます。値の形を厳格に揃える指定を使い、足りない値は聞き返すように指示するのが基本です。
呼び出しの記録も残します。どの条件で、どの重みで、いつ解いたか。採った案がどの呼び出しの結果なのかが追えないと、後で説明できません。社内で作るか外部に頼むかにかかわらず、呼び出しの記録を残すことを、最初の仕様に書いておきます。記録の設計を後回しにすると、運用が始まってから作り直すことになります。
シナリオ1:営業の訪問計画
営業の訪問計画では、選べるものが「どの担当者が、どの日の、何時に、どの顧客を訪ねるか」、守る条件が「顧客の都合の良い時間帯」「1日に回れる件数」「担当者の勤務の時間」、目的が「移動の時間を短く」「優先度の高い顧客を期限までに回る」です。顧客が数十社、担当者が数人でも、組み合わせは人の手では確かめきれない数になります。
生成AIが手伝えるのは、まず条件の聞き取りです。営業担当者に「この顧客で気をつけていることは」と聞いて回ると、「月末は経理が忙しいので避ける」「先方の部長は火曜しかいない」といった事情が出てきます。これを生成AIに整理させ、条件の候補の一覧にします。一覧のどれを破れない条件にするかは、営業の責任者が決めます。
ソルバーが出した週の計画は、生成AIに担当者ごとの言葉で説明させます。「今週は北側の3社をまとめて木曜に回ります。火曜に部長と会える1社を先に入れたためです」といった説明があると、担当者は案を受け入れやすくなります。説明が計算の結果と食い違っていないかは、最初の数週は人が突き合わせます。
落とし穴は、顧客の都合が変わる速さです。前日に予定が動くことは珍しくありません。急な変更のたびに全体を解き直すと、他の担当者の予定まで大きく動きます。確定した予定は動かさない、という条件を足して解き直す形にしておくと、変更の影響を小さくできます。どこまでを確定とみなすかも、人が決めます。
シナリオ2:ウェビナーと展示会の人員配置
ウェビナーや展示会の人員配置では、選べるものが「誰を、どの時間の枠の、どの役に置くか」です。守る条件は「各枠に必要な人数」「1人が続けて立てる時間」「休憩」「その役に必要な知識」、目的は「応援の社員の負担を均す」「詳しい人を混む時間に置く」などです。役ごとの人数の目安の決め方は、別の記事「展示会の人員配置で決める項目一覧」で扱っています。
本稿の関心は、人数の目安が決まった後の組み方です。展示会の3日間に10人を8つの枠と4つの役で割り当てるだけでも、候補の組み合わせは膨大です。生成AIには、各部署から集めた「この日は午後から外せない会議がある」「製品の説明ができるのはこの3人」といった事情を整理させ、条件の一覧の下書きにさせます。
ソルバーが「解なし」を返すことがあります。たとえば製品の説明ができる人が3人しかいないのに、全ての枠に1人ずつ置く条件を付けると、休憩の条件と両立しません。このとき生成AIに、どの条件同士がぶつかっているかを言葉で説明させると、決める人が「休憩の時間をずらす」「説明役を1人増やす」といった手を選びやすくなります。
ウェビナーでは、司会・話し手・質問の受け付け・配信の操作といった役が、1回の開催の中で決まります。開催が月に何本もあると、同じ人に役が偏りがちです。月をまたいだ役の回数の偏りを、目的の1つに入れると、特定の人に負担が集まるのを防げます。偏りをどこまで許すかは、部門の責任者が決めます。
シナリオ3:広告とイベントの予算の割り当て
予算の割り当てでは、選べるものが「どの施策に、いくら振るか」です。守る条件は「全体の上限」「施策ごとの最低額と最高額」「契約で決まった固定の費用」、目的は「見込まれる商談の数を大きく」などです。ここで、各施策にお金を足したらどれだけ成果が増えるかの見込みが要ります。この見込みは最適化ではなく、別の推定の仕事です。
