デジタルスキル標準2.0とは?|AI人材の役割を自社に移す

「デジタルスキル標準が2.0になったと聞いたが、何が変わったのか分からない」「公的な標準に合わせて、社内のAI人材の役割を決め直すべきなのか」。経営企画や人事、DX推進の担当者から、こうした声が上がっています。改訂の発表文は短く、分冊の本文は百数十ページあるので、読み始める前に手が止まるのは自然なことです。まず事実を押さえると、2026年4月16日、経済産業省と情報処理推進機構はデジタルスキル標準の2.0を公表し、データを整える役割を新しい類型として加え、AIの実装と運用、AIガバナンスのスキルを足しました。けれどこの改訂は、標準の項目を覚え直す話ではありません。本当は、自社のAI推進を誰が担うのかを決め直すきっかけです。この記事では、2.0で変わった点と、それを自社の役割表に移す手順を整理します。
カメ先生デジタルスキル標準は、DXを進める人がどんな役割を持ち、どんな技能が要るかを、国が物差しとしてまとめたものなんだ。2.0では、AIを使うにはまずデータを整える人が要る、という考えがはっきり書き込まれたんだよ。
カメ子物差しが新しくなったなら、その物差しどおりに役割を並べれば済むのではないんですか。
カメ先生標準は、どの業界でも使えるように、わざと一般的な言葉で書かれているんだ。だから本文にも、自分の業界や事業に合わせて具体化が要ると書いてある。そのまま貼ると、誰も持たない役割が表に並ぶだけになりやすいんだよ。
カメ子物差しを自社の仕事に当て直す作業が本体なんですね。その当て直し方の順番を追っていきたいです。
- デジタルスキル標準2.0は2026年4月16日の公表。データマネジメントの類型と3つの役割を新設し、AI実装・運用とAIガバナンスのスキルを追加した
- 標準は汎用的な言葉で書かれているので、自社の仕事から役割を起こし、標準は抜けを探す物差しとして使う
- AIに任せるのは役割表と職務記述の突き合わせの下書きまで。誰に役割を割り当てるか、どう評価するかは人が決める
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デジタルスキル標準2.0とは
デジタルスキル標準は、経済産業省と情報処理推進機構が示している、DXに関わる人材の物差しです。2つの標準でできていて、1つはすべての働き手が身につけるべき土台を示すDXリテラシー標準、もう1つはDXを専門性を持って進める人の役割と技能を示すDX推進スキル標準です。2.0の改訂で大きく動いたのは、主に後者です。
DX推進スキル標準は、役割を6つの類型に分けています。ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、データマネジメント、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの6つです。それぞれの類型の下に、業務の違いで分けた役割が置かれ、全類型に共通の技能の一覧から、役割ごとに必要な技能の重さが割り振られています。
これまでの経緯も押さえておくと、読み方がぶれません。2022年12月にDXリテラシー標準とDX推進スキル標準をまとめてデジタルスキル標準として公開し、2023年8月には生成AIの普及を受けてリテラシー標準に補記を足しました。2024年7月にはプロダクトマネージャーの定義と、生成AIに関する推進側の補記が加わっています。2.0は、その流れの上にある4回目の大きな見直しです。
本文の改訂の考え方には、新しい技術や産業構造の変化があるたびに見直し続ける、と書かれています。つまり2.0も最終形ではありません。次の改訂が来ても崩れない形で自社に移しておくことが、この標準を使ううえでの前提になります。
- 公表は2026年4月16日、経済産業省と情報処理推進機構の連名です
- 本文は情報処理推進機構のサイトで公開されており、類型ごとの分冊もあります
- この記事の内容は確かめた時点(2026年9月)のものです。新しい改訂が出ていないかは公開ページで確かめます
2.0で変わった点は3つにまとまる
