Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 製造現場の5S巡回で撮った写真をエリアごとの基準の写真と比べ、置き場の乱れ・表示の欠け・通路のはみ出しを拾って、職場ごとの指摘と月次の点数にまとめる

製造現場の5S巡回で撮った写真をエリアごとの基準の写真と比べ、置き場の乱れ・表示の欠け・通路のはみ出しを拾って、職場ごとの指摘と月次の点数にまとめる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

5S巡回で定点から撮った写真を、そのエリアの「あるべき姿」の基準の写真と並べて生成AIに見せ、置き場の乱れ・表示の欠け・通路のはみ出しを確認項目ごとに拾います。結果は職場ごとの指摘の下書きと、月次の点数の一覧になります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
物流/製造
対象部門
品質管理/生産
対象業務
内容確認・チェック/集計・分析
主な課題
人手が足りない/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
画像認識
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
30h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
67%
年間削減
240h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 各職場の5Sリーダーが、月の第2週に定点を回って写真を撮り、共有ドライブのフォルダに入れる
  2. 事務局が、定点ごとに基準の写真と今月の写真を開き、画面に並べる
  3. 置き場の区画からのはみ出し、表示のラベルの欠けや汚れ、通路の区画線を越えた物、決められた物の欠品を見比べる
  4. 5S点検表に、確認項目ごとの「○」「×」と、指摘の文を書く
  5. 職場ごとに「×」を数えて点数を出し、前月と並べる
  6. 指摘の一覧を職場ごとに分けて、5Sリーダーにメールで送る
  7. 月初の5S委員会で、職場ごとの点数と主な指摘を報告する
導入後(After)
  1. 人5Sリーダーが定点で写真を撮り、ファイル名の頭に定点の番号を付けて共有ドライブの今月のフォルダに入れる
  2. 自動Make のシナリオがフォルダの新しいファイルを拾う
  3. 自動ファイル名の定点の番号で定点の一覧を引き、基準の写真と確認項目を取る
  4. 自動基準の写真と今月の写真をダウンロードし、形式とサイズを確かめる
  5. 自動Claude に2枚と確認項目を渡し、項目ごとに `same` / `different` / `cannot_judge` を返させる
  6. 自動結果を指摘の一覧に1行ずつ書き、`cannot_judge` が多い写真は撮り直しの候補にする
  7. 自動月の巡回の締めの日に、職場ごとに `same` の割合から点数を計算する
  8. 人事務局が `different` と `cannot_judge` の写真だけを開き、判定と指摘の文を確かめる
  9. 人確かめた指摘を職場ごとに5Sリーダーへ送り、点数を5S委員会に出す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 各職場の5Sリーダーが、月の第2週に定点を回って写真を撮り、共有ドライブのフォルダに入れる
  2. 事務局が、定点ごとに基準の写真と今月の写真を開き、画面に並べる
  3. 置き場の区画からのはみ出し、表示のラベルの欠けや汚れ、通路の区画線を越えた物、決められた物の欠品を見比べる
  4. 5S点検表に、確認項目ごとの「○」「×」と、指摘の文を書く
  5. 職場ごとに「×」を数えて点数を出し、前月と並べる
  6. 指摘の一覧を職場ごとに分けて、5Sリーダーにメールで送る
  7. 月初の5S委員会で、職場ごとの点数と主な指摘を報告する

(a)見比べる人によって厳しさが違う。 事務局の3名で定点を分けて見ていますが、台車が区画線に少しかかっているのを「×」にする人と「○」にする人がいます。 職場からは「先月と同じ状態なのに点が下がった」と言われ、説明に時間を取られます。

(b)指摘の文がばらばら。 「整頓不良」とだけ書く人もいれば、「左奥の棚の2段目、ラベルのない箱が3つ」と書く人もいます。前者は、職場がどこを直せばいいのか分かりません。

(c)撮り方の悪い写真が混ざる。 定点からずれて撮られた写真、人が前に立っている写真、暗くて床が見えない写真があります。事務局はそれを見て判断を迷い、結局「○」にして先へ進むことが多くなります。 撮り直しを頼む仕組みがありません。