広告の予算配分を過去の成果から推定する手法は、別の記事「広告効果の全体像を掴む」で扱っています。本稿では推定の中身には入りません。組み方として押さえたいのは、推定の結果をソルバーへの入力として使い、配分そのものはソルバーに解かせるという分担です。費用対効果の考え方で配分を決める進め方は、別の記事「マーケティング予算の配分に生成AIを活かす方法」にまとめています。
この場面では、生成AIは条件を言葉から拾う役で力を出します。「展示会は来期も出ると決まっている」「この媒体は年間契約なので途中で減らせない」といった事情は、表ではなく会議のメモに書かれていることが多いからです。会議のメモから条件の候補を拾わせ、人が確かめて入力の表に加えます。拾い漏れた固定の費用は、そのまま配分の誤りになります。
推定の数字には幅があるので、最適化の答えを一点の正解として扱わないことも大事です。見込みが少し外れただけで答えが大きく変わるなら、その配分は危ういと言えます。見込みを上下に振って何度か解き、どの施策の額が安定しているかを見ます。結果の読み方の説明は生成AIに下書きさせ、採る配分は予算の責任者が決めます。
シナリオ4:問い合わせ窓口のシフト
問い合わせ窓口のシフトでは、選べるものが「誰を、どの日の、どの時間帯に置くか」です。守る条件は「時間帯ごとに必要な人数」「勤務の時間と休憩」「連続して勤務できる日数」「電話とチャットの両方に出られる人の数」、目的は「希望の休みをなるべく叶える」「人件費を抑える」などです。必要な人数は、時間帯ごとの問い合わせの件数の見込みから決めます。
シフトは、働く人の生活に直接関わります。労働時間や休憩に関する決まりは、破れない条件として最初に入れます。どの条件が法令や社内の規則で決まっているかは、人事や労務の担当者に確かめます。生成AIに「法令ではどう決まっていますか」と聞いて、その答えをそのまま条件にするのは避けます。原典と社内の規則で確かめた内容だけを入れます。
生成AIが役立つのは、希望の集め方です。窓口の担当者から自由な文章で集めた休みの希望を、生成AIに日付と時間帯の形に整理させます。「第2週のどこかで1日」といったあいまいな希望は、そのまま条件にせず、本人に確かめる項目として一覧に残させます。あいまいな希望を、AIの解釈で決まった条件にしないためです。
組んだシフトを配るときは、生成AIに一人ひとりへの説明を下書きさせます。希望が叶わなかった人には、どの条件とぶつかったのかを添えると納得が得られやすくなります。ただし、説明の文面が計算の結果と合っているかは主任が確かめてから送ります。希望が叶わなかった理由を、AIの推測で書かせないことも、確認の項目に入れておきます。
4つの場面を並べると、共通する分担が見える
4つの場面は業務も部署も違いますが、並べてみると分担の形はそろっています。条件はいつも現場の言葉や会議のメモの中にあり、それを拾って一覧にするのが最初の仕事です。組み合わせを選ぶのはソルバーで、結果を伝えるのは生成AIの下書きと人の確認です。違いが出るのは、破ってよい条件の種類と、条件が変わる速さです。
| 場面 | 破れない条件の例 | 破ってよい条件の例 | 条件が変わる速さ |
|---|---|---|---|
| 営業の訪問計画 | 顧客と約束した時間帯、勤務の時間 | 同じ顧客は同じ担当者 | 速い(前日に動く) |
| ウェビナーと展示会の人員配置 | 枠ごとの必要人数、休憩 | 希望の担当の時間帯 | 開催の前の数週間 |
| 広告とイベントの予算の割り当て | 全体の上限、契約で決まった費用 | 施策ごとの最低額 | 四半期や期の単位 |
| 問い合わせ窓口のシフト | 労働時間と休憩の決まり、必要人数 | 希望の休み | 月の単位 |
条件が速く変わる業務ほど、解き直しの仕組みが大事になります。訪問計画のように前日に動く業務では、解き直す手間が小さく、確定した部分を動かさない形が要ります。予算の割り当てのように期の単位で決める業務では、解き直しの回数は少ない代わりに、見込みの幅を振って安定した答えを探す手間がかかります。