改訂の中身は細かく分かれていますが、自社の役割を考える立場から見ると、3つにまとまります。1つ目は、データを整える役割を独立した類型として加えたことです。データマネジメントの類型が新しくでき、データスチュワード、データエンジニア、データアーキテクトの3つの役割が定義されました。
2つ目は、変革を進める役割の切り分けです。これまでビジネスアーキテクトの類型は、役割の名前がすべてビジネスアーキテクトでした。2.0ではこれをビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャーの3つに分け直し、それぞれの受け持つ範囲の補足資料が付きました。あわせて、デザイナーの類型にはコミュニケーションデザイナーの役割が加わっています。
3つ目が、AIに関わる技能の追加です。共通の技能の一覧に、AI実装・運用とAIガバナンスが加わりました。改訂履歴には、データサイエンティスト協会の技能の一覧の改訂も踏まえた、と書かれています。AIを作って現場に根づかせる技能と、AIを安全に使い続けるための統制の技能が、名前を持ったということです。
改訂の理由として本文が挙げているのは、生成AIの活用が進むなかで、AIに学ばせるデータを集め、整え、管理することの重さが増した点です。AIの前にデータ、データの前に役割、という順番で読むと、3つの変更が一本の筋でつながって見えてきます。なお、2.0では標準の活用の例を示していた章が削除されています。使い方は各社で考える、という姿勢がより強くなったと受け取れます。
標準の項目を、そのまま自社の表に写さない
2.0の本文には、扱う知識や技能は特定の業界や職種を問わないよう、できるだけ汎用的な言葉で書いてあると明記されています。そのうえで、各組織が自らの業界や事業の方向に合わせて具体化することが求められると念を押しています。標準をそのまま貼り付けることは、最初から想定されていません。
もう一つ、本文は注意を添えています。スキル標準から戦略を描こうとすることや、やみくもに技能を身につければDXが進むわけではない、という点です。先に自社が何をしたいのかという方向があり、そのために要る役割を決める参考として標準を使う、という順番です。標準から出発すると、自社に要らない役割まで並べてしまうことになります。
写し取った表には、よく見る形があります。6つの類型と十数個の役割をそのまま行に並べ、担当の欄が半分以上空いている表です。空いた欄は「足りない人材」に見えますが、実際には自社の事業に要らない役割も混ざっています。空欄の数で人材の不足を語ると、採用や研修の予算の話が実態から離れていきます。
標準の項目の一覧そのものは、公表されている本文で確かめられます。この記事では項目を書き写すことはせず、自社の役割表に移すときに何を判断するかに絞って進めます。技能の段や評価者をどう決めるかといった表の作り方の細部は、スキルマップの作り方として別に扱うべき話なので、ここでは入りません。
移す前に決める:役割表を何に使うのか
役割表を作る前に、何のための表かを1つに決めます。採用の要件を決めるためか、今いる人の配置を決めるためか、育成の計画を立てるためか。用途によって、表に書く粒度も、見せる相手も変わります。全部に使える表を目指すと、どの場面でも使いにくい表になります。
AI推進の役割表として一番使いやすいのは、「AIを業務に入れるとき、誰が何を決め、誰が何を整えるのか」を示す用途です。人を並べる表ではなく、仕事と責任の置き場所を示す表と考えると、2.0で加わったデータを整える役割や、AIガバナンスの技能を、そのまま自社の言葉に置き換えやすくなります。
用途を決めたら、表を見る人も決めます。経営会議で使うなら、役割の数は10以内に絞り、どの部署が持つかだけが分かれば足ります。推進の現場で使うなら、役割ごとに「決めてよいこと」と「決めてはいけないこと」まで書きます。同じ表を経営と現場の両方に配ろうとしないことが、使われ続ける表への近道です。
