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融資担当が、面談の記録・財務分析シート・資金使途の資料から、融資稟議書の所見欄の下書きを作り、不足している確認事項を挙げる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

面談の記録、財務分析シート、資金使途の資料を読み、融資稟議書の所見欄の下書きを項目ごとに作ります。あわせて、稟議に出す前に確かめておくべきなのにまだ資料が無い事項を一覧にします。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
金融
対象部門
営業/財務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
生成
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
100h/月
AI導入後
40h/月
想定削減
60%
年間削減
720h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 財務分析シートを開き、直近3期の売上・利益・借入の推移と主な指標を確かめる
  2. 顧客管理のシステムで、直近半年の面談の記録を読み返す
  3. 資金使途の資料(見積書、工事の請負契約書、資金繰り表など)を開き、金額と時期を確かめる
  4. 審査の着眼点を見ながら、所見欄の①〜⑥を書く
  5. 足りない資料に気づいたら、顧客に電話して取り寄せる
  6. 課長が読み、直しを入れて稟議を出す
  7. 審査部から確認の問い合わせが来たら、回答と所見の書き直しをする
導入後(After)
  1. 人担当者が案件のフォルダに、面談の記録の書き出し、財務分析シートの値の一覧、資金使途の資料を置き、確認リストの状態を「下書き依頼」にする
  2. 自動状態の変更を起点にフローが動き、資料をそろえて文字にする
  3. 自動Azure OpenAI が、所見欄の①〜⑥の下書きを項目ごとに作り、1文ごとに根拠の資料と箇所を付ける
  4. 自動同じ呼び出しで、着眼点に照らして資料が無い事項・確かめていない事項を挙げる
  5. 自動フローが、下書きに書かれた数字を財務分析シートの値と照らす
  6. 人担当者が下書きと根拠を見比べて直し、不足の事項について顧客に確認する
  7. 人担当者が⑥総合所見の結論と、融資の可否の意見を書く
  8. 人課長が読み、稟議を出す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 財務分析シートを開き、直近3期の売上・利益・借入の推移と主な指標を確かめる
  2. 顧客管理のシステムで、直近半年の面談の記録を読み返す
  3. 資金使途の資料(見積書、工事の請負契約書、資金繰り表など)を開き、金額と時期を確かめる
  4. 審査の着眼点を見ながら、所見欄の①〜⑥を書く
  5. 足りない資料に気づいたら、顧客に電話して取り寄せる
  6. 課長が読み、直しを入れて稟議を出す
  7. 審査部から確認の問い合わせが来たら、回答と所見の書き直しをする

(a)所見を一から書くのに時間がかかる。 4番目は、1〜3番目で見た事実を項目ごとに並べ直す作業です。事実はすでに手元にあるのに、文章にする段階で1時間近くかかります。 何を書いたかを確かめるために、また資料を開き直すからです。

(b)書かれない項目がある。 着眼点は文書になっていますが、毎回すべてに目を通す担当者は多くありません。 返済原資の説明で、設備投資による増収をどこまで見込んだかを書き忘れる、といった抜けが同じ型で繰り返されます。

(c)足りない資料に気づくのが遅い。 資金繰り表をもらっていない、見積書の日付が古い、他行の借入の状況を聞いていない。こうした抜けに、所見を書いている途中か、審査部に指摘されてから気づきます。 そこから顧客に連絡するので、顧客を待たせます。

(d)保証を求める理由の書き方がそろわない。 経営者保証を求める場合、なぜ必要かを顧客に説明し、その結果を記録することが求められています。どの要素が足りないために保証が必要なのかを、定量的・具体的に書けている所見と、そうでない所見が混ざっています。