発注側は、この表の右の2列を自社の業務で埋めてから、外部への相談や社内での開発に進むと話が早くなります。破ってよい条件と、変わる速さが書かれていない依頼は、見積もりもぶれます。生成AIに業務の説明の文章を渡し、表の下書きを作らせるところから始めてもかまいません。
条件を変えたときの差を、AIに言葉で返させる
計画業務で本当によく聞かれるのは、「もしこうしたらどうなるか」という問いです。担当者が1人休んだら、展示会の小間が広くなったら、予算を1割削られたら。先の供給計画の研究も、「仕入れ先をAからBに替えたら費用はどう変わるか」といった問いに数字で答えることを目的にしていました。この問いに答える工程は、生成AIと最適化を組む値打ちがいちばん出る場面です。
流れはこうです。担当者が普段の言葉で問いを入力すると、生成AIがそれを「どの条件をどう変えるか」の形に直し、ソルバーが変えた条件で解き直します。生成AIは、元の案と新しい案の差を、増えた費用・減った訪問の件数・叶わなくなった希望といった形で説明します。差の説明には、元の数字と新しい数字を必ず並べさせます。
ここで起きやすい誤りは、問いの読み違いです。「担当者が1人減ったら」を、ある特定の人が抜ける話と読むか、誰か1人が抜ける話と読むかで、答えは変わります。生成AIが直した条件を、解き直す前に人が読める形で示させ、確かめてから計算に回すのが安全です。読み違いのまま計算すると、正しい計算で間違った問いに答えることになります。
比較の結果を会議に出すときは、どの条件を変えたかを1行で書き添えます。「担当の希望を破ってよい条件に変えた場合」と書かれていないと、聞く人は前提の違いに気づきません。比較の表には、変えた条件の欄を必ず作ります。生成AIに表の下書きを作らせるときも、この欄を空けさせない指示を入れておきます。
書き漏れた条件は、そのまま答えに出る
最適化の答えに不満が出たとき、原因の多くは計算ではなく条件の書き漏れです。ソルバーは書かれた条件の中でいちばん良い答えを出すので、書かれていない事情はまったく考えません。生成AIに条件を聞き出させても、現場の担当者が当たり前すぎて口にしない事情は出てきません。次のような進め方は、条件が漏れる典型です。
- 現場の担当者に聞かず、過去の計画の表だけから条件を作る
- 生成AIが挙げた条件の候補を、人が区分を付けずにすべて破れない条件にする
- 目的を「移動の時間を短く」の1つだけにして、担当者の負担の偏りを見ない
- 答えが出たことに安心して、最初の数回の案を現場の人に見せずに使う
- 「解なし」が返ったとき、生成AIに勝手に条件を緩めさせて答えを出す
漏れを見つけるいちばん確かな方法は、出た案を現場の人に見せることです。「この組み合わせは現実には無理」と言われた箇所に、書かれていない条件があります。最初の数回は、案を使う前に必ず現場の確認を通します。現場で却下された理由を、条件の一覧に書き戻すと、回を重ねるごとに漏れが減っていきます。
「解なし」への対応にも注意が要ります。条件を満たす案が無いとき、どの条件を緩めるかは方針の判断です。生成AIに「どの条件を緩めれば解けるか」の候補を挙げさせるのはかまいません。けれどもどれを緩めるかを決めるのは、条件を決めた人です。AIが条件を勝手に緩めて答えを出す作りにしてしまうと、守るはずの条件が知らないうちに破られます。
導入は1つの業務・1つの部署から始める
生成AIと最適化を組む仕組みは、最初から全社の計画を扱おうとすると、条件の聞き取りだけで時間を使い果たします。まずは、条件が書き出しやすく、作り直しの回数が多く、失敗しても影響が小さい業務を1つ選びます。窓口のシフトや、ウェビナーの役の割り当ては、始めやすい候補です。進め方は次の5工程です。
社内で作るか外部に頼むかは、条件の一覧ができてから決めても遅くありません。条件の一覧は、発注側が持つ資産です。外部に頼む場合も、一覧を自社で持っていれば、相手が替わっても作り直さずに済みます。反対に、条件の聞き取りから丸ごと外に任せると、自社の事情を誰も説明できない計画が残ります。