用途の一文は、表の一番上に書いておきます。「この表は、AIを業務に入れるときの判断の持ち主を示すもので、人事の評価には使わない」のように、使わない用途まで添えておくと、表が評価の道具として一人歩きするのを防げます。
先に自社のAI推進の仕事を書き出す
役割表の材料は、標準ではなく自社の仕事です。今後1年ほどで進めたいAIの取り組みを挙げ、それぞれに必要な仕事を書き出します。たとえば、問い合わせの回答の下書きにAIを使うなら、回答の元になる社内の資料を整える仕事、どのAIを使うか決める仕事、使ってよい情報の範囲を決める仕事、出てきた下書きを確かめる仕事が並びます。
書き出すときは、仕事を動詞で書きます。「データ活用」のような名詞で止めると、誰が何をするのかが見えません。「顧客の項目の定義をそろえる」「社外に出してよい資料に印を付ける」「AIの回答の誤りを集めて改善を頼む」のように書くと、後で標準の役割と突き合わせやすくなります。
書き出した仕事には、今それを誰かがしているかどうかも一緒に書きます。意外と多いのは、誰の担当でもないのに、なんとなく誰かがやっている仕事です。情シスの一人が善意でデータの項目の定義を直している、マーケの担当者が自分の判断で使ってよい情報を決めている、といった形です。
仕事の一覧は、20から40行くらいになるのが普通です。多すぎると感じたら、似た仕事をまとめます。この段階ではまだ標準は開きません。自社の言葉で仕事が並んでから、はじめて物差しを当てる、という順番を守ることで、標準に引きずられない表になります。
データマネジメントの3つの役割を自社に置き換える
2.0で新しくできたデータマネジメントの類型は、AI推進の役割表にいちばん影響します。本文によると、データスチュワードは事業の知識をもとにデータの品質、信頼性、安全性を保つ運用を担い、事業部門や現場にデータの扱い方を根づかせる役割です。データエンジニアはデータを集めて整える仕組みを作り、データアーキテクトは全社のデータの構造と流れを設計します。
この3つのうち、多くの会社で持ち主がいないのがデータスチュワードに当たる仕事です。システムの部署はデータの入れ物には詳しくても、項目の意味や現場の使い方までは分かりません。一方、事業部門は使い方には詳しくても、品質を保つ決まりを作る役割を持っていません。この隙間に、AIの答えの質を左右するデータの手入れが落ちています。
本文は、データマネジメントの仕組みを全社横断と事業部門ごとの両方で作ることが望ましいとしつつ、配置の方法は企業の規模や戦略、成熟度で違うので実態に合わせるよう書いています。つまり、専任の担当を置かず、事業部門の誰かが兼ねる形でもかまわないということです。中小規模の会社なら、営業企画やマーケの中でデータに詳しい人が兼ねるのが現実的でしょう。
置き換えるときは、標準の役割名ではなく、自社で通じる呼び名を付けます。「顧客データの番人」「営業データの整え役」のような呼び名のほうが、現場に頼みごとをするときに伝わります。標準の役割名は、表の横の欄に対応として書いておけば十分です。
変革を進める3つの役割は、決める権限で分ける
ビジネスアーキテクトの類型が3つに分かれたことも、AI推進の体制に関わります。本文の補足資料では、役割を分ける主な軸を「変革の階層」と「決定権・裁量権の有無」と説明しています。ビジネスアーキテクトは経営の戦略を事業の構造に落として変革の道筋を描き、ビジネスアナリストは業務や組織を分析して要求を整理し、プロダクトマネージャーは特定の製品や業務の仕組みの責任者として成果に責任を持ちます。
AI推進に当てはめると、全社のAIの取り組みの優先順位を決める人、個々の業務でAIに何を任せるかを整理して現場とつなぐ人、社内向けのAIの仕組みを一つの製品として育てる人、という3つに読めます。社内の問い合わせ用のAIを作ったなら、その持ち主が誰かを決めることは、まさにプロダクトマネージャーの役割を置くことです。
補足資料は、3つの役割をすべて置く必要はなく、特定の役割だけを置いたり、一人が兼ねたりしてもよいとしています。大事なのは、兼ねる場合でも、どの帽子をかぶって決めているのかを分けておくことです。同じ人が優先順位を決め、同時に自分の担当の仕組みを推すと、判断の筋が見えにくくなります。