  1. 【人】 担当者が案件のフォルダに、面談の記録の書き出し、財務分析シートの値の一覧、資金使途の資料を置き、確認リストの状態を「下書き依頼」にする
  2. 【自動】 状態の変更を起点にフローが動き、資料をそろえて文字にする
  3. 【自動】 Azure OpenAI が、所見欄の①〜⑥の下書きを項目ごとに作り、1文ごとに根拠の資料と箇所を付ける
  4. 【自動】 同じ呼び出しで、着眼点に照らして資料が無い事項・確かめていない事項を挙げる
  5. 【自動】 フローが、下書きに書かれた数字を財務分析シートの値と照らす
  6. 【人】 担当者が下書きと根拠を見比べて直し、不足の事項について顧客に確認する
  7. 【人】 担当者が⑥総合所見の結論と、融資の可否の意見を書く
  8. 【人】 課長が読み、稟議を出す

6番目が、この設計の分かれ目です。 担当者は、下書きを読む前に根拠の欄を見ます。 根拠が自分の把握と合っていれば文章を整えるだけで、合っていなければその文を消します。根拠が付いているので、資料を開き直さずに確かめられます。

7番目を人に残しているのは、融資の判断そのものだからです。 AIが書くのは事実の整理までで、「よって本件は妥当と判断する」という1文は担当者が書きます。

02今回想定するシステム構成

構成図
面談の記録(顧客管理のシステム)   財務分析シート   資金使途の資料
   │  書き出し                       │  値の一覧      │  PDF
   ▼                                 ▼                ▼
SharePoint の案件フォルダ + 確認リスト「稟議下書き」
   ▼【トリガー】アイテムが作成または変更されたとき(状態=下書き依頼)
Power Automate
   ├──▶ 資料をそろえる/PDFを文字にする/顧客の個人情報を伏せる
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 構造化出力
   │   ① 所見欄の①〜⑥の下書き(1文ごとに根拠)
   │   ② 不足している確認事項
   │   ③ 下書きで使った数値の一覧
   ▼
Power Automate ── 数値を財務分析シートの値と照らす
   ▼
確認リスト「稟議下書き」──【担当者が直し、結論を書く】
   ▼
課長 → 稟議
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude、Gemini
連携Power AutomateMake、n8n
資料と確認の置き場SharePoint のライブラリとリストDataverse
面談の記録既存の顧客管理のシステム各システムの書き出し機能

顧客管理のシステムと財務分析シートは、新しく足すものではありません。 面談の記録は案件ごとに書き出し、財務分析シートは項目名と値の一覧として書き出して案件フォルダに置きます。書き出し方は利用している製品によって違うため、この部分は利用環境に合わせた個別の実装になります。 フローは書き出されたものを読むだけで、どちらにも書き込みません。

土台になるのは、Microsoft Foundry で提供される Azure OpenAI のモデルです。 Azure が販売するモデルは Microsoft の Azure 環境でホストされ、モデルの提供元が運営するサービスとはやり取りしないとされています。入力と出力は他の顧客にもモデルの提供元にも提供されず、許可や指示なしに生成AIの基盤モデルの学習に使われないとされています。取引先の決算と経営者の考えを扱うので、この点を最初に確かめます。標準のデプロイでは指定した地域の中で処理されますが、「Global」や「DataZone」の種類では処理の場所が広がるので、デプロイの種類も先に決めます。

資料の受け取りは、Power Automate の SharePoint コネクタで行います。 確認リストの状態の変更は「アイテムが作成または変更されたとき」のトリガーで受け、資料の中身は「パスを使用してファイルコンテンツを取得する」で取ります。下書きの書き戻しは「項目を更新する」です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

担当者が確認リストの状態を「下書き依頼」にしたことを起点にします。 「アイテムが作成または変更されたとき」のトリガーは状態以外の変更でも動くので、フローの最初で状態が「下書き依頼」かを確かめ、違えば何もせずに終えます。 下書きを書き戻したら、状態を「下書き済み」に変えます。

資料が置かれたことを起点にはしません。 資料は1つずつ置かれるので、途中で動くと、資金使途の資料がまだ無いのに「資金使途の資料が無い」という確認事項が出ます。そろったと判断するのは担当者です。

