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社内システム間の連携の設計書・項目定義書・改修記録を横断して、ある項目がどこから来てどこへ渡るかを根拠付きで答える

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

社内システム間の連携の設計書・項目定義書・改修記録をまとめて検索し、「この項目はどこから来てどこへ渡るか」に、根拠の文書と箇所を付けて答えます。経路は1区間ずつ返し、根拠の無い区間は「不明」として止めます。

サマリー
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
IT・SaaS/小売/製造/金融
対象部門
情報システム
対象業務
内容確認・チェック/情報検索
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
70%
年間削減
840h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 問い合わせをチャットで受ける(例:「出荷指示データの『納品先コード』は、どこで決まっていますか」)
  2. 担当者が、心当たりのあるインターフェースの設計書を共有フォルダから探す
  3. 項目定義書を開き、項目名で検索する。システムごとに項目名が違うので、論理名と物理名の両方で探す
  4. 見つかった項目の「元のシステム」の側の設計書を開き、さらに上流へたどる
  5. 課題管理で、その項目に関わる改修のチケットを探し、設計書が最新かを確かめる
  6. 経路をチャットに書いて返す。根拠の文書の場所を書くかどうかは担当者次第
導入後(After)
  1. 人問い合わせる人が、社内の問い合わせ画面に項目名とシステム名を入れる
  2. 自動項目名の対応表(データ辞書)から、同じ項目の別名を引き、検索の語を広げる
  3. 自動有効な版の文書だけに絞って検索し、その項目を含む連携の設計書と項目定義書を探す
  4. 自動見つかった受け渡しを1区間ずつ、根拠の文書と箇所を付けて並べる。根拠の無い区間は「不明」で止める
  5. 自動その区間の設計書より新しい改修記録があれば、「設計書が古い可能性」の印を付ける
  6. 人情報システムの担当が、区間ごとの根拠を開いて確かめ、問い合わせた人に返す
  7. 人「不明」で止まった区間は、担当者が調べ、分かったことを項目名の対応表か設計書に足す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 問い合わせをチャットで受ける(例:「出荷指示データの『納品先コード』は、どこで決まっていますか」)
  2. 担当者が、心当たりのあるインターフェースの設計書を共有フォルダから探す
  3. 項目定義書を開き、項目名で検索する。システムごとに項目名が違うので、論理名と物理名の両方で探す
  4. 見つかった項目の「元のシステム」の側の設計書を開き、さらに上流へたどる
  5. 課題管理で、その項目に関わる改修のチケットを探し、設計書が最新かを確かめる
  6. 経路をチャットに書いて返す。根拠の文書の場所を書くかどうかは担当者次第

(a)探す時間がほとんど。 経路そのものを考える時間は短く、どの設計書に書かれているかを探す時間が大半です。 共有フォルダの階層は、システム別・年度別・開発会社別が混在しています。

(b)項目名がシステムをまたいで変わる。 販売管理の「納品先コード」が、倉庫管理では「届先CD」、運送会社向けのデータでは別の名前になります。同じ項目だと知っている人しか、つなげません。

(c)版の新旧が混ざる。 同じインターフェースの設計書が「v3」「v3_改」「最新」のように複数残っています。古い版を見て答え、改修後の変換の規則を見落とすことがあります。

(d)答えに根拠が付かない。 詳しい担当者は記憶で答えられますが、根拠の文書が示されないので、聞いた側は確かめられません。 その担当者が異動すると、同じ問いにまた一から探すことになります。

  1. 【人】 問い合わせる人が、社内の問い合わせ画面に項目名とシステム名を入れる
  2. 【自動】 項目名の対応表(データ辞書)から、同じ項目の別名を引き、検索の語を広げる
  3. 【自動】 有効な版の文書だけに絞って検索し、その項目を含む連携の設計書と項目定義書を探す
  4. 【自動】 見つかった受け渡しを1区間ずつ、根拠の文書と箇所を付けて並べる。根拠の無い区間は「不明」で止める
  5. 【自動】 その区間の設計書より新しい改修記録があれば、「設計書が古い可能性」の印を付ける
  6. 【人】 情報システムの担当が、区間ごとの根拠を開いて確かめ、問い合わせた人に返す
  7. 【人】 「不明」で止まった区間は、担当者が調べ、分かったことを項目名の対応表か設計書に足す