決める権限の線は、役割表の中で一番もめやすいところです。「どのAIを入れるかを決めるのは誰か」「業務のどこまでをAIに任せるかを決めるのは誰か」を、名前ではなく役職で書いておきます。権限の線が書かれていない役割表は、実際に判断が要る場面で使われません。
AI実装・運用とAIガバナンスは、誰が持つか
2.0で共通の技能の一覧に加わったAI実装・運用は、生成AIやAIエージェント、複数の種類の情報を扱うAIなどを作り、現場に根づかせる技能と説明されています。AIガバナンスは、AIの倫理、指針づくり、責任あるAIの管理、推進と運用からなり、データのガバナンスと並んで、法規制や倫理のもとで品質と信頼性を保つ技能の中に置かれています。
この2つは、技能の名前であって、部署の名前ではありません。自社では、AI実装・運用の技能を情シスと外部の開発会社が分けて持ち、AIガバナンスの技能を法務、情報セキュリティ、AI推進の担当が分けて持つ、ということがよくあります。1つの技能を1つの部署に押し込もうとしないほうが、実態に合った表になります。
分けて持つ場合に抜けやすいのは、境目の仕事です。たとえば、AIの指針を作るのは法務でも、指針に沿って社内のAIの設定を直すのは情シスで、設定が守られているかを見るのは誰なのか。作る人、守らせる人、確かめる人を、別々の行に書くと、境目の空白が見えるようになります。
AIガバナンスの体制そのものの組み立て方、つまり委員会の置き方や規程の構成は、それだけで一つの大きな話です。役割表の段階では、ガバナンスに関わる仕事を書き出し、それぞれの持ち主を決めるところまでで止めておき、体制の設計は別の場で詰めます。
兼務を前提に、役割表を1枚にまとめる
ここまでの材料を、1枚の表にまとめます。行には自社の言葉で書いた役割、列には対応する標準の役割、持つ部署、兼務かどうか、決めてよいことを置きます。標準の役割名は、自社の役割の横に対応として添えるだけにし、行の見出しには使いません。
| 自社の役割(例) | 対応する標準の役割・技能 | 持つ部署(例) | 兼務 | 決めてよいこと |
|---|---|---|---|---|
| AIの取り組みの優先順位を決める | ビジネスアーキテクト | 経営企画 | 兼務 | どの業務から始めるか、予算の配分 |
| 業務でAIに任せる範囲を整理する | ビジネスアナリスト | 各事業部門の企画 | 兼務 | 任せる工程の案、現場との合意 |
| 社内向けAIの仕組みを育てる | プロダクトマネージャー | 情シスまたはAI推進 | 専任か兼務 | 改善の優先順位、公開の範囲 |
| 顧客データの番人 | データスチュワード | 営業企画・マーケ | 兼務 | 項目の定義、使ってよい範囲の案 |
| データを整える仕組みを作る | データエンジニア | 情シス・外部の開発会社 | 兼務 | 取り込みの方法、更新の頻度 |
| AIの使い方の決まりを作り、確かめる | AIガバナンスの技能 | 法務・情報セキュリティ | 兼務 | 指針の案、違反の報告の受け方 |
表の例では、ほとんどの行が兼務になっています。これは中小規模の会社ではむしろ普通の姿です。標準の本文も兼務を認めているので、兼務の多さを欠点と見る必要はありません。見るべきなのは、一人が兼ねる役割の数が多すぎないかです。同じ人の名前が5つ以上の行に出てくるなら、その人が抜けたときに止まる仕事が多すぎます。
「決めてよいこと」の列は、裏返すと「決めてはいけないこと」の列でもあります。顧客データの番人は項目の定義を決められても、そのデータをどのAIに渡すかは決めない、といった線を添えておくと、役割の間で判断がぶつかったときの拠り所になります。
役割表の下書きにAIを使う範囲
役割表づくりには、生成AIが役に立つ場面があります。書き出した自社の仕事の一覧と、公表されている標準の役割の説明を並べて渡し、それぞれの仕事がどの役割に近いかの対応の下書きを作らせる使い方です。数十行の突き合わせを人が一からやるより、たたき台があるほうが議論が早く進みます。