(d)時間の大半は見比べ。 600枚を3名で見ると、1枚3分でも月30時間です。巡回の翌週に集中するので、その週は事務局の本来の仕事が止まります。

  1. 【人】 5Sリーダーが定点で写真を撮り、ファイル名の頭に定点の番号を付けて共有ドライブの今月のフォルダに入れる
  2. 【自動】 Make のシナリオがフォルダの新しいファイルを拾う
  3. 【自動】 ファイル名の定点の番号で定点の一覧を引き、基準の写真と確認項目を取る
  4. 【自動】 基準の写真と今月の写真をダウンロードし、形式とサイズを確かめる
  5. 【自動】 Claude に2枚と確認項目を渡し、項目ごとに same / different / cannot_judge を返させる
  6. 【自動】 結果を指摘の一覧に1行ずつ書き、cannot_judge が多い写真は撮り直しの候補にする
  7. 【自動】 月の巡回の締めの日に、職場ごとに same の割合から点数を計算する
  8. 【人】 事務局が different と cannot_judge の写真だけを開き、判定と指摘の文を確かめる
  9. 【人】 確かめた指摘を職場ごとに5Sリーダーへ送り、点数を5S委員会に出す

8番目が、この設計の分かれ目です。 事務局が開くのは、違いがあると出た写真と、判断できないと出た写真だけです。基準と同じと出た写真は、一覧で件数を流し見て終わりにします。 全件を開く設計にすると、30.0時間はほとんど減りません。

7番目を式で計算しているのは、点数の物差しを固定するためです。 生成AIには写真ごとの判定だけをさせ、点数は「判定できた項目のうち same の割合」で決めます。 事務局が判定を直せば、点数も自動で直ります。

02今回想定するシステム構成

構成図
5Sリーダーのスマートフォン(定点の写真、ファイル名の頭に定点の番号)
   │
   ▼【トリガー】共有ドライブの今月のフォルダへの保存
Make のシナリオ
   ├──▶ Google Drive: Watch Files in a Folder(新しいファイル)
   ├──▶ Google Sheets: Search Rows(定点の一覧から基準の写真と確認項目)
   ├──▶ Google Drive: Download a File(基準の写真と今月の写真)
   ▼
Claude API(Anthropic Claude の Make an API Call モジュール)
   │  Image 1: 基準の写真  Image 2: 今月の写真  + 確認項目
   │  JSON outputs で項目ごとの判定を返す
   ▼
Google Sheets: Add a Row(指摘の一覧)
   ▼
月の締め:点数の集計(スプレッドシートの式)→ 職場ごとに通知
   ▼【人】different と cannot_judge の確認・指摘の確定
役割想定する製品代替候補
ワークフローMaken8n、Power Automate、Zapier
生成AIClaude API(画像の入力と JSON outputs)Gemini API、OpenAI API
保管Google ドライブの共有ドライブSharePoint
一覧と点数Google スプレッドシートデータベース

新しく足すのは、Make のシナリオと、定点の一覧と、指摘の一覧の3つだけです。 生産管理のシステムや設備の保全の記録とはつなぎません。 写真の保存先はいまの共有ドライブのままです。定点の一覧には、定点の番号、職場、エリア、基準の写真のファイルID、確認項目、基準の写真を承認した日を持たせます。

起点は、Google Drive の Watch Files in a Folder です。 選んだフォルダでファイルが作られたか更新されたときに動くモジュールで、新しいファイル(By Created Time)か、更新されたファイル(By Modified Time)かを選べます。 共有ドライブも選べますが、Google Workspace の利用者に限られるとされています。1回の実行で返すファイルの数の上限(Limit)も決められます。

生成AIの呼び出しは、Make の Anthropic Claude アプリで行います。 このアプリにはプロンプトを送る Create a Prompt のほか、ファイルの管理と、任意のAPIを呼ぶ Make an API Call のモジュールがあります。この構成では、2枚の画像と JSON の形の指定を細かく書くため、Make an API Call で Messages API を呼びます。

Claude は1回の要求に複数の画像を入れると、まとめて見比べます。 公式の説明では、画像を比べたり違いを尋ねたりするのに役立ち、複数の画像を送るときは「Image 1:」「Image 2:」のような短い見出しを付けて名前で参照できるようにするとされています。基準と今月を取り違えないための作りです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

共有ドライブの今月のフォルダに写真が入ったことを起点にします。 5Sリーダーが巡回の途中で少しずつ入れても、そのたびに処理が進みます。巡回が終わるまで待って一括で回すと、撮り直しの依頼が巡回の翌週にずれ込み、職場の手が空いている時間を逃します。