6番目の確認を省かないでください。 区間の並びは下調べであって、改修の影響範囲の確定ではありません。根拠の文書を開いて、変換の規則まで読むのは人です。

7番目が、この構成を育てる工程です。 「不明」で止まった区間は、文書に書かれていない知識が担当者の頭の中にあるところです。そこを文書に足すたびに、次の問い合わせから止まらなくなります。

02今回想定するシステム構成

構成図
設計書(Word・PDF)/項目定義書(Excel)/改修記録(課題管理から書き出し)
   │   メタデータ:システム(送り側・受け側)、IF番号、版、状態(有効・廃止)
   ▼
Cloud Storage(文書とメタデータのJSONL)
   ▼【定期同期】
Vertex AI Search(Agent Search)── レイアウトパーサーで表と見出しを保って分割
   ▲
   │ answer メソッド(引用付き、状態=有効で絞り込み)
   │
社内の問い合わせ画面 ── 項目名の対応表で別名を広げる
   ▼
区間の並び(送り側の項目 → 受け側の項目、根拠の文書と箇所)
   ▼
【情報システムの担当が根拠を確かめて返す】
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)(レイアウトパーサー、answer メソッド)Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service
保管Cloud Storage(文書とメタデータ)共有フォルダからの定期の複製
画面社内の問い合わせ画面(個別に作る)チャットツールのボット

共有フォルダと課題管理は、新しく足すものではありません。 文書の置き場所はそのままにして、有効な版だけを Cloud Storage に複製する仕組みを足します。複製の仕組みと問い合わせ画面は、利用環境に応じた個別の作りになります。

検索の土台は、Vertex AI Search です。 公式のページでは、Vertex AI Search は Agent Search へ名前が変わりつつあると案内されています。この構成で効くのは、レイアウトパーサーと answer メソッドの2つです。

レイアウトパーサーは、PDF・HTML・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM を扱い、文章のかたまり、表、箇条書き、見出しを見分けます。 項目定義書はExcelの表で、1行が1つの項目です。表を表として読めることが、項目の対応を取り出すうえで欠かせません。 文書を分割する単位(チャンク)は100〜500の範囲で指定でき、既定は500です。各チャンクに見出しを含めるかも選べます。

answer メソッドは、検索した結果から回答を作り、回答の文ごとに引用を付けられます。 回答の文と引用元のチャンクを結ぶ情報、引用元の文書のURI、チャンクの中身が返ります。根拠の無い区間を止める、という設計の拠り所はここにあります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

問い合わせ画面への入力を起点にします。 入れるのは、項目名、分かればシステム名、調べたい向き(上流へ・下流へ・両方)の3つです。向きを入れてもらうのは、両方向に広げると区間が増えすぎて確認が終わらないからです。

文書の取り込みは、問い合わせとは別に定期で動かします。 Cloud Storage からのデータの同期は、1日・3日・5日ごとから選べます。改修の多い時期は1日ごとにします。 設計書の更新から検索に載るまでの遅れは、問い合わせ画面に「最終の同期日」として出しておきます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
インターフェースの設計書連携の方式、送り側と受け側のシステム、タイミング、エラー時の扱い共有フォルダ(Word・PDF)
項目定義書項目の論理名・物理名・型・桁、送り側の項目、変換の規則共有フォルダ(Excel)
改修記録改修の番号、対象のインターフェース、変えた項目、本番への反映日課題管理から書き出したもの
項目名の対応表(データ辞書)同じ項目のシステムごとの名前自社で用意する一覧
メタデータ送り側・受け側のシステム、IF番号、版、状態(有効・廃止)、文書の種類取り込みのときに付ける

質を決めるのは、項目名の対応表です。 第3章の(b)のとおり、同じ項目がシステムごとに違う名前で書かれています。検索の仕組みは意味の近い語もある程度拾いますが、「納品先コード」と「届先CD」が同じものだという社内の取り決めまでは知りません。 最初は、問い合わせの多い項目から50語程度で始めます。

メタデータの「状態」が、版の新旧を分ける唯一の手がかりです。 同じインターフェースの古い版を残しておくのはかまいませんが、状態を「廃止」にして、検索の対象から外します。