担当者が資料を足して状態を「下書き依頼」に戻せば、同じ案件の下書きを作り直します。 前の版は消さずに残します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
面談の記録直近12か月の訪問の日付、面談の相手、聞き取った内容顧客管理のシステムの書き出し
財務分析シートの値直近3期の売上・営業利益・経常利益・減価償却費・借入金・純資産、主な指標(計算済みの値)財務分析シートの書き出し
資金使途の資料見積書、請負契約書、資金繰り表、設備の仕様書など案件フォルダ
案件の条件申込の金額、期間、返済方法、担保・保証の案確認リスト「稟議下書き」
所見欄の書式①〜⑥の項目と、各項目に書くことの説明SharePoint のリスト
審査の着眼点項目ごとの確認事項。資金使途の種類(運転資金・設備資金など)ごとの追加の確認事項SharePoint のリスト

質を決めるのは、審査の着眼点の書き方です。 「資金使途の妥当性を確認する」だけでは、何を確かめれば足りるのかが分かりません。「設備資金なら、見積書の日付が3か月以内か、相見積の有無、導入による増収の見込みの根拠」のように、確かめる事実の単位で書きます。 不足している確認事項は、この行と資料を突き合わせて出ます。

財務分析シートの値は、計算済みのものだけを渡します。 AIに売上と前期の売上を渡して増減率を書かせると、桁や期の取り違えが起きます。増減率も指標も、シートの側で計算した値を渡します。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
案件の条件と状態確認リスト「稟議下書き」トリガーが返す列の値
面談の記録・シートの値・資金使途の資料案件フォルダ「パスを使用してファイルコンテンツを取得する」
所見欄の書式・審査の着眼点SharePoint のリスト「アイテムを取得」。資金使途の種類でフィルター クエリを指定して絞る

着眼点は全部を渡しません。 運転資金の稟議に設備資金の確認事項を当てると、「相見積が無い」という見当違いの不足が出ます。案件の資金使途の種類で、着眼点の行を絞ってから渡します。

面談の記録は12か月で区切ります。 それより古い記録は、事業の状況が変わっていることが多く、古い発言を今の事実として書く誤りの元になります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 資料のそろいの確認 … 面談の記録、シートの値、資金使途の資料の3種類があるかを見ます。無いものは、そのまま「資料が無い」としてAIに伝えます
  2. PDFの文字の取り出し … 見積書や契約書のPDFから文字を取り出します。取り出せないページ(画像だけのもの)は印を付け、AIには「読めなかった」と伝えます
  3. 個人を特定する情報を伏せる … 経営者の自宅住所、個人の資産、家族の情報など、所見に要らない個人の情報を伏せます
  4. 面談の記録に番号を振る … 記録ごとに M-01 のような番号と日付を付け、根拠として引けるようにします
  5. シートの値に番号を振る … 項目ごとに F-売上-直前期 のような番号を付けます
  6. 資料にも番号を振る … ファイルごとに D-01 を付け、ページ番号を残します
  7. 申込の金額と資料の金額を並べる … 案件の条件にある申込の金額と、見積書・契約書の合計の金額を、フローが表にして渡します。一致しているかの判定はフローが行い、AIには結果だけを伝えます

4〜6番目が、根拠を付けるための仕掛けです。 番号の無い資料をAIに渡すと、根拠は「面談の記録より」のような大づかみなものになり、担当者が確かめるにはまた全部を読むことになります。 番号を振っておけば、下書きの横に M-07 と出て、その記録だけを開けば済みます。

3番目は、経営者保証の検討で効きます。 保証の要否を考える材料には経営者個人の資産も含まれますが、所見の下書きに個人の資産の明細を書く必要はありません。 下書きに要らない情報は、渡さないほうが確実です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、所見欄の①〜⑥の下書きを書くことと、不足している確認事項を挙げることです。どちらも、渡した資料の番号を根拠にします。