このとき、答えには必ず根拠を書かせます。「この仕事をこの役割に対応させた理由を、標準の説明のどの部分に基づくか引用して添えて」と頼むと、対応の当否を人が確かめやすくなります。根拠のない対応は、もっともらしくても採用しない、と先に決めておきます。
反対に、AIに判断させないことも決めておきます。誰にどの役割を割り当てるか、今いる社員がその役割を担えるか、どの役割に予算を付けるかは、人が決めることです。社員の経歴や評価の情報をAIに渡して「この人に向く役割は」と聞く使い方は、評価の判断をAIに預けることになるので避けます。
入力する資料にも気を付けます。職務記述や組織図には、個人の名前や処遇が入っていることがあります。対応の下書きを作らせるときは、名前を外した仕事の一覧だけを渡し、会社で契約していて入力を学習に使わない設定のAIを使います。
社員の現状と突き合わせて、空いた役割を見つける
役割表ができたら、今の社員の状況と突き合わせます。目的は一人ひとりを採点することではなく、持ち主のいない役割と、持ち主に負担が偏っている役割を見つけることです。行ごとに、今担っている人がいるか、いるなら兼務の数はいくつかを書き込みます。
持ち主のいない役割が見つかったら、埋め方を3つから選びます。社内の誰かに兼ねてもらって育てる、外から採用する、外部の会社に任せる、の3つです。たとえばデータを整える仕組みづくりは外部の開発会社に任せ、顧客データの番人は社内の人が兼ねる、というように、役割ごとに埋め方を変えてかまいません。
外部に任せる役割にも、社内の窓口は必要です。外に任せた仕事の出来を確かめる人が社内にいないと、役割を埋めたことにならないからです。役割表には、外部に任せた行にも社内の受け手の名前を書いておきます。
突き合わせの結果を育成の計画につなげるときは、研修の中身の設計や階層ごとの到達点の決め方が別の論点になります。役割表の段階では、どの役割を社内で育てると決めたか、その役割の候補は誰か、までを記録しておき、研修の設計の場に渡します。
役割表に移す手順
ここまでの流れを、手順にまとめます。経営企画かDX推進の担当が音頭を取り、人事と情シスが加わる形を想定した一例です。全体で1か月ほどを目安にすると、議論が間延びしません。
役割表を何に使うか、誰が見るかを1文で書き、使わない用途も添えます。
今後1年の取り組みから、必要な仕事を動詞で書き出し、今誰がしているかを添えます。標準はまだ開きません。
公表された標準の役割の説明と仕事の一覧を並べ、対応の下書きを作ります。AIを使う場合は根拠の引用を必ず添えさせます。
仕事を役割にまとめて自社の呼び名を付け、持つ部署、兼務、決めてよいことを書きます。ここは人が会議で決めます。
持ち主のいない役割と偏りを確かめ、育てる、採る、任せるのどれで埋めるかを役割ごとに決めます。
表の持ち主と、次に見直すきっかけを表の端に書き、決めた見る人に配ります。
手順の3つ目と4つ目の間に、一度だけ関係部署の意見を聞く場を入れると、あとで「聞いていない」という反発を減らせます。手順4の会議では、対応の下書きをそのまま採るのではなく、行ごとに採るか直すかを人が決めて、決めた理由を一言残します。
定着させる:見直しのきっかけと表の持ち主
役割表は、作った直後がいちばん正しく、時間とともにずれていきます。定着させるために最初に決めるのは、表の持ち主を一人にすることです。持ち主は、表の中身を全部決める人ではなく、見直しの声をかけ、変更を記録する人です。経営企画かDX推進の担当が持つのが自然でしょう。
見直しのきっかけは、日付より出来事で決めるほうが漏れません。組織の改編があったとき、新しいAIの取り組みを始めたとき、主な担当者が異動したとき、そして標準そのものが改訂されたときです。標準は今後も見直し続けると本文に書かれているので、改訂の発表を誰が見張るかも決めておきます。
見直しの場では、表の各行について、持ち主は今もいるか、決めてよいことの線は守られているか、空いたままの役割はないか、の3点だけを確かめます。毎回すべてを作り直す必要はありません。変えた行と日付を表の下に残しておけば、いつの判断かが後から分かります。