Watch Files in a Folder は、新しいファイルを見る設定(By Created Time)にし、ファイルの種類の絞り込みで画像だけを拾います。 1回の実行で返す数(Limit)は、巡回が集中する日に合わせて決めます。シナリオは十数分おきに動く設定にします。

月のフォルダは事務局が月初に作り、シナリオの見張るフォルダを差し替えます。 前月のフォルダに遅れて入った写真は拾わないので、締めの日を過ぎたものは翌月の巡回として扱うと決めておきます。

点数の集計は別のシナリオで、締めの日の翌朝に動かします。 写真ごとの判定と、職場ごとの点数を同じ流れに入れると、途中で止まったときに点数だけが半端に出ます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
今月の写真定点の番号を頭に付けたファイル名、撮った日時共有ドライブの今月のフォルダ
基準の写真定点ごとに1枚。承認した日共有ドライブの基準のフォルダ
定点の一覧定点の番号、職場、エリア、基準の写真のファイルID、確認項目定点の一覧のスプレッドシート
確認項目定点ごとに3〜6項目。項目の名前と、見る場所の言葉による説明定点の一覧の列
前月の判定同じ定点の前月の判定と、事務局の修正指摘の一覧

質を決めるのは、確認項目の書き方です。 「整頓されているか」のような項目では、生成AIも人も判定がぶれます。「右の棚の3段目に、黄色のラベルの箱が4つ並んでいるか」「床の黄色の区画線の内側に台車が収まっているか」のように、写真の中の場所と、見えるべき物で書きます。

項目は定点ごとに決め、1つの定点に6項目までにします。 項目が多すぎると、1枚の写真の中で見落としが増えます。職場で守ってほしいことが多い定点は、定点を2つに分けて写真を撮ってもらいます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
新しい写真のファイルIDと名前今月のフォルダGoogle Drive の Watch Files in a Folder
定点の情報と確認項目定点の一覧Google Sheets の Search Rows(定点の番号で引く)
基準の写真と今月の写真の中身共有ドライブGoogle Drive の Download a File
前月の判定指摘の一覧Google Sheets の Search Rows(定点の番号と前月)

ファイル名から定点の番号を取り出すところが、いちばん崩れやすい箇所です。 スマートフォンで撮った写真は、そのままでは日時の名前になります。撮影に使うアプリの設定で、定点の番号を選んでから撮ると名前の頭に付くようにするか、定点ごとのフォルダに入れてもらうのどちらかに決めます。番号の取れないファイルは、判定に進めずに事務局へ回します。

画像の渡し方は、ダウンロードした中身を base64 にして画像のブロックに入れます。 公式の説明には、画像のURLを渡す方法や、Files API で上げたファイルを file_id で参照する方法も載っています。共有ドライブのURLは社内の認証の先にあるので、URLでは渡せません。 枚数が多い月に要求の大きさが気になるなら、Files API の方法に切り替えます。

前月の判定は、比べるためではなく、くり返しを見るために取ります。 同じ定点で同じ項目が3か月続けて different なら、その職場の置き場の決め方そのものを見直す話で、1枚ずつ指摘する話ではありません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式を確かめる … Claude が受け付ける画像は JPEG、PNG、GIF、WebP です。スマートフォンの既定が別の形式で保存する設定なら、撮影の設定を JPEG に変えてもらいます
  2. 大きさを確かめる … 1枚の上限は 8000×8000 ピクセルで、大きな画像は縮小されます。スマートフォンの写真はそのまま渡せる大きさですが、送る前に長い辺を決まった大きさにそろえると、費用と判定がそろいます
  3. 小さすぎる写真を外す … 200ピクセルを下回るような小さな画像や、傾いた・質の低い画像では誤りが出やすいとされています。サムネイルが紛れ込んでいたら外します
  4. 基準の写真の承認日を確かめる … 基準が撮り直されて未承認のときは、判定を止めて事務局に回します
  5. 同じ定点の二重の投入を見つける … 同じ月に同じ定点の写真が2枚あれば、新しいほうだけを判定し、古いほうを残します

2番目を軽く見ないでください。 基準の写真と今月の写真で大きさが違うと、縮小のされ方が変わり、細かいラベルの文字が片方だけ読めないということが起きます。2枚を同じ大きさにそろえてから渡します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、確認項目ごとに、基準の写真と今月の写真が同じ状態かを判定し、違う場合はその場所と中身を言葉で書くことだけです。