項目書かせること根拠が無いときの扱い
① 資金使途とその妥当性何に、いくら、いつ使うか。資料の金額・日付との一致資料が無ければ「資金使途の資料なし」と書き、確認事項に挙げる
② 返済原資と返済の見通し何を原資に返すか。シートの値と面談で聞き取った見込み見込みの根拠が無ければ確認事項に挙げる
③ 財務の状況直近3期の推移と主な指標。シートの値をそのまま引くシートに無い値は書かない
④ 事業の状況と経営者取引先の動き、受注の状況、経営者の方針。面談の記録から記録に無いことは書かない
⑤ 保全担保・保証の案と、その内容案が無ければ空欄
⑥ 総合所見①〜⑤の要点の整理まで。結論は書かない-

③で「シートの値をそのまま引く」と書いているのは、第1章の3段落目のとおりです。 下書きに出てくる数字は、numbers_used にすべて書き出させ、フローがシートの値と照らします。

⑤で保証を求める案のときは、理由の下書きを付けます。 金融庁の要請は、保証契約の締結時に、経営者保証に関するガイドライン第4項(2)に掲げられている要素を参照のうえ、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すなどにより、理解と納得を得ることを目的とした説明に努めることを求めています。下書きでは、どの要素がどの値のために満たされていないと見ているかを、シートの値の番号を付けて書かせます。保証を求めるかどうかを決めるのは担当者です。

不足している確認事項は、着眼点の行ごとに「確かめた資料があるか」を見て出します。 資料の番号が付けられない行が、そのまま確認事項になります。

させないこと理由
融資の可否・金額・条件の判断担当者と決裁者が行う
数字の計算計算済みの値を引くだけ。計算させると桁と期の取り違えが起きる
面談の記録に無い事業の見通し書かれていない見通しを書くと、根拠の無い所見になる
信用格付・債務者区分への言及所定の手続で決まるもの
保証の要否の結論理由の下書きまで。要否は担当者が決める
Step6

指示内容を固定する

あなたは銀行の法人営業部で、融資稟議書の所見欄の下書きを作る担当者です。
渡された資料に書かれていることだけを根拠にしてください。

【書くこと】
所見欄の ①資金使途とその妥当性 ②返済原資と返済の見通し ③財務の状況
④事業の状況と経営者 ⑤保全 ⑥総合所見 を、項目ごとに書いてください。
あわせて、審査の着眼点のうち、根拠になる資料が無い事項を挙げてください。

【厳守事項】
- 1文ごとに、根拠にした資料の番号(M-xx、F-xx、D-xx)を付けてください。
  番号を付けられない文は書かないでください。
- 数字は財務分析シートの値(F-xx)をそのまま書いてください。
  足し算・引き算・割り算をしないでください。増減率もシートの値を使ってください。
- 書いた数字は、すべて numbers_used に番号とともに書き出してください。
- 面談の記録に無い見通し・評価を書かないでください。
  「回復が見込まれる」と書くなら、そう述べた面談の記録の番号を付けてください。
- 融資の可否、金額、条件の判断を書かないでください。
  ⑥総合所見は①〜⑤の要点の整理までにしてください。
- 信用格付や債務者区分に触れないでください。
- ⑤で保証の案があるときは、保証を求める理由の下書きを付けてください。
  どの要素が、どの値(F-xx)のために満たされていないと見ているかを書き、
  資産・収益力は値で、その他の要素は面談の記録で具体的に書いてください。
  保証を求めるべきかどうかは書かないでください。
- 資料が無い項目、読めなかった資料は、そのことをそのまま書いてください。
  ほかの資料から補わないでください。
- 確認事項は、着眼点の行の番号と、何を確かめれば足りるかを書いてください。

【案件の条件】{loan_terms}
【所見欄の書式】{memo_format}
【審査の着眼点(資金使途の種類で絞ったもの)】{checkpoints}
【財務分析シートの値】{financials}
【面談の記録】{meeting_notes}
【資金使途の資料】{documents}