表が使われているかどうかは、判断の場で開かれているかで分かります。新しいAIの導入を決める会議で、誰がその判断を持つかを表で確かめる、という使い方が定着すれば、表は生きています。半年開かれていなければ、用途の決め方から見直します。
移すときにやりがちな失敗
標準を自社の役割表に移すときにつまずきやすい形を並べておきます。どれも、標準を自社の仕事より先に置いたことから起きます。
- 6つの類型と全部の役割を行に並べ、空欄の数で人材の不足を語る
- 標準の役割名をそのまま社内の呼び名にして、現場に通じない
- データマネジメントの役割を情シスだけに押し付け、事業部門の知識が入らない
- AIに社員の経歴を渡し、向いている役割の判断まで任せる
- 役割表を人事の評価の基準に流用し、表が敬遠される
- 作ったあとに持ち主を決めず、次の改訂や組織変更で表が古びる
4つ目と5つ目は、組み合わさると深刻になります。AIが作った対応をもとに社員を評価すると、根拠のたどれない判断が人の処遇に影響します。役割表は仕事の置き場所を示す道具で、人を採点する道具ではない、と表の一番上に書いた用途の一文を、会議のたびに確かめます。
3つ目も見落とされがちです。2.0のデータマネジメントの類型は、本文でも経営や事業、現場、コーポレート、リスク管理など組織の多様な機能と連携することが重要だとされています。システムの部署だけで持つと、項目の意味や使い方の判断が抜け落ちます。
よくある質問
DXリテラシー標準のほうは変わったのですか
改訂履歴によると、2.0ではデザインの考え方を下支えする姿勢や基盤の技能を、リテラシー標準の心構えの部分に反映したとされています。一方、中心の変更はDX推進スキル標準の側です。全社員向けの学びの内容を見直すときは、公表された本文の該当部分を確かめます。
中小企業でも、6つの類型すべての役割を置くべきですか
置く必要はありません。標準の本文でも、事業規模や組織の構成に応じて必要な役割と技能を参照することが想定されており、変革を進める3つの役割についても、一部だけを置いたり兼務したりしてよいと書かれています。自社の仕事から必要な役割を選びます。
2.0に合わせて、社内の職種の名前を変えるべきですか
変える必要はありません。標準の役割名は、社外の研修や採用の情報と話を合わせるときの共通語として役立ちますが、社内では通じる呼び名のほうが大事です。役割表では、自社の呼び名と標準の役割名を並べて書いておけば、両方の用途に使えます。
役割表をAIに一気に作らせてもよいですか
たたき台としてはかまいませんが、そのまま使うのは避けます。AIが作れるのは、仕事の一覧と標準の説明の対応の下書きまでです。役割の持ち主、決めてよいことの線、空いた役割の埋め方は、人が会議で決めます。下書きには根拠の引用を添えさせ、行ごとに採否を決めます。
標準がまた改訂されたら、役割表は作り直しですか
作り直す必要はありません。自社の仕事から役割を起こしてあれば、改訂で変わるのは右側の対応の欄だけです。改訂の内容を読み、新しく加わった役割や技能に当たる仕事が自社にあるかを確かめ、あれば行を足します。これが、自社の仕事を先に書く手順の利点です。
まとめ
デジタルスキル標準2.0は、2026年4月16日に経済産業省と情報処理推進機構が公表した改訂版で、データマネジメントの類型と3つの役割の新設、変革を進める役割の3つへの切り分け、AI実装・運用とAIガバナンスの技能の追加が柱です。標準は汎用的な言葉で書かれているので、項目を写さず、自社のAI推進の仕事を書き出してから物差しとして当て、兼務を前提に1枚の役割表にまとめます。AIには対応の下書きと根拠の引用までを任せ、誰に役割を割り当てるか、どう評価するかはAIに判断させません。表の持ち主と見直しのきっかけを決め、次の改訂が来ても右側の対応の欄を直すだけで済む形にしておきましょう。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