見るもの判定の仕方判断できないときの扱い
置き場の区画区画線の内側に収まっているか、基準に無い物が置かれていないか人や台車で区画線が隠れていれば cannot_judge
表示のラベル基準にあるラベルが今月もあるか、欠け・はがれ・汚れで読めないか遠くてラベルの有無が見えなければ cannot_judge
通路の区画線通路の区画線を越えて物が出ていないか床が暗い・反射で線が見えなければ cannot_judge
決められた物の有無基準にある物(消火器、工具、表示板)が今月もあるか画角がずれて写っていなければ cannot_judge
基準に無い物基準に無い箱・台車・私物が置かれていないか何の物か分からなくても「基準に無い物がある」と書く

右端の列が、この構成でいちばん大事な区別です。 different は職場に直してもらう指摘、cannot_judge は撮り直しを頼む候補で、前者は職場の点数に入り、後者は入りません。

させないこと理由
点数を付ける点数は判定の結果から式で出す
通路の幅を測る写真から長さを正確に測れない。幅は現場でメジャーで測る
物の数を正確に数える数はおおよそになり、多いと正確でない
人を特定する・人の行動を評価する5Sは場所の評価。人を名指しさせない
安全上の危険の判断安全パトロールの仕事。見つけたら「基準に無い物」として書くだけ

2行目がいちばん起きやすい誤りです。 労働安全衛生規則は、機械の間などに設ける通路の幅を80センチメートル以上とし、主要な通路には通路であることを示す表示を求めています。この幅を写真から読み取らせると、それらしい数字を返しますが、根拠がありません。 見させるのは区画線を越えているかどうかだけで、幅の測定は現場で行います。

3行目も同じです。 Claude の公式の説明では、画像の中の物はおおよその数を答えられるが、数が多いと正確でないことがあるとされています。「箱が4つ」のような項目は、「基準と同じ数に見えるか」までにし、数が違って見えれば different にして人が数えます。

Step6

指示内容を固定する

Make an API Call で送る要求の本文の、指示の部分を次のように書きます。 画像は Image 1:(基準)と Image 2:(今月)の見出しを付けて、指示の前に置きます。

あなたは工場の5S推進事務局で、巡回の写真を基準の写真と見比べる担当です。
Image 1 は、この定点の「あるべき姿」として承認された基準の写真です。
Image 2 は、今月の巡回でこの定点から撮った写真です。

【この定点】{point_id}({workplace} / {area})
【確認項目】
{check_items}

【やること】
確認項目ごとに、Image 2 が Image 1 と同じ状態かを判定してください。
- same ......... 基準と同じ状態に見える
- different .... 基準と違う。どこが、どう違うかを location と detail に書く
- cannot_judge . 写真からは判断できない。理由を reason に書く

【厳守事項】
- 迷ったときに same を選ばないでください。迷ったら cannot_judge です。
- 人、台車、影、光の反射で見たい場所が隠れているときは cannot_judge です。
- Image 2 の撮った位置や向きが Image 1 と大きく違うときは、
  すべての項目を cannot_judge にし、framing_mismatch を true にしてください。
- 長さや幅を数字で書かないでください。区画線を越えているかだけを書いてください。
- 物の数は「基準と同じ数に見える/違って見える」で書き、正確な数を書かないでください。
- 写っている人について、誰か、何をしているかを書かないでください。
- 点数や「良い」「悪い」の評価を書かないでください。
- location には「左奥の棚の2段目」のように、写真の中の場所を言葉で書いてください。
- 確認項目に無いもので、基準に無い物が置かれているときは extra_objects に書いてください。

「迷ったら cannot_judge」を明記しないと、same が増えます。 生成AIは、見たい場所が隠れていても、見えている範囲から「おそらく同じ」と答えることがあります。巡回の目的は乱れを見つけることなので、迷ったものを「同じ」に倒さないと指示で決めておきます。

「撮った位置が大きく違うときは全部 cannot_judge」も大事です。 画角がずれた写真で項目ごとに判定させると、写っていない置き場を「物が無い」と読み、different を量産します。

Step7

出力形式を固定する

Messages API の JSON outputs(output_config.format に type: "json_schema")で、次の形を返させます。