「番号を付けられない文は書かない」が、この指示の中心です。 根拠を求めるだけだと、AIは文を書いたあとに近そうな番号を付けます。書く前に番号があるかを問う形にすると、根拠の無い文そのものが減ります。

「足し算・引き算・割り算をしない」まで書くのは、「計算しない」だけでは足りないからです。 「前期比で約1割の増収」のような丸めた言い方で、計算した値を書きます。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 Azure OpenAI の構造化出力を使い、JSON Schema に沿った形で返させます。

{
  "case_id": "",
  "sections": [
    {
      "section": "use_of_funds | repayment | financials | business | collateral | summary",
      "sentences": [
        { "text": "", "sources": ["M-07", "D-02"] }
      ],
      "missing_note": ""
    }
  ],
  "guarantee_reason_draft": {
    "applicable": true,
    "sentences": [ { "text": "", "sources": ["F-12"] } ]
  },
  "missing_checks": [
    { "checkpoint_id": "", "what_to_confirm": "", "why_missing": "no_document | unreadable | not_in_notes" }
  ],
  "numbers_used": [ { "source": "F-03", "value_in_text": "" } ]
}

1つ目の理由は、文と根拠を同じ要素に持たせられることです。 sentences の1要素に text と sources を並べるので、確認リストでは文の横に根拠の番号が並びます。 担当者は番号を押して、その記録だけを開きます。

2つ目は、section と why_missing を enum で縛れることです。 構造化出力は enum に対応しているので、書式に無い項目が増えることも、不足の理由が自由な文になることもありません。 不足の理由は「資料が無い」「読めなかった」「面談で聞いていない」の3つに分かれ、担当者が次に何をすればよいかが決まります。

3つ目は、すべての項目が必ず返ることです。 構造化出力ではすべての項目を必須にし、任意の項目は null との組み合わせの型で表します。保証の案が無い案件でも、guarantee_reason_draft は applicable: false として返ります。

numbers_used の照合は、フローが行います。 source の番号でシートの値を引き、value_in_text と一致するかを見ます。構造化出力は数値の範囲や文字列の形式の指定には対応していないため、値の正しさは後段で確かめます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
確認リスト「稟議下書き」「アイテムが作成または変更されたとき」「項目を更新する」状態の変更を受け、下書きと確認事項を書き戻す
案件フォルダ「パスを使用してファイルコンテンツを取得する」面談の記録、シートの値、資金使途の資料を読む
所見欄の書式・着眼点「アイテムを取得」資金使途の種類で絞って読む
Azure OpenAIAPI呼び出し(構造化出力)下書き、確認事項、使った数値
稟議のシステム既存の入力経路担当者が直した所見を、担当者が入力する

稟議のシステムには書き込みません。 下書きを所見欄に入れるのは担当者です。AIの下書きがそのまま稟議に載る経路を作らないためです。

数字の照合で不一致が出たら、その文に印を付けて書き戻します。 文を消さずに印を付けるのは、担当者がシートの側の誤りに気づくこともあるからです。

Step9

人が確認する

担当者が見るのは全件です。見る順番を決めておきます。

  1. 数字の照合で印が付いた文を見る … シートの値と違う数字が書かれた文です。直すか、消します
  2. 不足している確認事項を見る … no_document は顧客に資料を依頼し、not_in_notes は次の面談で聞きます
  3. 根拠の番号を見ながら下書きを読む … 根拠の記録が自分の把握と違えば、その文を消します
  4. 保証の理由の下書きを見る … 値と記録が理由として足りているかを確かめます。顧客への説明にそのまま使えるかの目で読みます
  5. ⑥総合所見の結論を書く … ここは担当者が書きます