Step3

データの取得方法を決める

文書は、Cloud Storage に置き、メタデータを書いたJSONLファイルとあわせて取り込みます。JSONLの1行が1文書で、id、メタデータを入れる structData、文書の content(mimeType と uri)を持ちます。

メタデータの項目例使い道
source_system販売管理上流へたどるときの絞り込み
target_system倉庫管理下流へたどるときの絞り込み
if_idIF-0123区間の識別
doc_type設計書/項目定義書/改修記録/データ辞書根拠の種類の表示
version3.2区間に版を添える
status有効/廃止有効な版だけに絞る

JSONLの1行は、たとえば次のようになります。

{"id": "IF-0123-def-v3-2", "structData": {"source_system": "販売管理", "target_system": "倉庫管理", "if_id": "IF-0123", "doc_type": "項目定義書", "version": "3.2", "status": "有効"}, "content": {"mimeType": "application/vnd.openxmlformats-officedocument.spreadsheetml.sheet", "uri": "gs://<bucket>/if/IF-0123_項目定義書_v3.2.xlsx"}}

id に版を含めておくと、同じインターフェースの版の入れ替えが追いやすくなります。 新しい版を入れるときは、古い版の行の status を「廃止」にするか、Cloud Storage から外します。

絞り込みに使うには、メタデータの項目をスキーマで「インデックス可能」にしておく必要があります。 そのうえで、問い合わせのときに status: ANY("有効") のような条件を付けます。下流へたどるときは source_system、上流へたどるときは target_system の条件を足すと、関係の無いシステムの同じ名前の項目を拾いにくくなります。

同期の方式は、差分を足す方式(INCREMENTAL)と、Cloud Storage の中身に合わせて丸ごとそろえる方式(FULL)があります。FULL では、Cloud Storage から消した文書が検索からも消えます。 廃止した版を Cloud Storage から外す運用にするなら、FULL を選びます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 有効な版だけを複製する … 共有フォルダから、状態が「有効」の版だけを Cloud Storage へ写します。ファイル名の「最新」「改」は信用せず、台帳で有効と決めた版を写します
  2. 項目定義書の1行目を見出しにそろえる … 列の見出しが2段になっている表は1段に直します。見出しが崩れると、どの列が「送り側の項目」かが分からなくなります
  3. 改修記録を文書にする … 課題管理のチケットを、改修の番号・対象のIF番号・変えた項目・反映日を見出しにしたHTMLに書き出します
  4. 項目名の対応表も文書として取り込む … 検索の根拠として引けるようにします
  5. レイアウトパーサーと分割の設定を、データストアを作るときに決める … チャンクの設定は、作った後で入れたり外したりできません。 見出しを各チャンクに含める設定にします
  6. 画像だけのPDFを洗い出す … 古い設計書にはスキャンしたPDFがあります。文字の入ったPDFに作り直すか、OCRのパーサーを使います

5番目は、やり直しが効きません。 見出しを含めない設定で作ると、項目定義書の表の途中で切れたチャンクに、どのインターフェースの表なのかが書かれていない状態になります。引用を開いても、どの設計書の話か分かりません。

Step5

AIに処理させる

answer メソッドにさせるのは、「ある項目が、どの文書のどこで、どこからどこへ渡されているか」を、引用付きで書き出すことです。 1回の問い合わせで1区間を返させ、区間をつなぐのは画面の側の処理で行います。

段させること
1. 別名の展開項目名の対応表で、同じ項目の別名を検索の語に足す(画面の側の処理)
2. 区間の検索「この項目を受け取っている(または送っている)インターフェースはどれか」を、状態=有効で絞って問う
3. 区間の書き出し送り側のシステムと項目、受け側のシステムと項目、変換の規則の有無を、引用付きで答えさせる
4. 次の区間へ受け側の項目名を新しい問いにして、2へ戻る(画面の側の処理)
5. 改修記録の照合その区間のIF番号で改修記録を検索し、設計書の版より新しいものがあれば印を付ける

画面の側が answer メソッドに投げる問いは、区間ごとに次の形で組み立てます。

【問い】
システム「{system}」の項目「{item}」(別名:{aliases})を、
送り側の項目として受け取っているインターフェースをすべて挙げ、
受け側のシステムと項目名、変換の規則を答えてください。
【絞り込み】status: ANY("有効") AND source_system: ANY("{system}")