{
  "point_id": "",
  "framing_mismatch": false,
  "checks": [
    { "item": "", "status": "same | different | cannot_judge",
      "location": "", "detail": "", "reason": "" }
  ],
  "extra_objects": [ { "location": "", "detail": "" } ],
  "retake_suggested": false
}

公式の説明では、JSON outputs は制約付きのデコードでスキーマに合った応答を返し、必須の項目と型が保証されるとされています。JSON の読み取りの失敗でシナリオが止まることがなくなり、Make の側で項目をそのまま一覧の列に割り当てられます。

1つ目の理由は、status と点数を別の層に置けることです。 checks は生成AIが埋め、点数はスプレッドシートの式が決めます。

点数の計算式
定点の点same の項目の数 ÷(same + different の項目の数)
職場の点職場の定点の点の平均 × 100
除外cannot_judge の項目と、framing_mismatch が true の写真は分母から外す
撮り直しの率職場の写真のうち retake_suggested が true の割合(点数とは別に出す)

2つ目は、cannot_judge を点数から外せることです。 撮り方の悪い写真が多い職場の点数が、乱れとは関係なく下がることを防ぎます。その代わり、撮り直しの率を点数の隣に出し、写真の撮り方そのものを指摘します。

3つ目は、location と detail で指摘の文がそろうことです。 第3章の(b)の「整頓不良」とだけ書かれた指摘が、「床の黄色の区画線の右側に、青い台車が半分出ている」に変わります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有ドライブGoogle Drive の Watch Files in a Folder、Download a File新しい写真を拾い、基準と今月の写真を取る
定点の一覧Google Sheets の Search Rows基準の写真のファイルIDと確認項目を引く
Claude APIAnthropic Claude の Make an API Call2枚の比較と項目ごとの判定
指摘の一覧Google Sheets の Add a Row判定を1項目1行で書く
社内チャット・メール通知撮り直しの依頼と、確定した指摘を職場へ

指摘の一覧は、1項目を1行にします。 写真1枚を1行にすると、事務局が1項目だけ判定を直したいときに直しにくく、点数の式も複雑になります。 列には、定点の番号、月、項目、判定、場所、中身、理由、事務局の修正、修正した人を持たせます。

撮り直しの依頼は、その日のうちに5Sリーダーへ送ります。 retake_suggested が true の写真について、定点の番号と理由(人が写り込んでいる、画角が違う、暗い)を送ります。巡回の週のうちに撮り直してもらえば、その月の点数に間に合います。

Step9

人が確認する

事務局が開くのは、different と cannot_judge を含む写真だけです。 same だけの写真は、職場ごとの件数を流し見ます。

  1. different を先に見る … 2枚を並べ、location の場所を目で確かめます。ここが職場の点数に直結します
  2. 指摘の文を整える … detail を、職場が読んで直せる言葉に直します
  3. cannot_judge を振り分ける … 撮り直しを頼むか、写真から事務局が判断できるかを決めます
  4. 判定を直したら記録する … どの項目を、どちらに変えたかを残します

1番目を省かないでください。 生成AIは、影や光の具合の違いを「物がある」と読むことがあります。事務局が確かめないまま職場に送ると、職場は存在しない乱れを探しに行くことになります。

目標は、600枚をならして1枚1分です。 same だけの写真は数秒、different を含む写真は2〜3分という見込みで、different が全体の2割前後ならこの時間に収まります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
ファイル名から定点の番号が取れない判定せず、事務局の確認の欄に入れる
定点の一覧に番号が無い定点の追加漏れ。事務局が一覧に足してから再実行
基準の写真が未承認判定を止め、5S委員会の承認を待つ
画像の形式が受け付けられない5Sリーダーに JPEG で撮り直してもらう
framing_mismatch が true撮り直しを依頼。点数から外す
同じ定点の写真が2枚新しいほうを判定し、古いほうは記録だけ残す
API の応答が返らない指摘の一覧に「未判定」の行を残し、次の実行で再試行
同じ項目が3か月続けて different1枚ずつの指摘から外し、置き場の決め方の見直しとして5S委員会へ

最後の行は、例外というより運用の分かれ道です。 毎月同じ指摘をくり返すと、職場は指摘を読まなくなります。くり返しは、基準の写真そのものが現場に合っていないことを示していることがあります。