2番目を3番目より先にするのは、不足の事項が顧客を待たせる作業だからです。 先に依頼を出しておけば、下書きを直している間に資料が届きます。

課長は、担当者が直した後の所見を読みます。 下書きと担当者の直しの差分も見られるようにしておくと、どこを直したかで担当者の判断が分かります。

目標は、60件をならして1件40分です。 下書きの手直しと確認事項への対応を含めた時間で、根拠の番号が付いていることで、資料を開き直す時間がなくなることを見込んでいます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
資料が1種類そろっていないそのままAIに渡し、該当する項目は「資料なし」と書かせる。ほかの資料から補わせない
PDFの文字が取り出せない「読めなかった」としてAIに伝える。unreadable の確認事項として出る
数字の照合で不一致該当する文に印を付けて書き戻す。文は消さない
根拠の番号が渡した資料に無いその文を下書きから外し、印を付けて担当者に見せる
構造化出力が拒否(refusal)を返す担当者に知らせ、手で書く
面談の記録が12か月分に満たないあるだけを渡し、not_in_notes が多く出ることを担当者に知らせる
申込の金額と見積書の合計が合わない不一致をAIに伝え、①で差額をそのまま書かせる。理由は推測させず、確認事項に挙げる
状態が「下書き依頼」以外の変更で動いた何もせずに終える
Azure OpenAI が応答しない状態を「下書き依頼」のまま残し、時間を置いて再実行する

上から4行目は、AIが番号を作ってしまう場合への備えです。 渡していない番号が出たら、その文の根拠は存在しないので、文ごと外します。

金額の不一致の行も、よく起きます。 申込の金額に諸費用や予備費を含めていることが多く、差額そのものは誤りではありません。ただし、何を含めたかが所見に書かれていないと審査部は問い合わせを返すので、確認事項として必ず出します。

Step11

記録を残す

  • 下書きを作ったときに渡した資料の一覧と、それぞれの版
  • AIに渡した入力の全文(伏せた後のもの)と、返ってきたJSONの全文
  • 数字の照合の結果と、不一致の文
  • 担当者が直した後の所見と、下書きとの差分
  • 不足している確認事項と、それに対して担当者が行ったこと(依頼した日、届いた日)
  • 保証の理由の下書きと、顧客に説明した内容の記録

最後の行は、記録の求めに対応します。 金融庁の要請は、保証人等へ適切な説明を行い、その結果等を記録した件数を報告できる態勢を求めており、記録は営業日報等で代用するなど既存の枠組みでの対応でも差し支えないとしています。下書きの理由と、実際に説明した内容を同じ案件に結び付けて残しておけば、件数の把握にもそのまま使えます。

04実装レベルの3段階

最小構成:チャット画面に資料を貼り、所見の下書きを出させる / 1件ごとの下書き
半自動化:上記+案件フォルダの資料をフローで集めて番号を振り、下書きを確認リストに書き戻す / 資料の取りまとめと下書きの一覧化
本格構成:上記+着眼点に照らした確認事項、数字の照合、保証の理由の下書き、差分の記録 / 下書きから確認事項の洗い出し、数字の点検まで