問いの文面を固定するのは、答えの形をそろえるためです。 人が自由に問うと、「どこへ渡る?」と「どこで使われている?」で拾う文書が変わり、区間の並びが組み立てられなくなります。

区間をつなぐのを生成AIに任せないのは、つなぎ目で推測が入るからです。 「受け側の項目」から「次の区間の送り側の項目」へ移るところで、名前が似ているだけの別の項目につなぐことがあります。つなぎ目は、項目名の対応表か、同じ項目名の完全一致に限ります。

answer メソッドには、問いを小さな問いに分けて調べる働き(最大5段まで)があります。 それでも、この構成では1回1区間にします。区間ごとに根拠を確かめられる形のほうが、まとめて答えさせるより確認が速いからです。

させないこと理由
根拠の無い区間の補完「おそらく渡っている」が、無い経路を作る
改修の影響範囲の確定変換の規則やプログラムの中まで見ないと決まらない
版の新旧の判断メタデータの状態で決める
項目名の対応の推測対応表に無い別名でつながない
Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の指示を入れます。

あなたは情報システム部で、社内システム間の連携を調べる係です。
検索結果として与えられた文書だけを根拠に答えてください。

【答えること】
問われた項目について、次の1区間だけを答えてください。
- 送り側のシステムと項目名(論理名・物理名)
- 受け側のシステムと項目名(論理名・物理名)
- インターフェースの番号と、連携の方式(ファイル・API など)
- 変換の規則が書かれていれば、その内容をそのまま

【守ること】
- 文書に書かれていない区間は答えないでください。
  見つからなければ「この項目を受け渡すインターフェースは、検索した文書の中に見つかりません」とだけ答えてください。
- 項目名が似ているだけで、同じ項目だと判断しないでください。
  項目名の対応表か、項目定義書の「送り側の項目」の列に書かれている場合だけ、対応しているとしてください。
- 複数のインターフェースが見つかった場合は、すべて並べてください。1つに絞らないでください。
- 変換の規則を要約したり、言い換えたりしないでください。書かれているとおりに写してください。
- 改修の影響があるかどうか、改修してよいかどうかは書かないでください。
- 答えの各文に、根拠にした文書を引用として付けてください。

あわせて、answerGenerationSpec で includeCitations を有効にし、ignoreLowRelevantContent を有効にします。関連の薄い内容しか見つからないときに、無理に答えを作らせないためです。 groundingSpec では filteringLevel を高く設定し、根拠との結び付きが弱い答えを返させないようにします。

「似ているだけで同じ項目と判断しない」を明記しないと、つなげます。 「受注番号」と「受注明細番号」のように一部が同じ項目は、生成AIには同じものに見えやすく、実際には別のインターフェースの別の項目なのに、経路が一本につながって見えます。

「変換の規則を要約しない」も大事です。 「先頭ゼロ埋め8桁」「消費税込みに換算」のような規則は、要約すると落ちる部分にこそ改修の影響があります。

Step7

出力形式を固定する

問い合わせ画面は、answer メソッドの応答から次の形を組み立てて表示します。

{
  "query_item": "納品先コード",
  "direction": "downstream",
  "aliases": ["納品先コード", "届先CD"],
  "hops": [
    {
      "from_system": "販売管理",
      "from_item": "納品先コード(DLV_CD)",
      "to_system": "倉庫管理",
      "to_item": "届先CD(TDK_CD)",
      "if_id": "IF-0123",
      "transform_rule": "先頭ゼロ埋め8桁",
      "evidence": [
        { "doc_type": "項目定義書", "uri": "gs://.../IF-0123_項目定義書_v3.2.xlsx", "version": "3.2", "excerpt": "" }
      ],
      "newer_change": { "found": true, "change_id": "CHG-0456", "applied": "" }
    }
  ],
  "stopped_at": { "item": "", "reason": "NO_RELEVANT_CONTENT" },
  "last_sync": ""
}

1つ目の理由は、evidence を区間ごとに持てることです。 answer メソッドは、回答の文と引用元を結ぶ情報(citations)と、引用元の文書のURIとチャンクの中身(references)を返します。画面ではこれを区間ごとに並べ、クリックで文書を開けるようにします。