Step11

記録を残す

  • 今月の写真と、そのとき使った基準の写真のファイルID
  • 生成AIに送った確認項目と、返ってきたJSONの全文
  • 指摘の一覧(1項目1行)と、事務局が直した判定と、直した人
  • 撮り直しを頼んだ日時と、撮り直された写真
  • 職場ごとの月次の点数と、撮り直しの率

1つ目で基準の写真のファイルIDを残すのは、基準が差し替わるからです。 基準を撮り直したあとに、過去の月の点数を問われたとき、どの基準と比べた結果かが分からないと、説明できません。

04実装レベルの3段階

最小構成:2枚を手でAIの画面に貼り、項目ごとに判定させる / 1枚ごとの見比べ
半自動化:上記+フォルダへの保存を起点に、定点の一覧を引いて判定し、指摘の一覧に書き出す / 見比べと記録
本格構成:上記+撮り直しの依頼、点数の自動計算、職場ごとの通知まで行う / 見比べから点数と通知まで

最小構成では枚数がさばけません。 600枚には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1枚3分が1.5分程度になります。 見比べと記録は自動になりますが、点数の集計と職場ごとの一覧づくり、撮り直しの依頼が残ります。本格構成で1分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、cannot_judge が多い定点と、判定がぶれる確認項目が分かります。そこを直してから点数を自動にするほうが、職場からの「点の付け方がおかしい」が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
3 分
1件あたり導入後時間
1 分
現在  600件 × 3分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 600件 × 1分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
20h
削減率
67%
年間削減時間
240h
年間金額換算(時間単価3,500円)
84万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 加工・組立の工場や物流倉庫で、5S活動の巡回を毎月行い、職場ごとに写真を撮って指摘と点数を付けている事業所。巡回の写真が月に数百枚あり、5S推進の事務局が1枚ずつ見比べて指摘を書いている場合。指摘の厳しさが巡回する人によって違い、職場から「点数の付け方が毎回違う」と言われている場合。エリアごとに「あるべき姿」の基準の写真を決め、同じ位置から撮る定点を決められる場合。
向いていない
  1. 巡回の対象が数エリアで、写真が月に数十枚に収まる場合。定点が決まっておらず、毎回違う位置・向きで撮っている場合(定点を決めるのが先です)。5Sの評価が、写真に写らない項目(手順の守り方、清掃の記録、教育の実施)を中心にしている場合。なお、通路の幅が法令の基準を満たしているかの測定や、安全上の危険の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の巡回の写真から、職場を2つ選び、その定点の写真を40枚選ぶ(うち数枚は、事務局が「×」を付けたものを入れる)
  2. 40枚の定点について、確認項目を「写真の中の場所と、見えるべき物」で書き直す
  3. 基準の写真と今月の写真を2枚ずつ、手元のAIサービスの画面に貼り付ける
  4. 「1枚目が基準、2枚目が今月です。次の確認項目ごとに、同じ/違う/判断できない、を選び、違う場合は写真の中の場所を書いてください。迷ったら判断できないにしてください。点数は付けないでください」と指示する
  5. 出てきた判定を、当時の事務局の「○」「×」と突き合わせる

40枚は必ずやってください。 シナリオを組む前に、「確認項目の書き方で判定がそろうか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時の「×」と同じ場所を different と書いたMake との連携に進む
隠れている場所を「同じ」と判定した指示の書き方で直る。構成は有効
確認項目があいまいで判定がばらつく確認項目の書き直しが先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、事務局の3名で判定がそろわなかった理由が1つ分かったということです。 項目を書き直した40枚で、同じことをもう一度やってください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
隠れている場所を same にする迷ったら cannot_judge を指示に明記する
画角のずれで different が量産されるframing_mismatch で全項目を判定不能にし、撮り直しへ
基準と今月を取り違えるImage 1: Image 2: の見出しを付けて渡す
通路の幅を数字で答える幅の測定を禁じ、区画線を越えているかだけを見る
確認項目があいまいで判定がぶれる写真の中の場所と、見えるべき物で書く
ファイル名から定点が取れない撮影アプリの設定か、定点ごとのフォルダで運用を決める
スマートフォンの画像の形式が合わない撮影の設定を JPEG にする
撮り方の悪い職場の点数が下がるcannot_judge を分母から外し、撮り直しの率を別に出す
同じ指摘が毎月くり返される3か月続いたら置き場の決め方の見直しとして扱う