最小構成では番号振りが手作業です。 10件なら回りますが、月60件には使えません。着眼点で確認事項が出るかを確かめるための段階です。 半自動化で、1件100分が60分程度になります。 下書きは出ますが、確認事項の洗い出しと数字の確かめが手作業のまま残ります。本格構成で40分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、審査部からの問い合わせが、出す前の確認事項に置き換わるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、担当者が消した文の型が見えてきます。多くは根拠の弱い見通しの文で、そこを指示で抑えてから確認事項に進むほうが、下書きが信用されます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
100 分
1件あたり導入後時間
40 分
現在  60件 × 100分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 60件 × 40分 ÷ 60 = 40 時間/月
月間削減時間
60h
削減率
60%
年間削減時間
720h
年間金額換算(時間単価4,500円)
324万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 中小企業向けの事業性融資を扱い、法人営業の担当者が面談の記録と財務分析シートと資金使途の資料を見比べながら、稟議書の所見欄を一から書いている地方銀行・信用金庫・信用組合。所見の書き方が担当者の経験によって違い、審査部から同じ確認事項で差し戻される稟議が多い場合。面談の記録が文字のデータで残っており、財務分析シートの値を書き出せる場合。
向いていない
  1. 稟議の件数が月に数件で、担当者が1件ずつ時間をかけて書ける場合。面談の記録が担当者の手帳にしかなく、文字のデータになっていない場合。所見欄の書き方の決まり(何をどの順に書くか)が社内に無く、審査の着眼点も文書になっていない場合(先に決まりを作る作業が要ります)。なお、融資の可否、金額、条件、保証や担保の要否の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月決裁された稟議から10件を選ぶ(うち3件は、審査部から確認の問い合わせが来たものを入れる)
  2. その10件の面談の記録、財務分析シートの値、資金使途の資料を集め、個人の情報を伏せる
  3. 記録と値と資料に、手で番号を振る
  4. 社内で利用が認められている Azure OpenAI のチャット画面に、所見欄の書式と着眼点とあわせて貼り付ける
  5. 「所見欄の①〜⑥を、1文ごとに根拠の番号を付けて書いてください。番号を付けられない文は書かないでください。足りない資料を挙げてください」と指示する
  6. 出てきた下書きを、実際に出した所見と、審査部の問い合わせと突き合わせる

問い合わせが来た3件が、いちばん大事です。 審査部が問い合わせた事項が、不足している確認事項に出てくるかを見ます。

出てきた内容判断
問い合わせの事項が確認事項に出たフローの構築に進む
根拠の番号の無い文や、計算した数字が混ざった指示の書き方で直る。構成は有効
確認事項がほとんど出ない着眼点の書き方が先。 確かめる事実の単位で書き直す

3行目は、着眼点が「何を見るか」ではなく「何を考えるか」で書かれているときに起きます。 その場合は、問い合わせの来た3件をもとに、着眼点を事実の単位で書き直してから試し直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
根拠の番号を後から付けた文が混ざる番号を付けられない文は書かないと指示する。渡していない番号は文ごと外す
「約1割の増収」のように計算した値が出る足し算・引き算・割り算を禁じ、numbers_used で照合する
面談の記録に無い見通しが書かれる見通しの文には面談の記録の番号を必須にする
⑥総合所見に結論が書かれる要点の整理までと明記し、結論の欄は担当者の入力欄にする
確認事項がほとんど出ない着眼点を「確かめる事実の単位」で書き直す
運転資金の稟議に設備資金の確認事項が出る資金使途の種類で着眼点を絞ってから渡す
古い面談の発言が今の事実として書かれる面談の記録を12か月で区切り、日付を付けて渡す
資料の途中で下書きが動く資料の配置ではなく、担当者が状態を変えたことを起点にする
保証の理由が抽象的な文になる資産・収益力は値の番号を、その他の要素は面談の記録の番号を必須にする
個人の資産の明細が下書きに出る前処理で伏せる。所見に要らない情報は渡さない

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、下書きが根拠に基づいているように見えて、実は基づいていない状態を作ります。所見の信用は1件の誤りで崩れるので、番号の照合と数字の照合は、最初から機械で行います。

下から2行目は、顧客への説明に直結します。 保証を求める理由は、下書きのあと担当者が顧客に説明する材料になります。抽象的な理由のまま説明すれば、理解と納得は得られません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 取引先の決算の数値、借入の状況、取引先や受注の動き、経営者の考えと個人の情報です。取引先にとって、外に出ることがもっとも困る情報の一つです。