2つ目は、stopped_at で止まった理由を残せることです。 answer メソッドは、答えを作らなかったときに理由(answerSkippedReasons)を返します。関連する内容が無い、根拠との結び付きが弱い、といった理由です。止まった場所と理由が、第5章の7番目で担当者が調べる対象になります。

3つ目は、newer_change で設計書が古い可能性を示せることです。 区間の根拠は設計書でも、その後に改修の記録があれば、変換の規則が変わっているかもしれません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有フォルダ有効な版の定期の複製Cloud Storage へ写す
課題管理チケットの定期の書き出し改修記録をHTMLにして Cloud Storage へ写す
Cloud Storageデータストアの同期(1日ごと)文書とメタデータを取り込む
Vertex AI Searchanswer メソッドの呼び出し区間ごとの検索と回答
社内の問い合わせ画面個別に作る入力、区間のつなぎ、表示

検索の側から共有フォルダや課題管理へは書き込みません。 「不明」で止まった区間を調べた結果は、担当者が設計書か項目名の対応表を直し、次の同期で載ります。

社内の権限に合わせて、見せる文書を分けることも考えます。 人事や給与の連携の設計書には、項目の名前だけでも知られたくないものがあります。そうした文書は別のデータストアに分け、問い合わせ画面の側で使える人を絞ります。

Step9

人が確認する

人が見るのは、すべての答えです。 この構成は下調べの時間を減らすもので、答えを確定させるものではありません。

  1. 区間ごとに根拠の文書を開く … 引用の箇所が、本当にその項目の受け渡しを書いているかを見ます
  2. newer_change がある区間は改修記録を読む … 変換の規則が変わっていないかを確かめます
  3. stopped_at の区間を調べる … プログラムの中を見る、詳しい担当者に聞く、などで調べます
  4. 分かったことを文書に足す … 設計書を直すか、項目名の対応表に足します
  5. 問い合わせた人に、確かめた経路と根拠を返す

1番目を省かないでください。 引用が付いていても、その箇所が「別のインターフェースの同じ名前の項目」を書いていることがあります。引用があることと、引用が正しいことは別です。

確かめる人は、問い合わせた人とは別にします。 開発ベンダーが自分で区間の並びを見て改修の範囲を決めると、根拠を開かずに進むことがあります。情報システムの担当が確かめた区間だけを「確認済み」として返します。 目標は、区間がすべてつながった問い合わせで1件数分です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
項目が見つからないstopped_at に NO_RELEVANT_CONTENT。項目名の対応表に別名が無いかを担当者が見る
同じ項目を受け取るインターフェースが複数あるすべて並べる。1つに絞らない
区間が循環する(A→B→A)同じIF番号が2回出たら止める
区間が増えすぎる5区間で止め、続きは担当者が判断する
有効な版と廃止の版が両方引かれる絞り込みの設定を確かめる。廃止の版を根拠にした区間は表示しない
画像だけのPDFで文字が取れない文字の入ったPDFに作り直すか、OCRのパーサーを使う
項目定義書の表の見出しが崩れている前処理で1段の見出しに直して取り込み直す
同期が止まって古い文書が残る画面の最終の同期日で気づけるようにする

区間の上限を5にしているのは、確認の手間に合わせるためです。 5区間を超える経路は、そもそも人が確かめるのに時間がかかります。そこから先は、詳しい担当者と一緒に見る問い合わせとして扱います。

Step11

記録を残す

  • 問い合わせの内容(項目名、システム名、向き)と、問い合わせた人・日時
  • 展開した別名の一覧と、使った項目名の対応表の版
  • 区間ごとの answer メソッドの応答(回答、引用、参照した文書、止まった理由)
  • 担当者が確かめた結果(区間ごとに、正しい/誤り/確かめられない)
  • stopped_at を調べた結果と、直した文書・対応表
  • そのときの最終の同期日

4つ目の「区間ごとの正誤」を必ず残します。 誤りの多い文書や、誤ってつながりやすい項目名が分かれば、直すべき設計書と、対応表に足すべき別名が見えてきます。

確かめた経路は、次の問い合わせで再利用できるようにします。 同じ項目の同じ向きの問い合わせは繰り返し来ます。確認済みの経路を問い合わせ画面に残し、次に同じ問いが来たら、確認した日と、その後の改修記録の有無を添えて先に見せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:一部の設計書を入れたデータストアに、プレビューで1区間ずつ問う / 文書を探す時間
半自動化:上記+全インターフェースの有効な版を定期で取り込み、項目名の対応表で別名を広げる / 検索と別名の展開
本格構成:上記+問い合わせ画面で区間を自動でつなぎ、改修記録との照合と止まった理由まで表示する / 経路の組み立てと、設計書が古い可能性の検出