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「写真から判断できないものを、判断できたことにする」という同じ形です。判断できないと言わせる設計にしてあるかどうかで、職場が指摘を信じるかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 工場の中の写真です。設備、治具、製品、取引先の部品の荷姿、掲示物が写ります。人が写り込むこともあります。

  1. 写真を外部へ送る範囲を決める … 生成AIに送るのは定点の写真だけにし、取引先から機密として預かっている製品や図面が写る定点は対象から外すか、取引先との約束を確かめます
  2. 人を評価に使わない … Claude は画像の中の人の名前を答えないとされていますが、写り込んだ人の行動を記録に残すこと自体を避けます。 撮るときに人が入らない時間を選び、写り込んだ写真は撮り直しにします
  3. 点数を人事の評価に直結させない … 職場の点数は5S活動の進み具合の物差しです。写真の撮り方や生成AIの判定のぶれを含む数字を、個人の評価に使わないでください
  4. 安全の判断を代替しない … 通路の幅、消火器や配電盤の前の空きなど、法令や社内の安全の基準に関わるものは、安全の担当と現場の測定で確かめます。 この構成が出すのは「基準の写真と違う」という事実だけです
  5. 基準の写真の差し替えを記録する … 基準を差し替えた日と、承認した人を残し、どの基準と比べた判定かを後から追えるようにします

誤りが起きた場合のリスクは、乱れを見落とすことと、無い乱れを指摘することの2つです。 前者は迷った写真を same に倒したときに、後者は画角のずれを different と読んだときに起きます。どちらも cannot_judge を正直に出させることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:確認項目を書き直す

2つの職場の定点について、確認項目を「写真の中の場所と、見えるべき物」で書き直します。1つの定点に6項目までにします。項目が多い定点は、定点を分けます。

2週目:40枚で試す

先月の写真から40枚を選び、手元のAIサービスに基準と今月の写真を貼り付けて判定させます。当時の事務局の「×」と同じ場所を拾えるか、隠れている場所を「同じ」にしていないかを最優先で見ます。

3週目:撮り方を決める

ファイル名に定点の番号を付ける方法(撮影アプリの設定か、定点ごとのフォルダ)と、JPEG で撮る設定を決め、5Sリーダーに説明します。あわせて、人が写り込まない巡回の時間帯を決めます。

4週目:保存から判定までをつなぐ

Make で今月のフォルダを見張り、定点の一覧を引いて Claude に判定させ、指摘の一覧に書き出すところまで作ります。この時点では点数を出さず、判定の一覧だけを事務局が見ます。

2か月目: 2つの職場で本番の巡回に使い、事務局が直した判定の数を数えます。3か月目以降: 全15職場に広げ、点数の自動計算と撮り直しの依頼を足して、1枚3分が何分になったかを実測します。事務局が直す判定の割合が下がり、職場からの点数への問い合わせが減った時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
Watch Files in a Folder が選んだフォルダでのファイルの作成・更新で動き、By Created Time/By Modified Time、ファイルの種類、Limit を選べること。共有ドライブは Google Workspace の利用者に限られること。Download a FileMake: Google Drive modules2026-10-08
Search Rows が条件に合う行を返し、Add a Row が表の末尾に行を足すことMake: Google Sheets modules2026-10-08
Anthropic Claude アプリに Create a Prompt、ファイルの管理、Make an API Call のモジュールがあることMake: Anthropic Claude2026-10-08
複数の画像をまとめて比べられ、Image 1: などの見出しを付けるとよいこと。対応形式が JPEG/PNG/GIF/WebP、1枚の上限が 8000×8000 ピクセル。小さい・傾いた画像で誤りが出やすいこと、物の数はおおよそで多いと正確でないこと、人の名前を答えないことClaude Docs: Vision2026-10-08
JSON outputs(output_config.format、type: "json_schema")が制約付きのデコードでスキーマに合った応答を返すことClaude Docs: Structured outputs2026-10-08
労働安全衛生規則 第540条(安全な通路を設けて常時有効に保持し、主要な通路には通路であることを示す表示をする)、第543条(機械間等の通路は幅80センチメートル以上)e-Gov 法令API: 労働安全衛生規則2026-10-08

通路の幅や安全の基準への適合は、安全の担当と現場の測定で確かめてください。 本記事は公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0924)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次