生成AIだけで足りる場面もあります。条件が数本しかなく、人が案を見て破れていないかを全部確かめられる程度の計画なら、生成AIに下書きさせて人が確かめる進め方でも回ります。人が確かめきれない数の条件と組み合わせになったところが、計算の仕組みを入れる境目です。その手前で大きな仕組みを入れると、費用に見合いません。
隣り合う手法との線:予測、学習、計算の検算
数理最適化は、AIの話題の中で他の手法と混ざって語られがちです。過去の記録から数字を当てる予測の手法は、需要の見込みを出す側で、組み合わせを選ぶ側ではありません。予測と生成の違いと使い分けは、別の記事「機械学習と生成AIはどう使い分ける」で整理しています。本稿の最適化は、そこに無い「決める」型の仕事です。
試しながら点数で方針を直していく学習の手法も、計画に使われることがあります。こちらは何度も試せる環境がある業務に向き、試すことなく一度で計画を解く最適化とは性質が違います。詳しくは別の記事「強化学習は業務のどこに効くか」に譲ります。価格を条件に応じて変える仕組みも、別の記事「ダイナミックプライシングとは?」で扱っています。
表計算のデータを渡して、AIに計算を実行させる機能も広がっています。これは集計や分析の計算を任せる話で、条件を守る組み合わせを探す計算とは別です。どちらの場合も、計算の過程を読んで検算する姿勢は同じです。生成AIに書かせる仕事と計算させる仕事の分け方は、別の記事「生成AIは仕事ごとに向きが違う」の軸の1つとして整理しています。
こうした線を引いておくと、社内で「AIで計画を作る」という話が出たときに、どの手法の話をしているのかを確かめられます。当てる、書く、決めるのどれを頼みたいのかを最初に聞くだけで、話のすれ違いはかなり減ります。決める仕事なら、本稿の組み方が出発点になります。
よくある質問
Q. 最新の生成AIなら、計画も直接作れるのではありませんか。
条件が少ない計画なら、使える案が出ることもあります。ただ、出た案が条件をすべて守っているという保証はありません。人が全部を確かめられる規模なら下書きとして使い、確かめきれない規模なら計算の仕組みに解かせるのが安全です。モデルの進歩で変わるのは下書きの質で、保証の有無は変わりません。
Q. 数式を書ける人が社内にいないと始められませんか。
条件と目的を言葉で書き出す段階までは、数式は要りません。計算の形への書き起こしは、生成AIに下書きさせ、専門の人や外部の協力先に確かめてもらう分担ができます。発注側が持つべきなのは、数式よりも、破れない条件と優先の順番を決められる人です。
Q. ソルバーは高価な製品を買わないと使えませんか。
無償で公開されている道具一式もあり、業務の規模によってはそれで足ります。規模が大きく解く時間が問題になる場合に、商用の製品を比べます。製品を選ぶときは、提供状況と名称を公式の案内で確かめてください。
Q. 生成AIに条件の重みを提案させるのはだめですか。
候補を挙げさせるのはかまいません。「この重みにすると、こういう案が出やすくなる」という例を示させるのは、決める人の助けになります。ただし採る重みは、影響を受ける部署の責任者が決め、理由と一緒に書き残してください。
まとめ
訪問計画、人員配置、予算の割り当て、窓口のシフトのように、条件を全部守って組み合わせを選ぶ計画は、生成AIにそのまま作らせると、条件を破った案がもっともらしく返ることがあります。組み合わせを選ぶ計算は数理最適化に任せ、生成AIは条件の聞き取り、計算の形の下書き、呼び出し、結果の説明と条件を変えたときの差の説明に置きます。破れない条件と破ってよい条件の区分、何を優先するか、その重みは人が決め、理由と一緒に書き残してください。書き漏れた条件はそのまま答えに出るので、最初の数回は必ず現場の人に案を見せ、却下の理由を条件の一覧に書き戻していきます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