  1. データの扱いの条件を確かめる … Azure OpenAI の入力と出力は、モデルの提供元に提供されず、許可や指示なしに基盤モデルの学習に使われないとされています。不正利用の監視で、検知された入力と出力が権限のある担当者に確認されうることも、社内の規程と照らしておきます
  2. 所見に要らない個人の情報を渡さない … 経営者の自宅住所や家族の情報、個人の資産の明細は、前処理で伏せます
  3. 融資の判断をAIに書かせない … 可否、金額、条件、保証の要否は担当者と決裁者が決めます。下書きの⑥に結論が入らない設計にします
  4. 下書きが稟議にそのまま載る経路を作らない … 稟議のシステムへの入力は担当者が行います
  5. 根拠の番号と数字は機械で照らす … 人の目だけで確かめると、忙しい月から省かれます
  6. 案件フォルダの権限を絞る … 担当者と課長、融資企画課だけが見られるようにします。ほかの拠点の案件が見えないようにします

誤りが起きた場合のリスクは、根拠の無い所見で融資の判断が誤ることと、取引先の情報が必要な範囲を超えて広がることの2つです。 前者は番号と数字の照合で、後者は伏せる処理と権限で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:着眼点を事実の単位で書き直す

審査の着眼点のうち、件数の多い運転資金と設備資金の2種類について、確かめる事実の単位で書き直します。審査部から最近返ってきた問い合わせを並べると、何が足りなかったかが見えます。

2週目:10件で試す

先月の稟議から10件を選び、番号を振ってチャット画面に貼り、下書きと確認事項を出させます。審査部が問い合わせた事項が確認事項に出るかを最優先で見ます。

3週目:書き出しの形を決める

顧客管理のシステムから面談の記録を、財務分析シートから値の一覧を書き出す形を決めます。シートの値には、この時点で項目ごとの番号を持たせます。

4週目:案件フォルダから下書きまでをつなぐ

Power Automate で状態の変更を受け、資料を集めて番号を振り、下書きを確認リストに書き戻すところまで作ります。この時点では確認事項と数字の照合は出さず、下書きと根拠だけを見ます。

2か月目: 着眼点に照らした確認事項と、数字の照合を足します。担当者が消した文の型を数えます。3か月目以降: 保証の理由の下書きと差分の記録を足し、1件100分が何分になったかを実測します。審査部からの問い合わせの件数が減り、下書きの根拠を担当者が信用して使えるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
保証契約の締結時に、経営者保証に関するガイドライン第4項(2)に掲げられている要素を参照のうえ、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すなどにより、理解と納得を得ることを目的とした説明に努めること。保証人等へ適切な説明を行い、その結果等を記録した件数を金融庁へ報告できる態勢を整備すること。記録は営業日報等で代用するなど既存の枠組みでの対応でも差し支えないとされること金融庁: 個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進について(要請)2026-10-06
Azure が販売するモデル(Azure OpenAI を含む)の入力と出力が、他の顧客やモデルの提供元に提供されず、許可や指示なしに基盤モデルの学習に使われないこと。Microsoft の Azure 環境でホストされ、モデルの提供元のサービスとやり取りしないこと。標準のデプロイでは指定した地域で処理され、Global と DataZone では処理の場所が広がること。不正利用の監視で、検知された入力と出力が権限のある担当者に確認されうることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure2026-10-06
構造化出力が JSON Schema への準拠をさせる機能であること。enum に対応すること。すべての項目を必須にし、任意の項目は null との組み合わせの型で表すこと。additionalProperties を false にすること。文字列の pattern や format、数値の minimum などに対応しないことMicrosoft Learn: How to use structured outputs with Azure OpenAI2026-10-06
「アイテムが作成または変更されたとき」のトリガー、「パスを使用してファイルコンテンツを取得する」「アイテムを取得」「項目を更新する」のアクションがあること。「アイテムを取得」で OData のフィルター クエリを指定できることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-06

所見欄の書式、審査の着眼点、保証の要否の判断基準は、各金融機関の規程によります。 本記事は金融庁の公表資料で確認できた範囲だけを扱っています。顧客管理のシステムと財務分析シートからの書き出しは、利用している製品によって方法が異なります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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