最小構成では、一部の設計書しか入っていません。 経路が途中で止まるのは、文書が入っていないからです。 半自動化で、1件30分が15分程度になります。 探す時間はほぼ無くなりますが、区間をつなぐ作業と、改修記録との照合は人に残ります。本格構成で9分になり、この段階が本記事の想定です。 残る9分は、区間ごとの根拠を開いて確かめる時間です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2か月回すと、止まりやすい項目名と、根拠に引けない書き方の設計書が分かります。そこを直してから区間をつなぐほうが、誤ってつながる区間が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
200 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  200件 × 30分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 200件 × 9分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
70h
削減率
70%
年間削減時間
840h
年間金額換算(時間単価4,000円)
336万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 販売管理・会計・生産管理・ECなど複数の社内システムをファイル連携やAPIでつないでおり、インターフェースの設計書と項目定義書が数百本に積み上がっている情報システム部門。改修や障害のたびに「この項目はどこから来てどこへ渡るか」を調べる問い合わせが毎月数百件あり、詳しい担当者に集中している場合。設計書がWord・Excel・PDFで共有フォルダに散らばり、版の新旧が混在している場合。
向いていない
  1. 連携がデータ連携基盤の画面で一元管理され、項目の受け渡しの経路をその製品の機能で追える場合。インターフェースが数本しかなく、担当者の記憶で足りる場合。設計書がほとんど残っておらず、検索する元の文書が無い場合。なお、改修の影響範囲の確定や、どの改修を行うかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 問い合わせの多いインターフェースを10本選び、その設計書と項目定義書(有効な版だけ)を集める
  2. 過去の問い合わせから、その10本に関わる問いを20件選び、当時の答えを書き出しておく
  3. Vertex AI Search で、レイアウトパーサーと見出しを含める分割の設定でデータストアを作り、10本分の文書を入れる
  4. 検索のアプリのプレビューで、20件の問いを1区間ずつ投げる
  5. 返ってきた区間と引用を、当時の答えと突き合わせる

20件は必ずやってください。 組む前に、自社の項目定義書の書き方で、表の行が根拠として引けるかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の答えと同じ区間が、正しい表の行の引用付きで出た項目名の対応表と画面を足す構成に進む
区間は合っているが、引用がどのIFの表か分からない分割の設定(見出しを含める)で直る。データストアを作り直す
項目名が違うと見つからない項目名の対応表が先。 検索の問題ではない

3行目はほぼ必ず出ます。 失敗ではなく、詳しい担当者の頭の中にあった対応が、どれだけあるかが分かったということです。

20件のうち何件で止まったかを数えておいてください。 半自動化に進んだ後、項目名の対応表を足していくにつれて止まる件数がどう減るかを比べる、最初の物差しになります。止まった問いは、そのまま対応表に足す候補の一覧です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
似た名前の項目で経路がつながるつなぎ目は対応表か完全一致に限る。 指示でも禁じる
廃止の版が根拠に出るメタデータの状態で絞る。ファイル名の「最新」を信用しない
引用を開いてもどのIFの表か分からない見出しをチャンクに含める。作った後では変えられない
項目定義書の2段の見出しで列が崩れる前処理で1段に直す
変換の規則が要約されて落ちる書かれているとおりに写すと指示する
改修の後に設計書が直されていない改修記録を取り込み、新しいものがあれば印を付ける
区間が増えすぎて確認が終わらない向きを入れてもらい、5区間で止める
画像だけのPDFが検索に載らない作り直すか、OCRのパーサーを使う
人事・給与の連携の設計書が誰にでも見えるデータストアを分け、使える人を絞る
問い合わせる人ごとに問い方が違い、答えがぶれる問いの文面を画面の側で固定する
設計書の更新が検索に載るまでの遅れに気づかない画面に最終の同期日を出す
確認済みの経路が古くなる確認した日以降の改修記録の有無を添えて見せる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「つながって見えるが、実際にはつながっていない」経路を作ります。改修の影響調査で、無い経路は見落としより厄介です。 存在しない影響のために、テストの範囲が膨らみます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 社内システムの設計書、項目定義書、改修記録。顧客や従業員の個人の情報そのものは含みませんが、どのシステムがどの個人の情報をどこへ渡しているかが分かる文書です。

  1. 個人の情報の流れが分かる文書を分けて扱う … 人事・給与・顧客の個人の情報を扱う連携の設計書は、別のデータストアに分け、見られる人を絞ります
  2. 設計書に本番の値を書かない … 項目定義書の「値の例」の列に、本番の顧客コードや口座番号が書かれていることがあります。取り込む前に見つけて消します
  3. 接続の情報を取り込まない … 古い設計書には、接続先のホスト名や認証の情報が書かれていることがあります。取り込む前に洗い出して外します
  4. 答えを確定の根拠にしない … 区間の並びは下調べです。改修の影響範囲の確定は、根拠を確かめた人が行います
  5. 問い合わせの記録を残す … 誰が、どの項目の経路を調べたかを残します
  6. 開発ベンダーに見せる範囲を決める … 外部の開発会社にも問い合わせ画面を使ってもらうなら、その会社が担当するシステムの連携の文書だけが引けるように、データストアか絞り込みの条件を分けます。担当外のシステムの設計書まで見えると、契約で約束した開示の範囲を超えることがあります

誤りが起きた場合のリスクは、実際には無い経路を示すことと、ある経路を示さないことの2つです。 前者はつなぎ目を対応表と完全一致に限ることで、後者は止まった理由を必ず表示して人が調べることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:有効な版の台帳をつくる

インターフェース約300本について、どの版の設計書と項目定義書が有効かを台帳にします。全部でなくてかまいません。問い合わせの多い50本から始めます。

2週目:項目名の対応表を50語つくる

過去の問い合わせで多かった項目について、システムごとの名前を詳しい担当者と書き出します。

3週目:20件で試す

10本分の文書でデータストアを作り、プレビューで20件の問いを試します。引用の箇所が、どのインターフェースの表か分かるかを最優先で見ます。

4週目:定期の取り込みをつくる

有効な版を Cloud Storage へ写す仕組みと、メタデータのJSONLを作り、1日ごとの同期を始めます。この時点では、区間は人がつなぎます。

2か月目: 課題管理からの書き出しを足し、改修記録との照合を始めます。3か月目以降: 問い合わせ画面で区間を自動でつなぎ、1件30分が何分になったかを実測します。止まった区間を文書に足す作業が週に数件まで減り、詳しい2名への問い合わせが半分を切った時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ名前が変わりつつあること。デジタルパーサー・OCRパーサー(PDF)・レイアウトパーサーがあり、OCRとレイアウトは有料の機能であること。レイアウトパーサーが PDF・HTML・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM を扱い、文章のかたまり・表・箇条書き・見出しを見分けること。チャンクの大きさが100〜500(既定500)で、見出しを各チャンクに含めるかを選べること。チャンクの設定はデータストアを作った後で入れたり外したりできないことGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-07
answer メソッドが検索結果から回答を作り、問いを分けて最大5段まで調べられること。answerGenerationSpec に includeCitations・ignoreLowRelevantContent・promptSpec.preamble などがあること。応答に citations・references(チャンクの中身とURI)・answerSkippedReasons が含まれること。groundingSpec の filteringLevel で根拠との結び付きの弱い回答を絞れること。searchSpec でメタデータによる絞り込みができることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-07
非構造化データをメタデータで絞り込むには、スキーマでその項目をインデックス可能にすること。ANY() や比較の演算子、AND・OR・NOT で条件を書けることGoogle Cloud: Filter search for unstructured data by metadata2026-10-07
Cloud Storage から、structData と content(mimeType・uri)を持つJSONLでメタデータ付きの文書を取り込めること。同期を1日・3日・5日ごとに設定できること。INCREMENTAL と FULL の違い(FULL では Cloud Storage に無い文書が消えること)Google Cloud: Create a search data store2026-10-07

改修の影響範囲の確定は、設計書とプログラムを確かめた担当者が行ってください。 本記事は Google Cloud の公式ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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